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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47K |
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管理番号 | 1370672 |
審判番号 | 不服2020-5806 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-04-28 |
確定日 | 2021-02-16 |
事件の表示 | 特願2015-160044「トイレットペーパー」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-179162、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年8月14日の出願(優先権主張平成27年3月24日)であって、令和1年5月28日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月2日に手続補正がされ、令和2年1月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.国際公開第2014/155456号 2.特開2006-42881号公報 第3 本願発明、本願明細書の記載事項 1 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年4月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも2枚の原紙が重ね合わされ、カルボキシメチルセルロースを含む接着剤にて接着されてなるトイレットペーパーであって、 前記接着剤にはアニオン系サイズ剤が1シート当たりの乾燥重量で0.005g/m^(2)以上0.1g/m^(2)以下含まれ、 前記2枚の原紙は、接触部の面積率が4%以上7%以下であり、 前記接触部は、前記原紙の少なくとも1枚に設けられたエンボスの頂部であり、 前記エンボスの頂部は、面積が0.5mm^(2)以上5.0mm^(2)以下、高さが0.5mm以上1.5mm以下であることを特徴とするトイレットペーパー。」 2 本願明細書の記載事項 本願明細書には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。 )。 (1)「【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0007】 本発明の目的は、手触り感や吸水性を損なうことなく水が裏抜けし難い、洗浄装置付き水洗トイレに適したトイレットペーパーを提供することである。」 (2)「【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、アニオン性であるカルボキシメチルセルロースの溶液にサイズ剤を付与してトイレットペーパーに塗布することが出来るため、手触り感や吸水性を損なうことなく水が裏抜けし難い、洗浄装置付き水洗トイレに適したトイレットペーパーが得られる。」 (3)「【発明を実施するための形態】 ・・・ 【0014】 トイレットペーパーは、一定幅の帯状ペーパーがロール状に巻かれた状態となっており、ペーパーホルダーに取り付けられて使用される。 トイレットペーパーには、1枚の原紙から構成される1プライペーパー、2枚の原紙が積層されてなる2プライペーパーの他、3プライ以上のものもある。本実施形態では2プライ以上のトイレットペーパーについて説明する。なお、本実施形態での1シートのトイレットペーパーとは、2プライの場合は2枚の原紙で構成されたもの、3プライの場合は3枚の原紙で構成されたものとする。 ・・・ 【0020】 本実施形態に係るトイレットペーパーを構成する原紙は、従来の湿式方法により製造されるものである。即ち、原紙は、原料から繊維(原料パルプ)の懸濁液である紙料を調整する紙料調整工程と、紙料から繊維を抄いて繊維ウェブを形成し、当該形成した繊維ウェブを搬送しながら乾燥する抄紙工程と、を経て製造される。そして、抄造された原紙を巻き取ることで、一次原反ロールが製造される。トイレットペーパーは、一次原反ロールから引き出された原紙に対してエンボスを付与するエンボス加工工程等を経て、最後に巻取り軸に巻き取られることにより製造される。 【0021】 <トイレットペーパーの製造方法> (第1の製造方法) 第1の製造方法で用いるトイレットペーパー製造装置100は、例えば図1(a)に示すように、第1の原紙1にエンボスを施す第1ユニット100aと、第1の原紙1にカルボキシメチルセルロースを含む接着剤2を塗布した後、第1の原紙1に第2の原紙3を貼り合わせる第2ユニット100bとを備えている。 第1ユニット100aは、外周面に複数の凸部21aが設けられているエンボスロール21と、エンボスロール21に対向配置された受けロール22等を備えている。 第2ユニット100bは、カルボキシメチルセルロースを含む接着剤2が貯留されるタンク23と、タンク23内の接着剤2を転写ロール26に供給するアニロックスロール24と、転写ロール26の下流側に第2の原紙3を送り込む搬送ロール27と、乾燥用ヒーター25等を備えている。 なお、カルボキシメチルセルロースを含む接着剤2には、アニオン系サイズ剤が添加されている。サイズ剤は、水の浸透を防ぐ機能(サイズ性)を紙に付与するために使用される薬剤である。具体的なアニオン系サイズ剤としては、スチレン樹脂、アクリル樹脂、アニオン性ロジン、アルキルケテンダイマーなどが例示できる。 【0022】 第1の製造方法は、エンボスロール21によって第1の原紙1の一方の面1aが他方の面1bから押し出された形状の複数のエンボスを形成する工程と、第1の原紙1に形成したエンボスにおける一方の面1aに接着剤2を塗布する工程と、接着剤2を塗布した第1の原紙1の一方の面1a側に第2の原紙3を重ねて接着する工程とにより、トイレットペーパー10を製造する方法である。 具体的には、エンボスロール21と受けロール22の間を通す第1の原紙1に、例えば0.05MPa?0.4MPaの圧力を加えることで、第1の原紙1の一方の面1a(表面1a)が他方の面1b(裏面1b)から押し出されて隆起したエンボス加工を施した後、原紙1に施したエンボス部分の一方の面1a(表面1a)に転写ロール26によって接着剤2を塗布し、その接着剤2が塗布された第1の原紙1の一方の面1a側に第2の原紙3を貼り合わせるようになっている。 ・・・ 【0025】 第1ユニット100aでエンボスが施された第1の原紙1が第2ユニット100bに到達すると、第1の原紙1に施されたエンボス部分の一方の面1a(表面1a)に転写ロール26によって接着剤2が塗布される。接着剤2は第1の原紙1の表面1aに点在するように付けられている。なお、トイレットペーパー10となる第1の原紙1に塗布された接着剤2の面積率は4%以上7%以下である。なお、原紙に塗布される接着剤2の面積率が7%を超えると接着過剰となり、紙が固くなることで柔らかさが損なわれるため、好ましくない。また、好適なエンボス態様としては、エンボス凸部の面積が0.5mm^(2)?5.0mm^(2)であり、そのエンボス高さが0.5?1.5mmであることが望ましい。個々のエンボス凸部面積が0.5mm^(2)未満であった場合、接着剤2の付与が十分ではなく、プライ剥離しやすくなるとともに、付与されるサイズ剤の量を十分なものとすることが困難になる。反対に、凸部の面積が5.0mm^(2)を超えた場合、接着過剰となって、紙の柔らかさが損なわれる。また、エンボス高さが0.5mm未満であった場合、トイレットペーパーとして必要な紙の嵩高さが発現し難くなる。他方、エンボス高さが1.5mmを超えた場合、ロール状に巻き取った際、エンボス部分の潰れを引き起こすため、好ましくない。また、エンボス凸部は紙表面にムラ無く配置されるようにするのが望ましい。紙面全体でサイズ剤による効果を発揮できるようになる。 そして、エンボスが形成されてエンボス頂部に接着剤2が塗布された第1の原紙1は搬送経路下流側に送られ、搬送ロール27によって経路に送り込まれた第2の原紙3と重ね合わされる。 接着剤2を介して重ねられた第1の原紙1と第2の原紙3は、さらに搬送経路下流側に送られ、第1の原紙1と第2の原紙3の間の接着剤2が乾燥用ヒーター25によって乾燥される。 【0026】 こうして、少なくとも2枚の原紙(第1の原紙1、第2の原紙3)が重ね合わされ、カルボキシメチルセルロースとアニオン系サイズ剤を含有している接着剤2にて接着されたトイレットペーパー10が製造される。 このトイレットペーパー10に付着しているアニオン系サイズ剤は、1シート当たりの乾燥重量で0.005g/m^(2)以上0.1g/m^(2)以下である。 なお、トイレットペーパー10の原紙間(第1の原紙1と第2の原紙3の間)において、接着剤2部分よりも空隙部分が占める面積の割合が大きくなっている。 【0027】 このように第1の製造方法で製造されたトイレットペーパー10は、図1(b)に示すように、第1の原紙1に形成されたエンボス頂部に付けられた接着剤2を介して第1の原紙1と第2の原紙3を接着した2プライ構成の衛生薄葉紙であり、2枚の原紙間(第1の原紙1と第2の原紙3の間)の空隙を利用することで、吸水性の向上を図っている。 そして、第1の原紙1と第2の原紙3を接着するために用いた接着剤2にアニオン系サイズ剤を添加していることにより、第1の原紙1と第2の原紙3との接着部分にサイズ性を付与しているので、拭き取った水滴が手の方に浸透し難くなっている。 従って、このトイレットペーパー10は、洗浄装置付き水洗トイレに適した衛生薄葉紙として好適に使用できる。 【0028】 特に、アニオン系サイズ剤を含有している接着剤2を原紙の全面ではなく、エンボス頂部に付着させて2枚の原紙(第1の原紙1と第2の原紙3)を接着しているので、トイレットペーパー10の吸水性を悪化させることなく、拭き取った水滴が手の方に浸透し難くすることが可能になっている。 また、トイレットペーパー10の原紙間(第1の原紙1と第2の原紙3の間)において、接着剤2部分よりも空隙部分が占める面積の割合を大きくすることで、過剰な接着による紙の柔らかさの悪化を回避するとともに、その空隙を利用して吸水性の向上を図っている。 また、接着剤2の主成分に比較的柔らかい性状のカルボキシメチルセルロースを採用しているので、トイレットペーパー10は原紙由来の柔らかな風合いを維持することができ、比較的柔らかい肌触りの衛生薄葉紙として好適に使用できる。 また、カルボキシメチルセルロースはアニオンであることから、カチオン性サイズ剤を混和した場合には凝集等を生じ、サイズ効果を発揮させ難い。一方、本実施形態で使用するアニオン系サイズ剤では、カルボキシメチルセルロースとイオン性が同一であることから、相溶性が良く、好適に使用ができる。これらを含有している接着剤2をアニロックスロール24や転写ロール26によって好適に原紙に塗布することができ、トイレットペーパー10を好適に製造することができる。」 (4)「 【0039】 以下、本発明に係るトイレットペーパーの実施例のサンプル、および比較例のサンプルを作製し、その性能評価を行った結果を示す。 【0040】 本実施形態では、米坪が14.5g/m^(2)に調整して抄いた原紙を用意し、その原紙を用いて第1の製造方法に準じた2プライのトイレットペーパーを試作し、そのサンプルの性能評価を行った。 230mm(TD)×120mm(CD)のサイズにカットした原紙をポリカーボネート樹脂製のエンボス版に被せ、その上に硬度70°のブチルゴムプレートを載せて0.07MPaの圧力をかけて、原紙にエンボスを付与した。このエンボス版の凸部の高さは1.4mm、頂部は半径0.5mmの円形であった。 なお、エンボス版は、エンボス版の凸部の面積率が平面視で7%のもの、4%のもの、2%のものを用意した。 その原紙(第1の原紙)に形成したエンボス頂部の表面にカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む接着剤を塗布し、直ちに対をなす他の原紙(第2の原紙)を被せた後、ブチルゴムプレートを載せて0.07MPaの圧力をかけて、2枚の原紙の接着を促した。 2枚の原紙を圧着した後、市販のドライヤーで70℃×10秒の乾燥処理を行い、2プライのトイレットペーパーのサンプルを作製した。 ・・・ 【0045】 (官能評価) 5名のテスターが各サンプルを触り、実使用時の柔らかさを官能評価した。 その評価は、柔らかさを感じるかどうかについて、「とても感じる」が7点、「全く感じない」が1点と評価する7点法にて行い、テスター5名の平均をとった。 ・・・ 【0046】 (水抜け試験) 試験台上に垂らした20℃の水滴1mlの上に、10cm×10cmの2プライのトイレットペーパーの各サンプル片を10組重ねたものを被せて、その上に650gの錘(幅82mm高さ30mm奥行き30mm:真鍮製)を載せ、直後に水が裏抜けした枚数を測定した。水抜け試験の測定値はサンプル3乃至5点の平均値とした。 水抜け性の測定値が小さいほど水が裏抜けし難いことは自明であるが、水が裏抜けした枚数に相当する測定値が「5.0」以上であれば十分な吸水性を有していると判断した。 また、水抜け性の値が「7.5」のサンプルと「8.5」のサンプルを用意し、それぞれの実使用試験を行ったところ、水抜け性の値が「8.5」のサンプルでは水滴が手の方に浸透してしまい不快であったという評価が多数であった。それに対し、水抜け性の値が「7.5」のサンプルでは水滴が手の方に浸透して不快であったとの評価は極僅かであった。つまり、水抜け性の値が「8.0」以下であれば濡れたお尻を拭いた際に水滴が手の方に浸透しにくいものと判断した。 そこで、水抜け性の測定値は5以上8以下であることが好ましいとした。 ・・・」 (5)「 【0053】 次に、トイレットペーパーに付着しているアニオン系サイズ剤(アニオン系スチレン樹脂)の1シート当たりの乾燥重量毎に、その性能評価を行った結果を示す。ここでも上述の性能評価と同様に、第1の製造方法に準じた2プライのトイレットペーパー(衛生薄葉紙)を試作し、そのサンプルの性能評価を行った。 【0054】 表2は、米坪が14.5g/m^(2)の原紙をエンボス付与面積7%で接着したサンプルであって、サイズ剤(アニオン系スチレン樹脂)を添加した1.5質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)の水溶液で接着したものの評価結果である。 サイズ剤の1シート当たりの乾燥重量が0.005g/m^(2)のものが実施例3のサンプル、0.01g/m^(2)のものが実施例4のサンプル、0.05g/m^(2)のものが実施例5のサンプル、0.1g/m^(2)のものが実施例6のサンプル、0.001g/m^(2)のものが比較例4のサンプル、0.3g/m^(2)のものが比較例5のサンプルである。 【0055】 表3は、米坪が14.5g/m^(2)の原紙をエンボス付与面積4%で接着したサンプルであって、サイズ剤(アニオン系スチレン樹脂)を添加した1.5質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)の水溶液で接着したものの評価結果である。 サイズ剤の1シート当たりの乾燥重量が0.005g/m^(2)のものが実施例7のサンプル、0.01g/m^(2)のものが実施例8のサンプル、0.05g/m^(2)のものが実施例9のサンプル、0.1g/m^(2)のものが実施例10のサンプル、0.001g/m^(2)のものが比較例6のサンプル、0.3g/m^(2)のものが比較例7のサンプルである。 【0056】 【表2】 【0057】 【表3】 【0058】 表2、表3に示した結果から明らかなように、サイズ剤の1シート当たりの乾燥重量が0.005g/m^(2)以上0.1g/m^(2)以下であれば、水抜け性の測定値が5以上8以下の範囲に収まるので、十分な吸水性を有しているとともに、濡れたお尻を拭いた際に水滴が手の方に浸透しにくいトイレットペーパーであることがわかる。 また、サイズ剤の1シート当たりの乾燥重量が0.1g/m^(2)を超えると、柔らかな感触が損なわれて、官能評価値が悪化することがわかる。」 (6)【図1】 「 」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。 ア「[0009] 本発明の第1の形態は、複数枚のシートを相互に重ね合わせた衛生用紙であって、前記複数枚のシートのうちの相互に隣接する2枚のシートの少なくとも一方にはエンボス加工が施され、このエンボス加工により前記一方のシートに形成されて他方の前記シート側に突出する凸部の頂面には前記他方のシートを接合するための接着剤が塗布され、この接着剤が紙質改善剤を含むことを特徴とする衛生用紙にある。 [0010] 本発明における接着剤としては、良好な風合いや水解性を保つという観点からは水溶性の高分子、例えばメチルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシエチルメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,カルボキシメチルセルロース,カルボキシエチルセルロース,ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコールなどに加え、これらの誘導体ならびにこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。 ・・・ [0013] 紙質改善剤がサイズ剤の場合、このサイズ剤として、抄紙分野にて普通に用いられるロジンエマルジョン系,アルキルケテンダイマー系,アルケニル無水コハク酸系,スチレン系ポリマーなどを利用することができるが、これらに限定されない。これらのうちの少なくとも1種類を先の接着剤に添加して均一に混合する。この場合、接着剤に対するサイズ剤の重量比が30?75%の範囲内にあることが好ましい。接着剤に対するサイズ剤の重量比が30%未満の場合、本発明の効果、すなわちサイズ剤の使用に伴う衛生用紙の破れにくさを改善することが困難となる。逆に、接着剤に対するサイズ剤の重量比が75%を越える場合、2枚のシートの接合強度が不足してシートが分離しやすくなってしまう。 [0014] 紙質改善剤がサイズ剤を含む場合、抄紙するための紙料に含まれるパルプ成分に対するサイズ剤の重量比が0.1から1%の範囲内にあることが好ましい。紙料に含まれるパルプ成分に対するサイズ剤の重量比が0.1%未満の場合、サイズ剤の使用に伴う衛生用紙の破れ難さを改善することがほとんど期待できない。逆に、紙料に含まれるパルプ成分に対するサイズ剤の重量比が1%を越えると、衛生用紙の水解性が損なわれてしまう。」 イ「[0026]・・・ [図9]図9は、本発明による衛生用紙を2枚合わせのトイレットロールに応用した別な一実施形態の外観を表す立体投影図である。 [図10]図10は、図9に示したトイレットロールの構造を模式的に表す断面図である。 ・・・」 ウ「[0049] 上述した実施形態では、紙質改善剤として保湿剤を含むものについて説明したが、紙質改善剤としてサイズ剤を含むものであってもよい。このような本発明による衛生用紙の他の実施形態の外観を図9に示すが、先の実施形態と同一機能の要素にはこれと同じ符号を記し、重複する説明は省略する。 [0050] 本実施形態における衛生用紙10の表面ティシュ11には、裏面ティシュ12との重ね合わせ面側に突出する多数の第1エンボス部11aが図6に示すような任意の所望の図柄を構成するように形成されている。同様に、裏面ティシュ12には、表面ティシュ11との重ね合わせ面側に突出するように多数の第2エンボス部12aがランダムに形成されている。本実施形態では、第2エンボス部12aの密度が裏面ティシュ12の幅方向端縁部よりも中央部側ほど高くなるように設定されている。このように、第1エンボス部11aと第2エンボス部12aとを表面ティシュ11と裏面ティシュ12との重ね合わせ面側に突出させたことにより、表面ティシュ11および裏面ティシュ12の表面の手触りを良好に保つことができる。これら表面ティシュ11および裏面ティシュ12に形成される第1エンボス部11aおよび第2エンボス部12aのパターンは、必要に応じて図示以外の任意のパターンのものを採用することが可能である。 裏面ティシュ12の第2エンボス部12aの頂面には、サイズ剤を保湿剤と共にあらかじめ所定の割合で添加した接着剤15が塗布され、これによって第2エンボス部12aの頂面に接する表面ティシュ11の第1エンボス部11aの頂面が接合される。積層連続シート13の断面構造を模式的に表す図10から明らかなように、第2エンボス部12aの頂面のすべてが表面ティシュ11の第1エンボス部11aの頂面に接するわけではない。しかしながら、第1エンボス部11aの頂面と第2エンボス部12aの頂面との接する部分が接着剤15を介して接合され、表面ティシュ11と裏面ティシュ12との剥離を阻止することが可能となる。この場合、積層連続シート13の単位面積に対し、第1エンボス部11aの頂面と第2エンボス部12aの頂面とが実際に接する面積を2?3%程度に設定することにより、表面ティシュ11と裏面ティシュ12との剥離を阻止することが可能である。従って、図柄を第1エンボス部11aによって形成する場合、その頂面と裏面ティシュ12との接触面積が2?3%程度となるように、第1エンボス部11aおよび第2エンボス部12aの大きさや間隔などを適切に設定しておくことが望ましい。・・・」 エ [図10] 「 」 (2)引用発明1 上記(1)に摘記した事項によれば、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 引用発明1 「裏面ティシュ12の第2エンボス部12aの頂面には、サイズ剤をあらかじめ所定の割合で添加した接着剤15が塗布され、これによって第2エンボス部12aの頂面に接する表面ティシュ11の第1エンボス部11aの頂面が接合される2枚合わせのトイレットロールであって、 接着剤としてカルボキシメチルセルロース、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系ポリマーを利用することができ、 抄紙するための紙料に含まれるパルプ成分に対するサイズ剤の重量比が0.1から1%の範囲内にあることが好ましく、 積層連続シート13の単位面積に対し、第1エンボス部11aの頂面と第2エンボス部12aの頂面とが実際に接する面積を2?3%程度に設定することにより表面ティシュ11と裏面ティシュ12との剥離を阻止することが可能である、トイレットロール。」 2 引用文献2について (1)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。 ア「【請求項1】 撥水剤としてアルキル基及び/又はアルケニル基を有する第4級アンモニウム塩をパルプスラリーの対パルプ乾燥重量に対して固形分重量で0.02?0.5重量%含有するか、又はサイズ剤をパルプスラリーの対パルプ乾燥重量に対して固形分重量で0.02?0.06重量%含有するとともに、前記撥水剤又はサイズ剤は抄紙時にパルプスラリー中に混合されたことを特徴とする家庭用衛生薄葉紙。 【請求項2】 吸水速度が3.5?35.0秒及び/又は水浸透度が6枚以下である請求項1記載の家庭用衛生薄葉紙。」 イ「【0006】 そこで本発明の主たる課題は、柔軟性を有し、かつ衛生薄葉紙として機能し得る程度の吸水性を維持しつつ、ムラ無く水分の裏抜けを低減した家庭用衛生薄葉紙を提供することにある。」 ウ「【0008】 上記請求項1記載の本発明においては、家庭用衛生薄葉紙に、撥水剤として柔軟効果を有するアルキル基及び/又はアルケニル基を有する第4級アンモニウム塩をパルプスラリーの対パルプ乾燥重量に対して固形分重量で0.02?0.5重量%含有するか、又はサイズ剤をパルプスラリーの対パルプ乾燥重量に対して固形分重量で0.02?0.06重量%含有させたので、柔軟性を有し、かつ衛生薄葉紙として機能しうる程度の吸水性を損なうことなく水分の裏抜けを低減することが可能となる。また、前記撥水剤又はサイズ剤は抄紙時にパルプスラリー中に混合することとしたため、撥水剤又はサイズ剤が紙繊維中に均一に分散されるため、水分を拭き取った場合、ムラ無く裏抜けを低減することができる。」 エ「【0024】 〔第2形態例〕 上記第1形態例では、撥水剤としてアルキル基及び/又はアルケニル基を有する第4級アンモニウム塩を用いたが、サイズ剤を用いることもできる。サイズ剤の種類としては、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、無水ステアリン酸などの中性サイズ剤、けん化天然ロジン、強化ロジンなどの酸性サイズ剤などを使用することができる。 【0025】 前記サイズ剤は、パルプスラリーの対パルプ乾燥重量に対して固形分重量で0.02?0.06重量%と少量だけ含有することにより、吸水速度を3.5?35.0秒とし、及び/又は水浸透度を6枚以下とすることができる。添加率が0.02重量%未満であると水分の裏抜けが十分に低減できない。0.06重量%を超えると撥水性が強すぎてしまう。特に、サイズ剤は0.05重量%以上含有させると急激に撥水性が強くなる性質があるので、サイズ剤の添加率は0.02?0.04重量%とするのが望ましい。 【0026】 〔他の形態例〕 (1)前記衛生薄葉紙の用途がトイレットティッシュペーパーである場合には、JIS P 4501に基づく水解性が20?40秒、より好ましくは25?30秒であることが望ましい。水解性が20秒未満であると強度特性が確保できないおそれがあり、40秒を超えるとトイレでの詰まりの原因となることがある。 【実施例】 【0027】 撥水剤としてジメチルモノアルキルアンモニウムハライドを固形分重量で0.1重量%含有させたもの(実施例1)、0.2重量%含有させたもの(実施例2)、サイズ剤としてアルキルケテンダイマーを固形分重量で夫々0.02重量%含有させたもの(実施例3)、0.04重量%含有させたもの(実施例4)、0.06重量%含有させたもの(実施例5)、0.005重量%含有させたもの(比較例1)、0.01重量%含有させたもの(比較例2)、撥水剤及びサイズ剤を全く含有しないもの(比較例3)の各供試体について米坪、吸水速度、水浸透度を測定した。その結果を表1に示す。 【0028】 なお、衛生薄葉紙は広葉樹クラフトパルプ(LBKP):針葉樹クラフトパルプ(NB KP)=9:1の割合で配合したパルプスラリーを、pH8.0の抄紙用水を用いて抄紙した後、80℃の温度条件で120秒乾燥させたものである。 【0029】 【表1】 」 オ 上記エにおける表1の実施例3、4、5の数値を用い、アルキルケテンダイマーの添加量に米坪を積算して得た、衛生薄葉紙1平米あたりのアルキルケテンダイマー添加量(g/m^(2))は、それぞれ、0.00592(g/m^(2))、0.01176(g/m^(2))、0.01752(g/m^(2))である。 (2)引用文献2記載の技術事項 上記(1)に摘記した事項によれば、上記引用文献2には次の技術事項が記載されていると認められる。 引用文献2記載の技術事項 「サイズ剤は抄紙時にパルプスラリー中に混合された、用途がトイレットティッシュペーパーである衛生薄葉紙において、サイズ剤としてアルキルケテンダイマーを添加するにあたり、アルキルケテンダイマーを固形分重量で夫々0.02重量%含有させたもの(実施例3)、0.04重量%含有させたもの(実施例4)、0.06重量%含有させたもの(実施例5)、0.005重量%含有させたもの(比較例1)、0.01重量%含有させたもの(比較例2)の各供試体について米坪、吸水速度、水浸透度を測定した結果から得た、サイズ剤は、パルプスラリーの対パルプ乾燥重量に対して固形分重量で0.02?0.06重量%と少量だけ含有することにより、吸水速度を3.5?35.0秒とし、及び/又は水浸透度を6枚以下とすることができ、添加率が0.02重量%未満であると水分の裏抜けが十分に低減できず、0.06重量%を超えると撥水性が強すぎてしまうとの知見から、サイズ剤は、パルプスラリーの対パルプ乾燥重量に対して固形分重量で0.02?0.06重量%含有したものとする技術。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「トイレットロール」は、本願発明の「トイレットペーパー」に相当する。 引用発明1の「裏面ティシュ12」及び「表面ティシュ11」は、「接合され」て「2枚合わせのトイレットロール」となるものであるから、本願発明における「2枚の原紙」に相当する。 引用発明1は、「接着剤としてカルボキシメチルセルロース」を利用したものであるから、その「接着剤15」は、本願発明の「カルボキシメチルセルロースを含む接着剤」に相当する。 「アルキルケテンダイマー」は、上記「第3 2(3)」中の段落【0021】に示されるように、本願明細書でも例示する「アニオン系サイズ剤」であるところ、引用発明1は、「サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系ポリマーを利用」したものであるから、引用発明1の「接着剤15」に「サイズ剤をあらかじめ所定の割合で添加し」たことは、本願発明の「接着剤にはアニオン系サイズ剤が」「含まれ」ることに相当する。 引用発明1の「エンボス部」は、本願発明の「エンボス」に相当し、引用発明1の「第1エンボス部11aの頂面と第2エンボス部12aの頂面とが実際に接する」ことは、本願発明の「接触部は、」「原紙の少なくとも1枚に設けられたエンボスの頂部であ」ることに相当する。 また、引用発明1の「積層連続シート13の単位面積に対し、第1エンボス部11aの頂面と第2エンボス部12aの頂面とが実際に接する面積」の割合は、本願発明の「2枚の原紙」の「接触部の面積率」に相当する。 そうすると、本願発明と引用文献1とは、以下の一致点、相違点を有する。 (一致点) 少なくとも2枚の原紙が重ね合わされ、カルボキシメチルセルロースを含む接着剤にて接着されてなるトイレットペーパーであって、 前記接着剤にはアニオン系サイズ剤が含まれ、 前記2枚の原紙の接触部は、原紙の少なくとも1枚に設けられたエンボスの頂部である、トイレットペーパー。 (相違点1) 本願発明では、原紙の少なくとも1枚に、面積が0.5mm^(2)以上5.0mm^(2)以下、高さが0.5mm以上1.5mm以下であるエンボスが設けられているのに対し、引用発明1では、表面ティシュ11に第1エンボス部11a、裏面ティシュ12に第2エンボス部12aが設けられているが、エンボスの面積と高さが特定されていない点。 (相違点2) 2枚の原紙の接触部の面積率、接着剤に含まれるアニオン系サイズ剤の量が、それぞれ、本願発明では、「4%以上7%以下」、「1シート当たりの乾燥重量で0.005g/m^(2)以上0.1g/m^(2)以下」と特定されるのに対し、引用発明1では、「2?3%程度」、「抄紙するための紙料に含まれるパルプ成分に対するサイズ剤の重量比が0.1から1%の範囲が好ましい」とされている点。 2 相違点についての判断 (1)相違点1について トイレットペーパーにおけるエンボスを、面積が0.5mm^(2)以上5.0mm^(2)以下、高さが0.5mm以上1.5mm以下とすることは、特開2012-213508号公報(段落【0021】に、トイレットペーパーにおけるエンボスを、面積が0.64?4.0mm^(2)、深さ(高さ)が0.5?1.5mmとすることが示されている。)等に記載されるように周知であり、引用発明1における「第1エンボス部11a」、「第2エンボス部12a」の面積、高さを、それぞれ、0.5mm^(2)以上5.0mm^(2)以下、0.5mm以上1.5mm以下とし、本願発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が適宜になし得ることである。 (2)相違点2について ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び2のいずれにも、2枚の原紙の接触部の面積率、接着剤に含まれるアニオン系サイズ剤の量を、それぞれ、「4%以上7%以下」、「1シート当たりの乾燥重量で0.005g/m^(2)以上0.1g/m^(2)以下」とすることについて記載されているとはいえない。 イ すなわち、サイズ剤の量について、引用発明1は、「抄紙するための紙料に含まれるパルプ成分に対するサイズ剤の重量比が0.1から1%の範囲内が好ましい」とするものであるが、抄紙するための紙料に含まれるパルプ成分の量について記載がなく、1シート当たりのサイズ剤の乾燥重量を導出することができないから、引用発明1の1シート当たりのサイズ剤の乾燥重量が0.005g/m^(2)以上0.1g/m^(2)以下であるとはいえない。 ウ この点、引用文献2には、サイズ剤としてアルキルケテンダイマーを使用するにあたり、水分の裏抜けの低減と撥水性(適度な吸水性)を考慮してサイズ剤の添加量を好適な値とする技術が開示されているとともに、かかる観点からサイズ剤をパルプスラリーの対パルプ乾燥重量に対して固形分重量で0.02?0.06重量%含有させるものであり、引用文献2の表1(前記「第4 2(1)エ」)に記載されたアルキルケテンダイマーの添加量に米坪を積算して得られる、衛生薄葉紙1平米あたりのアルキルケテンダイマー添加量(g/m^(2))は、アニオン系サイズ剤の1シート当たりの乾燥重量と同視できる程度の数値であると認められるところ、その実施例3ないし5の値は、それぞれ、0.00592(g/m^(2))、0.01176(g/m^(2))、0.01752(g/m^(2))であって(前記「第4 2(1)オ」)、本願発明と同様、「0.005g/m^(2)以上0.1g/m^(2)以下」のものであると認められる。 しかし、引用文献2のサイズ剤は、抄紙時にパルプスラリー中に混合され、紙全体が均一的に水分の裏抜けの低減と撥水性の性質を呈するように紙全体に均一的に分布しているものであって、これとは異なり、引用発明1のトイレットペーパーは、原紙のうちの2?3%程度の面積に用いられる接着剤中にのみアニオン系サイズ剤が含まれ、その他の部分にはサイズ剤が含まれないものであるから、1シート当たりに同量のサイズ剤を用いたとしても、得られたトイレットペーパー全体について、引用文献2記載のものと同様の水分の裏抜けの低減や撥水性が得られるとはいえない。そうすると、引用文献2に記載されたアルキルケテンダイマーの添加量に米坪を積算して得た、衛生薄葉紙1平米あたりのアルキルケテンダイマー添加量(g/m^(2))の数値が0.005g/m^(2)以上0.1g/m^(2)以下の範囲であるとしても、この添加量を直ちに引用発明1に採用する動機付けがあるとはいえない。 エ そして、本願発明は、上記「第3 2(4)」に摘記したように、2枚の原紙を、原紙が接着されるエンボスの頂部の面積(エンボス付与面積)について、引用発明1の「2?3%程度」とは異なる4%及び7%となるようエンボス加工したものにおいて、接着剤へのサイズ剤の添加量の異なる複数のサンプルを作成し、本願明細書に記載の官能評価(段落【0045】)及び水抜け試験(段落【0046】)を行うことで、適切な柔らかさや吸水性を確保しつつ水の裏抜けを抑制するとの観点から、本願発明の2枚の原紙の、接触部の面積率を4%以上7%以下とするとともに、カルボキシメチルセルロースを含む接着剤へのアニオン系サイズ剤の添加量を1シート当たりの乾燥重量で0.005g/m^(2)以上0.1g/m^(2)以下とし、この発明特定事項により、上記「第3 2(2)」に記載された「手触り感や吸水性を損なうことなく水が裏抜けし難い、洗浄装置付き水洗トイレに適したトイレットペーパーが得られる」との効果を奏するものと認められる。 そうすると、本願発明は、トイレットペーパーの2枚の原紙の接触部の面積率や当該接触部に塗布する接着剤に含まれるアニオン系サイズ剤の添加量を単に好適化したものということはできない。 オ 以上のとおり、本願発明の相違点2に係る発明特定事項は、当業者が引用発明1及び引用文献2に記載された技術事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。 (3)小括 以上検討したように、本願発明は、当業者であっても引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 原査定について 本願発明は、2枚の原紙の接触部の面積率、接着剤に含まれるアニオン系サイズ剤の量が、それぞれ、「4%以上7%以下」、「1シート当たりの乾燥重量で0.005g/m^(2)以上0.1g/m^(2)以下」であるという特定を含んだものとなっているので、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び2に基いて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-01-29 |
出願番号 | 特願2015-160044(P2015-160044) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A47K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 下井 功介 |
特許庁審判長 |
長井 真一 |
特許庁審判官 |
土屋 真理子 森次 顕 |
発明の名称 | トイレットペーパー |
代理人 | 荒船 博司 |
代理人 | 荒船 良男 |