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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1369659
審判番号 不服2020-6424  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-12 
確定日 2021-01-21 
事件の表示 特願2016- 98690「回転テーブル用ウェーハ回転保持機構及び方法並びにウェーハ回転保持装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月24日出願公開,特開2017-208405,請求項の数(4)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2016年(平成28年)5月17日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年10月 8日付け:拒絶理由通知書(起案日)
令和 1年12月 5日 :意見書,手続補正書の提出
令和 1年12月12日付け:最後の拒絶理由通知書(起案日)
令和 2年 2月12日 :意見書の提出
令和 2年 2月19日付け:拒絶査定(起案日)(以下「原査定」という。)
令和 2年 5月12日 :審判請求書,手続補正書の提出(以下この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
1.(進歩性)本願請求項1-4に係る発明は,以下の引用文献1ないし5に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2010-130018号公報
2.特開2004-241492号公報
3.特開2015-179742号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平10-303170号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2002-159927号公報

第3 本件補正について
本件補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正における,請求項1において「回転テーブルを100?1000rpmの回転数で回転させる」との事項を追加する補正は,回転軸についてその回転数を限定するものであるので,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。そして,当該回転数については,当初明細書の段落【0020】に記載されているから,新規事項を追加するものではない。
また,審判請求時の補正における,請求項1において「前記回転軸の先端に載置され且つ上面にウェーハを保持する回転テーブル」を「前記回転軸の先端に載置され且つ上面にウェーハを保持する前記回転テーブル」とする補正は,回転テーブルが前記されている回転テーブルを指すことを明確にするものであり,誤記の訂正を目的とするものである。
さらに,審判請求時の補正における,請求項1において「10?30mm/分の速度で」との記載を追加する補正は,外周ガイドピンの回転速度を特定するものであるので,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。そして,当該回転速度については,当初明細書の段落【0019】に記載されているから,新規事項を追加するものではない。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-4に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は,本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
ウェーハ回転保持装置の回転テーブル用ウェーハ回転保持機構であって,
回転テーブルを100?1000rpmの回転数で回転させる回転軸と,
前記回転軸の先端に載置され且つ上面にウェーハを保持する前記回転テーブルと,
前記回転軸に動力を供給する駆動モータと,
前記回転テーブルに設けられ,前記回転テーブル内に設けられた回転制御用モータにより制御され,且つウェーハの外周を保持するための回転可能な円柱形状の外周ガイドピンと,
前記回転テーブルに設けられ,前記ウェーハのセット時に開閉し,且つ駆動機構を備えずにフリーに回転可能である,前記ウェーハの外周を保持するための可動ピンと,
電磁誘導により,前記回転制御用モータに電力が供給される為の電力供給機構と,
を有し,
前記電力供給機構が,前記回転軸の周囲に巻回された固定側1次コイルと,前記固定側1次コイルに接続された電力供給源と,前記固定側1次コイルに対応して所定距離離間して設けられ,且つ前記回転テーブルに取り付けられた回転テーブル側2次コイルと,を含み,
前記外周ガイドピンを10?30mm/分の速度で回転させる事により前記回転テーブル上で前記ウェーハを回転せしめてなる,回転テーブル用ウェーハ回転保持機構。
【請求項2】
請求項1記載の回転テーブル用ウェーハ回転保持機構を用いて,前記ウェーハを回転保持してなる,回転テーブル用ウェーハ回転保持方法。
【請求項3】
請求項1記載の回転テーブル用ウェーハ回転保持機構を備えてなる,ウェーハ回転保持装置。
【請求項4】
前記ウェーハ回転保持装置が,スピン処理機構を備える,請求項3記載のウェーハ回転保持装置。」

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
「【請求項1】
基板を保持する基板保持装置であって,
前記基板がローディングされ,回転可能な支持プレートと,該支持プレートに設置され,該支持プレートにローディングされた前記基板の側面で前記基板のエッジを支持して前記支持プレートの上面から離隔させ,各々自転して支持されている前記基板を回転可能とする多数のチャッキングピンとを具備する基板支持部材と,
前記支持プレートの下に設置され,各々の前記チャッキングピンの自転を調節する回転調節部と,
を包含することを特徴とする基板保持装置。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体基板を処理する装置に関し,より詳細には,処理液を利用して半導体基板を処理する基板保持装置,これを有する基板処理装置及びこれを利用する基板処理方法に関する。」

「【0003】
上述した一連の工程には,不純物粒子を除去する工程が包含される。これは,基板表面に不純物粒子が存在する場合,不純物粒子が,パターン不良を引き起こすからである。基板から不純物を除去する方法は,化学的な方法と物理的な方法がある。化学的な方法は,薬液を使用して化学的に基板表面を処理する方法であり,物理的な方法は,物理的な力を加えて基板上に吸着された不純物粒子を除去する方法である。
【0004】
薬液を利用して基板を洗浄する場合,基板に噴射された薬液は,基板の側部を支持するチャッキングピンにあたって再び基板側へ流入する。特に,基板がチャッキングピンに固定された状態で洗浄工程が進行された後では,薬液は,チャッキングピンにあたり,基板の特定位置のみに落下する可能性がある。それによって,基板の洗浄不良が発生する。」

「【発明の効果】
【0011】
上述した本発明によると,チャッキングピンは,工程の時,基板を回転させて基板がチャッキングピンと接点される位置を変更させるため,チャッキングピンに当たった処理液が基板上に落ちる位置が継続に変更される。これに従って,基板処理装置は,基板の端部で不良が発生することを防止できる。」

「【0015】
図1及び図2を参照すると,基板処理装置500は,基板支持部材100,処理容器200,多数のノズル310,320,昇降ユニット330及び回転調節部450を包含できる。
基板支持部材100は,処理容器200内に収容される。基板支持部材100は,スピンヘッド110,回転軸120及び回転駆動部130を含み,ウェハ処理の時,ウェハ10を固定する。
【0016】
具体的に,スピンヘッド110は,円板形状を有し,上面がウェハ10と向き合う。スピンヘッド110には,スピンヘッド110の上面からウェハを離隔させて支持する多数のチャッキングピン(図示せず)が具備される。多数のチャッキングピンは,ウェハ10をチャッキングしてスピンヘッド110上へウェハ10を固定させる。
【0017】
回転軸120は,スピンヘッド110の下面に結合される。回転軸120は,回転駆動部130に結合され,回転駆動部130の回転力によって中心軸を基準として回転する。回転軸120の回転力は,スピンヘッド110に伝達され,スピンヘッド110が回転することによって,スピンヘッド110に固定されたウェハ10が回転される。
【0018】
図3は,図2に示したスピンヘッド及び回転調節部を示した図面であり,図4は,図3に示したピン回転部の背面を示した平面図である。
【0019】
図3及び図4を参照すると,スピンヘッド110は,支持プレート111,多数のチャッキングピン112及び多数の支持ピン113を包含できる。
【0020】
具体的に,支持プレート111には,ウェハ10がローディングされ,下面に設置された回転軸120によって回転される。支持プレート111の上面には,多数のチャッキングピン112と多数の支持ピン113が設置される。
【0021】
多数の支持ピン113は,支持プレート111にローディングされるウェハ10の下面を支持する。多数のチャッキングピン112は,支持ピン113の外側に設置され,支持ピン113に安着されたウェハ10の側面でウェハ10のエッジを支持して支持ピン113からウェハ10を離隔させる。
【0022】
具体的に,各チャッキングピン112は,支持部112a,回転軸112b及びピン回転部112cを具備する。支持部112aは,長さ方向の中央部が折曲された形状を有し,工程の時,折曲された部分にウェハ10のエッジが安着される。
【0023】
支持部112aは,回転軸112bの上端部に結合される。回転軸112bは,支持プレート111を貫通し,中心軸を基準として回転する。回転軸112bの下端部には,ピン回転部112cが結合される。ピン回転部112cは,磁性を有し,回転調節部450との磁力によって回転する。ピン回転部112cの回転力は,回転軸112bを通じて支持部112aに伝達され,これに従って,支持部112aが回転する。
【0024】
支持部112aに安着されたウェハ10は,支持部112aの回転によって回転して多数のチャッキングピン112と接触される地点が変更される。これに従って,基板処理装置500は,工程の時,チャッキングピン112に当たった処理液がウェハ10に落ちると,位置が続いて変更されるため,ウェハ10の端部で不良が発生することを防止できる。
【0025】
ピン回転部112cは,概して円板形状を有し,多数の第1及び第2ピン磁石12a,12bを具備する。多数の第1ピン磁石12aは,N極性を有し,各々扇形形状を有する。多数の第2ピン磁石12bは,S極性を有し,各々扇形形状を有する。第1ピン磁石と第2ピン磁石は,交互に配置される。
【0026】
本発明の一例として,多数のチャッキングピン112は,支持プレート111上で支持プレート111の直径方向に水平移動ができる。即ち,多数のチャッキングピン112は,ウェハ10が支持プレート111にローディングされると,支持プレート111の中央部側に移動してウェハ10を支持し,工程が完了されると,支持プレート111の端部側に移動して基板を支持ピン113上に下ろす。
【0027】
一方,ピン回転部112cの一側には,回転調節部450が設置される。回転調節部450は,支持プレート111の下に設置され,各チャッキングピン112の自転を調節する。
【0028】
具体的に,回転調節部450は,少なくとも1つの磁性ユニット430及び垂直移動部440を包含できる。磁性ユニット430は,ピン回転部112cの一側に設置され,ピン回転部112cとの間に磁気力を形成してピン回転部112cの回転を調節する。
【0029】
図5は,図3に示した磁性ユニットを示した平面図であり,図6は,図5に示した第1磁性ユニットを示した平面図であり,図7は,図5に示した第2磁性ユニットを示した平面図である。
【0030】
図3及び図5を参照すると,磁性ユニット430は,支持プレート111の下部で支持プレート111を囲み,略リング形状を有する。磁性ユニット430は,互いに異なる磁性を有する第1及び第2磁性ユニット410,420を包含できる。
【0031】
図3及び図6を参照すると,第1磁性ユニット410は,多数の第1磁石411及び第1収納プレート412を包含できる。多数の第1磁石411は,S極性を有し,互いに離隔されて配置される。第1収納プレート412は,略リング形状を有し,上面へ多数の第1磁石が安着される。多数の第1磁石411は,第1収納プレート412の形状に沿って配置されてリング形状の配置構造を有する。
【0032】
第1収納プレート412には,第2磁性ユニット420に結合するための多数の挿入ホール412aが形成される。各挿入ホール412aは,互いに隣接した2つの第1磁石との間に位置する。
【0033】
図3及び図7を参照すると,第2磁性ユニット420は,第1磁性ユニット410の直下に具備され,多数の第2磁石421及び第2収納プレート422を包含できる。多数の第2磁石421は,N極性を有し,互いに離隔されて配置される。第2収納プレート422は,略リング形状を有し,上面へ多数の第2磁石が安着される。多数の第2磁石421は,第2収納プレート422の形状に沿って配置されてリング形状の配置構造を有する。
【0034】
再び,図3及び図5を参照すると,第1磁石411と第2磁石421は,平面上で見る時,交互に位置する。
【0035】
第2磁性ユニット420の第2収納プレート422は,垂直移動部440に結合されて垂直移動部440に垂直移動ができる。第2磁性ユニット420は,垂直移動部440によって第1磁性ユニット410側の昇降の時,各々の第2磁石421が第1収納プレート412の挿入ホール412aに挿入され,第2収納プレート422は,第1収納プレート412の下面に配置される。これに従って,各第2磁石421が互いに隣接した2つの第1磁石との間に配置され,第1及び第2磁石411,421が互いに連接して位置する。
【0036】
このように,第1及び第2磁石411,421が交互に配置されるので,ピン回転部112cが第1及び第2磁石411,421との間に形成された磁気力によって回転される。」

「【0054】
図9A乃至図9Cは,図2に示した基板処理装置がウェハの端部を処理する工程過程を示した図面である。
図9A乃至図9Cを参照すると,まず,支持プレート111へウェハを安着させ,多数のチャッキングピン112が支持プレート111の中心側に移動して基板のエッジを支持する。
続いて,ウェハ10の上部にノズル320を配置させる。
続いて,支持プレート111の回転によってウェハを回転させながらノズル320からウェハ10へ処理液が噴射される。これと共に,各チャッキングピン112を中心軸を基準として回転させてウェハ10が前記多数のチャッキングピン112と接触される地点を変更させる。
即ち,垂直移動部440が第2磁性ユニット420を昇降させて各々の第2磁石421が第1収納プレート412の挿入ホール412aへ挿入され,各第2磁石421が互いに隣接した2つの第1磁石との間に配置される。これに従って,第1及び第2磁石411,421が交互に配置されるので,ピン回転部112cが第1及び第2磁石411,421との間に形成された磁気力によって回転される。」

「【図3】



(2)上記(1)から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「基板処理装置が有する,ウェハ10を保持する基板保持装置であって,
ウェハ10がローディングされ,回転可能な支持プレート111と,該支持プレート111に設置され,該支持プレート111にローディングされたウェハ10の側面でウェハ10のエッジを支持して前記支持プレート111の上面から離隔させ,各々自転して支持しているウェハ10を回転可能とする多数のチャッキングピン112とを具備する基板支持部材100と,
前記支持プレート111の下に設置され,各々の前記チャッキングピン112の自転を調節する回転調節部450と,
を包含し,
基板支持部材100は,スピンヘッド110,回転軸120及び回転駆動部130を含み,ウェハ処理の時,ウェハ10を固定するものであり,
回転軸120は,スピンヘッド110の下面に結合され,回転軸120は,回転駆動部130に結合され,回転駆動部130の回転力によって中心軸を基準として回転し,回転軸120の回転力は,スピンヘッド110に伝達され,スピンヘッド110が回転することによって,スピンヘッド110に固定されたウェハ10が回転され,
スピンヘッド110は,支持プレート111,多数のチャッキングピン112及び多数の支持ピン113を包含し,
支持プレート111には,ウェハ10がローディングされ,下面に設置された回転軸120によって回転され,支持プレート111の上面には,多数のチャッキングピン112と多数の支持ピン113が設置され,
多数の支持ピン113は,支持プレート111にローディングされるウェハ10の下面を支持し,多数のチャッキングピン112は,支持ピン113の外側に設置され,支持ピン113に安着されたウェハ10の側面でウェハ10のエッジを支持して支持ピン113からウェハ10を離隔させ,
各チャッキングピン112は,支持部112a,回転軸112b及びピン回転部112cを具備し,
支持部112aは,長さ方向の中央部が折曲された形状を有し,工程の時,折曲された部分にウェハ10のエッジが安着されるものであり,
ピン回転部112cは,磁性を有し,回転調節部450との磁力によって回転し,ピン回転部112cの回転力は,回転軸112bを通じて支持部112aに伝達され,これに従って,支持部112aが回転する,
基板保持装置。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0003】
同様の理由から,基板周縁に形成された金属膜以外の膜(酸化膜や窒化膜など)を薄くエッチングすることによって,その表面の金属汚染物(金属イオンを含む)を除去するための処理が行われることがある。
ウエハの周縁部および周端面の薄膜を選択的にエッチングするための基板周縁処理装置は,たとえば,ウエハを水平に保持して回転するスピンチャックと,このスピンチャックの上方においてウエハ上の空間を制限する遮断板と,ウエハの下面にエッチング液を供給するエッチング液供給ノズルとを含む。ウエハの下面に供給されたエッチング液は,遠心力によってウエハの下面を伝わってその回転半径方向外方へと向かい,ウエハの端面を伝ってその上面に回り込み,このウエハの上面の周縁部の不要物をエッチングする。このとき,遮断板は,ウエハの上面に近接して配置され,この遮断板とウエハとの間には,窒素ガス等の不活性ガスが供給される。」

「【0005】
スピンチャックによってウエハが保持されて回転されている期間に,ウエハの下面からエッチング液が供給されることにより,ウエハの上面の周縁部の不要物がエッチング除去され,その後は,ウエハの上下面に対して純水リンス処理が行われた後,スピンチャックが高速回転されて,ウエハの上下面の水滴を振り切る乾燥処理が行われる。
ところが,このような構成では,チャックピンによってウエハを終始挟持しているため,ウエハ端面におけるチャックピンの当接位置において,エッチング不良,リンス不良または乾燥不良などの処理不良が生じるおそれがある。」

「【0020】
スピンチャック1は,回転駆動機構としてのモータ2の駆動軸である回転軸に結合されて回転されるようになっている。この回転軸は,中空軸とされていて,その内部には,純水またはエッチング液を供給することができる処理液供給管3が挿通されている。この処理液供給管3には,スピンチャック1に保持されたウエハWの下面中央に近接した位置に吐出口を有する中心軸ノズル(固定ノズル)が結合されており,この中心軸ノズルの吐出口から,ウエハWの下面に向けて,純水またはエッチング液を供給できる。」

「【0023】
図2は,スピンチャック1の構成を説明するための図解図である。スピンチャック1は,円盤状のスピンベース21と,このスピンベース21の上面に立設され,ウエハWの周端面に当接して,このウエハWを挟持するための複数本(少なくとも3本。この実施形態では4本)のチャックピン22とを備えている。これらのチャックピン22は,鉛直方向に沿う各中心軸線まわりにそれぞれ回転可能にスピンベース21に取り付けられている。
【0024】
スピンベース21は,中空の円盤状のものであり,その内部には,複数のチャックピン22をそれぞれ鉛直軸線まわりに回動させるための電動アクチュエータである複数の電動モータ23が収容されている。スピンベース21内には,さらに,電動モータ23の動作を制御するためのアクチュエータ制御装置24と,このアクチュエータ制御装置24に電力を供給する整流・蓄電装置25と,この整流・蓄電装置25に接続された複数の発電コイル26とが収容されている。
【0025】
複数の発電コイル26は,たとえば,スピンベース21の回転方向に沿って,外周側縁の底面に固定されて配列されており,スピンベース21の回転に伴って,スピンベース21の回転軸線方向と平行な(すなわち,スピンベース21の回転方向と直交する)方向の磁界を横切ることにより,電磁誘導により,起電力を生じるようになっている。
スピンベース21を回転駆動するためのモータ2が収容された装置本体30には,スピンベース21に対向する位置に,スピンベース21に近接して,複数の永久磁石片27が固定されている。これらの永久磁石片27は,スピンベース21の外周縁に沿って配列されていて,複数の発電コイル26に対向するようになっている。さらに,個々の永久磁石片27は,N極およびS極が,スピンベース21の回転軸線方向に沿うように配置されていて,スピンベース21の回転軸線方向に沿う静磁界を生じるようになっている。この実施形態では,隣接する2つの永久磁石片27のN極とS極とが上下反対となるように,複数の永久磁石片27が装置本体30に固定されている。」

「【0028】
図4は,チャックピン22の構成および動作を説明するための図解的な平面図である。チャックピン22は,水平姿勢で保持されたウエハWの周端面に対向する位置に鉛直軸線まわりの回動が可能であるように設けられている。チャックピン22は,鉛直方向に沿う平面からなる退避面22aと,この退避面22aの両側縁に連設された円筒面状の挟持面22bとを,ウエハWの周端面に対向する側面に有している。
【0029】
チャックピン22を鉛直軸線まわりに回動させて退避面22aをウエハWの周端面に対向させた状態(図4(a))では,チャックピン22はウエハWに対して非接触の状態となる。この状態で,図示しない搬送ロボットとの間で,未処理のウエハWまたは処理済みのウエハWの受け渡しが行われる。
一方,図4(b)に示すように,チャックピン22を鉛直軸線まわりに回動させて挟持面22bをウエハWの周端面に対向させると,この挟持面22bがウエハWの周端面に当接し,他のチャックピン22と協働して,ウエハWを挟持することになる。
【0030】
さらに,図4(c)に示すように,挟持面22bがウエハWの周端面に当接した状態を保持して,チャックピン22を鉛直軸線まわりに回動させると,ウエハWの周端面におけるチャックピン22の当接位置(挟持位置)を変更することができる。そこで,ウエハWの周端面の全域に処理液(エッチング液等の薬液や純水)を供給すべきときには,チャックピン22を鉛直軸線まわりに回動させて挟持位置を変更すればよい。」

「【図2】



(2)上記(1)から,上記引用文献2には次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア ウエハの周縁部および周端面の薄膜を選択的にエッチングするための基板周縁処理装置であって,スピンチャックによってウエハが保持されて回転されるものであり,チャックピンによってウエハを終始挟持しているため,ウエハ端面におけるチャックピンの当接位置において,処理不良が生じるおそれがあることを課題とする。

イ スピンチャック1は,回転駆動機構としてのモータ2の駆動軸である回転軸に結合されて回転されるようになっている。

ウ スピンチャック1は,円盤状のスピンベース21と,このスピンベース21の上面に立設され,ウエハWの周端面に当接して,このウエハWを挟持するための複数本(少なくとも3本。この実施形態では4本)のチャックピン22とを備えている。これらのチャックピン22は,鉛直方向に沿う各中心軸線まわりにそれぞれ回転可能にスピンベース21に取り付けられている。

エ スピンベース21は,中空の円盤状のものであり,その内部には,複数のチャックピン22をそれぞれ鉛直軸線まわりに回動させるための電動アクチュエータである複数の電動モータ23が収容されている。スピンベース21内には,さらに,電動モータ23の動作を制御するためのアクチュエータ制御装置24と,このアクチュエータ制御装置24に電力を供給する整流・蓄電装置25と,この整流・蓄電装置25に接続された複数の発電コイル26とが収容されている。

オ 複数の発電コイル26は,たとえば,スピンベース21の回転方向に沿って,外周側縁の底面に固定されて配列されており,他方,装置本体30には,スピンベース21に対向する位置に,スピンベース21に近接して,複数の永久磁石片27が固定されており,スピンベース21の回転軸線方向に沿う静磁界を生じるようになっており,スピンベース21の回転に伴って,当該静磁界を横切ることにより,電磁誘導により,起電力を生じるようになっている。

カ チャックピン22は,水平姿勢で保持されたウエハWの周端面に対向する位置に鉛直軸線まわりの回動が可能であるように設けられており,チャックピン22は,鉛直方向に沿う平面からなる退避面22aと,この退避面22aの両側縁に連設された円筒面状の挟持面22bとを,ウエハWの周端面に対向する側面に有している。

キ チャックピン22を鉛直軸線まわりに回動させて退避面22aをウエハWの周端面に対向させた状態では,チャックピン22はウエハWに対して非接触の状態となり,図示しない搬送ロボットとの間で,未処理のウエハWまたは処理済みのウエハWの受け渡しが行われる。

ク 挟持面22bがウエハWの周端面に当接した状態を保持して,チャックピン22を鉛直軸線まわりに回動させると,ウエハWの周端面におけるチャックピン22の当接位置(挟持位置)を変更することができる。

3 引用文献3について
(1)引用文献3の記載
原査定において周知技術を示す文献として引用された上記引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,ウェーハの下面側を洗浄する洗浄装置に関する。」

「【0013】
各回転ユニット4は,それぞれ,モータ等の回転駆動源を備えた支持基台6を有している。各支持基台6の回転駆動源には,鉛直方向に伸びる鉛直シャフト8が連結されており,この鉛直シャフト8の上部には,ウレタンゴム等の高弾性材料でなる円柱状の保持ローラー10が設けられている。」

「【0015】
また,各保持ローラー10は,鉛直シャフト8を介して伝達される回転駆動源の回転力で,鉛直軸(鉛直方向に伸びる軸)の周りに回転する。ウェーハ11を4個の保持ローラー10で挟み込むように保持した後に,保持ローラー10を回転させれば,ウェーハ11を鉛直軸の周りに回転させることができる。」

(2)上記(1)から,上記引用文献3には次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ウェーハの下面側を洗浄する洗浄装置であって,ウレタンゴム等の高弾性材料でなる円柱状の保持ローラー10を有し,ウェーハ11を4個の保持ローラー10で挟み込むように保持した後に,保持ローラー10を回転させることにより,ウェーハ11を鉛直軸の周りに回転させる,装置。

4 引用文献4について
(1)引用文献4の記載
原査定において周知技術を示す文献として引用された上記引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,半導体ウエハ,液晶表示装置用ガラス基板およびPDP用ガラス基板などの各種被処理基板に対して洗浄処理を施すための基板洗浄装置および基板洗浄方法に関する。」

「【0048】図3は,両面ブラシ洗浄部50の構成を簡略化して示す斜視図である。両面ブラシ洗浄部50は,ローダ搬送ロボット41によって搬入されたウエハWを水平に保持し,かつ,水平面内で回転させるための複数本(この実施例では6本)の保持ローラ51a,51b,51c;52a,52b,52cを有しており,これらは,すべて駆動力が与えられる駆動ローラであって,第1基板保持手段に相当している。保持ローラ51a,51b,51c;52a,52b,52cによって水平に保持されたウエハWを上下から挟むように,上ディスクブラシ53Uおよび下ディスクブラシ53Lが設けられており,これらは,ウエハWの両面をスクラブ洗浄する両面スクラブ洗浄機構53を構成している。」

「【図3】



(2)上記(1)から,上記引用文献4には次の技術的事項が記載されているものと認められる。
搬入されたウエハWを水平に保持し,かつ,水平面内で回転させるための複数本(この実施例では6本)の保持ローラを有する,基板洗浄装置。

5 引用文献5について
(1)引用文献5の記載
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,半導体基板やガラス基板等の洗浄を行う基板洗浄装置に係り,特に基板に付着したパーティクル(異物や汚れ等)を除去するためのスクラビング洗浄工程,リンス洗浄工程,および乾燥工程の各作業を適切に行いつつ,各工程の流れ方向に対する作業スペースを短縮して装置のコンパクト化を図るための技術に関するものである。」

「【0031】洗浄治具10は,図1に示すように,ハンガー部37と基板保持部38とを備え,垂直方向に延びる縦レール39にハンガー部37がスライド可能に支持され,駆動シリンダ等の駆動手段の動作により上下昇降するように構成されている。詳述すると,洗浄治具10の基板保持部38は,図4に示すように,基板2を垂直姿勢で保持して周方向に回転させる複数個(図例では三個)のロール40,41,42を備えている。これらのロール40,41,42の外周面には,基板2を保持した時にその軸方向移動を規制するV溝等の凹状溝が形成されると共に,これらのロールのうちの一つのロール42は,揺動アーム43に装着されている。この場合,揺動アーム43に装着されているロール42以外の複数個(二個)のロール40,41は,例えば駆動モータおよびベルト伝動機構の動作により回転駆動されるようになっている。
【0032】なお,揺動アーム43は,駆動シリンダ等の駆動手段(図示略)の動作により所定角度範囲で揺動するように構成され,揺動アーム20が一方側への揺動端に達した場合には,各ロール40,41,42により基板2の径方向移動および軸方向移動が規制されて,基板2が取り外し不能となるのに対して,揺動アーム43が他方側への揺動端に達した場合には,基板2の移動規制が解除されて,基板2が取り外し可能となる構成とされている。また,洗浄治具10の基板保持部38は,ハンガー部37の下端から前方に突出し且つその前端から下方に垂下するL字形を呈しており,その内側領域である凹状部が,一対の回転ブラシ44との干渉を回避する逃げ部45とされている。」

「【図4】



(2)上記(1)から,上記引用文献5には次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 半導体基板やガラス基板等の洗浄を行う基板洗浄装置。

イ 洗浄治具10の基板保持部38は,基板2を垂直姿勢で保持して周方向に回転させる複数個(図例では三個)のロール40,41,42を備えており,これらのロールのうちの一つのロール42は,揺動アーム43に装着されており,揺動アーム43に装着されているロール42以外の複数個(二個)のロール40,41は,例えば駆動モータおよびベルト伝動機構の動作により回転駆動されるようになっている。

ウ 揺動アーム43は,所定角度範囲で揺動するように構成され,揺動アーム43が一方側への揺動端に達した場合には,各ロール40,41,42により基板2の径方向移動および軸方向移動が規制されて,基板2が取り外し不能となるのに対して,揺動アーム43が他方側への揺動端に達した場合には,基板2の移動規制が解除されて,基板2が取り外し可能となる構成とされている。

エ 上記イ,ウから,揺動アーム43に装着されたロール42は,揺動アーム43の揺動により,基板2の径方向移動および軸方向移動を規制する位置と,基板2の移動規制を解除する位置との間で移動可能であり,このようにロール42が移動可能であることにより,基板の取り外しが可能となるものであるといえる。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明の「ウェハ10」,「回転可能な支持プレート111」は,それぞれ本願発明の「ウェーハ」,「回転テーブル」に相当する。
引用発明の「基板保持装置」は,「ウェハ10が回転可能な支持プレート111を具備する基板支持部材を包含する」ものであるので,本願発明1の「回転テーブル用ウェーハ回転保持機構」に相当する。

イ 本願発明1の「回転テーブルを100?1000rpmの回転数で回転させる回転軸と,前記回転軸の先端に載置され且つ上面にウェーハを保持する前記回転テーブル」と引用発明の「支持プレート111」と「回転軸120」とを含む構成とを対比する。
引用発明において,「支持プレート111」は「下面に設置された回転軸120によって回転され」るものであるから,「回転軸120」は「支持プレート111」を回転させるものであり,「支持プレート111」は「回転軸120の上端」,すなわち,「回転軸の先端」に「載置され」るものであるといえる。
また,引用発明において,「支持プレート111」は「ウェハ10がローディングされ」るものであり,「支持プレート111」の上面に設置された「多数のチャッキングピン112」により「ウェハ10」を保持するものであるので,「支持プレート111」は「上面にウェハ10を保持する」ものと認められる。
したがって,本願発明1と引用発明とは,「回転テーブルを回転させる回転軸と,前記回転軸の先端に載置され且つ上面にウェーハを保持する前記回転テーブル」を有する点で共通する。

ウ 引用発明の「回転駆動部130」は「回転軸120」と結合し「回転駆動部130」の回転力によって「回転軸120」を回転させるものであるから,本願発明1の「前記回転軸に動力を供給する駆動モータ」に相当する。

エ 本願発明1の「前記回転テーブルに設けられ,前記回転テーブル内に設けられた回転制御用モータにより制御され,且つウェーハの外周を保持するための回転可能な円柱形状の外周ガイドピン」と引用発明の「チャッキングピン112」とを対比する。
引用発明の「チャッキングピン112」は,「支持プレート111の上面に」「設置され」,「ウェハ10の側面でウェハ10のエッジを支持」し,「自転」するものであるから,本願発明1と引用発明は「前記回転テーブルに設けられ,且つウェーハの外周を保持するための回転可能な外周ガイドピン」を有する点で共通する。

オ 本願発明1の「前記外周ガイドピンを10?30mm/分の速度で回転させる事により前記回転テーブル上で前記ウェーハを回転せしめてなる」構成と引用発明の「チャッキングピン112」についての構成とを対比する。
引用発明の「チャッキングピン112」は,「各々自転して支持しているウェハ10を回転させる」ものであるから,本願発明1と引用発明は「前記外周ガイドピンを回転させる事により前記回転テーブル上で前記ウェーハを回転せしめてなる」構成を有する点で共通する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
<一致点>
「ウェーハ回転保持装置の回転テーブル用ウェーハ回転保持機構であって,
回転テーブルを回転させる回転軸と,
前記回転軸の先端に載置され且つ上面にウェーハを保持する前記回転テーブルと,
前記回転軸に動力を供給する駆動モータと,
前記回転テーブルに設けられ,且つウェーハの外周を保持するための回転可能な外周ガイドピンと,
前記外周ガイドピンを回転させる事により前記回転テーブル上で前記ウェーハを回転せしめてなる,回転テーブル用ウェーハ回転保持機構。」

<相違点>
(相違点1)
本願発明1の「回転軸」は,「100?1000rpmの回転数で」回転させるものであるのに対し,引用発明においては,「回転軸120」の回転数について,特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1の「外周ガイドピン」は「前記回転テーブル内に設けられた回転制御用モータにより制御され」るものであるのに対し,引用発明の「チャッキングピン112」は「回転調節部450」によりその「自転」が「調整」されるものである点。

(相違点3)
本願発明1の「外周ガイドピン」は「円柱形状」であるのに対し,引用発明の「チャッキングピン112」は「支持部112a,回転軸112b及びピン回転部112cを具備し,支持部112aは,長さ方向の中央部が折曲された形状を有」するものである点。

(相違点4)
本願発明1は「前記回転テーブルに設けられ,前記ウェーハのセット時に開閉し,且つ駆動機構を備えずにフリーに回転可能である,前記ウェーハの外周を保持するための可動ピン」を有するのに対し,引用発明では,当該構成を備えることについて記載されていない点。

(相違点5)
本願発明1は「電磁誘導により,前記回転制御用モータに電力が供給される為の電力供給機構」を有し,「前記電力供給機構が,前記回転軸の周囲に巻回された固定側1次コイルと,前記固定側1次コイルに接続された電力供給源と,前記固定側1次コイルに対応して所定距離離間して設けられ,且つ前記回転テーブルに取り付けられた回転テーブル側2次コイルと,を含」むのに対し,引用発明では,当該構成を備えることについて記載されていない点。

(相違点6)
本願発明1の「外周ガイドピン」は「10?30mm/分の速度で」回転するものであるのに対し,引用発明においては,「チャッキングピン112」の回転数について,特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,先ず上記相違点4について検討する。
引用文献5には,上記5(2)に記載のとおり,基板2の径方向移動および軸方向移動を規制する位置と,基板2の移動規制を解除する位置との間で移動可能なロール42が記載されており,このようにロール42を移動可能とすることにより,基板の取り付け及び取り外しができるようになることが記載されている。なお,引用文献5のロール42は,「基板2を垂直姿勢で保持して周方向に回転させる複数個(図例では三個)のロール40,41,42を備えており」との記載及び「ロール42以外の複数個(二個)のロール40,41は,例えば駆動モータおよびベルト伝動機構の動作により回転駆動されるようになっている」との記載から,フリーで回転できるものであると認められる。
一方,引用発明は,基板の取り付け,取り外しのために,「多数のチャッキングピン112は,支持プレート111上で支持プレート111の直径方向に水平移動ができ,多数のチャッキングピン112は,ウェハ10が支持プレート111にローディングされると,支持プレート111の中央部側に移動してウェハ10を支持し,工程が完了されると,支持プレート111の端部側に移動して基板を支持ピン113上に下ろ」すという構成を有しており,多数のチャッキングピン112は,それぞれ自転しかつウェハ10に対して接離するものである。
しかし,引用発明の「多数のチャッキングピン112」のうちの一部をフリーで回転するように変更することは,以下のとおり,当業者が容易に着想しうるものとはいえない。
引用発明において,「各チャッキングピン112は,支持部112a,回転軸112b及びピン回転部112cを具備し,」「ピン回転部112cは,磁性を有し,回転調節部450との磁力によって回転し,ピン回転部112cの回転力は,回転軸112bを通じて支持部112aに伝達され,これに従って,支持部112aが回転」するものであることからすれば,引用文献5に接した当業者といえども,「各チャッキングピン112」のうちの一部についてのみ「ピン回転部112c」を設けないものとする,すなわち,同一の構造を有する「各チャッキングピン112」のうち、いくつかの「チャッキングピン112」のみについて、その構造をあえて異なるように変更しようとする動機はない。
また,引用文献5に記載された発明は,基板2を縦方向に保持し,回転ブラシにより基板2の両面を洗浄するものであり,引用発明とは装置の基本的な構成が異なっている。
さらに,相違点4に係る本願発明1の「前記回転テーブルに設けられ,前記ウェーハのセット時に開閉し,且つ駆動機構を備えずにフリーに回転可能である,前記ウェーハの外周を保持するための可動ピン」という構成は,上記引用文献2-4にも記載されていない。
したがって,当業者といえども,引用発明1及び引用文献2-5に記載された技術的事項から,相違点4に係る,本願発明1の「前記回転テーブルに設けられ,前記ウェーハのセット時に開閉し,且つ駆動機構を備えずにフリーに回転可能である,前記ウェーハの外周を保持するための可動ピン」を備える,との構成に容易に想到することはできない。

(3)小括
上記(1),(2)のとおりであるから,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明と引用文献1-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1の「前記回転テーブルに設けられ,前記ウェーハのセット時に開閉し,且つ駆動機構を備えずにフリーに回転可能である,前記ウェーハの外周を保持するための可動ピン」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明と引用文献1-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明3-4について
本願発明3-4も,本願発明1の「前記回転テーブルに設けられ,前記ウェーハのセット時に開閉し,且つ駆動機構を備えずにフリーに回転可能である,前記ウェーハの外周を保持するための可動ピン」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明と引用文献1-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定について
1.理由1(特許法第29条第2項)について
本件補正前の請求項1-4に係る発明(原査定時の請求項1-4に係る発明)は,上記相違点4に係る本願発明1の「前記回転テーブルに設けられ,前記ウェーハのセット時に開閉し,且つ駆動機構を備えずにフリーに回転可能である,前記ウェーハの外周を保持するための可動ピン」という構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1ないし5に基づいて,容易に発明できたものであるとはいえない。したがって,原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。


 
審決日 2021-01-06 
出願番号 特願2016-98690(P2016-98690)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山口 大志  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 井上 和俊
小川 将之
発明の名称 回転テーブル用ウェーハ回転保持機構及び方法並びにウェーハ回転保持装置  
代理人 石原 進介  

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