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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F03G
管理番号 1369745
審判番号 不服2019-7457  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-05 
確定日 2021-01-04 
事件の表示 特願2017-131969「単一ステップの形状記憶合金拡張」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月7日出願公開、特開2017-214929〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、2012年(平成24年)9月14日(パリ条約による優先権主張2011年9月16日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2014-530820号の一部を平成29年7月5日に新たな出願としたものであって、その手続は以下のとおりである。
平成29年8月4日:上申書、手続補正書の提出
平成30年7月19日付け(発送日:同年7月24日):拒絶理由通知書
平成30年10月19日:意見書、手続補正書の提出
平成31年1月24日付け(発送日:同年2月5日):拒絶査定
令和元年6月5日:審判請求書の提出

第2.本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成30年10月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「形状記憶合金チューブを形成する方法であって、
該方法は、
単一の工程で、300℃?650℃の形状固定温度範囲内にある単一の温度にて、形状記憶合金(SMA)チューブを、第1の(小)直径から第2の(大)直径に変形させること;を含み、
ここで、前記第2の(大)直径は前記第1の(小)直径の少なくとも2倍であり、
前記方法は、300℃?650℃の前記形状固定温度範囲内にある単一の装置内で実行される、前記方法。」

第3.原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由の概要は以下のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-10
・引用文献等 1-2

<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2009/0282669号明細書
2.特開昭61-20618号公報

第4.引用文献、引用発明
1.引用文献1
原査定の拒絶理由に引用された米国特許出願公開第2009/0282669号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、「METHOD AND APPARATUS FOR REDUCING STRESS DURING STENT MANUFACTURE」(当審訳:ステント製造中のストレスを減少させるための方法及び装置」の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は理解の一助のため当審で付した。

(1)「[0037] The stents formed in accordance with the invention are preferably made from a shape memory material such as Nitinol (Ni-Ti alloy). In manufacturing the Nitinol stent, the material is first in the form of a tube. Nitinol tubing is commercially available from a number of suppliers. The tubular member is then loaded into a machine that will cut the predetermined pattern of the stent into the tube, as discussed above and as shown in FIG. 1. Machines for cutting patterns in tubular devices to make stents or the like are well known to those of ordinary skill in the art and are commercially available. Such machines typically hold the metal tube between the open ends while a cutting laser, preferably under microprocessor control, cuts the pattern. The pattern dimensions and styles, laser positioning requirements, and other information are programmed into a microprocessor, which controls all aspects of the process. After the stent pattern is cut, the stent is treated and polished using any number of methods or combination of methods well known to those skilled in the art.
[0038] Specifically, and in accordance with the invention, an apparatus and method of expanding a stent is provided which uses primarily radial loads, thereby reducing the stresses that are imparted onto the stent due to the axial loads applied during loading of the stent onto a mandrel or other expansion device. The invention includes an apparatus and corresponding method of expanding a stent comprising forming a stent having a proximal end, a distal end, and a longitudinal axis extending therebetween, with the stent having a generally cylindrical shape defining an initial unexpanded stent diameter.
[0039] An expansion member is inserted into either the proximal or distal end of the stent, with the expansion member extending along the longitudinal axis of the stent and having an initial unexpanded diameter. The initial unexpanded diameter of the expansion member being less than the initial unexpanded diameter of the stent to allow for insertion of the expansion member into the stent. The expansion member can then be radially expanded to a second expansion diameter wherein the radial force exerted by the expansion member on the stent consequently expands the stent to a second stent diameter, wherein the second stent diameter is greater than the first stent diameter. Typically, the initial diameter of the stent is approximately 3 millimeters and the expanded diameter is approximately 6 millimeters, though it is understood that the invention could be applied to stents of any desired size.」
(当審訳:
[0037] 本発明に従って形成されたステントは、ニチノール(Ni-Ti合金)などの形状記憶合金から作られることが好ましい。ニチノール・ステントを製造する場合、材料は先ずチューブの形態である。ニチノールチューブが多数の供給業者から市販されている。次に、前記管状部材はステントの所定パターンを切り出すチューブに機械にロードされ、上述したように、図1に示すように、管状の装置にパターンを切り込んでステント等を作成するための機械は、当業者によく知られており、市販されている。このような機械は、典型的には、両開口端の間の金属管を保持し、好ましくはマイクロプロセッサ制御下で切断レーザがパターンを切断する。パターンの寸法及びスタイル、レーザーの位置決め精度、及び他の情報は、プロセスの全ての局面を制御するためにプログラムされる。ステントパターンが切断された後、ステントは、任意の数の方法または当業者によく知られた方法の組み合わせを用いて処理されて研磨される。
[0038] 具体的には、本発明によれば、ステントを拡張させるための装置及び方法は、主に半径方向の荷重をも提供するので、ステントの充填の間、マンドレル又は他の拡張装置に加えられる軸方向負荷に起因して、ステントに付与される応力を減少させる。本発明は、近位端、遠位端、およびそれらの間に延びる長手方向軸を有するステントを形成することを含む、ステントを拡張すると、初期の未拡張状態のステント直径を規定するほぼ円筒形の形状を有するステントでの装置および対応する方法を含む。
[0039] ステントの長手方向軸に沿って延在しかつ初期未拡張直径を有する拡張部材がステントの近位端または遠位端に挿入される。ステント内への拡張部材の挿入を可能にするために拡張部材の初期未拡張直径はステントの初期未拡張直径より小さい。拡張部材は、第2の拡張直径まで半径方向に拡張されることができ、ステント拡張部材によって及ぼされる半径方向の力はその結果ステントを第2のステント直径まで拡張する。ここで、第2のステント直径は第1のステント直径よりも大きい。典型的には、ステントの初期直径は、約3ミリメートルであり、拡張された直径は約6ミリメートルであるが、本発明は、任意の所望のサイズのステントに適用することができることが理解される。)

(2)「[0047] In accordance with another embodiment of the invention, the expansion member can be configured as a plurality of wires which extend beyond the proximal and distal ends of the stent. Similar to the embodiments disclosed above, a mandrel can be axially inserted into an end of the plurality of wires. Preferably, the mandrel is configured with a gradual taper along the longitudinal axis which imparts an increasing radial expansion force which corresponds to the amount of axial insertion within the plurality of wires. Alternatively, a mandrel having a diameter which increases in a stepwise fashion can be employed. In one example, the mandrel is axially inserted into the distal end of the plurality of wires from the smallest diameter to largest diameter such that the taper induces a radial expansion force on the wires to force the wires to open or expand to a larger diameter. This expansion force is in turn transmitted to the stent surface, however the axial insertion force is not significantly transmitted to the stent surface. This reduction in axial force is advantageous in that it reduces the stress realized by the stent and therefore decreases the risk of strut fracture.」
(当審訳:
[0047] 本発明の別の実施形態によれば、拡張部材は、ステントの近位端および遠位端を越えて延在する複数のワイヤとして構成することができる。開示された実施の形態と同様に、マンドレルは、複数のワイヤの端部に軸方向に挿入することができる。好ましくは、マンドレルは、複数のワイヤの軸方向挿入の量に対応する、増加する半径方向の膨張力を付与する長手方向軸線に沿って徐々にテーパ状になった形状に構成されている。あるいは、段階的に増加する直径を有するマンドレルを使用することができる。一例では、テーパは、ワイヤ上に半径方向の拡張力を誘導ワイヤは、より大きい直径に開くか又は拡張するように強制するマンドレルは軸方向に最小直径から最大直径へ複数のワイヤの遠位端に挿入される。この拡張力がステント表面に伝達するが、軸方向の挿入力が、ステント表面に伝達されない。この軸方向の力の減少は、ステントにより生じた応力を減少させ、従って、ストラット破損のリスクを減少させるという点で有利である。)

(3)「[0054] Alloys having shape memory/superelastic characteristics generally have at least two phases. These phases are a martensite phase,which has a relatively low tensile strength and which is stable at relatively low temperatures, and an austenite phase, which has a relatively high tensile strength and which is stable at temperatures higher than the martensite phase.
[0055] The shape memory characteristics of the invention described above are preferably imparted to the alloy under a controlled temperature environment. This temperature control serves to make the stents more ductile during the expansion process. The increase in material ductility can be achieved while exposing the stent to a temperature, for example, of approximately -40 degrees Fahrenheit. Additionally, the desired increase in material ductility can be achieved while exposing the stentto a temperature between approximately 175 and 600 degrees Fahrenheit. Consequently, the shape of the metal during this heat treatment is the shape“remembered.”」
(当審訳:
[0054] 形状記憶/超弾性特性を有する合金は一般に少なくとも2種類の相を有している。これらの相は、マルテンサイト相(この相は、比較的低い引張強さを有し且つ比較的低い温度で安定)と、オーステナイト相(この相は、比較的高い引張強さを有しマルテンサイト相よりも高い温度で安定)である。
[0055] 上述した本発明の形状記憶特性は、制御された温度環境下で合金に付与されるのが好ましい。この温度制御は、膨張プロセスの間にステントをより延性にする働きをする。材料の延性の増大は、例えば、約40°Fの温度までステントを露出させて達成することができる。さらに、約175°Fと600°Fの間の温度にステントを露出させながら材料の延性の所望の増加を達成することができる。その結果、この熱処理中のその金属の形状は形状記憶される。)

(4)上記(1)の段落[0037]の「本発明に従って形成されたステントは、ニチノール(Ni-Ti合金)などの形状記憶合金から作られることが好ましい。ニチノール・ステントを製造する場合、材料は先ずチューブの形態である。」という記載並びに段落[0038]及び[0039]の記載から、引用文献1には、ニチノール(Ni-Ti合金)などの形状記憶合金から作られるステントを拡張させるための方法が記載されている。

(5)上記(1)の段落[0039]の「ステントの長手方向軸に沿って延在しかつ初期未拡張直径を有する拡張部材がステントの近位端または遠位端に挿入される。」という記載及び同段落の「典型的には、ステントの初期直径は、約3ミリメートルであり、拡張された直径は約6ミリメートルであるが、本発明は、任意の所望のサイズのステントに適用することができることが理解される。」という記載から、引用文献1には、初期直径約3mmのステントを、拡張された直径約6mmまで(すなわち2倍の直径まで)拡張することが記載されているといえる。
また、段落[0039]の「拡張部材は、第2の拡張直径まで半径方向に拡張されることができ、ステント拡張部材によって及ぼされる半径方向の力はその結果ステントを第2のステント直径まで拡張する。ここで、第2のステント直径は第1のステント直径よりも大きい。」という記載から、第1のステント直径から第2のステント直径まで拡張する工程は、1つの拡張工程であるといえる。
なお、上記(2)の段落[0047]には、「好ましくは、マンドレルは、複数のワイヤの軸方向挿入の量に対応する、増加する半径方向の膨張力を付与する長手方向軸線に沿って徐々にテーパ状になった形状に構成されている。あるいは、段階的に増加する直径を有するマンドレルを使用することができる。」と記載され、テーパー状の形状のマンドレルの代わりに、段階的に(階段状に)増加する直径を有するマンドレルを使用することができることが記載されているが、それは「あるいは」で表される別の態様であり、必須のものではないことが分かる。
そして、引用文献1の段落[0002]に記載された「段階的な拡張」(stepwise expansion)に関して、上記段落[0047]の記載以外には具体的な説明はない。したがって、引用文献1の段落[0002]に記載された「段階的な拡張」は、本願明細書の段落【0004】に記載された「一連の漸次的な拡張・形状固定ステップ」とは異なるものである。

(6)上記(3)の段落[0055]の「さらに、約175°Fと600°Fの間の温度にステントを露出させながら材料の延性の所望の増加を達成することができる。」という記載から、ステントを約175°F(摂氏に換算すると79.4°C)と600°F(315.6°C)の間の温度にステントを露出することにより材料の延性が増加することが分かる。また、同段落の「その結果、この熱処理中のその金属の形状は形状記憶される。」という記載から、該約175°F(79.4°C)と600°F(315.6°C)の間の温度が、形状を記憶する温度(形状記憶温度)でもあることが分かる。
また、上記(3)の段落[0055]の「上述した本発明の形状記憶特性は、制御された温度環境下で合金に付与されるのが好ましい。この温度制御は、膨張プロセスの間にステントをより延性にする働きをする。」という記載から、ステントをより延性にする働きをするこの温度制御は、膨張プロセスの間、すなわち材料の加工中に行われることが好ましいことが分かる。

以上を踏まえ、上記(1)?(6)の事項を、本願発明に照らして整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

《引用発明1》
「形状記憶合金のステントを拡張する方法であって、
該方法は、
1つの拡張工程で、79.4°C?315.6°Cの形状記憶温度範囲内にある温度にて、形状記憶合金ステントを、初期直径から拡張された直径に拡張させること;を含み、
ここで、前記拡張された直径は前記初期直径の2倍であり、
前記方法は、79.4°C?315.6°Cの前記形状記憶温度範囲内にある温度で実行される、前記方法。」

2.引用文献2
原査定の拒絶理由に引用された特開昭61-20618号公報(以下「引用文献2」という。)には、「形状記憶合金棒・線材の製造方法」の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「本発明は形状記憶合金、特にNi-Ti系合金の棒・線材を製造する方法に関するものである。
このような形状記憶合金の棒・線材は、一般に次の工程によって製造される。
1.二種以上の所定の金属を所定の比率で混合して溶解し鋳塊を得る工程1.
2.該鋳塊を700?900℃に加熱して鍛造および圧延を行い(熱間加工)素棒・線材を得る工程2.
3.該素棒・線材の冷間引抜き加工によって棒・線材を得る工程3
しかしながら上記工程3の冷間引抜き加工においては形状記憶合金材料は加工性が悪く10?20%減面加工した時点で中間焼鈍を行い再び冷間引抜き加工を行う方法がとられており、したがって加工コストが大巾に増加して形状記憶合金棒・線材を安価に提供することが出来ない。」(1ページ左下欄14行ないし右下欄11行)

(2)「本発明は上記従来の問題点を解消して形状記憶合金を能率よく、しかも容易に加工することを目的とし、上記工程3において素棒・線材を300?1000℃に加熱して引抜き加工を行うことを骨子とするものである。
即ち本発明者等は上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、形状記憶合金、特にNi-Ti系合金についての高速引張り試験において破断時の絞り値(減面率)と温度との関係を求めると300?1000℃の温度範囲で該絞り値が一定以下になることを見出し本発明を完成した。」(2ページ左上欄4行ないし14行)

(3)「本発明の対象とする形状記憶合金とは主としてNi-Ti合金、あるいは該Ni-Ti合金に更にCu,Al,Zr,Co,Cr,Ta,V,Mo,Nb,Pd,Pt,Mn,Fe等の第三成分の一種もしくは二種以上を添加したNi-Ti系合金であるが、更にAu-Cd合金,Ag-Cd合金,Au-Ag-Cd合金,Cu-Al-Ni合金,Cu-Zn合金等すべての種類の形状記憶合金を含むものである。
本発明は上記形状記憶合金からなる素棒・線材を300?1000℃に加熱して引抜き加工を行うことを骨子とするものである。そして該素棒・線材は通常上記形状記憶合金の成分となるべき二種以上の所定の金属を所定の比率で混合して溶解し鋳塊を得たる後、該鋳塊を熱間加工することによって得られる。上記鋳塊製造工程においては金属の溶解に通常高周波誘導加熱が適用される。更に該鋳塊より素棒・線材を得るには該鋳塊を700?900℃に加熱して鍛造を行い、更に700?900℃に加熱して圧延を行い、このような熱間加工によって素棒・線材を得、該素棒・線材を300?1000℃に加熱して引抜き加工を行い棒・線材を得る。引抜き加工を行うにはスウェージング,ローラーダイス,マイクロミル,固定ダイス等を用いる。またNi-Ti系合金ではTiが45重量%前後含まれるから800℃以上を越えると酸化のおそれがある。したがって300?800℃の温度範囲を適用することが望ましい。上記温度範囲における加熱によって形状記憶合金材料は引抜き加工の間に生ずる歪が除去されるから中間焼鈍することなくして98%以上の減面率まで加工が可能になる。更に中間焼鈍と同等の効果を付与するには500?800℃の温度範囲の加熱が望ましい。」(2ページ左上欄16行ないし左下欄8行)

(4)「実施例
工程1.
Ni:Ti=44:56重量比の混合金属粉を高周波誘導炉で溶解して3kgのNi-Ti合金鋳塊を得る。
工程2.
該鋳塊を900℃に加熱して30mmφの棒状に鍛造し、更に900℃に加熱して圧延を行い8mmφの素棒・線材を得る。
工程3.
該素棒・線材を長さ2mの環状炉に通じて600℃に加熱し、次いでステアリン酸カルシウム粉末を該素棒・線材表面に塗布した後固定ダイスによって中間焼鈍することなくして引抜き加工を行い1.2mmφの棒・線材を得る。
該引抜き加工は円滑に行われ、引き切れ等の不具合は皆無であった。」(2ページ右下欄1行ないし17行)

(5)「試験
実施例の棒・線材と比較例の棒・線材との機械的性質を第1表に示す。

第1表(略)

第1表によれば実施例の棒・線材の伸びは比較例に比してはるかに大きくなっている。したがって本発明の方法によれば冷間加工性が容易になり製造工程が著るしく短縮されるのみならず得られる棒・線材の機械的性質も大巾に改良される。」(3ページ左上欄10行ないし右上欄6行)

以上を踏まえ、上記(1)?(5)の事項を、本願発明に照らして整理すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

《引用発明2》
「Ni-Ti合金等の形状記憶合金を、能率良く、容易に加工するために、300°C?800°Cの温度範囲で加工を行うこと。」

第5.対比
引用発明1と本願発明とを対比する。引用発明1における「形状記憶合金のステント」は、本願発明における「形状記憶合金チューブ」及び「形状記憶合金(SMA)チューブ」に相当し、以下同様に、「拡張する」は「形成する」に、「1つの拡張工程」は「単一の工程」に、「形状記憶温度」は「形状固定温度」に、「初期直径」は「第1の(小)直径」に、「拡張された直径」は「第2の(大)直径」に、「2倍」は「少なくとも2倍」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1における「79.4°C?315.6°C」の温度範囲は、本願発明における「300℃?650℃」の温度範囲と重複している。
また、引用発明1における「温度」と、本願発明における「単一の温度」とは、「温度」という限りにおいて一致する。
また、引用発明1における「前記形状固定温度範囲内にある温度で」と、本願発明における「前記形状記憶温度範囲内にある単一の装置内で」とは、「前記形状固定温度範囲内で」という限りにおいて一致する。

してみると、本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は以下のとおりである。

《一致点》
「形状記憶合金チューブを形成する方法であって、
該方法は、
単一の工程で、形状固定温度範囲内にある温度にて、形状記憶合金(SMA)チューブを、第1の(小)直径から第2の(大)直径に変形させること;を含み、
前記方法は、前記形状固定温度範囲内で実行される、前記方法。」

《相違点》
本願発明は、形状固定温度範囲が300℃?650℃であり、前記形状固定温度範囲内にある「単一の温度」にて変形させ、第2の(大)直径は第1の(小)直径の少なくとも2倍であり、前記形状固定温度範囲内にある「単一の装置内」で実行されるのに対し、引用発明1は、形状記憶温度範囲が79.4℃?315.6℃であり、拡張された直径は初期直径の2倍であり、前記形状固定温度範囲内にある「温度」にて拡張を行う点。

第6.判断
上記相違点について検討する。
金属の加工時の温度を一定に保持することは、例を挙げるまでもない周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。
また、引用発明1においては、初期未拡張直径から拡張された直径への拡張を1つの拡張部材を使って行っているのであるから、この拡張部材を単一の装置内に配置することにより、形状固定温度範囲内にある「単一の装置内」で実行されるものとすることは、当業者が容易に想到できたことである。
そして、引用発明1と本願発明の温度範囲は300℃?315.6℃の範囲内で一致するところ、引用発明の温度範囲を上方に広げることは、引用発明2を参照することにより、当業者が適宜なし得たことである。
また、引用発明1と本願発明の倍率についても第2の(大)直径は第1の(小)直径の2倍であることを含む点で一致するところ、引用文献1の段落[0039]の「ここで、第2のステント直径は第1のステント直径よりも大きい。典型的には、ステントの初期直径は、約3ミリメートルであり、拡張された直径は約6ミリメートルであるが、本発明は、任意の所望のサイズのステントに適用することができることが理解される。」という記載から、引用文献1には、1つの拡張工程で2倍以上の直径まで拡張されるステントにも適用できることが記載ないし示唆されているといえる。
してみれば、引用発明1において、周知技術1又は周知技術1及び引用発明2を適用することにより、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明1及び周知技術から、又は引用発明1、引用発明2及び周知技術から当業者が予想できる範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基いて、又は引用発明1、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基いて、又は引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものであり、原査定は妥当である。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-07-14 
結審通知日 2020-07-28 
審決日 2020-08-11 
出願番号 特願2017-131969(P2017-131969)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高吉 統久倉田 和博  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 西中村 健一
金澤 俊郎
発明の名称 単一ステップの形状記憶合金拡張  
代理人 三橋 真二  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 胡田 尚則  
代理人 鶴田 準一  
代理人 出野 知  
代理人 南山 知広  
代理人 青木 篤  
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