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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1368627
審判番号 不服2020-10336  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-22 
確定日 2020-12-15 
事件の表示 特願2015-215746「眼科装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月25日出願公開、特開2017- 86163、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年11月2日の出願であって、平成30年10月30日付けで手続補正書が提出され、令和元年7月5日付けで拒絶理由が通知され、同年9月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年11月27日付けで拒絶理由が通知され、令和2年2月3日付けで意見書が提出され、同年4月16日付けで拒絶査定(原査定)されたところ、同年7月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の理由
原査定(令和2年4月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1及び3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
この出願の請求項3及び4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1、3に記載された発明及び周知技術(例えば引用文献2)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2005-287752号公報
引用文献2:特開平8-206067号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2013-208316号公報

第3 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、令和2年7月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
被検眼の前眼部の正面画像を撮像する撮像素子を有する前眼部観察光学系、および、検眼軸を有し被検眼を検査するための検眼系、を有する検眼部と、
前記被検眼に対する前記検眼軸の位置関係を調整するための駆動部と、
眼特性が検査された前記検眼軸の位置を示す検眼位置情報であって、今回検査よりも前の日の検査である前回検査における検眼軸の位置である前回位置を示す検眼位置情報を取得する取得手段と、
前記検眼軸を被検眼上の基準位置に一致するよう前記駆動部を制御すると共に、前記検眼軸が被検眼の基準位置に一致した状態での検査を行う第1誘導手段と、
前記第1誘導手段による検査結果に基づいて、前記前回位置にて再検査を行うか否かを判定する判定処理手段と、
前記判定処理手段によって前記前回位置にて再検査を行うと判定された場合に、被検眼に対する前記検眼軸のアライメントを、前記取得手段によって取得される検眼位置情報に基づいて前記前回位置に誘導する第2誘導手段と、を備える眼科装置。」

なお、本願発明2の概要は以下のとおりである。

本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について

(1)引用文献1の記載
上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引1ア)
「【0007】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は実施例である眼屈折力測定装置の外観概略図を示す図である。1は本体部であり、本体部1には被検者の顔を固定するための顔固定ユニット2が固設されている。顔固定ユニット2には顎台2aが上下動可能に支持されており、顎台ノブ2bを回すことにより顎台2aを上下させ被検眼の高さ位置を調節することができる。
【0008】
3は後述する測定光学系等を収納した測定部である。測定部3の下部には測定部3をXYZ方向に移動させる移動部4が取付けられている。移動部4は、XYZ方向それぞれに、モータ機構及びスライド機構が設けられている。なお、測定部3の各方向への移動範囲は、被検者の顔の大きさや眼の位置の個人差も考慮に入れ、両眼それぞれに測定光学系を所定の位置関係にアライメントできる構成としている。
【0009】
5は検者がアライメント操作を行うときに使用するジョイスティックであり、ジョイスティック5の傾倒信号により測定部3がX及びZ方向に移動する。また、ジョイスティック5に設けられた回転ノブ5aの回転信号により、測定部3はY方向に移動する。7は被検眼像や検者に報知する情報を表示するTVモニタ、8はスイッチ部である。スイッチ部8は、左右眼選択スイッチ、プリントスイッチ、リセットスイッチ、アライメントをオ-トにするか検者の操作にするかを選択するスイッチ、オートアライメント時にアライメントをスタートするスイッチ等を持つ。スイッチ部8には、さらにモニタ7の表示する前眼部像の画像倍率を切換える倍率切換スイッチ8a、測定光が瞳孔を通過する位置を変更させる測定領域変更モードに切り換える測定領域変更スイッチ8b、十字キー8c、ENTERキー8dを持つ。また、10はジョイスティック5の頂部に設けられた測定開始スイッチである。」

(引1イ)
「【0010】
図2は測定部3内に設けられた光学系及び制御系の概略配置図である。光学系は、スリット投影光学系とスリット検出光学系からなる測定光学系、固視標光学系、及び撮像光学系に大別される。
【0011】
11はスリット投影光学系であり、12は赤外の光を発するスリット照明光源である。14はモータ15により一定の速度で一定方向に回転される円筒状の回転セクタである。回転セクタ14の側面には、図示しないが、回転方向に対して30度、90度、-30度の3種類の傾斜角度を持つスリット開口がそれぞれ複数個設けられている。16は投影レンズであり、光源12は投影レンズ16に関して被検眼角膜近傍と共役な位置に配置されている。17は制限絞り、18は反射ミラー、19はハーフミラー、20は可視光を反射して赤外光を透過するダイクロイックミラー、21はハーフミラーである。また、光源12は、XY方向の被検眼のアライメント状態を検出するための正面指標投影用光源、徹照像を撮像するときの光源の役割を兼ねる。
【0012】
光源12を発した赤外の光は、回転セクタ14のスリット開口を照明する。回転セクタ14の回転により走査されたスリット光束は、投影レンズ16、制限絞り17を経た後にビームスプリッタ18で反射される。その後ハーフミラー19、ダイクロイックミラー20を介して、ハーフミラー21により測定光軸L1と同軸となり被検眼Eの角膜近傍で集光した後、眼底に投影される。なお、回転セクタ14は異なる傾斜角度のスリット開口を持つため、いずれの角度のスリット光束が投影されているかをセンサ13が検出するようになっている。
【0013】
22はスリット検出光学系(受光光学系)であり、その光軸上に受光レンズ23、絞り24、複数対の受光素子を備える受光部25を備える。絞り24は受光レンズ23の後ろ側焦点位置に配置され、受光部25は受光レンズ23に関して被検眼角膜と略共役な位置に配置されており、光軸を中心とした一対の受光素子が3経線方向(水平方向を0度として、30度方向、90度方向、-30度方向)に配置されている。光源12による眼底からの反射光は、ハーフミラー21、ダイクロイックミラー20を介して、ハーフミラー19で反射し、受光レンズ23、絞り24を介して、受光部25に入射する。
【0014】
30は固視標光学系である。31は光源、32は固視標、33は投光レンズ、34は絞り、35はリレーレンズである。固視標32が光軸方向に移動することによって被検眼への雲霧が行われる。光源31は固視標32を照明し、固視標32からの光束は投光レンズ33、絞り34、リレーレンズ35、ダイクロイックミラー20を経た後、ハーフミラー21で反射して被検眼Eに向かい、被検眼Eは固視標32を固視する。
【0015】
40は被検眼に発散光により有限遠のアライメント指標を投影する第1指標投影光学系である。光源41は光軸L1を中心に2個配置されており、それぞれの投影光軸が光軸L1に対して水平方向に所定の角度で交わるように配置されている。45は被検眼に無限遠のアライメント指標を投影する第2指標投影光学系である。光源46は光軸L1を中心に2個配置されており、それぞれの投影光軸が光軸L1に対して水平方向に前記第1指標投影光学系40よりも広い角度で交わるように配置されている。光源46からの光は、コリメータレンズ47を介して、被検眼Eに対して無限遠の指標を投影する。
【0016】
第2指標投影光学系45により投影される指標は平行光であるため、被検眼Eに対する測定部3の作動距離(Z方向の距離)が変化しても角膜反射像の位置はほとんど変化しない。一方、第1指標投影光学系40により投影される指標は発散光であるので、作動距離が変化すると角膜反射像の位置が変化する。これら角膜反射像の位置に基づきZ方向のアライメント状態を検出することができる(詳しくは、本出願人による特開平6-46999号を参照)。また、被検眼正面方向より投影される光源12による角膜反射像の位置に基づきXY方向のアライメント状態の検出することができる。また、光源12による角膜反射像が検出されない時には、有限光を発する第1指標投影光学系40による角膜反射像の位置に基づきXY方向のアライメント状態を検出することができる。これにより、被検眼に対するオートアライメントを行ったり、モニタ7に表示される前眼部像に基づいてジョイスティック5を用いてマニュアルアライメントを行うことが可能となる。
【0017】
36は撮像光学系である。被検眼Eの前眼部像は、ビ-ムスプリッタ21、撮影レンズ37により撮像素子38に結像される。撮影レンズ37及び撮像素子21は、ハーフミラー21の近傍に配置されており、図3に示すように、広角画像が得られるようになっている。その広角画像の左右方向は、右眼にアライメントされた状態で被検者の顔面部の右境界線が含まれ、左眼にアライメントされた状態で被検者の顔面部の左境界線が含まれ範囲であることが好ましい。上下方向は、撮像中心が被検眼にアライメントされた状態で、眉毛部分が含まれる範囲まであることが好ましい。また、撮像素子38には、撮像範囲をXY方向に広く検出できるよう受光面積の大きいCCDやCMOS等を用いる。このような構成により、撮像光学系36は、被検眼前眼部を広範囲から撮像できる。また、撮像光学系36は、被検眼へ投影された指標による角膜反射像を検出することにより、アライメント検出光学系を兼用する。撮像素子38には、モニタ7に表示される画像を鮮明になるとともに、アライメント指標の検出が精度よく行われるよう高解像度のものを用いるとよい。
【0018】
撮像素子38からの出力信号は、画像制御部51を介してモニタ7に表示される。画像制御部51に接続された画像メモリ51aは、撮像素子38から送られてくる画像を記憶する役割を持つ。また、画像制御部51は、レチクルマークやその他条件設定等の表示マークを生成する役割を持つ。図3は、撮像光学系36により撮像される被検眼Eの前眼部像をモニタ7で表示したものである。また、画像制御部51は撮像素子38からの出力信号に対して拡大処理を行い、モニタ7に被検眼前眼部の拡大画像を表示する電子ズーム機能を持つ。電子ズームは、撮像素子38からの出力信号を基に行う場合と、画像メモリ51に記憶された画像を基に行う場合がある。
【0019】
50はシステム制御部であり、画像制御部51、受光部25、スイッチ部8、ジョイスティック5、センサ13、光源31、光源12、モータ15、測定データを記憶するメモリ52等と接続されている。また、システム制御部50は、受光部25からの検出信号を基に眼屈折力を演算する機能を有する。」

(引1ウ)
「【0020】
以上のような構成を備える装置における動作を説明する。まず、オートアライメントモードにおける動作を説明する。測定部3は各方向の初期位置(XY方向は移動可能範囲の中間位置、Z方向は最も被検眼から離れる側である)にある。被検者の顔を顔固定ユニット2に位置させた後、アライメントスタート用のスイッチを押すと、始めに右眼を測定すべく、制御部51により右眼方向に測定部3が移動される。測定部3が移動すると、右眼の前眼部像が撮像素子38により撮像されるようになり、その画像がモニタ7に表示される。図3は、モニタ7に表示される画像の例である。広角撮影が可能な撮像光学系により撮像素子38に被検眼像が入れるようになると、第1指標投影光学系40により発散光が被検眼に照射されているので、第1指標投影光学系40による角膜反射像が検出できるようになり、被検眼の大まかな位置ずれを特定することができる。制御部50は、その情報に基づいて測定部3をXY移動する。光軸L1を被検眼近傍に位置させることができるようになると、被検眼は固視標32を視認可能になる。なお、被検眼位置のおおまかな特定は、画像制御部51により前眼部像から被検眼の瞳孔像を抽出する方法でも可能である。
【0021】
ある程度XY方向の移動ができると、被検眼の角膜上には第1指標投影光学系40による角膜反射像とともに、第2指標投影光学系45による角膜反射像も検出されるようになり、XY方向のアライメントの微調整が行われる。また、制御部50は第1指標投影光学系40及び第2指標投影光学系45による角膜反射像から、前述のように方向のアライメント状態を検出し、Z方向のアライメントが完了するように測定部3を作動距離方向に移動させる。
【0022】
XYZ方向のアライメントが完了すると、制御部50は、トリガ信号を自動的に発してスリット投影光学系11、スリット検出光学系22を動作させることにより、屈折力測定を実行する。まず、受光部25からの位相差信号に基づいて予備測定の屈折力を得て、その結果に基づいて固視標光学系30の固視標32を移動して被検眼の雲霧を行う。被検眼に雲霧がかかった状態で、受光部25からの位相差信号から3経線方向の屈折力が得られ、これに所定の処理を施すことによって球面度数(S)、柱面度数(C)、軸角度(A)が求められる。また、アライメント完了状態の予備測定時あるいは雲霧動作中に、光源12の光量を増大させ、徹照像撮影用の照明光を眼底に照射させる(このとき、他のアライメント光源、前眼部照明光源については、消灯又は減光すると良い)。光源12の光量の増大に連動して撮像素子38により撮像される瞳孔領域を含む前眼部像の静止画をメモリ51aに記憶される。アライメント完了の状態では、瞳孔領域が撮像素子38のほぼ中央に撮像される。
【0023】
眼屈折力の測定終了後、制御部50は、位相差信号が得られなかったり、測定結果が許容値より大きく外れているような場合、測定エラーと判定する。測定エラーと判定されると、あるいは徹照像表示スイッチが押されると、画像制御部51は画像メモリ51aに記憶された前眼部像の瞳孔領域を拡大処理して、被検眼の徹照像をモニタ7に表示する。これにより、検者はモニタ7上で徹照像を観察し、測定エラーの要因が白内障によるものか否かを確認できる。図4は、徹照像を表示した時のモニタ7の表示画面である。白内障により水晶体に混濁があると、眼底反射光の透過率が落ちるので、その混濁部分Caは暗い影となって映し出される。一方、水晶体に混濁の無い部分は反射光が通過できるので、瞳孔領域内Puは明るい画像として映し出される。なお、モニタ7の画面中央のCは、測定光軸L1を示すマークである。
【0024】
測定エラー後、測定領域変更スイッチ8bが押されると、測定領域変更モードに切り替わる。これは、次の測定時に、水晶体の混濁部分を避けるように測定光束が通過する位置を変更するものである。スイッチ8bが押されると、図5(a)に示すように、受光部25の受光素子で受光される測定光束(眼底反射光)が瞳孔部分を通過する時の領域を示すエリアKが画像制御部51により生成され、モニタ7に表示される。これにより、検者は測定光束が瞳孔領域内のどの部分を通過したかを確認することができる。エリアKと混濁部分Caが重なった部分は、測定光束が混濁部Caにより遮られた部分であり、混濁部分Caが測定エラーの要因となったものと判断される。
【0025】
検者は十字キー8cを操作して、エリアKを徹照像に対して上下左右方向に移動させることにより、図5(b)のようにエリアKと混濁部Caが重ならないようにする。このような状態で検者がENTERスイッチ8dを押すと、制御部50は移動前のエリアKの座標位置P1に対する移動後のエリアKの座標位置P2とから変位量Δd及び移動方向を求め、その変位量Δdに対するモニタ7の表示倍率の関係に基づき、実際に測定部3を移動させるべき移動量ΔD及び移動方向のアライメント変更情報を算出する。制御部50はアライメント変更情報に基づいて、アライメントの完了条件を変更する。制御部50は、第1指標投影光学系40及び第2指標投影光学系45による角膜反射像の相対位置に基づいて、光軸に対する変位量を算出することができるので、これを逆算することにより、測定光軸L1から測定部3を移動量ΔDだけ移動させた状態の角膜反射像の位置をアライメント完了の位置とし、アライメントを誘導する。
【0026】
測定領域の変更が終了し、検者よりアライメントスタートのスイッチが押されると、制御部50は、再度被検眼に対する測定部3のアライメントを行い、変更したアライメント完了条件の下で屈折力を測定する。モニタ7の表示は、静止画の拡大表示状態からアライメント表示の状態に切換えられる。これにより、測定領域を変更して屈折力を測定することができる。この時、初めの眼屈折力測定を行った後も、測定部3と被検眼とのアライメント状態を継続させる自動追尾モードとしておけば、測定領域を変更して再測定を行う場合に、粗位置合わせの時間が短くなり、効率的である。
【0027】
以上示したように撮像光学系35の撮像素子36による撮像範囲が広いため、ジョイスティック5を操作することなく被検眼へのオートアライメントを行うことができる。また、水晶体に混濁がある被検眼においても、前眼部像の瞳孔領域を拡大表示することで、その観察が容易になり、測定領域を変更してのアライメントも容易に行える。」

(引1エ)
「【0028】
検者によるジョイスティック5の操作によりアライメントを行うマニュアルアライメントモードの動作について説明する。マニュアルアライメントを行う際、検者はモニタ7にて図3のような広範囲の前眼部像が観察できるので、測定部3を移動させる方向が容易に分かる。図3において、M1は光軸L1付近を示すレチクルであり、画像制御部51の電子ズーム機能により画像が拡大される領域を示している。検者は、レチクルM1の枠内に測定する被検眼が入るよう、ジョイスティック5を操作して測定部3の位置を粗調節する。
【0029】
レチクルM1の枠内に被検眼が入るようになった後、検者が倍率切換スイッチ8aを押すと、画像制御部51は撮像素子38からの画像信号を拡大処理し、図3のレチクルM1の枠内に相当する領域の画像をモニタ7に表示する。図6は、画像制御部51により拡大処理された前眼部像を示す図である。M2は、測定光軸L1を基準にアライメントを導くためのレチクルである。検者は、拡大された前眼部像を見ながら、レチクルM2の中心に光源12による角膜反射像m1がくるように、測定部3の位置を微調節する。Z方向は、指標像のピントが合うように調整する。あるいは、前述のZ方向のアライメント検出結果に基づいて、移動すべき方向を誘導するマークがモニタ7に表示される構成としても良い。アライメントが完了した後、検者が測定開始スイッチ10を押すと、屈折力測定が開始される。
【0030】
マニュアルアライメントモードにおいても、上記と同じく測定領域変更モードにて、図5(a),(b)で示した方法と同様に、測定領域の変更によりアライメント完了条件を変更することができる。その後、再測定を行う際には、倍率切換スイッチ8aにより被検眼の拡大画像の表示に切換えると、図7のように、モニタ7上に被検眼の拡大画像が表示されるとともに、光軸L1の位置Cから変位量Δdを基に変更された位置にレチクルM3が表示される。これにより手動操作時におけるアライメントが誘導される。検者はジョイスティック5を操作して、レチクルM3の枠内に角膜反射像m1が入るように測定部3を移動させることにより、XY方向のアライメントを行う。そして、XY方向のアライメントとともに、Z方向のアライメントを行った後、測定開始スイッチ10を押すと、測定が開始されて、変更した測定領域にて測定が行われる。
【0031】
なお、上記実施例では、十字キー8cの操作により固定された徹照像に対してエリアKの表示位置を移動させる構成としたが、逆に、エリアKの表示位置を固定させておき、徹照像画像を移動させ、その変位量に基づいて測定部3の移動量を求めるようにしてもよい。
【0032】
また、制御部50の測定エラーの判定とともに、測定領域が混濁部により遮断されているかどうかを自動的に判定してもよい。この場合、画像制御部51は、画像メモリ51aに記憶された前眼部像画像のデータの解析を行う。解析する領域としては、記憶された前眼部像の画像データの全アドレスを解析する必要はなく、少なくとも瞳孔領域内を解析できるように光軸L1から一定範囲内を解析すればよい。画像解析において、光源12により被検眼眼底から照明された瞳孔領域は明るくなり、白内障による混濁部があると暗い影となって現れることを利用して、画像制御部51は瞳孔領域における混濁部を特定することができる。混濁部が特定されると、測定光束の瞳孔上での通過領域と混濁部が重なっているかをチェックし、重なっている部分の面積が許容量以上である時には、エラーと判定する。エラーと判定された場合には、屈折力測定中であっても測定を中止し、モニタ7上に画像制御部51aにより解析を行った前眼部像の拡大画像を表示する。その後、検者により上記のような測定領域の変更を行えばよい。
【0033】
さらに、測定領域の変更を自動的に行う場合を説明する。画像制御部51は、混濁部と測定領域が重ならないような位置をサーチする。この場合、予め数箇所の測定領域の座標位置を決めておき、各座標位置ごとに測定光束の通過領域と混濁部が重なっているかをチェックし、重なっている部分の面積が許容量以上であるかを判定すればよい。このように判定していき、混濁部のない測定部位があれば、この測定部位の座標位置と前回の測定時における測定領域の座標位置との変位を演算し、その変位に基づいて測定部3の移動情報が算出されアライメント完了条件が変更される。このようにすれば、瞳孔部での測定領域の変更を自動的に行うことができ、検者の手間を省くことができる。」

(引1オ)図1


(引1カ)図2


(引1キ)図3、図4


(引1ク)図5


(引1ケ)図6

(引1コ)図7


(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)の記載を整理する。

ア 【0007】「図1は実施例である眼屈折力測定装置の外観概略図を示す図である。」、【0010】「図2は測定部3内に設けられた・・・光学系は、・・・撮像光学系に大別される。」、【0017】「36は撮像光学系である。被検眼Eの前眼部像は、・・・撮像素子38に結像される。・・・撮像光学系36は、被検眼前眼部を広範囲から撮像できる。」との記載によれば、引用文献1の眼屈折力測定装置は、被検眼Eの前眼部像を結像する撮像素子38を有する撮像光学系36、を有する測定部3を備えることが読み取れる。

イ 【0010】「図2は測定部3内に設けられた・・・光学系は、スリット投影光学系とスリット検出光学系からなる測定光学系、・・・に大別される。」、【0011】「11はスリット投影光学系であり、12は・・・スリット照明光源である。」、【0012】「光源12を発した赤外の光は、・・・・測定光軸L1と同軸となり被検眼Eの角膜近傍で集光した後、眼底に投影される。」、【0013】「22はスリット検出光学系(受光光学系)であり、その光軸上に・・・受光部25を備える。」との記載によれば、引用文献1の眼屈折力測定装置は、スリット照明光源12を有するスリット投影光学系11と、測定光軸L1上に受光部25を有するスリット検出光学系22と、からなる測定光学系、を有する測定部3を備えることが読み取れる。

ウ 【0019】「システム制御部50は、受光部25からの検出信号を基に眼屈折力を演算する機能を有する。」との記載によれば、引用文献1の眼屈折力測定装置は、受光部25からの検出信号を基に眼屈折力を演算する機能を有するシステム制御部50とを備えることが読み取れる。

エ 【0008】「測定部3の下部には測定部3をXYZ方向に移動させる移動部4が取付けられている。・・・測定部3の各方向への移動範囲は、被検者の顔の大きさや眼の位置の個人差も考慮に入れ、両眼それぞれに測定光学系を所定の位置関係にアライメントできる構成としている」との記載によれば、引用文献1の眼屈折力測定装置は、測定部3をXYZ方向に移動させ、両眼それぞれに測定光学系を所定の位置関係にアライメントするための移動部4を備えることが読み取れる。

オ 【0011】「光源12は、XY方向の被検眼のアライメント状態を検出するための正面指標投影用光源・・・の役割を兼ねる。」、【0022】「アライメント完了の状態では、瞳孔領域が撮像素子38のほぼ中央に撮像される。」、【0023】「モニタ7の画面中央のCは、測定光軸L1を示すマークである。」、【0029】「M2は、測定光軸L1を基準にアライメントを導くためのレチクルである。検者は、拡大された前眼部像を見ながら、レチクルM2の中心に光源12による角膜反射像m1がくるように、測定部3の位置を微調節する。・・・アライメントが完了した後、検者が測定開始スイッチ10を押すと、屈折力測定が開始される。」、との記載によれば、引用文献1のシステム制御部50は、マニュアルアライメントモードにおいて、測定光軸L1を導くためのレチクルM2を表示し、検者により、表示させたレチクルM2の中心に光源12による角膜反射像m1がくるように測定部3の位置が微調節され、測定光軸L1が瞳孔領域の中央にくるようアライメントが誘導された後に、眼屈折力の測定を開始することが読み取れる。

カ 【0030】「マニュアルアライメントモードにおいても、上記と同じく測定領域変更モードにて、図5(a),(b)で示した方法と同様に、測定領域の変更によりアライメント完了条件を変更することができる。」との記載を踏まえ、オートアライメントモードにおける記載【0023】「眼屈折力の測定終了後、制御部50は、・・・測定結果が許容値より大きく外れているような場合、測定エラーと判定する。」、【0023】?【0025】からアライメント完了条件の変更は、測定エラーと判定された後の処理であることを参考にすると、引用文献1のシステム制御部50は、マニュアルアライメントモードにおいて、眼屈折力の測定終了後、測定結果が許容値より大きく外れているような場合、測定エラーと判定することが読み取れる。

キ 【0030】「マニュアルアライメントモードにおいても、上記と同じく測定領域変更モードにて、図5(a),(b)で示した方法と同様に、測定領域の変更によりアライメント完了条件を変更することができる。その後、再測定を行う際には、・・・図7のように、モニタ7上に被検眼の拡大画像が表示されるとともに、光軸L1の位置Cから変位量Δdを基に変更された位置にレチクルM3が表示される。これにより手動操作時におけるアライメントが誘導される。検者はジョイスティック5を操作して、レチクルM3の枠内に角膜反射像m1が入るように測定部3を移動させることにより、XY方向のアライメントを行う。そして、・・・アライメントを行った後、測定開始スイッチ10を押すと、測定が開始されて、変更した測定領域にて測定が行われる。」との記載を踏まえ、オートアライメントモードにおける記載【0025】「制御部50は移動前のエリアKの座標位置P1に対する移動後のエリアKの座標位置P2とから変位量Δd及び移動方向を求め、その変位量Δdに対するモニタ7の表示倍率の関係に基づき、実際に測定部3を移動させるべき移動量ΔD及び移動方向のアライメント変更情報を算出する。制御部50はアライメント変更情報に基づいて、アライメントの完了条件を変更する。」を参考にすると、引用文献1のシステム制御部50は、マニュアルアライメントモードにおいて、測定エラーが判定された場合、測定部3を移動させるべき変位量Δd及び移動方向のアライメント変更情報を算出し、アライメント変更情報を基に変更された位置に測定光軸L1を導くためのレチクルM3を表示し、検者により、表示させたレチクルM3の枠内に光源12による角膜反射像m1が入るように測定部3の位置が調節され、測定光軸L1が瞳孔領域の中央から変更された位置にくるようアライメントが誘導された後に、眼屈折力の再測定を開始することが読み取れる。

ク したがって、上記ア?キから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 被検眼Eの前眼部像を結像する撮像素子38を有する撮像光学系36、及び、スリット照明光源12を有するスリット投影光学系11と、測定光軸L1上に受光部25を有するスリット検出光学系22と、からなる測定光学系、を有する測定部3と、
測定部3をXYZ方向に移動させ、両眼それぞれに測定光学系を所定の位置関係にアライメントするための移動部4と、
受光部25からの検出信号を基に眼屈折力を演算する機能を有するシステム制御部50と、
を備える眼屈折力測定装置であって、
システム制御部50は、マニュアルアライメントモードにおいて、
測定光軸L1を導くためのレチクルM2を表示し、検者により、表示させたレチクルM2の中心に光源12による角膜反射像m1がくるように測定部3の位置が微調節され、測定光軸L1が瞳孔領域の中央にくるようアライメントが誘導された後に、眼屈折力の測定を開始し、
眼屈折力の測定終了後、測定結果が許容値より大きく外れているような場合、測定エラーと判定し、
測定エラーが判定された場合、測定部3を移動させるべき変位量Δd及び移動方向のアライメント変更情報を算出し、アライメント変更情報を基に変更された位置に測定光軸L1を導くためのレチクルM3を表示し、検者により、表示させたレチクルM3の枠内に光源12による角膜反射像m1が入るように測定部3の位置が調節され、測定光軸L1が瞳孔領域の中央から変更された位置にくるようアライメントが誘導された後に、眼屈折力の再測定を開始する、眼屈折力測定装置。」

2 引用文献3について

(1)引用文献3の記載
上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引3ア)
「【0001】
本発明は、被検者眼眼底の断層像を得る眼底撮影装置に関する。」

(引3イ)
「【0090】
なお、本実施例において、過去のアライメント状態と撮影時のアライメント状態とを比較する構成を設けてもよい。例えば、異なる日時で撮影を行った際に、撮影画像とともに、前眼部画像とアライメント位置をメモリ72に記憶させておく。そして、撮影を行う際に、メモリ72より過去に撮影した際の前眼部画像とアライメント位置を呼び出す。
【0091】
制御部70は、過去の前眼部画像に対するアライメント位置と、現在取得される前眼部像に対するアライメント位置が同じ位置になるように駆動部6の駆動を制御する。過去のアライメント位置にアライメントが完了した際に、制御部70は、最適化制御を開始させる。
【0092】
制御部70は、現在アライメント中の前眼部画像と過去の前眼部画像との位置合わせ処理(例えば、テンプレートマッチング処理等)を行い、過去のアライメント位置にアライメントが完了した際に、最適化制御を開始させる。これによって、過去に行った際の、撮影条件と同様の撮影条件にて、撮影を行うことができるため、経過観察が行いやすくなる。また、同一被検眼における撮影画像間の比較が行いやすくなる。」

(2)引用文献3に記載された技術的事項
上記(1)から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 被検者眼眼底の断層像を得る眼底撮影装置であって、
過去のアライメント状態と撮影時のアライメント状態とを比較する構成を設け、異なる日時で撮影を行った際に、撮影画像とともに、前眼部画像とアライメント位置をメモリ72に記憶させておき、撮影を行う際に、メモリ72より過去に撮影した際の前眼部画像とアライメント位置を呼び出し、
制御部70は、過去の前眼部画像に対するアライメント位置と、現在取得される前眼部像に対するアライメント位置が同じ位置になるように駆動部6の駆動を制御し、過去のアライメント位置にアライメントが完了した際に、制御部70は、最適化制御を開始させ、これによって、過去に行った際の、撮影条件と同様の撮影条件にて、撮影を行うことができるため、経過観察が行いやすくなる、眼底撮影装置。」

第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「被検眼Eの前眼部像を結像する撮像素子38を有する撮像光学系36」は、本願発明1の「被検眼の前眼部の正面画像を撮像する撮像素子を有する前眼部観察光学系」に相当する。

イ 引用発明の「スリット照明光源12を有するスリット投影光学系11と、測定光軸L1上に受光部25を有するスリット検出光学系22と、からなる測定光学系」は、「受光部25からの検出信号を基に眼屈折力」が「演算」されるから、本願発明1の「検眼軸を有し被検眼を検査するための検眼系」に相当する。

ウ ア及びイを踏まえると、引用発明の「測定部3」は、本願発明1の「検眼部」に相当する。

エ 引用発明の「測定部3をXYZ方向に移動させ、両眼それぞれに測定光学系を所定の位置関係にアライメントするための移動部4」は、本願発明1の「前記被検眼に対する前記検眼軸の位置関係を調整するための駆動部」に相当する。

オ 引用発明の「測定部3を移動させるべき変位量Δd及び移動方向のアライメント変更情報」は、「測定光軸L1が瞳孔領域の中央から変更された位置」に関する情報であるから、本願発明1の「前記検眼軸の位置を示す検眼位置情報」に相当する。
よって、引用発明の「システム制御部50」の、「測定部3を移動させるべき変位量Δd及び移動方向のアライメント変更情報を算出」する部分と、本願発明1の「眼特性が検査された前記検眼軸の位置を示す検眼位置情報であって、今回検査よりも前の日の検査である前回検査における検眼軸の位置である前回位置を示す検眼位置情報を取得する取得手段」とは、「前記検眼軸の位置を示す検眼位置情報を取得する取得手段」の点で共通する。

カ 引用発明の「システム制御部50」の、「マニュアルアライメントモードにおいて、測定光軸L1を導くためのレチクルM2を表示し、検者により、表示させたレチクルM2の中心に光源12による角膜反射像m1がくるように測定部3の位置が微調節され、測定光軸L1が瞳孔領域の中央にくるようアライメントが誘導された後に、眼屈折力の測定を開始」する部分は、本願発明1の「前記検眼軸を被検眼上の基準位置に一致するよう前記駆動部を制御すると共に、前記検眼軸が被検眼の基準位置に一致した状態での検査を行う第1誘導手段」に相当する。

キ 引用発明の「システム制御部50」が「眼屈折力の測定終了後、測定結果が許容値より大きく外れているような場合、測定エラーと判定し、 測定エラーが判定された場合、」「瞳孔領域の中央から変更された位置」で「眼屈折力の再測定を開始する」ことから、引用発明の「システム制御部50」の、「眼屈折力の測定終了後、測定結果が許容値より大きく外れているような場合、測定エラーと判定」する部分と、本願発明1の「前記第1誘導手段による検査結果に基づいて、前記前回位置にて再検査を行うか否かを判定する判定処理手段」とは、「前記第1誘導手段による検査結果に基づいて、別の位置で再検査を行うか否かを判定する判定処理手段」の点で共通する。

ク 引用発明の「システム制御部50」の、「測定エラーが判定された場合、測定部3を移動させるべき変位量Δd及び移動方向のアライメント変更情報を算出し、アライメント変更情報を基に変更された位置に測定光軸L1を導くためのレチクルM3を表示し、検者により、表示させたレチクルM3の枠内に光源12による角膜反射像m1が入るように測定部3の位置が調節され、測定光軸L1が瞳孔領域の中央から変更された位置にくるようアライメントが誘導され」る部分と、本願発明1の「前記判定処理手段によって前記前回位置にて再検査を行うと判定された場合に、被検眼に対する前記検眼軸のアライメントを、前記取得手段によって取得される検眼位置情報に基づいて前記前回位置に誘導する第2誘導手段」とは、「前記判定処理手段によって別の位置で再検査を行うと判定された場合に、被検眼に対する前記検眼軸のアライメントを、前記取得手段によって取得される検眼位置情報に基づいて誘導する第2誘導手段」の点で共通する。

ケ 引用発明の「眼屈折力測定装置」は、本願発明1の「眼科装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)
「 被検眼の前眼部の正面画像を撮像する撮像素子を有する前眼部観察光学系、および、検眼軸を有し被検眼を検査するための検眼系、を有する検眼部と、
前記被検眼に対する前記検眼軸の位置関係を調整するための駆動部と、
前記検眼軸の位置を示す検眼位置情報を取得する取得手段と、
前記検眼軸を被検眼上の基準位置に一致するよう前記駆動部を制御すると共に、前記検眼軸が被検眼の基準位置に一致した状態での検査を行う第1誘導手段と、
前記第1誘導手段による検査結果に基づいて、別の位置で再検査を行うか否かを判定する判定処理手段と、
前記判定処理手段によって別の位置で再検査を行うと判定された場合に、被検眼に対する前記検眼軸のアライメントを、前記取得手段によって取得される検眼位置情報に基づいて誘導する第2誘導手段と、を備える眼科装置。」

(相違点)
本願発明1では、「眼特性が検査された」検眼軸の位置を示す「今回検査よりも前の日の検査である前回検査における検眼軸の位置である前回位置を示す」検眼位置情報を取得し、「前記前回位置にて」再検査を行うか否かを判定し、「前記前回位置にて」再検査を行うと判定された場合に、被検眼に対する前記検眼軸のアライメントを、取得される検眼位置情報に基づいて「前記前回位置に」誘導するのに対し、引用発明では、「測定エラーが判定された場合、測定部3を移動させるべき変位量Δd及び移動方向のアライメント変更情報を算出し」ているが、ここでの「アライメント変更情報」は、「測定エラーが判定された場合」に「再測定」のために「算出」するものであって、本願発明1のように「眼特性が検査された」、「今回検査よりも前の日の検査である前回検査における検眼軸の位置である前回位置を示す」ためのものではない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。

引用文献3に記載された技術的事項によれば、引用文献3は、経過観察のため、今回検査を、前回検査において予め取得してある「今回検査よりも前の日の検査である前回検査における検眼軸の位置である前回位置」で行うものである。
一方、引用発明は、再測定のため、測定エラー後の検査を、測定エラーが起きた検眼軸の位置とは異なる位置を改めて取得し、この取得した位置で行うものである。
したがって、引用発明と引用文献3に記載された技術事項とは、検眼軸の位置を取得する目的もタイミングも異なり、引用発明に引用文献3に記載された技術的事項を適用する動機は存在しない。
仮に、引用発明において経過観察のために、引用文献3に記載された技術的事項を適用した場合を考えてみると、今回検査の中の最初の検査位置である「前眼部像上の角膜頂部の位置」を、前回検査において予め取得してある「今回検査よりも前の日の検査である前回検査における検眼軸の位置である前回位置」に代えることになるから、本願発明1の構成には至らない。
よって、上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることでない。
そして、本願発明1が奏する「前回の検査から今回までの間に白内障手術等が行われていたとき等に、基準位置でのより正確な検査結果を享受できる」という効果は、当業者が引用文献1及び3の記載から予測し得ることでない。
してみると、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2も、上記相違点に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、当業者が引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2020-11-25 
出願番号 特願2015-215746(P2015-215746)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
渡戸 正義
発明の名称 眼科装置  

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