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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1367655
審判番号 不服2019-1180  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-29 
確定日 2020-10-30 
事件の表示 特願2015- 85501「ガンの治療方法及びその治療具」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日出願公開、特開2016-202421〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月18日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年10月12日付け:拒絶理由通知
平成29年12月29日:意見書及び手続補正書
平成30年10月24日付け:拒絶査定
平成31年 1月29日:審判請求、同時に手続補正書
令和 2年 2月26日付け:拒絶理由通知
令和 2年 4月29日:意見書及び手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「調べを再生可能な再生手段を備え、前記調べが、特定の旋律と特定の歌詞に基づいて構成され、前記再生手段により再生される前記旋律に応じて前記歌詞を発声させることで当該発声を行う者の声帯を振動させ、前記声帯の動きを前頭葉に伝え、前記前頭葉からの指示により免疫力を高めさせて、がん細胞を撲滅化させることを特徴とするヘッドホン型治療具であって、
前記治療具は、耳当てパッドとヘッドホン下部を有し、
前記ヘッドホン下部は、使用者が寝て前記治療具を装着たときに前記ヘッドホン下部が床に当たらないように床に当たる部分を削った形状である治療具。」

第3 拒絶の理由
当審が通知した令和2年2月26日付け拒絶理由の理由2は、次の理由を含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:大阪発笑いのススメ 意外と知らない笑いの効用、[online]、2006.03、大阪府、[2020年2月18日検索]、インターネット<URL:http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/4002/00029624/waraisasshi.pdf>
引用文献2:笑いはがんを征圧する<第457号>、[online]、健康かながわ2006年4月号、2006.04、公益財団法人 神奈川県予防医学協会、[2020年2月18日検索]、インターネット<URL:https://www.yobouigaku-kanagawa.or.jp/info_service/health_info/healthy_kanagawa/457.html>

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1には、次の記載がある(下線は、当審で付した。丸囲み数字は、括弧付き数字で表記した。以下同じ。)。
「さて、今度は日本での例を紹介しましょう。
1992年(平成4年)、大阪ミナミの演芸場で、ガンや心臓病の人を含む19人の方々に、漫才や新喜劇を見て大いに笑ってもらった後、免疫力がどうなるのかということを、岡山県の「すばるクリニック」の伊丹仁朗院長と大阪府の「元気で長生き研究所」所長の昇幹夫医師が共同で実験しました。実験は、たっぷり3時間大笑いしてもらい、その直前と直後に採血してリンパ球の活性(ガン細胞を攻撃するNK(ナチュラルキラー)細胞の元気度)を調べるというものでした。
健康な人の体内では、1日に3000?5000個のガン細胞が発生していますが、人が生まれつき持っている50億個のNK細胞がこれを破壊しているおかげで、ガンにおかされずにすんでいるということです。この働きがNK活性と呼ばれていて、実験の結果、笑う前にNK活性の数値が低かった人は、すべて正常範囲までアップし、高かった人の多くも正常近くの数値に下がるということが確認されました。
つまり、笑いには、ガンに対する抵抗力を高め、免疫機能を正常化させるということ、さらに、免疫機能を薬で活性化させるには一定の時間がかかるのに対し、笑いには、短時間で免疫系を正常化させる生理学的効果(即効性)があるということが実験結果として出されました。
(中略)
また、昇先生は、著書「笑顔がクスリ」の中でNK細胞を元気づけたり免疫を向上させたりする方法を提唱していますので、その中からいくつか紹介します。
(1)心の底から楽しく笑うこと。(2)悲しいときに、大粒の涙を流して泣くこと。(3)顔を見ただけで、声を聞いただけでホッとする人に悩みを聞いてもらうこと。(4)歌を歌ったり聴いたり好きなことをすること。気を付けなければいけないのは、「好きなこと」をしたりイメージしたりすることです。好きでないことでは、NK細胞は決して元気にならないとのことです。高齢者の化粧(華粧)も、自分がきれいになったという満足感が免疫系に好影響を与えるそうです。
それから、昇先生は、ドイツの有名な定義で上智大学のデーケン教授がよく使う「にもかかわらず笑う」ことの大切さを説いています。苦しいときでも笑顔を示す。そうすることによって、相手も自分も楽しい気持ちになって、NK細胞が元気になってくるということです。」(第4?5ページの「(2)NK(ナチュラルキラー)細胞の活性化」の欄)

(2)上記記載から、次の事項が認められる。
ア 歌を歌ったり聴いたりするために、歌を再生可能な再生手段を備える再生機器を用いることは当然によく知られたことであるから、上記記載の「歌を歌ったり聴いたり」するためには、当業者であれば、当該「歌」を再生可能な再生手段を備える再生機器を当然想起することはいうまでもない。
また、「歌」とは、旋律と歌詞に基づいて構成されるものであり、「歌を歌ったり」するとは、歌詞を発声することであり、発声することで、当該発声を行う者の声帯が振動することも当然によく知られたことである。

イ 上記記載の「歌を歌ったり聴いたり好きなことをすること」から、「歌」とは好きなものであることが必要であり、当該「歌」は、発声を行う者にとって特定の旋律と特定の歌詞に基づいて構成されたものであるといえる。

(3)上記(1)ないし(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「歌を再生可能な再生手段を備え、前記歌が、特定の旋律と特定の歌詞に基づいて構成され、前記再生手段により再生される前記歌を聴かせたり、発声を組み入れ歌わせること、つまり、前記旋律に応じて前記歌詞を発声させることで当該発声を行う者の声帯を振動させ、NK細胞を元気づけたり免疫を向上させ、ガン細胞を攻撃し破壊する、再生機器。」

2 引用文献2
引用文献2の「笑いでがんは治る!?」の欄には、次の記載(以下「引用文献2に記載の事項」という。)がある。
「声を上げてよく笑っているときは、脳の前頭葉が活発に働いている。一種の興奮状態になっていて、脳幹を刺激し、ペプチドをたくさん分泌させ、NK細胞に降り注ぐようになる。ペプチドで活性化したNK細胞は、血液中から肝臓や腎臓、胃など、がんが発生しやすい内臓に向かって行動を開始する。これががん抑制につながる、という仮説が一般化しつつある。」

3 文献3
本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2001-236516号公報(以下「文献3」という。)には、次の記載がある。
「【0056】図5(b)は、視聴者40がゴーグル型のディスプレイ25cおよびヘッドホン25bを装着した状態で”アフレコ入り漫画”を視聴している様子を示す。(中略)その結果、図5(b)に示されるように、視聴者40は、リクライニングチェアに寝そべった楽な姿勢で漫画を楽しむことが可能になる。」



」(図5(b))

4 文献4
本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2008-289756号公報(以下「文献4」という。)には、次の記載がある。
「【0012】
(前略)
(実施形態1) 図1は、実施形態1に係る睡眠誘導装置の側面図であり、図2は、同実施形態に係る睡眠誘導装置の内部構成を示すブロック図である。
【0013】
睡眠誘導装置1Aは、頭部装着体としてのヘッドフォン2と、着座体としての椅子3と、指示入力機器としてのタッチパネルモニター4と、を基本構成とする。(後略)」



」(図1)

5 文献5
本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、実願昭62-64905号(実開昭63-172447号)のマイクロフィルム(以下「文献4」という。)には、次の記載がある。
「情景音を高品質にかつエンドレスに再生する再生機と、長時間不快感なく装着できかつ外部音の減衰効果の大きい材質と構造を有するヘッドホンから構成され、人間の精神を情景音に集中させることにより睡眠の妨害を抑制することを特徴とした騒音抑制睡眠機。」(実用新案登録請求の範囲)

6 文献6
本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、国際公開第2009/125216号(以下「文献6」という。)には、次の記載がある。
「(57) Abstract: A sleep inducement apparatus (1) comprises an interface unit (3), a pair of headphones (5) and an electrode strap (7). The interface unit (3) houses a sleep monitor, a music player and a control unit. The sleep monitor co-operates with the electrode strap to detect the state of sleep of a subject through a heart rate variability analysis. The music player co-operates with the headphones to play music therethrough.(後略)」(当審訳:(57)要約:インターフェースユニット(3)、一対のヘッドフォン(5)及び電極ストラップ(7)から構成される睡眠誘導装置。インターフェースユニット(3)は、睡眠モニタ、音楽プレーヤ及び制御ユニットを収納する。睡眠モニタは、電極ストラップと協働して心拍変化分析を通して対象の睡眠状態を検出する。音楽プレーヤは、ヘッドフォンと協働し、それを通して音楽をかける。)

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
引用発明の「歌」は、その作用や機能からみて、本願発明の「調べ」に相当し、以下同様に、「NK細胞を元気づけたり免疫を向上させ」は「免疫力を高めさせて」に、「ガン細胞を攻撃し破壊する」は「がん細胞を撲滅化させる」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「再生機器」は、歌を歌ったり聴いたりする者のガン細胞を攻撃し破壊するものであり、治療装置として用いられるものであるといえることから、本願発明の「治療具」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の【一致点】で一致し、【相違点1】及び【相違点2】で相違する。
【一致点】
「調べを再生可能な再生手段を備え、前記調べが、特定の旋律と特定の歌詞に基づいて構成され、前記再生手段により再生される前記旋律に応じて前記歌詞を発声させることで当該発声を行う者の声帯を振動させることで、免疫力を高めさせて、がん細胞を撲滅化させる治療具。」

【相違点1】
免疫力を高めさせるに当たって、本願発明では、声帯の動きを前頭葉に伝え、前記前頭葉からの指示により免疫力を高めさせるのに対し、引用発明では、そのような構成を有するか明らかでない点。

【相違点2】
治療具の構成について、本願発明では、ヘッドホン型であって、耳当てパッドとヘッドホン下部を有し、前記ヘッドホン下部は、使用者が寝て前記治療具を装着たときに前記ヘッドホン下部が床に当たらないように床に当たる部分を削った形状であるのに対し、引用発明では、そのような構成を有するか明らかでない点。

第6 判断
上記相違点1及び2について、検討する。
1 相違点1について
引用文献1のNK細胞を元気づけたり免疫を向上させたりする方法として、歌を歌ったり聴いたりすることと、心の底から楽しく笑うこととは並列的に記載されているところ、引用文献2に記載の事項から、当業者であれば、歌を歌ったり聴いたりする際にも、心の底から楽しく笑う場合と同様に、前頭葉からの指示によりNK細胞が活性化されていることを容易に類推できるといえる。このとき、笑いにおける声が前頭葉に伝わる以上、歌詞を発声することによる声帯の動きが前頭葉に伝わることは容易に理解できることである。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。
また、仮に、並列的に記載されていることから直ちに、歌を歌ったり聴いたりすることで、心の底から楽しく笑うことと同じ生理的現象が生じるとはいえないとしても、引用文献1には、「苦しいときでも笑顔を示す。そうすることによって、相手も自分も楽しい気持ちになって、NK細胞が元気になってくる」と記載されており、笑顔で歌うようにさせることは、当業者が容易になし得たことである。そして、その結果、前頭葉からの指示によりNK細胞が活性化されることは、引用文献2に記載の事項から、当業者が容易に類推できることである。

2 相違点2について
歌など音楽の再生機器としてヘッドホン型再生機器は周知の技術(必要であれば、文献3の段落【0056】及び図5(b)、文献4の段落【0012】、【0013】、図1、文献5の実用新案登録請求の範囲、文献6の要約等を参照。)である。そして、使用者が頭部をヘッドレスト等の頭部支持体に支持させて装着したときに、ヘッドホン下部が当該頭部支持体に当たらないような形状、構造及び大きさを有していることも周知の技術(必要であれば、文献3の図5(b)、文献4の図1等を参照。)である。してみると、引用発明の再生機器として、そのようなヘッドホンを備えたヘッドホン型再生機器を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。
ここで、使用者が頭部を頭部支持体に支持させて装着したときに当該頭部支持体に当たらないような形状、構造及び大きさを有するヘッドホン下部は、使用者が寝てヘッドホンを装着したときに床に当たらないものであるといえる。また、ヘッドホン下部を削って作製するかどうかは、製造工程上の単なる設計事項にすぎない。

3 本願発明の効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載の事項、及び、周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載の事項、及び、周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-08-11 
結審通知日 2020-08-18 
審決日 2020-09-04 
出願番号 特願2015-85501(P2015-85501)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 落合 弘之家辺 信太郎  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 莊司 英史
和田 将彦
発明の名称 ガンの治療方法及びその治療具  
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