ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08J 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08J |
---|---|
管理番号 | 1369979 |
異議申立番号 | 異議2019-700602 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-07-30 |
確定日 | 2020-11-06 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6458698号発明「発泡成形用ポリプロピレン樹脂および成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6458698号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし14〕について訂正することを認める。 特許第6458698号の請求項1ないし3及び5ないし14に係る特許を維持する。 特許第6458698号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6458698号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、平成27年9月28日の出願であって、平成31年1月11日にその特許権の設定登録(請求項の数14)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和1年7月30日に特許異議申立人 藤江 桂子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし14)がされ、同年10月8日付けで取消理由が通知され、同年12月6日に特許権者 日本ポリプロ株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正の請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月12日に特許権者から上申書が提出され、同年同月24日付けで訂正拒絶理由が通知され、令和2年2月5日に特許権者から意見書が提出され、同年同月12日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年3月16日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年5月22日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年7月22日に特許権者から訂正の請求がされるとともに意見書が提出され、同年8月21日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対して、特許異議申立人からは何ら応答がなかったものである。 なお、令和1年12月6日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 令和2年7月22日にされた訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「230℃での押出造粒操作」とあるのを、「空気雰囲気下230℃での押出造粒操作」に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「230℃での押出造粒操作」とあるのを、「空気雰囲気下230℃での押出造粒操作」に訂正する。 併せて、請求項2を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項2を訂正したことに伴う訂正をする。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「230℃での押出造粒操作」とあるのを、「空気雰囲気下230℃での押出造粒操作」に訂正する。 併せて、請求項3を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項3を訂正したことに伴う訂正をする。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に「メルトフローレート(230℃、2.16kg)が1.1g/10分以上であり」とあるのを、「メルトフローレートMFR_(0)(230℃、2.16kg)が1.1?15g/10分の範囲であり、空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を1回行った後のメルトフローレートMFR_(1)(230℃、2.16kg)が、MFR_(0)を1としたときに2以下であり」に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5ないし7及び14における請求項の引用関係について、各請求項が引用の対象とする請求項から請求項4を削除する。 併せて、請求項5ないし7を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項5ないし7を訂正したことに伴う訂正をする。 2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1における「230℃での押出造粒操作」を「空気雰囲気下」で行うことを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、実際に樹脂のリサイクル操作を行うときは、空気雰囲気下での押出を経て行われるのが、本件特許の出願時の当業者の技術常識であるから(令和2年2月5日に提出された意見書に添付された乙第6号証(高分子劣化・崩壊の<樹脂別>トラブル対策と最新の改質・安定化技術-総合技術資料集-、p.726-731)、乙第7号証(高分子材料の劣化・変色メカニズムとその安定化技術-ノウハウ集-、p.54)、乙第8号証(特開平10-202720号公報)、乙第9号証(特開2009-263656号公報)、乙第10号証(特開2014-54373号公報)及び乙第11号証(特開2001-302809号公報)を参照。)、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項2における「230℃での押出造粒操作」を「空気雰囲気下」で行うことを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項2は、訂正事項1と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項3における「230℃での押出造粒操作」を「空気雰囲気下」で行うことを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項3は、訂正事項1と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項1における「メルトフローレート(230℃、2.16kg)」に、訂正前の請求項4において特定されていた「MFR_(0)」という記号を追加した上でその範囲の上限を限定すると共に「空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を1回行った後のメルトフローレートMFR_(1)(230℃、2.16kg)が、MFR_(0)を1としたときに2以下であり」という限定を加えたものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、請求項5ないし7及び14の引用請求項から請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1ないし6は、特許法120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる事項を目的とするものである。 また、訂正事項1ないし6は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項2ないし14は訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし14は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし6は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし14に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし14〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし14に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 230℃における溶融張力MT_(0)が4g以上であり、メルトフローレートMFR_(0)(230℃、2.16kg)が1.1g?15g/10分の範囲であり、空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を1回行った後のメルトフローレートMFR_(1)(230℃、2.16kg)が、MFR_(0)を1としたときに2以下であり、かつ、空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を1回行った後の230℃における溶融張力MT_(1)が、MT_(0)を1としたときに0.3以上であるプロピレン単独重合体(X)からなる、発泡成形用ポリプロピレン樹脂。 【請求項2】 空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を2回行った後の230℃における溶融張力MT_(2)が、MT_(0)を1としたときに0.2以上であるプロピレン単独重合体(X)からなる、請求項1に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。 【請求項3】 空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を3回行った後の230℃における溶融張力MT_(3)が、MT_(0)を1としたときに0.1以上であるプロピレン単独重合体(X)からなる、請求項2に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 プロピレン単独重合体(X)が下記の特性(X-i)?(X-iv)を満たす請求項1?3のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。 特性(X-i)長鎖分岐を有する。 特性(X-ii)230℃における溶融張力が4?25gである。 特性(X-iii)メルトフローレート(230℃、2.16kg)が1.1?15g/10分である。 特性(X-iv)25℃でキシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン単独重合体(X)全量に対し5wt%未満である。 【請求項6】 25℃でキシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン単独重合体(X)全量に対し1wt%未満である、請求項1?3、5のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。 【請求項7】 請求項1?3、5、6のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂に対し、発泡剤を0.05?6.0重量部含有する、ポリプロピレン樹脂発泡成形材料。 【請求項8】 請求項7に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を押出成形してなる、ポリプロピレン樹脂発泡成形体。 【請求項9】 請求項8に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体からなる発泡層と、熱可塑性樹脂組成物からなる非発泡層とを、共押出してなるポリプロピレン樹脂積層発泡成形体。 【請求項10】 前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂100重量部に対し、50重量部以下の無機充填剤を含む、請求項9に記載のポリプロピレン樹脂積層発泡成形体。 【請求項11】 シート状である、請求項8?10のいずれか一項に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体。 【請求項12】 請求項8?10のいずれか一項に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体または積層発泡成形体を、熱成形してなる成形品。 【請求項13】 請求項7に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を射出成形、熱成形、ブロー成形またはビーズ発泡成形のいずれかの方法により成形して得られる成形品。 【請求項14】 請求項1?3、5、6のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂の、発泡シートの製造のための使用。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び令和2年5月22日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要 1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和1年7月30日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由(甲第1号証を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)証拠方法 甲第1号証:国際公開第02/08304号 甲第2号証:特開平8-311273号公報 甲第3号証:特開平8-333493号公報 甲第4号証:特開平9-104789号公報 甲第5号証:Kui Wang et al.,Analysis of thermomechanical reprocessing effects on polypropylene/ethylene octene copolymer blends,ELSEVIER Polymer Degradation and Stability 97(2012)1475-1484[online]2012年5月23日掲載(URL:http:/www.elsevier.com/locate/polydegstab) 甲第6号証:特開2015-40213号公報 甲第7号証:ネロ・パスクイーニ編、新版ポリプロピレンハンドブック 基礎から用途開発まで、初版第1刷、日刊工業新聞社、2012年9月28日、511頁、539頁及び543?544頁 甲第8号証:特開2011-16365号公報 甲第9号証:特開2009-241528号公報 なお、文献名等の表記はおおむね特許異議申立書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 2 令和2年5月22日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要 令和2年5月22日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。 (1)取消理由1(甲1に基づく新規性) 本件特許の請求項1及び14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)取消理由2(甲1を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし3及び5ないし14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1ないし9に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 1 取消理由(決定の予告)について 取消理由1及び2を併せて検討する。 (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、「プロピレン単独重合体及びプロピレン系共重合体」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「技術分野 本発明はプロピレン系重合体に関し、さらに詳しくは、従来のプ口ピレン系共重合体と同等又は同等以上の物性を有するとともに、溶融加工特性、成形加工性、リサイクル性に優れ、特に大型ブロー成形や押出し発泡成形、シート成形などに好適に用いられ、さらにポリオレフィン系複合材料の高性能化、エラストマーなどにも使用可能なプロピレン系重合体に関するものである。」(第1ページ第3ないし9行) ・「背景技術 ポリプロピレンは、その優れた特性を活かして、多くの分野において、広範囲に用いられている。 しかしなから、従来のポリプロピレンにおいては、溶融張力及び溶融粘弾性が不足し、大型ブロー成形におけるパリソンの安定性に劣るために、ドローダウンの現象が起こりやすく、大型部品の成形は困難であった。また、溶融張力を向上させるために高分子量化させた場合には、溶融流動性が低下し、複雑な形状の成形には適用できないという問題が生じる。 また、発泡成形体の分野においては、軽量化,断熱性,制振性などとともに、耐熱性を有する発成形体に対する要求が高まり、ポリプロピレン系発泡成形体が期待されているが、従来のポリプロピレンでは溶融張力が不足し、十分に満足しうる発泡成形体は得られにくいのが実状である。」(第1ページ第10ないし23行) ・「本発明は、このような状況下で、従来のポリプロピレン系重合体と同等又は同等以上の物性を有するとともに、充分な溶融張力,溶融粘弾性,溶融流動性を有し、溶融加工特性、成形安定性、リサイクル性に優れ、特に大型ブロー成形や押出し発泡成形、シート成形などに好適に用いられ、さらにプロピレン系複合材料の高性能化、エラストマーなどにも好適な分岐状プロピレン系重合体を提供することを目的とするものである。」(第4ページ第21ないし27行) ・「発明の開示 本発明者らは、溶融加工特性、成形安定性、リサイクル性に優れたプロピレン系重合体を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、溶融張力(MT) とZ平均分子量(Mz)及びメルトインデックス(MI)(g/10分)とが特定の関係にあり、かつ昇温分別クロマトグラフ法における溶出温度の差と最大溶出温度とが特定の関係にあるプロピレン単独重合体、あるいはコモノマ-が特定のα?オレフィンであってその含有量が特定の範囲にあり、かつ溶融張力(ΜΤ)とΖ平均分子量(Mz)及びメルトインデックス(MI)(g/10分)とが特定の関係にあるプロピレン系共重合体が、その目的に適合しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。」(第5ページ第3ないし13行) ・「温度230℃において荷重21.2Nで測定したメルトインデックス(MI)は、0.01?1000g/10分の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.05?900g/10分であり、さらに好ましくは0.1?700g/10分である。MIが0.01g/10分よりも小さい場合には、プロピレン単独重合体の溶融流動が低下するため加工性能が低下するおそれがあり、また、MIが1000g/10分を超える場合には、プロピレン単独重合体の機械的物性が低下するおそれがある。」(第7ページ第4ないし11行) ・「上記条件に加えて、本発明のプロピレン単独重合体又はプロピレン系共重合体は、熱履歴を受ける前のプロピレン単独重合体又はプロピレン系共重合体の溶融張力をMT_(0)、熱履歴を受けた後のプロピレン単独重合体又はプロピレン系共重合体の溶融張力をMT_(1) としたときの、熱履歴による溶融張力の変化率(MT_(1)/MT_(0))が0.63?1の範囲にあることが好ましい。MT_(1)/MT_(0)は、好ましくは0.65?1、より好ましくは0.68?1、さらに好ましくは0.71?1、最も好ましくは0.74?1である。 MT_(1)/MT_(0)が0.63未満であると、樹脂をリサイクルすることができないばかりでなく、歩留りが悪くなりコストアツプのおそれがある。すなわち、ポリプロピレン系単独重合体又はポリプロピレン系共重合体は、その成形加工時に溶融過程を経ることにより熱履歴を受ける。このような熱履歴を受けたポリプロピレン系単独重合体又はポリプロピレン系共重合体をリサイクルすることは高分子加工において一般に行われている。熱履歴によりプロピレン系単独重合体又はポリプロピレン系共重合体の溶融張力が大きく変化した場合、成形条件の細かな変更や、成形そのものができないという弊害を生じる。したがって、成形加工分野やリサイクル分野においては熱履歴による溶融張力の変化率の小さいプロピレン系単独重合体又はポリプロピレン系共重合体が要求されている。この熱履歴の評価法については後述する。」(第13ページ第13行ないし第14ページ第5行) ・「本発明の熱可塑性樹脂組成物における添加剤としては、酸化防止剤、塩酸吸収剤、光安定剤、滑剤、核剤、無機充填剤、安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などを用いることができる。これらの添加剤のうち、酸化防止剤、塩酸吸収剤、光安定剤、滑剤、安定剤、紫外線吸収剤は、組成物中0.0001?10質量%添加することが好ましい。核剤の添加量は、組成物中0.001?10質量%、好ましくは0.01?5質量%、特に好ましくは0.1?3質量%である。無機充填剤の添加量は、組成物中0.1?60質量%、好ましくは0.3?50質量%、特に好ましくは1?40質量%である。」(第44ページ第8ないし17行) ・「本発明のプロピレン単独重合体、プロピレン系共重合体または熱可塑性樹脂組成物は、ダイスにより二次元の形状を付与し、溶融押出し工程を含む成形方法で成形することができる。成形体としては、シート、フィルム、中空成形体、繊維および押出発泡体があり、好ましいものは、シート、中空成形体および押出発泡体である。」(第44ページ第18ないし22行) ・「(1)溶融張力(MT)の測定 下記の装置及び条件で測定した。 装置 :東洋精機社製キャピログラフIB キャピラリー :直径2.095mm,長さ8.0mm シリンダー径 :9.6mm シリンダー押出速度:10mm/分 巻き取り速度 :3.14m/分 温度 :230℃ サンプル :酸化防止剤としてイルガノックス1010(チバス ペシャルティケミカルズ社製) とBHTとの重量比 1:1の混合物を4000重量ppm添加」(第45ページ第6ないし17行) ・「(3)メルトインデックス(MI)の測定 ASTM D1238に準拠して、下記の条件で測定した。 測定温度 :230℃ 荷重 :2.16kg(21.2N) サンプル :酸化防止剤としてイルガノックス1010とBHTと の重量比1:1の混合物を4000重量ppm添加」(第46ページ第3ないし9行) ・「(5)熱履歴の評価方法 下記の測定装置及び測定条件により、溶融張力を測定した。熱履歴を受ける前のプロピレン単独重合体又はプロピレン系共重合体の溶融張力をMT_(0)、熱履歴を受けた後のプロピレン単独重合体又はプロピレン系共重合体の溶融張力をMT_(1)としたときの、熱履歴による溶融張力の変化率(MT_(1)/MT_(0))を求めた。 装置 :20mm単軸押出機 樹脂温度 :260 ±10℃ 滞留時間 :60 ±1秒 押出し雰囲気:窒素雰囲気 サンプル :酸化防止剤等の添加剤を含み、ペレツト化されたプロピレ ン単独重合体又はプロピレン系共重合体」(第48ページ第3ないし14行) ・「〔実施例4〕(軟質プロピレン重合体の製造) (1)メタロセン触媒の調製 rac-(1,2’-SiMe_(2))(2,1’-SiMe_(2))ビス(3ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド40マイクロモルとrac-(1,2’-エチレン)(2,1’-エチレン)ビス(インデニル)ハフニウムジクロリド40マイクロモルをトルエン10ミリリットルに溶解させ、混合触媒溶液を調製した。 (2)プロピレンの重合 1.6リットルのステンレス鋼製耐圧オートクレーブに脱水トルエン600ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモルを投入し、10分間攪拌した。これに、(1)で調製した触媒をジルコニウム原子換算で5マイクロモル相当を投入した。攪拌しながら重合温度を80℃にまで昇温し、プロピレンの重合圧力が0.098MPa・Gとなるようにプロピレンを連続的に供給して200分間重合を行った(重合反応1)。重合反応1が終了した後、重合温度を65℃とし、プロピレンの重合圧力が0.69MPa・Gとなるようにプロピレンを連続的に供給して30分間重合を行った(重合反応2)。オートクレーブを脱圧開放し、ポリプロピレンを回収し、乾燥させたところ、150gであった。分析結果を第1表に示す。」(第53ページ第2ないし20行) ・「〔比較例1〕 モンテルポリオレフィンズ社製の押出発泡成形用ポリプロピレン(商品名:PF814 )を実施例1と同様に評価した。このポリプロピレンは、溶融張力の改善されたポリプロピレンとして、コンバーテック、4月号、8 ?11頁(1998年)に紹介されている。 結果を第1表に示す。また、このポリプロピレンについて、上記方法により熱履歴を与え、その前後の溶融張力とその変化率を求めた。結果を第3表に示す。また、劣化パラメ一タ (D)は0.68であった。」(第55ページ第2ないし10行) ・「 」(第55ページ) ・「 」(第56ページ) ・「(2)組成物の製造 上記(1)で製造したポリプロピレンと実施例5で製造したポリプロピレンを以下に示した条件で混練機を用いて溶融混練し、ペレット状の組成物を得た。 (組成比) A B (比較例) 実施例5のポリプロピレン 30重量% 0重量% 上記(1)のポリプロピレン 70重量% 100重量%」(第57ページ第5ないし11行) ・「産業上の利用可能性 本発明のプロピレン単独重合体又はプロピレン系共重合体は、従来のプロピレン系重合体と同等又は同等以上の物性を保持すると共に、溶融張力の制御が可能であって、発泡成形,シート成形,ブロー成形などに適している。また溶融加工特性、成形安定性、リサイクル性に優れ、従来のプロピレン系重合体では利用に制約のあった成形法、例えば大型ブロー成形や押出し発泡成形などに適用することができる。」(第58ページ第1ないし7行) ・「1.(a)温度230℃において測定した溶融張力(MT)とゲルパーミエーションクロマトグラフ法により求めたZ平均分子量(Mz)及び230℃において荷重21.2Nで測定したメルトインデックス(MI)(g/10分)とが式(1) logMT≧0.5555×log[Mz/MI]-2.85 (1) の関係を満たすこと、及び (b)昇温分別クロマトグラフ法において、60重量%の成分が溶出したときの温度をT_(60)(℃)及び40重量%の成分が溶出したときの温度をT_(40)(℃)としたときの溶出温度の差[T_(60)-T_(40)]と最大溶出温度Tmax(℃)とが、Tmaxが100℃以下の領域において log[T_(60)-T_(40)]≦-0.232Tmax +25.7 (2) T_(60)-T_(40)≦80 (3) の両者を満足するか、または Tmax が110℃を超え、130℃以下の領域において T_(60)-T_(40)≦1.2 (4) の関係を満たすことを特徴とするプロピレン単独重合体。 2.熱履歴を受ける前のプロピレン単独重合体の溶融張力をMT_(0)、熱履歴を受けた後のプロピレン単独重合体の溶融張力をMT_(1)としたときの、熱履歴による溶融張力の変化率(MT_(1)/MT_(0))が0.63?1.0の範囲にある請求項1記載のプロピレン単独重合体。」(第59ページ第2ないし21行) イ 甲1発明 甲1に記載された事項を、実施例4に関して整理すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。 <甲1発明> 「熱履歴前の溶融張力(MT_(0))が5.4gであり、メルトインデックス(MI)が1.10g/10分である発泡成形用ポリプロピレン。」(当審注:「5.4」という値は第1表のlogMTの値が0.73であることから算出した。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 溶融張力の測定条件に関して、本件特許明細書には、「[MT測定条件] 測定装置:(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm シリンダー径:9.55mm ピストン押出速度:20mm/分 引き取り速度:4.0m/分(但し、MTが高すぎて樹脂が破断してしまう場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度で測定する。) 温度:230℃」(【0017】)と記載され、甲1には、「(1)溶融張力(MT)の測定 下記の装置及び条件で測定した。 装置 :東洋精機社製キャピログラフIB キャピラリー :直径2.095mm,長さ8.0mm シリンダー径 :9.6mm シリンダー押出速度:10mm/分 巻き取り速度 :3.14m/分 温度 :230℃ サンプル :酸化防止剤としてイルガノックス1010(チバス ペシャルティケミカルズ社製) とBHTとの重量比 1:1の混合物を4000重量ppm添加」(第45ページ第6ないし17行)と記載されているように、両者は、使用する装置の寸法、速度条件、押出し雰囲気及び酸化防止剤の添加の有無等で異なる点があるものの、それらの影響は小さいと考えられるので(押出し雰囲気の影響が小さいことに関しては甲5の第1475ページの「ABSTRACT」の欄、第1476ページの「2.Experimental 2.1.Materials and processing」の欄及び第1478ページの「3.Results and discussion」の欄参照。)、甲1発明における「熱履歴前の溶融張力(MT_(0))が5.4gであり」は、本件特許発明1における「230℃における溶融張力MT_(0)が4g以上であり」に包含される蓋然性は高く、甲1発明における「熱履歴前の溶融張力(MT_(0))が5.4gであり」は、本件特許発明1における「230℃における溶融張力MT_(0)が4g以上であり」に相当するといえる。 メルトフローレートの測定条件に関して、本件特許明細書には、「ここで、プロピレン単独重合体(X)のMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック?熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定した値である。」(【0022】)と記載され、甲1には、「(3)メルトインデックス(MI)の測定 ASTM D1238に準拠して、下記の条件で測定した。 測定温度 :230℃ 荷重 :2.16kg(21.2N) サンプル :酸化防止剤としてイルガノックス1010とBHTとの 重量比1:1の混合物を4000重量ppm添加」(第46ページ第3ないし9行)と記載されているように、両者は、準拠する規格及び酸化防止剤の添加の有無等で異なる点があるものの、それらの影響は小さいと考えられるので、甲1発明における「メルトインデックス(MI)が1.10g/10分であり」は、本件特許発明1における「メルトフローレートMFR_(0)(230℃、2.16kg)が1.1?15g/10分の範囲であり」に包含される蓋然性は高い。 甲1発明における「熱履歴」は、甲1の「(5)熱履歴の評価方法 下記の測定装置及び測定条件により、溶融張力を測定した。熱履歴を受ける前のプロピレン単独重合体又はプロピレン系共重合体の溶融張力をMT_(0)、熱履歴を受けた後のプロピレン単独重合体又はプロピレン系共重合体の溶融張力をMT_(1)としたときの、熱履歴による溶融張力の変化率(MT_(1)/MT_(0)) を求めた。 装置 :20mm単軸押出機 樹脂温度 :260±10℃ 滞留時間 :60±1秒 押出し雰囲気:窒素雰囲気 サンプル :酸化防止剤等の添加剤を含み、ペレツト化されたプロピレ ン単独重合体又はプロピレン系共重合体」(第48ページ第3ないし14行)という記載によると、本件特許発明1における「空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を1回行った後」と樹脂温度及び押出し雰囲気という測定条件に違いがあるといえる。 しかし、甲1の第3表によると、実施例1ではMT_(1)/MT_(0)が0.99であり、比較例1ではMT_(1)/MT_(0)が0.54であり、さらに、甲1の第13ページ第13行ないし第14ページ第5行の記載によると、甲1発明は、熱履歴による溶融張力の変化率(MT_(1)/MT_(0))を1に近づけることを課題として認識し、0.63未満であると樹脂をリサイクルすることができないばかりでなく、歩留まりが悪くなりコストアップのおそれがあるとされているものであるから、甲1発明における熱履歴を1回経た溶融張力(MT_(1))と熱履歴前の溶融張力(MT_(0))の比(MT_(1)/MT_(0))は比較例1の「0.54」より大きく、実施例1の「1」に近い値であると考えるのが自然である。 してみると、甲1発明における熱履歴を1回経た溶融張力(MT_(1))と熱履歴前の溶融張力(MT_(0))の比(MT_(1)/MT_(0))は、測定条件の違いによって、多少変化することがあるかもしれないが、本件特許発明1における「空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を1回行った後の230℃における溶融張力MT_(1)が、MT_(0)を1としたときに0.3以上である」という条件を満足する蓋然性が高いといえる。 したがって、本件特許発明1と甲1発明は、次の点で一致する。 <一致点> 「230℃における溶融張力MT_(0)が4g以上であり、メルトフローレートMFR_(0)(230℃、2.16kg)が1.1?15g/10分の範囲であり、かつ、空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を1回行った後の230℃における溶融張力MT_(1)が、MT_(0)を1としたときに0.3以上であるプロピレン単独重合体(X)からなる、発泡成形用ポリプロピレン樹脂。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点> 本件特許発明1においては、「空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を1回行った後のメルトフローレートMFR_(1)(230℃、2.16kg)が、MFR_(0)を1としたときに2以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 そこで、上記相違点について検討する。 甲1には、空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を1回行った後のメルトフローレートMFR_(1)(230℃、2.16kg)とメルトフローレートMFR_(0)(230℃、2.16kg)の比に着目して、それを2以下とすることは記載も示唆もされていない。 また、甲2ないし9にも、空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を1回行った後のメルトフローレートMFR_(1)(230℃、2.16kg)とメルトフローレートMFR_(0)(230℃、2.16kg)の比に着目して、それを2以下とすることは記載も示唆もされていいない。 したがって、甲1発明において、甲2ないし9に記載された事項を適用しても、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「繰り返して押出成形工程に付した場合でも溶融張力の低下率が小さく、繰り返し成形性に優れる。また、溶融張力をはじめとした物性の変化率が小さいため、成形条件を大きく変えることなく、一定の品質のポリプロピレン樹脂成形体を得ることができる。」(本件特許明細書の【0010】)及び「押出溶融操作を経た後でも、高い発泡倍率および低い連続気泡率を維持しており、発泡成形用樹脂として良好な性質を維持している」(同【0226】)という甲1発明及び甲2ないし9に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるとはいえないし、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明2、3及び5ないし13について 本件特許発明2、3及び5ないし13は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えていることから、本件特許発明1と同様に、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明14について 本件特許発明14は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えていることから、本件特許発明1と同様に、甲1に記載された発明であるとはいえないし、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるともいえない。 (4)むすび したがって、本件特許発明1及び14は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 また、本件特許発明2、3及び5ないし13は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 2 取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について 取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、本件特許の請求項4に係る発明に対する甲1を主引用文献とする進歩性であるが、本件訂正により、本件特許の請求項4は削除されたので、上記申立ての理由の対象は存在しないものとなった。 第6 結語 上記第5のとおり、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし14に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし3及び5ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項4に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 230℃における溶融張力MT_(0)が4g以上であり、メルトフローレートMFR_(0)(230℃、2.16kg)が1.1?15g/10分の範囲であり、空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を1回行った後のメルトフローレートMFR_(1)(230℃、2.16kg)が、MFR_(0)を1としたときに2以下であり、かつ、空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を1回行った後の230℃における溶融張力MT_(1)が、MT_(0)を1としたときに0.3以上であるプロピレン単独重合体(X)からなる、発泡成形用ポリプロピレン樹脂。 【請求項2】 空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を2回行った後の230℃における溶融張力MT_(2)が、MT_(0)を1としたときに0.2以上であるプロピレン単独重合体(X)からなる、請求項1に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。 【請求項3】 空気雰囲気下230℃での押出造粒操作を3回行った後の230℃における溶融張力MT_(3)が、MT_(0)を1としたときに0.1以上であるプロピレン単独重合体(X)からなる、請求項2に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 プロピレン単独重合体(X)が下記の特性(X-i)?(X-iv)を満たす請求項1?3のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。 特性(X-i)長鎖分岐を有する。 特性(X-ii)230℃における溶融張力が4?25gである。 特性(X-iii)メルトフローレート(230℃、2.16kg)が1.1?15g/10分である。 特性(X-iv)25℃でキシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン単独重合体(X)全量に対し5wt%未満である。 【請求項6】 25℃でキシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン単独重合体(X)全量に対し1wt%未満である、請求項1?3、5のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。 【請求項7】 請求項1?3、5、6のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂に対し、発泡剤を0.05?6.0重量部含有する、ポリプロピレン樹脂発泡成形材料。 【請求項8】 請求項7に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を押出成形してなる、ポリプロピレン樹脂発泡成形体。 【請求項9】 請求項8に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体からなる発泡層と、熱可塑性樹脂組成物からなる非発泡層とを、共押出してなるポリプロピレン樹脂積層発泡成形体。 【請求項10】 前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂100重量部に対し、50重量部以下の無機充填剤を含む、請求項9に記載のポリプロピレン樹脂積層発泡成形体。 【請求項11】 シート状である、請求項8?10のいずれか一項に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体。 【請求項12】 請求項8?10のいずれか一項に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体または積層発泡成形体を、熱成形してなる成形品。 【請求項13】 請求項7に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を射出成形、熱成形、ブロー成形またはビーズ発泡成形のいずれかの方法により成形して得られる成形品。 【請求項14】 請求項1?3、5、6のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂の、発泡シートの製造のための使用。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-10-26 |
出願番号 | 特願2015-190302(P2015-190302) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C08J)
P 1 651・ 113- YAA (C08J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 加賀 直人 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 大畑 通隆 |
登録日 | 2019-01-11 |
登録番号 | 特許第6458698号(P6458698) |
権利者 | 日本ポリプロ株式会社 |
発明の名称 | 発泡成形用ポリプロピレン樹脂および成形体 |
代理人 | 特許業務法人津国 |
代理人 | 特許業務法人 津国 |