• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1367894
審判番号 不服2020-2591  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-26 
確定日 2020-12-01 
事件の表示 特願2015-152051「端末装置、および端末制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開、特開2017- 29369、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年7月31日の出願であって、平成30年7月23日付けで手続補正書が提出され、平成31年4月5日付けで拒絶理由が通知され、令和元年8月8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年11月19日付けで拒絶査定(原査定)されたところ、令和2年2月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において同年7月10日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の理由
原査定(令和元年11月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(新規性)この出願の請求項4及び7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(進歩性)この出願の請求項4及び7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献A:特開2004-166979号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2008-284273号公報(当審において新たに引用した文献)
引用文献2:特開平7-303654号公報(当審において新たに引用した文献)
引用文献3:特開2004-166979号公報(拒絶査定時の引用文献A)

第4 本願発明
本願請求項1?3に係る発明(以下それぞれ請求項の番号に従って「本願発明1」などという。)は、令和2年9月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
複数の眼科装置を操作するための端末装置であって、
前記複数の眼科装置と通信を行う通信手段と、
前記眼科装置を操作するための操作領域を表示する表示手段と、検者からの操作を受け付ける操作受付手段と、を有し、前記複数の眼科装置のうち、少なくとも一つの操作対象の眼科装置を選択する選択指示を受け付ける選択受付手段と、
前記通信手段によって、前記操作対象の眼科装置に制御信号を送信する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、第1眼科装置を操作するための第1操作領域と、前記第1眼科装置とは異なる第2眼科装置を操作するための第2操作領域とを前記表示手段に同時に表示させ、前記第1眼科装置によって撮影された第1観察画像と、前記第2眼科装置によって撮影された第2観察画像とを前記通信手段によって各眼科装置から取得し、前記第1観察画像を前記第1操作領域に表示させ、前記第2観察画像を前記第2操作領域に表示させ、前記操作受付手段によって受け付けた前記第1観察画像に対する操作に基づいて、前記第1眼科装置の検眼部をXYZ方向に移動させるための第1制御信号を前記第1眼科装置に送信し、前記操作受付手段によって受け付けた前記第2観察画像に対する操作に基づいて、前記第2眼科装置の検眼部をXYZ方向に移動させるための第2制御信号を前記第2眼科装置に送信することを特徴とする端末装置。」

なお、本願発明2及び3の概要は以下のとおりである。

本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明3は、本願発明1に対応する端末制御プログラムの発明である。

第5 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について

(1)引用文献1の記載
上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引1ア)
「【0015】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る眼科遠隔診断システムの実施形態を詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態の眼科遠隔診断システム10は、被検者(患者)Aやこの患者Aをサポートする眼科が専門でない医師や看護師等の補助者Bが待機する眼科の検査サイト11と、眼科の専門医(眼科医)Cが待機する診断サイト12とを有し、前記検査サイト11と診断サイト12とが高速の通信回線13で結ばれた構成となっている。
【0016】
前記検査サイト11としては、眼科の専門医が常駐していない過疎地等の病院や診療所を想定している。この検査サイト11には、眼科検査機器の一つである細隙灯顕微鏡を中心とした眼科検査装置20が備えられている。一方、診断サイト12としては、眼科の専門医が常駐している都心部等の総合病院あるいは眼科の専門医院等を想定しており、ここには、前記眼科検査装置20を遠隔操作するための汎用コンピュータや制御プログラムからなるユーザインターフェース手段14が設けられている。なお、前記検査サイト11は、前記眼科検査装置20が備えられ、診断サイト12は、眼科医Cが診断を行える場所であればよく、病院などの特定の場所に限定されるものではない。」

(引1イ)
「【0017】
前記眼科検査装置20は、図2に示すように、一般的な細隙灯顕微鏡としての基本的な機能を備えた顕微鏡本体21と、この顕微鏡本体21に備わるスリット照明部22や顕微鏡カメラ23を操作する複数の駆動軸からなる駆動部24と、前記顕微鏡本体21によって捕捉される患者の眼を撮像する顕微鏡カメラ23からなる観察部25とを備えている。前記顕微鏡本体21は、直接眼科医が操作する一般的な構造のものであり、前記スリット照明部22や観察部25の他に患者の顎を載せて検査位置を定める顎台部26やこの顎台部26を昇降させる可動式の支持台部27とを備えて構成されている。前記駆動部24は、前記スリット照明部22から発せられるスリット光を遠隔操作によって自動で患者の眼に合わせて操作したり、前記顕微鏡カメラ23を所定位置に移動させたりするために設けられている。この駆動部24は、前記スリット光を患者の眼の検査位置に照準を合わせるために前記スリット照明部22を水平方向(X軸及びY軸)及び垂直方向(Z軸)に移動自在なスリット照明移動機構部28と、スリット光の照射角度を可変するチルト軸32、スリット光のスキャニングを行う横振り軸33、スリット光を回転させる回転軸34、スリット光の幅や長さを可変するスリット調整軸35,36、フィルタ交換機構部37などで構成されている。また、前記観察部25は、自動焦点機構や倍率調整機構を有する顕微鏡カメラ23が取り付けられ、前記スリット照明部22に対して水平方向に回動可能な観察架台38とともに前記駆動部24によって駆動制御される。
【0018】
前記スリット照明移動機構部28は、前記スリット照明部22の台座部22aを眼科医又は患者から見て左右方向に往復移動させるX軸駆動部29と、前後方向に往復移動させるY軸駆動部30と、上下方向に往復移動させるZ軸駆動部31と、前記X軸,Y軸及びZ軸上で移動した位置で回転させる回転駆動部39とで構成され、スリット照明部22全体の3次元駆動が可能となっている。その他のチルト軸32、横振り軸33、回転軸34、スリット調整軸35,36、フィルタ交換機構部37には、それぞれ図示しない小型のモータが組み込まれている。観察部25に備えられている観察架台38のスリット光を中心とした周回移動は、前記回転駆動部39によって駆動される。
【0019】
前記駆動部24は、各駆動軸に配置される数値制御可能で精密な動きをするDCモータやステッピングモータが使用され、通信回線13を介した場合であっても操作遅延を生じさせないようにリアルタイムで駆動制御される。図3は前記眼科検査装置20を備える検査サイト11内のシステム構成を示すブロック図である。図3に示されるように、前記駆動部24は、前記各駆動軸を診断サイト12からの指令に基づいてリアルタイム駆動させるためのリアルタイム制御部41を備えたハードウェアインターフェース手段40を介して駆動制御される。このハードウェアインターフェース手段40は、前記リアルタイム制御部41の他に、顕微鏡カメラ23で撮像される患者の眼の観察像を取り込むためのビデオスイッチャ42と、このビデオスイッチャ42によって選択された映像を伝送させるための映像音声伝送部43と、診断サイト12からの駆動制御信号を取り入れたり、前記映像音声伝送部43から伝送される顕微鏡カメラ23の観察像を診断サイト12に送出させたりするためのネットワークスイッチ44とを備える。」

(引1ウ)
「【0021】
前記診断サイト12には、図4及び図5に示すように、通信回線13を介して前記検査サイト11に備わる眼科検査装置20の駆動部24及び観察部25を遠隔操作及びモニタリングするためのユーザインターフェース手段50が備えられている。このユーザインターフェース手段50は、モニタ60,キーボード63,ポインティングデバイス(ジョイスティック)64,マイク68などの周辺機器を備える汎用のパソコン51と、このパソコン51にインストールされ、前記ハードウェアインターフェース手段40を介して眼科検査装置20の各駆動軸を駆動させたり、観察部25から送られる顕微鏡カメラ23からの観察像17を表示させたりするための診断側のコントローラとしての機能を含む制御プログラム52とを備えて構成されている。なお、前記ジョイスティック64は、一般的な顕微鏡本体21に備わり、スリット照明部22を手動で駆動させる操作レバーと略同じ動きをする。
【0022】
前記制御プログラム52は、図5に示されるように、通信回線13を介して制御信号及び映像信号のやりとりを行うためのネットワークスイッチ53、ルータ54と、眼科検査装置20からの患者の眼の観察像17及び検査サイト11内の患者の映像とを切り換えるビデオスイッチャ55と、眼科検査装置20の駆動部24や観察部25を駆動制御するリアルタイム制御部56と、前記顕微鏡カメラ23の移動位置を検出する顕微鏡カメラ位置検出部58と、診断サイト12内に設けられるコミュニケーション装置16の映像信号や音声信号を伝送するための映像音声伝送部57とで構成される。前記リアルタイム制御部56では、図4に示したようなジョイスティック64における3次元の動きを高速に数値データに変換し、通信回線13を介して眼科検査装置20の駆動部24に伝送する機能を有している。なお、前記通信回線13は、一般的なインターネット網を利用するが、顕微鏡カメラ23からの観察像17をリアルタイムに表示したり、眼科検査装置20に備わる各駆動軸の動きを素早く切り換えたりするため、ADSLや光による数十Mbps以上の高速通信回線を使用することができるが、特に、検査サイト11と診断サイト12との双方向通信を遅延なく円滑に行わせるために上り下りの速度に差のない光ファイバを用いた光通信を用いるのが好ましい。
【0023】
前記診断サイト12に備わるモニタ60は、図4に示したように、右側が患者の眼の顕微鏡映像を表示する診察モニタ61で、左側が眼科検査装置20の操作設定を行う制御モニタ62となっている。前記診察モニタ61は、診断の中心となるものであるため、見やすく細かな箇所まで鮮明に表示させる必要がある。このため、15インチ以上でフルカラー且つ高解像度のものが好ましい。この診察モニタ61は、従来の一般的な顕微鏡本体21に備わるアイピースと同じような、眼科医が実際に覗き込んで見る患者の眼の顕微鏡映像が映し出される。一方の前記制御モニタ62は、図6に示すように、タッチスクリーンパネルになっており、眼科検査装置20におけるスリット照明部22や顕微鏡カメラ23の駆動に伴う各種の設定を行うためのタッチ式のパネルスイッチ86やこのパネルスイッチ86の状態を示すスイッチ表示部87が設けられている。スリット照明部22の設定項目としては、レンズフィルタの選択、スリット光のオン/オフ操作、スリット光の入射角度の設定、スリット光の幅、長さ、量の設定を行うスリット光調整、前置レンズを右方向あるいは左方向からローテーションさせる回転設定などがある。顕微鏡カメラ23の設定項目としては、移動速度や観察倍率などがある。
【0024】
実際に眼科検査装置20を操作する場合は、前記制御モニタ62によって予めスリット照明部22や顕微鏡カメラ23の初期設定を行った上で、ジョイスティック64の操作レバー65aを握り、スリット光を患者の眼に照準を合わせる操作を行う。このジョイスティック64による操作は、前記診察モニタ61を見ながら前後左右に傾けることで、眼の動きや検査位置に追従するようになっている。また、前記操作レバー65aは、回転式スイッチとなっており、右方向や左方向に回転させることで、前記スリット照明部22を上下動させることができる。また、前記ジョイスティック64には、操作レバー65aの他にいくつかのスイッチボタン65bを設け、このスイッチボタン65bに前記制御モニタ62で設定するスリット照明部22や顕微鏡カメラ23の操作機能を付加することもできる。前記診察モニタ61及び制御モニタ62は、独立して構成されているので、配置は任意であるが、前記診察モニタ61を中心にした場合、制御モニタ62を左側に配置することで、スリット照明部22や顕微鏡カメラ23の設定は左手で行い、スリット光の照準合わせなどの細かい操作をジョイスティック64によって右手で操作することができる。なお、左利きの場合は、前記制御モニタ62を右側に配置し、左手でジョイスティック64を操作するようにすることができる。
【0025】
図6に示した制御モニタ62の画面構成は、前記眼科検査装置20の操作性を考慮した一つの例を示したものであり、左半分がスリット照明部22の設定や操作に関わるスリット光操作画面71である。また、右側の上段が前記コミュニケーション装置15,16によって撮影される検査サイト11内の様子を写す検査サイト映像画面72であり、下段が患者の眼をモニタリングしている顕微鏡カメラ23の設定を行う顕微鏡カメラ設定画面73となっている。前記スリット光操作画面71は、レンズフィルタの選択を行うレンズ設定部74、スリット光のオン/オフ操作を行うオン/オフ部75、スリット光の入射角度の設定を行う角度設定部76、スリット光の幅、長さ、量の設定を行うスリット光調整部77、前置レンズを右方向あるいは左方向からローテーションさせる回転設定部78などがある。顕微鏡カメラ設定画面73は、移動速度を可変させる移動速度設定部81や観察像17を拡大するための観察倍率設定部82が設けられる。
【0026】
前記制御モニタ62で設定された情報は、前記制御プログラム52及び通信回線13を介して検査サイト11のハードウェアインターフェース手段40に伝送され、リアルタイムに眼科検査装置20の所定の駆動軸を駆動する。また、顕微鏡カメラ設定画面73は、図6に示したように、前記顕微鏡カメラ23の移動速度や観察倍率を設定するためのパネルスイッチ類の他に、患者の眼に対して顕微鏡カメラ23の焦点がどこにあるかX-Y軸上で把握するためのモニタ座標軸83や顕微鏡カメラ23の移動速度あるいは観察倍率を目盛上に表示する目盛表示部84からなる情報表示部80が設けられている。前記モニタ座標軸83の左右に配置されている一対の方向スイッチ83a,83bは、顕微鏡カメラ23の焦点を素早く患者の右眼や左眼に移動させるためのものである。この方向スイッチ83a,83bをタッチすることによって、顕微鏡カメラ23の焦点を患者の左右どちらかの眼の中心位置に自動的にポジショニングさせることができる。
【0027】
また、前記顕微鏡カメラ設定画面73の下端には、計測記録スイッチ85が設けられている。この計測記録スイッチ85は、前記顕微鏡カメラ設定画面73で操作及び表示される顕微鏡カメラ23による観察の位置情報を記録させるためのものであり、患者の眼の観察すべき所定位置に移動したポイントでタッチすることで、後述する患部データ計測記録手段59に取り込ませることができる。なお、前記スリット光操作画面71や顕微鏡カメラ設定画面73に設けられている右、左と表示されているパネルスイッチは、検査している患者から見た右眼、左眼に対応させている。
【0028】
前記情報表示部80における顕微鏡カメラ23の位置情報などは、図5に示したように、患部データ計測記録手段59に取り込まれる。この患部データ計測記録手段59では、前記情報表示部80のモニタ座標軸83から前記診察モニタ61に映し出されている実際の患部の位置データが算出され、この位置データに基づいて前記患部の大きさや面積、体積などが計測される。ここで計測された各パラメータは、パソコン51内に保存したり、プリント出力などしたりすることで、前記患部における病変の改善や悪化などの状態を眼科医が的確に判定することが可能となる。」

(引1エ)
「【0030】
図6に示した制御モニタ62の各画面は、細隙灯顕微鏡からなる眼科検査装置20を眼科医が実際に操作する上での必要最小限の機能が盛り込まれて構成されている。また、前記眼科検査装置20に備わる各操作機能が選択設定しやすいように順番に配列されていると共に、タッチするパネルスイッチ86やスイッチ表示部87も大きく設定されているので、眼科医が診察モニタ61を見ながら左手で所定のパネルスイッチ86を特に注視することなくブラインドタッチ方式で操作することができる。
【0031】
前記モニタ60としては、診察モニタ61と制御モニタ62の2つがあれば、診察と、この診察における眼科検査装置20の各種設定とを同時に行うことができるが、前記検査サイト映像画面72を表示させるためのモニタを別途備えた構成にしたり、パソコンのように一画面の中に診察ウィンドウと制御ウィンドウとを並列あるいは切り換えながら表示させたりするように構成することもできる。前記モニタが複数あれば、患者の周囲の環境を確認しながら同時に眼の診断を行うことも可能である。一方、複数のウィンドウ構成による表示が可能な構成にすれば、携帯可能なノート型のパソコンに専用のソフトを組み込めば利用できるため、通常、病院内に設定される診断サイト以外の場所においても診断が可能となる。
【0032】
なお、本実施形態では、検査サイトと診断サイトとが一対一で結ばれたシステム構成を例示したが、通信回線として一般的なインターネット回線を利用しているため、複数の検査サイト及び診断サイト同士を結ぶことができる。このように、複数の検査サイトと繋がり、眼科検査装置が同一構成であれば、一つの診断サイトにおいて検査サイトを切り換えることで、複数の検査サイトに待機している複数の患者を順次診断することが可能となる。さらに、本実施形態では、眼科検査装置として、細隙灯顕微鏡を例について説明したが、診断サイトのユーザインターフェース手段や検査サイトのハードウェアインターフェース手段の構成や制御プログラムの一部を変更あるいは改良することで、前記細隙灯顕微鏡以外の例えば、眼底検査や角膜形状検査などの眼科診断用の検査機器や治療機器を用いた遠隔診断システムに応用することができる。」

(引1オ)図1


(引1カ)図2


(引1キ)図3


(引1ク)図4


(引1ケ)図5


(引1コ)図6


(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)の記載を整理する。

ア 【0017】「眼科検査装置20は、図2に示すように、一般的な細隙灯顕微鏡」、【0021】「前記診断サイト12には、図4及び図5に示すように、通信回線13を介して前記検査サイト11に備わる眼科検査装置20の駆動部24及び観察部25を遠隔操作及びモニタリングするためのユーザインターフェース手段50が備えられている。」、及び【0032】「通信回線として一般的なインターネット回線を利用しているため、複数の検査サイト及び診断サイト同士を結ぶことができる。このように、複数の検査サイトと繋がり、眼科検査装置が同一構成であれば、一つの診断サイトにおいて検査サイトを切り換えることで、複数の検査サイトに待機している複数の患者を順次診断することが可能となる。」との記載によれば、診断サイト12は、「複数の検査サイト11を切り換えることで、各検査サイト11に備わる細隙灯顕微鏡からなる眼科検査装置20の駆動部24及び観察部25を遠隔操作するためのユーザインターフェース手段50が備えられている診断サイト12」であることが分かる。

イ 上記アを踏まえると、【0022】「前記制御プログラム52は、図5に示されるように、通信回線13を介して制御信号・・・のやりとりを行うためのネットワークスイッチ53、ルータ54と、・・・で構成される。」との記載によれば、図5の診断サイト12(【0021】)は、「複数の検査サイト11と通信回線13を介して制御信号のやりとりを行うためのネットワークスイッチ53、ルータ54と」を備えていることが分かる。

ウ 【0023】「前記診断サイト12に備わるモニタ60は、図4に示したように、右側が患者の眼の顕微鏡映像を表示する診察モニタ61で、左側が眼科検査装置20の操作設定を行う制御モニタ62となっている。・・・前記制御モニタ62は、図6に示すように、・・・眼科検査装置20におけるスリット照明部22や顕微鏡カメラ23の駆動に伴う各種の設定を行うためのタッチ式のパネルスイッチ86・・・が設けられている。」、【0025】「図6に示した制御モニタ62の画面構成は、・・・左半分が・・・スリット光操作画面71である。また、右側の・・・下段が・・・顕微鏡カメラ設定画面73となっている。」との記載によれば、診断サイト12は、「患者の眼の顕微鏡映像を表示する診察モニタ61と、眼科検査装置20の操作設定を行う、スリット光操作画面71及び顕微鏡カメラ設定画面73を画面構成とする制御モニタ62とからなり、前記制御モニタ62は、眼科検査装置20におけるスリット照明部22や顕微鏡カメラ23の駆動に伴う各種の設定を行うためのタッチ式のパネルスイッチ86が設けられている、モニタ60」を備えていることが分かる。

エ 【0021】「前記診断サイト12には、図4及び図5に示すように、・・・ユーザインターフェース手段50が備えられている。このユーザインターフェース手段50は、・・・キーボード63,ポインティングデバイス(ジョイスティック)64・・・を備えて構成されている。」との記載によれば、診断サイト12は、「キーボード63、ポインティングデバイス(ジョイスティック)64」を備えていることが分かる。

オ 【0022】「前記制御プログラム52は、図5に示されるように、・・・眼科検査装置20の駆動部24や観察部25を駆動制御するリアルタイム制御部56と・・・で構成される。」との記載によれば、診断サイト12は、「眼科検査装置20の駆動部24や観察部25を駆動制御する制御プログラム52」を備えていることが分かる。

カ 【0026】「前記制御モニタ62で設定された情報は、前記制御プログラム52及び通信回線13を介して検査サイト11・・・に伝送され、リアルタイムに眼科検査装置20の所定の駆動軸を駆動する。また、顕微鏡カメラ設定画面73は、図6に示したように、・・・モニタ座標軸83の左右に配置されている一対の方向スイッチ83a,83bは、顕微鏡カメラ23の焦点を素早く患者の右眼や左眼に移動させるためのものである。この方向スイッチ83a,83bをタッチすることによって、顕微鏡カメラ23の焦点を患者の左右どちらかの眼の中心位置に自動的にポジショニングさせることができる。」、【0017】「前記眼科検査装置20は、図2に示すように、・・・顕微鏡カメラ23を操作する複数の駆動軸からなる駆動部24と、・・・を備えている。・・・この駆動部24は、前記スリット光を患者の眼の検査位置に照準を合わせるために前記スリット照明部22を水平方向(X軸及びY軸)及び垂直方向(Z軸)に移動自在なスリット照明移動機構部28と・・・で構成されている。」との記載によれば、診断サイト12は、「顕微鏡カメラ設定画面73の方向スイッチ83a,83bをタッチすることによって、顕微鏡カメラ23の焦点を患者の左右どちらかの眼の中心位置に自動的にポジショニングさせるために、眼科検査装置20の所定の駆動軸をXYZ方向に駆動させる情報を検査サイト11に伝送する」ことが分かる。

キ したがって、上記ア?カから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数の検査サイト11を切り換えることで、各検査サイト11に備わる細隙灯顕微鏡からなる眼科検査装置20の駆動部24及び観察部25を遠隔操作するためのユーザインターフェース手段50が備えられている診断サイト12であって、
複数の検査サイト11と通信回線13を介して制御信号のやりとりを行うためのネットワークスイッチ53、ルータ54と、
患者の眼の顕微鏡映像を表示する診察モニタ61と、眼科検査装置20の操作設定を行う、スリット光操作画面71及び顕微鏡カメラ設定画面73を画面構成とする制御モニタ62とからなり、前記制御モニタ62は、眼科検査装置20におけるスリット照明部22や顕微鏡カメラ23の駆動に伴う各種の設定を行うためのタッチ式のパネルスイッチ86が設けられている、モニタ60と、
キーボード63、ポインティングデバイス(ジョイスティック)64と、
眼科検査装置20の駆動部24や観察部25を駆動制御する制御プログラム52と、
を備え、
制御プログラム52は、顕微鏡カメラ設定画面73の方向スイッチ83a,83bがタッチされることによって、顕微鏡カメラ23の焦点を患者の左右どちらかの眼の中心位置に自動的にポジショニングさせるために、眼科検査装置20の所定の駆動軸をXYZ方向に駆動させる制御信号を検査サイト11に伝送する
診断サイト12。」

2 引用文献2について

(1)引用文献2の記載
上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引2ア)
「【0039】次に、集中表示パネル36及び集中制御パネル37における表示画面の構成及び機能を説明する。
【0040】本実施例の内視鏡システムにおいて、内視鏡的手術を行う際には、システムコントローラ35の制御により、集中表示パネル36に図7に示すような表示画面71を、集中制御パネル37に図8に示すような表示画面72をそれぞれ表示し、各パネルにおいて目的の装置の状態表示を視認できると共に目的の操作を行うことができるようにする。システムコントローラ35は、接続された各装置の設定値や装置からの状態信号を基に各パネルに目的の内容の状態表示を行う。また、各パネルにおける操作指示を受けて、システムコントローラ35は目的の装置に制御信号を送り、該装置の動作を制御する。
・・・
【0042】集中制御パネル37の表示画面72は、手術中に看護婦が目的の装置の操作を行えるようにシステムの中から目的の情報及び装置機能が抽出され、被制御装置となる該当する装置の状態表示及び機能操作スイッチが表示される。ここでは、上半分の状態表示領域74には集中表示パネル36と同様の内容が表示され、下半分の操作スイッチ領域75には操作を目的としたスイッチを示す機能操作スイッチの表示が並んで表示されている。状態表示領域74と操作スイッチ領域75とは、区別し易いように色分けされており、本実施例では、状態表示領域74の背景が黒く(図では斜線で示す)表示されるよう反転表示がなされている。機能操作スイッチとしては、二酸化炭素ガス送気のオンオフ、気腹圧力設定、 CUTモードにおける出力レベル設定、 COAGULATIONモードにおける出力レベル設定、VTRの操作の各スイッチが表示され、該当する表示の部分を押すと対応する操作指示が装置になされる。
【0043】また、画面下端部には、各装置を細かく操作するための階層画面となった操作画面を呼び出すタグスイッチ表示76が設けられ、あるタグスイッチの部分を押すと該当する装置の操作画面に切り替わる。例えば、図8のタグスイッチ表示の中の“El.Surg.”を選択すると、図9に示す高周波焼灼装置用操作画面77の表示に切り替わる。このようにタグスイッチによって、操作する機器の操作画面を選択的に表示させることにより、少ない表示面積で全ての被制御装置の全ての被制御機能を表示及び操作可能としている。
【0044】集中制御パネル37においては、光源のランプ切れなどのように手術続行が可能な異常(光源装置には補助ランプがあるため)に関しては、画面上端部の異常内容表示エリア73に異常内容を表示するようになっている。一方、システムの通信が不能になるといった重大な異常に関しては、図10に示すように操作スイッチ領域75に大きく異常表示78を表示するようにしている。
【0045】ところで、手術室の内部は、患者の位置を中心として滅菌されたものしか置くことができない滅菌域と滅菌域の外に位置する非滅菌域とに分けられる。本実施例では、図3の構成の医療用内視鏡システムにおいて、第2制御パネル39以外の装置は全て非滅菌域に設置され、第2制御パネル39のみが滅菌域に置かれる。
【0046】手術を行う執刀医は、当然のことながら患者の感染を防ぐ意味で非滅菌域のものに触れることはできないため、手術中の装置の操作は非滅菌域の看護婦に指示して行わざるを得ない。しかしながら、非滅菌域の看護婦は手術中も忙しく手術室を出入りする場合があるので、必ずいるとは限らない。そこで、このような場合に執刀医が自ら操作できるように、滅菌域での使用を前提とした制御パネルとして第2制御パネル39を備えるようにする。
【0047】図11は第2制御パネル39の機能操作スイッチ等の配置構成を示したものであり、手術中に良く操作されるものだけが小さくまとめて配置されている。本実施例では、気腹圧設定、気腹流量設定、気腹動作の開始/停止、 CUTモードにおける出力レベル設定、 COAGULATIONモードにおける出力レベル設定、 COAGULATION出力モード設定(SPRAY OR NORMAL)、画像処理装置のサブ画面(子画面)の挿入、入力ソースの選択、画像回転(ROT.)、親子入れ替え(EXCHG.)、VTRの録画及びポーズ、これらの各スイッチが設けられている。従って、第2制御パネル39に設けられた制御内容は、集中制御パネル37、第2制御パネル39及び各被制御装置が備える操作パネルのいずれにおいても制御可能となっている。
【0048】以上のように、本実施例では、複数の被制御装置を備えたシステムにおいて、各被制御装置の被制御機能を一括して表示するための表示手段と該被制御機能を一括して操作するための操作手段とを有する操作入力手段として集中制御パネルを設け、各被制御装置を一括して集中的に制御する制御手段としてシステムコントローラを設けて、集中制御パネルにより被制御機能を操作して各被制御装置を制御するようにしたので、システム内の各装置に係る操作が容易となり、操作の煩雑化を防止でき、システムの操作性を向上させることが可能となる。」

(引2イ)図3


(引2ウ)図8


(引2エ)図11


(2)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「複数の被制御装置を備えたシステムにおいて、各被制御装置の被制御機能を一括して表示するための表示手段と該被制御機能を一括して操作するための操作手段とを有する操作入力手段として集中制御パネルを設け、各被制御装置を一括して集中的に制御する制御手段としてシステムコントローラを設けて、集中制御パネルにより被制御機能を操作して各被制御装置を制御するようにしたので、システム内の各装置に係る操作が容易となり、操作の煩雑化を防止でき、システムの操作性を向上させることが可能となること。」

3 引用文献3について

(1)引用文献3の記載
上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引3ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の視力検査装置を有する視機能検査設備に関する。
・・・
【0058】
視力検査装置2側では、図1に示すように、被検者33が操作レバー3bを操作しながら、夜間視力、動体視力及び静止視力など各種の視力検査を開始する。これらの視力の計測方法は、視力検査装置2によって各種の方法が採用可能であり、視機能検査設備1としては、各視力検査装置2における視力の検査方法としてどのような方法を用いていたとしても、当該視力検査に際した被検者33の被検者反応情報PRIが中央管理装置20に伝達される限り、本発明の適用が可能である。
・・・
【0075】
更に、中央管理装置20は、視機能検査設備1の各視力検査装置2で行われている検査内容をリアルタイムでデイスプレイ36上に表示し、また、同時に各視力検査装置2を中央管理装置20側から制御して、各視力検査装置2に対する監視や運転指示を集中的に行うように構成することも出来る。
【0076】
即ち、例えば、図5に示すように、デイスプレイ36上に、視力検査装置2の操作画面OPと視機能検査設備1の各視力検査装置2で行われている検査状況をリアルタイムで示す検査状況画面SPを表示し、検査状況画面SPでは、各視力検査装置2に対応して設けられた複数の検査モニター画面MPを表示するようにする。各検査モニタ画面MPの表示内容は、各装置から送られてくる被検者の個別検査データIIDや対応する被検者の個別データIDDなどから、自由に構成することが出来る。
【0077】
また、操作画面OPは、各視力検査装置2に対応する、夜間視力や動体視力などの、複数種類の視力検査の操作画面OPが適宜なメモリ内に格納されており、オペレータがキーボード28やマウス(図示せず)などの入力手段を介して、制御したい視力検査装置2の装置ID情報MDや検査種別データDA3などの識別情報を入力することにより、主制御部21は、当該視力検査装置2で行う視力検査の種類を判定し、当該判定結果に基づいてデイスプレイ36上に、対応する視力検査の操作画面OPをメモリから読み出して表示することが出来る。
【0078】
なお、操作画面OPは、図5に示すように、デイスプレイ36上の画面の一部に表示するほかに、デイスプレイ36の画面の全部に表示するようにしてもよい。
【0079】
更に、操作画面OPは、オペレータがキーボード28などから装置ID情報MDや検査種別データDA3を入力して表示させるほかに、各視力検査装置2から視力検査に際して送出される装置ID情報MDや検査種別データDA3に基づいて、主制御部21が視力検査の種類を判定し、デイスプレイ36上に、対応する視力検査の操作画面OPをメモリから読み出して、オペレータの入力操作を経ることなく表示するようにしてもよい。
【0080】
従って、視力検査装置2として複数種類の視力検査装置2が接続されている視機能検査設備1の場合には、図5及び図6に示すように、選択された視力検査装置2の種類に対応した、異なる種類の操作画面OPが読み出される。これにより、オペレータは、当該デイスプレイ36に表示された操作画面OPを操作する(ここで言う、「操作」とは、デイスプレイ36上に表示された操作画面OPに基づいて対応する視力検査装置2に対する何らかの信号を生成するための動作をいい、キーボード28、マウス、タッチパネル、音声、ポインタなど、信号を生成するための操作手段は問わない)ことにより、遠隔操作制御部37を介して対応する視力検査装置2を、当該視力検査装置2に対応する操作画面OPにより適切に遠隔操作することが出来る。なお、遠隔操作制御部37には、視機能検査設備1に接続される視力検査装置2の種類に応じた遠隔操作プログラムが格納されており、オペレータが選択した視力検査装置2の機種に応じた遠隔操作プログラムを読み出して実行することにより、操作画面OPによる遠隔操作を行う。
【0081】
なお、複数種類の視力検査装置2が接続された視機能検査設備1では、表示される検査状況画面SP内の検査モニタ画面MPも、図6に示すように、各視力検査装置2に対応して異なる形で表示される。各検査モニター画面MPも、視力検査装置2の種類に応じて複数の画面MP1、MP2……がテンプレートとして用意されており、中央管理装置20は、視機能検査設備1に接続されている各視力検査装置2からの装置ID情報MDに基づいて対応する検査モニター画面MP(MP1、MP2)をメモリから読み出し、デイスプレイ36上に表示する。
【0082】
また、各検査モニター画面MP上に、各視力検査装置2の操作画面OPを配置し、検査モニター画面MP上で、対応する視力検査装置2を遠隔操作できるように制御することも可能である。」

(引3イ)図1


(引3ウ)図2


(引3エ)図5


(2)引用文献3に記載された技術的事項
上記(1)から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「視機能検査設備1の各視力検査装置2で行われている検査内容をリアルタイムでデイスプレイ36上に表示し、また、同時に各視力検査装置2を制御して、各視力検査装置2に対する監視や運転指示を集中的に行うように構成する中央管理装置20であって、
各視力検査装置2は、被検者33が操作レバー3bを操作しながら、夜間視力、動体視力及び静止視力など各種の視力検査を行うものであり、
複数種類の視力検査装置2が接続されている視機能検査設備1の場合には、選択された視力検査装置2の種類に対応した、異なる種類の操作画面OPが読み出され、これにより、オペレータは、デイスプレイ36に表示された操作画面OPを操作する(ここで言う、「操作」とは、デイスプレイ36上に表示された操作画面OPに基づいて対応する視力検査装置2に対する何らかの信号を生成するための動作をいい、キーボード28、マウス、タッチパネル、音声、ポインタなど、信号を生成するための操作手段は問わない)ことにより、遠隔操作制御部37を介して対応する視力検査装置2を、当該視力検査装置2に対応する操作画面OPにより適切に遠隔操作し、各検査モニター画面MP上に、各視力検査装置2の操作画面OPを配置し、検査モニター画面MP上で、対応する視力検査装置2を遠隔操作できるように制御する、中央管理装置20。」

第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「複数の検査サイト11を切り換えることで、各検査サイト11に備わる細隙灯顕微鏡からなる眼科検査装置20の駆動部24及び観察部25を遠隔操作するためのユーザインターフェース手段50が備えられている診断サイト12」は、「複数の検査サイト11と通信回線13を介して制御信号のやりとりを行うためのネットワークスイッチ53、ルータ54」を「備え」ているから、引用発明の「ユーザインターフェース手段50」、「ネットワークスイッチ53、ルータ54」が、本願発明1の「複数の眼科装置を操作するための端末装置」に相当する。

イ 引用発明の「複数の検査サイト11と通信回線13を介して制御信号のやりとりを行うためのネットワークスイッチ53、ルータ54」は、本願発明1の「前記複数の眼科装置と通信を行う通信手段」に相当する。

ウ 引用発明の「制御モニタ62」「画面」は、「眼科検査装置20の操作設定を行う、スリット光操作画面71及び顕微鏡カメラ設定画面73を画面構成とする」から、本願発明1の「前記眼科装置を操作するための操作領域」に相当する。
よって、引用発明の「患者の眼の顕微鏡映像を表示する診察モニタ61と、眼科検査装置20の操作設定を行う、スリット光操作画面71及び顕微鏡カメラ設定画面73を画面構成とする制御モニタ62とからな」る「モニタ60」は、本願発明1の「前記眼科装置を操作するための操作領域を表示する表示手段」に相当する。

エ 引用発明の「制御モニタ62」に「設けられている」「眼科検査装置20におけるスリット照明部22や顕微鏡カメラ23の駆動に伴う各種の設定を行うための」、「顕微鏡カメラ設定画面73の方向スイッチ83a,83b」を含む「タッチ式のパネルスイッチ86」、及び「キーボード63、ポインティングデバイス(ジョイスティック)64」は、本願発明1の「検者からの操作を受け付ける操作受付手段」に相当する。

オ 引用発明の「診断サイト12」は、「複数の検査サイト11を切り換える」ために、一の検査サイト11を選択する手段を備えていることは明らかである。

カ 上記ウ?オから、引用発明の「眼科検査装置20の操作設定を行う、スリット光操作画面71及び顕微鏡カメラ設定画面73を画面構成とする制御モニタ62とからな」る「モニタ60」と、「制御モニタ62」に「設けられている」「眼科検査装置20におけるスリット照明部22や顕微鏡カメラ23の駆動に伴う各種の設定を行うための」、「顕微鏡カメラ設定画面73の方向スイッチ83a,83b」を含む「タッチ式のパネルスイッチ86」、及び「キーボード63、ポインティングデバイス(ジョイスティック)64」は、本願発明1の「前記眼科装置を操作するための操作領域を表示する表示手段と、検者からの操作を受け付ける操作受付手段と、を有し、前記複数の眼科装置のうち、少なくとも一つの操作対象の眼科装置を選択する選択指示を受け付ける選択受付手段」に相当する。

キ 引用発明の「眼科検査装置20の駆動部24や観察部25を駆動制御する制御プログラム52」は、「眼科検査装置20の所定の駆動軸をXYZ方向に駆動させる制御信号を検査サイト11に伝送する」から、本願発明1の「前記通信手段によって、前記操作対象の眼科装置に制御信号を送信する制御手段」に相当する。

ク 引用発明は、「複数の」「眼科検査装置20を」「切り換える」から、切り換え前の「眼科検査装置20」を第1眼科検査装置20、切り換え後の「眼科検査装置20」を第2眼科検査装置20とすると、引用発明の「制御プログラム52」が、第1「眼科検査装置20の操作設定を行う」ための「画面」と、第2「眼科検査装置20の操作設定を行う」ための「画面」とを「切り換え」て「モニタ60」に表示させることと、本願発明1の「前記制御手段は、第1眼科装置を操作するための第1操作領域と、前記第1眼科装置とは異なる第2眼科装置を操作するための第2操作領域とを前記表示手段に同時に表示させ」ることとは、「第1眼科装置を操作するための第1操作領域と、前記第1眼科装置とは異なる第2眼科装置を操作するための第2操作領域とを前記表示手段に表示させ」る点で共通する。

ケ 引用発明の「制御プログラム52」が、前記第1「眼科検査装置20」における第1「患者の眼の顕微鏡映像」と、前記第2「眼科検査装置20」における第2「患者の眼の顕微鏡映像」とを「切り換え」て「モニタ60」に表示させることと、本願発明1の「前記制御手段は、」「前記第1眼科装置によって撮影された第1観察画像と、前記第2眼科装置によって撮影された第2観察画像とを前記通信手段によって各眼科装置から取得し、前記第1観察画像を前記第1操作領域に表示させ、前記第2観察画像を前記第2操作領域に表示させ」ることとは、「前記制御手段は、」「前記第1眼科装置によって撮影された第1観察画像と、前記第2眼科装置によって撮影された第2観察画像とを前記通信手段によって各眼科装置から取得し、前記第1観察画像を表示させ、前記第2観察画像を表示させ」る点で共通する。

コ 引用発明の「制御プログラム52」が、前記第1「患者の眼の顕微鏡映像」における「顕微鏡カメラ設定画面73の方向スイッチ83a,83bがタッチされることによって、」前記第1「眼科検査装置20の所定の駆動軸をXYZ方向に駆動させる制御信号を検査サイト11に伝送」し、前記第2「患者の眼の顕微鏡映像」における「顕微鏡カメラ設定画面73の方向スイッチ83a,83bがタッチされることによって、」前記第2「眼科検査装置20の所定の駆動軸をXYZ方向に駆動させる制御信号を検査サイト11に伝送する」ことは、本願発明1の「前記制御手段は、」「前記操作受付手段によって受け付けた前記第1観察画像に対する操作に基づいて、前記第1眼科装置の検眼部をXYZ方向に移動させるための第1制御信号を前記第1眼科装置に送信し、前記操作受付手段によって受け付けた前記第2観察画像に対する操作に基づいて、前記第2眼科装置の検眼部をXYZ方向に移動させるための第2制御信号を前記第2眼科装置に送信する」ことに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)
「複数の眼科装置を操作するための端末装置であって、
前記複数の眼科装置と通信を行う通信手段と、
前記眼科装置を操作するための操作領域を表示する表示手段と、検者からの操作を受け付ける操作受付手段と、を有し、前記複数の眼科装置のうち、少なくとも一つの操作対象の眼科装置を選択する選択指示を受け付ける選択受付手段と、
前記通信手段によって、前記操作対象の眼科装置に制御信号を送信する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、第1眼科装置を操作するための第1操作領域と、前記第1眼科装置とは異なる第2眼科装置を操作するための第2操作領域とを前記表示手段に表示させ、前記第1眼科装置によって撮影された第1観察画像と、前記第2眼科装置によって撮影された第2観察画像とを前記通信手段によって各眼科装置から取得し、前記第1観察画像を前記表示手段に表示させ、前記第2観察画像を前記表示手段に表示させ、前記操作受付手段によって受け付けた前記第1観察画像に対する操作に基づいて、前記第1眼科装置の検眼部をXYZ方向に移動させるための第1制御信号を前記第1眼科装置に送信し、前記操作受付手段によって受け付けた前記第2観察画像に対する操作に基づいて、前記第2眼科装置の検眼部をXYZ方向に移動させるための第2制御信号を前記第2眼科装置に送信する、端末装置。」

(相違点)
制御手段が、本願発明1では、表示手段に、第1観察画像を表示させる第1操作領域と、第2観察画像を表示させる第2操作領域とを同時に表示させるのに対し、引用発明では、「モニタ60」に、「複数の検査サイト11を切り換え」て「遠隔操作する」ことから、「切り換え」前後の「眼科検査装置20の操作設定を行う」操作領域を同時に表示させていないし、また、「切り換え」前後の「眼科検査装置20の操作設定を行う」操作領域に「患者の眼の顕微鏡映像」を表示させていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。

複数の装置を操作する操作端末において、当該操作端末の表示手段に、第1の装置を操作する操作領域と、第1の装置とは異なる第2眼科装置を操作するための第2操作領域とを、同時に表示させることは、技術分野を問わない周知技術(例えば、第5の2(2)引用文献2、第5の3(2)引用文献3などを参照。)である。
しかしながら、引用文献2及び3に記載された技術的事項は、第1観察画像を表示させる第1操作領域と、第2観察画像を表示させる第2操作領域とを同時に表示させるものでなく、また、上記相違点に係る本願発明1の構成が、周知技術であるという証拠もない。
そして、引用文献3の「視力検査装置2」は、「被検者33が操作レバー3bを操作しながら、夜間視力、動体視力及び静止視力など各種の視力検査を行うものであ」るから、「被検者33」の観察画像を「オペレータ」の「デイスプレイ36」に表示させることはない。
しかも、引用文献3では、「被検者33が」「操作しながら、」「視力検査を行うものであ」り、「オペレータ」によって、「同時」に「各視力検査装置2に対する監視や運転指示を集中的に行」えることから、「各検査モニター画面MP上に、各視力検査装置2の操作画面OPを配置」するのであって、引用文献1では、患者が自ら操作して検査するものではなく、上記(引1ア)の【0015】、【0016】によれば、診断サイト12にいる専門医が、専門医が常駐していない病院や診療所(検査サイト11)にいる患者に対して、順次、検査サイト11を切り換えて細隙灯顕微鏡により診断するものであり、異なる検査サイト11にいる患者を同時に細隙灯顕微鏡により診断することはないから、引用発明において、引用文献3に記載された技術的事項を適用する動機も存在しない。
してみると、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2も、上記相違点に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明3について
本願発明3は、本願発明1に対応する端末制御プログラムの発明であり、上記相違点に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
本願発明1?3は、原査定が拒絶の対象とする請求項でないから、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明1?3は、当業者が引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の拒絶理由及び当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-11-09 
出願番号 特願2015-152051(P2015-152051)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
渡戸 正義
発明の名称 端末装置、および端末制御プログラム  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ