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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1368619
審判番号 不服2019-6873  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-27 
確定日 2020-12-15 
事件の表示 特願2015-146804「導電性基板、導電性基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 2日出願公開、特開2017- 27446、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成27年7月24日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 9月18日付け 拒絶理由通知書
平成30年11月22日 意見書、手続補正書の提出
平成30年12月 4日付け 拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成31年 2月14日 意見書、手続補正書の提出
平成31年 2月21日付け 平成31年2月14日の手続補正に
ついての補正の却下の決定、拒絶査
定(原査定)
令和 元年 5月27日 審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 8月24日付け 拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 2年10月23日 意見書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成31年2月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし4に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1. 特開2012-198879号公報
2. 特開2013-139597号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし3に係る発明は、以下の引用文献1、3に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1 特開2012-198879号公報
3 特開2005-290541号公報

第4 本願発明
本願請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、令和元年5月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし4は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
絶縁性基材と、
前記絶縁性基材の少なくとも一方の面上に配置された金属配線と、
前記金属配線の上面、及び側面に配置された黒化層と、を有し、
前記黒化層が、ニッケルと硫黄とコバルトのみから構成される導電性基板。
【請求項2】
絶縁性基材の少なくとも一方の面上に金属配線を形成する金属配線形成工程と、
前記金属配線の上面及び側面に黒化層を形成する黒化層形成工程とを有し、
前記黒化層が、ニッケルと硫黄とコバルトのみから構成される導電性基板の製造方法。
【請求項3】
前記金属配線形成工程は、
前記絶縁性基材の少なくとも一方の面上に金属層を形成する金属層形成ステップと、
前記金属層をパターン化し、前記金属配線を形成するパターン化ステップと、
を有する請求項2に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項4】
前記黒化層形成工程では、無電解めっき法により前記黒化層を形成する請求項2または3に記載の導電性基板の製造方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル(タッチスクリーン)に関する。特に、細線パターンによる電極の列が形成されたマルチタッチ可能な抵抗膜方式のタッチパネルに関する。」

「【0046】
本発明においては、形成された電極に被覆層を設けることができる。被覆層は形成された金属あるいは合金の金属光沢を目立たなくする視覚的機能と、金属の防錆、マイグレーション防止による耐久性向上の機能を持ち、本発明においてはこの被覆層を黒化層と呼ぶ。次に上記の黒化層(被覆層)の形成材料と形成方法について説明する。黒色層の好適な積層方法の例としては、メッキ処理とケミカルエッチング法を挙げることができる。メッキ処理としては公知の黒色メッキと呼ばれるものであれば何でも使用して良く、黒色niメッキ、黒色Crメッキ、黒色Sn-ni合金メッキ、Sn-ni-Cu合金メッキ、黒色亜鉛クロメート処理等が例として挙げられる。具体的には、日本化学産業(株)製の黒色メッキ浴(商品名、ニッカブラック、Sn-ni合金系)、(株)金属化学工業製の黒色メッキ浴(商品名、エボニ-クロム85シリ-ズ、Cr系)、ディップソール(株)性クロメート剤(商品名、ZB-541、亜鉛メッキ黒色クロメート剤)を使用することができる。メッキ法としては無電解メッキ、電解メッキのどちらの方法でも良く、緩やかな条件であっても高速メッキであっても良い。メッキ厚みは黒色として認知できれば厚みは限定されないが、通常のメッキ厚みは1μm?5μmが好適である。
【0047】
導電性金属部の一部を酸化処理若しくは硫化処理して黒色部を形成することもできる。例えば導電性金属部が銅である場合、銅表面の黒化処理剤の例としては、メルテックス(株)製、商品名エンプレートMB438A,B、三菱瓦斯化学(株)製、商品名nPE-900、メック(株)製、商品名メックエッチボンドBO-7770V、アイソレ-ト化学研究所製、商品名コパ-ブラックCuO、同CuS、セレン系のコパ- ブラックno.65等を使用することができる。上記の他には例えば、硫化物を処理して硫化水素(H2S)を発生させ、銅の表面を硫化銅(CuS)として黒化することももちろん可能である。これらの処理は黒色として認知できれば厚みは限定されないが、通常3μm以下が好ましく、0.2μm?2μmが更に好ましい。
【0048】
〔本発明の電極の形成方法〕
次に本発明の上部電極群及び下部電極群の形成方法について説明する。
はじめに電極を形成する材料として、金属箔、あるいは薄膜としての利用(上記A))の場合の形成方法を図9を参照しながら説明する。図9の(a)はタッチ面を兼ねる上部透明基板11であり、たとえば約100μmのPETフィルムである。このフィルムの表面を清浄化し、次いでこのフィルムの表面に、金属あるいは合金の薄層21を設ける(図9の(b))。金属あるいは合金の薄層21を設ける前に、前述の易接着層を設けることが好ましいが、本図面では省略した。
金属あるいは合金の薄層を設ける方法には真空製膜法と化学的製膜法とがあるが、膜が薄い場合は蒸着法などの真空製膜法が用いられる。スパッタ法やイオンプレーティング法は蒸着法よりも導電性のよい膜が得られやすく好ましい方法である。膜厚が500nmを超える場合には電解メッキ法や無電解メッキ法を用いることができ、低コストで製膜でき好ましい。
【0049】
金属は上記に記載した材料を用いることができるが、銀、銅、アルミニウムあるいはこれらの合金が好ましく用いられる。薄層の形成方法にはスパッタ法などが用いられるが、他の方法であってもよい。形成した金属の薄層の厚みは、薄いほど剥離しにくいので好ましいが、薄いと抵抗が高くなりタッチパネルとしての応答性が悪くなるため、0.1μm以上3μm以下が好ましく、0.2μm以上2μm以下がより好ましい。剥離を防止するためには、「線幅/厚み」の比率を2.5以上とすることが好ましく、4以上とすることが更に好ましい。
次に上記で形成した金属薄膜上にフォトレジスト膜を形成しフォトマスク(図4a、図6などからマスクを起こしたもの)を用いて露光し、現像液で現像することにより硬化したレジスト膜のパターンを形成する。これをエッチング液によりエッチングして電極細線以外の部分を除去し、残った電極際線上の硬化したレジスト膜を剥離除去することにより金属細線からなる電極パターンを形成する(図9の(c))。図9の(c)の51が形成された電極の導電性細線51を表している。
次に上記で形成されたセンサー電極に必要に応じて黒化層45を設ける(図9の(d))。黒化層(被覆層)の厚みは、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、0.2μm以上2μm以下が特に好ましい。次にこの黒化層(被覆層)の電極細線を被覆していない視認部上の黒化層をフォトリソグラフィー法により除去することにより、視認性、耐久性に優れたパターンの電極パターンを形成することができる(図9の(e))。」

【第9図】


上記記載から、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「PETフィルムからなる上部透明基板11と、
上部透明電極11の一方の面に形成された金属細線からなる電極パターンである導電性細線51と、
導電性細線51の上面、及び側面を被覆する黒色niメッキ、黒色Crメッキ、黒色Sn-ni合金メッキ、Sn-ni-Cu合金メッキ、黒色亜鉛クロメート処理等による黒化層45と、を有する、
導電性細線51が形成された上部透明基板。」

また、上記記載から、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「PETフィルムからなる上部透明基板11の表面に、金属あるいは合金の薄膜21を設け、薄膜21をエッチングし、金属細線からなる電極パターンである導電性細線51を形成する工程と、
導電性細線51の上面、及び側面を被覆する黒化層45を黒色niメッキ、黒色Crメッキ、黒色Sn-ni合金メッキ、Sn-ni-Cu合金メッキ、黒色亜鉛クロメート処理等により形成する工程とを有する、
導電性細線51が形成された上部透明基板を形成する方法。」

2 引用文献2について
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色被膜製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅及び銅合金は、その優れた電気伝導性を活かして、様々なエレクトロニクス製品に使用されている。銅特有の赤みを帯びた金属光沢が望ましくない場合には、表面を黒色化して目立たなくして用いられる。例えば、プラズマディスプレイ等の表示装置の前面に設置される電磁波シールド材には、銅の金属光沢が眩しさを感じさせるのを防止するため、銅製の細線メッシュの表面を黒色化したものが使用される。」

「【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蛍光X線分析による硫黄(S)の検出強度の比率が一定値以上であるから、黒色めっき被膜にニッケル(Ni)及び/またはコバルト(Co)及び錫(Sn)とともに、硫黄(S)が一定量以上取り込まれる。これによって、黒色度が十分な黒色めっき被膜が、表面に効率よく形成された黒色被膜製品となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】黒色めっき被膜中のNi成分の検出強度とSn成分の検出強度との和に対するS成分の検出強度の比率と、SCIモードで測定したL*値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
本実施形態においては、金属としての銅または銅合金を、銅または銅合金の電位低下剤であるチオ尿素系化合物が添加され且つ金属塩としてNi塩とSn塩、あるいはCo塩とSn塩が、キレート剤として有機酸塩が、界面活性剤として非イオン系界面活性剤が、pH調整剤として無機酸が、溶媒として水が含まれる無電解めっき液に、所定の条件で浸漬することによって、銅または銅合金の表面に均一な黒色めっき被膜を高速で形成する。
銅または銅合金は、その全体が銅または銅合金によって形成されていてもよく、あるいはその表面のみが銅または銅合金で形成されていてもよい。
【0014】
本実施形態における黒色めっき被膜を形成するための無電解めっき液の構成とその作用は、以下のように考えられる。
無電解めっき液に銅または銅合金の電位低下剤であるチオ尿素系化合物を添加することにより、無電解めっき液に浸漬した銅または銅合金の標準電極電位が低下し、無電解めっき液中のNi^(2+)イオン、Co^(2+)イオン、Sn^(2+)イオン、Sn^(4+)イオンの標準電極電位よりも、銅または銅合金の標準電極電位が低くなる。その結果、銅または銅合金の表面からCu^(2+)イオンが溶出する。そのとき発生した電子を、無電解めっき液中のNi^(2+)イオン、Co^(2+)イオン、Sn^(2+)イオン、Sn^(4+)イオンが受け取ることにより、銅または銅合金の表面にNi成分、Co成分、Sn成分、またはその複合成分が無電解めっきされる。この際、めっき液の各種成分濃度、pH、温度を本実施形態の条件に調整することが最も重要である。それによって、S成分が無電解めっき被膜に取り込まれ、その結果、黒色めっき被膜が形成される。
【0015】
無電解めっき被膜に取り込まれたS成分の量については、蛍光X線分析による検出強度から算出される。同様に蛍光X線分析によって検出されたNi及び/またはCo成分の検出強度とSn成分の検出強度との和に対するS成分の検出強度の比率が、0.0005(0.05%)以上であると、黒色度の高い均一な厚さを有する黒色めっき被膜を得ることができる。」

3 引用文献3について
引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、反射率が低く、外観にむらがなく、残渣が殆どない均一な外観を有する電磁波遮蔽用黒化表面処理銅箔の製造方法及びその表面処理銅箔に関する。」

「【0008】
本発明の主な特徴は、黒色表面処理された銅箔を塩基性電解浴で酸化処理することにより、銅箔表面を黒色にしながらも、むら、又は残渣が発生しない均一な外観の黒化表面処理銅箔を得ることができることにある。
銅箔の黒化処理は、黒色を誘発する金属が含まれた電解メッキ浴において、銅箔を陰極に配置し、上記陰極の銅箔表面上に上記金属メッキ層を析出させることにより行なわれる。黒色を誘発するとして知られた金属としては、Cu、Cr、Al、Co等があるが、Cuは完全な黒色を導出することができるが、追って銅箔回路パターン形成時、銅箔回路側に浸透して回路パターンを損傷させる問題があり、Crは銅箔回路形成時のエッチング性に問題を起こすため、本発明に適用することが難しい。また、Alは、その金属特性上、後述する陽極酸化処理が可能でない。よって、製品損傷防止、製造工程上の問題点及び陽極酸化処理の効率性等を考慮すれば、Coが最も適当な金属である。
【0009】
Coの黒化メッキは、例えば、Ir電極を陽極に使用し、陰極を銅箔にして限界電流密度以上の電流でメッキをすることにより行なわれ、銅箔表面に形成されたCo黒化メッキ層は、Co_(3)O_(4)、CoO(OH)、CoOのような酸化物の形態になっている。
電解メッキ浴に含まれるCoの濃度は、1?80g/lから選ぶことができるが、最も効率良く黒化メッキ層が形成され得る濃度は、10?30g/lである。工業的に経済的なメッキ浴の電流密度は0.1?60A/dm^(2)であり、特に、5?25A/dm^(2)の電流密度が好ましい。また、メッキ時間は1?20秒の範囲で可能であるが、電流密度、電解液濃度等を考慮して上記範囲以外も可能である。
【0010】
一方、銅箔の剥離強度向上や銅箔による特性を付加するために、Co以外の金属成分をも電解浴に含ませることができる。銅箔の特性を害せず、剥離強度を向上させる元素としてNi、Feが適当である。上記金属成分とCoを合わせた電解液中の金属成分濃度は1?80g/lの範囲にあるものがメッキ効率性の面で好ましい。
黒化メッキ層が形成された銅箔は、表面にメッキ粒子層がノジュール(nodule)形に析出された状態である。ところが、メッキ粒子層が形成された銅箔の表面粗度は全体的には電磁波遮蔽用銅箔に使用可能な範囲内にあるが、微視的にその表面をよく見れば、銅箔の表面条件又はメッキ条件等に従って銅箔の表面に析出されるノデユール粒子の大きさや数が部分的に差異があるようになる。また、析出反応によって陰極では水素が発生するようになるが、このような水素が発生する部分のメッキの厚さは残り部分の厚さと微細な差異を見せる。」

「【実施例3】
【0018】
実施例1と同じ条件で銅箔の表面を前処理した後、以下の条件で黒化メッキ処理及び陽極酸化処理を行った。
黒化メッキ処理条件;Co金属イオンの濃度10g/l、Ni金属イオン濃度8g/l、(Niは硫酸ニッケル形態にメッキ浴に添加される)、緩衝液(H_(3)BO_(3))濃度30g/l、pH3.5、電解液の温度30℃、電流密度20A/dm^(2)、メッキ時間4秒。
陽極酸化処理条件;NaOH 陽極酸化浴のpH:13、陽極酸化浴温度:70℃、電流密度:15A/dm^(2)、酸化処理時間4秒。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1の「PETフィルムからなる上部透明基板11」、「上部透明電極11の一方の面に形成された金属細線からなる電極パターンである導電性細線51」、「導電性細線51の上面、及び側面を被覆する」「黒化層45」、「導電性細線51が形成された上部透明基板」は、それぞれ本願発明1の「絶縁性基材」、「前記絶縁性基材の少なくとも一方の面上に配置された金属配線」、「前記金属配線の上面、及び側面に配置された黒化層」、「導電性基板」に相当する。

イ そうすると、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「絶縁性基材と、
前記絶縁性基材の少なくとも一方の面上に配置された金属配線と、
前記金属配線の上面、及び側面に配置された黒化層と、
を有する導電性基板。」

[相違点1]
本願発明1は「前記黒化層が、ニッケルと硫黄とコバルトのみから構成され」ているのに対して、引用発明1の「黒化層45」は、黒色niメッキ、黒色Crメッキ、黒色Sn-ni合金メッキ、Sn-ni-Cu合金メッキ、黒色亜鉛クロメート処理等で被覆されるものであるから、ニッケルと硫黄とコバルトのみから構成されるものではない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1に係る「前記黒化層が、ニッケルと硫黄とコバルトのみから構成される」ことは、上記引用文献2及び3には記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明1並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明2の「PETフィルムからなる上部透明基板11の表面に、金属あるいは合金の薄膜21を設け、薄膜21をエッチングし、金属細線からなる電極パターンである導電性細線51を形成する工程」、「導電性細線51の上面、及び側面を被覆する黒化層45を」「形成する工程」、「導電性細線51が形成された上部透明基板を形成する方法」は、それぞれ本願発明2の「絶縁性基材の少なくとも一方の面上に金属配線を形成する金属配線形成工程」、「前記金属配線の上面及び側面に黒化層を形成する黒化層形成工程」、「導電性基板の製造方法」に相当する。

イ そうすると、本願発明2と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「絶縁性基材の少なくとも一方の面上に金属配線を形成する金属配線形成工程と、
前記金属配線の上面及び側面に黒化層を形成する黒化層形成工程とを有する、
導電性基板の製造方法。」

[相違点2]
本願発明2は「前記黒化層が、ニッケルと硫黄とコバルトのみから構成され」ているのに対して、引用発明2の「黒化層45」は、黒色niメッキ、黒色Crメッキ、黒色Sn-ni合金メッキ、Sn-ni-Cu合金メッキ、黒色亜鉛クロメート処理等で被覆されるものであるから、ニッケルと硫黄とコバルトのみから構成されるものではない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点2について検討すると、相違点2に係る「前記黒化層が、ニッケルと硫黄とコバルトのみから構成される」ことは、上記引用文献2及び3には記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明2は、当業者であっても引用発明2並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明3及び4について
本願発明3及び4は、本願発明2の「前記黒化層が、ニッケルと硫黄とコバルトのみから構成される」点と同一の点を備えているから、本願発明2と同じ理由により、当業者であっても引用発明2並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和元年5月27日付の補正により、補正後の請求項1ないし4は、「前記黒化層が、ニッケルと硫黄とコバルトのみから構成される」という技術的事項を有するものとなった。当該「前記黒化層が、ニッケルと硫黄とコバルトのみから構成される」という技術的事項は、原査定における引用文献1及び2には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし4は、当業者であっても、原査定における引用文献1及び2に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-11-30 
出願番号 特願2015-146804(P2015-146804)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菊池 伸郎桜井 茂行  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 太田 龍一
小田 浩
発明の名称 導電性基板、導電性基板の製造方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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