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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1370383
審判番号 不服2019-14810  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-05 
確定日 2021-01-14 
事件の表示 特願2015-118902号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月5日出願公開、特開2017-519〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月12日の出願であって、平成30年5月30日に手続補正書が提出され、平成31年1月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月25日に意見書が提出されたところ、令和1年7月24日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年11月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、これに対し、当審において、令和2年6月2日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年8月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年8月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A?Hは、発明特定事項を分説するため当審で付した。)。

「【請求項1】
A 所定条件の成立を契機に当り抽選を行う抽選手段と、
B 前記抽選手段での抽選結果に基づいて複数の図柄を変動表示可能な表示手段と、
C 遊技者が操作可能な操作手段と、
D 前記操作手段に関連する操作演出を実行可能な操作演出実行手段と、
E 前記操作手段の操作検出が無効な検出無効状態と、操作検出が有効な検出有効状態とに切り換え可能な切換手段と、を備え、
F 前記操作演出実行手段は、
前記検出無効状態中に、遊技者に対して前記検出有効状態への切り換えを示唆する誘導報知画像を表示可能な誘導報知手段と、
前記誘導報知画像に対応する誘導報知音を出力する誘導報知音出力手段と、
前記検出有効状態中に、遊技者に対して前記操作手段の操作を促すための操作報知画像を表示可能な操作報知手段と、
前記操作報知画像に対応する操作報知音を出力する操作報知音出力手段と、
で構成される前記操作演出を実行し、
G 前記操作演出実行手段は、前記操作演出を実行する場合に、前記誘導報知画像の表示と前記誘導報知音の出力を開始し、その後、前記操作報知画像の表示と前記操作報知音の出力を開始するタイミングで、前記操作演出以外の演出の音声の出力を消音にする
H ことを特徴とする遊技機。」

なお、請求項1の構成Fに「前記操作演出実行手段は、前記検出無効状態中に、遊技者に対して前記検出有効状態への切り換えを示唆する誘導報知画像を表示可能な誘導報知手段と、前記誘導報知画像に対応する誘導報知音を出力する誘導報知音出力手段と、前記検出有効状態中に、遊技者に対して前記操作手段の操作を促すための操作報知画像を表示可能な操作報知手段と、前記操作報知画像に対応する操作報知音を出力する操作報知音出力手段と、で構成される前記操作演出を実行し、」と記載され、この記載によれば、「前記操作演出」は、「誘導報知手段」と「誘導報知音出力手段」と「操作報知手段」と「操作報知音出力手段」と「で構成される」ものであると認められるところ、「誘導報知手段」、「誘導報知音出力手段」、「操作報知手段」、「操作報知音出力手段」は、実施形態での「演出制御基板側CPU251」に対応するものであることを考慮すると、「・・・誘導報知手段と、・・・誘導報知音出力手段と、・・・操作報知手段と、・・・操作報知音出力手段と、で構成される前記操作演出」が示す事項は必ずしも明確であるといえないものの、明細書等の記載を参酌すると、「操作演出実行手段」は、「誘導報知手段」と「誘導報知音出力手段」と「操作報知手段」と「操作報知音出力手段」で構成されていて、これら4つの手段で、「操作演出」を実行するという事項を示すものと認める。

第3 拒絶の理由
令和2年6月2日付けで当審において通知した拒絶理由のうちの理由1は、次のとおりのものである。
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2009-125172号公報
引用文献2:特開2011-125549号公報
引用文献3:特開2014-18679号公報
引用文献4:特開2012-19933号公報
引用文献5:特開2014-39735号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載事項及び認定事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1)「【0014】
以下、本発明をその一種であるパチンコ遊技機に具体化した一実施形態を図1?図17にしたがって説明する。 図1には、パチンコ遊技機10と該パチンコ遊技機10が遊技場の遊技機設置設備(遊技島)に設置された際に並設される遊技媒体貸出用ユニットとしてのカードユニット装置11が略示されている。カードユニット装置11には、遊技者に貸し出される貸出用遊技媒体としての遊技球(貸し球)と交換可能な交換媒体としてのプリペイドカードを投入するための投入口11aが設けられている。カードユニット装置11は、投入されたプリペイドカードの価値を読み書き可能な構成となっている。具体的に言えば、カードユニット装置11は、投入時にプリペイドカードの残金(価値)を読込むとともに、貸し球の払出しに伴ってプリペイドカードの残金(価値)を書き替える。」

(2)「【0020】
遊技盤YBの遊技領域H1のほぼ中央(センター)には、各種の表示器や各種の飾りを施した表示枠体(センター役物)27が装着されている。表示枠体27の略中央には、正面視横長矩形に開口するセット口27aが形成されており、当該セット口27aに整合して表示枠体27には液晶ディスプレイ型の画像表示部GHを有する演出表示装置28が装着されている。演出表示装置28には、複数列(本実施形態では3列)の図柄列を変動させて行う図柄変動ゲームを含み、該ゲームに関連して実行される各種の表示演出(遊技演出)が画像表示されるようになっている。本実施形態において演出表示装置28の図柄変動ゲームでは、複数列(本実施形態では3列)の図柄からなる図柄組み合わせを導出する。なお、演出表示装置28の図柄変動ゲームは、表示演出を多様化するための飾り図柄(演出用図柄)を用いて行われる。また、表示枠体27には、発光により発光演出を行う盤用ランプ部27bが装着されている。」

(3)「【0022】
演出表示装置28と特別図柄表示装置30では、図柄変動ゲームの開始により同時に図柄(特別図柄と飾り図柄)の変動が開始される。具体的には、図柄変動ゲームの開始に伴って、特別図柄表示装置30では特別図柄の変動が開始する一方で、演出表示装置28では各列の飾り図柄の変動が開始する。そして、演出表示装置28と特別図柄表示装置30には、大当り抽選の抽選結果に基づき、図柄変動ゲームの終了によって同時に大当り図柄(大当り表示結果)又ははずれ図柄(はずれ表示結果)が確定的に停止表示される。つまり、図柄の変動が開始してから図柄組み合わせが確定停止状態で表示されるまでを1回の図柄変動ゲームとしている。このとき、特別図柄表示装置30と演出表示装置28では、大当り抽選の抽選結果が大当りである場合には何れの表示装置にも大当り図柄が確定的に停止表示(確定停止表示)され、大当り抽選の抽選結果がはずれである場合には何れの表示装置にもはずれ図柄が確定停止状態で表示される。すなわち、演出表示装置28の図柄変動ゲームは、特別図柄表示装置30の図柄変動ゲームの変動表示結果に対応付けて行われ、特別図柄の変動表示結果に対応する飾り図柄の変動表示結果を導出する。大当り図柄は、大当り抽選の抽選結果が大当りである場合に図柄変動ゲームで確定停止状態で表示されるものであり、はずれ図柄は、大当り抽選の抽選結果がはずれである場合に図柄変動ゲームで、確定停止状態で表示されるものである。」

(4)「【0036】
また、上皿16の上面には、遊技者(及び遊技場の従業員)が操作可能な演出用操作手段としての演出用操作ボタン36が配設されている。本実施形態において演出用操作ボタン36は、図柄変動ゲーム中にその操作が有効とされるようになっている。そして、演出用操作ボタン36の操作が有効である場合には演出用操作ボタン36に内蔵した図示しないランプが点灯するとともに、演出用操作ボタン36の操作が無効である場合には演出用操作ボタン36に内蔵したランプが消灯するようになっている。」

(5)「【0041】
以下、本実施形態のパチンコ遊技機10で行われる演出について図3にしたがって説明する。本実施形態のパチンコ遊技機10では、「プッシュ演出」が実行可能とされている。「プッシュ演出」とは、演出用操作ボタン36の操作が有効とされた操作有効期間において演出用操作ボタン36の操作が行われた場合、演出表示装置28にて表示される飾り図柄の変動を停止させる演出のことである。具体的には、1回の図柄変動ゲーム中に、演出用操作ボタン36の操作が有効とされる操作有効期間が複数回(本実施形態では2回または3回)設定される。そして、その操作有効期間において演出用操作ボタン36を操作すると、演出表示装置28では、図柄の変動が停止し、その変動停止の結果、導出された飾り図柄が一旦停止状態で表示される。また、本実施形態では、演出用操作ボタン36を操作した際に、一旦停止状態で表示される図柄組み合わせの表示領域を覆い隠す「割込み画像」が出現し、その割込み画像表示後に、一旦停止状態の飾り図柄が表示されるようになっている。なお、本実施形態におけるプッシュ演出の実行契機は、後述する複数種類の変動パターンのうち、特定の変動パターンを選択した場合となる。」

(6)「【0064】
以下、主制御基板45、サブ統括制御基板46、演出表示制御基板47、及び音声・ランプ制御基板48が実行する制御内容を説明する。 主制御基板45の主制御用CPU45aは、上始動入賞口33又は下始動入賞口34へ遊技球が入球し、該遊技球を検知した始動口スイッチSW1,SW2が出力する検知信号を入力すると、主制御用RAM45cに記憶されている始動保留球の記憶数が上限数(本実施形態では4)未満であるか否かの保留判定を行う。保留判定の判定結果が肯定(始動保留球の記憶数<4)の場合、主制御用CPU45aは、始動保留球の記憶数を1加算(+1)し、前記記憶数を書き換える。主制御用CPU45aは、特別図柄用の保留記憶数を書き換えた後、該書き換えた後の保留記憶数を表示するために特図保留記憶数表示部TRの表示内容を制御する。また、主制御用CPU45aは、保留判定を肯定判定している場合、大当り判定用乱数の値と大当り図柄用乱数の値を主制御用RAM45cから取得し、その取得した大当り判定用乱数の値と大当り図柄用乱数の値を始動保留球の記憶数に対応付けて主制御用RAM45cの所定の記憶領域に格納する。なお、主制御用CPU45aは、保留判定の判定結果が否定(始動保留球の記憶数=4)の場合、上限数を超える始動保留球の記憶数の書き換えを行わないとともに、大当り判定用乱数の値と大当り図柄用乱数の値を取得しない。本実施形態では、上始動入賞口33又は下始動入賞口34へ入球した遊技球を始動保留球として記憶する主制御用RAM45cが記憶手段となる。
【0065】
そして、主制御用CPU45aは、図柄変動ゲームの開始直前に、主制御用RAM45cの所定の記憶領域に格納した大当り判定用乱数の値を読み出し、その読み出した大当り判定用乱数の値と主制御用ROM45bに記憶されている大当り判定値とを比較し、大当りか否かの大当り判定を行う。」

(7)「【0074】
また、本実施形態において変動パターン指定コマンドを入力した統括制御用CPU46aは、プッシュ演出の実行可否を乱数抽選によって決定する。すなわち、統括制御用CPU46aは、前記乱数抽選に当選した場合にプッシュ演出の実行可(実行すること)を決定し、前記乱数抽選に当選しなかった場合にプッシュ演出の実行否(実行しないこと)を決定する。そして、プッシュ演出の実行可を決定した統括制御用CPU46aは、具体的なプッシュ演出の内容を示す設定パターンとしてのプッシュ演出パターンを選択する。」

(8)「【0091】
そして、変動パターンに基づいてプッシュ演出の実行可否を決定し、実行可の場合、プッシュ演出指定コマンド(プッシュ演出パターン)を決定した統括制御用CPU46aは、プッシュ演出指定コマンドを統括制御用RAM46cに一時記憶し、所定のタイミングで演出表示制御基板47及び音声・ランプ制御基板48に出力する。
【0092】
プッシュ演出パターンを決定した統括制御用CPU46aは、当該パターンにしたがって、図柄変動ゲーム中に操作有効期間を設定する。なお、統括制御用CPU46aは、全図柄列の変動中に操作有効期間を設定する。」

(9)「【0098】
そして、統括制御用CPU46aは、操作有効期間が設定されている間、演出用操作ボタン36の操作を有効に設定する。また、演出用操作ボタン36の操作が有効であることを遊技者に報知するために、演出用操作ボタン36のランプの点灯及び非点灯を制御する制御基板に点灯を指示する電気信号を出力し、前記ランプを点灯させる。
【0099】
操作有効期間内において演出用操作ボタン36の操作が実行された場合、統括制御用CPU46aは、ボタン操作コマンドを演出表示制御基板47及び音声・ランプ制御基板48にそれぞれ出力する。そして、統括制御用CPU46aは、予め定めた有効時間が経過した場合、または演出用操作ボタン36が操作された場合、演出用操作ボタン36の操作を無効に設定する。また、演出用操作ボタン36の操作が無効であることを遊技者に報知するために、演出用操作ボタン36のランプの点灯及び非点灯を制御する制御基板に非点灯を指示する電気信号を出力し、前記ランプを非点灯させる。」

(10)「【0103】
一方、演出表示制御基板47の表示制御用CPU47aは、変動パターン指定コマンドとプッシュ演出指定コマンドを入力している場合、各コマンドに指示される変動パターンとプッシュ演出パターンに対応する演出内容を選択し、該演出内容で図柄変動ゲームを行わせるように演出表示装置28の表示内容を制御する。このとき、表示制御用CPU47aは、選択した演出内容をもとに表示制御用ROM47bの画像データを用いて前記演出内容に沿った画像を表示するための表示用データを生成する。例えば、表示制御用CPU47aは、変動パターンP1を指示する変動パターン指定コマンドと「B8H00H」?「B8H02H」を指示するプッシュ演出指定コマンドを入力した場合、2回プッシュ演出の演出内容で図柄変動ゲームを行わせるように演出表示装置28の表示内容を制御する。」

(11)「【0105】
次に、本実施形態でプッシュ演出が実行された場合、表示制御用CPU47aの指示によって演出表示装置28に表示される表示画像を、図7にしたがって説明する。 図7(a)は、表示制御用CPU47aが、プッシュ演出指定コマンドを入力し、プッシュ演出を実行させることを認識した場合、図柄変動ゲームが開始してから所定時間の経過後に表示させる「プッシュ画像」である。この「プッシュ画像」は、遊技者に対して操作有効期間の開始を報知するとともに演出用操作ボタン36の操作を促す画像となる。また、図7(b)は、表示制御用CPU47aが、操作有効期間に演出用操作ボタン36が操作されたことに基づいてボタン操作コマンドを入力した場合に表示させる「カチンコ画像」である。この「カチンコ画像」は、一旦停止状態で表示される飾り図柄の図柄組み合わせの表示領域を覆い隠す割込み画像となる。また、「カチンコ画像」は、図柄変動ゲームの終了時までのゲーム展開を示唆する画像となっている。そして、図7(c)は、表示制御用CPU47aが、操作有効期間にボタン操作コマンドを入力した場合、図7(b)に示す「カチンコ画像」表示後に飾り図柄が一旦停止状態で表示された後、表示させる「キャラクタK登場画像」である。また、図7(d)は、表示制御用CPU47aが、操作有効期間にボタン操作コマンドを入力した場合、図7(c)に示す「キャラクタK登場画像」に続いて表示させる「りぷれい画像」である。この「りぷれい画像」は、一旦停止状態で表示された飾り図柄の全列の図柄組み合わせが再変動することを報知する画像となる。」

(12)「【0132】
表示制御用CPU47aは、プッシュ演出指定コマンドを入力すると、当該プッシュ演出指定コマンドに対応するプッシュ演出パターンから、プッシュ演出の回数(2回か、3回か)と、各回の出目を特定する。そして、図柄変動ゲームを開始させた表示制御用CPU47aは、当該ゲームの開始時からの経過時間を計時し、1回目のプッシュ演出(1回目の操作有効期間)の開始タイミングに達すると、図7(a)に示す「プッシュ画像」を表示させるべく演出表示装置28(画像表示部GH)を制御する。なお、「プッシュ画像」は、演出表示装置28において全ての図柄列が変動している状態で表示される。」

(13)「【0159】
次に、2回プッシュ演出及び3回プッシュ演出の各操作有効期間内に演出用操作ボタン36が操作されなかった場合の表示制御用CPU47aの制御内容を説明する。
表示制御用CPU47aは、2回プッシュ演出の1回目、及び3回プッシュ演出の1回目と2回目にボタン操作コマンドを入力しなかった場合、全図柄列の変動を停止させることなく、図柄の変動を継続させるように演出表示装置28を制御する。すなわち、表示制御用CPU47aは、操作有効期間の開始タイミングが到来する毎に「プッシュ画像」を表示させるが、操作有効期間内にボタン操作コマンドを入力しなかった場合には終了タイミングの到来によって「プッシュ画像」を非表示とし、図柄の変動を継続させる。ボタン操作コマンドを入力しなかった表示制御用CPU47aは、出目パターン及びカチンコ表示パターンを決定しない。」

(14)「【0162】
次に、音声・ランプ制御基板48について説明する。 音声・ランプ制御基板48の音声ランプ制御用CPU48aは、変動パターン指定コマンドを入力し、プッシュ演出指定コマンドを入力していない場合、変動パターン指定コマンドに指示される変動パターンに対応する演出内容をもとに、音声データ及び発光データを選択する。そして、音声ランプ制御用CPU48aは、選択した音声データ及び発光データで音声演出及び発光演出を行わせるように各種ランプ部17?19,27b及びスピーカ20,21,25を制御する。例えば、表示制御用CPU47aは、変動パターンP1を指示する変動パターン指定コマンドを入力した場合、変動パターンP1に対応するノーマルショートリーチの演出内容に沿った音声演出及び発光演出を行わせるように各種ランプ部17?19,27b及びスピーカ20,21,25を制御する。そして、音声ランプ制御用CPU48aは、図柄停止コマンドを入力すると、図柄変動ゲームの終了に伴って音声演出及び発光演出を終了させる。
【0163】
一方、音声ランプ制御用CPU48aは、変動パターン指定コマンドとプッシュ演出指定コマンドを入力している場合、各コマンドに指示される変動パターンとプッシュ演出パターンに対応する演出内容を選択し、演出用操作ボタン36の操作を促す音や、キャラクタKの登場音などに係る音声制御を実行する。また、本実施形態において音声ランプ制御用CPU48aは、演出表示制御基板47で実行される制御内容に連動して音声制御を実行する。つまり、演出表示装置28において、キャラクタKが登場する時にはキャラクタKの「登場音」を出し、「りぷれい」というメッセージが表示された時には、「りぷれい」という音声を出力するための音声データを音声ランプ制御用ROM48bから選択し、その音声データをもとにスピーカ20,21,25から音声を出力させる。」

(15)「【0165】
図11(a)は、プッシュ演出における音声制御のベースとなるベーステーブルを示す。 このテーブルは、プッシュ演出パターンの変動内容として、「楽曲1」をテーマとするスーパーリーチ演出と、3回プッシュ演出を行うはずれリーチ演出が対応付けられている場合に選択されるテーブルである。なお、音声ランプ制御用ROM48bには、プッシュ演出を行う変動パターン毎に、図11(a)に示すベーステーブルと同等のテーブルが記憶されている。
【0166】
ベーステーブルには、図柄変動ゲームの開始時(0(frm)目)に、「通常背景音」を出力するように設定されている。また、ベーステーブルには、図柄変動ゲームの開始から42(frm)目に、「プッシュ画像」を表示している時に出力される音声となる「プッシュ背景音」を出力するように設定されている。また、ベーステーブルには、図柄変動ゲームが開始してから212(frm)目に、1回目の操作有効期間で演出用操作ボタン36が操作されたか否かを判定する「プッシュリプレイ1回目」の判定を行うように設定されている。また、ベーステーブルには、図柄変動ゲームが開始してから542(frm)目に、2回目の操作有効期間で演出用操作ボタン36が操作されたか否かを判定する「プッシュリプレイ2回目」の判定を行うように設定されている。また、ベーステーブルには、図柄変動ゲームが開始してから821(frm)目に、「楽曲1」をテーマとするスーパーリーチ演出の開始を報知する音声(例えば、「楽曲1」のタイトルコール)となる「楽曲1」リーチ選択音を出力するように設定されている。また、ベーステーブルには、図柄変動ゲームが開始してから984(frm)目に、ショートリーチ中の音声となる「楽曲1」ショートはずれ音を出力し、1335(frm)目に、「楽曲1」のはずれ停止音を出力するように設定されている。
【0167】
図11(b)は、プッシュ演出指定コマンドを入力したことに伴って、操作有効期間の開始時にボタン表示音を出力し、操作有効期間の終了時にボタン表示音を停止する場合に、音声ランプ制御用CPU48aが参照するプッシュ基本テーブル1を示す。」

(16)「【0173】
音声ランプ制御用CPU48aは、変動パターンP5を指示する変動パターン指定コマンドとプッシュ演出指定コマンド「B8H12H」?「B8H16H」 を入力すると、図11(a)に示すベーステーブルを選択する。そして、音声ランプ制御用CPU48aは、図11(a)に示すベーステーブルにしたがって、図柄変動ゲームの開始時に「通常背景音」を出力させるべく各スピーカ20,21,25を制御する。音声ランプ制御用CPU48aは、図柄変動ゲームの開始に伴って該ゲームの開始からの経過時間を計時する。続いて、音声ランプ制御用CPU48aは、ベーステーブルにしたがって、図柄変動ゲームが開始してから1回目の操作有効期間が設定される42(frm)目に、「プッシュ背景音」を出力させるべく図11(b)に示すプッシュ基本テーブル1を選択する。そして、音声ランプ制御用CPU48aは、プッシュ基本テーブル1にしたがって、1回目の操作有効期間の開始に伴って「ボタン表示音」を出力させるべく各スピーカ20,21,25を制御する。1回目の操作有効期間が設定されると、音声ランプ制御用CPU48aは、ボタン操作コマンドを入力したか否かを判定し、ボタン操作コマンドを入力した場合には図11(e)に示すカチンコ音テーブルにしたがって「カチンコ音」を出力させるべく各スピーカ20,21,25を制御する。」

(17)【0074】には「統括制御統括制御用CPU46aは、・・・プッシュ演出の実行可(実行すること)を決定し、・・・プッシュ演出の実行可を決定した統括制御用CPU46aは、具体的なプッシュ演出の内容を示す設定パターンとしてのプッシュ演出パターンを選択する」と、【0091】には「プッシュ演出の実行可否を決定し、実行可の場合、プッシュ演出指定コマンド(プッシュ演出パターン)を決定した統括制御用CPU46aは、プッシュ演出指定コマンドを・・・所定のタイミングで演出表示制御基板47及び音声・ランプ制御基板48に出力する」と、それぞれ、記載されている。
また、【0103】には「演出表示制御基板47の表示制御用CPU47aは、・・・プッシュ演出指定コマンドを入力している場合、・・・プッシュ演出パターンに対応する演出内容を選択し、該演出内容で図柄変動ゲームを行わせるように演出表示装置28の表示内容を制御する」と記載されている。
さらに、【0162】、【0163】には「音声・ランプ制御基板48の・・・音声ランプ制御用CPU48aは、・・・プッシュ演出指定コマンドを入力している場合、・・・プッシュ演出パターンに対応する演出内容を選択し、演出用操作ボタン36の操作を促す音や、キャラクタKの登場音などに係る音声制御を実行する」と記載されている。
これらの記載からみて、引用文献1には、「プッシュ演出を実行することを決定し具体的なプッシュ演出の内容を示す設定パターンとしてのプッシュ演出パターンを選択する統括制御用CPU46a、プッシュ演出パターンに対応する演出内容で演出表示装置28の表示内容を制御する表示制御用CPU47a、及びプッシュ演出パターンに対応する演出内容で音声制御を実行する音声ランプ制御用CPU48a」が示されていると認められる。

上記(1)?(17)の記載事項及び認定事項からみて、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている(a?hは、本願発明の分説に対応させて当審で付した。)。

「a 上始動入賞口33又は下始動入賞口34へ遊技球が入球し、該遊技球を検知した始動口スイッチSW1,SW2が出力する検知信号を入力すると、大当り判定用乱数の値を主制御用RAM45cから取得し、その取得した大当り判定用乱数の値を主制御用RAM45cの所定の記憶領域に格納し、図柄変動ゲームの開始直前に、主制御用RAM45cの所定の記憶領域に格納した大当り判定用乱数の値を読み出し、その読み出した大当り判定用乱数の値と主制御用ROM45bに記憶されている大当り判定値とを比較し、大当りか否かの大当り判定を行う主制御用CPU45aと(【0064】、【0065】)、
b 大当り抽選の抽選結果に基づき、複数列の図柄列を変動させて行う図柄変動ゲームが画像表示される演出表示装置28と(【0020】、【0022】)、
c 遊技者が操作可能な演出用操作ボタン36と(【0036】)、
d?f 演出用操作ボタン36の操作が有効とされた操作有効期間において演出用操作ボタン36の操作が行われた場合に演出表示装置28にて表示される飾り図柄の変動を停止させる演出であるプッシュ演出を実行することを決定し具体的なプッシュ演出の内容を示す設定パターンとしてのプッシュ演出パターンを選択する統括制御用CPU46a、プッシュ演出パターンに対応する演出内容で演出表示装置28の表示内容を制御する表示制御用CPU47a、及びプッシュ演出パターンに対応する演出内容で音声制御を実行する音声ランプ制御用CPU48aと(【0041】、【0105】、認定事項(17))、を備え、
統括制御用CPU46aは、演出用操作ボタン36の操作が有効とされる操作有効期間を設定し、操作有効期間が設定されている間、演出用操作ボタン36の操作を有効に設定し、操作有効期間内において演出用操作ボタン36の操作が実行された場合、ボタン操作コマンドを演出表示制御基板47及び音声・ランプ制御基板48にそれぞれ出力し、予め定めた有効時間が経過した場合、または演出用操作ボタン36が操作された場合、演出用操作ボタン36の操作を無効に設定し(【0041】、【0092】、【0098】、【0099】)、
表示制御用CPU47aは、遊技者に対して操作有効期間の開始を報知するとともに演出用操作ボタン36の操作を促す画像である「プッシュ画像」を表示させ、操作有効期間内にボタン操作コマンドを入力しなかった場合には終了タイミングの到来によって「プッシュ画像」を非表示とし(【0105】、【0159】)、
音声ランプ制御用CPU48aは、「プッシュ画像」を表示している時に出力される音声となる「プッシュ背景音」を出力させるべくプッシュ基本テーブル1にしたがって、操作有効期間の開始時にボタン表示音を出力し、操作有効期間の終了時にボタン表示音を停止し(【0166】、【0167】、【0173】)、
g 音声ランプ制御用CPU48aは、図柄変動ゲームの開始時に、「通常背景音」を出力させるべく各スピーカ20,21,25を制御し、図柄変動ゲームが開始して1回目の操作有効期間が設定される42(frm)目に、「プッシュ画像」を表示している時に出力される音声となる「プッシュ背景音」を出力させるべく選択したプッシュ基本テーブル1にしたがって、「ボタン表示音」を出力させるべく各スピーカ20,21,25を制御し、表示制御用CPU47aは、1回目の操作有効期間の開始タイミングに達すると、演出表示装置28に「プッシュ画像」を表示させる(【0132】、【0166】、【0173】)
h パチンコ遊技機10(【0014】)。」

2 引用文献5の記載事項
引用文献5には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1)「【0014】
図1に示すように、パチンコ遊技機1は、木製の外枠2の前面に矩形状の前面枠3を開閉可能に取り付け、その前面枠3の裏面に取り付けられている遊技盤収納フレーム(図示せず)内に遊技盤4を装着された構成からなる。遊技盤4は、図2に示す遊技領域40を前面に臨ませた状態で装着され、図1に示すようにこの遊技領域40の前側に透明ガラスを支持したガラス扉枠5が設けられている。なお、上記遊技領域40は、遊技盤4の面上に配設された球誘導レール6(図2参照)で囲まれた領域からなるものである。」

(2)「【0038】
すなわち、図6に示すタイムチャートは、変動開始から予告演出が発生し、そして、その予告演出が終了するまでの遊技状態を示している。図6に示すように、タイミングT1時に変動開始の遊技状態となると、演出制御基板80は、主制御基板60より送信される変動開始の情報を含む演出制御コマンドDI_DATAを受信する。これを受けて、演出制御CPU800は、演出制御ROM801内に予め格納しておいた多数の演出パターンの中から抽選により演出パターンを決定する。そして、演出制御CPU800は、その決定した演出パターンに対応した変動用BGMを決定する。これにより、演出制御CPU800は、当該変動用BGMを再生する制御信号を音LSI802に送信する。そしてこれを受けて音LSI802は、チャンネル番号「0」を指定し、音ROM803に格納されている音データテーブルVM_TBLより変動用BGMを読み出し、この変動用BGMを最初から再生する。そして、その再生している変動用BGMを音源データAMOR/Lとしてスピーカ16に送信する。これにより、スピーカ16より、当該変動用BGMが発せられることとなる。
【0039】
その後、タイミングT2時に予告演出発生の遊技状態となると、演出制御基板80(すなわち、演出制御CPU800)は、変動開始時(タイミングT1参照)に主制御基板60より送信された演出制御コマンドDI_DATAに基づいて、演出制御ROM801内に予め格納しておいた多数の演出パターンの中から抽選により決定した演出パターンに対応した予告用BGM/効果音を決定する。これにより、演出制御CPU800は、当該予告用BGM/効果音を再生する制御信号を音LSI802に送信すると共に、現在再生している変動用BGMの音量を、当該変動用BGMが認識困難な状態(例えば、最小、すなわち、OFF)にする制御信号を音LSI802に送信する。これを受けて音LSI802は、チャンネル番号「1」を指定し、音ROM803に格納されている音データテーブルVM_TBLより予告用BGM/効果音を読み出し、この予告用BGM/効果音を再生し、音源データAMOR/Lとしてスピーカ16に送信する。そしてそれと共に、現在再生している変動用BGMの音量を、当該変動用BGMが認識困難な状態(例えば、最小、すなわち、OFF)にする。これにより、スピーカ16からは、予告用BGM/効果音が発せられることとなる。なお、認識困難な音量にした変動用BGMの再生は継続されている。」

上記(1)、(2)の記載事項からみて、引用文献5には、以下の事項(以下「引用文献5記載の事項」という。)が記載されている(g、hは、本願発明の分説に対応させて当審で付した。)。

「g 変動開始の遊技状態になると、スピーカ16より、当該変動用BGMが発せられ、その後、予告演出発生の遊技状態となると、現在再生している変動用BGMの音量をOFFにし、スピーカ16から予告用BGM/効果音が発せられる
h パチンコ遊技機1。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。なお、見出しは(a)?(h)とし、本願発明、引用発明の分説に対応させている。

(a)引用発明の「図柄変動ゲームの開始」は、本願発明の「所定条件の成立」に相当し、引用発明の「読み出した大当り判定用乱数の値と主制御用ROM45bに記憶されている大当り判定値とを比較し、大当りか否かの大当り判定を行う」ことは、本願発明の「当り抽選を行う」ことに相当する。
よって、引用発明の構成aの「主制御用CPU45a」は、本願発明の構成Aの「抽選手段」の機能を有するものである。

(b)引用発明の「大当り抽選の抽選結果」は、本願発明の「前記抽選手段での抽選結果」に相当し、引用発明の「複数の図柄列を変動させて行う図柄変動ゲームが画像表示される」ことは、本願発明の「複数の図柄を変動表示可能」なことに相当する。
よって、引用発明の構成bの「演出表示装置28」は、本願発明の構成Bの「表示手段」に相当する。

(c)引用発明の「演出用操作ボタン36」は、本願発明の「遊技者が操作可能な」「操作手段」に相当する。
よって、引用発明の構成cは、本願発明の構成Cに相当する。

(d)引用発明の「演出用操作ボタン36の操作が行われた」ときの「演出」である「プッシュ演出」は、本願発明の「操作手段に関連する」「操作演出」に相当する。
また、引用発明の「プッシュ演出」は、「統括制御用CPU46a」によって「実行すること」が「決定」され、「選択」された「プッシュ演出パターンに対応する演出内容」で「表示制御用CPU47a」が「演出表示装置28の表示内容を制御」し、「音声ランプ制御用CPU48a」が「音声制御を実行する」ことから、引用発明の「プッシュ演出」は、「統括制御用CPU46a」、「表示制御用CPU47a」及び「音声ランプ制御用CPU48a」によって実行されているといえる。
よって、引用発明の「表示制御用CPU47a」及び「音声ランプ制御用CPU48a」は、本願発明の構成Dの「操作演出実行手段」の機能を有するものである。

(e)引用発明の「演出用操作ボタン36の操作が有効とされる操作有効期間」は、「操作有効期間内において演出用操作ボタン36の操作が実行された場合、ボタン操作コマンド」が「演出表示制御基板47及び音声・ランプ制御基板48にそれぞれ出力」されるのであるから、本願発明の「前記操作手段の」「操作検出が有効な検出有効状態」に相当し、引用発明の「演出用操作ボタン36の操作」を「無効に設定」することは、本願発明の「前記操作手段の操作検出が無効な検出無効状態」にすることに相当する。
また、引用発明の「統括制御用CPU46a」が、「演出用操作ボタン36の操作を有効に設定」することと「無効に設定」することは、「演出用操作ボタン36の操作」の「有効」と「無効」とを切り換えているといえる。
よって、引用発明の「統括制御用CPU46a」は、本願発明の構成Eの「切換手段」の機能を有するものである。

(f)上記(d)より、引用発明の「プッシュ演出」は、本願発明の「操作演出」に相当し、引用発明の「表示制御用CPU47a」、及び「音声ランプ制御用CPU48a」は、本願発明の「操作演出実行手段」の機能を有するものである。
そして、引用発明の「「プッシュ画像」」は、「遊技者に対して操作有効期間の開始を報知するとともに演出用操作ボタン36の操作を促す画像」であり、「操作有効期間内にボタン操作コマンドを入力しなかった場合には終了タイミングの到来によって」「非表示」とされるものであるから、本願発明の「前記検出有効状態中に、遊技者に対して前記操作手段の操作を促すための」「操作報知画像」に相当し、引用発明の「表示制御用CPU47a」は、本願発明の「操作報知手段」の機能を備える。
また、引用発明の「「プッシュ背景音」」は、「「プッシュ画像」」を表示している時に出力される音声」であり、「操作有効期間の開始時に」「出力し、操作有効期間の終了時に」「停止する」「ボタン表示音」であるから、本願発明の「前記操作報知画像に対応する」「操作報知音」に相当し、引用発明の「音声ランプ制御用CPU48a」は、本願発明の「操作報知音出力手段」の機能を備える。
よって、引用発明は、本願発明の構成Fと「前記操作演出実行手段は」、「前記検出有効状態中に、遊技者に対して前記操作手段の操作を促すための操作報知画像を表示可能な操作報知手段と、前記操作報知画像に対応する操作報知音を出力する操作報知音出力手段」で構成されていて「操作演出を実行」することで共通する。

(g)上記(f)より、引用発明の「「プッシュ画像」」及び「「プッシュ背景音」」は、本願発明の「操作報知画像」及び「操作報知音」に、それぞれ、相当するから、引用発明の「「プッシュ背景音」」が出力されるとともに、「「プッシュ画像」」が表示される「図柄変動ゲームが開始して1回目の操作有効期間が設定される42(frm)目」は、本願発明の「前記操作報知画像の表示と前記操作報知音の出力を開始するタイミング」に相当する。
また、引用発明の「「プッシュ背景音」」は、プッシュ演出において出力される音声であり、本願発明の「操作報知音」に相当するから、「操作演出」の「音声」といえる。一方、引用発明の「「通常背景音」」は、「図柄変動ゲームの開始時」に出力されるものであるから、本願発明の「操作演出以外の演出の音声」に相当する。

(h)引用発明の「パチンコ遊技機10」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、

「A 所定条件の成立を契機に当り抽選を行う抽選手段と、
B 前記抽選手段での抽選結果に基づいて複数の図柄を変動表示可能な表示手段と、
C 遊技者が操作可能な操作手段と、
D 前記操作手段に関連する操作演出を実行可能な操作演出実行手段と、
E 前記操作手段の操作検出が無効な検出無効状態と、操作検出が有効な検出有効状態とに切り換え可能な切換手段と、を備え、
F’前記操作演出実行手段は、
前記検出有効状態中に、遊技者に対して前記操作手段の操作を促すための操作報知画像を表示可能な操作報知手段と、
前記操作報知画像に対応する操作報知音を出力する操作報知音出力手段と、
で構成され、前記操作演出を実行する
H 遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1](構成F)
本願発明は、「操作演出実行手段」が、
「前記検出無効状態中に、遊技者に対して前記検出有効状態への切り換えを示唆する誘導報知画像を表示可能な誘導報知手段と、
前記誘導報知画像に対応する誘導報知音を出力する誘導報知音出力手段」をも備えるのに対し、
引用発明は、本願発明の、「誘導報知手段」と「誘導報知音出力手段」に対応する構成を備えていない点。

[相違点2](構成G)
本願発明の操作演出実行手段は、前記操作演出を実行する場合に、前記誘導報知画像の表示と前記誘導報知音の出力を開始し、その後、前記操作報知画像の表示と前記操作報知音の出力を開始するのに対し、
引用発明はこのような構成を備えていない点。

[相違点3](構成G)
本願発明の操作演出実行手段は、前記操作報知画像の表示と前記操作報知音の出力を開始するタイミングで、前記操作演出以外の演出の音声の出力を消音にするのに対し、
引用発明はこのような構成を備えていない点。

第6 判断
1 相違点について
上記相違点について検討する。

(1)相違点1及び相違点2について
相違点1及び相違点2は、いずれも、誘導報知画像の表示と誘導報知音の出力に関する点で共通するのでまとめて検討する。

操作手段に関連する操作演出を実行可能な遊技機の技術分野において、検出無効状態中に、遊技者に対して検出有効状態への切り換えを示唆する誘導報知画像を表示可能な誘導報知手段を備えること(構成F)、及び、操作演出を実行する場合に、誘導報知画像の表示を開始し、その後、操作報知画像の表示を開始すること(構成G)は、周知技術(以下「周知技術1」という。)である(例えば、引用文献2には、演出ボタン17による遊技者の操作が可能になる所定時間前に演出ボタン予告画像としてフェードイン画像F3(「誘導報知画像」に相当。)を液晶表示装置13に表示し、演出ボタン17の操作が有効となる所定期間が開始するタイミングになったら演出ボタン画像B1(「操作報知画像」に相当。)を表示する遊技機1(【0029】、【0096】、【0097】、図9、図10)が、引用文献3には、自転車に跨がっているキャラクタが驚いている様子を示す示唆演出画像(「誘導報知画像」に相当。)が表示され、自転車がジャンプ台に乗り上げているときにボタン画像が表示され(「操作報知画像」に相当。)、自転車がジャンプ台に接していると共にこのボタン画像が表示されている期間が第2の有効期間となるパチンコ遊技機1(【0013】、【0093】、【0094】、図10)が、引用文献4には、プッシュボタン31Bに対する指示操作を促す画像(「誘導報知画像」に相当。)を表示する操作促進演出を行い、その後、演出画像(「操作報知画像」に相当。)が表示されるとともに、プッシュボタン31Bに対する指示操作を有効に検出するプッシュボタン有効検出期間となるパチンコ遊技機1(【0015】、【0440】、図54)が、それぞれ、記載されている。)。

また、操作手段に関連する操作演出を実行可能な遊技機の技術分野において、検出無効状態中に、遊技者に対して検出有効状態への切り換えを示唆する誘導報知画像を表示可能な誘導報知手段を備えること(構成F)及び操作演出を実行する場合に、誘導報知画像の表示を開始し、その後、操作報知画像の表示を開始すること(構成G)に加え、さらに、誘導報知画像に対応する誘導報知音を出力する誘導報知音出力手段を備えること(構成F)も、周知技術(以下「周知技術2」という。)である(例えば、特開2013-90805号公報には、識別図柄の全面に「CHANCE」の文字の表示(「誘導報知画像」に相当。)が出現すると同時に、スピーカ30a、30bからは効果音(「誘導報知音」に相当。)が出力され、その後、遊技者に演出ボタン31の操作を促す報知(「操作報知画像」に相当。)を行い、この場合の演出ボタン31の操作は、報知メッセージが出現した時点から、所定時間に限り操作が可能となり、このとき、報知メッセージ内の残り時間の秒数の表示が変化するタイミングで効果音が出力される遊技機1(【0012】、【0172】、【0266】?【0269】、図28(I)、図28(J))が、特開2015-19985号公報には、画像表示部114に、演出ボタン161を模した画像を表示するとともに、演出ボタン161の操作を促すメッセージを表示(「誘導報知画像」に相当。)し、さらに、画像表示部114における操作を促す画像の表示タイミングに合わせて、演出ボタン161の操作の受け付けが可能となることを示唆する音(「誘導報知音」に相当。)を出力し、遊技者の操作を促し、その後、画像表示部114に表示されるルーレット(「操作報知画像」に相当。)の回転を開始させて、演出ボタン161の操作が行われた際に操作音を出力するパチンコ遊技機100(【0011】、【0158】、図27)が、特開2013-22077号公報には、キャラクタ画像の下方に、押しボタン部材550の連打を促すメッセージ(「誘導報知画像」に相当。)が表示され、これに併せてスピーカ部27からは、同様の操作を促す音声(「誘導報知音」に相当。)が出力され、その後、連発操作の有効期間内にて、遊技者による押しボタン部材の押圧操作が繰り返されることで、表示画面94aの下部にメッセージの代わりに出現した操作受付回数表示画像(「操作報知画像」に相当。)等が変更され、押しボタン部材550の操作が行われた場合には、スピーカ部27から操作を受け付けた旨を示唆する効果音が出力されるパチンコ機10(【0012】、【0708】?【0711】、【0739】、【0740】、図51)が、それぞれ、記載されている。)。

周知技術1は、誘導報知画像について示されるものであるが、誘導報知音については言及されていない。しかしながら、遊技機における演出は、画像等の表示、音声の出力、LEDの発光等を組み合わせて行うものであり、周知技術1の遊技機の演出においても、画像等の表示に加え、その表示に対応する音声を出力するものと考えられる。しかも、この点は、周知技術2において示されているものである。
そして、引用発明、周知技術1及び周知技術2は、いずれも、操作手段に関連する操作演出を実行可能な遊技機であり、検出有効状態中に、遊技者に対して操作手段の操作を促すための操作報知画像を表示可能な操作報知手段を備える点で共通するから、引用発明に周知技術1及び周知技術2を適用して、引用発明の、表示制御用CPU47aにより、遊技者に対して操作有効期間の開始を報知するとともに演出用操作ボタン36の操作を促す画像である「プッシュ画像」を表示させ、音声ランプ制御用CPU48aにより、「プッシュ画像」を表示している時に出力される音声となる「プッシュ背景音」を出力させる構成(構成f)に加え、検出無効状態中に、遊技者に対して前記検出有効状態への切り換えを示唆する誘導報知画像を表示可能な誘導報知手段と、前記誘導報知画像に対応する誘導報知音を出力する誘導報知音出力手段とを備えるようにし、誘導報知画像の表示と誘導報知音の出力を開始し、その後、音声ランプ制御用CPU48aは、図柄変動ゲームが開始して1回目の操作有効期間が設定される42(frm)目に、「プッシュ画像」を表示している時に出力される音声となる「プッシュ背景音」を出力させるべく選択したプッシュ基本テーブル1にしたがって、「ボタン表示音」を出力させるべく各スピーカ20,21,25を制御し、表示制御用CPU47aは、1回目の操作有効期間の開始タイミングに達すると、演出表示装置28に「プッシュ画像」を表示させる(構成g)ようにして、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点3について
上記「第5 対比 (g)」にて検討したとおり、引用発明の「「プッシュ背景音」」及び「「通常背景音」」は、それぞれ、本願発明における「操作演出」の「音声」及び「操作演出以外の演出の音声」である。
また、引用文献1の【0166】には、「ベーステーブルには、図柄変動ゲームの開始時(0(frm)目)に、「通常背景音」を出力するように設定されている。また、ベーステーブルには、図柄変動ゲームの開始から42(frm)目に、「プッシュ画像」を表示している時に出力される音声となる「プッシュ背景音」を出力するように設定されている。」と記載されている。
さらに、引用文献1の【0173】には、「音声ランプ制御用CPU48aは、図11(a)に示すベーステーブルにしたがって、図柄変動ゲームの開始時に「通常背景音」を出力させるべく各スピーカ20,21,25を制御する。音声ランプ制御用CPU48aは、図柄変動ゲームの開始に伴って該ゲームの開始からの経過時間を計時する。続いて、音声ランプ制御用CPU48aは、ベーステーブルにしたがって、図柄変動ゲームが開始してから1回目の操作有効期間が設定される42(frm)目に、「プッシュ背景音」を出力させるべく図11(b)に示すプッシュ基本テーブル1を選択する。そして、音声ランプ制御用CPU48aは、プッシュ基本テーブル1にしたがって、1回目の操作有効期間の開始に伴って「ボタン表示音」を出力させるべく各スピーカ20,21,25を制御する。」と記載されている。
これらの記載の、「プッシュ背景音」及び「通常背景音」は、いずれもスピーカ20,21,25から出力されていること、及び、ベーステーブルには、0(frm)目に「通常背景音」を出力するように設定され、42(frm)目に、「プッシュ背景音」を出力するように設定され、さらに、「プッシュ背景音」はプッシュ基本テーブル1を参照して出力されることからみて、「プッシュ背景音」は、「通常背景音」の出力から切り換えて出力されるものと認められる。
よって、引用発明は「プッシュ背景音」を出力するタイミング、すなわち、「プッシュ背景音」を出力し「プッシュ画像」を表示するときに、「通常背景音」の出力を消音にするという、上記相違点3に係る本願発明の構成を備えるものであり、上記相違点3は、実質的な相違点ではない。

(3)よって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)仮に、上記相違点3が実質的な相違点であったとしても、つまり、引用発明において、「プッシュ背景音」を出力するタイミングで、「通常背景音」の出力を消音にしていなかったとしても、引用文献5記載の事項には、変動開始の遊技状態になると、スピーカ16より、当該変動用BGMが発せられ、その後、予告演出発生の遊技状態となると、現在再生している変動用BGMの音量をOFFにし、スピーカ16から予告用BGM/効果音が発せられるパチンコ遊技機1が記載されており、引用発明も引用文献5記載の事項も、変動開始後に他の演出が発生する点で共通し、さらに、演出が切り換わるタイミングで音声の出力の態様を変更することは、周知技術2においても示されるところであるから、引用発明に引用文献5記載の事項を適用して、「プッシュ背景音」を出力するタイミングで音声の出力の態様を変更し、「通常背景音」の出力を消音することは、当業者が容易になし得たことである。
よって、本願発明は、引用発明、周知技術1、周知技術2及び引用文献5記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

2 請求人の主張について
請求人は、令和2年8月6日提出の意見書において「ここで、誘導報知画像(前半)と操作報知画像(後半)を組み合わせた演出であれば、操作演出の開始時点は当然に誘導報知演出の開始のタイミングになるはずである。故に、審判官殿の先の認定は、「操作報知画像からなる操作演出の開始時に、当該操作演出に関連しない音声を消音にする遊技機」に対して、「誘導報知画像を有する操作演出を実行可能な遊技機」を付加したに過ぎないのであるから、上記相違点に係る消音のタイミングを想定するのは困難である。
誘導報知画像による演出と操作報知画像による演出とが何ら関連のない演出であれば、先の認定も認めざるを得ない。この点、誘導報知画像は、これから操作手段の操作が有効になることを示唆する画像であり、その後に表示される操作報知画像は、操作有効期間中に操作手段の操作を促す画像である。よって、両者は、共に操作演出を構成する、しかも明らかに関連性の高い要素である。従って、操作演出について、誘導報知画像の表示から操作報知画像の表示に移行する一連の演出と考えるのは、当業者であれば極めて自然な発想である。
その場合、引用発明に、引用文献5のような「一方の演出の開始から、他方の演出の音声を消音にする」文献を組み合わせたとしても、一連の操作演出の開始時に消音を開始するという技術思想しか生まれない。
すなわち、上記引用文献を組み合わせでは、当業者が、本願発明の「一連の操作演出の途中で、さらに操作手段の操作が無効から有効になるタイミングで消音を開始する」という技術思想に想到し得ないことは明らかである。
よって、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。」と述べている。
しかしながら、引用発明も、図柄変動ゲームの開始時に、「通常背景音」を出力し、「1回目の操作有効期間が設定される」タイミングで「プッシュ背景音」を出力するものであるから、演出用操作ボタン36の操作有効期間の開始タイミングでプッシュ演出以外の音声を消音するものであり、引用発明に周知技術1及び周知技術2を適用して、誘導報知画像の表示からの一連の操作演出を構成するものになったとしても、プッシュ演出以外の音声を消音するのは、操作有効期間の開始タイミングであることに変わりはなく、また、引用発明が、演出用操作ボタン36の操作有効期間の開始タイミングでプッシュ演出以外の音声を消音するものでなかったとしても、引用発明に、周知技術1及び周知技術2、及び引用文献5記載の事項を適用して、演出用操作ボタン36の操作有効期間の開始タイミングでプッシュ演出以外の音声を消音するようにすることは、当業者が容易になし得たことであるから、「一連の操作演出の途中で、さらに操作手段の操作が無効から有効になるタイミングで消音を開始する」という技術思想に想到し得ないという、請求人の主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、または、引用文献1に記載された発明、周知技術1、周知技術2及び引用文献5記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-11-04 
結審通知日 2020-11-10 
審決日 2020-11-24 
出願番号 特願2015-118902(P2015-118902)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞壁 隆一  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 蔵野 いづみ
鉄 豊郎
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所  

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