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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02S
管理番号 1368655
審判番号 不服2019-15541  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-20 
確定日 2020-11-26 
事件の表示 特願2016-535997「二次電池を備えた発電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月28日国際公開、WO2016/013661〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成27年 7月24日 :国際出願(優先権主張 平成26年7月25日)
令和 元年 5月17日付け :拒絶理由通知(同年5月21日発送)
令和 元年 7月22日 :意見書、手続補正書
令和 元年 8月16日付け :拒絶査定(同年8月20日送達)
令和 元年11月20日 :本件審判請求・手続補正書

第2 令和元年11月20日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年11月20日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?6の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「【請求項1】
光電変換モジュールと、この光電変換モジュールと電気的に接続された二次電池と、前記光電変換モジュール及び前記二次電池が設置される外装体とを備え、
前記光電変換モジュールと前記二次電池との間の少なくとも一部に、前記光電変換モジュールと前記二次電池との間に介在するように、断熱材が設置されており、
前記断熱材は、低熱伝導材上に熱反射材が積層されてなり、
前記低熱伝導材は、熱伝導率が0.05W/(m・K)以下であり、
前記熱反射材は、反射率が50%以上であり、
前記光電変換モジュールの受光面と反対側の面に放熱部材が貼着されていることを特徴とする二次電池を備えた発電装置。
【請求項2】
前記低熱伝導材が光電変換モジュール側に配されていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池を備えた発電装置。
【請求項3】
前記外装体の内部空間が、前記断熱材によって分割されることで複数の部屋を形成しており、
前記複数の部屋の少なくとも一つの部屋に前記二次電池が設置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二次電池を備えた発電装置。
【請求項4】
前記低熱伝導材は、アクリル系樹脂、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂から選ばれる1種または2種以上の樹脂からなる発泡体材料であることを特徴とする請求項1?請求項3の何れか一項に記載の二次電池を備えた発電装置。
【請求項5】
前記外装体の何れかの位置に、放熱用の開口部が形成されていることを特徴とする請求項1?請求項4の何れか一項に記載の二次電池を備えた発電装置。
【請求項6】
前記二次電池は、正極集電体に接続された正極端子と負極集電体に接続された負極端子とを備え、
前記外装体に形成される前記開口部が、正極端子と前記正極集電体との接続部と、前記負極端子と前記負極集電体との接続部とを最短距離で結んだ領域を含む熱源領域に向かって直線的に外気を流入させるように配置されていることを特徴とする請求項5に記載の二次電池を備えた発電装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
令和元年7月22日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1?8の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
光電変換モジュールと、この光電変換モジュールと電気的に接続された二次電池と、前記光電変換モジュール及び前記二次電池が設置される外装体とを備え、
前記光電変換モジュールと前記二次電池との間の少なくとも一部に、前記光電変換モジュールと前記二次電池との間に介在するように、断熱材が設置されており、
前記断熱材は、低熱伝導材上に熱反射材が積層されてなり、
前記低熱伝導材は、熱伝導率が0.05W/(m・K)以下であり、
前記熱反射材は、反射率が50%以上であることを特徴とする二次電池を備えた発電装置。
【請求項2】
前記低熱伝導材が光電変換モジュール側に配されていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池を備えた発電装置。
【請求項3】
前記外装体の内部空間が、前記断熱材によって分割されることで複数の部屋を形成しており、
前記複数の部屋の少なくとも一つの部屋に前記二次電池が設置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二次電池を備えた発電装置。
【請求項4】
前記低熱伝導材は、アクリル系樹脂、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂から選ばれる1種または2種以上の樹脂からなる発泡体材料であることを特徴とする請求項1?請求項3の何れか一項に記載の二次電池を備えた発電装置。
【請求項5】
前記低熱伝導材は、金属多孔質膜、または、金属材料のハニカム構造体であることを特徴とする請求項1?請求項3の何れか一項に記載の二次電池を備えた発電装置。
【請求項6】
前記外装体の何れかの位置に、放熱用の開口部が形成されていることを特徴とする請求項1?請求項5の何れか一項に記載の二次電池を備えた発電装置。
【請求項7】
前記二次電池は、正極集電体に接続された正極端子と負極集電体に接続された負極端子とを備え、
前記外装体に形成される前記開口部が、正極端子と前記正極集電体との接続部と、前記負極端子と前記負極集電体との接続部とを最短距離で結んだ領域を含む熱源領域に向かって直線的に外気を流入させるように配置されていることを特徴とする請求項6に記載の二次電池を備えた発電装置。
【請求項8】
前記光電変換モジュールの受光面と反対側の面及び前記二次電池の表面の少なくとも何れか一方の面に放熱部材が貼着されていることを特徴とする請求項1?請求項7の何れか一項に記載の二次電池を備えた発電装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「光電変換モジュール」について「光電変換モジュールの受光面と反対側の面に放熱部材が貼着されている」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定する要件を満たすか)について検討する。

(1)本件補正発明1について
本件補正発明1は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献について
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1である、特開2013-48532号公報(平成25年3月7日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【0025】
図1ないし図8に示すソーラー充電器は、箱形のケース2と、このケース2 の一面に設けられた太陽電池パネル3と、ケース2内において太陽電池パネル3の裏側に配置され、太陽電池パネル3で発電された電力で充電可能な二次電池セル1とを備えている。このソーラー充電器は、太陽電池パネル3の発電電力を利用して、内蔵される二次電池セル1を充電し、この二次電池セル1に蓄電された電力を放電して負荷に供給し、あるいは、太陽電池パネル3の発電電力を直接に負荷に供給する。図のソーラー充電器は、二次電池セル1 から放電される電力を外部に出力するための出力コネクタ7を備えている。このソーラー充電器は、出力コネクタ7を介して外部接続される種々の電子機器に電力を供給する。ただ、ソーラー充電器は、必ずしも出力コネクタを備える必要はなく、ソーラー充電器本体を電子機器に装備して、太陽電池パネルや二次電池セルから出力される電力を直接に電子機器の負荷に供給する構造とすることもできる。この電子機器は、図示しないが、例えば、ソーラー充電器のケースを電子機器本体のケースに併用して、このケース内に白色LEDやラジオ受信機等を内蔵することで、照明器具やラジオ等の電子機器として利用できる。」

b 「【0037】
(二次電池セル1)
二次電池セル1は、薄型電池で、ケース2内において、太陽電池パネル3の裏側に収納されている。図3ないし図6のソーラー充電器は、二次電池セル1を定位置に配置するために、電池ホルダ4を備えている。図に示す電池ホルダ4は、二次電池セル1を収納する収納凹部40を有する形状にプラスチックで成形している。二次電池セル1は、この電池ホルダ4を介して、ケース2の内部であって、下面プレート22に接近して配置している。
・・・
【0039】
(空気層6)
以上のソーラー充電器は、ケース2の上面プレート21に固定される太陽電池パネル3と、ケース2に内蔵される二次電池セル1とを離間させて、これらの間に空気層6を設けている。いいかえると、ソーラー充電器は、太陽電池パネル3と二次電池セル1との間に空気層6を設けるために、太陽電池パネル3を上ケース2Aの上面プレート21に固定すると共に、二次電池セル1を下ケース2Bの下面プレートの内面側に接近して配置している。図3と図4に示すソーラー充電器は、太陽電池パネル3と二次電池セル1とを互いに平行な姿勢で所定の間隔離して、その間に空気層6を設けている。」

c 「【0042】
(金属プレート5)
さらに、ソーラー充電器は、太陽電池パネル3と二次電池セル1との間に、太陽電池パネル3の熱を放熱する金属プレート5を配置している。金属プレート5は、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属板を所定の形状にプレス成形したものである。このソーラー充電器は、熱伝導に優れた金属製のプレートを介して、太陽電池パネル3の熱を効果的に放熱できる。また、金属プレート5で太陽電池パネル3の輻射熱を遮断して、二次電池セル1が太陽電池パネル3に加熱されるのを有効に防止できる。また、ケース2の内部に金属プレート5を配置することで、ソーラー充電器に剛性を付加して機械的強度を増すことができる。
【0043】
図3と図4の金属プレート5は、空気層6の上面側であって、太陽電池パネル3の裏面に沿って配置している。この金属プレート5は、太陽電池パネル3の熱を効果的に伝導して効率よく放熱できる。ソーラー充電器は、図5と図6に示すように、上面プレート21の内面に、太陽電池パネル3のほぼ全面を被覆するように、シリコーン系、シリコン系、あるいはエラストマー系の放熱シート13を貼着している。この放熱シート13には、熱伝導に優れた熱伝導シートが使用される。この構造は、放熱シート13を介して、太陽電池パネル3の熱を効果的に金属プレート5に伝導して放熱できる。さらに、太陽電池パネル3の裏面に沿って金属プレート5を配置する構造は、金属プレート5で太陽電池パネル3を補強できる特徴もある。これにより、ソーラー充電器の落下等により、太陽電池パネル3が破損するのを有効に防止できる。」

d 「【0049】
(電池ホルダ4)
電池ホルダ4は、ケース2内の定位置に固定されて、収納凹部40に収納される二次電池セル1を定位置に配置する。図3ないし図6の電池ホルダ4は、二次電池セル1の両側面に沿う側面プレート43と両端面に沿う端面プレート44とを長方形の底面プレート41の周囲に連結してなる浅い容器形状に成形して、その内側に収納凹部40を設けている。図の電池ホルダ4は、収納凹部40の底面プレート41を上面プレート21側に配置する姿勢で上ケース2Aに固定しており、収納凹部40の開口部を下ケース2Bの下面プレート22側に開口している。この電池ホルダ4は、ケース2の定位置に固定される状態で、収納凹部40の底面プレート41を、太陽電池パネル3と二次電池セル1との間であって、金属プレート5に対向して配置している。この構造は、電池ホルダ4を介して二次電池セル1をケース2内の定位置に配置しながら、空気層6の熱を底面プレート41で遮断して、二次電池セル1が加熱されるのを効果的に防止できる。とくに、このソーラー充電器は、太陽電池パネル3と二次電池セル1とを離間させて設けた空気層6の上下に、金属プレート5と底面プレート41とを対向して配置することで、太陽電池パネル3の熱を確実に遮断して、二次電池セル1が加熱されるのを有効に防止できる。」

e 図1は以下のとおりである。


f 図4は以下のとおりである。

g 図5は以下のとおりである。



h 上記cの記載を参酌しつつ、図5から、放熱シート13は太陽電池パネル3の受光面と反対側の面に貼着されていることが看て取れる。

(イ)上記記載及び図面から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

引用発明
「ソーラー充電器であって、
箱形のケース2と、このケース2の一面に設けられた太陽電池パネル3と、ケース2内において太陽電池パネル3の裏側に配置され、太陽電池パネル3で発電された電力で充電可能な二次電池セル1とを備えており、
太陽電池パネル3の発電電力を利用して、内蔵される二次電池セル1を充電し、この二次電池セル1に蓄電された電力を放電して負荷に供給し、
ケース2の上面プレート21に固定される太陽電池パネル3と、ケース2に内蔵される二次電池セル1とを離間させて、これらの間に空気層6を設けており、
電池ホルダ4は、ケース2内の定位置に固定されて、収納凹部40に収納される二次電池セル1を定位置に配置し、二次電池セル1の両側面に沿う側面プレート43と両端面に沿う端面プレート44とを長方形の底面プレート41の周囲に連結してなる浅い容器形状に成形して、その内側に収納凹部40を設けており、
電池ホルダ4を介して二次電池セル1をケース2内の定位置に配置しながら、空気層6の熱を底面プレート41で遮断して、二次電池セル1が加熱されるのを効果的に防止でき、太陽電池パネル3と二次電池セル1とを離間させて設けた空気層6の上下に、金属プレート5と底面プレート41とを対向して配置することで、太陽電池パネル3の熱を確実に遮断して、二次電池セル1が加熱されるのを有効に防止でき、
太陽電池パネル3の受光面と反対側のほぼ全面を被覆するように、シリコーン系、シリコン系、あるいはエラストマー系の放熱シート13を貼着している、
ソーラー充電器。」

イ 引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4である、特開2012-172950号公報(平成24年9月10日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0050】
ここで、パイプ21(切起し部22を含む)の周囲は、太陽電池パネル5裏面との接触面を除き、熱の逃げを防止するために、アルミ遮熱断熱シート23で覆っている。アルミ遮熱断熱シート23は、発泡樹脂からなる多孔質の断熱シートを複数枚積層し、その両面をアルミ製の遮熱シートで被覆したもので、断熱性(熱伝導の防止機能)と遮熱性(輻射熱の反射機能)とを併せ持つ。本実施形態のように断熱性と遮熱性とを有する部材を使用する代わりに、いずれか一方の機能のみを有する部材を使用してもよく、言い換えれば、断熱性又は遮熱性の少なくとも一方を有する部材を使用すればよい。但し、本実施形態のような使用形態では温度差がさほど大きくなく、断熱性が遮熱性より重要となることから、少なくとも断熱性を有する部材を用いるのが好ましく、断熱性と遮熱性とを有する部材を用いることができればより好ましい。」

ウ 引用文献6
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献6である、特開2006-152564号公報(平成18年6月15日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0019】
断熱部材4は断熱性及び柔軟性を有するシート材料であって、例えば、図2に示すように、エアキャップやエアクッションと称される断熱シート(密閉された多数の空気セル61を備えて断熱性を有するプラスチック製エアマット)15の表裏両面の全面に亘って、アルミニウム箔などの金属箔で形成される遮熱シート16を設けたものを用いることができる。断熱シート15と遮熱シート16とは縫着または接着などにより互いに重合固着することができる。一枚の断熱部材4の幅寸法は上記隣り合う垂木1、1の間隔の寸法(隣り合う垂木1、1の対向する面間の寸法) と同等に形成されている。尚、断熱シート15と遮熱シート16の厚みは適宜設定可能であるが、例えば、断熱シート15が0.5?30mm、遮熱シート16が0.01?0.05mm とすることができる。」

エ 引用文献7
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献7である、特開2011-154256号公報(平成23年8月11日公開)には、次の記載がある。
「【0041】
[断熱シート]
本発明では、表面の熱輻射値が0.2未満の断熱シートを用いる。断熱シートの断熱性の指標となる熱輻射値は、熱放射率とも呼ばれる値であって、ある温度の物体が熱放射を発するとき、その物体と同じ温度の黒体から放射される熱エネルギーに対する対象物体から放射される熱エネルギーの比を意味する。熱輻射値は、1から熱反射率を引いた値で定義され、以下の式( 1 ) で表すことができる。
熱輻射値= 1 - 熱反射率 ( 1 )
【0042】
例えば、熱反射率が0.9(% 表示で90%)の物体であれば、その熱輻射値は0.1となり、熱反射率が0.97(% 表示で97% )の物体であれば、その熱輻射値は0.03となる。熱輻射値は、市販の熱放射計を用いて測定することができる。
【0043】
表面の熱輻射値が0.2以上のシートを用いた場合には、断熱効果が不十分となり、保管される雰囲気の温度変化などによって光学フィルムの寸法変化が起こり、ロールにしわが発生しやすくなる。この断熱シートは、表面の熱輻射値が0.2未満であればよく、その構造は特に限定されない。例えば、ポリエチレンの発泡体の表面にアルミニウムなどの金属を蒸着したもの、ポリエチレンの発泡体の表面にアルミニウムなどの金属箔を接着したもの、ポリエチレンエアーキャップの表面にアルミニウムなどの金属を蒸着したもの、ポリエチレンエアーキャップの表面にアルミニウムなどの金属箔を接着したものなどが挙げられる。断熱シートの中心になるポリエチレンの発泡体又はエアーキャップと金属の箔又は蒸着膜の間にさらに断熱層を設けた多層構造のものもある。さらに、断熱シートの表面に防汚処理などが施されていてもよい。
・・・
【0045】
株式会社シオンから販売されている"遮熱シート アポロ(APOLLO)" は、同社の遮熱シート「アポロ」の公式サイト(インターネット )によれば、ポリエチレン系発泡材の両面にアルミニウム箔を貼り付けた構造のものであり、その熱反射率は97% とされている。厚さ1.7mmタイプと6mmタイプがあるが、本発明に用いる断熱シートとしては、1.7mm タイプのもので十分である。
【0046】
MIMOマテリアル株式会社から販売されている"HMシート"は、同社の高性能遮熱シート「MHシート」のサイト(インターネット 及びそこにリンクされているページ)によれば、低熱伝導金属微粒子配合の発泡体を中心として、その両面にアルミニウム合金箔を貼り合わせ、さらにそれぞれの外側にPET(ポリエチレンテレフタレート)による防蝕コーティング加工が施された5層構造となっており、その熱反射率は97%、厚さは4mmである。
・・・
【0048】
古河電気工業株式会社から販売されている"ダンルーフシルバー"は、同社の「ダンルーフシルバー」のサイト(インターネット 及びそこからリンクされている ) によれば、発泡ポリエチレン(同社の"フォームエース")の片面に高純度アルミニウム箔を貼合した構造になっており、その熱反射率は90% 、厚さは
2mmである。
【0049】
株式会社吉谷から販売されている"熱反射(遮熱)シート"は、同社の「熱反射(遮熱)シート」のサイト(インターネット、及びそこからリンクされている)によれば、2枚の多孔質シートがポリエチレンフィルムの両面に積層され、これに加えて、アルミニウム箔で被覆したポリエチレンを上記2枚の多孔質シートのそれぞれ
外側に重ねた7層構造になっており、その熱反射率は97% 、熱輻射値は0.03、厚さは約8mmである。」

オ 引用文献8
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献8である、特開2014-124432号公報(平成26年7月7日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0017】
本発明は、最表面の浴槽からの伝熱を断熱材等にて断熱しようとするものではなく、低放射性の素材を遮熱層として用いることにより浴槽内の湯温の低下を防止しようとするものであり、輻射熱に対して高反射率の素材による層を含む遮熱層が低い放射性を有している点に着目して発明されたものである。
金属の反射率と放射率の和は壱(1)である。即ち反射率が高い物質は放射率が低く、高反射率の素材は低放射性の素材である(=熱反射率が高い素材は熱放射性が低い素材である)といえる。例えばアルミニウム箔(アルミホイル)やアルミ蒸着などのアルミニウム層では、輻射熱に対して97?98% の反射率を持っているので、放射率は僅か2?3% ということになる。また、この輻射熱に対して高反射率の素材としては、アルミニウムに限定されるものではなく、金や銀などの貴金属等を用いてもよい。
また、輻射熱に対する反射率は高いほど効果的であり、少なくても95% 以上のもが望ましい。」

カ 引用文献9
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献9である、特開2004-217196号公報(平成16年8月5日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0050】
断熱材とは、熱伝導率、熱抵抗値の小さい材料のことを言う。例として、発泡スチロールや発泡ポリプロピレンなどの発泡材、フェルトやポリエステル製の不織布などが挙げられる。また、反射材と空間とを用いて、断熱構造とすることも可能である。これらの材料、構造は概ね、0.01?0.05W/(m・k)程度の熱伝導率、厚さ5cm程度で、1?5(m2・k)/W程度の熱抵抗を持つ材料、構造である。ここでいう熱伝導率、熱抵抗値とは、JIS A1412-1に準じて評価された値である。」

キ 引用文献10
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献10である、特開2014-1525号公報(平成26年1月9日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0029】
断熱パネル1の熱伝導率は、初期値として0.03W/(m・K)以下、特に0.028W/(m・K)以下であり、好ましくは0.026W/(m・K)以下である。熱伝導率が大きすぎると、断熱パネル1が本来的に有すべき断熱性能が低下する。熱伝導率は、値が小さいほど、断熱性能が優れていることを示す特性値である。熱伝導率は後述する方法により測定された値を用いている。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「太陽電池パネル」、「二次電池セル」、「ケース」は、それぞれ本件補正発明の「光電変換モジュール」、「二次電池」、「外装体」に相当する。

イ 引用発明の「電池ホルダ」は、「二次電池セル1をケース2内の定位置に配置しながら、空気層6の熱を底面プレート41で遮断して、二次電池セル1が加熱されるのを効果的に防止でき、太陽電池パネル3と二次電池セル1とを離間させて設けた空気層6の上下に、金属プレート5と底面プレート41とを対向して配置することで、太陽電池パネル3の熱を確実に遮断して、二次電池セル1が加熱されるのを有効に防止でき」るものであり、断熱機能を有していることは明らかであるから、本件補正発明の「断熱材」に相当すると共に、引用発明は、本件補正発明の「前記光電変換モジュールと前記二次電池との間の少なくとも一部に、前記光電変換モジュールと前記二次電池との間に介在するように、断熱材が設置されており」との構成を有する。

ウ 引用発明において「太陽電池パネル3の受光面と反対側のほぼ全面を被覆するように、シリコーン系、シリコン系、あるいはエラストマー系の放熱シート13を貼着している」ことから、引用発明の「放熱シート」は、本件補正発明の「放熱部材」に相当し、引用発明の上記構成は、本件補正発明の「前記光電変換モジュールの受光面と反対側の面に放熱部材が貼着されている」に相当する。

エ 引用発明の「ソーラー充電器」は、「太陽電池パネル3」と「太陽電池パネル3で発電された電力で充電可能な二次電池セル1とを備えて」いるので、発電機能を有することは明らかであり、発電装置であるともいえるから、本件補正発明の「二次電池を備えた発電装置」に相当する。

オ 上記ア?エから、本件補正発明と引用発明は、 以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
「光電変換モジュールと、この光電変換モジュールと電気的に接続された二次電池と、前記光電変換モジュール及び前記二次電池が設置される外装体とを備え、
前記光電変換モジュールと前記二次電池との間の少なくとも一部に、前記光電変換モジュールと前記二次電池との間に介在するように、断熱材が設置されており、
前記光電変換モジュールの受光面と反対側の面に放熱部材が貼着されている、
二次電池を備えた発電装置。」

<相違点>
断熱材について、本件補正発明が、「低熱伝導材上に熱反射材が積層されてなり、前記低熱伝導材は、熱伝導率が0.05W/(m・K)以下であり、前記熱反射材は、反射率が50%以上であ」るのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。

(4)判断
ア 相違点について
上記相違点につき検討するに、断熱材として、低熱伝導材上にアルミニウム箔などの熱反射材を積層することは、引用文献4、6、7に記載されているように周知技術にすぎない。
また、引用発明において「電池ホルダ」は、「・・・空気層6の熱を底面プレート41で遮断して、二次電池セル1が加熱されるのを効果的に防止でき、・・・太陽電池パネル3の熱を確実に遮断して、二次電池セル1が加熱されるのを有効に防止でき」るものであり、そもそも熱の遮断を目的としているから、断熱機能がより効果的に機能するために、上記周知技術を採用することは、当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。
そして、断熱機能を付与するに際して、その性能をより高く設定することは、当業者が当然に行うことであり、また、熱反射率を50%以上程度とすること、熱伝導率が0.05W/(m・K)以下程度とすることは、それぞれ引用文献7、8、引用文献9、10に記載されているように、通常取り得る程度の数値範囲にすぎないことから、引用発明において、上記周知技術を採用するに際し、本件補正発明程度の数値範囲のものとすることは、当業者が適宜選択しうる設計事項にすぎない。
したがって、引用発明において、相違点に係る本件補正発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到しうる程度の事項にすぎない。

イ 作用効果について
相違点に係る本件補正発明の効果について、引用発明及び周知技術から、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「(b)上記相違点について(i)引用文献1 引用文献1には、上記(3)-(a)に示したような、電池ホルダ4、空気穴26及び放熱シート13を備えたソーラー充電器の構成が開示されている。しかしながら、引用文献1には、単に、太陽電池パネル3と、この太陽電池パネル3と電気的に接続された二次電池セル1と、太陽電池パネル3と及び二次電池セル1が設置されるケース2とを備え、太陽電池パネル3と二次電池セル1との間に、電池ホルダ4が設置されたソーラー充電器が開示されているだけである。即ち、引用文献1には、上記相違点に示した、光電変換モジュールの受光面と反対側の面に放熱部材が貼着されているという本願発明に特有の構成については、何ら記載されておらず、示唆すらされていない。」と主張している。
しかしながら、上記(3)ウで説示したように、引用文献1には、「光電変換モジュールの受光面と反対側の面に放熱部材が貼着されている」との構成は記載されている。このことは、令和元年5月17日付け拒絶理由通知書3頁5?7行において示されているし、また、請求人も、審判請求書において「放熱シート13が、太陽電池パネル3の内面に貼着されていること(同段落0071)が記載されている。」((a)引用文献1に記載の構成」の項の下から1?2行)と認めている。
よって、請求人の主張は採用できない。

(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年11月20日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件補正発明に対応する本件補正前の発明は、令和元年7月22日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に係る発明であるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
「この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」
というものである。

3 進歩性について
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、4、6?10及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「光電変換モジュール」について「光電変換モジュールの受光面と反対側の面に放熱部材が貼着されている」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに 相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2に記載したとおり、引用発明及び周知技術に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-09-16 
結審通知日 2020-09-23 
審決日 2020-10-07 
出願番号 特願2016-535997(P2016-535997)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02S)
P 1 8・ 121- Z (H02S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐竹 政彦桂城 厚  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 井上 博之
佐藤 洋允
発明の名称 二次電池を備えた発電装置  
代理人 川越 雄一郎  
代理人 西澤 和純  
代理人 大槻 真紀子  
代理人 山口 洋  

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