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審決分類 審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C02F
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C02F
管理番号 1366953
異議申立番号 異議2019-700258  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-04 
確定日 2020-08-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6401491号発明「分離膜のスライム抑制方法、逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物、および分離膜用スライム抑制剤組成物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6401491号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕、〔7?12〕について訂正することを認める。 特許第6401491号の請求項3?6、9、10、12に係る特許を維持する。 特許第6401491号の請求項1、2、7、8、11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許権者であるオルガノ株式会社が保有する特許第6401491号の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成26年4月25日(優先権主張平成25年8月28日)に出願され、平成30年9月14日にその特許権の設定登録がされ、同年10月10日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許のうちの請求項1?12に係る特許について、平成31年4月4日に特許異議申立人である亀崎伸宏により特許異議の申立てがされた。
本件特許異議申立事件におけるその後の手続の経緯は次のとおりである。
令和 元年 7月 9日付け:取消理由通知
同年 9月 3日 :(特許権者)訂正請求書及び意見書の提出
同年10月 9日 :(特許異議申立人)意見書の提出
同年12月 3日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 2年 1月28日 :(特許権者)訂正請求書及び意見書の提出
同年 2月21日 :(特許権者)手続補正書(方式)の提出
同年 6月 9日付け:取消理由通知
令和 2年 7月 9日 :(特許権者)訂正請求書及び意見書の提出
なお、令和2年7月9日に訂正の請求がされたので、令和元年9月3日及び令和2年1月28日にされた先の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。また、同条第5項の規定に基づき、令和2年1月28日付けの訂正について特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えたが応答はなかったため、同訂正に類似する令和2年7月9日付けの訂正(以下、「本件訂正」という。)については、同機会を与えなかった。

第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の趣旨
本件訂正は、特許第6401491号の明細書及び特許請求の範囲を、令和2年7月9日付けの訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6、7?12について訂正することを求めるものである。
2 本件訂正の内容
本件訂正は、特許法第120条の5第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?6及び請求項7?12を訂正の単位として請求されたものであるところ、その内容(訂正事項)は、以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、
臭素と、スルファミン酸化合物とを存在させ、
前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
と記載されているのを、
「分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、
臭素と、スルファミン酸化合物とを含む組成物を存在させ、
前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、
前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5、6も同様に訂正する。)。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、
臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を存在させ、
前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
と記載されているのを、
「分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、
臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含む組成物を存在させ、
前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、
前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5、6も同様に訂正する。)。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1?4のいずれか1項に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、
前記臭素系酸化剤、または前記臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物、または前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
と記載されているのを、
「請求項3または4に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、
前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1?5のいずれか1項に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、
前記膜分離装置が分離膜としてRO膜を備え、
前記膜分離装置への給水のpHが5.5以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
と記載されているのを、
「請求項3?5のいずれか1項に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、
前記膜分離装置が分離膜としてRO膜を備え、
前記膜分離装置への給水のpHが5.5以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。」
に訂正する。
(7) 訂正事項7
明細書の【0009】を削除する。
(8) 訂正事項8
明細書の【0010】を削除する。
(9) 訂正事項9
明細書の【0011】に
「本発明は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素と、スルファミン酸化合物とを存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜である分離膜のスライム抑制方法である。」
と記載されているのを、
「本発明は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素と、スルファミン酸化合物とを含む組成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満である分離膜のスライム抑制方法である。」
に訂正する。
(10) 訂正事項10
明細書の【0012】に
「本発明は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜である分離膜のスライム抑制方法である。」
と記載されているのを、
「本発明は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含む組成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満である分離膜のスライム抑制方法である。」
に訂正する。
(11) 訂正事項11
明細書の【0013】に
「また、前記分離膜のスライム抑制方法において、前記臭素系酸化剤、または前記臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物、または前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることが好ましい。」
と記載されているのを、
「また、前記分離膜のスライム抑制方法において、前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることが好ましい。」
に訂正する。
(12) 訂正事項12
明細書の【0021】に
「本発明では、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素系酸化剤、もしくは臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物と、を存在させることにより、または、臭素系酸化剤、もしくは臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物を存在させることにより、分離膜の劣化、処理水(透過水)や濃縮水等の水質悪化を抑制し、十分なスライム抑制効果を得ることができる。」
と記載されているのを、
「本発明では、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素と、スルファミン酸化合物と、を存在させることにより、または、臭素と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物を存在させることにより、分離膜の劣化、処理水(透過水)や濃縮水等の水質悪化を抑制し、十分なスライム抑制効果を得ることができる。」
に訂正する。
(13) 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(14) 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(15) 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項9に
「臭素と、スルファミン酸化合物とを含有することを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
と記載されているのを、
「臭素と、スルファミン酸化合物とを含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)。
(16) 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項10に
「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有することを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
と記載されているのを、
「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
に訂正する(請求項10の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)。
(17) 訂正事項17
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(18) 訂正事項18
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項7?11のいずれか1項に記載の逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物であって、
前記臭素系酸化剤、または前記臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物、または前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
と記載されているのを、
「請求項9または10に記載の逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物であって、
前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」
に訂正する。
(19) 訂正事項19
明細書の【0015】を削除する。
(20) 訂正事項20
明細書の【0016】を削除する。
(21) 訂正事項21
明細書の【0017】に
「本発明は、臭素と、スルファミン酸化合物とを含有する、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物である。」
と記載されているのを、
「本発明は、臭素と、スルファミン酸化合物とを含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満である、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物である。」
に訂正する。
(22) 訂正事項22
明細書の【0018】に
「本発明は、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物である。」
と記載されているのを、
「本発明は、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満である、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物である。」
に訂正する。
(23) 訂正事項23
明細書の【0019】に
「また、前記ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物において、前記スライム抑制剤組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることが好ましい。また、前記ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物において、前記臭素系酸化剤、または前記臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物、または前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることが好ましい。」
と記載されているのを、
「また、前記ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物において、前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることが好ましい。」
に訂正する。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1、2、13、14、17について
訂正事項1、2、13、14、17は、それぞれ請求項1、2、7、8、11を削除するものであり、これらの訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的にするものである。そして、これらの訂正事項が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(2) 訂正事項5、6、7、8、11、12、18、19、20、23について
訂正事項5、6、7、8、18、19、20、23は、上記訂正事項1、2、13、14、17に係る請求項の削除に伴い、他の請求項の記載内容や引用請求項が不明瞭となったもの、あるいは、明細書の記載内容との整合がとれなくなったものについて、当該不明瞭あるいは不整合を解消するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。そして、これらの訂正事項が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(3) 訂正事項3、4、15、16について
訂正事項3、4、15、16は、請求項3、4、9、10において、「臭素とスルファミン酸化合物」、あるいは、「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」が、分離膜のスライムを抑制するための組成物(分離膜スライム抑制剤組成物)の構成成分であることを明示するとともに、本件訂正前の【請求項11】や明細書の【0052】の記載などに基づいて、当該組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを追加するものであるから、これらの訂正事項は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、さらに、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないということができる。
(4) 訂正事項9、10、21、22について
訂正事項9、10、21、22は、上記訂正事項3、4、15、16に係る請求項3、4、9、10の訂正に合わせて、明細書の記載を整合させるものであるから、これらの訂正事項は、明瞭でない記載の釈明を目的にするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであると認められる。
したがって、特許第6401491号の明細書及び特許請求の範囲を、令和2年7月9日提出の訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕、〔7?12〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載(本件発明)
上記第2のとおり本件訂正は認容できるものであるから、本件特許異議の申立ての対象とされた請求項1?12に係る発明(以下、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。また、対応する特許についても、「本件特許1」などといい、総じて「本件特許」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、
臭素と、スルファミン酸化合物とを含む組成物を存在させ、
前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、
前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。
【請求項4】
分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、
臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含む組成物を存在させ、
前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、
前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、
前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。
【請求項6】
請求項3?5のいずれか1項に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、
前記膜分離装置が分離膜としてRO膜を備え、
前記膜分離装置への給水のpHが5.5以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
臭素と、スルファミン酸化合物とを含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。
【請求項10】
臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
請求項9または10に記載の逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物であって、
前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。」

第4 令和元年12月3日及び令和2年6月9日付けで通知された取消理由についての判断
令和元年12月3日付けの取消理由通知(決定の予告)及び令和2年6月9日付けの取消理由通知において、当審が指摘した取消理由は、要するに、分離膜用スライム抑制剤組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg以上である場合については、本件明細書の発明の詳細な説明及び技術常識に基づいて、当業者において、本件発明の課題が解決できると認識することはできない、と解されるから、そのような場合を含む発明について記載した特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない、というものである。
これに対してなされた上記本件訂正後の特許請求の範囲の記載をみると、いずれの発明も、分離膜用スライム抑制剤組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満となっており、同臭素酸濃度が5mg/kg以上である場合は除外されているから、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に基づいて、当業者において、本件発明の課題が解決できると認識することができる範囲内のものということができる。
したがって、本件発明について記載した特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、本件特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとは認められず、同法第113条第4号に該当するものではないから、標記取消理由によって、本件特許を取り消すことはできない。

第5 上記取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
特許異議申立人は、特許異議申立書第61?63頁の「3.13 むずび」において整理されているとおり、申立理由1?7を挙げ、その証拠方法として、甲第1?6号証を提出しているところ、それらの申立理由のうち、設定登録時の請求項11を対象とするものは、申立理由5に係る特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(同法第113条第4号に該当)のみである。
一方、上記第3に記載した本件訂正後の特許請求の範囲の記載のとおり、本件発明3?6、9、10、12はいずれも、上記設定登録時の請求項11に記載された発明特定事項、すなわち、スライム抑制剤組成物中の「臭素酸濃度が5mg/kg未満である」という技術的事項を具備するものである。
以上の状況に鑑み、上記取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由として、ここでは、上記申立理由5に係る特許法第36条第4項第1号所定の規定違反についてのみ検討することとする。
そして、当該申立理由5は、端的にいうと、以下のとおりのものと解することができる(特に、特許異議申立書第58、59頁の「3.10 申立理由5(特許法第36条第4項第1号)」の項目を参酌した。)。
すなわち、本件発明は、分離膜の劣化抑制効果とともに、処理水(透過水)等の水質悪化抑制効果と十分なスライム抑制効果とを両立させることを課題とするものであるが、スライム抑制剤組成物において臭素酸は、当該組成物におけるスライム抑制に関わる成分濃度を高めることで、それに追従して副次的に濃度が高まるものであることから、本件発明のような臭素酸の濃度を5mg/kg未満に規定した組成物は、スライム抑制に関わる成分濃度も同時に低下し、結果的にスライム抑制効果の低下は免れないところ、このように二律背反の事項である臭素酸の濃度とスライム抑制に関わる成分濃度の両者を調整する手段について発明の詳細な説明には記載がないため、実施可能要件に違反する、というものである。
しかしながら、実際に本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例においては、当該二律背反の事項が成立しているとともに、特に、実施例5、6においては、窒素パージの有無により当該臭素酸濃度を調整できることも示されているから、当該発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであると認められる。
したがって、特許異議申立人が主張する標記特許異議申立理由によっても、本件訂正後の本件特許を取り消すことはできない。

第6 結び
以上のとおり、本件特許3?6、9、10、12は、特許法第36条第4項第1号又は第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当するとは認められないから、上記取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、ほかに、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、上記第2のとおり、本件訂正により、請求項1、2、7、8、11は削除されたため、これらの請求項に係る本件特許1、2、7、8、11についての特許異議の申立ては、対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
分離膜のスライム抑制方法、逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物、および分離膜用スライム抑制剤組成物の製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、RO膜等の分離膜のスライム抑制方法、分離膜用スライム抑制剤組成物、および分離膜用スライム抑制剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RO膜等の分離膜のスライム抑制方法としては、各種のスライム抑制剤を使用する方法が知られている。次亜塩素酸、次亜臭素酸等の酸化系薬剤は代表的なスライム抑制剤であるが、膜を劣化させるという問題がある。
【0003】
次亜臭素酸溶液を一時的に逆浸透膜の洗浄用として使用することが記載されている文献があるが(特許文献1)、あくまで次亜臭素酸そのものを使用するものであるため、一時的な使用であっても膜を劣化させるおそれがある。また、一時的な使用に限定した洗浄用途であり、連続的に逆浸透膜に接触させる恒久的なスライム抑制処理とは根本的に異なる。
【0004】
次亜臭素酸を逆浸透膜の前段に注入することが記載されている文献(特許文献2)もあるが、あくまで次亜臭素酸そのものを使用するものである。また、特許文献2の方法は、逆浸透膜に流入する水の「前処理」としての方法であり、水中の次亜臭素酸は逆浸透膜への流入直前で還元分解処理されており、連続的に逆浸透膜に接触させる恒久的なスライム抑制処理とは根本的に異なる。
【0005】
一方、次亜塩素酸をスルファミン酸で安定化させたクロロスルファミン酸等の結合塩素系の酸化系薬剤によるスライム抑制処理も提案されている(特許文献3)。これら結合塩素系の酸化系薬剤は膜の劣化への影響は小さいが、スライム抑制効果が不十分である。
【0006】
なお、RO装置においては、スケール抑制対策のためにpHを酸性側(例えば、pH4.0等)に調整して運転することが通常である(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/128328号パンフレット
【特許文献2】特開2011-050843号公報
【特許文献3】特開2006-263510号公報
【特許文献4】特開平7-163979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、分離膜の劣化、処理水(透過水)や濃縮水等の水質悪化を抑制し、十分なスライム抑制効果を有する、分離膜のスライム抑制方法、分離膜用スライム抑制剤組成物、およびその分離膜用スライム抑制剤組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】(削除)
【0010】(削除)
【0011】
本発明は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素と、スルファミン酸化合物とを含む組成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満である分離膜のスライム抑制方法である。
【0012】
本発明は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含む組成物を存在させ、前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満である分離膜のスライム抑制方法である。
【0013】
また、前記分離膜のスライム抑制方法において、前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることが好ましい。
【0014】
また、前記分離膜のスライム抑制方法において、前記膜分離装置が分離膜としてRO膜を備え、前記膜分離装置への給水のpHが5.5以上であることが好ましい。
【0015】(削除)
【0016】(削除)
【0017】
本発明は、臭素と、スルファミン酸化合物とを含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満である、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物である。
【0018】
本発明は、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満である、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物である。
【0019】
また、前記ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物において、前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることが好ましい。
【0020】
本発明は、臭素とスルファミン酸化合物とを含有する分離膜用スライム抑制剤組成物、または臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する分離膜用スライム抑制剤組成物の製造方法であって、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる工程を含む分離膜用スライム抑制剤組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素と、スルファミン酸化合物と、を存在させることにより、または、臭素と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物を存在させることにより、分離膜の劣化、処理水(透過水)や濃縮水等の水質悪化を抑制し、十分なスライム抑制効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0023】
<分離膜のスライム抑制方法>
本発明の実施形態に係る分離膜のスライム抑制方法は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、「臭素系酸化剤」または「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物」と、「スルファミン酸化合物」と、を存在させる方法である。これにより、給水または洗浄水中で、次亜臭素酸安定化組成物が生成すると考えられる。
【0024】
また、本発明の実施形態に係る分離膜のスライム抑制方法は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」、または「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物」である次亜臭素酸安定化組成物を存在させる方法である。
【0025】
具体的には本発明の実施形態に係る分離膜のスライム抑制方法は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、例えば、「臭素」、「塩化臭素」または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物」と、「スルファミン酸化合物」と、を存在させる方法である。
【0026】
また、本発明の実施形態に係る分離膜のスライム抑制方法は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、例えば、「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「塩化臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物」を存在させる方法である。
【0027】
「臭素系酸化剤」または「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物」と、「スルファミン酸化合物」とを存在させる、また、これらの反応生成物を存在させることで、分離膜のスライムを抑制することができる。また、分離膜の性能をほとんど劣化させることなく、微生物による膜汚染を確実に抑制することができる。本実施形態に係る分離膜のスライム抑制方法により、高いスライム抑制効果を有しながら、膜性能、後段水質への影響を最小限に抑えたスライム抑制処理が可能となる。
【0028】
例えば、膜分離装置への給水または洗浄水中に、「臭素系酸化剤」または「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物」と、「スルファミン酸化合物」とを薬注ポンプ等により注入すればよい。「臭素系酸化剤」または「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物」と、「スルファミン酸化合物」とは別々に水系に添加してもよく、または、原液同士で混合させてから水系に添加してもよい。
【0029】
または、例えば、膜分離装置への給水または洗浄水中に、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」、または「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物」を薬注ポンプ等により注入すればよい。
【0030】
「臭素系酸化剤」または「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比は、1以上であることが好ましく、1以上2以下の範囲であることがより好ましい。「臭素系酸化剤」または「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比が1未満であると、膜を劣化させる可能性があり、2を超えると、製造コストが増加する場合がある。
【0031】
分離膜に接触する有効ハロゲン濃度は有効塩素濃度換算で、0.01?100mg/Lであることが好ましい。0.01mg/L未満であると、十分なスライム抑制効果を得ることができない場合があり、100mg/Lより多いと、分離膜の劣化、配管等の腐食を引き起こす可能性がある。
【0032】
臭素系酸化剤としては、臭素(液体臭素)、塩化臭素、臭素酸、臭素酸塩等が挙げられる。
【0033】
これらのうち、臭素を用いた「臭素とスルファミン酸化合物」または「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」の製剤は、「次亜塩素酸と臭素化合物とスルファミン酸」の製剤および「塩化臭素とスルファミン酸」の製剤等に比べて、RO膜等をより劣化させず、RO透過水等の膜透過水への有効ハロゲンのリーク量がより少ないため、RO膜等の分離膜用スライム抑制剤としてはより好ましい。
【0034】
すなわち、本発明の実施形態に係る分離膜のスライム抑制方法は、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素と、スルファミン酸化合物とを存在させることが好ましい。また、分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を存在させることが好ましい。
【0035】
臭素化合物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム及び臭化水素酸等が挙げられる。これらのうち、製剤コスト等の点から、臭化ナトリウムが好ましい。
【0036】
塩素系酸化剤としては、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、次亜塩素酸またはその塩、亜塩素酸またはその塩、塩素酸またはその塩、過塩素酸またはその塩、塩素化イソシアヌル酸またはその塩等が挙げられる。これらのうち、塩としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸アルカリ金属塩、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウム等の次亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸バリウム等の亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ニッケル等の他の亜塩素酸金属塩、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム等の塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸カルシウム、塩素酸バリウム等の塩素酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの塩素系酸化剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩素系酸化剤としては、取り扱い性等の点から、次亜塩素酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
【0037】
スルファミン酸化合物は、以下の一般式(1)で示される化合物である。
R_(2)NSO_(3)H (1)
(式中、Rは独立して水素原子または炭素数1?8のアルキル基である。)
【0038】
スルファミン酸化合物としては、例えば、2個のR基の両方が水素原子であるスルファミン酸(アミド硫酸)の他に、N-メチルスルファミン酸、N-エチルスルファミン酸、N-プロピルスルファミン酸、N-イソプロピルスルファミン酸、N-ブチルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数1?8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N,N-ジメチルスルファミン酸、N,N-ジエチルスルファミン酸、N,N-ジプロピルスルファミン酸、N,N-ジブチルスルファミン酸、N-メチル-N-エチルスルファミン酸、N-メチル-N-プロピルスルファミン酸等の2個のR基の両方が炭素数1?8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N-フェニルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数6?10のアリール基であるスルファミン酸化合物、またはこれらの塩等が挙げられる。スルファミン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩、アンモニウム塩およびグアニジン塩等が挙げられる。スルファミン酸化合物およびこれらの塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。スルファミン酸化合物としては、環境負荷等の点から、スルファミン酸(アミド硫酸)を用いるのが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る分離膜のスライム抑制方法において、さらにアルカリを存在させてもよい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ等が挙げられる。低温時の製品安定性等の点から、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを併用してもよい。また、アルカリは、固形でなく、水溶液として用いてもよい。
【0040】
分離膜としては、逆浸透膜(RO膜)、ナノろ過膜(NF膜)、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)等が挙げられる。これらのうち、特に逆浸透膜(RO膜)に、本発明の実施形態に係る分離膜のスライム抑制方法を好適に適用することができる。また、逆浸透膜として昨今主流であるポリアミド系高分子膜に本発明の実施形態に係る分離膜のスライム抑制方法を好適に適用することができる。ポリアミド系高分子膜は、酸化剤に対する耐性が比較的低く、遊離塩素等をポリアミド系高分子膜に連続的に接触させると、膜性能の著しい低下が起こる。しかしながら、本実施形態に係る分離膜のスライム抑制方法ではポリアミド高分子膜においても、このような著しい膜性能の低下はほとんど起こらない。
【0041】
本実施形態に係る分離膜のスライム抑制方法において、膜分離装置が分離膜としてRO膜を備えるRO装置の場合、RO装置への給水のpHが5.5以上であることが好ましく、6.0以上であることがより好ましく、6.5以上であることがさらに好ましい。RO装置への給水のpHが5.5未満であると、透過水量が低下する場合がある。また、RO装置への給水のpHの上限値については、通常のRO膜の適用上限pH(例えば、pH10)以下であれば特に制限はないが、カルシウム等の硬度成分のスケール析出を考慮すると、pHは例えば9.0以下で運転することが好ましい。本実施形態に係る分離膜のスライム抑制方法を用いる場合、RO装置への給水のpHが5.5以上で運転することにより、RO膜の劣化、処理水(透過水)の水質悪化を抑制し、十分なスライム抑制効果を発揮しつつ、十分な透過水量の確保も可能となる。
【0042】
RO装置において、RO装置への給水のpH5.5以上でスケールが発生する場合には、スケール抑制のために分散剤を次亜臭素酸安定化組成物と併用してもよい。分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ホスホン酸等が挙げられる。分散剤の給水への添加量は、例えば、RO濃縮水中の濃度として0.1?1,000mg/Lの範囲である。
【0043】
また、分散剤を使用せずにスケールの発生を抑制するためには、例えば、RO濃縮水中のシリカ濃度を溶解度以下に、カルシウムスケールの指標であるランゲリア指数を0以下になるように、RO装置の回収率等の運転条件を調整することが挙げられる。
【0044】
RO装置の用途としては、例えば、海水淡水化、排水回収等が挙げられる。
【0045】
<分離膜用スライム抑制剤組成物>
本実施形態に係る分離膜用スライム抑制剤組成物は、「臭素系酸化剤」または「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物」と、「スルファミン酸化合物」とを含有するものであり、さらにアルカリを含有してもよい。
【0046】
また、本実施形態に係る分離膜用スライム抑制剤組成物は、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」、または「臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物」を含有するものであり、さらにアルカリを含有してもよい。
【0047】
臭素系酸化剤、臭素化合物、塩素系酸化剤およびスルファミン酸化合物については、上述した通りである。
【0048】
本実施形態に係る分離膜用スライム抑制剤組成物としては、RO膜等をより劣化させず、RO透過水等の膜透過水への有効ハロゲンのリーク量がより少ないため、臭素と、スルファミン酸化合物とを含有するもの、または、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有するものが好ましい。
【0049】
本実施形態に係る分離膜用スライム抑制剤組成物は、クロロスルファミン酸等の結合塩素系スライム抑制剤と比較すると、酸化力が高く、スライム抑制力、スライム剥離力が著しく高いにもかかわらず、同じく酸化力の高い次亜塩素酸、次亜臭素酸のような著しい膜劣化をほとんど引き起こすことがない。通常の使用濃度では、膜劣化への影響は実質的に無視することができる。このため、RO膜等の分離膜用スライム抑制剤としては最適である。
【0050】
本実施形態に係る分離膜用スライム抑制剤組成物は、次亜塩素酸とは異なり、RO膜をほとんど透過しないため、処理水水質への影響がほとんどない。また、次亜塩素酸等と同様に現場で濃度を測定することができるため、より正確な濃度管理が可能である。
【0051】
組成物のpHは、例えば、13.0超であり、13.2超であることがより好ましい。組成物のpHが13.0以下であると組成物中の有効ハロゲンが不安定になる場合がある。
【0052】
分離膜用スライム抑制剤組成物中の臭素酸濃度は、5mg/kg未満であることが好ましい。分離膜用スライム抑制剤組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg以上であると、透過水の臭素酸イオンの濃度が高くなる場合がある。
【0053】
<分離膜用スライム抑制剤組成物の製造方法>
本実施形態に係る分離膜用スライム抑制剤組成物は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを混合する、または臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物とを混合することにより得られ、さらにアルカリを混合してもよい。
【0054】
臭素と、スルファミン酸化合物とを含有する分離膜用スライム抑制剤組成物、または、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する分離膜用スライム抑制剤組成物の製造方法としては、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる工程を含むことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で添加して反応させることにより、組成物中の臭素酸イオン濃度が低くなり、RO透過水等の透過水中の臭素酸イオン濃度が低くなる。
【0055】
用いる不活性ガスとしては限定されないが、製造等の面から窒素およびアルゴンのうち少なくとも1つが好ましく、特に製造コスト等の面から窒素が好ましい。
【0056】
臭素の添加の際の反応器内の酸素濃度は6%以下が好ましいが、4%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。臭素の反応の際の反応器内の酸素濃度が6%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。
【0057】
臭素の添加率は、組成物全体の量に対して25重量%以下であることが好ましく、1重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。臭素の添加率が組成物全体の量に対して25重量%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。1重量%未満であると、殺菌力が劣る場合がある。
【0058】
臭素添加の際の反応温度は、0℃以上25℃以下の範囲に制御することが好ましいが、製造コスト等の面から、0℃以上15℃以下の範囲に制御することがより好ましい。臭素添加の際の反応温度が25℃を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合があり、0℃未満であると、凍結する場合がある。
【実施例】
【0059】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
臭素系酸化剤、または臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物とを使用した場合と、一般的なスライム抑制剤である次亜塩素酸、次亜臭素酸、クロロスルファミン酸を使用した場合のRO膜排除率への影響、透過水への影響、酸化力、殺菌力について比較した。
【0061】
<実施例1>
[組成物の調製]
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、組成物を調製した。組成物のpHは14、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)は7.5重量%であった。実施例1の組成物の詳細な調製方法は以下の通りである。
【0062】
反応容器内の酸素濃度が1%に維持されるように、窒素ガスの流量をマスフローコントローラでコントロールしながら連続注入で封入した2Lの4つ口フラスコに1436gの水、361gの水酸化ナトリウムを加え混合し、次いで300gのスルファミン酸を加え混合した後、反応液の温度が0?15℃になるように冷却を維持しながら、473gの液体臭素を加え、さらに48%水酸化カリウム溶液230gを加え、組成物全体の量に対する重量比でスルファミン酸10.7%、臭素16.9%、臭素の当量に対するスルファミン酸の当量比が1.04である、目的の組成物を得た。生じた溶液のpHは、ガラス電極法にて測定したところ、14であった。生じた溶液の臭素含有率は、臭素をヨウ化カリウムによりヨウ素に転換後、チオ硫酸ナトリウムを用いて酸化還元滴定する方法により測定したところ16.9%であり、理論含有率(16.9%)の100.0%であった。また、臭素反応の際の反応容器内の酸素濃度は、株式会社ジコー製の「酸素モニタJKO-02 LJDII」を用いて測定した。なお、臭素酸濃度は5mg/kg未満であった。
【0063】
<実施例2>
臭化ナトリウム:11重量%、12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液:50重量%、スルファミン酸ナトリウム:14重量%、水酸化ナトリウム:8重量%、水:残分を混合して、組成物を調製した。組成物のpHは14、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)は6重量%であった。実施例2の組成物の詳細な調製方法は以下の通りである。
【0064】
反応容器に17gの水を入れ、11gの臭化ナトリウムを加え撹拌して溶解させた後、50gの12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加え混合し、次いで14gのスルファミン酸ナトリウムを加え撹拌して溶解させた後、8gの水酸化ナトリウムを加え撹拌し溶解させて目的の組成物を得た。
【0065】
<実施例3>
実施例2の各組成を水中に別々に添加した。
【0066】
<実施例4>
塩化臭素、スルファミン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムを含有する組成物を使用した。組成物のpHは14、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)は7重量%であった。
【0067】
<比較例1>
12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用した。
【0068】
<比較例2>
臭化ナトリウム:15重量%、12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液:42.4重量%、を水中に別々に添加した。
【0069】
<比較例3>
12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液:50重量%、スルファミン酸:10重量%、水酸化ナトリウム:8重量%、水:残分を混合して、組成物を調製した。組成物のpHは14、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)は6重量%であった。
【0070】
[RO膜排除率への影響、透過水への影響、酸化力の比較試験]
以下の条件で、逆浸透膜装置の原水に、実施例1,2,4、比較例1,3で調製した組成物、および実施例3、比較例2の各組成を添加して、RO膜の排除率への影響、透過水への影響、酸化力を比較した。
【0071】
(試験条件)
・試験装置:平膜試験装置
・分離膜:日東電工(株)製、ポリアミド系高分子逆浸透膜 ES20
・運転圧力:0.75MPa
・原水:相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm)
・薬剤:実施例1,2,4、比較例1,3で調製した組成物、および実施例3、比較例2の各組成を、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)として10mg/Lとなるように添加
【0072】
(評価方法)
・RO膜の排除率への影響:30日通水後の導電率排除率(%)
(100-[透過水導電率/給水導電率]×100)
・透過水への影響:薬剤添加1時間後の透過水中の有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度、mg/L)を、残留塩素測定装置(Hach社製、「DR-4000」)を使用してDPD法により測定
・酸化力:1時間後の給水の酸化還元電位(ORP)を、酸化還元電位測定装置(東亜DKK製、RM-20P型ORP計)を使用して測定
【0073】
[殺菌力の比較試験]
以下の条件で、模擬水に実施例1,2,4、比較例1,3で調製した組成物、および実施例3、比較例2の各組成を添加して、殺菌力を比較した。
【0074】
(試験条件)
・水:相模原井水に普通ブイヨンを添加し、一般細菌数が10^(5)CFU/mlとなるよう調整した模擬水
・薬剤:実施例1,2,4、比較例1,3で調製した組成物、および実施例3、比較例2の各組成を、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)として1mg/Lとなるよう添加(有効ハロゲン濃度の測定方法:残留塩素測定装置(Hach社製、「DR-4000」)を使用してDPD法により測定)
【0075】
(評価方法)
・薬剤添加後24時間後の一般細菌数を菌数測定キット(三愛石油製、バイオチェッカーTTC)を使用して測定
【0076】
試験結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例1?4は、高いRO膜の排除率を保持し、透過水の有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)も低く、酸化力、殺菌力も高かった。実施例1?4の中では、実施例1が、最も高いRO膜の排除率を保持し、透過水の有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)が最も低かった。
【0079】
比較例1は、酸化力、殺菌力は高いものの、RO膜の排除率が低下し、透過水の有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)も高かった。比較例2は、酸化力、殺菌力は高いものの、透過水の有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)が高かった。比較例3は、RO膜の排除率はほとんど低下しておらず、透過水の有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)も低いものの、酸化力が低く、殺菌力も低かった。
【0080】
このように、RO膜を備える膜分離装置への給水中に、臭素系酸化剤、もしくは臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物と、を存在させることにより、または、臭素系酸化剤、もしくは臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物を存在させることにより、分離膜の劣化、処理水の水質悪化を抑制し、十分なスライム抑制効果を得ることができた。
【0081】
[透過水の臭素酸イオンの濃度の比較実験]
組成物調製時の窒素ガスパージの有無による透過水の臭素酸イオンの濃度を比較した。
【0082】
<実施例5>
実施例1と同様にして、窒素雰囲気下で、液体臭素:17重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.95重量%、水:残分を混合して、組成物を調製した。組成物のpHは14、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)は7.5重量%であり、臭素酸濃度は5mg/kg未満であった。
【0083】
<実施例6>
窒素パージを行わず、大気下で、液体臭素:17重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.95重量%、水:残分を混合して、組成物を調製した。組成物のpHは14、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)は7.4重量%であり、臭素酸濃度は63mg/kgであった。
【0084】
(試験条件)
・試験装置:平膜試験装置
・分離膜:日東電工(株)製、ポリアミド系高分子逆浸透膜 ES20
・運転圧力:0.75MPa
・原水:相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm)
・薬剤:実施例5,6で調製した組成物を、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)として50mg/Lとなるように添加
【0085】
(評価方法)
・透過水の臭素酸イオン濃度を、イオンクロマトグラフ-ポストカラム吸光光度法で測定した。
【0086】
試験結果を表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
実施例5では、給水、透過水中の臭素酸イオン濃度は1μg/L未満であった。実施例6では、給水、透過水中の臭素酸イオン濃度は、実施例5に比べて高かった。
【0089】
[RO装置への給水のpHによる透過水量、膜排除率への影響の比較試験]
RO装置への給水のpHによる透過水量、膜排除率への影響を比較した。
【0090】
(試験条件)
・試験装置:平膜試験装置
・分離膜:日東電工(株)製、ポリアミド系高分子逆浸透膜 ES20
・運転圧力:0.75MPa
・原水:相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm)
・薬剤:実施例1で調製した組成物を、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)として1mg/Lとなるよう添加(有効ハロゲン濃度の測定方法:残留塩素測定装置(Hach社製、「DR-4000」)を使用してDPD法により測定)
・RO膜給水pH:4.0(実施例7-1),5.0(実施例7-2),5.5(実施例7-3),6.0(実施例7-4),6.5(実施例7-5),7.0(実施例7-6),7.5(実施例7-7),8.0(実施例7-8),8.5(実施例7-9),9.0(実施例7-10)
【0091】
(評価方法)
・RO膜の排除率への影響:120時間通水後の導電率排除率(%)
(100-[透過水導電率/給水導電率]×100)
・透過水量への影響:24時間通水後の透過水量の保持率(%,対初期値)
【0092】
試験結果を表3に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
実施例7-1?7-10では、排除率の低下は認められず、RO膜の劣化が抑制された(120時間後のRO膜の排除率が99%以上)。特に、実施例7-3?7-10では、透過水量の顕著な低下も認められなかった(24時間通水後に、RO膜の透過水量を初期値の80%以上保持)。一方、実施例7-1,7-2では、排除率の低下は認められず、RO膜の劣化は抑制されたものの、透過水量が低下した。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、
臭素と、スルファミン酸化合物とを含む組成物を存在させ、
前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、
前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。
【請求項4】
分離膜を備える膜分離装置への給水または洗浄水中に、
臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含む組成物を存在させ、
前記分離膜は、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜であり、
前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、
前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。
【請求項6】
請求項3?5のいずれか1項に記載の分離膜のスライム抑制方法であって、
前記膜分離装置が分離膜としてRO膜を備え、
前記膜分離装置への給水のpHが5.5以上であることを特徴とする分離膜のスライム抑制方法。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】
臭素と、スルファミン酸化合物とを含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。
【請求項10】
臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する組成物であって、前記組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg未満であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。
【請求項11】(削除)
【請求項12】
請求項9または10に記載の逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物であって、
前記臭素の当量に対する、前記スルファミン酸化合物の当量の比は、1以上であることを特徴とする、ポリアミド系高分子膜からなる逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物。
【請求項13】
臭素とスルファミン酸化合物とを含有する分離膜用スライム抑制剤組成物、または臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有する分離膜用スライム抑制剤組成物の製造方法であって、
水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる工程を含むことを特徴とする分離膜用スライム抑制剤組成物の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-08-03 
出願番号 特願2014-90914(P2014-90914)
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (C02F)
P 1 652・ 536- YAA (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 目代 博茂  
特許庁審判長 菊地 則義
特許庁審判官 川村 裕二
日比野 隆治
登録日 2018-09-14 
登録番号 特許第6401491号(P6401491)
権利者 オルガノ株式会社
発明の名称 分離膜のスライム抑制方法、逆浸透膜またはナノろ過膜用スライム抑制剤組成物、および分離膜用スライム抑制剤組成物の製造方法  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  

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