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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1369256
審判番号 不服2019-8302  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-21 
確定日 2021-01-12 
事件の表示 特願2015-561773「UE及びその通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月31日国際公開、WO2014/208035、平成28年 8月 8日国内公表、特表2016-523459、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は,平成26年6月13日(優先権主張:平成25年6月28日)を国際出願日とする出願であって,平成27年12月18日付けで翻訳文が提出され,平成29年5月10日付けで手続補正がなされ,平成30年7月30日付けで拒絶理由通知がされ,平成30年10月9日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,平成31年3月28日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされ,これに対し,令和1年6月21日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,令和2年10月21日付けで当審より拒絶理由通知がされ,令和2年11月4日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明

本願請求項1-10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は,令和2年11月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

なお,発明特定事項A-Dは,説明のために当審で付与したものであり,以下,「構成A」-「構成D」と称する。

「【請求項1】
A 一対一直接通信のためのUE(User Equipment)であって、
B 他のUEから、セッション鍵に関連するインジケータと、検証のための情報と、を含む第一のメッセージを受信する受信部と、
C 前記インジケータから判定された鍵に基づき機密性鍵と完全性鍵を生成する鍵生成部と、
D 前記UEが保有する前記他のUEに関する情報と前記受信した前記情報との一致を検証する第一の検証と、前記完全性鍵による前記第一のメッセージの完全性保護を検証する第二の検証とを行い、前記第一の検証及び前記第二の検証が共に通った場合に、前記他のUEと、前記機密性鍵と前記完全性鍵とで保護された前記一対一直接通信を行う制御部と、
A を備えるUE。」

なお,本願発明2-10の概要は以下のとおりである。

本願発明2-5は,本願発明1を減縮した発明である。
本願発明6は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明7-10は,本願発明6を減縮した発明である。

第3 引用文献,引用発明等

1.引用文献1について

(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(国際公開第2012/088470号)には,以下の事項が記載されている。なお,日本語訳として,パテントファミリーである特表2014-504814号公報(以下,「対応公報」という。)の記載を用いた。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下,同様。)

「[0067] The first UE 504 and second UE 506 may perform pre-connection setup 514 procedure to determine pertinent parameters to use for establishing a direct connection between the UEs. The first UE 504 and second UE 506 may then perform direct connection setup 516, based on the parameters obtained in the pre-connection setup procedure 514, to establish a direct connection between the UEs. The first UE 504 and second UE 506 may then communicate directly with each other for P2P communication 518.」
(対応公報:[0067] 第1のUE504および第2のUE506は、UE間の直接接続を確立するために使用する関連パラメータを決定するために事前接続セットアップ514手順を実行することができる。次いで第1のUE504および第2のUE506は、UE間の直接接続を確立するために、事前接続セットアップ手順514で取得したパラメータに基づいて、直接接続セットアップ516を実行することができる。次いで第1のUE504および第2のUE506は、P2P通信518のために互いに直接通信することができる。)

「[0068] During the P2P session, first UE 504 and second UE 506 may perform direct connection reconfiguration 520 to reconfigure the direct connection between the UEs. Reconfiguration may occur at any time (if at all) and may occur any number of times during the P2P session. After each reconfiguration, first UE 504 and second UE 506 may operate in accordance with updated parameters from the reconfiguration. The first UE 504 and/or second UE 506 may terminate the P2P communication 522 at any time. The various steps in FIG. 5 are described in further detail below.」
(対応公報:[0068] P2Pセッション中、第1のUE504および第2のUE506は、UE間の直接接続を再構成するために直接接続再構成520を実行することができる。P2Pセッション中に、再構成は(再構成するにしても)任意の時間に生じることがあり、任意の回数だけ生じることがある。各再構成の後、第1のUE504および第2のUE506は、再構成による更新されたパラメータに従って動作し得る。第1のUE504および/または第2のUE506は、任意の時間にP2P通信を終了させる(522)ことができる。図5における様々なステップは、以下でさらに詳細に説明する。)

「[0096] FIG. 10 shows a design of a process 1000 for direct connection setup. Process 1000 may be used for direct connection setup as shown at 516 in FIG. 5. A client UE 1002 may transmit a Random Access Preamble 1006 to a manager UE 1004. The manager UE 1004 may return a Random Access Response (RAR) 1008 to the client UE 1002. The RAR 1008 may include timing alignment information to adjust the uplink timing of the client UE 1002, an initial uplink grant for the client UE, an assignment of a temporary C-RNTI to the client UE, and other information. The client UE 1002 may then send a third Message 1010 to the manager UE 1004. The third message 1010 may include an RRC connection request ("RRCConnectionRequest") message, which may include a full UE ID that uniquely identifies the client UE 1002 for a P2P session. The manager UE 1004 may send a fourth Message 1012 to the client UE 1002. The fourth message 1010 may include (i) an RRC connection setup ("RRCConnectionSetup") message to establish a first SRB (SRBl) and (ii) a temporary UE-ID in a MAC control element (CE). This temporary UE ID, which may be a 48-bit C-RNTI, may be associated with the Random Access Preamble sent by the UE at 1006 and may be used to identity the UE prior to assignment of the full UE ID. Steps 1006 to 1012 may be part of a random access procedure that may be used for initial access in LTE. The client UE may send an RRC connection setup complete ("RRCConnectionSetupComplete") message to the manager UE 1004.」
(対応公報:[0096] 図10に、直接接続セットアップのためのプロセス1000の設計を示す。プロセス1000は、図5の516に示す直接接続セットアップに使用できる。クライアントUE1002は、ランダムアクセスプリアンブル1006をマネージャUE1004に送信することができる。マネージャUE1004は、ランダムアクセス応答(RAR)1008をクライアントUE1002に返信することができる。RAR1008は、クライアントUE1002のアップリンクタイミングを調整するためのタイミングアラインメント情報と、クライアントUEに対する最初のアップリンク許可と、クライアントUEに対する一時C-RNTIの割当てと、他の情報とを含むことができる。次いでクライアントUE1002は、第3のメッセージ1010をマネージャUE1004に送ることができる。第3のメッセージ1010は、RRC接続要求(「RRCConnectionRequest」)メッセージを含むことができ、このメッセージは、P2PセッションのためにクライアントUE1002を一意に識別する完全なUEIDを含むことができる。マネージャUE1004は、第4のメッセージ1012をクライアントUE1002に送ることができる。第4のメッセージ1010は、(i)第1のSRB(SRB1)を確立するためのRRC接続セットアップ(「RRCConnectionSetup」)メッセージと、(ii)MAC制御要素(CE)内の一時UE-IDとを含むことができる。この一時UEIDは、48ビットのC-RNTIであってよく、1006においてUEによって送られたランダムアクセスプリアンブルに関連付けられることがあり、完全なUEIDの割当ての前にUEを識別するために使用されることがある。ステップ1006?1012は、LTEにおいて最初のアクセスに使用され得るランダムアクセス手順の一部であってよい。クライアントUEは、RRC接続セットアップ完了(「RRCConnectionSetupComplete」)メッセージをマネージャUE1004に送ることができる。)

「[0097] The client UE 1002 and the manager UE 1004 may perform mutual authentication 1016. The UEs may exchange various messages ay 1016 to enable the client UE 1002 to authenticate the manager UE 1006, and vice versa. A decision as to which UE will send a security mode command ("SecurityModeCommand") message 1018 may also be made during mutual authentication 1016.」
(対応公報:[0097] クライアントUE1002およびマネージャUE1004は、相互認証1016を実行することができる。UEは、クライアントUE1002がマネージャUE1006を認証できるように、またその逆も同様にできるように、1016において様々なメッセージを交換することができる。どちらのUEがセキュリティモードコマンド(「SecurityModeCommand」)メッセージ1018を送るかの決定も、相互認証1016の間に下され得る。)

「[0098] The manager UE 1004 may send a SecurityModeCommand message 1018 to the client UE 1002. This message may include an indication of a particular ciphering algorithm to use, a particular integrity algorithm to use, and similar security mode information. A cryptographic key may be generated between the client UE 1002 and the manager UE 1004, which may be used for ciphering and integrity protection of RRC messages during the P2P session. This cryptographic key may be a cryptographic key KeNB generated in regular LTE system during call setup.」
(対応公報:[0098] マネージャUE1004は、SecurityModeCommandメッセージ1018をクライアントUE1002に送ることができる。このメッセージは、使用する特定の暗号化アルゴリズム、使用する特定の完全性アルゴリズム、および同様のセキュリティモード情報の指示を含むことができる。クライアントUE1002とマネージャUE1004との間で暗号鍵が生成されることがあり、これはP2Pセッション中におけるRRCメッセージの暗号化および完全性保護に使用され得る。この暗号鍵は、セルセットアップ中に通常のLTEシステムで生成される暗号鍵KeNBであり得る。)



FIG.5」



FIG.10」

(2)上記引用文献1の特に下線部の記載より,上記引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

なお,符号a-eは,説明のために当審で付与したものである。以下,「構成a」-「構成e」という。

「a 第1のUEであって,第2のUEと,直接接続セットアップを実行し,次いで,P2P通信のために直接通信し,
b P2Pセッション中,任意の時間にP2P通信を終了させることができ,
c 直接接続セットアップのためのプロセスは,
d クライアントUEであって,相互認証を実行し,マネージャUEを認証し,
e マネージャUEからSecurityModeCommandメッセージを送られ,暗号鍵を生成し,これはP2Pセッション中に,暗号化および完全性保護に使用される,
a 第1のUE または d クライアントUE。」

2.引用文献2について

(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(特開2007-166538号公報)には,以下の事項が記載されている。

「【0013】図2において、通信装置1を通信装置2へ近づけることによりNFCインターフェース104と110との間で通信が開始される(ステップS200)。通信方式および暗号化方式を要求するメッセージが通信装置1から通信装置2へ送信される(ステップS201)。その応答として、通信装置2に実装されている通信インターフェースの通信方式および暗号化方式が通信装置2から通信装置1へ送信される(ステップS202)。通信方式および暗号化方式のデータ例は図4、図5、図6を使用して後述する。」

「【0014】通信装置2に実装されている通信インターフェースの通信方式および暗号化方式を取得した通信装置1は、通信方式および暗号化方式が、通信装置1がサポートする通信方式及び暗号化方式に合致するか否かを判定する(ステップS203)。通信方式および暗号化方式が合致する場合は、図2に示すようにNFCインターフェース104と110を使用する通信を終了する(ステップS204)。そしてIEEE802.11bインターフェース105,112を使用して通信を開始し(ステップS205)、データ通信を行った後(ステップS206)、通信を終了する(ステップS207)。ステップS203までが通信方式及び暗号化方式を判定する方式判定フェーズであり、ステップS204移行が通信フェーズである。」



【図2】」

(2)上記引用文献2の記載より,上記引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。

「f 通信装置1であって,通信装置2に実装されている通信インターフェースの通信方式および暗号化方式が通信装置2から送信され,
g 通信方式および暗号化方式が、通信装置1がサポートする通信方式及び暗号化方式に合致するか否かを判定する,
f 通信装置1。」

第4 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 構成Aについて

構成aによれば,引用発明の「第1のUE」は,本願発明1の「UE(User Equipment)」に対応する。
また,構成a,c,dによれば,引用発明の「第1のUE」は,「クライアントUE」であるともいえることは明らかであるから,引用発明の「クライアントUE」も,本願発明1の「UE(User Equipment)」に対応する。
構成aによれば,引用発明の「第1のUE」は,「第2のUE」と「直接通信」している。
構成aによれば,引用発明の「第1のUE」は,「第2のUE」と「P2P通信のために直接通信」しているところ,その際に,その他の装置と通信していないから,「一対一」で通信しているといえる。
したがって,引用発明の「P2P通信のために直接通信」する「第1のUE」または「クライアントUE」は,本願発明1の「一対一直接通信のためのUE(User Equipment)」に対応する。

イ 構成Bについて

構成aによれば,引用発明の「第2のUE」は,本願発明1の「他のUE」に対応する。
また,構成a,c,eによれば,引用発明の「第2のUE」は,「マネージャUE」であるともいえることは明らかであるから,引用発明の「マネージャUE」も,本願発明1の「他のUE」に対応する。
構成eによれば,引用発明の「クライアントUE」は,「マネージャUEからSecurityModeCommandメッセージを送られ」ている。
引用発明の「SecurityModeCommandメッセージ」は,本願発明1の「第一のメッセージ」に対応する。
引用発明の「クライアントUE」は,「第一のメッセージ」を「送られ」ているので,「第一のメッセージ」を「受信」しているのは明らかであり,また,受信のための手段である「受信部」を備えているのは明らかである。
したがって,引用発明の「第1のUE」または「クライアントUE」と本願発明1の「UE」とは,下記の点で相違するものの,”他のUEから、第一のメッセージを受信する受信部”を備えている点で共通する。

ウ 構成Cについて

構成eによれば,引用発明の「クライアントUE」は,「暗号鍵を生成」している。
構成eによれば,引用発明の「暗号鍵」は,「暗号化」「に使用される」ので,本願発明1の「機密性鍵」に相当し,また,「完全性保護に使用される」ので,本願発明1の「完全性鍵」にも相当する。
引用発明の「クライアントUE」は,「鍵を生成」しているので,鍵を生成するための手段である「鍵生成部」を備えているのは明らかである。
したがって,引用発明の「第1のUE」または「クライアントUE」と本願発明1の「UE」とは,下記の点で相違するものの,”機密性鍵と完全性鍵を生成する鍵生成部”を備えている点で共通する。

エ 構成Dについて

構成dによれば,引用発明の「クライアントUE」は,「マネージャUEを認証」している。
構成dによれば,引用発明の「マネージャUE」の「認証」は,「相互認証」の中で行われている。
構成c,dによれば,引用発明の「相互認証」は,「直接接続セットアップのためのプロセス」の中で行われている。
構成aによれば,引用発明の「第1のUE」(つまり,「クライアントUE」)は,「直接接続セットアップ」に「次いで」,「第2のUE」(つまり,「マネージャUE」)と,「直接通信」している。
よって,引用発明の「クライアントUE」は,「マネージャUE」の「認証」に「次いで」,「マネージャUE」と,「直接通信」している。
ここで,引用発明の「クライアントUE」は,「マネージャUE」の「認証」が「通った場合に」,「マネージャUE」と,「直接通信」しているのは明らかである。
また,「認証」において,何らかの「検証」を行っているのは明らかである。

構成eによれば,引用発明の「暗号鍵」は,「P2Pセッション中」で「使用され」ている。
ここで,構成bによれば,「P2Pセッション中,任意の時間にP2P通信を終了させることができ」るので,「P2Pセッション中」は,「P2P通信」が「終了」するまでの期間を意味している。
構成aによれば,「P2P通信」は「直接通信」であるので,「暗号鍵」は「直接通信」で「使用され」ている。
「暗号鍵」を「通信」で「使用」すると,「暗号鍵」で「通信」は「保護」される。

引用発明の「クライアントUE」は,「通信」を行っているので,通信を行うための手段である「通信を行う制御部」を備えているのは明らかである。

したがって,引用発明の「第1のUE」または「クライアントUE」と本願発明1の「UE」とは,下記の点で相違するものの,”検証が””通った場合に、””他のUEと、””機密性鍵と””完全性鍵とで保護された””一対一直接通信を行う制御部”を備えている点で共通する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「一対一直接通信のためのUE(User Equipment)であって、
他のUEから、第一のメッセージを受信する受信部と、
機密性鍵と完全性鍵を生成する鍵生成部と、
検証が通った場合に、前記他のUEと、前記機密性鍵と前記完全性鍵とで保護された前記一対一直接通信を行う制御部と、
を備えるUE。」

(相違点)
(相違点1)
鍵の生成について,本願発明1は,「セッション鍵に関連するインジケータ」「を含む第一のメッセージを受信」し,「前記インジケータから判定された鍵に基づき機密性鍵と完全性鍵を生成」するのに対して,引用発明は,そのような鍵の生成をしない点。

(相違点2)
検証について,本願発明1は,「検証のための情報」「を含む第一のメッセージを受信」し,「UEが保有する」「他のUEに関する情報と」「前記受信した前記情報との一致を検証する第一の検証と、」「完全性鍵による前記第一のメッセージの完全性保護を検証する第二の検証とを行」うのに対して,引用発明は,そのような検証を行わない点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑みて、まず相違点2について先に検討する。
構成fを参照すれば,引用文献2に記載された「通信装置1」および「通信装置2」は,それぞれ本願発明1の「UE」および「他のUE」に対応する。
構成f,gを参照すれば,引用文献2に記載された,「通信装置2から送信され」る「通信装置2に実装されている通信インターフェースの通信方式および暗号化方式」は,「情報」にほかならず,また,「通信装置1がサポートする通信方式及び暗号化方式に合致するか否かを判定」,つまり,「検証」するためのものであるので,本願発明1の「検証のための情報」に相当する。
他方で,引用文献2に記載された,「通信装置2から送信される」「通信装置2に実装されている通信インターフェースの通信方式および暗号化方式」との「合致」を「判定」される,「通信装置1がサポートする通信方式及び暗号化方式」は,「通信装置1」「が保有する情報」とはいえるものの,「通信装置2」「に関する情報」とはいえないので,本願発明1の「UEが保有する」「他のUEに関する情報」とは一致しない。
したがって,引用文献2には,「UEが保有する」「他のUEに関する情報と」,「受信した」「情報との一致を検証する第一の検証」を行うことが記載されているとはいえない。
よって,相違点2に係る本願発明1の,「検証のための情報」「を含む第一のメッセージを受信」し,「UEが保有する」「他のUEに関する情報と」「前記受信した前記情報との一致を検証する第一の検証と、」「完全性鍵による前記第一のメッセージの完全性保護を検証する第二の検証とを行」うという構成は,上記引用文献2に記載されていないのであるから,引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用して,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到しえたことであるとはいえない。
したがって,上記相違点1について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明6について

本願発明6は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明2-5,7-10について

本願発明2-5は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明7-10は,本願発明6を減縮した発明であるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断

1.理由3(特許法第29条第2項)について

原査定は,請求項1-3,6-9,12について上記引用文献1-2に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,令和2年11月4日付け手続補正により補正された請求項1は,上記相違点2に係る構成を有しており,上記のとおり,本願発明1-10は,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について

1.理由1(特許法第36条第6項第1号)について

当審では,請求項1,6の「前記インジケータに基づき機密性鍵と完全性鍵を生成する」という点は,発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが,令和2年11月4日付けの補正において,「前記インジケータから判定された鍵に基づき機密性鍵と完全性鍵を生成する」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび

以上のとおり,本願発明1-10は,当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。


 
審決日 2020-12-23 
出願番号 特願2015-561773(P2015-561773)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金沢 史明  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 塚田 肇
須田 勝巳
発明の名称 UE及びその通信方法  
代理人 家入 健  

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