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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1366924
審判番号 不服2019-16510  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-06 
確定日 2020-10-08 
事件の表示 特願2015- 12858「自鳴式盗難防止タグおよび音認識盗難防止システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 4日出願公開、特開2016-139217〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許出願は、平成27年1月27日を出願日とするものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年 2月13日付け:拒絶理由の通知
平成31年 4月22日 :意見書の提出
令和 元年 8月30日付け:拒絶査定
令和 元年12月 6日 :審判請求書及び手続補正書の提出


第2 令和元年12月6日にされた手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

令和元年12月6日にされた手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

令和元年12月6日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正前の請求項1」という。)を、以下のとおりの特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正後の請求項1」という。)に補正することを含むものである。(なお、下線は審判請求人により付されたものである。)

(補正前の請求項1)
「【請求項1】
第一アラーム音と第二アラーム音を発報可能な警報音発報部を有するとともに、窃盗行為に起因して電気回路が開閉する異常事態検知スイッチ部と、外部から送信されたトリガー信号を検知するトリガー信号受信部を備えた窃盗行為事象検知部を有し、さらに、警報発報部を制御して、異常事態検知スイッチ部が作動した時に第一アラーム音を発報させ、トリガー信号受信部がトリガー信号を検知した時に第二アラーム音を発報させるタグ制御部を有することを特徴とする自鳴式盗難防止タグ。」

(補正後の請求項1)
「【請求項1】
第一アラーム音と第二アラーム音を発報可能な警報音発報部を有するとともに、窃盗行為に起因して電気回路が開閉する異常事態検知スイッチ部と、外部から送信されたトリガー信号を検知するトリガー信号受信部を備えた窃盗行為事象検知部を有し、さらに、警報発報部を制御して、異常事態検知スイッチ部が作動した時に第一アラーム音を発報させ、トリガー信号受信部がトリガー信号を検知した時に第二アラーム音を発報させるタグ制御部を有し、
タグ制御部は、異常事態検知スイッチ部が作動しないで第一アラーム音が発報していない状態であっても、あるいは異常事態検知スイッチ部が作動して第一アラーム音が発報している状態であっても、異常事態検知スイッチ部の作動の有無にかかわらずトリガー信号受信部がトリガー信号を検知すると無条件で第二アラーム音を発報させることを特徴とする自鳴式盗難防止タグ。」


2.本件補正の目的及び新規事項の有無

2-1.本件補正にかかる補正事項

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「タグ制御部」について、「タグ制御部は、異常事態検知スイッチ部が作動しないで第一アラーム音が発報していない状態であっても、あるいは異常事態検知スイッチ部が作動して第一アラーム音が発報している状態であっても、異常事態検知スイッチ部の作動の有無にかかわらずトリガー信号受信部がトリガー信号を検知すると無条件で第二アラーム音を発報させる」との事項を追加する補正事項(以下、「本件補正事項」という。)を含むものである。


2-2.新規事項の有無について

本件補正事項を含む本件補正が、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、単に「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてなされたものであるかについて検討する。

(1)当初明細書等に記載された事項

当初明細書等には、次の記載がある。(下線は当審にて付与した。)

「【0021】
図1に示すように、自鳴式盗難防止タグ100は警報発報部110と窃盗行為事象検知部120と感度調整部130とタグ制御部140およびバッテリVBを備えている。警報発報部110は、警報音として第一アラーム音と第二アラーム音を発報可能なブザー111と、ブザー111を駆動するためのブザー駆動回路112を有している。

【0022】
窃盗行為事象検知部120は、窃盗行為に起因して電気回路が開閉する異常事態検知スイッチ部121を有している。図1においては異常事態検知スイッチ部121を例示する構成として便宜的に二つのものを同時に開示しているが、本来は何れか一方である。その一つは自鳴式盗難防止タグ100と対象物との間に掛け渡されたワイヤスイッチ122であり、窃盗行為によってワイヤスイッチ122の切断や引抜が生じると、正常状態において閉じられていた回路が開いて異常を示す信号が送信される。他の一つは、押圧スイッチ123であり、自鳴式盗難防止タグ100が対象物に装着された正常状態で回路が閉じた状態となり、自鳴式盗難防止タグ100が対象物から取り外された異常状態で回路が開いた状態となって異常を示す信号が送信される。
【0023】
また、窃盗行為事象検知部120は、トリガー信号送信部200から送信されたトリガー信号を検知するトリガー信号受信部124を有しており、トリガー信号受信部124は管理者が操作するリモコン125から送信するリモコン制御信号もしくはトリガー信号送信部200から送信するトリガー信号を受信するタグ受信アンテナ(共振回路)126と、タグ受信アンテナ126がトリガー信号を受信したことを示す信号を送信するコンパレータ127を備えている。」

「【0028】
タグ制御部140は、警報発報部110を制御して、異常事態検知スイッチ部121が作動した時に第一アラーム音を発報させ、トリガー信号受信部127がトリガー信号を検知した時に第二アラーム音を発報させるものであり、信号処理部141、アラーム制御部142、コンパレータ電源制御部143、感度記憶部144、感度出力部145を有している。
【0029】
信号処理部141は、窃盗行為事象検知部120の異常事態検知スイッチ部121とトリガー信号受信部124の何れから入力信号を受けたかを認識し、第一アラーム音の発報か第二アラーム音の発報かを判断する。
【0030】
アラーム制御部142は、信号処理部141の指示を受けて警報音発報部へ第一アラーム音を発するための第一アラーム駆動信号か第二アラーム音を発するための第二アラーム駆動信号の何れかをブザー駆動回路112へ出力するものである。
【0031】
コンパレータ電源制御部143はコンパレータ127に電源を入力するとともに、バイアス回路128を介してコンパレータ127へバイアス電圧を印加するものであり、コンパレータ127への供給電源をオン/オフ制御して自鳴式盗難防止タグ100の消費電流の抑制を実現する。
【0032】
感度記憶部144は、信号処理部141から指示された感度の状態を記憶し、出力ポートP0、P1、P2の組み合わせを感度出力部145に指示する。感度出力部145は出力ポートP0、P1、P2のロジック出力Hi/Loを制御し、出力ポートP0、P1、P2の組み合わせを制御する。」

「【0042】
窃盗行為により商品から自鳴式盗難防止タグ100が取り外される事象が発生すると、窃盗行為事象検知部120の異常事態検知スイッチ部121が作動し、異常を示す信号が信号処理部141に送信される。
【0043】
あるいは、窃盗行為により商品が自鳴式盗難防止タグ100を装着したままの状態で室外へ運び出される事象が発生すると、窃盗行為事象検知部120は、出入口付近に配置したトリガー信号送信部200の送信アンテナ204から送信されるトリガー信号をトリガー信号受信部124のタグ受信アンテナ(共振回路)126で受信し、タグ受信アンテナ126がトリガー信号を受信したことをコンパレータ127が信号処理部141に送信する。
【0044】
信号処理部141は、窃盗行為事象検知部120の異常事態検知スイッチ部121とトリガー信号受信部124の何れから入力信号を受けたかを認識し、第一アラーム音の発報か第二アラーム音の発報かを判断し、アラーム制御部142は、信号処理部141の指示を受けて警報音発報部へ第一アラーム音を発するための第一アラーム駆動信号か第二アラーム音を発するための第二アラーム駆動信号の何れかをブザー駆動回路112へ出力し、ブザー111によって第一アラーム音もしくは第二アラーム音を発報させ、窃盗行為事象が発生したことを周囲の人に通知する。
【0045】
このように、自鳴式盗難防止タグ100が警報音として異なる音特徴の第一アラーム音と第二アラーム音を発報することで、第一アラーム音が発報したときには窃盗行為事象の発生場所が盗難警戒領域の内方域であると判断でき、第二アラーム音が発報したときには窃盗行為事象の発生場所が盗難警戒領域の出入口付近であると判断でき、発報後の警備担当者の速やかな行動を促進することができる。」

【図1】


【図5】

(2)本件補正事項についての検討

段落【0028】、【0029】の記載によれば、タグ制御部140の構成要素の一つである信号処理部141への入力は、異常事態検知スイッチ部121とトリガー信号受信部124の何れかからの入力信号であって、自鳴式盗難防止タグ100の構成を示す【図1】において、信号処理部141への別々の入力ポートP4、P3が見て取れることを踏まえると共に、上記「(1)当初明細書等に記載された事項」で摘記した記載事項や【図1】のブロック図を参酌すると、異常事態検知スイッチ部121とトリガー信号受信部124とは、一方の作動に関して他方の作動が関与することはなく、それぞれが独立して作動することができるものであると解される。
そうすると、異常事態検知スイッチ部121が作動し入力ポートP4に異常を示す信号を送信している状態で、トリガー信号受信部124がトリガー信号を検知して、入力ポートP3にトリガー信号を受信したことを示す信号を送信するといった事象は生じ得ることである。

ここで、当初明細書等には、上述した事象、つまり、信号処理部141に異常事態検知スイッチ部121からの入力信号とトリガー信号受信部124からの入力信号とが共に入力された事象、が生じた場合のタグ制御部140の動作処理について明示的に記載されてはいないものの、段落【0030】及び【0044】の「アラーム制御部142は、信号処理部141の指示を受けて警報音発報部へ第一アラーム音を発するための第一アラーム駆動信号か第二アラーム音を発するための第二アラーム駆動信号の何れかをブザー駆動回路112へ出力する」との記載を参酌すると、タグ制御部140は「第一アラーム音を発するための第一アラーム駆動信号か第二アラーム音を発するための第二アラーム駆動信号の何れかをブザー駆動回路112へ出力する」との動作処理を行うことは、当初明細書等に開示されているに等しいといえる。

しかしながら、上述した事象が生じた場合、タグ制御部140が「無条件で第二アラーム音を発報させる」との動作処理を実行することまでは、当初明細書等に記載も示唆もされているとはいえない。
そして、上記事象は本件補正事項の記載に照らしていうと、「異常事態検知スイッチ部(121)が作動して第一アラーム音が発報している状態であっても、(異常事態検知スイッチ部の作動の有無にかかわらず)トリガー信号受信部(124)がトリガー信号を検知する」との事項に対応するものであり、そのような事象において、「無条件で第二アラーム音を発報させる」ことについては、当初明細書等に記載も示唆もされているとはいえない。

また、本件特許出願における課題である「自鳴式盗難防止タグが窃盗行為事象の発生時に警報を発する異常状態に至ると、この異常状態を電磁波ノイズに阻害されることなく、離れた位置において確実に検出することができる」(段落【0007】)との関係においても、第一アラーム音が発報されることによって、異常状態(つまり、窃盗行為事象が発生した状態)を検出することは可能であり、第二アラーム音が発報されなければ、異常状態を検出できないということにはならないから、「異常事態検知スイッチ部(121)の作動の有無にかかわらずトリガー信号受信部(124)がトリガー信号を検知すると無条件で第二アラーム音を発報させる」との事項が当業者にとって自明な事項であるともいえない。

してみると、当初明細書等に記載も示唆もされていない事項を含む本件補正事項は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものとはいえないと判断せざるを得ない。

(3)小括

以上のとおりであるから、本件補正事項は当初明細書等には記載されておらず、また、当該本件補正事項が当初明細書等の記載から自明であるとする根拠も見いだせない。

してみると、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。


2-3.目的要件について

事案に鑑み、本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについても検討する。

2-3-1.特許法第17条の2第5項第1号(請求項の削除)、同第3号
(誤記の訂正)、同第4号(明りょうでない記載の釈明)を目
的とするものであるかについて

本件補正事項が、特許法第17条の2第5項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明りょうでない記載の釈明)を目的とするものでないことは明らかである。

2-3-2.特許法第17条の2第5項第2号(特許請求の範囲の減縮)を
目的とするものであるかについて

本件補正事項は、上記「2-1.本件補正にかかる補正事項」のとおりのものであって、「タグ制御部」について、その具体的な処理内容を特定するための事項を追加するのであるから、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものと認められ、また、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題についても同一であると認められる。
したがって、本件補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号でいうところの「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。


2-4.独立特許要件について

上記「2-3.目的要件について」で言及したように、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

(1)引用例

原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭62-174899号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(ア)「本発明はその主たる目的として電子物品監視のための改良されたシステム、方法および装置を提供するものである。
本発明のより特定的な目的は警報能力を備えた自己給電付け札を採用する型式の電子物品監視システムにおける拡張された作動能力を提供することにある。
上記および他の目的を達成するに当って、本発明は小売り設備等において監視すべき物品に解除可能に取付け可能な警報付け札を採用する型式の電子物品監視システムであって、付け札が物品窃盗の検出の向上した見込みを生ぜしめる高められた作動能力を有する電子物品監視システムを提供するものである。この目的のために、該システムは異なるメッセージ内容を含んだ信号を放射する送信機ユニットを有している。各付け札は付け札を物品に解除可能に固着せしめるための取付け装置と、前記放射された信号を受信しその中のメッセージを解読するための受信機ユニットと、警報ユニットと、信号処理器とを含み、この後者は取付け装置の状態と解読されたメッセージとに応答して警報ユニットを選択的に作動し感知可能な出力警報表示を与える。
好ましい一実施例においては、該システムは小売り設備の出口領域にかかる領域内での付け札によってのみ受取られるための出口尋問を含んだ信号を放射する送信機を含み、且つ勘定所領域には物品勘定のための種々の選択可能な尋問メッセージを含んだ信号を放射する送信機を有する。警報表示を終了させるためにガードマンにより使用される携帯ユニット等の他の送信機を設けてもよい。
付け札は受信され解読されたメッセージおよび取付け装置の状態に従って種々の状態を取る。従って、1つの付け札は以下に詳細に説明するように、解除された状態、準備状態、着用状態、窃盗状態および休止状態にありうる。更に、各付け札は中央監視部や着付け室に置かれるような局部的監視装置にメッセージを伝え、付け札送信を受信し、かかる状態を中央監視部に伝えるようになされている。付け札出力警報表示に応答して補充的な局部的警報表示を発生するために感知ユニットを設けてもよい。
更なる一面においては、付け札は異なる付け札経験を示すために異なる型式の出力警報表示を発する能力を有する。」(第4ページ左下欄第14行-第5ページ右上欄第1行)

(イ)「出口送信機ユニット18aの出口発生器62は出口尋問メッセージを含む信号を線路64を経て出口送信機66に搬送するために常時作動可能である。取付けユニット14aの取付け受信機68は付け札伝送を受信すると同時に作動して線路70を経て取付けユニット送信機72を付勢し、これにより中央または制御部はかかる隔離した領域における警報状態を知らされる。
第3図には携帯ユニット74が示されている。そのスイッチ74aを閉成すると発生器76は終了メッセージを含む信号を携帯送信機78に印加する。
第4図の付け札システム80は付け札取付け装置、典型的には、スイッチ84により表わされる取付けピンの状態、および付け札への攻撃、例えばそれに対する粉砕力の印加と同時に状態を変える更なるスイッチ86の状態に注意するスイッチモニタ82を含む。スイッチ84または86のいずれかの状態の変化と同時に、モニタはそれを制御装置90への線路88aおよび88bのうちの対応する一方上で指示する。付け札には付け札の運動に敏感で且つモニタ82により見られる更なるスイッチ87を含めてもよい。運動スイッチがオフの場合には、付け札電池寿命は付け札への給電を中断することにより維持される。
モニタ82はスイッチ84の閉成と同時に付け札を能動的に使用することを示す信号を線路92に、即ちクロックパルス発生器94に印加する。かかる開始信号は付け札システムに動力を供給する電池の維持のためのものである。それを受取ると、発生器94は線路96上にクロックパルスを出し線路98、100および102を経て受信機104および再送信シーケンサ106へ覚醒指示を供給する。受信機104は線路108およびコンデンサ110により付け札アンテナ112に結合されている。
受信機104の出力は線路114を経てメッセージデコーダ116に印加されるが、該メッセージデコーダは線路118および120を経てクロックパルスを受取る。この受信機はまた受信され解読された尋問メッセージの指示を線路122を経て再送信シーケンス106に出力する。受信機104から制御装置90へは出力線路124aないし124fが延びており、これにより制御装置は受信され解読されたメッセージについて知らされる。
制御装置90は線路126aないし126cを経てオーディオシーケンサ128に出力制御信号を印加し、該オーディオシーケンサ128は線路127を経てクロックパルスを受取りその活動を線路130aおよび130bを経て制御装置90に知らせる。圧電オーディオ出力構成素子を含むオーディオ駆動装置132は線路134を経てオーディオシーケンサ128により駆動信号を与えられる。
制御装置90は線路136を経て再送信シーケンサ106に制御信号を供給し、後者はその活動を線路138を経て制御装置90に知らせる。
シーケンサ106は線路140を経てクロックパルス発生器94に停止信号を供給し且つ付け札再送信を管理する出力信号を線路146aおよび146bを経てアンテナ駆動装置144に印加する。
制御装置90の入力および出力信号は第5図において信号の種類および第4図からのその発生系統のそのままの表示をもって集められる。制御装置90への左側入力に示される解読されたメッセージは能動的包装、オーディオ包装、受動的包装、出口、保管および終了の各信号を含む。制御装置90への頂部入力にはピン開/閉および攻撃信号が示されている。制御装置90の右にはオーディオ出力用の3つの異なる信号、即ち、警報オン/オフ、窃盗警告および照合警告信号が示されている。これらの信号の下方にはオーディオ出力回路の返答、即ち、415ms.タイムアウトおよび照合警告完了が示されている。制御装置90の下方には再送信シーケンサへのその出力、即ち再送信オン/オフ信号、および制御装置へのシーケンサ入力、即ち、1.7sec.タイムアウト信号が示されている。」(第6ページ右上欄第12行-第7ページ右上欄第16行)

(ウ)「上記からわかるように、本発明は一面において、設備内で監視されるべき物品に解除可能に取付け可能な警報付け札を採用する型式の電子監視システムであって、付け札用のそれぞれ異なるメッセージを含む信号を放射するための送信手段と、付け札を物品に解除可能に取り付けその取付け状態の出力表示を与えるための取付け手段を各々有する複数の警報付け札と、前記放射された信号を受信し且つその中に含まれるメッセージを解読するための受信手段と、取付け手段と受信手段とに接続され取付け手段の被表示状態と前記解読されたメッセージとに応答して出力警報表示を選択的に発生する付け札制御手段とから成る電子監視システムを提供するものである。
該設備は物品勘定所領域および出口領域を含んでよく、送信手段は異なるメッセージのうちの異なるものを含む信号の放射のためのそれぞれの勘定所および出口領域アンテナを含む。
付け札制御手段は出口領域アンテナにより放射された信号を受信すると無条件に出力警報表示を発生しうる。同様に、付け札制御手段は消費者が陳列領域内の取付け手段に働きかけている下で取付け手段の開放状態と同時に無条件に出力警報表示を発生しうる。また付け札制御手段は取付け手段の解放状態およびそれと同時的な、勘定所領域アンテナにより放射される信号の受信と同時に無条件に出力警報表示を発生しうる。
しかし、付け札制御手段は更に、取付け手段の状態に応答して出力警報表示を発生するに先立って勘定所領域アンテナにより放射される信号の受信に続く所定の期間の終結を待つようにも作動しうる。
送信手段により放射される信号の一つは付け札出力警報表示の終了を示すメッセージを含んでよく、付け札制御手段はかかる終了メッセージ信号の受信と同時に作動して出力警報表示を中止させることができる。
送信手段により放射される信号のうちのもう一つは非警報状態での付け札の保管を示すメッセージを含んでよく、付け札制御手段はかかる保管メッセージ信号の受信と同時に作動して付け札を出力警報表示を与えないようにすることができる。
該設備は消費者の物品取得のための隔離した領域(着付け室)と付け札送信を受信するための受信機を含んでよい。かかる再送信を受信すると、この受信機は中央制御部への送信またはハードワイヤリングによりかかる表示を送る。
このシステムは更に付け札出力警報表示の感知の出力表示を与えるための感知手段を含んでもよい。この表示は好ましくは中央監視部へ伝達されうる電気的信号である。
付け札出力警報表示は好ましくは可聴表示であり、そして前記感知手段はかかる可聴表示の受取りに応答しそれに応じて電気的出力信号を発生するトランジューサから成ってよい。上述したように、付け札制御手段は複数の異なるかかる警報出力表示を与えそして該表示は取付け手段の開放状態と放射された信号のうちの異なるものとに応答して選択的に与えられる。」(第10ページ右下欄第18行-第11ページ左下欄第20行)

(エ)第4図


(a)上記摘記事項(ア)から(ウ)において、「自己給電付け札」、「警報付け札」、「付け札」、「付け札システム80」との異なる用語が使われているが、いずれの用語も同じものを意図していることは明らかである。

(b)上記摘記事項(ア)から(ウ)において、「出力警報表示」、「警報表示」、「付け札出力警報表示」、「警報出力表示」との異なる用語が使われているが、いずれの用語も同じものを意図していることは明らかである。

(c)上記摘記事項(イ)の「第4図の付け札システム80は付け札取付け装置、典型的には、スイッチ84により表わされる取付けピンの状態、および付け札への攻撃、例えばそれに対する粉砕力の印加と同時に状態を変える更なるスイッチ86の状態に注意するスイッチモニタ82を含む。スイッチ84または86のいずれかの状態の変化と同時に、モニタはそれを制御装置90への線路88aおよび88bのうちの対応する一方上で指示する。」との記載及び第4図を参酌するに、上記摘記箇所(ウ)に記載されている「付け札を物品に解除可能に取り付けその取付け状態の出力表示を与えるための取付け手段」には、「スイッチ84と(スイッチ84の状態の変化を制御装置90へ出力する)スイッチモニタ82」とが含まれているものと解される。

(d)上記摘記事項(イ)の「受信機104は線路108およびコンデンサ110により付け札アンテナ112に結合されている。受信機104の出力は線路114を経てメッセージデコーダ116に印加されるが、該メッセージデコーダは線路118および120を経てクロックパルスを受取る。この受信機はまた受信され解読された尋問メッセージの指示を線路122を経て再送信シーケンス106に出力する。受信機104から制御装置90へは出力線路124aないし124fが延びており、これにより制御装置は受信され解読されたメッセージについて知らされる。」との記載及び第4図を参酌するに、上記摘記箇所(ウ)に記載されている「放射された信号を受信し且つその中に含まれるメッセージを解読するための受信手段」は、「付け札アンテナ112」、「受信機104」及び「メッセージデコーダ116」を備えているものと解される。

(e)上記摘記事項(イ)の「第4図の付け札システム80は付け札取付け装置、典型的には、スイッチ84により表わされる取付けピンの状態、および付け札への攻撃、例えばそれに対する粉砕力の印加と同時に状態を変える更なるスイッチ86の状態に注意するスイッチモニタ82を含む。スイッチ84または86のいずれかの状態の変化と同時に、モニタはそれを制御装置90への線路88aおよび88bのうちの対応する一方上で指示する。」、「受信機104から制御装置90へは出力線路124aないし124fが延びており、これにより制御装置は受信され解読されたメッセージについて知らされる。」、「制御装置90は線路126aないし126cを経てオーディオシーケンサ128に出力制御信号を印加し、該オーディオシーケンサ128は線路127を経てクロックパルスを受取りその活動を線路130aおよび130bを経て制御装置90に知らせる。圧電オーディオ出力構成素子を含むオーディオ駆動装置132は線路134を経てオーディオシーケンサ128により駆動信号を与えられる。」との記載、上記摘記事項(ウ)の「取付け手段と受信手段とに接続され取付け手段の被表示状態と前記解読されたメッセージとに応答して出力警報表示を選択的に発生する付け札制御手段」との記載及び第4図を参酌するに、「制御装置90」、「制御装置」及び「付け札制御手段」は、いずれも同一のものを意図していることは明らかである。

したがって、上記摘記事項(ア)から(エ)、及び、(a)から(e)の記載から引用例には、

「設備内で監視されるべき物品に解除可能に取付け可能な警報付け札を採用する型式の電子監視システムに用いられる警報付け札であって、
前記警報付け札は、
物品に解除可能に取り付けその取付け状態の出力表示を与えるための取付け手段と、
出口領域アンテナにより放射された信号を受信し且つその中に含まれるメッセージを解読するための受信手段と、
前記取付け手段と前記受信手段とに接続され前記取付け手段の被表示状態と解読された前記メッセージとに応答して出力警報表示を選択的に発生する付け札制御手段と、
オーディオシーケンサ128と該オーディオシーケンサ128により駆動信号を与えられる圧電オーディオ出力構成素子を含むオーディオ駆動装置132とを含み、
前記取付け手段は、スイッチ84とスイッチモニタ82を備え、
前記受信手段は、付け札アンテナ112、受信機104及びメッセージデコーダ116を備えており、
前記付け札制御手段は、オーディオシーケンサ128に出力制御信号を印加することで複数の異なる出力警報表示を与え、そして該出力警報表示は取付け手段の開放状態と放射された信号のうちの異なるものとに応答して選択的に与えられ、当該出力警報表示は好ましくは可聴表示であり、さらに、出口領域アンテナにより放射された信号を受信すると無条件に出力警報表示を発生しうる、
警報付け札。」(以下、「引用発明」という。)

が開示されていると認められる。

(2)対比

補正発明と引用発明とを対比する。

(2-1)『第一アラーム音と第二アラーム音を発報可能な警報音発報部』
について

引用発明の「警報付け札」は「オーディオシーケンサ128と該オーディオシーケンサ128により駆動信号を与えられる圧電オーディオ出力構成素子を含むオーディオ駆動装置132」を含むものである。
また、該「警報付け札」を構成する「付け札制御手段」は、「前記取付け手段の被表示状態と解読された前記メッセージとに応答して出力警報表示を選択的に発生する」、また、「オーディオシーケンサ128に出力制御信号を印加することで複数の異なる出力警報表示を与え、そして該出力警報表示は取付け手段の開放状態と放射された信号のうちの異なるものとに応答して選択的に与えられ、当該出力警報表示は好ましくは可聴表示であり、さらに、出口領域アンテナにより放射された信号を受信すると無条件に出力警報表示を発生しうる」ものである。

以上を踏まえると、引用発明において、「オーディオシーケンサ128」は、取付け手段の開放状態の場合と、出口領域アンテナにより放射された信号を受信した場合とで、異なる出力制御信号が印可され、該出力制御信号に応じた駆動信号を「オーディオ駆動装置132」に与え、そして、「オーディオ駆動装置132」は、該駆動信号に応じた、異なる可聴表示である出力警報表示を発生するのであるから、引用発明における、「取付け手段の開放状態の場合の出力警報表示」、「出口領域アンテナにより放射された信号を受信した場合の異なる出力警報表示」は、それぞれ、補正発明における「第一アラーム音」、「第二アラーム音」に対応しているといえ、そのような異なる出力警報表示を生成する「オーディオシーケンサ128及びオーディオ駆動装置132」は、補正発明でいう『第一アラーム音と第二アラーム音を発報可能な警報音発報部』に相当する。

(2-2)『窃盗行為に起因して電気回路が開閉する異常事態検知スイッチ
部と、外部から送信されたトリガー信号を検知するトリガー信号
受信部を備えた窃盗行為事象検知部』について

引用発明の「警報付け札」の「取付け手段」は「物品に解除可能に取り付けその取付け状態の出力表示を与え」、「スイッチ84とスイッチモニタ82を備え」るものであって、「スイッチ84」が電気回路を開閉するものであることは明らかである。
そして、「スイッチモニタ82」は、スイッチ84に係る状態の変化を出力するものであって、スイッチ84の開放状態を検知しているということができる。
ここで、引用発明における「出力警報表示」は「取付け手段の開放状態」「に応答して」与えられるものであること、さらには、上記「(1)引用例」の摘記事項(ア)の「本発明は小売り設備等において監視すべき物品に解除可能に取付け可能な警報付け札を採用する型式の電子物品監視システムであって、付け札が物品窃盗の検出の向上した見込みを生ぜしめる高められた作動能力を有する電子物品監視システムを提供するものである。」との記載からも明らかなように、引用発明の「警報付け札」が、物品窃盗の検出、ひいては、防止を目的としたものであることは明らかであるから、該出力警報表示を発生するきっかけとなる、「スイッチ84」が開放状態になることは、物品窃盗という行為に起因するものといえる。
してみると、引用発明における「取付け手段」は、補正発明でいう『窃盗行為に起因して電気回路が開閉する異常事態検知スイッチ部』に相当する。

また、引用発明の「警報付け札」は、「出口領域アンテナにより放射された信号を受信し且つその中に含まれるメッセージを解読するための受信手段」を備えるものであって、該「出口領域アンテナ」が該「警報付け札」内部に含まれるものでないことは明らかである。
そして、引用発明の「警報付け札」が発生する「出力警報表示」は「出口領域アンテナにより放射された信号を受信し出口領域アンテナにより放射された信号を受信し且つその中に含まれるメッセージを解読」したものに応答することに鑑みれば、引用発明における「出口領域アンテナにより放射された信号」は、補正発明における『外部から送信されたトリガー信号』ということができ、さらには、該信号を受信して、解読する「受信手段」は、補正発明でいう『外部から送信されたトリガー信号を検知するトリガー信号受信部』に相当する。
さらに、引用発明における「取付け手段」と「受信手段」とを合わせて、どのように称するかは任意である。

以上を総合すると、前記「取付け手段」及び「受信手段」を備える引用発明は、補正発明でいう『窃盗行為に起因して電気回路が開閉する異常事態検知スイッチ部と、外部から送信されたトリガー信号を検知するトリガー信号受信部を備えた窃盗行為事象検知部』に相当する構成を備えているといえる。

(2-3)『警報発報部を制御して、異常事態検知スイッチ部が作動した時
に第一アラーム音を発報させ、トリガー信号受信部がトリガー信
号を検知した時に第二アラーム音を発報させるタグ制御部』につ
いて

引用発明の「付け札制御手段」は「前記取付け手段の被表示状態と解読された前記メッセージとに応答して出力警報表示を選択的に発生する」、また、「オーディオシーケンサ128に出力制御信号を印加することで複数の異なる出力警報表示を与え、そして該出力警報表示は取付け手段の開放状態と放射された信号のうちの異なるものとに応答して選択的に与えられ、当該出力警報表示は好ましくは可聴表示であ」るものである。
つまり、引用発明の「警報付け札」を構成する「付け札制御手段」は、取付け手段の開放状態の場合と、出口領域アンテナにより放射された信号を受信手段により受信した場合とで、異なる出力制御信号を、オーディオシーケンサ128に印可することにより、オーディオ駆動装置132から、該出力制御信号に対応した異なる可聴表示である出力警報表示を発生させる制御を行っているといえる。

よって、上記(2-1)、(2-2)での検討と合わせると、引用発明における「付け札制御手段」は、補正発明における『警報発報部を制御して、異常事態検知スイッチ部が作動した時に第一アラーム音を発報させ、トリガー信号受信部がトリガー信号を検知した時に第二アラーム音を発報させるタグ制御部』に相当する。

(2-4)『タグ制御部は、異常事態検知スイッチ部が作動しないで第一ア
ラーム音が発報していない状態であっても、あるいは異常事態検
知スイッチ部が作動して第一アラーム音が発報している状態であ
っても、異常事態検知スイッチ部の作動の有無にかかわらずトリ
ガー信号受信部がトリガー信号を検知すると無条件で第二アラー
ム音を発報させる』ことについて

上記(2-1)から上記(2-3)での検討に加え、引用発明の「付け札制御手段」は、「出口領域アンテナにより放射された信号を受信すると無条件に出力警報表示を発生しうる」ものであり、出口領域アンテナにより放射された信号を受信した場合に発生させる出力警報表示は、上記(2-1)で言及したように、補正発明における『第二アラーム音』に対応するものであるから、引用発明と補正発明とは、『タグ制御部は』、『トリガー信号受信部がトリガー信号を検知すると無条件で第二アラーム音を発報させる』点で共通している。

(2-5)『自鳴式盗難防止タグ』について

引用発明の「警報付け札」は、いわゆる、タグといえるものであることは明らかである。
さらに、上記(2-2)でも言及したように、引用発明の「警報付け札」が、物品窃盗の検出、ひいては、防止を目的としたものであることは明らかであって、上記(2-1)から上記(2-3)で述べたような構成要素、すなわち、「オーディオシーケンサ128及びオーディオ駆動装置132」、「取付け部及び受信手段」、「付け札制御手段」を備え、可聴表示である、出力警報表示を発生するものである。

してみると、引用発明の「警報付け札」は、補正発明でいう『自鳴式盗難防止タグ』といえる。

(2-6)小括

上記(2-1)から(2-5)で検討した結果、補正発明と引用発明とは、

「 第一アラーム音と第二アラーム音を発報可能な警報音発報部を有するとともに、窃盗行為に起因して電気回路が開閉する異常事態検知スイッチ部と、外部から送信されたトリガー信号を検知するトリガー信号受信部を備えた窃盗行為事象検知部を有し、さらに、警報発報部を制御して、異常事態検知スイッチ部が作動した時に第一アラーム音を発報させ、トリガー信号受信部がトリガー信号を検知した時に第二アラーム音を発報させるタグ制御部を有し、
タグ制御部は、トリガー信号受信部がトリガー信号を検知すると無条件で第二アラーム音を発報させることを特徴とする自鳴式盗難防止タグ。」

で一致しており、以下の点で相違している。

[相違点]

補正発明における『タグ制御部』は、『異常事態検知スイッチ部が作動しないで第一アラーム音が発報していない状態であっても、あるいは異常事態検知スイッチ部が作動して第一アラーム音が発報している状態であっても、異常事態検知スイッチ部の作動の有無にかかわらずトリガー信号受信部がトリガー信号を検知すると無条件で第二アラーム音を発報させる』のに対し、引用発明における「付け札制御手段」では、単に「出口領域アンテナにより放射された信号を受信すると無条件に出力警報表示を発生しうる」ものであり、取付け手段の作動やそれに起因して生成されている出力警報表示との関係について具体的な特定がない点。

(3)判断

[相違点]について

引用発明における「付け札制御手段」は、「出口領域アンテナにより放射された信号を受信すると無条件に出力警報表示を発生」するものであり、「無条件」とは、「何の条件もつけないこと」(三省堂-大辞林-第三版参照。)を意味する用語であるから、出口領域アンテナにより放射された信号を受信した場合には、他の条件による影響を受けることなく出力警報表示を発生させるものである。

してみると、引用発明において、補正発明で特定されているような条件(『異常事態検知スイッチ部が作動しないで第一アラーム音が発報していない状態であっても、あるいは異常事態検知スイッチ部が作動して第一アラーム音が発報している状態であっても、異常事態検知スイッチ部の作動の有無にかかわらずトリガー信号受信部がトリガー信号を検知すると』)のもとでも、出口領域アンテナにより放射された信号を受信した場合、無条件に出力警報表示を発生させるようにすることは、当業者であれば容易になし得るものである。

そして、補正発明の構成によってもたらされる効果は、引用例に開示されている事項により当業者ならば容易に予測することができる程度のものである。

以上のとおり、補正発明は引用例に開示されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、特許法17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するものである。


2-5.「補正却下の決定」についてのまとめ

上記「2-2」で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反する、又は、上記「2-4」で検討したとおり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明

令和元年12月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 令和元年12月6日付けの手続補正についての補正却下の決定」「1.補正の内容」における(補正前の請求項1)参照。)により特定されるものである。


2.原査定の拒絶の理由

原査定の理由は、この出願の請求項1-7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、及び、この出願の請求項1-7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用例:特開昭62-174899号公報


3.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された引用例(特開昭62-174899号公報)に記載された事項及び当該引用例に開示されている発明(引用発明)は、上記「第2 令和元年12月6日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2-4.独立特許要件について」「(1)引用例」に記載したとおりである。


4.対比

本願発明は、令和2年12月6日付けの手続補正によって補正された補正発明から、上記「第2 令和2年12月6日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2-1.本件補正にかかる補正事項」で言及した本件補正事項を削除したものであり、本願発明と引用発明との対比は、上記「第2.令和2年12月6日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2-4.独立特許要件について」「(2)対比」の「(2-1)」ないし「(2-3)」及び「(2-5)」として記載したものと同じである。

そして、本願発明と引用発明とは、

「 第一アラーム音と第二アラーム音を発報可能な警報音発報部を有するとともに、窃盗行為に起因して電気回路が開閉する異常事態検知スイッチ部と、外部から送信されたトリガー信号を検知するトリガー信号受信部を備えた窃盗行為事象検知部を有し、さらに、警報発報部を制御して、異常事態検知スイッチ部が作動した時に第一アラーム音を発報させ、トリガー信号受信部がトリガー信号を検知した時に第二アラーム音を発報させるタグ制御部を有することを特徴とする自鳴式盗難防止タグ。」

で一致しており、相違点は存在しない。

したがって、本願発明は、引用例に記載された発明である。


第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-07-30 
結審通知日 2020-08-04 
審決日 2020-08-20 
出願番号 特願2015-12858(P2015-12858)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G08B)
P 1 8・ 121- Z (G08B)
P 1 8・ 561- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 義仁  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 富澤 哲生
谷岡 佳彦
発明の名称 自鳴式盗難防止タグおよび音認識盗難防止システム  
代理人 特許業務法人森本国際特許事務所  

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