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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1367953
審判番号 不服2019-12035  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-11 
確定日 2020-11-12 
事件の表示 特願2017-144546「画像形成装置,画像形成装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日出願公開,特開2017-222174〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年2月8日(以下,「原出願日」という。)に出願された特願2012-25333号の一部を,平成28年3月1日に特願2016-39357号として出願したものの一部を,さらに平成29年7月26日に特願2017-144546号として出願したものであって,平成29年8月24日に手続補正書が提出され,平成30年6月8日付けで拒絶理由が通知され,同年8月10日に意見書及び手続補正書が提出され,さらに同年11月9日付けで拒絶理由が通知され,平成31年1月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが,令和1年6月3日付けで,平成30年11月9日付け拒絶理由通知書に記載した理由1により拒絶査定がなされ,同査定の謄本は,令和1年6月11日に請求人に送達された。その後,同年9月11日に拒絶査定不服審判の請求がされ,当該請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和1年9月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月3日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容について
(1)本件補正は,特許請求の範囲及び明細書について補正するものであり,その補正の一部には,本件補正前の請求項1の記載を本件補正後の請求項1のとおりに補正する補正事項(以下,「本件補正事項」という。)を含むものである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲(平成31年1月11日に提出された手続補正書による補正後のもの)の請求項1の記載
「【請求項1】
ユーザーの操作を受け付ける操作部を有する画像形成装置であって,
外部装置から前記画像形成装置の電源をオフする指示を受信する受信手段と,
前記受信手段が外部装置から受信した前記指示に基づいて,前記画像形成装置の電源をオフすることが可能な電源オフ手段であって,前記操作部がユーザーによって最後に操作されてから所定時間が経過する前に前記受信手段が外部装置から前記指示を受信した場合に,前記画像形成装置の電源を当該指示の受信時にオフしない電源オフ手段と,
前記受信手段が外部装置から前記指示を受信して,かつ,前記電源オフ手段が前記画像形成装置の電源を当該指示の受信時にオフしない場合に,当該受信された当該指示に対する応答として所定のメッセージを当該指示の受信時に通知する通知手段と,
を有することを特徴とする画像形成装置。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
ユーザーの操作を受け付ける操作部を有する画像形成装置であって,
外部装置から前記画像形成装置の電源をオフする指示を受信する受信手段と,
前記受信手段が外部装置から受信した前記指示に基づいて,前記画像形成装置の電源をオフすることが可能な電源オフ手段であって,前記操作部がユーザーによって最後に操作されてから所定時間が経過する前に前記受信手段が外部装置から前記指示を受信した場合に,前記画像形成装置の電源を当該指示の受信時にオフしない電源オフ手段と,
前記受信手段が外部装置から前記指示を受信して,かつ,前記電源オフ手段が前記画像形成装置の電源を当該指示の受信時にオフしない場合に,前記所定時間を待つことなく,当該受信された当該指示に対して前記画像形成装置の電源をオフする代わりに所定のメッセージを通知する通知手段と,
を有することを特徴とする画像形成装置。」

(2)本件補正の目的について
ア 本件補正事項は,本件補正前の請求項1において,「通知手段」が「前記受信手段が外部装置から前記指示を受信して,かつ,前記電源オフ手段が前記画像形成装置の電源を当該指示の受信時にオフしない場合に,当該受信された当該指示に対する応答として所定のメッセージを当該指示の受信時に通知する」ものであったものを,「前記受信手段が外部装置から前記指示を受信して,かつ,前記電源オフ手段が前記画像形成装置の電源を当該指示の受信時にオフしない場合に,前記所定時間を待つことなく,当該受信された当該指示に対して前記画像形成装置の電源をオフする代わりに所定のメッセージを通知する」ものに補正するものである。
イ 上記アによれば,本件補正前の請求項1において特定されている「通知手段」は,「当該受信された当該指示に対する応答として所定のメッセージ」を通知するものであり,かつ「当該指示の受信時」に通知するものとして特定されていたものを,本件補正後の請求項1において特定されている「通知手段」は,「当該受信された当該指示に対して前記画像形成装置の電源をオフする代わりに所定のメッセージ」を通知するものであり,かつ「前記所定時間を待つことなく」通知するものに特定されることになったものと認められる。
ウ 本件補正前後の請求項1において特定される「通知手段」が通知する「所定のメッセージ」について
「通知手段」が通知する「所定のメッセージ」は,本件補正前においては「当該受信された当該指示に対する応答として」「通知される」ものとして特定されていたのが,本件補正後においては,「当該受信された当該指示に対して前記画像形成装置の電源をオフする代わり」に所定のメッセージを通知するものとされた。
本件補正前の「当該受信された当該指示に対する応答として」「通知する」との特定は,「所定のメッセージ」の内容が当該指示に対する「応答」であることが特定されていたものと解されるのに対して,本件補正後においては「当該受信された当該指示に対して前記画像形成装置の電源をオフする代わりに所定のメッセージを通知する」との特定は,「所定のメッセージ」の内容が「電源をオフする代わりに通知されるもの」であることが特定されているものと解される。
そして,「当該受信された当該指示」すなわち,「電源をオフする指示」に対する応答であることと,「電源をオフする代わりに通知される」ものであることとは,異なる概念を意味するものであり,「電源をオフする指示」をさらに限定するものとはいえない。
以上のとおり,本件補正前後の請求項1において特定される「通知手段」が通知する「所定のメッセージ」が,「電源をオフする指示」に対する応答であったものが,「電源をオフする代わりに通知される」ものに変更されたというべきであるから,当該補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものとはいえない。
エ 本件補正前後の請求項1において特定される「通知手段」が「所定のメッセージ」を通知するタイミングについて
「通知手段」が「所定のメッセージ」を通知するタイミングについても,本件補正前においては「当該指示の受信時」と特定されていたのが,本件補正後においては,「所定の時間が経過する前」と特定されるものとなった。
ここで,「所定の時間が経過する前」には,「当該指示の受信時」以外に,当該指示の受信後,所定の時間が経過する前までの時間を含む期間であるから,本件補正後において「所定のメッセージ」を通知するタイミングとして特定される「所定の時間が経過する前」は,本件補正前の「所定のメッセージ」を通知するタイミングとして特定される「当該指示の受信時」を拡張するものであって,限定するものとはいえない。
以上のとおり,本件補正前の請求項1において特定される「通知手段」が「所定のメッセージ」を通知するタイミングは,本件補正後の請求項1においては,拡張されたものであるというべきであるから,当該補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
オ 以上のとおりであるから,本件補正事項は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また,当該補正事項が同項第3号に規定する誤記の訂正や同項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことは明らかである。
してみると,本件補正事項による補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反してされたものというほかないから,同法第159条第1項において読み替えて適用される同法第53条の規定により却下すべきものである。

2 独立特許要件についての検討
上記のとおり,本件補正事項により追加された点は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものではないものの,念のため,本件補正事項の目的が同号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものと仮定して,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討することとする。

(1)本願補正発明
本願補正発明は,上記1(1)イにおいて摘示したとおりの発明特定事項により特定されるものである。

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由の引用文献1として引用され,本願の原出願日前に頒布された刊行物である特開2007-320051号公報(以下,「引用例1」という。)には,つぎの事項が記載されている。
(ア)「【0032】
<第1の実施の形態>
図1は,本発明の第1の実施の形態における画像処理システムの全体構成を示す図である。図1を参照して,画像処理システム1は,それぞれがネットワーク101に接続された,パーソナルコンピュータ(以下「PC」という)100と,2台のMFP (Multi Functio n Peripheral)102 ,103と,2台のプリンタ104 ,105とを含む。M FP102,103各々は,原稿を読取って画像データを取得する画像読取部,画像データに基づいて紙などの記録媒体に画像を形成するための画像形成部,ファクシミリ部を含み,画像読取機能,複写機能,ファクシミリ送受信機能を備えている。PC100は,一般的なコンピュータであり,そのハード構成は周知なので,ここでは説明を繰り返さない。
【0033】
ネットワーク101は,ローカルエリアネットワーク(LAN)であり,接続形態は有線または無線を問わない。またネットワーク101は,LANに限らず,ワイドエリアネットワーク(WAN),公衆交換電話網(PSTN:Public Switched Telephon e Networks),インターネット等であってもよい。
【0034】
なお,MFP102,103およびプリンタ104,105は,画像形成装置であり,それらの台数は限定されず,1台以上あればよい。また,PC100は,MFP102,103およびプリンタ104,105を遠隔操作するための端末であり,1台以上あればよく,台数を限定するものではない。」
(イ)「【0035】
図2は,本実施の形態におけるMFPのハード構成の一例を示すブロック図である。MFP102,103それぞれは,ハード構成および機能が同じなので,ここでは,MFP102を例に説明する。図2を参照して,MFP102は,MFP102の全体を制御する中央演算装置(CPU)110と,CPU110の作業領域として使用されるRAM( Random Access Memory)112と,データを不揮発的に記憶するためのハードディスクドライブ(HDD)113と,表示部114と,操作部115と,外部記憶装置116と,ファクシミリ部27と,通信部28と,電源回路29と,ADF21と,画像読取部22と,画像処理部23と,画像形成部24と,給紙部25と,後処理部26とを含む。
【0036】
ADF21は,原稿台に搭載された複数枚の原稿をさばいて1枚ずつ順に,画像読取部22に搬送する。ADF21は,原稿の両面を画像読取部22に読み取らせるために,原稿を画像読取部22に搬送して表面を読み取らせた後,原稿を裏返して画像読取部22に搬送して裏面を読み取らせる。画像読取部22は,写真,文字,絵等の画像情報を原稿から光学的に読み取って画像データを取得する。画像処理部23は,CPU110により制御され,CPU110からの指示に基づき画像データを画像処理する。画像形成部24は ,画像データが入力されると,画像データに基づいて用紙上に画像を印刷する。」
(ウ)「【0038】
表示部114は,液晶表示装置(LCD),有機ELD(Electro Luminescence Display)等の表示装置であり,ユーザに対する指示メニューや取得した画像データに関する情報等を表示する。操作部115は,複数のキーを備え,キーに対応するユーザの操作による各種の指示,文字,数字などのデータの入力を受付ける 。操作部115は,表示部114上に設けられたタッチパネルをさらに含む。表示部114と操作部115とで,ユーザインターフェースとしての操作パネルを構成する。」
(エ)「【0045】
図3は,MFPのCPUの機能の概要をHDDに記憶する情報とともに示す機能ブロック図である。図3を参照して,CPU110は,操作主体となるユーザを認証するためのユーザ認証部151と,遠隔制御指示を受け付けるための遠隔制御指示受付部152と,ジョブを受け付けHDD113のジョブ記憶部113Aに記憶するジョブ受付部153と ,ジョブ記憶部113Aに記憶されたジョブを実行するジョブ実行制御部154と,電源回路29を制御するための電源制御部155と,電源制御前動作実行部156とを含む。
【0046】
ユーザ認証部151は,MFP102にログインするユーザを認証する。ここでは,ユーザを特定するためのユーザ識別情報とパスワードとを用いてユーザ認証する。MFP102は,ユーザ識別情報とパスワードとを関連付けたユーザデータをHDD113に予め記憶しており,MFP102に入力されるユーザ識別情報とパスワードとを用いて,ログインするユーザを認証する。ユーザが,MFP102を直接操作する場合,ユーザが操作部115にユーザ識別情報とパスワードとを入力すると,ユーザ認証部151は,操作部115からユーザ識別情報とパスワードとを受け付け,ユーザデータを用いて認証する。ユーザがPC100を操作して,MFP102を遠隔操作する場合,PC100からユーザ識別情報とパスワードとが送信され,通信部28により受信される。ユーザ認証部151は,通信部28からPC100からユーザ識別情報とパスワードとを受け付け,ユーザデータを用いて認証する。
【0047】
遠隔制御指示受付部152は,遠隔制御指示を電源制御部155に出力する。遠隔制御指示受付部152は,操作受付部161を含む。操作受付部161は,通信部28から遠隔操作指示を受け付ける。通信部28は,PC100から遠隔操作指示を受信すると,遠隔操作指示を操作受付部161に出力する。PC100が送信する遠隔操作指示は,ユーザ識別情報とパスワードとを含む場合がある。操作受付部161は,遠隔操作指示とともに受け付けるユーザ識別情報とパスワードとを,ユーザ認証部151に認証を依頼するためにそれらを出力し,ユーザ認証部151から認証結果を受信する。操作受付部161は ,ユーザ認証部151による認証が成功した場合に,遠隔操作指示を電源制御部155に出力する。また,特定のユーザ識別情報を予め定めておき,操作受付部161は,その特定のユーザ識別情報とともに遠隔制御指示が受け付けられ,その特定のユーザ識別情報がユーザ認証部151により認証された場合に,遠隔制御指示を電源制御部155に出力するようにしてもよい。
【0048】
また,遠隔制御指示受付部152は,予め記憶された連動装置から遠隔操作指示を受け付ける。連動装置は,MFP102の管理者により予め登録され,HDD113に記憶される。ここでは,MFP103が連動装置として登録されている例を説明する。通信部28がMFP102から遠隔操作指示を受信すると,遠隔操作指示受付部152は通信部28から遠隔操作指示を受け付ける。一方,遠隔制御指示受付部152は,操作受付部161が遠隔操作指示を受け付けると,連動装置がHDD113に記憶されていれば,その連動装置に遠隔操作指示を送信する。」
(オ)「【0051】
電源制御部155は,遠隔制御指示受付部152から遠隔制御指示が入力され,遠隔制御指示に従って電源回路29を制御する。電源制御部155は,電源回路29の第1スイッチ34および第2スイッチ33それぞれを切り換える。遠隔制御指示が,サブ電源31をオフする指示の場合,電源制御部155は,第1スイッチ34をオンからオフに切り換える。遠隔制御指示が,動作モードを節電モードへ切り換える指示の場合,電源制御部155は,第2スイッチ33をオンからオフに切り換える。電源制御部155は,第1スイッチ34または第2スイッチ33をオンからオフに切り換える前に,電源制御前動作実行部156を能動化し,電源制御前動作実行部156が所定の動作を画像形成部24に実行させた後に,第1スイッチ34または第2スイッチ33をオンからオフに切り換える。」
(カ)「【0066】
ここで,MFP102が実行する処理について説明する。図10は,MFPで実行される電源制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。電源制御処理は,MFP102のCPU110が電源制御プログラムを実行することにより,CPU110により実行される処理である。図10を参照して,CPU110は,電源制御指示受信処理を実行する。
【0067】
電源制御指示受信処理について説明する。図11は,電源制御指示受信処理の流れの一例を示すフローチャートである。CPU110は,連動装置であるMFP103から電源制御指示の遠隔操作指示を受信したか否かを判断する(ステップS71)。電源制御指示を受信したならば処理を遠隔制御処理に戻し,受信しなければ処理をステップS72に進める。ステップS72においては,ユーザ認証が成功したか否かを判断する。PC100から受信したユーザ識別情報およびパスワードを含むユーザデータが,HDD113に記憶されているか否かを判断する。ユーザデータは,ユーザ識別情報とパスワードとを関連付けたデータであり,HDD113に予め記憶されている。PC100から受信したユーザ識別情報とパスワードと同じユーザデータが,HDD113に記憶されていれば,ユーザ識別情報を認証し,記憶されていなければ認証しない。ユーザ識別情報を認証したならば処理をステップS73に進め,認証しなければ処理をステップS78に進める。ステップS73においては,認証されたユーザ識別情報が遠隔操作が認められたユーザに対応するものとして予め定められているか否かを判断する。予め定められたユーザ識別情報であれば処理をステップS74に進めるが,そうでなければ処理をステップS78に進める。MFP102に遠隔操作で電源制御指示することのできるユーザを制限するためである。
ステップS74においては,ログインを許可し,次のステップS75において電源制御指示を受信する。その後処理をステップS76に進める。一方,ステップS78においては,ログインを拒否し,処理をステップS72に戻す。
【0068】
ステップS76においては,連動装置が存在するか否かを判断する。連動装置がHDD113に記憶されていれば処理をステップS77に進め,記憶されていなければ処理を遠隔制御処理に戻す。ステップS77においては,連動装置に電源制御指示の遠隔操作指示を送信する。ここでは,連動装置としてMFP103が記憶されているので,MFP102に電源制御指示が送信される。このため,MFP102に電源制御指示をすれば,MFP103にも電源制御指示することができる。
【0069】
図10に戻って,電源制御指示受付処理が終了すると,MFP102にファクシミリ装置が装着されているか否かを判断する(ステップS32)。ファクシミリ装置が装着されていれば処理をステップS33に進め,そうでなければ処理をステップS35に進める。
ステップS33においては,警告画面をPC100に送信する。ステップS34においては,電源制御指示を有効とする確認信号をPC100から受信したならば処理をステップS35に進め,電源制御指示を取り消すことを示す取消信号をPC100から受信したならば処理をステップS31に戻す。
【0070】
ステップS35においては,MFP102の状態を検出し,動作中であれば処理をステップS36に進め,待機中であれば処理をステップS43に進め,節電モードであれば処理をステップS55に進める。
【0071】
ステップS36においては,実行中のジョブが終了するまで待機状態となり,実行中のジョブが終了したならば処理をステップS37に進める。ステップS37においては,待機ジョブが存在するか否かを判断する。HDD113のジョブ記憶部113Aにジョブが記憶されていれば,待機ジョブが存在すると判断する。待機ジョブが存在すれば処理をステップS38に進め,そうでなければ処理をステップS39に進める。ステップS38においては,ジョブ記憶部113Aから待機ジョブを読出し,ジョブの実行を開始し,処理をステップS39に進める。なお,待機ジョブのうち,電源制御指示をしたユーザのジョブを実行しないようにし,電源制御指示をしたユーザ以外のジョブのみを実行するようにしてもよい。電源制御指示をしたユーザは,自らが指示したジョブが待機ジョブとなっていることを知っているため,電源制御指示を入力することによりその待機ジョブが実行されるのを中止させることができる。
【0072】
ステップS39においては,操作が受け付けられたか否かを判断する。ユーザによる操作部115の操作を検出したならば,その操作を受け付け(ステップS40)。ユーザによる操作部115の操作を検出しなければ,処理をステップS41に進める。ステップS41においては,ステップS38において開始した待機ジョブが終了したか否かを判断する。待機ジョブが終了したならば処理をステップS42に進め,終了していなければ処理をステップS37に進める。ステップS42においては,待機ジョブが存在するか否かを判断し,存在すれば処理をステップS38に戻し,存在しなければ処理をステップS43に進める。すなわち,ジョブ記憶部113Aに記憶されているジョブを全て実行すると,処理をステップS43に進める。このため,待機ジョブが実行されている間に,操作部115から操作を受け付けるので,受け付けられた操作に基づき新たなジョブが設定された場合には,その新たなジョブがジョブ記憶部113Aに待機ジョブとして追加して記憶される。この新たなジョブを含めた全てのジョブの実行が終了すると,処理がステップS43に進む。したがって,ジョブ記憶部113Aに記憶されているジョブを全て実行した後に,電源制御指示に従った電源制御が実行される。」
(キ)「【0073】
ステップS43においては,ログインユーザが存在するか否かを判断する。ログインユーザが存在すれば処理をステップS44に進め,存在しなければ処理をステップS45に進める。ステップS44においては,ログインユーザのすべてがログアウトしたか否かを判断する。ログインユーザの全てがログアウトしたならば処理をステップS45に進め,そうでなければ処理をステップS37に戻す。ログインユーザは,操作部115を操作してログインしたユーザと,通信部28を介して遠隔操作によりログインしたユーザとの両方を含む。ログインユーザが新たなジョブを設定する場合がある。新たなジョブが設定された場合には,設定された新たなジョブは,ジョブ記憶部113Aに追加して記憶される 。ステップS41においては,この新たなジョブを含めた全てのジョブの実行が終了することを条件に,処理をステップS43に進めるので,ログインユーザが設定したジョブが実行された後に,電源制御指示に従った電源制御が実行される。また,ログインユーザが存在する場合には,電源制御指示が実行されないので,ログインユーザがジョブの設定中に,メイン電源がオフにされて設定されたジョブが失われるのを防止することができる。
【0074】
ステップS45においては,ステップS40で操作を受け付けてから所定の時間が経過したか否かを判断する。所定の時間が経過していれば処理をステップS46に進め,そうでなければ処理をステップS37に戻す。操作を受け付けてから所定の時間を確保することにより,ジョブの設定が完了する前に,処理がステップS46に進むのを防止するためである。ジョブの設定途中にメイン電源がオフにされて,ジョブの設定操作が無駄になるのを防止するためである。このため,操作の受付が完了した後に,電源制御指示に従った電源制御が実行される。
【0075】
ステップS46においては,電源オフ動作を開始し,処理をステップS47に進める。電源オフ動作は,画像形成部24に電力が供給されている状態から,電力を供給しない状態にする場合に,画像形成部24により実行される所定の動作である。ステップS47においては,ジョブを受け付けたか否かを判断する。ジョブを受け付けたならば処理をステップS48に進め,そうでなければ処理をステップS54に進める。ステップS48においては,受け付けたジョブに関するジョブ情報を,電源制御指示を送信してきた指示端末 ,ここではPC100に送信する。ジョブ情報は,例えば,ジョブを設定したユーザを識別するためのユーザ識別情報,ジョブの種類などを含む。」

(ク)図10

(ケ)上記(ア)ないし(ク)の記載から読み取れる事項。
a 上記(ア)には,引用例に記載の「画像処理システム1」が「ネットワーク101に接続されたPC100と2台のMFP102,103と2台のプリンタ104,105とを含むもの」であること,MFP102,103の各々は,原稿を読取って画像データを取得する画像読取部,画像データに基づいて紙などの記録媒体に画像を形成するための画像形成部,ファクシミリ部を含み,画像読取機能,複写機能,ファクシミリ送受信機能を備えるものであることが記載されており,MFP102,103は,画像形成装置である旨記載されていることからすれば,引用例1には,MFP103とネットワーク101で接続されたMFP102が記載されているものといえる。
b 上記(イ)には,MFP102,103は,全体を制御する中央制御装置であるCPU110を有するものであり,表示部114,操作部115,ファクシミリ部27,通信部28,電源回路29及び画像形成部24を含むものであること,画像形成部24は,画像データが入力されると画像データに基づいて用紙上に画像を印刷するものであることが記載されている。
c 上記(ウ)には,表示部はユーザに対する指示メニューを表示するものであり,操作部115は,表示部114に設けられたタッチパネルを含む,表示部114と操作部115とで,ユーザインターフェ-スとしての操作パネルを構成することが記載されている。
d 上記(エ)によれば,「MFPのCPU」が,「操作主体となるユーザを認証するためのユーザ認証部151」と「遠隔制御指示を受け付けるための遠隔制御指示受付部152」と,「ジョブ受付部153」と「ジョブを実行するジョブ実行制御部154」と「電源回路29を制御するための電源制御部155」と,「電源制御前動作実行部156」とを含むものであることが記載されている。
また,ユーザがMFPを直接操作する場合,ユーザが操作部から入力したユーザ識別情報とパスワードとを用いてユーザ認証部151がユーザを認証すること,
遠隔制御指示受付部152は,NFP103が連動装置として登録されている場合に,通信部がMFP102から遠隔操作指示を受信すると,遠隔操作指示受付部152は通信部28から遠隔操作指示を受け付けることが記載されている。
e 上記(オ)には,電源制御部155は遠隔制御指示受付部152から遠隔制御指示が入力され,遠隔制御指示に従って電源回路29を制御するものであることが記載されている。
f 上記(カ)及び(キ)には,MFP102が実行する電源制御処理の流れについて記載されており,上記(ク)の図10には,そのフローチャートが示されている。
そして上記(カ)には,連動装置であるMFP103から電源制御指示の遠隔操作指示を受信したら,遠隔制御処理に戻すこと,すなわち,電源制御指示受付処理が終了すると,図10のフローチャートが実行されるものであることが記載されている。
(コ)以上によれば,引用例1には,つぎの発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「全体を制御する中央制御装置であるCPU110を有し,表示部114,操作部115,ファクシミリ部27,通信部28,電源回路29及び画像形成部24を含む画像形成装置であるMFP102であって,MFP102はMFP103とネットワーク11を介して接続されており,
表示部114はユーザに対する指示メニューを表示するものであり,操作部115は,表示部114に設けられたタッチパネルを含む,表示部114と操作部115とで,ユーザインターフェ-スとしての操作パネルを構成し,
CPU110は,操作主体となるユーザを認証するためのユーザ認証部151と遠隔制御指示を受け付けるための遠隔制御指示受付部152と,ジョブ受付部153と,ジョブを実行するジョブ実行制御部154と,電源回路29を制御するための電源制御部155と,電源制御前動作実行部156とを含み,
ユーザがMFPを直接操作する場合,ユーザが操作部から入力したユーザ識別情報とパスワードとを用いてユーザ認証部151がユーザを認証し,
電源制御部155は遠隔制御指示受付部152から遠隔制御指示が入力されると,遠隔制御指示に従って電源回路29を制御するよう構成されており,
遠隔制御指示受付部152がMFP103から電源制御指示の遠隔操作指示を受信し電源制御指示受付処理が終了すると,CPU110が電源制御プログラムを実行することにより,
MFP102にファクシミリ装置が装着されているか否かを判断し(ステップS32),
ファクシミリ装置が装着されていれば処理をステップS33に進め,そうでなければ処理をステップS35に進め,
ステップS33においては,警告画面をPC100に送信し,
ステップS34においては,電源制御指示を有効とする確認信号をPC100から受信したならば処理をステップS35に進め,電源制御指示を取り消すことを示す取消信号をPC100から受信したならば処理をステップS31に戻し,
ステップS35においては,MFP102の状態を検出し,動作中であれば処理をステップS36に進め,待機中であれば処理をステップS43に進め,節電モードであれば処理をステップS55に進め,
ステップS36においては,実行中のジョブが終了するまで待機状態となり,実行中のジョブが終了したならば処理をステップS37に進め,
ステップS37においては,待機ジョブが存在するか否かを判断し,待機ジョブが存在すれば処理をステップS38に進め,そうでなければ処理をステップS39に進め,
ステップS38においては,ジョブ記憶部113Aから待機ジョブを読出し,ジョブの実行を開始し,処理をステップS39に進め
ステップS39においては,操作が受け付けられたか否かを判断し,
ユーザによる操作部115の操作を検出したならば,その操作を受け付け(ステップS40),ユーザによる操作部115の操作を検出しなければ,処理をステップS41に進め,
ステップS41においては,ステップS38において開始した待機ジョブが終了したか否かを判断し,待機ジョブが終了したならば処理をステップS42に進め,終了していなければ処理をステップS37に進め,
ステップS42においては,待機ジョブが存在するか否かを判断し,存在すれば処理をステップS38に戻し,存在しなければ処理をステップS43に進め,
ステップS43においては,ログインユーザが存在するか否かを判断する。ログインユーザが存在すれば処理をステップS44に進め,存在しなければ処理をステップS45に進め
ステップS44においては,ログインユーザのすべてがログアウトしたか否かを判断し,ログインユーザの全てがログアウトしたならば処理をステップS45に進め,そうでなければ処理をステップS37に戻し,
ステップS45においては,ステップS40で操作を受け付けてから所定の時間が経過したか否かを判断し,所定の時間が経過していれば処理をステップS46に進め,そうでなければ処理をステップS37に戻し,
ステップS46においては,電源オフ動作を開始し,処理をステップS47に進める
ステップS47においては,ジョブを受け付けたか否かを判断し,ジョブを受け付けたならば処理をステップS48に進め,そうでなければ処理をステップS54に進め,
電源オフ動作を終了させる電源制御処理を実行するよう構成されている画像形成装置であるMFP102。」

イ 原査定の拒絶の理由の引用文献2として引用され,本願の原出願日前に頒布された刊行物である特開2011-204027号公報(以下,「引用例2」という。)には,つぎの事項が記載されている。
(ア)「【0018】
(機能的構成(図6))
複合機102,103は,図6で示す機能的構成を備える。インターフェース部601は,ネットワーク105と接続され,ホストコンピュータ101から印刷ジョブを受信したり,分析サーバ104へ電源状態を通知する。また,インターフェース部601(ジョブ履歴送信手段)は,分析サーバ104からのジョブ履歴取得要求を受けてジョブ履歴を送信する。印刷データ格納部602は,RAM303やハードディスク311(HD)に ,印刷ジョブデータを一時的に格納する。」
(イ)「【0025】
電源制御部614は,複合機102,103の電源を制御し,通常モード,省電力モード(動作モード),電源OFFの3つの電源状態を管理する。省電力モードは,通常モードよりも電力消費量が小さいモードである。なお,電源制御部614は,省電力モードを複数段階にしたり,複合機102,103の構成モジュール毎に省電力モードを設けるようにしても構わない。電源制御部614は,種々の条件に応じて,各電源状態に移行可能である。例えば,電源制御部614は,通常モードにおいて,複合機102,103に対して一定時間操作が行われず,印刷ジョブの受信,FAX受信,ネットワークからの命令受信等が行われなかった場合に省電力モードへ移行する。また,電源制御部614は,省電力モードにおいて,何らかの操作が行われた,印刷ジョブの受信,FAX受信,ネットワークからの命令受信等が行われた場合に,通常モードに移行する。電源制御部614は ,電源状態を変更するときに電源状態通知部613に通知する。
電源状態通知部613は,電源制御部614からの通知を受けて,インターフェース部601を介して通知する。また,電源状態通知部613は,通常モードで動作中にも定期的に電源状態を通知している。電源状態を通知する際には,省電力モードでない通常モードにおいて,省電力モードに移行するまでの残り時間も同時に通知する。具体的には,電源状態通知には,稼動中,省電力移行,省電力解除,電源断(オフ),電源入(オン)の種別が含まれる。
【0027】
稼働中の通知は,複合機が通常モードで動作中であることを示し,通常モードで動作中に定期的に行われる。省電力移行の通知は,複合機が通常モードから省電力モードへ移行するときに通知される。省電力解除の通知は,複合機が省電力モードから通常モードへ移行するときに通知される。電源断の通知は,複合機が電源オフに移行するときに行われる 。電源入の通知は,複合機が電源オフ状態から電源が投入され,通常モードに移行するときに行われる。なお,稼働中及び省電力解除の通知は,省電力に移行するまでの残り時間(省電力モード移行までの時間)も同時に通知する。
【0028】
なお,インターフェース部601を介した通知の方法としては,独自の通信規約でも,公に定義された通信規約を使用しても構わない。また,予め指定された分析サーバ104でも,マルチキャストやブロードキャストで複数の相手に通知してもよい。」

ウ 本願の原出願日前に頒布された刊行物である引用例3(特開2006-243948号公報)には,つぎの事項が記載されている。
(ア)「【0095】
以下,電源オフ処理の他の例を,実施例6に示す。図12は,電源オフ処理を示すフローチャート(その5)である。
【0096】
ステップS110において,複合機1は,例えば電源スイッチ等を押下されることによって,ユーザより電源をオフにする旨,要求されたか否かを判定する。複合機1は,ユーザより電源をオフにする旨,要求されたと判定すると(ステップS110においてYES ),ステップS111に進み,ユーザより電源をオフにする旨,要求されていないと判定すると(ステップS110においてNO),ステップS110の処理を繰り返す。
【0097】
ステップS111において,複合機1は,予約順序管理テーブル22を参照し,予約情報が存在するか否か,つまり予約者が居るか否かを判定する。複合機1は,予約者が居ると判定すると(ステップS112においてYES),ステップS113に進み,予約者が居ないと判定すると(ステップS112においてNO),ステップS123に進む。
【0098】
ステップS113では,複合機1が,予約者のクライアントPC2にメッセージを送信するか否かを判定する。複合機1は,例えばメモリ14等に設定されている予約者のクライアントPC2にメッセージを送信するか否かを識別するフラグ等を参照し,該フラグに1が設定されていれば,予約者のクライアントPC2にメッセージを送信すると判定し(ステップS113においてYES),ステップS114に進み,該フラグに0が設定されていれば,予約者のクライアントPC2にメッセージを送信しないと判定し(ステップS113においてNO),ステップS122に進む。なお,権限あるユーザは,複合機1の操作部11又は,ネットワーク5経由でクライアントPC2を用いて,該フラグに0又は1の値を設定することができる。
【0099】
ステップS114では,複合機1が,予約順序管理テーブル22より,例えば予約者全てのユーザIDを取得する。ステップS114に続いてステップS115に進み,複合機1は,ステップS114において取得したユーザIDに基づいて,ユーザ情報記憶テーブル21より各々のユーザIDに対応するPC特定情報を取得する。
【0100】
ステップS115に続いてステップS116に進み,複合機1は,例えばあるユーザより電源オフを要求された旨のメッセージを予約者に通知するか,又は例えばあるユーザより電源オフを要求されているが電源をオフしてもよいか否かを確認するか,を判定する。
【0101】
複合機1は,例えばメモリ14等に設定されている予約者のクライアントPC2に確認メッセージを送信するか否かを識別するフラグ等を参照し,該フラグに1が設定されていれば,予約者のクライアントPC2に確認メッセージを送信すると判定し(ステップS116において確認),ステップS118に進み,該フラグに0が設定されていれば,予約者のクライアントPC2に通知メッセージを送信すると判定し(ステップS116において通知),ステップS117に進む。なお,権限あるユーザは,複合機1の操作部11又は,ネットワーク5経由でクライアントPC2を用いて,該フラグに0又は1の値を設定することができる。
【0102】
ステップS117では,複合機1が,例えばあるユーザより電源オフを要求された旨の通知メッセージを,ステップS115において取得したPC特定情報で特定されるクライアントPC2に送信し,ステップS123に進む。
【0103】
一方,ステップS118では,複合機1が,例えばあるユーザより電源オフを要求されているが電源をオフしてもよいか否かの確認メッセージを,ステップS115において取得したPC特定情報で特定されるクライアントPC2に送信する。
【0104】
ステップS118に続いてステップS119に進み,複合機1は,ステップS118において確認メッセージを送信した送信先のクライアントPC2全てから,確認メッセージに対応する応答メッセージを受信したか否かを判定する。
【0105】
複合機1は,ステップS118において確認メッセージを送信した送信先のクライアントPC2全てから,確認メッセージに対応する応答メッセージを受信したと判定すると(ステップS119においてYES),ステップS121に進み,ステップS118において確認メッセージを送信した送信先のクライアントPC2全てからは,確認メッセージに対応する応答メッセージを受信していないと判定すると(ステップS119においてNO ),ステップS120に進む。
【0106】
ステップS120では,複合機1が,例えばメモリ14等に設定されている応答待ち時間を参照し,該時間を経過しているか否かを判定する。複合機1は,予め定められた応答待ち時間を経過していると判定すると(ステップS120においてYES),ステップS123に進み,定められている応答待ち時間を経過していないと判定すると(ステップS120においてNO),ステップS119に戻る。
【0107】
一方,ステップS121では,複合機1が,電源をオフしてもよいか否かを判定する。例えば複合機1は,受信した全ての応答メッセージに,電源をオフしてもよい旨を表す電源オフ可の情報が含まれていると判定すると,電源をオフしてもよいと判定し(ステップS121においてYES),ステップS123に進み,受信した応答メッセージの一つにでも,電源をオフしてはいけない旨を表す電源オフ否の情報が含まれていると判定すると,電源をオフしてはいけないと判定し(ステップS121においてNO),ステップS122に進む。
【0108】
ステップS122では,複合機1が,電源オフは不可である旨を,例えば操作部11等に表示し,ステップS110に戻る。一方,ステップS123では,複合機1が,電源をオフし,処理を終了する。」
【0109】
図12に示されるような処理を実行することによって,例えば確認メッセージを送信した送信先のクライアントPC2の電源がオフされていたり,会議や出張等である一定時間以上自席から離れたりしていて,予約者が確認メッセージを受信した旨を認識していなく,複合機1が,クライアントPC2から応答メッセージを受信できないような場合は,複合機1の電源をオフすることができる。」
(イ)図12


エ 本願の原出願日前に頒布された刊行物である引用例4(特開平11-95625号公報)には,つぎの事項が記載されている。
「【0039】図11は,電源スイッチ86の監視処理を示す。いま,電源スイッチ86の入力があると(ステップ60;Y),主電源81がオン状態かどうかチェックする(ステップ62)。この結果,主電源81がオフ状態であれば(ステップ62;N),リレー83を駆動してその開閉接点(リレースイッチ)83Aを閉状態にし,主電源81への電源供給を行う(ステップ64)。これにより,画像形成装置制御部80に電力が供給されて駆動可能となる。他方,主電源86がオン状態であった場合には(ステップ62;Y),電源制御信号85の状態をチェックする(ステップ63)。この結果,電源制御信号85の状態が「オフ許可」状態であれば(ステップ63;Y),主電源81のオフ処理を行い(ステップ65),画像形成装置制御部80への電力の供給が停止される。他方,電源制御信号85の状態が「オフ禁止」状態であれば(ステップ63;N),電源スイッチオフフラグをセットし(ステップ66),電源オフ処理を保留した旨のメッセージを操作部30の液晶ディスプレイ31に表示する(ステップ67)。図6は,電源オフ処理を保留した旨のメッセージの表示例を示す。」

(イ)図6

(ウ)図11


(3)対比・判断
ア 本願補正発明と引用発明1との対比
(ア)引用発明1の『「操作部115は,表示部114に設けられたタッチパネルを含む,表示部114と操作部115」とで,構成される「ユーザインターフェ-スとしての操作パネル」』,「画像形成装置であるMFP102」,「遠隔制御指示受付部152」,『「遠隔制御指示受付部152から遠隔制御指示が入力されると,遠隔制御指示に従って電源回路29を制御するよう構成されて」いる「電源制御部155」』は,それぞれ,本願補正発明の「ユーザーの操作を受け付ける操作部」,「画像形成装置」,「外部装置から前記画像形成装置の電源をオフする指示を受信する受信手段」,「前記受信手段が外部装置から受信した前記指示に基づいて,前記画像形成装置の電源をオフすることが可能な電源オフ手段」に相当する。
(イ)引用発明1の「電源制御部155」は,「遠隔制御指示受付部162」が,「MFP103から電源制御指示の遠隔操作指示を受信した」場合に,CPU110が電源制御プログラムを実行することにより,「MFP102にファクシミリ装置が装着されているか否か(ステップS32)」,「MFP102が動作中であるか否か(ステップS35)」,「待機ジョブが存在するか否か(ステップS37)」,「操作が受け付けられか否か(ステップS39)」,「ログインユーザがあるか否か(ステップS43)」を判断し,これら各ステップにおいての判断が全てNoとなった場合において,「操作受付から所定時間経過したか否か(ステップS45)」の判断がNoである場合に電源オフ動作を開始するものであるから,引用発明1の「電源制御部155」は,「遠隔制御指示受付部162」は「MFP103から電源制御指示の遠隔操作指示を受信した」場合に,操作受付から所定時間経過していなければ,電源オフ動作を開始しないものであるから,本願補正発明の「電源オフ手段」と引用発明1の「電源制御部155」は,「操作部がユーザーによって最後に操作されてから所定時間が経過する前に前記受信手段が外部装置から前記指示を受信した場合に,前記画像形成装置の電源を当該指示の受信時にオフしない電源オフ手段」である点で相当するものといえる。

イ 一致点,相違点
上記アの対比を踏まえると,本願補正発明と引用発明1とは,つぎの一致点で一致し,相違点で相違する。
<一致点>
「ユーザーの操作を受け付ける操作部を有する画像形成装置であって,
外部装置から前記画像形成装置の電源をオフする指示を受信する受信手段と,
前記受信手段が外部装置から受信した前記指示に基づいて,前記画像形成装置の電源をオフすることが可能な電源オフ手段であって,前記操作部がユーザーによって最後に操作されてから所定時間が経過する前に前記受信手段が外部装置から前記指示を受信した場合に,前記画像形成装置の電源を当該指示の受信時にオフしない電源オフ手段と,
を有する画像形成装置。」

<相違点1>
本願補正発明が「受信手段が外部装置から前記指示を受信して,かつ,前記電源オフ手段が前記画像形成装置の電源を当該指示の受信時にオフしない場合に,前記所定時間を待つことなく,当該受信された当該指示に対して前記画像形成装置の電源をオフする代わりに所定のメッセージを通知する通知手段を備えるのに対して,引用発明1は,そのような通知手段を備えるか否かが不明な点

ウ 相違点1についての検討
(ア)引用例2に記載の技術について
上記(2)のイで摘示した事項によれば,引用例2には,電源状態の変更を外部に通知するものであるが,電源状態を変更するまでに所定の時間が残り時間がある場合には,残り時間の経過を待たずに電源状態を変更するまでの残り時間を通知する技術が記載されている。
(イ)引用例3及び4に記載の周知技術について
上記(2)ウ及びエに摘示したとおり,引用例3及び4には,画像形成装置の電源をオフする指示がされた時に,画像形成装置の電源をオフすることができない状況である場合には,電源をオフすることはできない旨のメッセージを操作部に表示するようにする技術が記載されており,電源をオフする指示がされた時に画像形成装置が電源をオフすることができない状況である場合には,電源をオフすることができない旨のメッセージを操作部に表示することは,原出願日前において周知の技術(以下,「周知技術」という。)であったといえる。
(ウ)引用発明1の「電源制御部155」は,「遠隔制御指示受付部162」が「MFP103から電源制御指示の遠隔操作指示を受信した」時点で,操作受付から所定時間経過していなければ,電源オフ動作を開始しないものであって,引用例2に記載技術のような,所定時間経過後に電源状態を変更するにあたって,その残り時間を所定時間経過前に通知するようにする技術を知る当業者にとって,引用発明1においても「操作受付から所定時間経過していない場合」に,所定時間が経過するまでの残り時間を表示するよう構成しようとすることは容易に想到し得る程度のことというべきである。
(エ)また,引用発明1の「電源制御部155」は,「遠隔制御指示受付部162」が「MFP103から電源制御指示の遠隔操作指示を受信した」時点で,操作受付から所定時間経過していなければ,電源オフ動作を開始しないものであって,これは,電源オフ指示があった場合に電源をオフすることができない状態であるといえるところ,そのような場合に電源をオフすることができない旨のメッセージを表示することは,上記周知技術を知悉する当業者にとって,当然想起し得る設計的事項であるといえる。
(オ)してみると,引用発明1に引用例2に記載の示唆に基づいて,又は引用発明1に周知技術を適用することにより「遠隔制御指示受付部162」が「MFP103から電源制御指示の遠隔操作指示を受信した」時点で,当該メッセージの表示がされること,すなわち,所定時間の経過を待たずに所定のメッセージが表示されるようにすることは,当業者が容易に想到し得ることであるといえる。
(カ)そして,そのような「所定のメッセ-ジ」は,電源オフがすぐに可能であると判断される場合には表示する必要がなく,電源をオフすることができない場合のみ表示する必要があるものであることは明らかであるから,「電源をオフする代わりに表示される」ものであるといえる。
(キ)以上のとおりであるから,引用発明1に引用例2に記載の技術又は周知技術を適用することにより,上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

エ 本願補正発明の奏する効果について
本願補正発明により奏される効果は,引用例1及び2の記載並びに周知技術から,当業者が予測し得る程度のものであって,格別のものとはいえない。

(4)独立特許要件の検討に関する小括
以上検討したように,本願補正発明は,引用発明1及び引用例2に記載の技術又は周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,本願補正発明は,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり,本件補正は,上記「1(2)」において検討したように,本件補正事項の目的が特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれにも該当しないことから,同項の規定に違反してされたものであり,また,仮に本件補正事項の目的が同項第2号に該当するとしても,本願補正発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから,本件補正は,同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記第2のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし21に係る発明は,平成31年1月11日にされた手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるものであって,そのうち請求項1に係る発明は,上記第2の1(1)アにおいて説示したとおりのものである。(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」
という。)

2 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は,概略次の理由を含んでいる。
本願発明は,原出願日より前に日本国内において,頒布された刊行物に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をしたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
原査定の拒絶の理由で引用された引用例は,次のとおりである。
上記引用例1:特開2007-320051号公報
上記引用例2:特開2011-204027号公報

3 引用例及びその記載事項
原査定で引用された引用例1及び2に記載の事項及び引用発明1は,それぞれ,上記「第2 2(2)」において説示し,認定したとおりである。

4 本願発明と引用発明との対比・判断
(1)一致点及び相違点
上記「第2 2 (3) ア」の対比を踏まえると,本願発明と引用発明1とは,つぎの一致点において一致し,つぎの相違点で相違する。
<一致点>
「ユーザーの操作を受け付ける操作部を有する画像形成装置であって,
外部装置から前記画像形成装置の電源をオフする指示を受信する受信手段と,
前記受信手段が外部装置から受信した前記指示に基づいて,前記画像形成装置の電源をオフすることが可能な電源オフ手段であって,前記操作部がユーザーによって最後に操作されてから所定時間が経過する前に前記受信手段が外部装置から前記指示を受信した場合に,前記画像形成装置の電源を当該指示の受信時にオフしない電源オフ手段と,
を有する画像形成装置。」

<相違点2>
本願発明が「前記受信手段が外部装置から前記指示を受信して,かつ,前記電源オフ手段が前記画像形成装置の電源を当該指示の受信時にオフしない場合に,当該受信された当該指示に対する応答として所定のメッセージを当該指示の受信時に通知する通知手段」を備えるのに対して,引用発明1は,そのような通知手段を備えるか否かが不明な点

(2)相違点2についての検討
ア 引用例2に記載の技術について
上記第2の2(2)のイで摘示した事項によれば,引用例2には,電源状態の変更を外部に通知するものであるが,電源状態を変更するまでに所定の時間が残り時間がある場合には,残り時間の経過を待たずに電源状態を変更するまでの残り時間を通知する技術が記載されている。
イ 引用例3及び4に記載の周知技術について
上記第2の2(2)ウ及びエに摘示したとおり,引用例3及び4には,画像形成装置の電源をオフする指示がされた時に,画像形成装置の電源をオフすることができない状況である場合には,電源をオフすることはできない旨のメッセージを操作部に表示するようにする技術が記載されており,電源をオフする指示がされた時に画像形成装置が電源をオフすることができない状況である場合には,電源をオフすることができない旨のメッセージを操作部に表示することは,原出願日前において周知の技術(以下,「周知技術」という。)であったといえる。
ウ 引用発明1の「電源制御部155」は,「遠隔制御指示受付部162」が「MFP103から電源制御指示の遠隔操作指示を受信した」時点で,操作受付から所定時間経過していなければ,電源オフ動作を開始しないものであって,引用例2に記載技術のような,所定時間経過後に電源状態を変更するにあたって,その残り時間を所定時間経過前に通知するようにする技術を知る当業者にとって,引用発明1においても「操作受付から所定時間経過していない場合」に,所定時間が経過するまでの残り時間を表示するよう構成しようとすることは容易に想到し得る程度のことというべきである。
エ また,引用発明1の「電源制御部155」は,「遠隔制御指示受付部162」が「MFP103から電源制御指示の遠隔操作指示を受信した」時点で,操作受付から所定時間経過していなければ,電源オフ動作を開始しないものであって,これは,電源オフ指示があった場合に電源をオフすることができない状態であるといえるところ,そのような場合に電源をオフすることができない旨のメッセージを表示することは,上記周知技術を知悉する当業者にとって,当然想起し得る設計的事項であるといえる。
オ してみると,引用発明1に引用例2に記載の示唆に基づいて,又は引用発明1に周知技術を適用することにより,「MFP103から電源制御指示の遠隔操作指示を受信した」時に当該メッセージの表示がされるようにすることは,当業者が容易に想到し得ることであるといえる。
カ そして,そのような「所定のメッセ-ジ」は,「MFP103から電源制御指示の遠隔操作指示を受信した」時に表示されるのであるから,当該遠隔操作指示に対する応答といいえるものである。
キ 以上のとおりであるから,引用発明1に引用例2に記載の技術又は周知技術を適用することにより,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

(3)本願補明の奏する効果について
本願発明により奏される効果は,引用例1及び2の記載並びに周知技術から,当業者が予測し得る程度のものであって,格別のものとはいえない。

(4)小括
以上検討したように,本願発明は,引用発明1及び引用例に記載の技術又は周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第5 むすび
上記で検討したとおり,本願発明は,原出願日前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明(引用発明1)及び引用例2に記載の技術又は周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-09-08 
結審通知日 2020-09-15 
審決日 2020-09-28 
出願番号 特願2017-144546(P2017-144546)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41J)
P 1 8・ 572- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 尾崎 淳史
清水 康司
発明の名称 画像形成装置、画像形成装置の制御方法  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 阿部 琢磨  

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