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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R |
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管理番号 | 1367777 |
審判番号 | 不服2019-12827 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-09-26 |
確定日 | 2020-11-05 |
事件の表示 | 特願2016- 32324号「車両用コントロールユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開,特開2017-149225号〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年2月23日の出願であって,平成31年2月5日付けで拒絶理由を通知し,同年4月10日に意見書とともに手続補正書が提出されたが,令和1年6月27日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされ,これに対して,同年9月26日に本件拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され,令和2年5月26日付けで当審による拒絶理由が通知され,同年7月30日に意見書とともに手続補正書が提出された。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし2に係る発明は,令和2年7月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりである。 「【請求項2】 タッチセンサと, 車両に搭載された機器を操作するアプリケーションを起動するオブジェクトを含む第1メニュー画面を表示する表示部と, 前記タッチセンサから取得する制御情報に応じて,前記オブジェクトに対応するアプリケーションを起動するコントローラと を備え, 前記コントローラは,前記制御情報が少なくとも2点のタッチが検出されながら入力された,少なくとも1回折れ曲がる経路に沿ったジェスチャーを含むスライド入力である場合,前記第1メニュー画面を,前記第1メニュー画面と異なる第2メニュー画面に切り替える車両用コントロールユニット。」 第3 当審の拒絶の理由 令和2年5月26日付けで当審が通知した拒絶の理由のうちの理由1及び2について請求項2に関する拒絶の理由の概要は,以下のとおりである。 1(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は,本件特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 2(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,本件特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <理由1> ・請求項 2 ・引用文献 1 <理由2> ・請求項 2 ・引用文献 1 請求項2に係る発明は,引用文献1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 <<引用文献等一覧>> 引用文献1:特開2015-22766号公報 第4 引用文献の記載事項,引用発明 (1)引用文献1の記載事項 引用文献1には,以下の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 ユーザから車両への対話型操作のためのシステムであって, 1または複数の入力を受け取るように構成され,1または複数の感知領域と1または複数の輪郭形成された縁部とを含み,該輪郭形成された縁部のうちの1または複数は,該タッチパッドへの前記入力のうちの1または複数を感知するように構成される該タッチパッドと, 前記入力のうちの1または複数を1または複数のユーザ・インターフェース・アプリケーションへ所定の経路を介して送るように構成されたユーザ・インターフェース・コンポーネントと, 前記ユーザ・インターフェース・アプリケーションのうちの1または複数を表示するように構成されたディスプレイ・コンポーネントとを具備し, 前記ユーザ・インターフェース・コンポーネントは,プロセッシング・ユニットによって実装されることを特徴とするシステム。」 ・「【請求項8】 前記ユーザ・インターフェース・コンポーネントは,前記タッチパッドで受け取られる前記入力のうちの1または複数に基づいて,前記ユーザ・インターフェース・アプリケーションのうちの1または複数と関連した1または複数のオブジェクトを操作するように構成される請求項1に記載のシステム。」 ・「【請求項 18】 前記ユーザ・インターフェース・アプリケーションのうちの1または複数と関連した1または複数の音声アラートを提供するように構成されたオーディオ・コンポーネントを含む請求項17に記載のシステム。」 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は,ユーザから車両への対話型操作のためのシステムおよび方法に関する。 【背景技術】 【0002】 車両は、しばしば、ナビゲーション装置またはマルチメディア装置を備えている。時には、これらの装置は、タッチスクリーン・ディスプレイを備えている。例えば、ナビゲーション装置は、ユーザからの入力を受け取るタッチスクリーンを備えていてもよい。しかし、ユーザが対象(オブジェクト)を選ぶためにオブジェクト上で指を動かすとき、タッチスクリーン表示上のオブジェクトはユーザから隠されるかもしれない。更に、ユーザがタッチスクリーンの上方で指を彷徨わせるとき、タッチスクリーンが埃または塵に敏感である場合、或いは、タッチスクリーンを過って押してしまう場合がある。更に、ユーザが選択をするためにタッチスクリーンに触った後、ディスプレイ上にユーザの指紋が残るかもしれない。」 ・「【課題を解決するための手段】 【0005】 1または複数の実施の形態において,UIコンポーネントは,車両もしくはナビゲーション・システム等のような車両のシステムとユーザとの間の対話を容易にするために前記入力のうちの1または複数を前記UIアプリケーションのうちの1または複数へ所定経路を経て送ることができる。 ヒント・コンポーネントは,UIまたはUIアプリケーションのための1または複数の可能な入力についてユーザに気付かせるために,ユーザにヒントを提供することができる。 すなわち,ヒントは,(それがなければユーザが気付かないかもしれない)可能な動作または利用できる特徴を示すことができる,例えば,ヒント・コンポーネントは,ユーザが以前に使わなかったか,または,一定の期間内に使わなかった特徴のために可能な入力についてユーザに気付かせることができる。」 ・「【0010】 図1は,1または複数の実施の形態による,ユーザから車両への対話型操作のためのタッチパッド100の1例を示す図である。図1のタッチパッド100は,1または複数の感知領域110,および,輪郭形成された1または複数の縁部120A,120B,120C,および,120Dを有することができる。更に,タッチパッド100はスイッチ102またはボタンを有することができる。このようにして,タッチパッド100は,スイッチ102,1または複数の感知領域110,或いは,輪郭形成された1または複数の縁部120A,120B,120C,および,120Dからの1または複数の入力を受け取るように構成され得る。タッチパッド100で受け取られる1または複数の入力は,ユーザ・インターフェース(UI),或いは,1または複数のUIアプリケーションに(例えば,所定の経路を経て)送られ得る。 【0011】 1または複数の実施の形態において,タッチパッド100の1または複数の部分は,ユーザが車両運転中にタッチパッド100の対話型操作をするために触覚によるガイドを提供するように輪郭形成したものにするか,或いは,上記ガイドを提供するようにテクスチャ形成したものとすることができる。すなわち,ユーザまたは運転者が道路への注意を維持しつつタッチパッド100の周りを「手探りする」ことができるように,タッチパッド100は,1または複数の凹部,或いは,1または複数の頂部を有するように形成してもよい。これにより,より安全な運転を促進することができる。更に,タッチパッド100は,ユーザがタッチパッド100を必ずしも見なくてもタッチパッド100上の指の位置を特定できるようにテクスチャ形成されていてもよい。」 ・「【0022】 図2は,1または複数の実施の形態による,ユーザから車両への対話型操作のためのシステムの1例200を示す図である。1または複数の実施の形態において,図2のシステム200は,タッチパッド100,スイッチ202,ディスプレイ・コンポーネント204,ユーザ・インターフェース(UI)コンポーネント206,ヒント・コンポーネント208,マルチメディア・コンポーネント210,フォブ(fob)コンポーネント212,および,オーディオ・コンポーネント214を含む。 【0023】 図2のタッチパッド100は図1のタッチパッド100に類似する1または複数の特徴を有することができる。類似する特徴は,例えば,1または複数の輪郭形成された縁部,1または複数の感知領域,輪郭,テクスチャ,その他を含む。タッチパッド100は,ユーザが1または複数の入力を行うこと(例えば,ディスプレイ・コンポーネント204上で1つのUIの1または複数のオブジェクトを操作すること)を可能にすることによって,ユーザがシステム200に接続し,ディスプレイ・コンポーネント204と対話型操作を行うことを可能にする。このように,タッチパッドは1または複数の入力を受け取るように構成されてもよい。換言すると,タッチパッド100はヒューマン・マシン・インタフェース(HMl)の一部であり得る。 ・「【0028】 UIコンポーネント206は,前記入力のうちの1または複数を1または複数のUIアプリケーションへ所定の経路で送るように構成され得る。言い換えると,UIコンポーネント206は1人以上のユーザからの入力を管理することができて,UIアプリケーションのうちの1または複数からの応答として,1または複数の動作を実行することができる。例えば,UIは,1または複数のアイコンまたは1または複数のUIオブジェクトを有するホーム画面を含むかもしれない。ユーザがアイコンのうちの1つをクリックする(例えば,入力を提供する)ためにタッチパッド100またはスイッチ202を使用するとき,例えば,UIコンポーネント206は対応するアプリケーションを開くことができる。このように,UIコンポーネント206は,ユーザが,前記入力のうちの1または複数に基づいて,UIアプリケーションのうちの1または複数と関連している1または複数のオブジェクトを操作することを可能にする。例えば,UIコンポーネント206は,ユーザが,ディスプレイ・コンポーネント204上に表示される1または複数の項目または1または複数のオブジェクトを操作することを可能にすることができる。これらのオブジェクトは,UIアプリケーションのうちの1または複数と関連付けられていてもよい。 ・「【0030】 1または複数の実施の形態において,UIは1または複数のアイコンまたは1または複数のアイコン・オブジェクトを有するホーム画面を有することができる。 UIは,タッチパッド100またはスイッチ202と関連付けられ得るカーソルを有することができる。一例として,カーソルは,タッチパッド100またはスイッチ202によって受け取られる入力に基づいてディスプレイ・コンポーネント204によって表示され得る。1または複数の実施の形態において,UIコンポーネント206は,タッチパッド100またはスイッチ202から受け取られる入力に基づいて1または複数のメニュー項目または1または複数のメニュー・オブジェクトの選択を可能にするように構成され得る。例えば,(例えば,輪郭形成された1つの縁部または1つの感知領域のような)タッチパッドの1または複数の部分をクリックすることによってメニュー選択がなされ得る。 【0031】 UIコンポーネント206は,タッチパッド100またはスイッチ202のような入力コンポーネントと,車両上の1または複数のシステム,車両上の1または複数のサブシステム,1または複数の(図示しない)コントローラエリアネットワーク(CAN)等との間のコミュニケーションを可能にするように構成され得る。例えば,タッチパッド100は,車両上のナビゲーション・システムのための入力装置として使われ得る。他の例では,タッチパッド100は,車両と連携またはリンクしたナビゲーション・アプリケーションと協働する入力装置として使われ得る。言い換えると,もし,ユーザが,(例えば,図示しないインターフェース・コンポーネントを介して,)ナビゲーション・アプリケーションを装備したモバイル機器を車両に接続するならば,ディスプレイ・コンポーネント204はモバイル機器のコンテンツを表示するように構成され得,タッチパッド100は,受け取られた1または複数の入力をこのモバイル機器に送るように構成され得る。更に,UIコンポーネント206は,(例えば,フォーマッティング,アスペクト比等を考慮することによって)モバイル機器からのコンテンツをディスプレイ・コンポーネントへマッピングするように構成され得る。 ・「【0032】 UIコンポーネント206は,タッチパッド100とスイッチ202とから受け取られる様々の入力に応答するようにプログラムされ得る。例えば,輪郭形成された1つの縁部と1つの感知領域とに関連した2本指のスワイプは,次のホーム画面へと順に切り替えるコマンドと解釈され得る。他の例として,図1の輪郭形成された縁部120Aと関連した入力がタッチパッド100から受け取られるとき,UIコンポーネント206は,ディスプレイ・コンポーネント204の最上部からメニューを始めてもよい。言い換えると,UIコンポーネント206は,輪郭形成された1つの縁部から受け取られる入力に基づいて,ディスプレイ・コンポーネント204の画面の一部から始まるメニューを表示するように構成され得る。例えば,図1の輪郭形成された縁部120Cと関連した入力が,ディスプレイ・コンポーネント204の画面の底からポップアップするメニューを表示させ得る。 ・「【0036】 ヒント・コンポーネント208は,1または複数のヒントまたはコンテクストに応じたヘルプを提供するように構成され得る。すなわち,ヒント・コンポーネント208は,1つのUIの1または複数のUIアプリケーションのための1または複数の可能な入力に関連した複数のヒントを提供することができる。可能な入力は,上記UIの1または複数のUIアプリケーションの1または複数の特徴と関連付けられていてもよい。1または複数の実施の形態においては,UIコンポーネント206は,2種類以上の異なる入力によって達成される動作を許容することができる。例えば,ソフトウェア・ボタンによって,ユーザは,複数のホーム画面を順に切り替えるようにすることができる。2本指のスワイプがタッチパッド100から受け取られるとき,UIコンポーネント206もまた,複数のホーム画面を順に切り替えるようにすることができる。このためには,ヒント・コンポーネント208は,ユーザがソフトウェア・ボタンを使ってホーム画面を順に切り替える時に2本指のスワイプを提案するように構成されてもよい。これにより,例えば,1または複数の付加的なオプションまたは可能な入力についてユーザに気付かせることができる。」 ・「【0046】 1または複数の実施の形態において,オーディオ・コンポーネント214は,1または複数の音声アラートをUIアプリケーションのうちの1または複数に提供するように構成され得る。例えば,スイッチ202が「ON」状態にあるとき,オーディオ・コンポーネント214は,ユーザに1または複数のアラート,メッセージ,または,通知等を知らせるためにテキスト読み上げ(TTS)システムを提供することができる。他の複数の実施の形態においては,オーディオ・コンポーネントは,1または複数の実行中の機能,1または複数の可能な動作等をユーザまたは運転者に対して音声で読み上げるように構成され得る。これにより,より安全な運転が容易になる。 【0047】 図3は,1または複数の実施の形態による,ユーザから車両への対話型操作のためのシステム300の1例を示す図である。システム300は,ディスプレイ・コンポーネント204,(図示しない)UIコンポーネント,および,タッチパッド100を有することができる。タッチパッド100は,1または複数の感知領域110と1または複数の輪郭形成された縁部120とを有することができる。1または複数の態様によれば,タッチパッド100は位置304に凹部を有してもよい。 例えば,位置304に対応する中心位置でディスプレイ・コンポーネント204上にカーソル302が表示され得るように,上記の凹部は運転者のための基準点として使われ得る。タッチパッド100は,1つのUIによるナビゲーションを可能にするために用いられ得る。ここで,UIは,メニュー・オブジェクト310,320,330等のような1または複数のオブジェクトを有することができる。1または複数の実施の形態においては,操作または入力がタッチパッド100によって感知されないとき,メニュー・オブジェクト310,320,330のうちの1または複数はUIコンポーネントによって隠され得る。このことは,UIアプリケーションと入力またはメニューとの間での切り替えを可能にする。」 ・「【0056】 図7は,本明細書に開示された1または複数の実施の形態を実現するように設定されたコンピューティング装置712を含むシステム700を例示する。1つの構成においては,コンピューティング装置712は少なくとも1つのプロセッシング・ユニット716およびメモリ718を含む。メモリ718は,コンピューティング装置のタイプと精密な設定により,RAMのような揮発性メモリ,ROMやフラッシュ・メモリ等の不揮発性メモリ,または,揮発性メモリと不揮発性メモリとの組み合わせでもよい。この構成は,図7では破線714によって示される。」 引用文献1には,図1?図3,図7の内容が図示されている。 (2)引用発明 これらの記載事項からみて,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「タッチパッド100への入力のうちの1または複数を感知するように構成されるタッチパッド100と, 前記入力のうちの1または複数を1または複数のユーザ・インターフェース・アプリケーションへ所定の経路を介して送るように構成されたユーザ・インターフェース・コンポーネント206と, 前記ユーザ・インターフェース・アプリケーションのうちの1または複数を表示するように構成されたディスプレイ・コンポーネント204とを具備し, 前記ユーザ・インターフェース・コンポーネント206は,プロセッシング・ユニットによって実装される,ユーザから車両への対話型操作のためのシステム200であって, 前記タッチパッド100は,ユーザが1または複数の入力を行うことを可能にすることによって,ユーザがシステム200に接続し,ディスプレイ・コンポーネント204と対話型操作を行うことを可能にし, 前記ユーザ・インターフェース・コンポーネント206は,前記タッチパッド100で受け取られる前記入力のうちの1または複数に基づいて,前記ユーザ・インターフェース・アプリケーションのうちの1または複数と関連した,ディスプレイ・コンポーネント204上に表示される1または複数のオブジェクトを操作するように構成され, 前記ユーザ・インターフェース・コンポーネント206は,タッチパッド100のような入力コンポーネントと,車両上の1または複数のシステム等との間のコミュニケーションを可能にするように構成され 前記ユーザ・インターフェース・アプリケーションのうちの1または複数と関連した1または複数の音声アラートを提供するように構成されたオーディオ・コンポーネント214を含み, 前記ユーザ・インターフェース・コンポーネント206は1または複数のアイコン・オブジェクトを有するホーム画面を有することができ, 2本指のスワイプがタッチパッド100から受け取られるとき,前記ユーザ・インターフェース・コンポーネント206も,複数のホーム画面を順に切り替えるようにすることができる, ユーザから車両への対話型操作のためのシステム200。」 第5 対比・判断 1.発明の対比 ア.本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「タッチパッド100」は「入力のうちの1または複数を感知するように構成される」から前者の「タッチセンサ」に相当し,以下同様に,「オーディオ・コンポーネント214」は「車両に搭載された機器」に,「ユーザ・インターフェース・アプリケーション」は「アプリケーション」に,「オブジェクト」及び「アイコン・オブジェクト」は「オブジェクト」に,「ディスプレイ・コンポーネント204」は「表示部」に,「1または複数のアイコン・オブジェクトを有するホーム画面」は「オブジェクトを含む第1メニュー画面」に,「プロセッシング・ユニット」は「コントローラ」に,「ユーザから車両への対話型操作のためのシステム200」は「車両用コントロールユニット」に,それぞれ相当する。 イ.後者の「前記ユーザ・インターフェース・アプリケーションのうちの1または複数と関連した1または複数の音声アラートを提供するように構成されたオーディオ・コンポーネント214を含」むことは,「オーディオ・コンポーネント214を操作する前記ユーザ・インターフェース・アプリケーション」といえ,後者の「前記ユーザ・インターフェース・コンポーネント206は,前記タッチパッド100で受け取られる前記入力のうちの1または複数に基づいて,前記ユーザ・インターフェース・アプリケーションのうちの1または複数と関連した,ディスプレイ・コンポーネント204上に表示される1または複数のオブジェクトを操作するように構成され」ることは,「前記ユーザ・インターフェース・アプリケーションを起動するオブジェクトを含んで表示するディスプレイ・コンポーネント204」といえるとともに,「前記ユーザ・インターフェース・コンポーネント206は1または複数のアイコンオブジェクトを有するホーム画面を有する」から,「アイコン・オブジェクトを含むホーム画面を表示するディスプレイ・コンポーネント204」ともいえる。 これらの事項と上記ア.の相当関係を踏まえると,後者の「ディスプレイ・コンポーネント204」は,前者の「車両に搭載された機器を操作するアプリケーションを起動するオブジェクトを含む第1メニュー画面を表示する表示部」に相当する。 ウ.後者は,「前記ユーザ・インターフェース・コンポーネント206は,前記タッチパッド100で受け取られる前記入力のうちの1または複数に基づいて,前記ユーザ・インターフェース・アプリケーションのうちの1または複数と関連した,ディスプレイ・コンポーネント204上に表示される1または複数のオブジェクトを操作するように構成され」,「前記ユーザ・インターフェース・コンポーネント206は,プロセッシング・ユニットによって実装される」ものであるから,実装する後者の「プロセッシング・ユニット」は,「前記タッチパッド100で受け取られる前記入力に基づいて」「オブジェクト」に「関連した」「前記ユーザ・インターフェース・アプリケーション」を起動するものといえ,「タッチパッド100」は受け取られる前記入力に基づいて,何らかの制御情報を取得し,この制御情報に応じて「オブジェクト」に対応する「前記ユーザ・インターフェース・アプリケーション」を起動することは,技術常識からして明らかである。 これらの事項と上記ア.の相当関係を踏まえると,後者の「プロセッシング・ユニット」は前者の「前記タッチセンサから取得する制御情報に応じて,前記オブジェクトに対応するアプリケーションを起動するコントローラ」に相当する。 エ.後者の「2本指のスワイプ」と,前者の「2点のタッチが検出されながら入力された,少なくとも1回折れ曲がる経路に沿ったジェスチャーを含むスライド入力」とは,「2点のタッチが検出されながら入力された所定のジェスチャーを含むスライド入力」において共通し,実装する後者の「プロセッシング・ユニット」は「2本指のスワイプがタッチパッド100から受け取られるとき,前記ユーザ・インターフェース・コンポーネント206も,複数のホーム画面を順に切り替えるようにする」から,上記ウ.と上記ア.の相当関係を踏まえると,後者の「プロセシング・ユニット」と,前者の「前記コントローラは,前記制御情報が少なくとも2点のタッチが検出されながら入力された,少なくとも1回折れ曲がる経路に沿ったジェスチャーを含むスライド入力である場合,前記第1メニュー画面を,前記第1メニュー画面と異なる第2メニュー画面に切り替える」こととは,「前記コントローラは,前記制御情報が少なくとも2点のタッチが検出されながら入力された,所定のジェスチャーを含むスライド入力である場合,前記第1メニュー画面を,前記第1メニュー画面と異なる第2メニュー画面に切り替える」ことにおいて共通する。 オ.後者の「ユーザから車両への対話型操作のためのシステム200」は,前述したように前者の「車両用コントローラ」に相当し,「タッチパッド100」と「ディスプレイ・コンポーネント204」と「プロセッシング・ユニット」を備えることは明らかである。 カ.そうすると,両者は, 「タッチセンサと, 車両に搭載された機器を操作するアプリケーションを起動するオブジェクトを含む第1メニュー画面を表示する表示部と, 前記タッチセンサから取得する制御情報に応じて,前記オブジェクトに対応するアプリケーションを起動するコントローラと を備え, 前記コントローラは,前記制御情報が少なくとも2点のタッチが検出されながら入力された,所定のジェスチャーを含むスライド入力である場合,前記第1メニュー画面を,前記第1メニュー画面と異なる第2メニュー画面に切り替える車両用コントロールユニット。」 の点で一致し,以下の点で相違する。 <相違点> 所定のジェスチャーを含むスライド入力について,本願発明では,「少なくとも2点のタッチが検出されながら入力された,少なくとも1回折れ曲がる経路に沿ったジェスチャーを含むスライド入力」であるのに対して,引用発明では,「2本指のスワイプ」である点。 2.相違点の判断 例えば,米国特許公開第2013/0061163号明細書には,タッチスクリーン使用可能な装置上で実行することのできるジェスチャの例として,チェックマーク図形を画面上に1本以上の指で辿ること及び反転チェックマーク図形を画面上に1本以上の指で辿ることが記載され,特表2015-533001号公報には,タッチパッドへの複雑なジェスチャの入力として,ジグザクのジェスチャや2本指によるジャスチャが記載されているように,タッチセンサに対する「2点のタッチが検出されながら入力された,少なくとも1回折れ曲がる経路に沿ったジェスチャーを含むスライド入力」は,本願出願前において周知の事項といえる。必要があれば,米国特許公開2013/0061163号明細書の以下の記載事項({}内は当審による訳文である。),「[0058]Described herein are various gestures that may be used increating and editing molecular structures that are rendered as a two or threedimensional structure on a display. The gestures may be performed on atouch-screen enabled device.」 {本明細書では,ディスプレイ上に2次元又は3次元構造としてレンダリングされる)分子構造を作成および編集することに使用することができる様々なジェスチャである。ジェスチャは,タッチスクリーン使用可能な装置上で実行することができる。} 「[0065]・・・Difnitions of Some Additional Gestures ・・・ [0076] Checkmark: Trace a checkmark figure withone or more fingers on the screen. [0077]Inverted Checkmark: Trace aninverted checkmark figure with one or more fingers on the screen.」 {[0065]・・・ いくつかの追加のジェスチャの定義である。 ・・・ [0076] チェックマーク:チェックマーク図形を画面上に1本以上の指で辿る。 [0077]反転Checkmark:反転チェックマーク図形を画面上に1本以上の指で辿る。} ,及び,特表2015-533001号公報の段落の段落【0050】「 容易に認識されるように,これは単なる一例であり,代替として異なるジェスチャ(例えば真下へのストローク)又はより複雑なジェスチャ(例えば円状のジェスチャやジグザグのジェスチャあるいは2又はそれ以上の指によるジェスチャ)を使用して,異なる領域を有しない仮想タッチパッドを持ってきてもよい。」の記載事項を参照のこと。 そうすると,引用発明を開示する引用文献1の段落【0002】に「タッチスクリーンを過って押してしまう場合がある。」と記載されるように,誤動作を防止することは自明な課題であるとともに,引用発明も上記周知の事項も,「2点のタッチが検出されながら入力された,ジェスチャーを含むスライド入力」である点で共通しているから,引用発明に上記周知の事項を適用して,上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本願発明の効果について検討しても,引用発明及び上記周知の事項から予測されるものであって格別なものとはいえない。 したがって,本願発明(請求項2に係る発明)は,引用発明及び上記周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 請求人の主張について 請求人は,令和2年7月30日に提出した意見書において,以下のように主張する。 「(2b)理由2(進歩性)について 本願発明2は,「少なくとも2点のタッチが検出されながら入力された,少なくとも1回折れ曲がる経路に沿ったジェスチャーを含むスライド入力である場合,前記第1メニュー画面を,前記第1メニュー画面と異なる第2メニュー画面に切り替える」という発明特定事項を有することによって,「ユーザが意図しないメニューの切り替えが発生する可能性を減らせる」([0048])という,引用発明にはない,顕著な効果を奏するものです。 また,メニュー画面を切り替えるために単なるスワイプではない,少なくとも1回折れ曲がる経路に沿ったジェスチャーを含むスライド入力を求めることによって,ユーザが意図しないメニューの切り替えが発生する可能性がより一層減らされます。 そうしてみますと,引用発明において,一方向へスライドする単なるスワイプの代わりに,単なるスワイプではない,少なくとも1回折れ曲がる経路に沿ったジェスチャーを含むスライド入力(例えば,図形や文字を表す経路に沿ってスライドする操作入力)を採用することは容易になし得ることではないと思料致します。 よって,本願発明2は,引用文献1に基づいて容易に想到し得るものではなく,引用文献1に対して進歩性を有すると思料致します。」 しかしながら,「第5 2.」において述べたように,「少なくとも2点のタッチが検出されながら入力された,少なくとも1回折れ曲がる経路に沿ったジェスチャーを含むスライド入力」が本願出願前に周知の事項であって,引用発明に上記周知の事項を適用して,本願発明の発明特定事項とすることは容易である。 したがって,請求人の上記主張は採用することができない。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明(請求項2に係る発明)は,引用発明及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 そうすると,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-08-25 |
結審通知日 | 2020-09-01 |
審決日 | 2020-09-15 |
出願番号 | 特願2016-32324(P2016-32324) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B60R)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐伯 憲太郎、桜井 茂行 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 島田 信一 |
発明の名称 | 車両用コントロールユニット |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 内海 一成 |
代理人 | 河合 隆慶 |