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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1369618
審判番号 不服2019-13838  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-17 
確定日 2020-12-24 
事件の表示 特願2017-159631号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日出願公開、特開2019- 37319号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年8月22日の出願であって、平成31年4月4日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年5月23日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年7月17日付け(謄本送達日:同年同月23日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年10月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対し、当審において、令和2年6月23日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年8月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A-Cは、本願発明を分説するために当審で付与した)。
「【請求項1】
A 始動条件の成立に基づき、複数の識別情報をそれぞれ複数列で変動表示させる変動表示ゲームを表示可能な表示手段と、前記変動表示ゲームに関連する演出を実行可能な演出制御手段と、を備える遊技機において、
B 前記演出制御手段は、
B1 前記複数列で変動表示中の所定の識別情報を本停止状態とさせる本停止制御を実行することで、前記変動表示ゲームの結果を表示可能であり、
B2 前記本停止制御を実行する直前に、前記複数列で変動表示中のそれぞれの前記所定の識別情報と同列に表示され、当該所定の識別情報に対する変動表示方向の前、及び、後に当該所定の識別情報とともに1の画面に表示される2つの識別情報を非表示にすることを特徴とする
C 遊技機。」

ちなみに、本願明細書の【0687】には「飾り第1図柄A?C・・・が確定した停止状態として本停止(変動停止)される。」と記載されているから、本願発明の「前記複数列で変動表示中の所定の識別情報を本停止状態とさせる本停止制御」は、複数列の変動表示中の飾り図柄を確定した停止状態にする制御である(下線は、当審で付した。以下同じ)。
また、本願の図64(つ)には、この後停止表示される「2,4,5」の図柄の下に「1,3,4」の図柄が図示され、本願明細書の【0728】には「図64の(つ)は、変動表示領域610の飾り第1図柄A?C・・・が、本停止する直前の表示装置41の表示画面である。」と記載され、本願の図64(て)には、停止表示されている「2,4,5」の図柄の前後には図柄が表示されていないことが図示され、本願明細書の【0730】には「図64の(て)は、変動表示領域610の飾り第1図柄A?C・・・が、本停止するときの表示装置41の表示画面である。前変動表示領域611(左前領域611A、右前領域611B、中前領域611C)に表示されていた飾り特別図柄(飾り第1図柄A?C)の一つ前の各図柄(各-1図柄)は、変動表示領域610の飾り第1図柄A?C・・・が全て本停止する直前に、非表示になる。」と記載され、また、本願明細書中に他に「本停止制御」について定義されているわけではないから、本願発明の「前記本停止制御を実行する直前」とは、図柄停止コマンド受信直前や飾り図柄の変動速度を遅くする制御を実行する直前のことではなく、全ての飾り図柄を完全に停止させる制御を実行する直前のことである。

第3 当審拒絶理由の概要
令和2年6月23日付けの当審における拒絶の理由の概要は、以下を含むものである。

1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1-1(新規性)又は2-1(進歩性)について
・請求項1
・引用文献 1-2

●理由1-2(新規性)又は2-2(進歩性)について
・請求項1
・引用文献 1-5

引用文献1.特開2014-57616号公報
引用文献2.特開2004-33343号公報
引用文献3.「【KYORAKUコレクション】ぱちんこ冬のソナタ」,YouTube[online][video],平成29年2月22日,16-21秒、30-31秒、1分10-14秒,[令和2年6月15日検索],URL,https://www.youtube.com/watch?v=_TLnHh6xSVc
引用文献4.「PICHELIN-TV.PGB 銭形平次 with チームZ vol.1(2012/03/20)」,YouTube[online][video],平成24年3月20日,3分29-32秒,[令和2年6月15日検索],URL,https://www.youtube.com/watch?v=cJ6FaUJhcMs
引用文献5.「【公式】〈ぱちんこ 必殺仕事人IV〉」,YouTube [online] [video],平成29年5月19日,6-12秒,[令和2年6月15日検索],URL,https://www.youtube.com/watch?v=EIaw93krQJk

第4 引用文献に記載された事項
1 引用文献1
当審における拒絶の理由(令和2年6月23日付け拒絶理由通知書)に引用文献1として引用され、本願の出願前に頒布された特開2014-57616号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ)。

(1)「【0012】
図柄のスクロール画像の表示過程は、変動演出パターンデータに定義される。本実施例のスクロール表示は、スクロール方向の中心位置を停止表示位置として、複数種類の停止図柄候補を順次スクロール方向に移動させる。スクロール表示中においては、そのスクロール方向に複数の停止図柄候補を表示させるとともに、中心位置に移動した停止図柄候補と干渉しない領域にマスク画像を表示させる。このマスク画像が表示されるマスク領域は、中心位置から停止図柄候補一つ分以上離れた領域に設定されるのが好ましい。一方、スクロール停止時においては中心位置に停止図柄候補を一つのみ停止表示させて前後の停止図柄候補を非表示とするとともにマスク画像を非表示とする。」

(2)「【0025】
演出表示装置60は、特別図柄192の変動表示と連動する形で装飾図柄190を変動表示する液晶ディスプレイで構成される表示装置である。装飾図柄190は、特別図柄192で示される抽選の結果表示を視覚的に演出するための図柄である。演出表示装置60は、装飾図柄190として、例えばスロットマシンのゲームを模した複数列の図柄を変動させる動画像を画面の中央領域に表示する。本実施例においては、「0」?「9」の数字で構成される図柄を3列に表示して変動させ、最終的に停止表示される3個の図柄組合せによって当りまたは外れを示す。装飾図柄190を構成する複数図柄(「停止図柄候補」ともいう)のそれぞれは、本実施例では背景画像を透過させる帯状のベース画像上にほぼ等間隔で配置される数字にて構成され、変動時にその複数の停止図柄候補が巡回表示されるスクロール画像を構成する。変形例においては、様々な色彩や模様の装飾が施された数字、文字、または記号で構成されるものでもよい。その場合、これら数字、文字、記号に対して全図柄に共通する絵柄または図柄ごとに異なる絵柄を加えて一体化させる形で構成されてもよい。この絵柄は、ぱちんこ遊技機10の当該機種に設定された装飾または演出のテーマに関連するモチーフが描かれた絵柄であり、例えば人物や動物のキャラクターが描かれた絵柄であってもよい。装飾図柄190は、絵柄が一体的に含まれる図柄が変動表示される場合と、絵柄が分離して数字、文字、記号の部分のみが変動表示される場合とが、演出の展開に沿って切り替えられる構成であってもよい。装飾図柄190の変動表示の背景には、ぱちんこ遊技機10の当該機種に設定された装飾または演出のテーマに関連する演出的効果を有する動画像が図柄変動と連動して表示される。」

(3)「【0033】
遊技球が始動口62に落入すると、特別図柄表示装置61および演出表示装置60において特別図柄192および装飾図柄190が変動表示される。特別図柄192および装飾図柄190の変動表示は、表示に先だって決定された変動表示時間の経過後に停止される。特別図柄192は、その変動開始から停止までの変動態様が定められた変動パターンにしたがって変動表示される。装飾図柄190は、その変動開始から停止までの変動態様が定められた変動演出パターンにしたがって変動表示される。変動パターンおよび変動演出パターンはそれぞれ複数種ずつ用意され、それぞれが長短様々な変動時間をもつ。変動パターンにしたがって特別図柄192が変動表示される間、同じ変動時間をもつ変動演出パターンにしたがって装飾図柄190が変動表示される。変動パターンには、その図柄変動の終了条件としてパターンごとに変動表示時間が定められており、その変動表示時間の経過時に特別図柄192および装飾図柄190の変動が停止される。
【0034】
装飾図柄190の変動表示としては、まず変動開始とともにスロットマシンのリール回転のように3列とも図柄を変動させ、変動終了タイミングへ近づいたときに一列ずつ停止させることで最終的な停止態様としての図柄組合せを表示する。停止時の特別図柄192および装飾図柄190が大当りを示す停止態様となった場合、通常遊技よりも遊技者に有利な遊技状態である特別遊技に移行し、大入賞口66の開閉動作が開始される。大当りを示す装飾図柄190の停止態様は、例えば3つの図柄の種類が一致する組合せの態様である。」

(4)「【0041】
図2は、ぱちんこ遊技機の背面側における基本的な構造を示す。電源スイッチ40はぱちんこ遊技機10の電源をオンオフするスイッチである。メイン基板102は、ぱちんこ遊技機10の全体動作を制御し、特に始動口62へ入賞したときの抽選等、遊技動作全般を処理する。サブ基板104は、液晶ユニット42を備え、演出表示装置60における表示内容や複数の可動役物140の動作、遊技効果ランプ90の点灯を制御し、特にメイン基板102による抽選結果に応じて表示内容を変動させ、その演出の進行に沿って可動役物140や遊技効果ランプ90の点灯を作動させる。メイン基板102およびサブ基板104は、遊技制御装置100を構成する。裏セット機構39は、賞球タンク44や賞球の流路、賞球を払い出す払出ユニット43等を含む。払出ユニット43は、各入賞口への入賞に応じて賞球タンク44から供給される遊技球を上球皿15へ払い出す。払出制御基板45は、払出ユニット43による払出動作を制御する。発射装置46は、上球皿15の貯留球を遊技領域52へ1球ずつ発射する。発射制御基板47は、発射装置46の発射動作を制御する。電源ユニット48は、ぱちんこ遊技機10の各部へ電力を供給する。」

(5)「【0099】
図11に示すように、装飾図柄190を構成する3列の図柄(左図柄202,中図柄204,右図柄206)は、停止図柄候補として「1」?「9」の数字図柄を有する。これら複数の停止図柄候補は、昇順または降順に有効ラインLに巡回表示されるスクロール画像208を形成し、いずれかが有効ラインLに停止表示される。本実施例では、装飾図柄190が左図柄202→右図柄206→中図柄204の順に停止表示される。それらの変動表示過程で左図柄202と右図柄206が同種の図柄で揃えばリーチとなる。3列の図柄が同種の図柄で揃えば当り図柄組合せとなり、大当りであることが示される。」

(6)「【0104】
図12は、実施例に係るαマスク処理の具体例を示す図である。図12(a)はスクロール表示中の状態を表し、図12(b)はスクロール表示停止時の状態を表し、図12(c)はスクロール表示停止後の状態を表している。装飾図柄190の変動表示が開始されると、図12(a)に示すように、各図柄列のスクロール画像208(左図柄202,中図柄204,右図柄206)のそれぞれの上端部と下端部にαマスク画像205が重ねて表示される。ROM324の所定領域には、αマスク画像205を表示させるためのマスク画像データが保持されている。」

(7)「【0108】
図12(b)に示すように、装飾図柄190の変動停止時には、いずれかの停止図柄候補が中心位置Cに停止され、その前後の停止図柄候補のごく一部がαマスク画像205の下層レイヤに表示される。本実施例では、その状態からその前後の停止図柄候補を消去する。それにより、図12(c)に示すように、表示指定領域の中心位置Cには、当否抽選の結果を示す停止図柄候補のみが鮮明に表示されるようになる。なお、本実施例では、図12(b)に示したように、スクロール画像208の停止時においても前後の停止図柄候補の一部が表示されるように表示指定領域を設定する例を示したが、スクロール画像208の停止時には前後の停止図柄候補が表示されないように表示指定領域を設定してもよい。言い換えれば、演出画像データをそのように取り出すように設定してもよい。それにより、スクロール画像208の停止時に前後の停止図柄候補を消去するといった処理を省略することができる。」

(8)【図12】

上記【0108】の「なお、本実施例では、図12(b)に示したように、スクロール画像208の停止時においても前後の停止図柄候補の一部が表示されるように表示指定領域を設定する例を示したが、スクロール画像208の停止時には前後の停止図柄候補が表示されないように表示指定領域を設定してもよい。」との記載を参酌すると、引用文献1の図12(b)には、所定の停止図柄候補(数字の「4」)と、当該所定の停止図柄候補と同列で変動表示方向において前後の2つの停止図柄候補(数字の「3」と「5」)の一部とが、同時に1つの画面に表示可能であることが図示されている。

(9)上記【0108】には「図12(b)に示すように、装飾図柄190の変動停止時には、いずれかの停止図柄候補が中心位置Cに停止され、その前後の停止図柄候補のごく一部がαマスク画像205の下層レイヤに表示される。・・・なお、本実施例では、図12(b)に示したように、スクロール画像208の停止時においても前後の停止図柄候補の一部が表示されるように表示指定領域を設定する例を示したが、スクロール画像208の停止時には前後の停止図柄候補が表示されないように表示指定領域を設定してもよい。」と記載されているとともに、上記【0099】には「装飾図柄190を構成する3列の図柄(左図柄202,中図柄204,右図柄206)・・・装飾図柄190が左図柄202→右図柄206→中図柄204の順に停止表示される」と記載され、上記【0104】には「各図柄列のスクロール画像208(左図柄202,中図柄204,右図柄206)」と記載されているから、引用文献1には、3列の図柄(左図柄202,中図柄204,右図柄206)で構成された装飾図柄190が、左図柄202→右図柄206→中図柄204の順で停止表示される変動停止時に、いずれかの停止図柄候補が中心位置Cに停止され、スクロール画像208(左図柄202,中図柄204,右図柄206)の停止時には前後の停止図柄候補が表示されないようにすることが記載されている。

上記(1)-(7)の記載事項、上記(8)-(9)の認定事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a-cは、発明の構成を分説するため当審で付与した)。
「a 装飾図柄190を構成する3列の図柄(左図柄202,中図柄204,右図柄206)は、停止図柄候補として「1」-「9」の数字図柄を有し、これら複数の停止図柄候補は、スクロール画像208を形成し(【0099】)、
遊技球が始動口62に落入すると、装飾図柄190が変動表示され(【0033】)、装飾図柄190の変動表示としては、まず変動開始とともにスロットマシンのリール回転のように3列とも図柄を変動させ、変動終了タイミングへ近づいたときに一列ずつ(【0034】)左図柄202→右図柄206→中図柄204の順に(【0099】)停止させることで最終的な停止態様としての図柄組合せを表示し(【0034】)、最終的に停止表示される3個の図柄組合せによって当りまたは外れを示す(【0025】)演出表示装置60と(【0033】)、
演出表示装置60における表示内容や複数の可動役物140の動作、遊技効果ランプ90の点灯を制御し、メイン基板102による抽選結果に応じて表示内容を変動させ、その演出の進行に沿って可動役物140や遊技効果ランプ90の点灯を作動させるサブ基板104と、を備えるぱちんこ遊技機10(【0041】)において、
b サブ基板104は(【0041】)、
b1 「0」?「9」の数字で構成される図柄を3列に表示して変動させ、最終的に停止表示される3個の図柄組合せによって当りまたは外れを示すように(【0025】)演出表示装置60を制御し(【0041】)、
b2 スクロール表示中はスクロール方向に複数の停止図柄候補を表示させ(【0012】)、3列の図柄(左図柄202,中図柄204,右図柄206)で構成された装飾図柄190が、左図柄202→右図柄206→中図柄204の順で停止表示される変動停止時に、いずれかの停止図柄候補が中心位置Cに停止され、スクロール画像208(左図柄202,中図柄204,右図柄206)の停止時には前後の停止図柄候補が表示されないようにし((9))、
所定の停止図柄候補(数字の「4」)と、当該所定の停止図柄候補と同列で変動表示方向において前後の2つの停止図柄候補(数字の「3」と「5」)の一部とを、同時に1つの画面に表示可能となるように((8))演出表示装置60を制御する(【0041】)、
c ぱちんこ遊技機10(【0041】)。」

第5 対比、判断
上記第2において既に検討したように、本願発明の「前記複数列で変動表示中の所定の識別情報を本停止状態とさせる本停止制御」は、複数列の変動表示中の飾り図柄を確定した停止状態にする制御であり、本願発明の「前記本停止制御を実行する直前」とは、図柄停止コマンド受信直前や飾り図柄の変動速度を遅くする制御を実行する直前のことではなく、全ての飾り図柄を完全に停止させる制御を実行する直前のことであり、これらのことを考慮して、本願発明と引用発明とを対比する。

1 引用発明の「遊技球が始動口62に落入する」こと、「「1」-「9」の数字図柄」で構成される「装飾図柄190」、「演出表示装置60」、「サブ基板104」、及び「ぱちんこ遊技機10」は、それぞれ、本願発明の「始動条件の成立」、「複数の識別情報」、「表示手段」、「演出制御手段」、及び「遊技機」に相当する。
また、引用発明の「装飾図柄190が変動表示され」「一列ずつ」「停止させ」「最終的に停止表示される3個の図柄組合せによって当りまたは外れを示す」ことは、当りまたは外れになる「変動表示ゲーム」である。
そして、引用発明において、「演出表示装置60における表示内容」は、「メイン基板102による抽選結果に応じて」「変動させ」られるものであり、「複数の可動役物140の動作、遊技効果ランプ90の点灯」は、「演出表示装置60における表示内容」である「演出の進行に沿って」行われるものであるから、「演出表示装置60における表示内容や複数の可動役物140の動作、遊技効果ランプ90の点灯」は、変動表示ゲームに関連する演出である。
したがって、引用発明の特定事項aの「装飾図柄190を構成する3列の図柄(左図柄202,中図柄204,右図柄206)は、停止図柄候補として「1」-「9」の数字図柄を有し、これら複数の停止図柄候補は、スクロール画像208を形成し、遊技球が始動口62に落入すると、装飾図柄190が変動表示され、装飾図柄190の変動表示としては、まず変動開始とともにスロットマシンのリール回転のように3列とも図柄を変動させ、変動終了タイミングへ近づいたときに一列ずつ左図柄202→右図柄206→中図柄204の順に停止させることで最終的な停止態様としての図柄組合せを表示し、最終的に停止表示される3個の図柄組合せによって当りまたは外れを示す演出表示装置60と、演出表示装置60における表示内容や複数の可動役物140の動作、遊技効果ランプ90の点灯を制御し、メイン基板102による抽選結果に応じて表示内容を変動させ、その演出の進行に沿って可動役物140や遊技効果ランプ90の点灯を作動させるサブ基板104と、を備えるぱちんこ遊技機10」は、
本願発明の特定事項Aの「始動条件の成立に基づき、複数の識別情報をそれぞれ複数列で変動表示させる変動表示ゲームを表示可能な表示手段と、前記変動表示ゲームに関連する演出を実行可能な演出制御手段と、を備える遊技機」に相当するとともに、
引用発明の特定事項cの「ぱちんこ遊技機10」は、本願発明の特定事項Cの「遊技機」に相当する。

2 上記第2において既に検討したように、本願発明の「前記複数列で変動表示中の所定の識別情報を本停止状態とさせる本停止制御」は、複数列の変動表示中の飾り図柄を確定した停止状態にする制御である。
また、上記1において既に検討したように、引用発明の特定事項bの「サブ基板104」は、本願発明の特定事項Bの「演出制御手段」に相当する。
そして、引用発明の特定事項bの「サブ基板104は」、「「0」?「9」の数字で構成される図柄を3列に表示して変動させ、最終的に停止表示される3個の図柄組合せによって当りまたは外れを示すように演出表示装置60を制御」(特定事項b1)する制御装置であり、引用発明の特定事項b1の「最終的に停止表示される3個の図柄組合せ」を表示する状態は、本願発明の特定事項B1の「本停止状態」に相当するとともに、引用発明の特定事項b1の「最終的に停止表示される3個の図柄組合せによって当りまたは外れを示す」ことは、本願発明の特定事項B1の「変動表示ゲームの結果を表示」することに相当する。
したがって、引用発明の特定事項b、及び、特定事項b1の「サブ基板104は、「0」?「9」の数字で構成される図柄を3列に表示して変動させ、最終的に停止表示される3個の図柄組合せによって当りまたは外れを示すように演出表示装置60を制御」することは、
本願発明の特定事項B、及び、特定事項B1の「前記演出制御手段は、前記複数列で変動表示中の所定の識別情報を本停止状態とさせる本停止制御を実行することで、前記変動表示ゲームの結果を表示可能であ」ることに相当する。

3 上記第2において既に検討したように、本願発明の「前記本停止制御を実行する直前」とは、図柄停止コマンド受信直前や飾り図柄の変動速度を遅くする制御を実行する直前のことではなく、全ての飾り図柄を完全に停止させる制御を実行する直前のことである。
また、全ての飾り図柄が完全に停止する前で、一部(1つ又は2つ)の飾り図柄が停止している状態(全ての飾り図柄が完全に停止していない状態)を仮停止(状態)ということは、ぱちんこの技術分野における技術常識である。
そして、引用発明は「装飾図柄190の変動表示としては、まず変動開始とともにスロットマシンのリール回転のように3列とも図柄を変動させ、変動終了タイミングへ近づいたときに一列ずつ左図柄202→右図柄206→中図柄204の順に停止させることで最終的な停止態様としての図柄組合せを表示」(特定事項a)するから、最後に停止する「中図柄204」が「停止させ」た時の「最終的な停止態様として」「図柄組合せを表示」する状態は本停止状態であり、最初に停止する「左図柄202」が停止された時の「左図柄202」の状態、及び、2番目に停止する「右図柄206」が停止された時の「右図柄206」の状態は、本停止状態ではない仮停止状態である。
さらに、引用発明の特定事項bの「サブ基板104は」、「スクロール表示中はスクロール方向に複数の停止図柄候補を表示させ、3列の図柄(左図柄202,中図柄204,右図柄206)で構成された装飾図柄190が、左図柄202→右図柄206→中図柄204の順で停止表示される変動停止時に、いずれかの停止図柄候補が中心位置Cに停止され、スクロール画像208(左図柄202,中図柄204,右図柄206)の停止時には前後の停止図柄候補が表示されないようにし、所定の停止図柄候補(数字の「4」)と、当該所定の停止図柄候補と同列で変動表示方向において前後の2つの停止図柄候補(数字の「3」と「5」)の一部とを、同時に1つの画面に表示可能となるように演出表示装置60を制御する」制御装置であり、引用発明の特定事項b2では「スクロール表示中はスクロール方向に複数の停止図柄候補を表示させ、装飾図柄190の変動停止時に、いずれかの停止図柄候補が中心位置Cに停止され、3列の図柄(左図柄202,中図柄204,右図柄206)で構成された装飾図柄190が、左図柄202→右図柄206→中図柄204の順で停止表示される変動停止時に、いずれかの停止図柄候補が中心位置Cに停止され、スクロール画像208(左図柄202,中図柄204,右図柄206)の停止時には前後の停止図柄候補が表示されないようにし」ている。
これらのことから、引用発明の「中図柄204」が本停止状態になる時、「中図柄204」の列の「いずれかの停止図柄候補が中心位置Cに停止され」る直前に、「前後の停止図柄候補が表示されない」状態になることは明らかであり、「左図柄202」が本停止状態ではない仮停止状態になる時、「左図柄202」の列の「いずれかの停止図柄候補が中心位置Cに停止され」る直前に、「前後の停止図柄候補が表示されない」状態になることも明らかであり、「右図柄206」が本停止状態ではない仮停止状態になる時、「右図柄206」の列の「いずれかの停止図柄候補が中心位置Cに停止され」る直前に、「前後の停止図柄候補が表示されない」状態になることも明らかである。
しかしながら、引用発明は「左図柄202→右図柄206→中図柄204の順に停止」(特定事項a)するから、引用発明の「左図柄202」が仮停止状態になる時、及び、「右図柄206」が仮停止状態になる時は、「中図柄204」を含む3つの図柄の列が本停止状態になる直前よりもさらに前であり、「左図柄202」が仮停止状態になる直前である「左図柄202」の「停止図柄候補が中心位置Cに停止され」「前後の停止図柄候補が表示されない」状態になるタイミング、及び、「右図柄206」が仮停止状態になる直前である「右図柄206」の「停止図柄候補が中心位置Cに停止され」「前後の停止図柄候補が表示されない」状態になるタイミングは、「中図柄204」を含む3つの図柄列が本停止状態になる直前、すなわち、「前記本停止制御を実行する直前」よりもさらに前である。
したがって、引用発明の特定事項b、及び、特定事項b2の「サブ基板104は、」「装飾図柄190の変動停止時に、いずれかの停止図柄候補が中心位置Cに停止され、3列の図柄(左図柄202,中図柄204,右図柄206)で構成された装飾図柄190が、左図柄202→右図柄206→中図柄204の順で停止表示される変動停止時に、いずれかの停止図柄候補が中心位置Cに停止され、スクロール画像208(左図柄202,中図柄204,右図柄206)の停止時には前後の停止図柄候補が表示されないようにし、所定の停止図柄候補(数字の「4」)と、当該所定の停止図柄候補と同列で変動表示方向において前後の2つの停止図柄候補(数字の「3」と「5」)の一部とを、同時に1つの画面に表示可能となるように演出表示装置60を制御する」ことは、
本願発明の特定事項B、及び、特定事項B2と、「前記演出制御手段は、」「前記本停止制御を実行する」「前に、前記複数列で変動表示中のそれぞれの前記所定の識別情報と同列に表示され、当該所定の識別情報に対する変動表示方向の前、及び、後に当該所定の識別情報とともに1の画面に表示される2つの識別情報を非表示にする」点で共通する。

上記1?3から、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「A 始動条件の成立に基づき、複数の識別情報をそれぞれ複数列で変動表示させる変動表示ゲームを表示可能な表示手段と、前記変動表示ゲームに関連する演出を実行可能な演出制御手段と、を備える遊技機において、
B 前記演出制御手段は、
B1 前記複数列で変動表示中の所定の識別情報を本停止状態とさせる本停止制御を実行することで、前記変動表示ゲームの結果を表示可能であり、
B2’ 前記本停止制御を実行する前に、前記複数列で変動表示中のそれぞれの前記所定の識別情報と同列に表示され、当該所定の識別情報に対する変動表示方向の前、及び、後に当該所定の識別情報とともに1の画面に表示される2つの識別情報を非表示にする
C 遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点](特定事項B、B2)
「前記演出制御手段」が「前記複数列で変動表示中のそれぞれの前記所定の識別情報と同列に表示され、当該所定の識別情報に対する変動表示方向の前、及び、後に当該所定の識別情報とともに1の画面に表示される2つの識別情報を非表示にする」タイミングに関して、
本願発明は、「前記本停止制御を実行する直前」であるのに対して、
引用発明は、「左図柄202→右図柄206→中図柄204の順に停止」する図柄列のうち、最後に停止する「中図柄204」については、「中図柄204」の「停止図柄候補が中心位置Cに停止され」「前後の停止図柄候補が表示されない」状態になるタイミングは、「中図柄204」を含む3つの図柄列が本停止状態になる直前であるが、最初に停止する「左図柄202」及び2番目に停止する「右図柄206」については、「左図柄202」及び「右図柄206」の「停止図柄候補が中心位置Cに停止され」「前後の停止図柄候補が表示されない」状態になるタイミングは、「中図柄204」を含む3つの図柄列が本停止状態になる直前よりもさらに前の仮停止の直前である点。

[判断]
相違点について(特定事項B、B2)

ぱちんこ遊技機において、3列で変動表示中(仮停止中は除く)の図柄を同時に本停止状態とさせることで、変動表示ゲームの結果を表示可能とすることは、例えば、
特開2016-10637号公報(ステップアップ演出を実行しない場合に用いられる変動パターンシナリオ(図18(a),図19(a))は、左図柄、右図柄、中図柄の順に夫々変動開始から7.5s、9.5s、11.5sの時点で停止する[左図柄、右図柄の順に仮停止した後、中図柄停止時に3つの図柄が本停止する]のに対し、ステップアップ演出を実行する場合に用いられる変動パターンシナリオ(図18(b),図19(b))は、変動開始から11.5sの時点、即ちステップアップ演出の終了後に左図柄、右図柄、中図柄が同時に停止する[左図柄、右図柄、中図柄が同時に停止して本停止状態になる](【0099】)パチンコ機(【0012】)、が記載されている。「左図柄、右図柄、中図柄が同時に」本停止した状態が、変動表示ゲームの結果を表示した状態である。)、
特開2016-189838号公報(原則として、左図柄→右図柄→中図柄の順に停止させる[左図柄、右図柄の順に仮停止した後、中図柄停止時に3つの図柄が本停止する]が、変動時間の極短い変動演出パターンである場合には、左図柄・中図柄・右図柄をほぼ同時に停止させる[左図柄、右図柄、中図柄がほぼ同時に停止して本停止状態になる](【0096】)ぱちんこ遊技機PM(【0010】)、が記載されている。「左図柄・中図柄・右図柄をほぼ同時に」本停止させた状態が、変動表示ゲームの結果を表示した状態である。)、
にそれぞれ記載されているように、周知(以下、「周知技術」という。)である。

引用発明の「停止時には前後の停止図柄候補が表示されないようにし」ている「3列」の「図柄」である「左図柄202」「右図柄206」「中図柄204」の「左図柄202→右図柄206→中図柄204の順に停止」させる態様に加え、上記周知技術を適用して、3列で変動表示中(仮停止中は除く)の図柄が同時に「最終的に停止表示される」(本停止状態)場合があるようにすると、「左図柄202」「右図柄206」「中図柄204」が同時に「最終的に停止表示される」(本停止状態)場合、「左図柄202」「右図柄206」「中図柄204」が「最終的に停止表示される」(本停止状態)直前に、「前後の停止図柄候補が表示されないように」なることは明らかであり、引用発明に上記周知技術を適用すると、上記相違点に係る本願発明の特定事項となるから、当業者が容易になし得たことである。

第6 請求人の主張について
審判請求人は、令和2年8月25日付け意見書の「7.本願発明と引用文献との比較」において、概ね以下のように主張している。

本願請求項1に係る発明は、「(1)本願発明と引用文献1とを比較すると、引用文献1は、本願発明の上記の特徴的構成について開示していない。
引用文献1に記載の発明では、各列における前後の停止図柄候補は、スクロール時に薄く一部が表示されており、スクロール画像208の停止時、すなわち所定の停止図柄候補がそれぞれ仮停止する際に、個別に非表示にされることになる。
しかしながら、引用文献1には本願発明の上記特徴的構成は記載も示唆もされておらず、本停止制御を実行する直前に、既に仮停止されている停止図柄候補のある列を含めた複数列で変動表示中のそれぞれの所定の停止図柄候補と同列に表示される前後の停止図柄候補を非表示にすることはできない。
そして、このような引用文献1に記載の発明では、本停止の際に、前後の停止図柄候補を同時に複数列で非表示にして保留表示や演出画像を一気に見易く目立たせることができず、本願発明のように遊技の興趣を高めることはできない。
そのため、本願発明は、引用文献1に記載された発明とは異なるものであるとともに、引用文献1に基づいても当業者が容易想到することはできない。
・・・
(4)よって、本願発明は、引用文献1、2に記載の発明とは異なるものであるとともに、引用文献1、2に記載の発明に引用文献3-5の構成を組み合わせても当業者が容易想到することはできないので、新規性および進歩性を有するものであると思料する。」

しかしながら、請求人が主張するように「引用文献1に記載の発明」(引用発明)が「各列における前後の停止図柄候補は、・・・スクロール画像208の停止時、すなわち所定の停止図柄候補がそれぞれ仮停止する際に、個別に非表示にされることになる」ものであったとしても、上記「第5 対比、判断」[判断]において既に検討したように、ぱちんこ遊技機において、3列で変動表示中の図柄を同時に本停止状態とさせることで、変動表示ゲームの結果を表示可能とすることは周知技術であるから、引用発明の「停止時には前後の停止図柄候補が表示されないようにし」ている「3列」の「図柄」である「左図柄202」「右図柄206」「中図柄204」の「左図柄202→右図柄206→中図柄204の順に停止」させる態様に加え、上記周知技術を適用して、3列で変動表示中の図柄が同時に「最終的に停止表示される」(本停止状態)場合がある(仮停止中は除く)ようにすると、「左図柄202」「右図柄206」「中図柄204」が同時に「最終的に停止表示される」(本停止状態)場合、「左図柄202」「右図柄206」「中図柄204」が「最終的に停止表示される」(本停止状態)直前に、「前後の停止図柄候補が表示されないように」なることは明らかであり、引用発明に上記周知技術を適用すると、上記相違点に係る本願発明の特定事項となるから、当業者が容易になし得たことである。
また、3列で変動表示中の図柄を同時に本停止状態とさせることで、変動表示ゲームの結果を表示可能とすることは周知技術であり、引用発明に上記周知技術を適用して記相違点に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことであるから、請求人の主張するような「本停止制御を実行する直前に、既に仮停止されている停止図柄候補のある列を含めた複数列で変動表示中のそれぞれの所定の停止図柄候補と同列に表示される前後の停止図柄候補を非表示にすること」ができるかを考慮する必要はない。
さらに、請求人は「引用文献1に記載の発明では、本停止の際に、前後の停止図柄候補を同時に複数列で非表示にして保留表示や演出画像を一気に見易く目立たせることができず、本願発明のように遊技の興趣を高めることはできない」と主張する。しかしながら、本願発明には「保留表示」に関する発明特定事項はないから、保留表示に関する効果は、本願発明の発明特定事項に基づく効果ではない。
しかも、引用発明に上記周知技術を適用した発明は、「最終的に停止表示される」(本停止状態)直前に、「前後の停止図柄候補が表示されないように」なるから、本停止の際に、演出画像を一気に見易く目立たせることができ、遊技の興趣を高めることができるという効果も、当然奏するものである。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-10-15 
結審通知日 2020-10-20 
審決日 2020-11-04 
出願番号 特願2017-159631(P2017-159631)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼木 尚哉  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 瀬津 太朗
石井 哲
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  

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