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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1367985
審判番号 不服2020-4889  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-10 
確定日 2020-12-03 
事件の表示 特願2016- 74094「複合ケーブル及び複合ハーネス」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月12日出願公開,特開2017-188199,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2016年(平成28年) 4月 1日の出願であってその手続の経緯は以下のとおりである。

令和 1年10月21日付け:拒絶理由通知
令和 1年12月27日 :意見書,手続補正書の提出
令和 2年 1月 8日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年 4月10日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
1 原査定(令和 2年 1月 8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項1-7に係る発明は,以下の引用文献1-4に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2014-220043号公報
引用文献2 国際公開第2012/105142号
引用文献3 特開平8-241632号公報
引用文献4 特開2012-124005号公報

第3 本願発明
本願請求項1-7係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は,令和 1年12月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
第1中心導体と前記第1中心導体の外周に被覆されている第1絶縁体とを有する1対の第1電線が撚り合されてなる第1対撚線と,
第2中心導体と前記第2中心導体の外周に被覆されている第2絶縁体とを有する1対の第2電線が撚り合されてなる第2対撚線と,
前記第1中心導体及び前記第2中心導体よりも断面積が大きい第3中心導体と前記第3中心導体の外周に被覆されている第3絶縁体とを有し,前記第1電線及び前記第2電線よりも外径が大きく,かつ周方向において前記第1対撚線と前記第2対撚線との間に配置されている一対の第3電線と,
前記第1対撚線,前記第2対撚線,及び前記一対の第3電線が撚り合わされてなる集合体の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材と,を備え,
前記両対撚線の撚り方向と,前記集合体の撚り方向とが同じ方向であり,
前記集合体の撚り方向と,前記テープ部材の巻き付け方向とが異なっており,
前記第1対撚線の撚りピッチが,前記集合体の撚りピッチよりも小さく,前記テープ部材の巻きピッチが,前記集合体の撚りピッチよりも小さく,前記第1対撚線の撚りピッチ以上である,
複合ケーブル。」

なお,本願発明2-7は,概略,本願発明1の全ての構成を引用する発明である。

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)

「【0021】
図1に示すように,電気絶縁ケーブル10は,コア電線1と,コア電線1に巻き付けられた紙テープ2(テープ部材の一例)と,コア電線1に巻き付けられた紙テープ2の外周を覆うシース3とを有している。本例の電気絶縁ケーブル10の外径は,6?12mmの範囲,好ましくは,8.3?10.3mmの範囲に含まれるように設定される。
【0022】
コア電線1は,互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材4(コア材の一例)が互いに撚り合されて形成される。2本の第1のコア材4の各々は,導体5と導体5の外周を覆うように形成された絶縁層6とから構成されている。
【0023】
導体5は,例えば,銅合金からなる銅合金線であり,外径0.08mの素線を複数本撚り合されて形成された撚線である。導体5を構成する素線の本数としては,360?610本程度である。このように構成された導体5の断面積(複数本の素線の合計断面積)は,1.5?3.0mm^(2)の範囲,好ましくは,1.8?2.5mm^(2)の範囲に含まれるように設定される。また,導体5の外径は,1.5?3.0mmの範囲,好ましくは,2.0?2.6mmの範囲に含まれるように設定される。なお,導体5を構成する材料としては,銅合金線に限られず,錫めっき軟銅線や軟銅線等のような所定の導電性と柔軟性を有する材料であればよい。
【0024】
絶縁層6は,難燃性のポリオレフィン系樹脂で形成され,例えば,難燃剤が配合されることで難燃性が付与された難燃性の架橋ポリエチレンで形成される。絶縁層6の厚さは,0.2?0.8mmの範囲,好ましくは,0.3?0.7mmの範囲に含まれるように設定される。絶縁層6の外径は,2.5?4.0mmの範囲,好ましくは,2.8?3.8mmの範囲に含まれるように設定されている。なお,絶縁層6を構成する材料としては,難燃性のポリオレフィン系樹脂に限られず,架橋フッ素系樹脂等の他の材料で形成しても良い。
【0025】
紙テープ2は,コア電線1の外周に螺旋状に巻き付けられ,コア電線1と後述する内部シース7との間に配置される。紙テープ2は,その厚さが0.02?0.06mmの範囲,好ましくは,0.03?0.05mmの範囲に含まれるものが用いられる。なお,材料としては紙テープに限られず,ポリエステルなど樹脂材料で形成された人工繊維のテープを用いても良い。また,巻き付け方としては,螺旋巻きに限られず,縦添えであっても良い。また,巻き方向としては,Z巻きでもS巻きでも良い。また巻き方向は,コア電線1の各コア部材4の撚り方向と反対の向きにしても良い。紙テープ2の巻き方向とコア部材4の撚り方向とを反対にすることにより,巻き付けられた紙テープ2の表面に凹凸が生じにくく,外径が安定し易い。」

「【0036】
(第2の実施形態)
次に,本発明の第2の実施形態について図3を参照して説明する。なお,第1の実施形態と同一構成の部分には同一符号を付すことで説明を省略する。図3は,第2の実施形態に係る電気絶縁ケーブル30の断面を示している。本例の電気絶縁ケーブル30は,電動パーキングブレーキの電気信号を送信する用途に加えて,アンチロックブレーキシステム(Antilock Brake System:ABS)の動作を制御する電気信号を送信するのに用いることができる。
【0037】
図3に示すように,本例の電気絶縁ケーブル30は,コア電線1Aが,2本の第1のコア材4に加えて,ABS用の信号を送信するためのサブユニット31を有する点で第1の実施形態と異なっている。
【0038】
サブユニット31は,第1のコア材4の直径より小さく互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材32(コア材の一例)が互いに撚り合されて形成されている。2本の第2のコア材32の各々は,導体33と導体33の外周を覆うように形成された絶縁層34とから構成されている。
【0039】
導体33は,例えば,銅合金からなる銅合金線であり,外径0.08mの素線を複数本撚り合されて形成された撚線である。導体33を構成する素線の本数は,50?70本,好ましくは,60本程度である。このように構成された導体33の断面積は,0.18?0.40mm^(2)の範囲に含まれるように,好ましくは,0.3mm^(2)程度に設定される。また,導体33の外径は,0.6?1.0mmの範囲に含まれるように,好ましくは,0.8mm程度に設定される。なお,導体33を構成する材料としては,銅合金線に限られず,錫めっき軟銅線や軟銅線等のような所定の導電性と柔軟性を有する材料であればよい。
【0040】
絶縁層34は,難燃性のポリオレフィン系樹脂で形成され,例えば,難燃性の架橋ポリエチレンで形成される。絶縁層34の厚さは,0.2?0.4mmの範囲に含まれるように,好ましくは,0.3mm程度に設定される。絶縁層34の外径は,1.2?1.6mmの範囲に含まれるように,好ましくは,1.4mm程度に設定されている。なお,絶縁層34を構成する材料としては,難燃性の架橋ポリオレフィン系樹脂に限られず,架橋フッ素系樹脂等の他の材料で形成しても良い。
【0041】
上記のように構成されたサブユニット31と2本の第1のコア材4とが一括して撚り合されてコア電線1Aが形成される。このコア電線1Aに対して,外周に紙テープ2が巻き付けられ,さらにその外周に内部シース7と外部シース8が押出被覆で形成されて電気絶縁ケーブル30が形成される。
【0042】
以上説明したように,電気絶縁ケーブル30はABS用の信号を送信するためのサブユニット31を有し,このサブユニット31は,その導体33の断面積が0.18?0.40mm^(2)の範囲に含まれる第2のコア材32が2本撚り合わせて形成されている。そして,このサブユニット31が2本の第1のコア材4と撚り合されてコア電線1Aが形成されている。このコア電線1Aを有する電気絶縁ケーブル30は,車両に搭載される電動パーキングブレーキのための電気信号だけでなく,アンチロックブレーキシステムのための電気信号を送信することができる。このように1つのケーブルで2種類のシステムを動作させる電気信号を送信できるため,ケーブルの利便性が向上する。
【0043】
なお,本発明は,上述した第1?2の実施形態に限定されず,適宜,変形,改良等が自在である。その他,上述した実施形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数値,形態,数,配置場所,等は本発明を達成できるものであれば任意であり,限定されない。」


「【図1】



「【図3】



(2)ここで,引用文献1に記載されている事項を検討する。
ア 引用文献1の段落0038及び図3の記載を参酌すると,引用文献1の「第2のコア材32」は,「導体33」と,導体33の外周に被覆されている「絶縁層34」とを有することは明らかである。
そして,「サブユニット31」は,2本,すなわち,1対の「第2のコア材32」が,互いに撚り合わされて形成されている。

イ 引用文献1の段落0022,0042及び図3の記載を参酌すると,引用文献1の「第1のコア材4」は,「導体5」と,導体5の外周に被覆されている「絶縁層6」とを有することは明らかである。
ここで,段落0042の記載から,「サブユニット31」と,2本の,すなわち,一対の「第1のコア材4」とが撚り合わせて「コア電線1A」が形成されている。

ウ 引用文献1の段落0023には,「このように構成された導体5の断面積(複数本の素線の合計断面積)は,1.5?3.0mm^(2)の範囲」に設定され,段落0039には,「導体33の断面積は,0.18?0.40mm^(2)の範囲」に設定されると記載されていることから,「導体5」の断面積は,「導体33」の断面積より大きいことは明らかである。

エ 引用文献1の段落0024には,「絶縁層6の外径は,2.5?4.0mmの範囲」に設定され,段落0040には,「絶縁層34の外径は,1.2?1.6mmの範囲」に設定されると記載されていることから,「第1のコア材4」の外径は,「第2のコア材32」の外径より大きいことは明らかである。

オ 引用文献1の段落0041には,サブユニット31と2本の第1のコア材4とが一括して撚り合されて形成された「コア電線1A」に対して,外周に「紙テープ2」が巻き付けられ,「電気絶縁ケーブル30」が形成される点が記載されている。
ここで,段落0025には,「紙テープ2」を螺旋状に巻き付ける点も記載されている。

(3)上記(1),(2)から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「 導体33と前記導体33の外周に被覆されている絶縁層34とを有する1対の第2のコア材32が撚り合されて形成されたサブユニット31と,
前記導体33よりも断面積が大きい導体5と前記導体5の外周に被覆されている絶縁層6とを有し,前記第2のコア材32よりも外径が大きい,一対の第1のコア材4と,
前記サブユニット31及び一対の第1のコア材4が撚り合わされて形成されたコア電線1Aの外周に螺旋状に巻き付けられている紙テープ2と,を備えた,
電気絶縁ケーブル30。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

「[0036] 図4に示す信号ケーブル20Aは,駆動信号系の2本の同軸線30,30,出力信号系の2本の同軸線31,31,電源系統(グランドを含む)の6本の単純線24,…を有し,3本の単純線(例えば,何れも電源線)を撚り束ねて複合ケーブル22Aとしてユニット化すると共に,3本の単純線(例えば,2本の電源線と1本のグランド線)を撚り束ねて複合ケーブル23Aとしてユニット化している。
[0037] 複合ケーブル22A,23Aは,ケーブル中心軸Oを図中垂直方向に通る直線Lを挟んでほぼ対称となる位置に配置され,他の駆動信号系の2本の同軸線30,30,及び出力信号系の同軸線31,31はユニット化せず,同軸線30,30同士は互いに直線Lを挟んだ対称位置に配置される。同軸線31,31同士においても互いに直線Lを挟んだ対称位置に配置される。さらに,同軸線30,30と同軸線31,31の組同士は,複合ケーブル22A,23Aが略一直線上に配置される中心軸,即ち直線Lとケーブル中心軸Oにて直交する軸線(不図示)に対して略対称となる位置に配置されている。このような信号ケーブル20Aでは,駆動信号線と出力信号線の間にユニット化した単純線の複合ケーブル22A,23Aが挟み込まれる配置となるため,駆動信号線と出力信号線との物理的距離を確保することができ,駆動信号と出力信号とのクロストークの影響を低減することができる。
[0038] この場合,複合ケーブル22A,23Aと他の同軸線30,31との間に生じる隙間に介在物55’を配置しても良いが,複合ケーブル22A,23Aが駆動信号線(同軸線30,30)と出力信号線(同軸線31,31)との間の壁の役割を果たす。このため,図4の信号ケーブル20Aでは,あえて介在物55’を充填しなくても,駆動信号線と出力信号線との間の物理的な距離を十分に確保することができ,駆動信号と出力信号とのクロストークの影響を低減することができる。」

「[図4]



(2)上記(1)から,上記引用文献2には次の事項(以下,「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「駆動信号線(同軸線30,30)と出力信号線(同軸線31,31)の間にユニット化した単純線の複合ケーブル22A,23Aが挟み込まれる配置とし,駆動信号線(同軸線30,30)と出力信号線(同軸線31,31)との物理的距離を確保し,駆動信号と出力信号とのクロストークの影響を低減することができる,信号ケーブル20A。」

3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0018】上記各送出ボビン30にはそれぞれ2本の信号線20が撚り合わされた対撚信号線21が巻回されており,送出ボビン30から送り出された対撚信号線21は回転板31に設けられた通過孔(図示略)を通過する。この際,各送出ボビン30と回転板31が対撚信号線21の送給ラインを中心に同方向,同回転速度で回転することにより,4本の対撚信号線21が撚り合わされ,ボビン32で集合されて集合コア22が形成される。
【0019】この後,第1のテーピング部33により,集合コア22の外周に,ポリエチレンテープ23aが重なり代29を有して重ね巻きされる。この時,ポリエチレンテープ23aは対撚信号線21を変形させない程度に緩く重ね巻きされる。」





(2)上記(1)から,上記引用文献3には次の事項(以下,「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「 各送出ボビン30にはそれぞれ2本の信号線20が撚り合わされた対撚信号線21が巻回されており,
送出ボビン30から送り出された対撚信号線21は回転板31に設けられた通過孔を通過する際,各送出ボビン30と回転板31が対撚信号線21の送給ラインを中心に同方向,同回転速度で回転することにより,4本の対撚信号線21が撚り合わされ,ボビン32で集合されて集合コア22が形成され,
この後,第1のテーピング部33により,集合コア22の外周に,ポリエチレンテープ23aが重なり代29を有して重ね巻きされること。」

4 引用文献4について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0021】
上記介在糸5は,例えば複数のポリプロピレン糸からなり,充電ケーブル1の外形を丸くするために,上記動力線2及び信号線3と共に撚り合わされている。上記押さえ巻きテープ6は,例えば帯状の不織布からなり,互いに撚り合わされている動力線2,信号線3及び介在糸5の外周に巻き付けられて,これらを束ねる。」

(2)上記(1)から,上記引用文献4には次の事項(以下,「引用文献4記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「介在糸を用いてケーブルの形状を丸くすること。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明1の「導体33」,「絶縁層34」,「第2のコア材32」が,本願発明1の「第1中心導体」,「第1絶縁体」,「第1電線」に相当し,引用発明1の「サブユニット31」が,本願発明1の「第1対撚線」に相当する。

イ 引用発明1の「導体5」,「絶縁層6」が,本願発明1の「第3中心導体」,「第3絶縁体」に相当し,引用発明1の「一対の第1のコア材4」が,本願発明1の「一対の第3電線」に対応する。

ウ 引用発明1の「コア電線1A」が,本願発明1の「集合体」と,「第1対撚線及び前記一対の第3電線が撚り合わされてなる集合体」である点で一致し,引用発明1の「紙テープ2」が,本願発明1の「テープ部材」に対応する。
そして,引用発明1の「電気絶縁ケーブル30」が,本願発明1の「複合ケーブル」に対応する。

エ したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「 第1中心導体と前記第1中心導体の外周に被覆されている第1絶縁体とを有する1対の第1電線が撚り合されてなる第1対撚線と,
前記第1中心導体よりも断面積が大きい第3中心導体と前記第3中心導体の外周に被覆されている第3絶縁体とを有し,前記第1電線よりも外径が大きい一対の第3電線と,
前記第1対撚線及び前記一対の第3電線が撚り合わされてなる集合体の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材と,を備える,
複合ケーブル。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は,「第2対撚線」を備え,一対の「第3電線」が,「周方向において前記第1対撚線と前記第2対撚線との間に配置されている」と特定されるとともに,「第1対撚線」,「第2対撚線」「一対の第3電線」が撚り合わされてなる「集合体」であるのに対し,引用発明1は,「第2対撚線」を備えていない点。
(相違点2)本願発明1は,「両対撚線の撚り方向と,前記集合体の撚り方向とが同じ方向であり」,「前記集合体の撚り方向と,前記テープ部材の巻き付け方向とが異なって」いるのに対し,引用発明1は,そのように特定されていない点。
(相違点3)本願発明1は,「前記第1対撚線の撚りピッチが,前記集合体の撚りピッチよりも小さく,前記テープ部材の巻きピッチが,前記集合体の撚りピッチよりも小さく,前記第1対撚線の撚りピッチ以上である」と特定されているのに対し,引用発明1は,そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑み,上記相違点3について検討する。
「第1対撚線の撚りピッチ」,及び,「集合体の撚りピッチ」,「テープ部材の巻きピッチ」について,「前記第1対撚線の撚りピッチが,前記集合体の撚りピッチよりも小さく,前記テープ部材の巻きピッチが,前記集合体の撚りピッチよりも小さく,前記第1対撚線の撚りピッチ以上である」と特定することは,引用文献2-4のいずれにも記載されていない。
さらに,上記相違点1にあるように,引用発明1の「集合体」は「第2対撚線」を備えていないため,「集合体の撚りピッチ」の概念が異なり,「第1対撚線の撚りピッチ」を「集合体の撚りピッチ」より小さくする動機付けもない。
してみると,引用発明1に引用文献2-4を適用したとしても,上記相違点3に係る本願発明1の構成とすることはでない。

イ そして,上記相違点3に係る本願発明1の構成は,本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明1及び引用文献2-4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-7について
本願発明2-7は,本願発明1を引用するものであり,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び引用文献2-4に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明1-7は,当業者であっても,引用発明1及び引用文献2-4に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-11-11 
出願番号 特願2016-74094(P2016-74094)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
井上 和俊
発明の名称 複合ケーブル及び複合ハーネス  

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