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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B |
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管理番号 | 1367492 |
審判番号 | 不服2020-3819 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-03-23 |
確定日 | 2020-11-10 |
事件の表示 | 特願2015-213490「情報処理装置、情報処理方法、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月18日出願公開、特開2017- 80200、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年10月29日の出願であって、平成31年4月26日に手続補正書が提出され、令和元年8月14日付けで拒絶理由が通知され、同年10月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月19日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、これに対し、令和2年3月23日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年7月20日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年9月1日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要及び当審拒絶理由の概要 1 原査定の概要は次のとおりである。 本願の請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2014-138661号公報 2.特開2014-068714号公報 3.特開2013-066696号公報 4.特開2014-183560号公報 5.特開2001-000420号公報 6.特開2005-237494号公報 2 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 請求項2の「前記表示手段」及び「前記表示された被験者の骨格情報」という記載が何を指し示しているのかが不明確であるから、請求項2に係る発明、及び、請求項2を引用する請求項3-11に係る発明は明確でない。 そのため、本願の請求項2-11の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第3 本願発明 本願請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、令和2年9月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である(下線は補正箇所を示す。)。 「【請求項1】 被験者の関節の座標情報に基づき、被験者の骨格情報を生成する骨格情報生成手段と、 種目と当該種目に係る動画を表示するレイアウトとを対応付けて記憶する記憶手段と、 前記被験者の骨格情報と、比較対象となる骨格情報とを前記種目に係るレイアウトで比較可能に表示する表示手段と、 前記レイアウトが被験者の骨格情報と比較対象となる骨格情報とを上下に並べて配置するレイアウトである場合には、上に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択および下に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択を受け付け、前記レイアウトが被験者の骨格情報と比較対象となる骨格情報とを左右に並べて配置するレイアウトである場合には、左に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択および右に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択を受け付ける反転指示受付手段と、 を備え、 前記表示手段は、前記反転指示受付手段により左右を反転させて表示する選択を受け付けた骨格情報の左右を反転させて表示することを特徴とする情報処理装置。 【請求項2】 前記表示手段は、さらに、前記表示された被験者の骨格情報と比較対象となる骨格情報とを重ねた画像を表示することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。 【請求項3】 前記被験者のいずれかの関節座標と、当該関節座標に対応する前記比較対象となる骨格情報にかかる関節座標を一致させることで位置調整を行う位置調整手段と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。 【請求項4】 前記被験者の骨格情報と、比較対象となる骨格情報との位置を調整する指示を受け付ける位置調整指示受付手段をさらに備え、 前記位置調整手段は、前記位置調整指示受付手段により位置調整の指示を受け付けた場合に、位置調整を行うことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。 【請求項5】 前記位置調整手段は、さらに、ユーザによるドラッグ操作に従い、当該骨格情報の位置を調整することを特徴とする請求項3または4に記載の情報処理装置。 【請求項6】 前記被験者のいずれかの関節間の距離と、当該関節間の距離に対応する前記比較対象となる骨格情報にかかる関節間の距離を一致させることでサイズ調整を行うサイズ調整手段と、 を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。 【請求項7】 前記被験者の骨格情報と、比較対象となる骨格情報との大きさを調整する指示を受け付けるサイズ調整指示受付手段をさらに備え、 前記サイズ調整手段は、前記サイズ調整指示受付手段によりサイズ調整の指示を受け付けた場合に、サイズ調整を行うことを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。 【請求項8】 前記サイズ調整指示受付手段は、ユーザから骨格情報の大きさを大きくする指示または小さくする指示を受け付けることでサイズ調整指示を受け付けることを特徴とし、 前記サイズ調整手段は、前記サイズ調整指示受付手段により受け付けたユーザの指示に従い、骨格情報のサイズを調整することを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。 【請求項9】 前記被験者を含む背景映像の表示状態にかかる指示を受け付ける受付手段をさらに備え、 前記表示手段は、前記受付手段により受け付けた指示に従い、前記被験者を含む背景映像を表示することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の情報処理装置。 【請求項10】 前記表示手段は、前記受付手段により被験者を含む背景映像を表示する旨の指示を受け付けた場合、前記被験者を含む背景映像と骨格情報とを合成した映像を表示することを特徴とする請求項9に記載の情報処理装置。 【請求項11】 前記表示手段は、前記受付手段により被験者を含む背景映像を表示しない旨の指示を受け付けた場合、前記被験者を含む背景映像を表示せず、骨格情報を表示することを特徴とする請求項9または10に記載の情報処理装置。 【請求項12】 種目と当該種目に係る動画を表示するレイアウトとを対応付けて記憶する記憶手段を備える情報処理装置における情報処理方法であって、 前記情報処理装置の骨格情報生成手段が、被験者の関節の座標情報に基づき、被験者の骨格情報を生成する骨格情報生成工程と、 前記情報処理装置の表示手段が、前記被験者の骨格情報と、比較対象となる骨格情報とを前記種目に係るレイアウトで比較可能に表示する表示工程と、 前記情報処理装置の反転指示受付手段が、前記レイアウトが被験者の骨格情報と比較対象となる骨格情報とを上下に並べて配置するレイアウトである場合には、上に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択および下に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択を受け付け、前記レイアウトが被験者の骨格情報と比較対象となる骨格情報とを左右に並べて配置するレイアウトである場合には、左に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択および右に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択を受け付ける反転指示受付工程と、 を備え、 前記表示工程は、前記反転指示受付工程により左右を反転させて表示する選択を受け付けた骨格情報の左右を反転させて表示することを特徴とする情報処理方法。 【請求項13】 種目と当該種目に係る動画を表示するレイアウトとを対応付けて記憶する記憶手段を備える情報処理装置を、 被験者の関節の座標情報に基づき、被験者の骨格情報を生成する骨格情報生成手段と、 前記被験者の骨格情報と、比較対象となる骨格情報とを前記種目に係るレイアウトで比較可能に表示する表示手段と、 前記レイアウトが被験者の骨格情報と比較対象となる骨格情報とを上下に並べて配置するレイアウトである場合には、上に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択および下に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択を受け付け、前記レイアウトが被験者の骨格情報と比較対象となる骨格情報とを左右に並べて配置するレイアウトである場合には、左に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択および右に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択を受け付ける反転指示受付手段として機能させ、 前記表示手段を、前記反転指示受付手段により左右を反転させて表示する選択を受け付けた骨格情報の左右を反転させて表示する手段として機能させるためのプログラム。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1の記載事項 (1)原査定に引用された引用文献1には、次の記載がある(下線は当審にて付した。)。 (引1a) 「【技術分野】 【0001】 本発明の実施形態は、医用画像表示装置及びプログラムに関する。」 (引1b) 「【0009】 (第1の実施形態) 図1は、第1の実施形態に係る医用情報システムの構成例を示すブロック図である。第1の実施形態に係る医用情報システム1は、医療機関や自宅、職場等において行われるリハビリテーションを支援するシステムである。・・・ 【0010】 図1に示すように、第1の実施形態に係る医用情報システム1は、動作情報収集部10と、医用情報処理装置20と、医用画像診断装置30と、医用画像保管装置40と、医用画像表示装置100とを備える。・・・ 【0011】 動作情報収集部10は、リハビリテーションが行われる空間における人物や物体等の動作を検知し、人物や物体等の動作を表す動作情報と、その人物や物体を撮影した動画情報とを収集する。なお、動作情報収集部10としては、例えば、Kinect(登録商標)が用いられる。 【0012】 図2は、第1の実施形態に係る動作情報収集部10の詳細な構成例を示すブロック図である。図2に示すように、動作情報収集部10は、医用情報処理装置20に接続され、カラー画像収集部11と、距離画像収集部12と、音声認識部13と、動作情報生成部14とを有する。なお、図2に示す動作情報収集部10の構成は、あくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。 ・・・ 【0016】 動作情報生成部14は、人物や物体等の動作を表す動作情報を生成する。この動作情報は、例えば、人物の動作(ジェスチャー)を複数の姿勢(ポーズ)の連続として捉えることにより生成される。概要を説明すると、動作情報生成部14は、まず、人体パターンを用いたパターンマッチングにより、距離画像収集部12によって生成される距離画像情報から、人体の骨格を形成する各関節の座標を得る。距離画像情報から得られた各関節の座標は、距離画像の座標系(以下、「距離画像座標系」と呼ぶ)で表される値である。このため、動作情報生成部14は、次に、距離画像座標系における各関節の座標を、リハビリテーションが行われる3次元空間の座標系(以下、「世界座標系」と呼ぶ)で表される値に変換する。この世界座標系で表される各関節の座標が、1フレーム分の骨格情報となる。また、複数フレーム分の骨格情報が、動作情報である。以下、第1の実施形態に係る動作情報生成部14の処理を具体的に説明する。 ・・・ 【0036】 例えば、医用情報処理装置20は、動作情報生成部14によって送信された動画情報及び動作情報を受け付ける。そして、医用情報処理装置20は、受け付けた動画情報及び動作情報をモニタやスピーカー等に出力したり、医用画像保管装置40へ送信したりする。 ・・・ 【0040】 例えば、医用画像保管装置40は、医用情報処理装置20によって送信された動画情報及び動作情報を対応付けて対象者ごとに保管する。この動画情報は、カラー画像収集部11によって生成された複数フレームのカラー画像情報であり、例えば、リハビリテーションを行う対象者が撮影された動画の情報である。また、動画情報は、付帯情報として、撮影された対象者によって行われたリハビリテーションの種目(例えば、歩行訓練や関節可動域訓練等)を示す情報を有する。また、動作情報は、動画情報の各フレームに対応する骨格情報であり、例えば、動画情報に撮影された対象者の動作を表す。 ・・・ 【0042】 図5は、第1の実施形態に係る医用画像表示装置100の詳細な構成例を示すブロック図である。図5に示すように、医用画像表示装置100は、出力部110と、入力部120と、記憶部130と、制御部140とを有する。 【0043】 ここで、第1の実施形態に係る医用画像表示装置100は、以下に説明する処理により、リハビリテーションの様子が撮影された動画を適切に表示することができる。例えば、医用画像表示装置100は、歩行訓練の動画を複数並べて表示する際に、動作のタイミングを同期させて表示することができる。 ・・・ 【0046】 なお、第1の実施形態では、右足が着地するタイミングを用いる場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、実施形態は、左足で床面を蹴るタイミング等、他の動作が行われるタイミングを用いても良い。また、実施形態は、歩行訓練の動画が表示される場合に限定されるものでもなく、例えば、関節可動域訓練等、他の訓練の動画が表示される場合に適用されても良い。また、実施形態は、健常者と対象者とを比較する場合に限定されるものでもなく、例えば、現在の対象者と過去の対象者とを比較しても良い。より具体的には、実施形態は、術前及び術後で比較しても良いし、術後直後と術後数ヶ月経過後とで比較しても良い。更に、実施形態は、3つ以上の動画を比較しても良い。また、実施形態は、複数の動画を横方向に並べて表示しても良いし、縦方向に並べて表示しても良い。 【0052】 制御部140は、取得部141と、特定部142と、表示制御部143とを有する。・・・」 (引1c) 「【0081】 (第2の実施形態) 上述した第1の実施形態では、歩行訓練の動画を表示する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、関節可動域訓練等、他の訓練の動画が表示される場合に適用されても良い。そこで、第2の実施形態では、医用画像表示装置100が関節可動域訓練の動画を表示する場合を説明する。 ・・・ 【0093】 例えば、表示制御部143は、リハビリテーションの目的に応じて、複数の動画情報の表示制御を行う。例えば、表示制御部143は、関節可動域訓練の動画を複数並べて表示する場合には、特定部142によって特定された極大タイミングに対応するフレームを用いて、これら複数の動画情報の表示制御を行う。」 (引1d) 「【0103】 (第3の実施形態) さて、これまで第1及び第2の実施形態について説明したが、上述した第1及び第2の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。 ・・・ 【0110】 (被写体の向きの調整) また、例えば、上述した第1及び第2の実施形態では、被写体の向きを一致させずに動画を表示する場合を説明したが、被写体の向きを一致させた上で動画を表示しても良い。例えば、表示制御部143は、動画情報間で各被写体の向きが略一致するように、少なくとも一方の動画情報を平行移動や回転の上、表示制御を行う。 ・・・ 【0113】 (複数動画の重畳表示) また、例えば、上述した第1及び第2の実施形態では、表示対象となる動画を並べて表示する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、表示対象となる動画を重畳表示しても良い。 【0114】 図14は、重畳表示について説明するための図である。図14には、健常者の関節可動域訓練の動作情報と、対象者の関節可動域訓練の動作情報とを重畳表示する表示画像を例示する。 【0115】 図14に示すように、表示制御部143は、表示対象となる動作情報に含まれるフレームに対応する骨格情報を重畳表示する。具体的には、表示制御部143は、右腕の関節可動域訓練の動画を表示する場合には、表示対象となる右肩(関節3e)、右肘(関節3f)、右手首(関節3g)及び右手(関節3h)の位置を示す情報を、健常者及び対象者の骨格情報からそれぞれ抽出する。そして、表示制御部143は、健常者の右肩と右肘の位置と、対象者の右肩と右肘の位置とがそれぞれ一致するように、重畳画像を生成する。そして、表示制御部143は、生成した重畳画像を出力部110に表示する。このように、医用画像表示装置100は、複数の動画を重畳表示することができる。このとき、健常者の動作情報なのか、対象者の動作情報なのか区別できるように、線種や色を変えて表示しても良い。」 (2)引用発明 上記(1)から、上記引用文献1(特に下線部参照)には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「医用情報システム1であって、 医用情報システム1は、動作情報収集部10と、医用情報処理装置20と、医用画像診断装置30と、医用画像保管装置40と、医用画像表示装置100とを備え、 動作情報収集部10は、医用情報処理装置20に接続され、カラー画像収集部11と、距離画像収集部12と、音声認識部13と、動作情報生成部14とを有し、 動作情報生成部14は、距離画像収集部12によって生成される距離画像情報から、人体の骨格を形成する各関節の座標である骨格情報を得、 医用画像保管装置40は、人物や物体を撮影した動画情報及び人物や物体等の動作を表す動作情報を対応付けて対象者ごとに保管し、動画情報は撮影された対象者によって行われたリハビリテーションの種目(例えば、歩行訓練や関節可動域訓練等)を示す情報を付帯情報として有し、 医用画像表示装置100は、歩行訓練や関節可動域訓練の動画を複数横方向又は縦方向に並べて表示し、 また、医用画像表示装置100は、健常者の動作情報に含まれる骨格情報を表示する動画と、対象者の動作情報に含まれる骨格情報を表示する動画とを重畳表示する、 医用情報システム1。」 2 引用文献2の記載事項 原査定に引用された引用文献2には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審にて付した。)。 「【0050】 図5は,関節角度計算部2のディスプレイ24の表示の例である。ディスプレイ24の表示は,一画面に2フィールドの情報表示エリアを有し,図5に示す表示は,2フィールドの情報表示エリアの内の一つの表示エリアである。 ・・・ 【0052】 画像表示エリア50の表示は,入力ボタン表示エリア51の背景表示ボタン52の切り替えにより,背景画像上にスケルトン(骨格)画像を表示するか,背景画像を表示せずにスケルトン(骨格)画像のみを表示するかの切り替えが可能である。図5に示す例では,背景画像を表示せずにスケルトン(骨格)画像のみを表示している。」 【図5】 上記記載から、引用文献2には「スケルトン(骨格)画像を表示する画像表示エリアについて、背景画像上にスケルトン(骨格)画像を表示するか,背景画像を表示せずにスケルトン(骨格)画像のみを表示するかの切り替えが可能である。」という技術的事項が記載されているといえる。 3 引用文献3の記載事項 原査定に引用された引用文献3には、次の記載がある(下線は当審にて付した。)。 「【0057】 また、電子計算機1にて適度な歩行のピッチ(ペース)を利用者5に示すように、利用者5の実際の歩行の状態とは関係なく、スピーカから一定間隔でビープ音又はリズムを発するようにして実施してもよい。 本発明は、図10に示すように手すり4aを備えたトレッドミル4を用いて実施したり、合成画像を利用したゲームなどへの応用も可能である。 さらに、利用者5が病気(片麻痺)に掛かる前の動画データが存する場合には、画像処理装置によって、それをオリジナル動画データ(健常時の正しい運動を示す参照画像)として用い(そのままの動画データ又は左右を反転させた動画データの何れをも参照画像とすることが可能)、現在の運動の様子を示す動画データ(そのままの動画データ又は左右を反転させた動画データ)と重ね合わせてモニタ3上に表示するようにしても、良好なリハビリテーション効果を得ることができる。」 上記記載から、引用文献3には「利用者の健常時の正しい運動を示す動画データと、現在の運動の様子を示す動画データと重ね合わせてモニタ上に表示するにあたり、それぞれの動画データについて左右を反転させた動画データを用いる」という技術的事項が記載されているといえる。 4 引用文献4の記載事項 原査定に引用された引用文献4には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。)。 (引4a) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。 【背景技術】 【0002】 従来から、ゴルフやテニスのスイングや野球のバッティングフォーム等、スポーツにおけるユーザ自身のフォームの画像を、プロのフォームの画像等、見本となる画像と並べて表示することができる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。」 (引4b) 「【0010】 [第1実施形態] 図1は、本発明の第1実施形態に係る画像処理装置1のハードウェアの構成を示すブロック図である。画像処理装置1は、例えばデジタルカメラして構成される。 【0011】 画像処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、撮像部16と、入力部17と、出力部18と、記憶部19と、通信部20と、ドライブ21と、を備えている。 ・・・ 【0020】 CPU11においては、第1実施形態に係る画像向き揃え処理の実行が制御される場合、主制御部41と、ユーザ操作受付部42と、画像選択部43と、向き判別部44と、向き調整部45と、表示制御部46と、が機能する。・・・ ・・・ 【0022】 ユーザ操作受付部42は、ユーザによる入力部17に対する操作の内容を受け付ける。 例えば、ユーザは、入力部17を操作して、画像記憶部51に記憶されている複数の動画像の中から比較対象となる動画像として少なくとも2以上を選択する。具体的には例えば、ユーザは、入力部17を操作して、2画面同時再生の対象となる再生対象動画及び手本動画を選択する。この場合、ユーザ操作受付部42は、その選択結果を受け付ける。 また例えば、ユーザ操作受付部42は、動画の向きを所定の方向に揃えるか否か、及び揃える場合には何れの方向に揃えるのかを指示するための、入力部17に対するユーザの操作も受け付ける。 ・・・ 【0031】 図5は、向きが揃えられた2つの動画像が、出力部18のディスプレイに並列に並べられて2画面同時再生が行われる様子を示す模式図である。 図5に示すように、2画面同時再生の場合には、右向きの手本動画たる動画像Maと、右向きに揃えられた(左右反転された)再生対象動画たる動画像Mbrとは、左右に並列に並べられて同時に再生される。 これにより、ユーザは、右向きに揃えられた再生対象動画(動画像Mbr)と手本動画(動画像Ma)を同時に比較しながら視認することが容易にできるようになる。 更に、ユーザが比較しやすくなるように、図5に示すように、表示制御部46は、ゴルフのスイングの各タイミングを同期させて再生させるようにしてもよい。」 上記記載から、引用文献4には以下の技術的事項が記載されているといえる。 「スポーツにおけるユーザ自身のフォームの画像を、プロのフォームの画像等、見本となる画像と並べて表示することができる画像処理装置1において、 ユーザ操作受付部が、動画の向きを所定の方向に揃えるか否か、及び揃える場合には何れの方向に揃えるのかを指示するための、ユーザの操作を受け付け、 出力部のディスプレイが、向きを揃えられた2つの動画像を左右に並列に並べて同時に再生する技術。」 5 引用文献5の記載事項 (1)原査定に引用された引用文献5には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審にて付した。)。 「【0027】上記のようにして求めた軌跡をスケルトン画像72として表示する例を図6に示す。図6では同一患者に於ける任意で日付の違う2つの動画像70による歩行状況の様子の比較と、原画像を元に処理、作成した2つのスケルトン画像72による歩行状況の様子の比較を示している。スケルトン画像72は、同時に表示されている動画像70と比較して余計な情報がないので体の骨格の動きが見やすいという利点がある。また、撮影対象者28の決められた体の部位の軌跡に着目して、例えば図7のグラフ76に示すように、歩行時における腰の関節の軌跡を定量データとしてグラフに示すことによって回復の度合を的確に検討することも可能である。なお、図7のグラフ74は、図1に示した回復状態グラフ表示のモード3Bにおける表示例であり、撮影対象者28(患者)の歩行速度がリハビリ歩行訓練の結果日増しに向上している様子を示している。なお、更に多くの情報を見やすくするために、図6の動画像70やスケルトン画像72と、図7に示されるようなグラフを合成して一つの画面に表示してもよい。また、表示比較するデータは同じ患者の撮影時期の異なるデータどうしでもよいし、片方を健常者のデータとして比較してもよい。」 【図6】 (2)図6からは、「同一患者に於ける任意で日付の違う2つの動画像70」が、左右に並べて表示される点が見てとれる。 (3)上記(1)、(2)から、引用文献5には「同一患者に於ける任意で日付の違う2つの動画像を左右に並べて表示することで、歩行状況の様子の比較を行う」という技術的事項が記載されているといえる。 6 引用文献6の記載事項 原査定に引用された引用文献6には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。)。 「【0038】 つぎに、スケルトンモデル生成手段12は、生成したスケルトン画像と学習者のスイング画像とを合成して表示装置5の画面上に表示させるとともに、図10に示すように、スケルトン調整ダイアログを画面上に表示させてスケルトン画像のサイズ調整及びスケルトン画像の位置調整を可能にする(ステップS13)。スケルトンモデル生成手段12は、スケルトン画像のサイズ及び位置の調整が完了すると、スイング画像(動画像)の再生を行ってスイング画像とスケルトン画像を合成表示する(ステップS14)。この際、画面上には各種の機能ボタンが表示されており、それらの機能ボタンを操作することで、スケルトン表示の有無や軌跡表示の有無、どの部位(「ヘッド」、「肩」、「手」)の軌跡を表示するかの選択が可能である。 【0039】 図10は、スケルトン調整ダイアログの一具体例を示す図である。スケルトン調整ダイアログには、サイズ調整用の4つのボタンB1?B4(横拡張、横縮小、縦拡張、縦縮小)及び位置調整用の5つのボタンB5?B9、並びに完了ボタンB10が設けられている。ボタンB1をクリックするとスケルトン画像を横方向に拡張される。ボタンB2をクリックするとスケルトン画像が横方向に縮小される。ボタンB3をクリックするとスケルトン画像が縦方向に拡張される。ボタンB4をクリックするとスケルトン画像が縦方向に縮小される。したがって、これらのボタンB1?B4を操作することで、スケルトン画像を撮影画像と同じ大きさ(サイズ)に調整できる。ボタンB5をクリックするとスケルトン画像の位置が上方向に移動され、ボタンB6をクリックすると下方向へ移動され、ボタンB7をクリックすると左方向へ、ボタンB8をクリックすると右方向を移動される。また、マウスカーソルをボタンB9の位置に合せてドラッグすることでスケルトン画像を任意の方向へ移動させることができる。したがって、これらのボタンB5?B9を操作することでスケルトン画像を移動させ、スイング画像(学習者画像)と位置を合わせることができる。完了ボタンB10をクリックするとスケルトン調整が終了される。なお、本実施の形態では、スケルトン画像ダイアログは、スケルトン生成時に自動的に表示されるようにしている。スケルトンのサイズや位置を新たに調整する場合には、手本となるスケルトンを選択し直すことでスケルトン画像ダイアログを表示させることができる。」 上記記載から、引用文献6には「スイング画像とスケルトン画像を合成表示するにあたり、スケルトン画像のサイズを及び位置の調整ができる」という技術的事項が記載されているといえる。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 引用発明の「医用情報システム1」は、「距離画像情報から、人体の骨格を形成する各関節の座標である骨格情報を得」るなどの情報処理を行うものであるから、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。 イ 引用発明の「動作情報生成部14」は、本願発明1の「骨格情報生成手段」に相当する。そして、引用発明の「動作情報生成部14」が「距離画像収集部12によって生成される距離画像情報から、人体の骨格を形成する各関節の座標である骨格情報を得」ることは、本願発明1の「骨格情報生成手段」が「被験者の関節の座標情報に基づき、被験者の骨格情報を生成する」ことに相当する。 ウ 引用発明の「医用画像表示装置100」は歩行訓練や関節可動域訓練の動画を複数横方向又は縦方向に並べて表示するものであるから、引用発明は動画をどの方向に並べて表示するか、すなわち動画を表示するレイアウトを記憶しているといえる。そしてこの際のレイアウトを記憶する手段が、本願発明1の「記憶手段」に相当する。 エ 引用発明の「対象者の動作情報に含まれる骨格情報」及び「健常者の動作情報に含まれる骨格情報」は、それぞれ本願発明1の「被験者の骨格情報」及び「比較対象となる骨格情報」に相当する。そして、引用発明の「医用画像表示装置100」は、「健常者の動作情報に含まれる骨格情報を表示する動画と、対象者の動作情報に含まれる骨格情報を表示する動画とを重畳表示する」ところ、重畳表示していれば両者の動画は比較可能といえる。そのため、引用発明の「医用画像表示装置100」は、本願発明1の「被験者の骨格情報と、比較対象となる骨格情報とを」「比較可能に表示する表示手段」に相当する。 オ 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 【一致点】 「被験者の関節の座標情報に基づき、被験者の骨格情報を生成する骨格情報生成手段と、 動画を表示するレイアウトを記憶する記憶手段と、 被験者の骨格情報と、比較対象となる骨格情報とを比較可能に表示する表示手段と、 を備える情報処理装置。」 【相違点1】 記憶手段及び表示手段が、本願発明1は、「記憶手段」が「種目と当該種目に係る動画を表示するレイアウトとを対応付けて記憶」し、「表示手段」が「前記被験者の骨格情報と、比較対象となる骨格情報とを前記種目に係るレイアウトで比較可能に表示する」のに対し、引用発明は、記憶手段が、動画を表示するレイアウトを記憶し、「医用画像表示装置100」が「被験者の骨格情報と、比較対象となる骨格情報とを比較可能に表示する」ものの、記憶手段はレイアウトを種目と対応づけて記憶するものではなく、また、「医用画像表示装置100」は複数の動画を種目に係るレイアウトで表示するものではない点。 【相違点2】 本願発明1は「レイアウトが被験者の骨格情報と比較対象となる骨格情報とを上下に並べて配置するレイアウトである場合には、上に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択および下に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択を受け付け、前記レイアウトが被験者の骨格情報と比較対象となる骨格情報とを左右に並べて配置するレイアウトである場合には、左に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択および右に配置される骨格情報について左右を反転させて表示するか否かの選択を受け付ける反転指示受付手段」を備え、「表示手段」は「前記反転指示受付手段により左右を反転させて表示する選択を受け付けた骨格情報の左右を反転させて表示する」のに対し、引用発明は「反転指示受付手段」を有しない点。 (2)判断 相違点1について検討する。 ア 引用発明の「動画情報」は、「撮影された対象者によって行われたリハビリテーションの種目を示す情報を付帯情報として有し」、また、引用発明の「医用画像表示装置100」は、「歩行訓練や関節可動域訓練の動画を複数横方向又は縦方向に並べて表示」するものである。 しかしながら、「歩行訓練や関節可動域訓練の動画を複数横方向又は縦方向に並べて表示」する際に、「リハビリテーションの種目」、すなわち、歩行訓練であるか関節可動域訓練であるか、に対応づけて表示する旨の記載はないから、「リハビリテーションの種目」と複数の動画を並べて表示する際のレイアウトを対応づけて記憶するという点は、引用発明には備わっていない。 イ また、引用文献2-6のいずれにも、種目と複数の動画を並べて表示する際のレイアウトを対応づけて記憶するという点は記載されていない。 ウ よって、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて、引用発明において「種目と当該種目に係る動画を表示するレイアウトとを対応付けて記憶する」手段を設けることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (3)小括 したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2-11について 本願発明2-11も、本願発明1の「種目と当該種目に係る動画を表示するレイアウトとを対応付けて記憶する記憶手段」と同一の構成を備えるものであるから、上記1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明12について 本願発明12は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「種目と当該種目に係る動画を表示するレイアウトとを対応付けて記憶する記憶手段」に対応する構成を備えるものであるから、上記1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4 本願発明13について 本願発明13は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1の「種目と当該種目に係る動画を表示するレイアウトとを対応付けて記憶する記憶手段」に対応する構成を備えるものであるから上記1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 令和元年10月18日付け手続補正書による手続補正後の請求項1-11に係る発明は「種目と当該種目に係る動画を表示するレイアウトとを対応付けて記憶する記憶手段」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-6に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 また、令和元年10月18日付け手続補正書による手続補正後の請求項12,13に係る発明は「種目と当該種目に係る動画を表示するレイアウトとを対応付けて記憶する記憶手段」に対応する構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-6に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 当審拒絶理由について 1 特許法第36条第6項第2号について 当審では、請求項2の「前記表示手段」及び「前記表示された被験者の骨格情報」という記載が何を指し示しているのかが不明確である、との拒絶の理由を通知しているが、令和2年9月1日付け手続補正書による手続補正により、請求項2が請求項1を引用するものへと補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-10-19 |
出願番号 | 特願2015-213490(P2015-213490) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 秀樹 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
伊藤 幸仙 磯野 光司 |
発明の名称 | 情報処理装置、情報処理方法、プログラム |
代理人 | 木村 友輔 |
代理人 | 木村 友輔 |