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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 G03F 審判 一部申し立て 特29条の2 G03F |
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管理番号 | 1368985 |
異議申立番号 | 異議2019-701011 |
総通号数 | 253 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-01-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-12-11 |
確定日 | 2020-10-13 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6529809号発明「光照射装置及び露光装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6529809号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1、3?9]について訂正することを認める。 特許第6529809号の請求項3ないし9に係る特許を維持する。 特許第6529809号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6529809号(以下「本件特許」という。)についての主な経緯は次のとおりである。 平成27年 4月14日 :出願 令和 元年 5月24日 :特許登録(請求項の数9) 令和 元年 6月12日 :特許公報発行 令和 元年12月11日 :特許異議申立人ウシオ電機株式会社による 請求項1,3?9に係る特許に対する特許 異議の申立て 令和 2年 2月 3日付け:取消理由通知書 令和 2年 3月26日 :意見書(特許権者)及び訂正請求書 なお、令和2年3月26日付け訂正請求書による訂正の請求があったので、当審は、特許法第120条の5第5項の規定に基づき、特許異議申立人に対して、令和2年5月29日付け通知書により、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人は、その期間内に、意見書を提出しなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和2年3月26日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次のとおりである。 なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1,3?9について請求されている。 訂正事項1 請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 請求項3に、 「請求項1又は2」とあるのを、「請求項2」に訂正する。 (3)訂正事項3 請求項4に「請求項1?3のいずれか1項」とあるのを、「請求項2又は3」に訂正する。 (4)訂正事項4 請求項5に、「請求項1?4のいずれか1項」とあるのを、「請求項2?4のいずれか1項」に訂正する。 (5)訂正事項5 請求項6に「請求項1?5のいずれか1項」とあるのを、「請求項2?5のいずれか1項」に訂正する。 (6)訂正事項6 請求項7に「請求項1?6のいずれか1項」とあるのを、「請求項2?6のいずれか1項」に訂正する。 (7)訂正事項7 請求項8に「請求項1?7のいずれか1項」とあるのを、「請求項2?7のいずれか1項」に訂正する。 (8)訂正事項8 請求項9に「請求項1?8のいずれか1項」とあるのを、「請求項2?8のいずれか1項」に訂正する。 2 訂正要件の判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 請求項1を削除することによって、新たな技術的事項が導入されることはないから、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項1の小括 よって、訂正事項1は、訂正要件を満たす。 (2)訂正事項2?8について ア 訂正の目的 訂正事項2?8は、請求項3?9のうち請求項1を引用しないものとするためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 上記訂正は、請求項3?9のうち請求項1を引用しないものとするためのものであるから、これによって、新たな技術的事項が導入されることはない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項2?8の小括 よって、訂正事項2?8は、訂正要件を満たす。 3 訂正の適否の小括 以上のとおり、本件訂正は、訂正要件を満たす。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1、3?9]について訂正することを認める。 第3 本件発明の認定 本件訂正は上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1?9に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 [本件発明1] (削除) [本件発明2] 複数の発光素子を平面上に配列したLEDアレイ光源と、 各発光素子から出射された光をそれぞれコリメートする第1照明光学系と、 前記第1照明光学系から出射された光を焦点位置に集光させる第2照明光学系と、 前記第2照明光学系から出射された光を平行光にする第3照明光学系と、 柱状のレンズであり、前記第3照明光学系から出射された光を入射して照度の均一性を高めるロッド・インテグレータと、を備え、 前記第3照明光学系の入射瞳の位置は、前記第2照明光学系の焦点位置にあり、前記ロッド・インテグレータの入射面は、第3照明光学系の焦点位置に配置され、各発光素子の瞳像が、前記ロッド・インテグレータの入射面に結像されることを特徴とする光照射装置。 [本件発明3] 前記LEDアレイ光源を構成する前記複数の発光素子には、一の発光波長を有する複数の第1発光素子と、他の発光波長を有する複数の第2発光素子とが含まれ、前記第1又は第2発光素子を選択的に発光させることで、前記LEDアレイ光源の発光波長を変更可能とした請求項2に記載の光照射装置。 [本件発明4] 前記LEDアレイ光源を構成する前記複数の発光素子の発光波長が、g線、h線、i線のうちのいずれか一以上である請求項2又は3に記載の光照射装置。 [本件発明5] 前記LEDアレイ光源を構成する前記複数の発光素子の全部又は一部をON又はOFFにする点灯制御手段を備えた請求項2?4のいずれか1項に記載の光照射装置。 [本件発明6] 前記LEDアレイ光源を構成する前記複数の発光素子の向きが、各発光素子の発光面に垂直な軸を中心にして回転方向に異なることを特徴とする請求項2?5のいずれか1項に記載の光照射装置。 [本件発明7] 前記LEDアレイ光源を構成する前記複数の発光素子の全部又は一部に流れる電流値を制御する電流制御手段を備えた請求項2?6のいずれか1項に記載の光照射装置。 [本件発明8] 前記LEDアレイ光源を構成する前記複数の発光素子から出射された光を、光軸上のいずれかの位置で遮断する機械式のシャッターを備えた請求項2?7のいずれか1項に記載の光照射装置。 [本件発明9] 前記フライアイ・インテグレータ又は前記ロッド・インテグレータから出射された照明光をマスクに照射し、前記マスクのパターン像を感光性基板上に露光する露光装置であって、請求項2?8のいずれか1項に記載した光照射装置を備えたことを特徴とする露光装置。 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 (1)拡大先願 本件出願の請求項1、3-9に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた次の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、当該請求項1,3-9に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 特願2015-67762号(特開2016-188878号公報)(先願1、甲第1号証) (2)進歩性欠如 本件出願の請求項1,3-9に係る発明は、次の引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1,3?9係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 特開2015-40892号公報(引用文献1、甲第10号証) 特開2014-153636号公報(引用文献2、甲第11号証) 特開2003-149741号公報(引用文献3、甲第12号証) 2 拡大先願についての判断 (1)本件発明3?9について 訂正により、請求項1が削除され、請求項3?9は請求項2を引用するものの、請求項1を引用しないものとなった。その結果、本件発明3?9は、 「第2照明光学系から出射された光を平行光にする第3照明光学系と、 柱状のレンズであり、前記第3照明光学系から出射された光を入射して照度の均一性を高めるロッド・インテグレータと、を備え、 前記第3照明光学系の入射瞳の位置は、前記第2照明光学系の焦点位置にあり、前記ロッド・インテグレータの入射面は、第3照明光学系の焦点位置に配置され、各発光素子の瞳像が、前記ロッド・インテグレータの入射面に結像される」という発明特定事項を備えるものとなった。 (2)先願発明について 先願1には、には次の記載がある。 (ア)「図1を参照すると、本実施形態の露光装置は、転写すべきパターンが形成されたマスク(レチクル)Mを照明する照明光学系ILを備えている。照明光学系ILの内部構成については、図2を参照して後述する。照明光学系ILは、例えばマスクMの矩形状のパターン領域全体、あるいはパターン領域全体のうちX方向に沿って細長いスリット状の領域(例えば矩形状の領域)を照明する。」(【0010】) (イ)「マスクMのパターンからの光は、投影光学系PLを介して、感光性のレジストが塗布された基板Wの単位露光領域にマスクMのパターン像を形成する。すなわち、マスクM上での照明領域に光学的に対応するように、基板Wの単位露光領域において、マスクMのパターン領域全体と相似な矩形状の領域、あるいはX方向に細長い矩形状の領域(静止露光領域)にマスクパターン像が形成される。」(【0011】) (ウ)「図2を参照すると、本実施形態の照明光学系ILは、固体発光光源としてのLED(Light Emission Diode)光源1を備えている。LED光源1は、縦横に間隔を隔てて配置された複数の発光部を備える。それぞれの発光部は、発光面から照明光を射出する固体発光素子1aを有する。以下の説明では、発光面を有する固体発光素子1aをチップ1aと称する。ただし、図2およびこれに関連する図では、説明の理解を容易にするとともに図面の明瞭化を図るために、LED光源1は、X方向に2列でY方向に3列の合計6つのチップ1aを有し、その発光面は円形状であるものとする。なお、本実施形態における発光面とは、チップ1aにおいて光が射出される面とすることができる。」(【0017】) (エ)「6つのチップ1aの発光面から射出された照明光は、それぞれのチップ1aと対応するように配置された6つのコレクタレンズ2により集光された後に、リレーレンズ3を介してフライアイレンズ4に入射する。各コレクタレンズ2は、その前側焦点位置が対応するチップ1aの発光面の位置とほぼ一致するように配置されている。また、各コレクタレンズ2の後側焦点位置が位置する面に、リレーレンズ3の前側焦点位置がほぼ一致している。各コレクタレンズ2は、その光軸がリレーレンズ3の光軸(ひいては照明光学系ILの光軸AXi)とほぼ平行になるように配置されている。」(【0018】) (オ)「したがって、図2において細い実線で示すように、各チップ1aの発光面の中心から射出された光は、対応するコレクタレンズ2を経てほぼ平行な光束になり、光軸AXiとほぼ平行な経路に沿ってリレーレンズ3に入射する。リレーレンズ3に入射した6つのほぼ平行な光束は、その後側焦点位置の近傍に位置するフライアイレンズ4の入射側の面に集光する。」(【0020】) (カ)「図2において破線で示すように、各チップ1aの発光面の端からコレクタレンズ2の光軸とほぼ平行(ひいては照明光学系ILの光軸AXiとほぼ平行)に射出された光は、コレクタレンズ2の後側焦点位置の近傍に集光した後、リレーレンズ3の作用により、その後側焦点面の近傍に位置するフライアイレンズ4の入射側の面に投影される。こうして、各チップ1aからの照明光は、対応するコレクタレンズ2およびリレーレンズ3を経て、フライアイレンズ4の入射側の面で重畳される。」(【0021】) (キ)「すなわち、LED光源1の各チップ1aの円形状の発光面の像が、フライアイレンズ4の入射側の面でほぼ重なり合うように形成される。このとき、LED光源1の各チップ1aの発光面は、コレクタレンズ2およびリレーレンズ3の作用により、フライアイレンズ4の入射側の面の有効領域を覆う大きさまで拡大されて投影される。」(【0022】) (ク)「フライアイレンズ4の複数のレンズエレメント4aを経た光束は、その出射端の近傍に配置された開口絞り5、およびコンデンサレンズ6を介して、マスクMを照明する。コンデンサレンズ6は、その前側焦点位置がフライアイレンズ4の出射端の位置とほぼ一致し、後側焦点位置がマスクMのパターン面の位置とほぼ一致するように配置されている。すなわち、各レンズエレメント4aの入射側の面とマスクMのパターン面とは、光学的にほぼ共役に配置されている。開口絞り5には、例えば光軸AXiを中心とした円形状の開口部(光透過部)が形成されている。ここで、開口絞り5が配置されている面は、投影光学系PLの開口数を決定するための投影開口絞り(不図示)が配置されている面と光学的に共役な関係である。」(【0025】) (ア)?(ク)の記載からみて、先願1には次の発明(以下「先願発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「縦横に間隔を隔てて配置された複数の発光部(チップ1a)を備えるLED光源1と、それぞれのチップ1aと対応するように配置されたコレクタレンズ2と、リレーレンズ3と、複数のレンズエレメント4aを有するフライアイレンズ4と、フライアイレンズ4の出射端の近傍に配置された開口絞り5と、コンデンサレンズ6とを備え、各チップ1aの発光面の中心から射出された光は、対応するコレクタレンズ2を経てほぼ平行な光束になり、光軸AXiとほぼ平行な経路に沿ってリレーレンズ3に入射し、リレーレンズ3に入射したほぼ平行な光束は、その後側焦点位置の近傍に位置するフライアイレンズ4の入射側の面に集光し、LED光源1の各チップ1aの円形状の発光面の像が、フライアイレンズ4の入射側の面でほぼ重なり合うように形成される照明光学系IL。」 (3)対比・判断 本件発明3?9と先願発明1とを対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 相違点1 照度の均一性を高めるための光学素子として本件発明3?9がロッド・インテグレータを備えたのに対し、先願発明1がフライアイレンズ4を用いた点。 相違点2 本件発明3?9が、第2照明光学系から出射された光を平行光にする第3照明光学系を備え、第3照明光学系の入射瞳の位置は、第2照明光学系の焦点位置にあり、ロッド・インテグレータの入射面は、第3照明光学系の焦点位置に配置され、各発光素子の瞳像が、ロッド・インテグレータの入射面に結像されるようにしたのに対し、先願発明1が本件発明3?9の第3照明光学系に相当する構成を備えていない点。 まず、上記相違点2について検討すると、本件発明3?9は、第2照明光学系から出射された光を平行光にし、また、その焦点位置にロッド・インテグレータの入射面を配置するようにした第3照明光学系を備えるから、LEDアレイ光源のロッド・インテグレータの入射面位置に対する照明は、いわゆるケーラー照明となっている。これに対して、引用発明1は、アレイ状に配列された複数のLED8を備える励起光源部2の像をロッドインテグレーター5の光入射端面5a上に結像させており、いわゆるクリティカル照明となっている。そうすると、本件発明3?9と、先願発明1とでは、光学系としての基本構成が異なるものというべきである。 してみれば、先願発明1において、相違点2に係る本件発明3?9の構成を採用することは周知技術の単なる付加・削除・転換とはいえないから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明3?9と先願発明1とは実質的に同一であるとはいえない。 3 進歩性についての判断 (1)本件発明3?9について 本件発明3?9は、第42(1)に記載したとおりの発明特定事項を備えるものとなった。 (2)引用発明について 引用文献1には次の記載がある。 (ア)「図1に示すように、第1実施形態の光源装置1は、励起光源部2と、平行化光学系3と、集光レンズ4と、ロッドインテグレーター5と、結像レンズ6と、波長変換素子7と、を備えている。励起光源部2は、複数の発光ダイオード8(Light Emitting Diode, 以下、LEDと略記する)を備えている。複数のLED8は、例えばm行×n列(m,nはともに自然数)のアレイ状に配列されている。励起光源部2のLED8は、後述する波長変換素子7の蛍光体層を励起させる励起光L1を射出する。励起光L1は、例えば450nmの近傍にピーク波長を有する青色光である。ただし、励起光L1は、後述する蛍光体層を励起できる光であればよく、必ずしも波長が450nm近傍の青色光に限るものではない。」(【0022】) (イ)「平行化光学系3は、励起光源部2を構成するLED8と同数の平行化レンズ9を備えている。個々の平行化レンズ9は、個々のLED8に対応して配置されている。すなわち、複数の平行化レンズ9は、LED8と同様、m行×n列(m,nはともに自然数)のアレイ状に配列されている。平行化レンズ9は、LED8から射出された励起光L1を平行化する作用を有する。したがって、LED8から射出された時点である程度の広がりを持つ励起光L1は、平行化レンズ9によって平行化される」(【0023】) (ウ)「平行化光学系3を構成する複数の平行化レンズ9から射出された励起光L1は、集光レンズ4に入射する。集光レンズ4に入射した励起光は、集光レンズ4により集束され、ロッドインテグレーター5に向けて射出される。」(【0024】) (エ)「ロッドインテグレーター5は、互いに平行な光入射端面5aと光射出端面5bとを有するロッド状部材で構成されている。ロッドインテグレーター5は、入射した励起光L1を内部で多重反射させつつ、光入射端面5aから光射出端面5bに向けて進行させる。ロッドインテグレーター5は、様々な角度成分を持って入射する励起光L1の光束を多重反射により混合し、励起光L1の強度分布を均一化する作用を有する。ロッドインテグレーター5の光入射端面5aは、集光レンズ4の焦点位置に配置されている。そのため、集光レンズ4から射出された励起光L1は、集束された状態でロッドインテグレーター5の光入射端面5aに入射する。」(【0025】) (ア)?(エ)の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「アレイ状に配列された複数のLED8を備える励起光源部2と、個々のLED8に対応して配置され、LED8から射出された励起光L1を平行化する個々の平行化レンズ9を備える平行化光学系3と、平行化レンズ9から射出された励起光L1を集束する集光レンズ4と、互いに平行な光入射端面5aと光射出端面5bとを有するロッド状部材で構成され、入射した励起光L1を内部で多重反射させつつ、光入射端面5aから光射出端面5bに向けて進行させ、様々な角度成分を持って入射する励起光L1の光束を多重反射により混合し、励起光L1の強度分布を均一化するロッドインテグレーター5と、を備え、ロッドインテグレーター5の光入射端面5aは、集光レンズ4の焦点位置に配置される光源装置1。」 (3)対比・判断 本件発明3?9と引用発明1とを対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 相違点3 本件発明3?9が、第2照明光学系から出射された光を平行光にする第3照明光学系を備え、第3照明光学系の入射瞳の位置は、第2照明光学系の焦点位置にあり、ロッド・インテグレータの入射面は、第3照明光学系の焦点位置に配置され、各発光素子の瞳像が、ロッド・インテグレータの入射面に結像されるようにしたのに対し、引用発明1が、本件発明3?9の第3照明光学系に相当する構成を備えていない点。 上記相違点3について検討すると、本件発明3?9は、第2照明光学系から出射された光を平行光にし、また、その焦点位置にロッド・インテグレータの入射面を配置するようにした第3照明光学系を備えるから、LEDアレイ光源のロッド・インテグレータの入射面位置に対する照明は、いわゆるケーラー照明となっている。これに対して、引用発明1は、アレイ状に配列された複数のLED8を備える励起光源部2の像をロッドインテグレーター5の光入射端面5a上に結像させており、いわゆるクリティカル照明となっている。 確かに、ケーラー照明とクリティカル照明とはそれぞれよく知られた照明法であるものの、引用文献1に記載された基材11を照明する光源装置1は、励起光源部2の像をロッドインテグレーター5の光入射端面5a上に結像させるクリティカル照明とした上で全体の光学系を構成しており、当該クリティカル照明をケーラー照明に変更すれば、ロッドインテグレーター5の光学性能や、結像レンズ6、基材11の配置位置なども変更しなければならず、そのような変更をする理由がない。 また、引用文献2、3も、LEDアレイ光源のロッド・インテグレータの入射面位置に対する照明をケーラー照明にする点については、開示も示唆もしない。 そうすると、引用発明1において、相違点3に係る本件発明3?9の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明3?9に係る特許を取り消すことはできない。 また、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由についてはすべて取消理由として通知したため、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっても、本件発明3?9に係る特許を取り消すことはできない。 さらに、他に本件発明3?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項1に係る特許は、本件訂正により削除されたので、請求項1に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】 複数の発光素子を平面上に配列したLEDアレイ光源と、 各発光素子から出射された光をそれぞれコリメートする第1照明光学系と、 前記第1照明光学系から出射された光を焦点位置に集光させる第2照明光学系と、 前記第2照明光学系から出射された光を平行光にする第3照明光学系と、 柱状のレンズであり、前記第3照明光学系から出射された光を入射して照度の均一性を高めるロッド・インテグレータと、を備え、 前記第3照明光学系の入射瞳の位置は、前記第2照明光学系の焦点位置にあり、前記ロッド・インテグレータの入射面は、第3照明光学系の焦点位置に配置され、各発光素子の瞳像が、前記ロッド・インテグレータの入射面に結像されることを特徴とする光照射装置。 【請求項3】 前記LEDアレイ光源を構成する前記複数の発光素子には、一の発光波長を有する複数の第1発光素子と、他の発光波長を有する複数の第2発光素子とが含まれ、前記第1又は第2発光素子を選択的に発光させることで、前記LEDアレイ光源の発光波長を変更可能とした請求項2に記載の光照射装置。 【請求項4】 前記LEDアレイ光源を構成する前記複数の発光素子の発光波長が、g線、h線、i線のうちのいずれか一以上である請求項2又は3に記載の光照射装置。 【請求項5】 前記LEDアレイ光源を構成する前記複数の発光素子の全部又は一部をON又はOFFにする点灯制御手段を備えた請求項2?4のいずれか1項に記載の光照射装置。 【請求項6】 前記LEDアレイ光源を構成する前記複数の発光素子の向きが、各発光素子の発光面に垂直な軸を中心にして回転方向に異なることを特徴とする請求項2?5のいずれか1項に記載の光照射装置。 【請求項7】 前記LEDアレイ光源を構成する前記複数の発光素子の全部又は一部に流れる電流値を制御する電流制御手段を備えた請求項2?6のいずれか1項に記載の光照射装置。 【請求項8】 前記LEDアレイ光源を構成する前記複数の発光素子から出射された光を、光軸上のいずれかの位置で遮断する機械式のシャッターを備えた請求項2?7のいずれか1項に記載の光照射装置。 【請求項9】 前記フライアイ・インテグレータ又は前記ロッド・インテグレータから出射された照明光をマスクに照射し、前記マスクのパターン像を感光性基板上に露光する露光装置であって、請求項2?8のいずれか1項に記載した光照射装置を備えたことを特徴とする露光装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-09-30 |
出願番号 | 特願2015-82894(P2015-82894) |
審決分類 |
P
1
652・
16-
YAA
(G03F)
P 1 652・ 121- YAA (G03F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山口 敦司 |
特許庁審判長 |
井上 博之 |
特許庁審判官 |
瀬川 勝久 松川 直樹 |
登録日 | 2019-05-24 |
登録番号 | 特許第6529809号(P6529809) |
権利者 | 株式会社サーマプレシジョン |
発明の名称 | 光照射装置及び露光装置 |
代理人 | 小西 恵 |
代理人 | 特許業務法人 津国 |
代理人 | 特許業務法人津国 |
代理人 | 永岡 重幸 |