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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1367369
審判番号 不服2020-4277  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-01 
確定日 2020-11-10 
事件の表示 特願2015-132017「円形ボトル」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月19日出願公開、特開2017-13845、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、平成27年6月30日の出願であって、その主な手続は以下のとおりである。

平成30年10月17日付け
拒絶理由通知
同年12月20日
意見書及び手続補正書の提出
令和元年5月29日付け
拒絶理由通知(最後)
同年7月26日
意見書及び手続補正書の提出
同年12月25日付け
令和元年7月26日付け手続補正書でした補正の却下の決定
拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年4月1日
拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の提出


第2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、令和2年4月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるものである。
なお、請求項1に係る発明を、以下「本願発明」という。

「【請求項1】
円筒状の胴部に、その径方向の内側に向けて窪む縦溝部が周方向に間隔をあけて複数形成されるとともに、周方向に隣り合う前記縦溝部同士の間が柱部とされた円形ボトルであって、
前記縦溝部は、前記胴部の、ボトル軸に直交する横断面視において、ボトル軸と、前記縦溝部の、ボトル軸回りに沿う周方向の中央部と、を結ぶ直線に対して線対称形状を呈し、
前記柱部は、前記胴部の前記横断面視において、ボトル軸と、前記柱部における周方向の中央部と、を結ぶ直線に対して線対称形状を呈し、
複数の前記縦溝部は、互いに同等の形状で同等の大きさに形成され、
複数の前記柱部は、互いに同等の形状で同等の大きさに形成され、
前記縦溝部は、前記柱部の頂面に対して径方向の内側に位置して径方向の外側を向く底壁部と、前記底壁部の外周縁から径方向の外側に向けて延びる側壁部と、により画成され、
前記側壁部は、前記底壁部における周方向の両端に連なりボトル軸方向に延びる一対の縦側壁部を備え、
前記縦側壁部において径方向の内側に位置する端部は、前記底壁部と第1曲面部を介して連結され、
前記縦側壁部において径方向の外側に位置する端部は、前記柱部の頂面と第2曲面部を介して連結され、
前記胴部の前記横断面視において、前記第1曲面部は、径方向の内側に向けて突となり、前記第2曲面部は、径方向の外側に向けて突となっていて、前記第1曲面部の曲率が前記第2曲面部の曲率よりも大きく、
前記柱部の幅Aと前記縦溝部の幅Cとの幅比C/Aが、0.50以上1.14以下であり、
前記胴部の前記横断面視において、ボトル軸を中心とし複数の前記柱部における各頂面上を通過する仮想円と、前記縦溝部における径方向の外端開口縁同士を結ぶ仮想直線と、の径方向の距離が、0.13mm以上0.34mm以下となっていることを特徴とする円形ボトル。」


第3.原査定の概要
原査定(令和元年12月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2014-43275号公報


第4.当審の判断
1.引用文献の記載事項
本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2014-43275号公報)には、以下の記載がある。
なお、下線部は、当審が付した。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルに関する。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のボトルでは、ラベルを胴部に貼着したときに、ラベルが周溝の形状に追従して、ボトル軸方向に沿って波打つような外観を呈する虞がある。
【0006】
ところで、従来のボトルにおいて、減圧吸収性能をさらに向上させるために、胴部に径方向の内側に向けて窪むパネル部を、周方向に間隔をあけて複数形成する構成を採用することも考えられるが、この場合、胴部に貼着したラベルにしわ等が生じ、ラベルの外観に違和感が生ずる虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ラベルの外観に違和感が生ずるのを抑えつつ、胴部に減圧吸収性能を具備させることができるボトルを提供することである。」

(3)「【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係るボトルを説明する。
本実施形態に係るボトル1は、図1?図4に示されるように、口部11、肩部12、胴部13及び底部14を備え、これら11?14が、それぞれの中心軸線を共通軸上に位置させた状態で、この順に連設された概略構成となっている。
【0016】
以下、上述した共通軸をボトル軸Oといい、ボトル軸O方向に沿って口部11側を上側、底部14側を下側といい、また、ボトル軸Oに直交する方向を径方向といい、ボトル軸O回りに周回する方向を周方向という。
なお、このボトル1は、合成樹脂材料で一体に形成され、射出成形により有底筒状に形成されたプリフォームが、ブロー成形されて形成される。また、口部11には、図示しないキャップが装着される。さらに、口部11、肩部12、胴部13及び底部14はそれぞれ、径方向に沿う横断面視形状が円形状となっている。なお、本実施形態のボトル1の内容量は、280ml以上1000ml以下とされている。
【0017】
肩部12と胴部13との接続部分には、第1環状凹溝16が全周にわたって連続して形成されている。
胴部13は筒状に形成され、肩部12の下端に連なり下方に向けて延在している。胴部13のうち、ボトル軸O方向の両端部同士の間の中間部13aは、両端部よりも小径になっている。なお、胴部13の中間部13aには、図示しない例えばシュリンクラベル等のラベルが巻き付けられるようになっている。」

(4)「【0027】
ここで、図1、図2に示すように、上述した胴部13の中間部13aには、径方向の内側に向けて窪む減圧吸収用のパネル部51が周方向に間隔をあけて複数(図示の例では、等間隔に6つ)形成されている。そして、胴部13において、周方向で隣り合うパネル部51同士の間に位置する部分は、ボトル軸O方向に沿って延びる柱部52を構成している。すなわち、胴部13には、パネル部51と柱部52とが周方向に交互に配設されている。なお、パネル部51は、ボトル軸O方向において、胴部13の中間部13aのうち、両端部を回避した部分でボトル軸O方向に沿って延在している。
【0028】
パネル部51は、胴部13の外周面に対して径方向の内側に位置するパネル底壁部53と、パネル底壁部53の外周縁から径方向の外側に向けて延びる側壁部54と、により画成されている。」

(5)「【0031】
パネル底壁部53における周方向の中央部には、径方向の外側に向けて突出するリブ55が形成されている。リブ55は、同一のパネル部51を構成する縦側壁部54a同士の間に、縦側壁部54aに対して周方向に隙間56をあけて配設されるとともに、パネル底壁部53におけるボトル軸O方向の全長に亘って形成されている。したがって、本実施形態のパネル部51は、周方向の中央部において、ボトル軸O方向で互いに対向する一対の横側壁部54b同士がリブ55によって架け渡されており、このリブ55に対して周方向の両側が、ボトル軸O方向に沿って延びる一対の隙間56になっている。この場合、隙間56は、パネル部51における周方向の外端と、リブ55における周方向の外端と、の間に位置し、各パネル部51にそれぞれ2本配設されている。そのため、本実施形態では合計12本の隙間56が周方向に間隔をあけて配設されている。
【0032】
リブ55は、パネル底壁部53に対して径方向の外側に位置する頂壁部55aと、頂壁部55aにおける周方向の外端とパネル底壁部53とを連結する周端壁部55bと、により画成されている。
頂壁部55aは、径方向に沿う横断面視(図2参照)において、径方向の外側に向けて突の曲面状に形成されている。頂壁部55aは、実質的に複数の柱部52における各頂部52aの表面形状に倣って周方向に延びる仮想円L上に位置し、胴部13における中間部13aの最大外径部となっている。
【0033】
ここで、頂壁部55aにおける中間部13aの接線方向に沿うリブ幅D1は、柱部52における頂部52aの接線方向に沿う柱幅D2以上になっている。また、リブ幅D1及び柱幅D2それぞれは、隙間56の、径方向の外端開口部における接線方向に沿う開口幅D3以上になっている。なお、図示の例では、リブ幅D1は柱幅D2よりも大きく、またリブ幅D1及び柱幅D2は開口幅D3よりも大きくなっている(すなわち、D1>D2>D3)。
【0034】
周端壁部55bは、リブ55の周方向の両端に位置してボトル軸O方向に延び、径方向の外側から内側に向かうに従い周方向の外側に向けて傾斜している。したがって、リブ55は、径方向に沿う横断面視において、径方向の外側から内側に向かうに従い周方向の幅が漸次拡大する台形状に形成されている。」

(6)「【0036】
さらに、本実施形態の柱部52及びリブ55は、それぞれ周方向の中心を通り径方向に延びる中心線に対して線対称になっている。すなわち、同一のリブ55を構成する一対の周端壁部55bにおける径方向の内端それぞれの径方向に沿う位置が互いに同等とされ、同一の柱部52を構成する一対の縦側壁部54aにおける径方向の内端それぞれの径方向に沿う位置が互いに同等とされている。したがって、同一のパネル部51において、周方向で互いに対向する縦側壁部54a及び周端壁部55bのうち、縦側壁部54aは周端壁部55bよりも径方向の長さが短くなっている。なお、縦側壁部54aにおける径方向の内端と、周端壁部55bにおける径方向の内端と、の径方向に沿う距離(縦側壁部54aの深さH1と、周端壁部55bの深さH2と、の差)は1.0mm以上2.0mm以下の範囲に設定されている。」

(7)「【0039】
また、本実施形態では、ボトル1の内部が減圧すると、胴部13が、柱部52とリブ55との間の隙間56を周方向に狭めながら優先的に縮径変形し易くなり、胴部13に減圧吸収性能を具備させることができる。さらに、隙間56が胴部13に8本以上(12本)形成されているので、ボトル1の減圧時に胴部13が不正に変形して角部が生ずるのを抑えることが可能になり、ラベルの外観を確実に良好に保つことができる。
しかも、縦側壁部54aにおける径方向の内端、及び周端壁部55bにおける径方向の内端の径方向に沿う位置が互いに異なっているため、隙間56が変形し易くなり、減圧吸収性能を確実に具備させることができる。
これにより、隙間56以外の部位(例えば、柱部52やリブ55、肩部12)での変形を抑えつつ、ボトル1の内圧変化(減圧)を吸収できる。」

(8)「【0051】
次に、本願発明者は、リブ55及び柱部52の合計本数が異なる9個のサンプルA?Iを使用し、胴部13に巻き付けられるラベルSの外観が、リブ55及び柱部52の本数に応じてどのように変化するかを検証した。なお、以下の説明において、リブ55と柱部52とを凸部57と総称する。
【0052】
以下に示す表2は、各サンプルA?Hの仕様(凸部57の本数や、ラベルSの周長)と、外観判定の結果と、をまとめたものである。また、サンプルIは、胴径φが70mmとされた円形ボトルにラベルSを巻き付けたものを示している。
【0053】
【表2】

【0054】
まず、本検証で用いたサンプルA?Hを、図13に示すサンプルAを例にして説明する。
図13に示すように、本検証で用いたサンプルAのボトル1は、胴径φ(仮想円Lの外径)が70mm、周方向における凸部57の幅が10mm(リブ幅D1=柱幅D2=10mm)とされ、等間隔で配置されたこれら凸部57間に隙間56が設けられている。また、図13に示すボトル1は、凸部57が併せて5本形成されている。そして、胴部13には、凸部57及び隙間56を覆うように全周に亘ってラベルSが巻き付けられている。
なお、サンプルB?Hについては、サンプルAに対して胴径φ、凸部幅(リブ幅D1及び柱幅D2)が同等で、凸部57の数を1本ずつ増加したものである。
【0055】
また、表2に示すラベル高低差T、可視ラベル周長、及び可視ラベル幅は以下の通り定義する。
(1)ラベル高低差T
ラベルSのうち凸部57を覆う部分からボトル軸Oまでの径方向に沿う長さR1(仮想円L及び胴径φの半径に相当)と、ラベルSのうち隙間56を覆う部分からボトル軸Oまでの径方向に沿う長さR2と、の差。
(2)可視ラベル周長
胴部13における周方向の異なる視点ごとで、視認可能なラベルSの周長。
(3)可視ラベル幅
胴部13における周方向の異なる視点ごとで、視認可能な範囲のラベルSを径方向に投影した場合の幅。
【0056】
表2に示すように、ラベル高低差Tについては、凸部57の本数を増加させるに従い低減していることが分かる。これは、凸部57の本数を増加させることで、隙間56の開口幅D3を縮小できるとともに、凸部57によるラベルSの支持面積を確保して、ラベルSのうち隙間56を覆う部分の周長を縮小できたためであると考えられる。
特に、サンプルC?H(凸部57が7本以上)の場合には、ラベル高低差Tを2.00mm以下に抑えることができ、ラベルSの外観に違和感を与えず、良好に保つことができた。この場合、胴径φに対するラベル高低差Tを、3.0%以下(好ましくは2.0%以下)に抑えることで、胴径φの大きさに依らず外観を良好に保つことができる。
【0057】
また、可視ラベル周長差(可視ラベル周長の最大値と最小値との差)についても、凸部57の本数を増加させることで、低減する傾向が見られる。つまり、凸部57の本数を増加させることで、胴部13の横断面視形状が円形(仮想円L)に近づくことになるので、周方向での視点ごとで視認可能なラベルSの周長が異なるのを抑制することが可能になる。
特に、サンプルC?H、すなわち凸部57が7本以上の場合には、可視ラベル周長差を20.00mm以下に抑えることができ、ラベルSの外観に違和感を与えず、良好に保つことができた。この場合、可視ラベル周長差を、サンプルIのラベル周長(全長)に対して10.0%以下に抑えることで、円形ボトルのラベル周長に依らず外観を良好に保つことができる。
【0058】
なお、凸部57の本数が17本以上になると賦形性に劣る傾向があるため、凸部57は16本以下とすることが好ましい。
また、凸部57の本数は、応力を均等に分散するため偶数とすることが好ましい。この場合、リブ55及び柱部52をそれぞれ偶数とすることがより好ましい。」

(9)「【図1】



(10)「【図2】



(11)「【図13】



(12)上記(3)によれば、胴部13は筒状であり、上記(3)及び(8)によれば、ボトル1は円形である。
(13)上記(5)、(6)及び(10)によれば、以下の事項が記載されている。
ア.リブ55は、頂壁部55aと一対の周端壁部55bで構成されている。
イ.柱部52は、頂部52aと一対の縦側壁部54aで構成されている。
ウ.隙間56は、径方向の外端開口部における接線方向に沿う開口であることを考慮すると、縦側壁部54aとパネル底壁部53と周端壁部55bで構成されている。
エ.隙間56は、胴部13の径方向の内側に向けて窪んでいるものであって、周方向に間隔をあけて複数配設されている。
オ.周方向に隣り合う隙間56の間は、リブ55の頂壁部55a、又は柱部52の頂部52aが配置されている。
(14)上記(7)及び(10)によれば、隙間56の縦側壁部54aにおける径方向の内端と、周端壁部55bにおける径方向の内端の径方向に沿う位置は、互いに異なっている。よって、隙間56は、胴部13のボトル軸に直交する横断面視において、ボトル軸と、隙間56のボトル軸回りに沿う周方向の中央部と、を結ぶ直線に対して線対称形状ではない。周方向に隣り合う隙間56同士の形状を比較すると、リブ55の頂壁部55a又は柱部52の頂部52aの周方向の中心を通り径方向に延びる中心線に対して線対称となっており、同等の形状ではない。一方、隙間56を構成する縦側壁部54aとパネル底壁部53と周端壁部55bは、隙間56同士で共通の大きさであるから、隙間56の開口幅は、同等の大きさである。
(15)上記(5)及び(6)によれば、柱部52及びリブ55は、それぞれ周方向の中心を通り径方向に延びる中心線に対して線対称であって、リブ55の頂壁部55aは、実質的に複数の柱部52における各頂部52aの表面形状に倣って周方向に延びる仮想円L上に位置するものであるから、リブ55の頂壁部55aと柱部52の頂部52aは、それぞれ周方向の中心を通り径方向に延びる中心線に対して線対称形状である。すなわち、リブ55の頂壁部55aと柱部52の頂部52aは、互いに同等の形状である。
(16)上記(10)の図面から、以下の事項が確認できる。
ア.隙間56のパネル底壁部53は、リブ55の頂壁部55a及び柱部52の頂部52aに対して径方向の内側に位置して径方向の外側を向いている。
イ.縦側壁部54a及び周端壁部55bは、パネル底壁部53の外周縁から径方向の外側に向けて延びている。
ウ.縦側壁部54a及び周端壁部55bは、パネル底壁部53における周方向の両端に連なりボトル軸方向に延びている。
エ.縦側壁部54aにおいて径方向の内側に位置する端部は、パネル底壁部53と曲面部分(以下「曲面部1A」という。)を介して連結され、周端壁部55bにおいて径方向の内側に位置する端部は、パネル底壁部53と曲面部分(以下「曲面部1B」という。)を介して連結されている。
オ.縦側壁部54aにおいて径方向の外側に位置する端部は、柱部52の頂部52aと曲面部分(以下「曲面部2A」という。)を介して連結され、周端壁部55bにおいて径方向の外側に位置する端部は、リブ55の頂壁部55aと曲面部分(以下「曲面部2B」という。)を介して連結されている。
カ.胴部13の横断面視において、曲面部1A及び曲面部1Bは径方向の内側に向けて突であり、曲面部2A及び曲面部2Bは径方向の外側に向けて突である。
キ.曲面部1A及び曲面部1Bの曲率は、曲面部2Aの曲率よりも明らかに大きい。
ク.曲面部1Bの曲率は、曲面部2Bの曲率よりも明らかに小さい。
ケ.曲面部1Aの曲率と曲面部2Bの曲率の関係は不明である。
(17)上記(5)によると、リブ55の頂壁部55aにおける中間部13aの接線方向に沿うリブ幅はD1、柱部52の頂部52aの接線方向に沿う柱幅はD2、隙間56の径方向の外端開口部における接線方向に沿う開口幅はD3と定義されている。そして、上記(8)及び(11)に記載されたサンプルHに特に着目すると、以下の事項が記載されている。
ア.リブ55と柱部52の総数は12本であって、隙間56の総数も12本である。
イ.D1=D2=10mmであるから、リブ55の頂壁部55aと柱部52の頂部52aは、同等の大きさであって、D1とD2の合計周長は120mmである。
ウ.胴径φ=70mmであるから、胴周長=約219.8mmである。
エ.胴周長-D1とD2の合計周長=219.8-120=99.8mmであるから、隙間56の開口幅D3=99.8/12=8.32mmである。
オ.リブ55の頂壁部55aの幅D1及び柱部52の頂部52aの幅D2と、隙間56の開口幅D3との幅比は、D3/D1(D2)=8.32/10=0.832である。
カ.ラベル高低差Tは0.40mmである。

上記(1)?(17)によれば、特にサンプルHに着目すると、引用文献1には、以下の発明(「引用発明」という)が記載されている。
「筒状の胴部13に、胴部13の径方向の内側に向けて窪む隙間56が周方向に間隔をあけて複数配設され、周方向に隣り合う隙間56の間は、リブ55の頂壁部55a、又は柱部52の頂部52aが配置されている円形のボトル1であって、
隙間56は、縦側壁部54aにおける径方向の内端と、周端壁部55bにおける径方向の内端の径方向に沿う位置が互いに異なっており、
リブ55の頂壁部55aと柱部52の頂部52aは、それぞれ周方向の中心を通り径方向に延びる中心線に対して線対称形状であり、
合計12本の隙間56は、周方向に隣り合う隙間56同士が線対称形状で、互いに同等の大きさであり、
合計12本のリブ55の頂壁部55aと柱部52の頂部52aは、互いに同等の形状で同等の大きさであり、
隙間56は、リブ55の頂壁部55a及び柱部52の頂部52aに対して径方向の内側に位置して径方向の外側を向いているパネル底壁部53と、パネル底壁部53の外周縁から径方向の外側に向けて延びている縦側壁部54a及び周端壁部55bと、により構成され、
縦側壁部54a及び周端壁部55bは、パネル底壁部53における周方向の両端に連なりボトル軸方向に延びており、
縦側壁部54aにおいて径方向の内側に位置する端部は、パネル底壁部53と曲面部1Aを介して連結され、周端壁部55bにおいて径方向の内側に位置する端部は、パネル底壁部53と曲面部1Bを介して連結され、
縦側壁部54aにおいて径方向の外側に位置する端部は、柱部52の頂部52aと曲面部2Aを介して連結され、周端壁部55bにおいて径方向の外側に位置する端部は、リブ55の頂壁部55aと曲面部2Bを介して連結されており、
胴部13の横断面視において、曲面部1A及び曲面部1Bは径方向の内側に向けて突であり、曲面部2A及び曲面部2Bは径方向の外側に向けて突であって、曲面部1A及び曲面部1Bの曲率は曲面部2Aの曲率よりも大きく、曲面部1Bの曲率は曲面部2Bの曲率よりも小さく、曲面部1Aの曲率と曲面部2Bの曲率の関係は不明であり、
リブ55の頂壁部55aの幅D1及び柱部52の頂部52aの幅D2と、隙間56の開口幅D3との幅比は、D3/D1(D2)=0.832であり、
ラベル高低差Tは0.40mmである、
円形のボトル1。」

2.本願発明について
(1)対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「筒状の胴部13」は、本願発明の「円筒状の胴部」に相当し、以下同様に、「隙間56」は「縦溝部」に、「リブ55の頂壁部55a」「柱部52の頂部52a」は「柱部」に、「円形のボトル1」は「円形ボトル」に、それぞれ相当する。

引用発明の「隙間56が周方向に間隔をあけて複数配設され、周方向に隣り合う隙間56の間は、リブ55の頂壁部55a、又は柱部52の頂部52aが配置されている」ことは、本願発明の「縦溝部が周方向に間隔をあけて複数形成されるとともに、周方向に隣り合う前記縦溝部同士の間が柱部とされ」ていることに相当する。

引用発明の「リブ55の頂壁部55aと柱部52の頂部52aは、それぞれ周方向の中心を通り径方向に延びる中心線に対して線対称形状であ」ることは、本願発明の「前記柱部は、前記胴部の前記横断面視において、ボトル軸と、前記柱部における周方向の中央部と、を結ぶ直線に対して線対称形状を呈し」ていることに相当する。

引用発明の「合計12本の隙間56は、周方向に隣り合う隙間56同士が線対称形状で、互いに同等の大きさであ」ることは、「複数の縦溝部は、互いに同等の大きさに形成され」ていることの限りにおいて、本願発明の「複数の前記縦溝部は、互いに同等の形状で同等の大きさに形成され」ていることと一致する。

引用発明の「合計12本のリブ55の頂壁部55aと柱部52の頂部52aは、互いに同等の形状で同等の大きさであ」ることは、本願発明の「複数の前記柱部は、互いに同等の形状で同等の大きさに形成され」ていることに相当する。

引用発明の「隙間56は、リブ55の頂壁部55a及び柱部52の頂部52aに対して径方向の内側に位置して径方向の外側を向いているパネル底壁部53と、パネル底壁部53の外周縁から径方向の外側に向けて延びている縦側壁部54a及び周端壁部55bと、により構成され」ていることは、本願発明の「前記縦溝部は、前記柱部の頂面に対して径方向の内側に位置して径方向の外側を向く底壁部と、前記底壁部の外周縁から径方向の外側に向けて延びる側壁部と、により画成され」ていることに相当する。
引用発明の「縦側壁部54a及び周端壁部55b」は、本願発明の「一対の縦側壁部」に相当する。そして、引用発明の「縦側壁部54a及び周端壁部55bは、パネル底壁部53における周方向の両端に連なりボトル軸方向に延びて」いることは、本願発明の「前記底壁部における周方向の両端に連なりボトル軸方向に延びる一対の縦側壁部」に相当する。

引用発明の「縦側壁部54aにおいて径方向の内側に位置する端部は、パネル底壁部53と曲面部1Aを介して連結され、周端壁部55bにおいて径方向の内側に位置する端部は、パネル底壁部53と曲面部1Bを介して連結され」ていることは、「前記縦側壁部において径方向の内側に位置する端部は、前記底壁部と曲面1を介して連結され」ていることの限りにおいて、本願発明の「前記縦側壁部において径方向の内側に位置する端部は、前記底壁部と第1曲面部を介して連結され」ていることと一致する。
引用発明の「縦側壁部54aにおいて径方向の外側に位置する端部は、柱部52の頂部52aと曲面部2Aを介して連結され、周端壁部55bにおいて径方向の外側に位置する端部は、リブ55の頂壁部55aと曲面部2Bを介して連結されて」いることは、「前記縦側壁部において径方向の外側に位置する端部は、前記柱部の頂面と曲面2を介して連結され」ていることの限りにおいて、本願発明の「前記縦側壁部において径方向の外側に位置する端部は、前記柱部の頂面と第2曲面部を介して連結され」ていることと一致する。
引用発明の「胴部13の横断面視において、曲面部1A及び曲面部1Bは径方向の内側に向けて突であり、曲面部2A及び曲面部2Bは径方向の外側に向けて突であ」ることは、「前記胴部の前記横断面視において、曲面1は、径方向の内側に向けて突となり、前記曲面2は、径方向の外側に向けて突となってい」ることの限りにおいて、本願発明の「前記胴部の前記横断面視において、前記第1曲面部は、径方向の内側に向けて突となり、前記第2曲面部は、径方向の外側に向けて突となってい」ることと一致する。

引用発明の「リブ55の頂壁部55aの幅D1及び柱部52の頂部52aの幅D2と、隙間56の開口幅D3との幅比は、D3/D1(D2)=0.832であ」ることは、本願発明の「前記柱部の幅Aと前記縦溝部の幅Cとの幅比C/Aが、0.50以上1.14以下であ」ることの範囲内である。

引用発明の「ラベル高低差T」は、上記1.(8)によれば、「ラベルSのうち凸部57を覆う部分からボトル軸Oまでの径方向に沿う長さR1(仮想円L及び胴径φの半径に相当)と、ラベルSのうち隙間56を覆う部分からボトル軸Oまでの径方向に沿う長さR2と、の差」であるから、本願発明の「前記胴部の前記横断面視において、ボトル軸を中心とし複数の前記柱部における各頂面上を通過する仮想円と、前記縦溝部における径方向の外端開口縁同士を結ぶ仮想直線と、の径方向の距離」に相当する。

よって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
「円筒状の胴部に、その径方向の内側に向けて窪む縦溝部が周方向に間隔をあけて複数形成されるとともに、周方向に隣り合う前記縦溝部同士の間が柱部とされた円形ボトルであって、
前記柱部は、前記胴部の前記横断面視において、ボトル軸と、前記柱部における周方向の中央部と、を結ぶ直線に対して線対称形状を呈し、
複数の前記縦溝部は、互いに同等の大きさに形成され、
複数の前記柱部は、互いに同等の形状で同等の大きさに形成され、
前記縦溝部は、前記柱部の頂面に対して径方向の内側に位置して径方向の外側を向く底壁部と、前記底壁部の外周縁から径方向の外側に向けて延びる側壁部と、により画成され、
前記側壁部は、前記底壁部における周方向の両端に連なりボトル軸方向に延びる一対の縦側壁部を備え、
前記縦側壁部において径方向の内側に位置する端部は、前記底壁部と曲面1を介して連結され、
前記縦側壁部において径方向の外側に位置する端部は、前記柱部の頂面と曲面2を介して連結され、
前記胴部の前記横断面視において、前記曲面部1は、径方向の内側に向けて突となり、前記曲面2は、径方向の外側に向けて突となっていて、
前記柱部の幅Aと前記縦溝部の幅Cとの幅比C/Aが、0.50以上1.14以下である、
円形ボトル。」

そして、本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明は、「前記縦溝部は、前記胴部の、ボトル軸に直交する横断面視において、ボトル軸と、前記縦溝部の、ボトル軸回りに沿う周方向の中央部と、を結ぶ直線に対して線対称形状を呈し」ているのに対して、引用発明の隙間56は、縦側壁部54aにおける径方向の内端と、周端壁部55bにおける径方向の内端の径方向に沿う位置が互いに異なっており、線対称形状ではない点。

<相違点2>
本願発明は、「複数の前記縦溝部は、互いに同等の形状」であるのに対して、引用発明の隙間56は、周方向に隣り合う隙間56同士が線対称形状である点。

<相違点3>
本願発明は、「前記第1曲面部の曲率が前記第2曲面部の曲率よりも大き」いのに対して、引用発明は、曲面部1A及び曲面部1Bの曲率は曲面部2Aの曲率よりも大きく、曲面部1Bの曲率は曲面部2Bの曲率よりも小さく、曲面部1Aの曲率と曲面部2Bの曲率の関係は不明である点。

<相違点4>
本願発明は、「前記胴部の前記横断面視において、ボトル軸を中心とし複数の前記柱部における各頂面上を通過する仮想円と、前記縦溝部における径方向の外端開口縁同士を結ぶ仮想直線と、の径方向の距離が、0.13mm以上0.34mm以下となっている」のに対して、引用発明の距離は0.40mmである点。

(2)相違点についての検討
<相違点1>?<相違点3>は、引用発明の隙間56の形状に関するもので、密接に関連する相違点であるから、あわせて検討する。

引用文献1の段落【0039】には、以下の記載がある。
「【0039】
また、本実施形態では、ボトル1の内部が減圧すると、胴部13が、柱部52とリブ55との間の隙間56を周方向に狭めながら優先的に縮径変形し易くなり、胴部13に減圧吸収性能を具備させることができる。さらに、隙間56が胴部13に8本以上(12本)形成されているので、ボトル1の減圧時に胴部13が不正に変形して角部が生ずるのを抑えることが可能になり、ラベルの外観を確実に良好に保つことができる。
しかも、縦側壁部54aにおける径方向の内端、及び周端壁部55bにおける径方向の内端の径方向に沿う位置が互いに異なっているため、隙間56が変形し易くなり、減圧吸収性能を確実に具備させることができる。
これにより、隙間56以外の部位(例えば、柱部52やリブ55、肩部12)での変形を抑えつつ、ボトル1の内圧変化(減圧)を吸収できる。」
すなわち、引用発明は、隙間56が、縦側壁部54aにおける径方向の内端と、周端壁部55bにおける径方向の内端の径方向に沿う位置が互いに異なっており、線対称形状ではなく(相違点1)、かつ周方向に隣り合う隙間56同士が線対称形状である(相違点2)ことによって、隙間56を周方向に狭めながら優先的に縮径変形し易くなり、これをもって胴部13に減圧吸収性能を具備させることができるものである。
そして、隙間56は、縦側壁部54aにおける径方向の内端と、周端壁部55bにおける径方向の内端の径方向に沿う位置が互いに異なっていることから、曲面部1A及び曲面部1Bの曲率は曲面部2Aの曲率よりも大きく、曲面部1Bの曲率は曲面部2Bの曲率よりも小さい関係となるものである。

一方、引用文献1の【図11】に示されるサンプル8は、「縦側壁部54aの深さH1と、周端壁部55bの深さH2と、が同等になっている」(段落【0043】)けれども、「サンプル8は減圧強度の増加に追従できず、減圧途中(15kPa程度)で隙間56以外の箇所に局部変形が生じる等の結果となった」(段落【0047】)ものであり、望ましくないサンプルである。
すなわち、引用発明には、隙間56の縦側壁部54aにおける径方向の内端と、周端壁部55bにおける径方向の内端の径方向に沿う位置を同等として、線対称形状とすることに阻害事由がある。
よって、引用発明の隙間56は、縦側壁部54aにおける径方向の内端と、周端壁部55bにおける径方向の内端の径方向に沿う位置が互いに異なっており、線対称形状ではないこと(相違点1)、周方向に隣り合う隙間56同士が線対称形状であること(相違点2)、隙間56がそのような形状であるために、曲面部1A及び曲面部1Bの曲率は曲面部2Aの曲率よりも大きく、曲面部1Bの曲率は曲面部2Bの曲率よりも小さくなっていること(相違点3)が必須の構成であって、その変更に阻害事由がある。

そして、本願発明は、<相違点1>?<相違点3>に係る構成により、「胴部の横断面視において縦溝部および柱部がそれぞれ線対称形状を呈している。更に、複数の柱部および複数の縦溝部がそれぞれ、互いに同等の形状で同等の大きさに形成されている。したがって、円形ボトル内の減圧時に、胴部を、全周にわたって均等に縮径変形させることができ、円形ボトルを角形状に変形させずに円形状に保ったまま減圧変形させることができる。」(段落【0007】)という格別の効果を奏するものである。

よって、引用発明において、<相違点1>?<相違点3>に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるということができない。

3.小括
以上のとおりであるから、<相違点4>について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第5.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-10-20 
出願番号 特願2015-132017(P2015-132017)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 間中 耕治
特許庁審判官 横溝 顕範
中村 一雄
発明の名称 円形ボトル  
代理人 仁内 宏紀  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 鈴木 三義  

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