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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A01N 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A01N |
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管理番号 | 1368075 |
異議申立番号 | 異議2019-701014 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-12-11 |
確定日 | 2020-09-24 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6531234号発明「ウイルス不活性化剤、ノロウイルス不活性化剤及び衛生資材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6531234号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。 特許第6531234号の請求項1ないし11、13ないし14に係る特許を維持する。 特許第6531234号の請求項12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6531234号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?14に係る特許についての出願は、平成31年4月3日(優先権主張 平成30年4月5日 日本国(JP))に出願され、令和1年5月24日にその特許権の設定登録がされ、令和1年6月12日に特許掲載公報が発行された。 その後、当該特許に対し、令和1年12月11日に安銀珍(以下、「申立人」という。)により、全請求項に対して特許異議の申立てがされたものである。 その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。 令和2年 3月25日付け 取消理由通知 同年 5月29日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) 同年 6月23日付け 通知書 同年 7月22日 意見書の提出(申立人) 第2 訂正の適否 特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和2年5月29日に訂正請求書を提出し、特許第6531234号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1?14について訂正(以下、「本件訂正」という。)することを求めた。 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において「エタノールと、アミノ酸と、アルカリ剤とを含むことを特徴とするウイルス不活性化剤。」と記載されているのを、「エタノールと、アミノ酸と、アルカリ剤とを含むウイルス不活性化剤であって、前記ウイルス不活性化剤のpHは、8?12であることを特徴とするウイルス不活性化剤。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項13において「請求項1?12のいずれか」と記載されているのを、「請求項1?11のいずれか」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項14において「請求項1?12のいずれか」と記載されているのを、「請求項1?11のいずれか」に訂正する。 2 訂正事項1について (1)訂正の目的について 訂正事項1による訂正は、訂正前にpHについて何ら特定されていなかったのを、「エタノールと、アミノ酸と、アルカリ剤とを含むウイルス不活性化剤であって、前記ウイルス不活性化剤のpHは、8?12であることを特徴とするウイルス不活性化剤。」との記載により、pHを8?12に特定し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 (2)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について 訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (3)新規事項の追加について ウイルス不活性化剤のpHが8?12であることは、願書に添付した請求項12に記載された事項であるから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 3 訂正事項2について (1)訂正の目的について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項12の記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 (2)新規事項の追加、特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について 訂正事項2は、請求項の記載を削除するものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 4 訂正事項3?4について (1)訂正の目的について 訂正事項3、4による訂正は、それぞれ、請求項13、14で引用する請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 (2)新規事項の追加、特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について 訂正事項3、4による訂正は、引用する請求項の一部を削除するものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 5 一群の請求項について 訂正事項1は請求項1を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項2?14は、直接的・間接的に本件訂正前の請求項1の記載を引用するものであるから、請求項1?14は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 そして、本件訂正の請求は、請求項1?14についてされているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 6 まとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?14〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1?14〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1?11,13?14に係る発明は、令和2年5月29日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?11,13?14に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「本件発明1」などと、また、これらを併せて「本件発明」ともいう。)である。 「【請求項1】 エタノールと、アミノ酸と、アルカリ剤とを含むウイルス不活性化剤であって、 前記ウイルス不活性化剤のpHは、8?12である ことを特徴とするウイルス不活性化剤。 【請求項2】 前記アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、トレオニン(スレオニン)、システイン、メチオニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、シスチン、テアニン、タウリン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アルギニングルタミン酸塩、リシンアスパラギン酸塩及びリシングルタミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のウイルス不活性化剤。 【請求項3】 前記アミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン及びリシンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のウイルス不活性化剤。 【請求項4】 前記アルカリ剤は、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸二水素塩、リン酸水素二塩及びリン酸三塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1?3のいずれかに記載のウイルス不活性化剤。 【請求項5】 前記アルカリ剤は、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種の塩である請求項4に記載のウイルス不活性化剤。 【請求項6】 前記ウイルス不活性化剤中の前記エタノールの質量濃度は、8.05?85.70重量%である請求項1?5のいずれかに記載のウイルス不活性化剤。 【請求項7】 前記ウイルス不活性化剤中の前記アミノ酸の質量濃度は、0.05?5.00重量%である請求項1?6のいずれかに記載のウイルス不活性化剤。 【請求項8】 前記ウイルス不活性化剤中の前記アルカリ剤の質量濃度は、0.05?10.00重量%である請求項1?7のいずれかに記載のウイルス不活性化剤。 【請求項9】 さらに酸剤を含む請求項1?8のいずれかに記載のウイルス不活性化剤。 【請求項10】 前記酸剤は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、酒石酸、フィチン酸、アジピン酸、グルコン酸及びコハク酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項9に記載のウイルス不活性化剤。 【請求項11】 前記ウイルス不活性化剤中の前記酸剤の質量濃度は、0.001?2.00重量%である請求項9又は10に記載のウイルス不活性化剤。 【請求項12】(削除) 【請求項13】 請求項1?11のいずれかに記載されたウイルス不活性化剤からなることを特徴とするノロウイルス不活性化剤。 【請求項14】 請求項1?11のいずれかに記載のウイルス不活性化剤、又は、請求項13に記載のノロウイルス不活性化剤を含むことを特徴とする衛生資材。」 第4 取消理由の概要 当審が令和2年3月25日付けで通知した取消理由及び申立人が申し立てた異議申立理由は、以下に示すとおりである。 1 当審が令和2年3月25日付けで通知した取消理由 (1)(進歩性)請求項1?8、12、14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「取消理由1」という。)。 そして、甲第1?2号証として、以下のものが挙げられている。 甲第1号証:特開2008-189645号公報 甲第2号証:特表2012-509081号公報 (2)(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「取消理由2」という。)。 ア アミノ酸について(請求項1?2,4?14) 発明の詳細な説明の記載より当業者が本件発明1の課題が解決できると認識できる範囲は、アミノ酸が特定のものであるウイルス不活性化剤であるといえる。そして、本件発明1は、アミノ酸として様々な種類のものを包含するものであるから、当業者が本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 本件発明2,4?14についても同様である。 イ 対象ウイルスについて(請求項1?12,14) 発明の詳細な説明より、対象ウイルスが「ノロウイルス」である場合には、当業者が本件発明1の課題が解決できると認識できるといえる。そして、本件発明1は、対象ウイルスとして「ノロウイルス」以外のウイルスをも包含するものであるから、当業者が本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 本件発明2?12,14についても同様である。 ウ pHについて(請求項1?11,13?14) 発明の詳細な説明の記載より当業者が本件発明1の課題が解決できると認識できる範囲は、pH8.0?12.0の範囲内において特定のアミノ酸を使用したウイルス不活性化剤であるといえる。そして、本件発明1は、広範なpH範囲で使用される態様を包含するものであるから、当業者が本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 本件発明2?11,13?14についても同様である。 2 申立人が申し立てた異議申立理由 (1)(進歩性)本件特許の請求項1?14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1?4号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?14に係る特許は、同法第113条第2号の規定に基いて取り消されるべきものである(以下、「申立理由1」という。)。 (2)(サポート要件)本件の請求項1?2,4?14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである(以下、「申立理由2」という。)。 本件特許発明1?2、4?14は、様々なアミノ酸に関する発明であるが、実施例に記載があるアミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン、塩酸リジン、グリシン、バリン、セリン、フェニルアラニン、トレオニンのみであり、発明の詳細な説明および技術常識を参酌しても、これら以外のアミノ酸について、本件特許発明の課題が解決できることを当業者が把握できるとはいえないから、本件特許発明1?2、4?14は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (3)(サポート要件)本件の請求項1?14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである(以下、「申立理由3」という。)。 本件特許発明1?14は、対象ウイルスが何ら特定されていない発明であるが、実施例に記載があるウイルスは、ネコカリシウイルス、マウスノロウイルス、インフルエンザウイルスのみであり、発明の詳細な説明および技術常識を参酌しても、これら以外のウイルスについて、本件特許発明の課題が解決できることを当業者が把握できるとはいえないから、本件特許発明1?14は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (4)(サポート要件)本件の請求項1?11,13?14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである(以下、「申立理由4」という。)。 本件特許発明1?11、13?14は、pHが何ら特定されていない発明であるが、実施例に記載があるのは、pH8?12のみであり、発明の詳細な説明および技術常識を参酌しても、これら以外のpHについて、本件特許発明の課題が解決できることを当業者が認識できるとはいえないから、本件特許発明1?11、13?14は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 そして、甲第1?2号証として上記1(1)に示したものが挙げられ、甲第3?4号証として、以下のものが挙げられている。 甲第3号証:特表2006-507378号公報 甲第4号証:国際公開第2010/047108号再公表公報 また、特許権者から、令和2年5月29日提出の意見書と共に、以下の乙第1?4号証が提出された。 乙第1号証:サラヤ株式会社ウェブサイト、「ノンエンベロープウイルスとは」、https://family.saraya.com/kansen/envelope.html、令和2年5月22日出力 乙第2号証:Journal of Hospital Infection、第98号、2018年、第331頁?第338頁、2017年9月5日発行 乙第3号証:一般社団法人 日本感染症学会ウェブサイト、「消毒と滅菌の基礎と実際」、第18頁、http://www.kansensho.or.jp/sisetunai/kosyu/pdf/q011.pdf、令和2年5月7日出力 乙第4号証:厚生労働省健康局結核感染症課長、「感染症法に基づく消毒・滅菌の手引きについて」、健感発第0130001号、平成16年1月30日 なお、以下、申立人が提出した甲第1?4号証を甲1?甲4、特許権者が提出した乙第1?4号証を、それぞれ乙1?乙4のように省略して記載する。 第5 当審の判断 1 当審が令和2年1月17日付けで通知した取消理由について 上記第2で述べたとおり、本件訂正が認められたことにより、請求項12に係る発明は削除された。 そして、当審が通知した取消理由1?2のうち、請求項12に係る発明に対するものは、対象とする請求項が存在しないものとなった。 したがって、以下に検討する取消理由1では本件発明1?8,14について、取消理由2では、本件発明1?11,13?14について検討する。 (1)取消理由1について ア 甲1?2、乙1?2の記載事項 甲1?2、乙1?2には、次のとおり記載されている。 (ア)甲1 (1a)「【請求項1】 40wt%?95wt%の低級アルコール、0.01wt%?5wt%のアルカリ性物質、0.01wt%?10wt%のカチオン界面活性剤を必須成分とする組成物。 【請求項2】 請求項1記載の組成を含み、かつpHが8?11未満の範囲を示す組成物。 【請求項3】 請求項1記載の低級アルコールはエタノールまたはイソプロピルアルコールから選ばれる。 【請求項4】 請求項1記載のアルカリ性物質はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン、炭酸塩、ケイ酸塩などから選ばれる。」 (1b)「【0006】 試験対象とするウイルスとして、アルコールによって容易に不活化されないネコカリシウイルスを選んだ。このウイルスはノロウイルスの代替として世界的によく利用されているものである。さらに薬剤抵抗性が比較的強いとされている2種類のバクテリオファージも試験に加え、親水性ウイルス全体に有効かどうかを検討することにした。」 (1c)「【0009】 低級アルコールはエタノールまたはイソプロピルアルコールから選ばれる。40wt%以上で十分な効果を発揮し、95wt%以上ではタンパク変性効果が低くなり、結果としてウイルス不活化効果が劣るので、40?95wt%であることが好ましい。 【0010】 アルカリ性物質はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン、炭酸塩、ケイ酸塩などから選ばれる。添加量の範囲は0.01?5wt%であるが、その量はアルコールへの溶解性および溶液のpH8?11未満によって限定される。」 (1d)「【0013】 本発明はエタノール、アルカリ性物質およびカチオン界面活性剤を必須成分とし、噴霧、塗布、浸漬あるいは清拭することによって、細菌や真菌を殺滅するだけでなく、従来、アルコール単独では短時間内に不活化することのできなかった親水性ウイルスの不活化にも有効に作用する組成物である。」 (1e)「【0014】 ・・・・・・ 【実施例1】 【0015】 ノロウイルスと同じ科に属するFeline calicivirus ATCC VR-782(以下FCV)に対する不活化効果を調べた。 ・・・・・・ 【0017】 薬剤感受性試験は、試験液0.9mLにFCV培養液0.1mLを1分間室温で反応させた後、DMEM培地で段階希釈し、1時間細胞に感染させた。感染後、DMEM培地を吸い出し、新たにDMEM培地を入れ、3日間培養し、TCID50(培養細胞にウイルスを感染させ、その50%が感染するウイルス量を1TCID50と呼ぶ)を算出した。 【0018】 その結果(表1)、エタノール、アルカリ性物質およびカチオン界面活性剤の必須3成分を含む本発明組成物はFCVを効果的に不活化した。」 (1f)「【0030】 【表1】 」 (イ)甲2 (2a)「【請求項1】 エンベロープウイルスを不活化またはその感染力価を低減する方法であって、前記ウイルスをアルギニンと接触させることを含み、前記接触は、少なくとも約0.2Mのアルギニンを含む溶液中で生じ、前記溶液のpHは、約6.0よりも高い、方法。」 (2b)【0070】 ・・・・・・ 実施例2 X-MLV、SuHV-1およびMMVを用いたアルギニンおよびグリシンのウイルス不活化試験 アルギニンのウイルス不活化動態をさらに特徴付け、アルギニンによって不活化されるウイルスを同定するために、中性pHの高濃度の2つのアミノ酸(アルギニンおよびグリシン)の存在下で、3つのウイルス(X-MLV、SuHV-1、およびMMV)を試験した。全ての試験は、2℃?8℃で実施された。これらの試験の実験パラメータを表14に示す。各実験を二重に実施した。」 (2c)「【0071】 【表14】 」 (2d)「【0073】 ・・・・・・ B)0.5Mアルギニン存在下のX-MLV 0.5Mアルギニン(pH7.0)の存在下において(表14)、X-MLVウイルス力価は、120分の曝露時間にわたり減少した(表17)。X-MLV不活化動態のプロットを図7に示す。X-MLVの3.4および3.5の減少係数が、120分の曝露後の2つの実行で達成された。ウイルス力価は減少したが、検出レベルが、120分の曝露後に存在し、これは、ある程度の不活化が、0.5Mアルギニンの存在下で生じたことを示す。」 (2e)「【0074】 【表17】 」 (2f)「【0074】 ・・・・・・ C)1.0Mアルギニンの存在下のSuHV-1 1.0Mアルギニン(pH7.0)の存在下において(表14)、SuHV-1ウイルス力価は、二重実行において、30分の曝露後、検出の検定限界以下であった(表18)。SuHV-1不活化動態のプロットを図8に示す。SuHV-1の3.68以上および3.43以上の減少係数が、240分の曝露後の2つの実行で達成された。試験の結果は、中性pH(7.0)での、高濃度のアルギニン(1.0M)の存在が、比較的速い動態でSuHV-1ウイルスを効果的に不活化するのに十分であったことを示した。」 (2g)「【0075】 【表18】 」 (ウ)乙1 (A)「ノンエンベロープウイルスとは ・・・ エンベロープのあるウイルスは、アルコール消毒剤からダメージを受けやすいのに対し、エンベロープのないウイルス(ノンエンベロープウイルス)は、ダメージを受けにくく、アルコール消毒剤が一般的に効きにくい傾向にあります。」(ウイルスの構造を示す図の下2?3行) (エ)乙2(訳文で示す。) (B)「エンベロープウイルスに対する有効性 エタノールは、様々なエンベロープウイルスに対して効果的であることが示されてきた[14]。42.6%(w/w)の濃度で始まり、エタノールは、SARSコロナウイルス、・・・インフルエンザAウイルス・・・並びに、RSVに対して30秒以内で効果的である[5,14-35]。」(第332頁左欄39?47行) イ 甲1に記載された発明 甲1の請求項1には、40wt%?95wt%のエタノール、0.01wt%?5wt%のアルカリ性物質、およびカチオン界面活性剤を含む組成物が記載され、請求項2には、請求項1の組成を含み、かつpHが8?11未満の範囲を示す組成物が記載されており(記載事項(1a))、甲1には、特許請求の範囲に記載された発明に対応した親水性ウイルス不活化のための組成物が記載されているといえるので(記載事項(1a)?(1f))、次の発明が記載されていると認められる。 「40wt%?95wt%のエタノール、0.01wt%?5wt%のアルカリ性物質およびカチオン界面活性剤を含み、かつpHが8?11未満の範囲を示す、親水性ウイルス不活化組成物。」(以下、「甲1発明」という。) ウ 本件発明1について (ア)対比 甲1発明の「アルカリ性物質」は、本件発明1の「アルカリ剤」に相当し、甲1発明の「親水性ウイルス不活化組成物」は、本件発明1の「ウイルス不活性化剤」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、 「エタノールと、アルカリ剤とを含むことを特徴とするウイルス不活性化剤」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) (相違点1)本件発明1はさらにアミノ酸を含むのに対し、甲1発明はアミノ酸を含むとはされていない点。 (相違点2)本件発明1はカチオン界面活性剤を含むとはされていないのに対し、甲1発明はカチオン界面活性剤を含む点。 (イ)相違点についての検討 相違点1について検討する。 甲2において、記載事項(2a)の「エンベロープウイルスを不活化またはその感染力価を低減する方法」を記載事項(2b)?(2g)において具体的に確認していることから、中性pH(7.0)においてアルギニンがエンベロープウイルスを不活化することが、本件特許出願の優先日前に公知であったといえる。 しかしながら、甲1には、アミノ酸を配合することについて記載も示唆もない。 そして、ノロウイルスはノンエンベロープウイルスであることが技術常識として知られているところ、ノンエンベロープウイルスが、エンベロープウイルスと比べて一般的に薬剤抵抗性が高いのに対し、エンベロープウイルスがアルコール消毒剤からダメージを受けやすいこと(記載事項(A))は周知の事項であり、40wt%程度のエタノールだけでも不活化されること(記載事項(B)も本件特許出願の優先日前に公知であったといえる。 そうすると、甲2に記載される、エンベロープウイルスを不活化するアルギニンを甲1発明に添加したからといって、対象ウイルスを拡大できると当業者が認識するとはいえないから、甲1発明に、わざわざアルギニンを添加する動機付けがあるとはいえない。 したがって、相違点1は、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ)小括 よって、相違点1は当業者が容易に想到し得たものとは認められないので、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。 エ 本件発明2?8,14について 本件発明2?8,14はいずれも、本件発明1の発明特定事項すべてを、その発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により当業者が容易に発明することができたものではない。 オ 申立人の主張について 申立人は、令和2年7月22日付けの意見書において、甲2の段落0010の「Kozloffらは、0.2Mアルギニンの使用が、いくつかのバクテリオファージのT偶数株の調製物(T2L、非エンベロープウイルス)を不可逆的に不活化したことを観察している。Kozloffらは、このウイルスの特異的な不活化が、30℃、かつ6.5から8.25のpH範囲で最も効果的であり、0.033から0.2Mのアルギニンで達成され得ることも発見した。」との記載に接した当業者は、アルギニンが、非エンベロープウイルスに対しても条件によっては不活化する可能性があることを認識し、それゆえ、甲1発明の組成物において、甲2に記載のアルギニンを、対象ウイルスを拡大するために採用することは当業者にとって容易に想到し得たものである旨主張する。 以下、当該主張について検討する。 甲2の段落0010の記載は、特定の特異的な条件の下でアルギニンが非エンベロープウイルスと不活化する可能性があることを示しているにすぎず、当該特定の条件と甲1に記載された条件と同一とは言えないのであるから、アルギニンが非エンベロープウイルスを不活化できるとまではいえない。 したがって、甲2の段落0010の記載を参酌しても、甲1発明にアルギニンを添加する動機付けがあるとはいえないし、当業者が容易になし得たともいえない。 したがって、申立人のかかる主張は採用することができない。 カ 以上のとおり、本件発明1?8,14は甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 (2)取消理由2について 本件発明の解決しようとする課題は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明(特に【0010】?【0013】等)の記載から、使用時の金属腐食性、皮膚刺激性を抑え、タンパク質汚れ存在下でも充分なウイルス不活性化効果を示すウイルス不活性化剤を提供することにあると認められる。 ア アミノ酸について(請求項1?2,4?11,13?14) 上記第2で述べたとおり、本件訂正後の本件発明1はpHが8?12に特定された。 本件明細書の段落0034には、「アミノ酸の分子内の窒素原子の非共有電子対は、アルカリ剤との相乗効果によってウイルスの膜構造を変化させることができると考えられ」、「このような作用により、ウイルスを不活性化することができると考えられる」こと、段落0035には、「アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、トレオニン(スレオニン)、システイン、メチオニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、シスチン、テアニン、タウリン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アルギニングルタミン酸塩、リシンアスパラギン酸塩及びリシングルタミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが望まし」く、「これらのアミノ酸は、アルカリ剤との相乗効果によってウイルスを不活性化するのに適している」ことが記載され、段落0063?0072には、アミノ酸として、アルギニン、ヒスチジン、塩酸リシンという塩基性アミノ酸を使用した実施例1?8だけでなく、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、フェニルアラニン、トレオニン、メチオニンという塩基性アミノ酸には該当しないアミノ酸を使用した実施例9?17においても、タンパク質汚れ存在時、ネコカリシウイルス及びマウスノロウイルス感染力価測定の評価がAであったことが示されている。 上記本件明細書の記載を参酌すれば、本件発明の詳細な説明及び技術常識から、当業者は、pH8?12の塩基性条件下であれば、アミノ酸の種類によらず、実施例と同等のウイルス不活性化効果が得られることを認識でき、アミノ酸に関し、本件発明1は上記課題が解決できると認識できるといえる。 そして、特許権者が、令和2年5月29日に提出した意見書において、アミノ酸の分子内の窒素原子の非共有電子対の効果に関し説明する内容も、上記本件明細書の記載と整合している。 したがって、上記第4の1(2)アに示した取消理由に関し、本件特許の請求項1?2,4?11,13?14に係る発明は、本件発明が、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものであるとはいえない。 イ 対象ウイルスについて(請求項1?11,14) 本件明細書の段落0052には、「本発明のウイルス不活性化剤は、インフルエンザウイルス等のエンベロープウイルスや、ノロウイルス等のノンエンベロープウイルスに対してウイルス不活性化効果を示す」ことが記載され、段落0063?0072には、実施例1?17において、ネコカリシウイルス及びマウスノロウイルス対し、タンパク質汚れ存在時・なし時の両方で同等の効果があることが示され、実施例1?18において、インフルエンザウイルスに対し、タンパク質汚れなし時に効果があることが示されている。 そして、特許権者が提示した乙3には、「ノロウイルスは他のウイルスや細菌に比べて消毒薬や熱に対して抵抗性が強いといわれてい」ることが記載され、乙4の第18頁には、「ウイルスは、脂質を含むエンベロープと呼ばれる膜で包まれている場合と、エンベロープを持たない小型球形ウイルスに分類できる。消毒薬による不活性化を受けやすいか抵抗性かの違いは、エンベロープを有しているかどうかにより異なる。エンベロープを有するウイルスは消毒薬に対して感性である」ことが記載されている。 上記本件明細書の記載及び上記乙3?4の技術常識といえる記載事項を参酌すれば、タンパク質汚れ存在下で「ノロウイルス」を不活性化できるのであれば、他のウイルスもタンパク質汚れ存在下で不活性化できると、当業者は認識できるといえる。 したがって、上記第4の1(2)イに示した取消理由に関し、本件特許の請求項1?11,14に係る発明は、本件発明が、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものであるとはいえない。 ウ pHについて(請求項1?11,13?14) 上記第2で述べたとおり、本件訂正後の本件発明1は、課題が解決できると認識できる範囲である、pHが8?12に特定された。 本件明細書の段落0043には、「ウイルス不活性化剤のpHは、8?12であることが望まし」いことが記載され、段落0063?0072には、実施例1?18において、pHが8?12の範囲でウイルスを不活性化できることが示されている。 したがって、上記第4の1(2)ウに示した取消理由に関し、本件特許の請求項1?11,13?14に係る発明は、本件発明が、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものであるとはいえない。 エ 以上のとおり、本件特許の請求項1?11,13?14の記載は、本件発明が、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものであるとはいえない。 2 取消理由通知で採用しなかった申立人が申し立てた異議申立理由についての検討 (1)削除された請求項12に係る発明について 上記第2で述べたとおり、本件訂正が認められたことにより、請求項12に係る発明は削除された。 そして、申立人が申し立てた異議申立理由のうち、請求項12に係る発明に対するものは、対象とする請求項が存在しないものとなった。 したがって、請求項12に係る発明に対する特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。 以下に検討する申立理由1では、本件発明1?11,13?14について検討し、申立理由3(対象ウイルスについて)では、本件発明13(本件発明1?11,14については上記1(2)イ参照。)について検討する。 (2)申立理由1について ア 甲3?4の記載事項 甲3?4には、以下の事項が記載されている。 (ア)甲3 (3a)「【請求項1】 非荷電極性置換基を有するアミノ酸および/またはそれらの誘導体および/または該アミノ酸を含有するペプチドおよび/またはそれらの誘導体、および/またはそれらの混合物の添加により酸化還元特性が安定化され、その値がゼロとみなされる水素電極の電位に対する酸化還元電位の自発的増大を特徴とする、酸化還元特性の自発的変更を有する水溶液および/または原料含有水に対応する安定化酸化還元特性を有する組成物。 【請求項2】 前記アミノ酸がグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンまたはグルタミンにより代表される、請求項1に記載の組成物。 ・・・ 【請求項5】 水溶液および/または原料含有水が、ミネラルおよび/または飲料水、ミルク組成物、ジュース、アルコールおよび/またはノンアルコール飲料、マヨネーズ、ケチャップ、ソース、肉、魚、野菜および/または果物半製品、ソーセージおよび/または缶詰組成物、菓子、パン、マカロニを含む食材、消毒剤、防腐剤、保護剤、酸化防止剤、抗突然変異物質、放射線防護剤、免疫賦活剤、アダプトゲンの特性を有する食材、殺ウイルス剤、抗ウイルス剤、消炎剤としての食材、組織再生および/または人間および/または動物に有用な腸内細菌叢の分裂活性の刺激剤としての食材により代表される、請求項1に記載の組成物。」 (イ)甲4 (4a)「【請求項1】 カリシウイルスの存在が疑われ、かつタンパク質を含有する物に、有効成分としてエタノールと酸を含み、pHが2.5?5.0の範囲にある水溶液からなる組成物を接触させることを含む、タンパク質共存下のカリシウイルスを不活化する方法。 ・・・ 【請求項8】 前記酸が有機酸または無機酸である請求項1?7のいずれかに記載の方法。 ・・・ 【請求項13】 前記カリシウイルスが、ノロウイルスである請求項1?12のいずれかに記載の方法。」 イ 本件発明1について 記載事項(3a)によると、甲3におけるアミノ酸は、酸化還元特性を安定化するために添加される成分であるといえる。 そして、甲1には酸化還元特性に関する記載も示唆もない。 そうすると、上述のとおり、甲2の記載に加えて、甲3の記載を参酌しても、甲1発明にアミノ酸を添加する動機付けがあるとはいえず、当業者が容易になし得たとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2?3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 ウ 本件発明2?8について 本件発明2?8はいずれも、本件発明1の発明特定事項すべてを、その発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2?3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 エ 本件発明9?11ついて 記載事項(4a)によると、甲4における「カリシウイルスを不活化する方法」はpHが2.5?5.0の範囲にある組成物を用いる方法であるといえる。 一方、甲1発明の組成物はpHが8?11未満の範囲を示すものである。 そうすると、甲4に記載された組成物の一成分である酸を甲1発明に添加する動機付けがあるとはいえないし、当業者が容易になし得たともいえない。 したがって、本件発明9?11は、甲1に記載された発明及び甲2?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 オ 本件発明13?14について 本件発明13?14はいずれも、本件発明1の発明特定事項すべてを、その発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2?3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 また、本件発明13?14はいずれも、本件発明9の発明特定事項すべてを、その発明特定事項とするものであるから、本件発明9と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 したがって、本件発明13?14は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 (3)申立理由3について 上記第4の2(3)に示した申立理由に関し、本件特許の請求項13に係る発明は、対象ウイルスがノロウイルスに特定されているから、本件発明が、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものであるとはいえない。 (4)よって、申立人が申し立てた異議申立理由によって、本件請求項1?11,13?14に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1?11,13?14に係る特許は、令和2年3月25日付けの取消理由通知書に記載した取消理由及び申立人が申し立てた特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?11,13?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件請求項12に係る特許は訂正により削除され、本件特許の請求項12に係る特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 エタノールと、アミノ酸と、アルカリ剤とを含むウイルス不活性化剤であって、 前記ウイルス不活性化剤のpHは、8?12である ことを特徴とするウイルス不活性化剤。 【請求項2】 前記アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、トレオニン(スレオニン)、システイン、メチオニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、シスチン、テアニン、タウリン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アルギニングルタミン酸塩、リシンアスパラギン酸塩及びリシングルタミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のウイルス不活性化剤。 【請求項3】 前記アミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン及びリシンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のウイルス不活性化剤。 【請求項4】 前記アルカリ剤は、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸二水素塩、リン酸水素二塩及びリン酸三塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1?3のいずれかに記載のウイルス不活性化剤。 【請求項5】 前記アルカリ剤は、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種の塩である請求項4に記載のウイルス不活性化剤。 【請求項6】 前記ウイルス不活性化剤中の前記エタノールの質量濃度は、8.05?85.70重量%である請求項1?5のいずれかに記載のウイルス不活性化剤。 【請求項7】 前記ウイルス不活性化剤中の前記アミノ酸の質量濃度は、0.05?5.00重量%である請求項1?6のいずれかに記載のウイルス不活性化剤。 【請求項8】 前記ウイルス不活性化剤中の前記アルカリ剤の質量濃度は、0.05?10.00重量%である請求項1?7のいずれかに記載のウイルス不活性化剤。 【請求項9】 さらに酸剤を含む請求項1?8のいずれかに記載のウイルス不活性化剤。 【請求項10】 前記酸剤は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、酒石酸、フィチン酸、アジピン酸、グルコン酸及びコハク酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項9に記載のウイルス不活性化剤。 【請求項11】 前記ウイルス不活性化剤中の前記酸剤の質量濃度は、0.001?2.00重量%である請求項9又は10に記載のウイルス不活性化剤。 【請求項12】(削除) 【請求項13】 請求項1?11のいずれかに記載されたウイルス不活性化剤からなることを特徴とするノロウイルス不活性化剤。 【請求項14】 請求項1?11のいずれかに記載のウイルス不活性化剤、又は、請求項13に記載のノロウイルス不活性化剤を含むことを特徴とする衛生資材。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-09-11 |
出願番号 | 特願2019-71423(P2019-71423) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(A01N)
P 1 651・ 121- YAA (A01N) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 奥谷 暢子 |
特許庁審判長 |
瀬良 聡機 |
特許庁審判官 |
櫛引 智子 冨永 保 |
登録日 | 2019-05-24 |
登録番号 | 特許第6531234号(P6531234) |
権利者 | 株式会社ニイタカ |
発明の名称 | ウイルス不活性化剤、ノロウイルス不活性化剤及び衛生資材 |
代理人 | 特許業務法人 安富国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人安富国際特許事務所 |