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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1370757
審判番号 不服2020-3621  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-17 
確定日 2021-02-24 
事件の表示 特願2015-236960「医用情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 8日出願公開、特開2017- 99769、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月3日の出願であって、令和元年7月3日付けで拒絶理由が通知され、同年9月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月11日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたところ、令和2年3月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において同年9月30日付けで拒絶理由が通知され、同年12月7日付けで意見書及び手続補正書(以下「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1 本願請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献Aに記載された発明であるから特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。

2 本願請求項1?11に係る発明は、以下の引用文献A?Cに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.米国特許出願公開第2012/0014578号明細書
B.特開2012-217770号公報(周知技術を示す文献)
C.特開2001-346786号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1 本願請求項1?10に係る発明は不明確であり、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 本願請求項1?10に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2012/0014578号明細書(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2012-217770号公報(拒絶査定時の引用文献B)
3.特開2001-346786号公報(拒絶査定時の引用文献C)
4.特開2008-86742号公報

第4 本願発明
本願請求項1?10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明10」という。)は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
超音波プローブを用いて被検体の乳房を走査した際に前記超音波プローブが有する位置センサによって測定された位置情報に基づいて生成された、乳頭を中心とした円及び腋窩の位置を示す前記乳房の模式図を記憶する第1の記憶部と、
前記乳房の模式図における関心領域の位置を求める処理部と、
前記乳房の模式図における前記関心領域の位置を記憶する第2の記憶部と、
マンモグラフィ装置により取得された前記乳房の3次元画像であるトモシンセシス画像を記憶する第3の記憶部と、
前記乳房の模式図における前記関心領域の位置に基づいて、前記模式図において前記関心領域を通り体軸方向又はX線管方向と平行な第1の直線と前記円との2つの交点を求め、当該2つの交点それぞれと前記関心領域との間の距離の比を求め、当該比を用いて、前記トモシンセシス画像上で前記関心領域を含む断面を決定する演算部と、
前記トモシンセシス画像上で決定された断面の画像を生成する画像生成処理部と
を備える、医用情報処理装置。
【請求項2】
前記第2の記憶部は、前記乳房の模式図における前記関心領域の位置を走査位置情報として記憶し、
前記演算部は、前記走査位置情報に基づいて、前記トモシンセシス画像上で前記関心領域を含む断面を決定し、
前記画像生成処理部は、前記トモシンセシス画像上で決定された断面に前記関心領域の位置情報を対応付けた画像を生成する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記乳房の模式図に前記関心領域の位置を付した走査位置情報を生成し、
前記第2の記憶部は、前記処理部によって生成された前記走査位置情報を記憶する、請求項1又は2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記トモシンセシス画像上で決定された断面における前記関心領域の位置情報を求め、
前記画像生成処理部は、前記断面上に前記関心領域の位置情報を対応付けた画像を生成する、請求項1?3のいずれか一つに記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記演算部は、更に、前記模式図において前記乳頭を通り体軸方向と垂直な第2の直線と前記第1の直線との交点を求め、当該交点と前記円及び前記乳頭それぞれとの間の距離の比を求め、当該比を用いて、前記断面における前記関心領域の位置情報を求める、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記関心領域を含む断面において前記関心領域が存在する相対的な位置を、前記乳頭から体軸方向に対する深さ方向の位置で特定し、
前記画像生成処理部は、特定した前記深さ方向の位置を示す深さ情報を更に生成する、請求項1?5のいずれか一つに記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記画像生成処理部は、前記断面の位置を示す断面情報を更に生成する、請求項1?6のいずれか一つに記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記第2の記憶部は、前記被検体を一意に識別可能な識別情報を、前記乳房の模式図に前記関心領域の位置を付した走査位置情報に対応付けて記憶し、
前記演算部は、指定された前記識別情報に対応する前記走査位置情報を前記第2の記憶部から取得し、前記走査位置情報に基づいて、前記トモシンセシス画像上で前記関心領域を含む断面を決定する、請求項1?7のいずれか一つに記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記画像生成処理部は、前記画像と、当該画像を生成する際に用いた前記走査位置情報とを対応付けて前記第2の記憶部に格納させる、請求項8に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記第2の記憶部は、前記走査位置情報をDICOM形式或いはJPEG形式で記憶する、請求項8又は9に記載の医用情報処理装置。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
令和2年9月30日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引1a)「[0082] FIGS. 11A-C show further detail of correlation procedures between ultrasound images and cranio-caudal (CC) view of a mammographic image, according to some embodiments. FIG. 11A illustrates breast tissue as compressed for a CC mammography view. The uncompressed breast tissue 1110 is compressed as shown by outline 1112, against a platen 1114. FIG. 11B shows a coronal view 1120 of an ultrasound scan having a region of interest 1122, as well as a CC view 1130 from a mammography scan having a region of interest 1132. The position of region 1122 relative to the nipple 1124 in the ultrasound image can be determined to be x_(u), y_(u) and z_(u), as has been explained previously. In the CC mammography image 1130, the distance x_(m) relative to the nipple 1134 can be determined and is:

x_(m)=x_(u) (12)

provided the image scales are normalized. The distance y_(m) can be estimated from the ratio of the depth of the corresponding lesion in a transverse or sagittal slice of the ultrasound scan. FIG. 11C shows a transverse slice 1140 of and ultrasound scan where the region of interest 1142 is at depth z_(u) form the skin surface 1144. The total thickness of the breast tissue in slice 1140 from skin surface 1144 and the chest wall 1146 is denoted as T_(u). The distance y_(m) in the CC mammography image is therefore:

y_(m)=C_(m)(z_(u)/T_(u)) (13)

where the Cm is the total distance from the nipple 1134 to the chest wall 1136 in FIG. 11B.
[0083] FIGS. 12A-C show further detail of correlation procedures between ultrasound images and mediolateral oblique (MLO) view of a mammographic image, according to some embodiments. FIG. 12A illustrates breast tissue as compressed for a MLO mammography view. The uncompressed breast tissue 1210 is compressed as shown by outline 1212, against a platen 1214. 1210 also represents a coronal view of an ultrasound scan having a region of interest 1222. FIG. 12B is an MLO view 1230 from a mammography scan having a region of interest 1232. The position of region 1222 relative to the nipple 1224 in the ultrasound image can be determined to be x_(u), y_(u) and z_(u), as has been explained previously. The distance x_(m) can be estimated from the ratio of the depth of the corresponding lesion in a transverse or sagittal slice of the ultrasound scan. FIG. 12C shows a transverse slice 1240 of and ultrasound scan where the region of interest 1242 is at depth z_(u) form the skin surface 1244. The total thickness of the breast tissue in slice 1240 from skin surface 1244 and the chest wall 1246 is denoted as Tu. The distance x_(m) in the MLO mammography image is therefore:

x_(m)=C_(m)(z_(u)/T_(u)) (14)

where the C_(m) is the total distance from the nipple 1234 to the chest wall 1236. The distance y_(m) in the MLO mammography image can be related to position of the region of interest 1222 in relation to the nipple 1224 and the angles α_(u), which is the angular position of the region 1222, and the oblique imaging angle θ_(m) which can be determined, for example from the mammography image (DICOM) (Digital Imaging and Communications in Medicine standard) header. The distance y_(m) in the MLO mammography image can be estimated as:

y_(m)=r_(u)cos(α_(u-)θ_(m)) (15)

where r_(u) is the radial distance of the region 1222 from the nipple 1224 in the ultrasound coronal view 1210, and can be related to x_(u) and y_(u) by r_(u)=√ (x_(u)^(2)+y_(u)^(2)). Once the equivalent coordinates in the mammography view (CC and MLO) are found as described herein, the same or similar threshold as shown in equation (10) and the error evaluation of equation (11) can be used in correlating regions of interest ultrasound and mammographic images.」(当審訳:「[0082]図11A-Cは、超音波画像とマンモグラフィ画像の頭尾(CC)ビューとの間の相関手順のさらなる詳細を示す。図11Aは、CCマンモグラフィビューように圧縮された乳房組織を示している。非圧縮の乳房組織1110は、輪郭1112で示されるよう、プラテン1114に対しに圧縮される。図11Bは、関心領域1122を有する超音波スキャンの冠状ビュー1120及び関心領域1132を有するマンモグラフィスキャンのCCビュー1130を示す。超音波画像における乳頭1124に対する領域1122の位置は、前述の通り、x_(u)、y_(u)及びz_(u)と決定することができる。CCマンモグラフィ画像において、乳頭1134に対する距離x_(m)は、画像スケールが正規化されている場合、次のように決定される:

x_(m)=x_(u) (12)

距離y_(m)は、超音波スキャンの横方向又は矢状方向の断面における対応する病変の深さの比から推定される。図11Cは、皮膚表面1144から深さz_(u)に関心領域1142がある超音波スキャンの横方向の断面1140を示す。皮膚表面1144と胸壁1146とからの断面1140における乳房組織の全厚さはT_(u)として示される。CCマンモグラフィ画像における距離y_(m)は、次の通りである。

y_(m)=C_(m)(z_(u)/T_(u)) (13)

ここで、C_(m)は、図11Bにおける乳頭1134から胸壁1136までの総距離である。
[0083]図12A-Cは、超音波画像と内外斜位方向(MLO)ビューとの間の相関手順のさらなる詳細を示す。図12Aは、MLOマンモグラフィビューのための圧縮された乳房組織を示している。圧縮されていない乳房組織1210は、輪郭1212で示されるように、プラテン1214に対して圧縮される。1210は、関心領域1222を有する超音波スキャンの冠状ビューも表している。図12Bは、関心領域1232を有するマンモグラフィスキャンからのMLOビュー1230である。超音波画像における乳頭1224に対する領域1222の位置は、前述の通りx_(u)、y_(u)及びz_(u)によって決定することができる。距離x_(m)は、超音波スキャンの横方向又は矢状方向の断面における関連する病変の深さの比から推定できる。図12Cは、関心領域1242が皮膚表面1244から深さz_(u)にある超音波スキャンの横方向断面1240を示している。断面1240における皮膚表面1244から胸壁1246までの乳房組織の総厚は、T_(u)として示される。MLOマンモグラフィ画像における距離x_(m)は、以下のとおりである、

x_(m)=C_(m)(z_(u)/T_(u)) (14)

ここで、C_(m)は、乳頭1234から胸壁1236までの総距離である。MLOマンモグラフィ画像における距離y_(m)は、乳頭1224に対する関心領域1222の位置と関心領域の角度である角度a_(u)及び例えばマンモグラフィ画像の(DICOM)(Digital Imaging and Communication in Medicine標準)ヘッダーから決定することができる斜め画像角度θ_(m)に関連づけられる。MLOマンモグラフィ画像における距離y_(m)は、次のように決められる。

y_(m)=r_(u) cos(a_(u)-θ_(m)) (15)

ここでr_(u)は、超音波冠状ビュー1210における乳頭1224からの領域1222の距離であり、r_(u)=√(x_(u)^(2)+y_(u)^(2))によって、x_(u)とy_(u)に関連づけられる。マンモグラフィビュー(CC及びMLO)における同様の座標がここで説明されるように見つかったら、式(10)において示されるような同じ又は同等の閾値及び式(11)のエラー評価が超音波及びマンモグラフィ画像の関心領域を結びつけるために使用される。」)

(引1b)「[0087] According to some embodiments, the techniques described here for relating positions in ultrasound images and mammography images are used to provide a useful user interface for users such as radiologists who are reading, reviewing or otherwise analyzing the images. FIG. 13 shows a user interface which relates positions in mammographic and ultrasound images, according to some embodiments. The user interface 1310 includes a display 1312, input devices such as keyboard 1362 and mouse 1360, and a processing system 1370. According to some embodiments, other user input methods such as touch sensitive screen screens can be used.
[0088] Processing system 1370 can be a suitable personal computer or a workstation that includes one or more processing units 1342, input/output devices such as CD and/or DVD drives, internal storage 1372 such as RAM, PROM, EPROM, and magnetic type storage media such as one or more hard disks for storing the medical images and related databases and other information, as well as graphics processors suitable to power the graphics being displayed on display 1312.
[0089] The display 1312 is shown displaying two areas. Mammographic display area 1314 is similar to a mammography workstation for viewing digital mammography images. Ultrasound display area 1316 is similar to an ultrasound image workstation for viewing 3D ultrasound breast images. Mammographic display area 1314 is shown displaying four mammographic images, namely right MLO view 1330, left MLO view 1332, right CC view 1334, and left CC view 1336. Shown on right MLO view 1330 is a region of interest 1320, and on right CC view 1336 is region of interest 1322.
[0090] According to some embodiments, the user selects both regions 1320 and 1322 in mammographic display area 1314, for example, by clicking with mouse pointer 1324. By selecting both regions 1320 and 1322, the user is indicating to the system that the user believes the two regions 1320 and 1322 are the same suspicious lesion. In response to the user selection of the two regions 1320 and 1322, the system estimates the corresponding location in the ultrasound image and automatically displays suitable ultrasound images to the user. In the example shown, the system displays a coronal view 1340 of an ultrasound scan of the patient's right breast, at the depth associated with the suspected lesion, as well as a mark indicator, such as dashed circle 1344 at a position on the coronal view 1340. Also displayed are transversal view 1350 and sagittal view 1354, both at locations corresponding to the estimated location of the user selected lesion. The mark indicators 1352 and 1356 indicate the estimated locations of the lesion in views 1350 and 1354 respectively. According to some embodiments, the system uses relationships such as shown in equations (12), (13), (14) and (15) to relate the user selected locations on the mammographic images to the displayed estimated locations on the ultrasound images.
[0091] According to some embodiments, the user interface system 1310 can operate in an inverse fashion as described above. Namely, the user selects a location on any of the ultrasound views, and in response the system displays the estimated corresponding locations on the mammographic images. For example, the user selects a location on the coronal image 1340. In response, the system estimates and automatically highlights the corresponding locations on the CC and MLO views of the mammographic image. Note that since the 3D coordinates can be determined from a single selection on one of the ultrasound images, the system can estimate the mammographic locations in response to making a selection on only one ultrasound image view. As described above, the system can use relationships such as shown in equations (12), (13), (14) and (15) to relate the user selected location on the ultrasound image to the corresponding estimated locations on the mammographic images.
[0092] According to some embodiments the user interface system as described with respect to FIG. 13 is applied to three-dimensional mammographic images such as tomosynthesis mammography images.」(当審訳:「[0087]いくつかの実施例によれば、ここで説明する超音波画像とマンモグラフィ画像とを関連づける技術は、画像を読んだり、評価したり、又は他の分析をする放射線科医のようなユーザに使いやすいユーザインターフェースを提供するために使用される。図13は、いくつかの実施例による、マンモグラフィ及び超音波画像の位置を関連づけるユーザインターフェースを示す。ユーザインターフェース1310は、ディスプレイ1312、キーボード1362及びマウス1360のような入力デバイス若しくは処理システム1370を備える。いくつかの実施例によれば、タッチスクリーンのような他のユーザ入力装置を使うこともできる。
[0088]処理システム1370は、1つ又は複数の処理ユニット1342、CD及び/又はDVDデバイスのような入出力デバイス、医療画像及びデータベースと他の情報との関連を記憶する、RAM、PROM、EPROM及び1つ又は複数のハードディスクのような磁気タイプのストレージメディアのような内蔵ストレージ1372を含む適切なパーソナルコンピュータ及びワークステーション、並びに、ディスプレイ1312にグラフィックスを表示する最適な電力を供給するグラフィックプロセッサとであり得る。
[0089]ディスプレイ1312は、2つの領域を表示するものである。マンモグラフィ表示エリア1314は、デジタルマンモグラフィ画像を表示するためのマンモグラフィワークステーションと同様である。超音波表示エリア1316は、3D超音波乳房画像を表示するための超音波画像ワークステーションと同様である。マンモグラフィ表示エリア1314は、4つのマンモグラフィ画像、すなわち右MLOビュー1330、左MLOビュー1332、右CCビュー1334及び左CCビュー1336を表示する点が示される。右MLOビュー1330には関心領域1320が、右CCビュー1336には関心領域1322が、示されている。
[0090]いくつかの実施形態によれば、ユーザは、例えばマウスポインタ1324でクリックすることでマンモグラフィ表示エリア1314内に領域1320及び1322のどちらも選択する。領域1320及び1322のどちらも選択することによって、ユーザは、2つの領域1320及び1322が同じ疑わしい病変であると考えていることをシステムに示している。2つの領域1320及び1322の選択に応答して、システムは、超音波画像内の対応する位置を推定し、ユーザに適切な超音波画像を自動的に表示する。示されている例では、システムは、疑わしい病変の深さにおける、患者の右乳房の冠状ビュー1340及び冠状ビュー1340上の位置に破線の円1344としてマークインジケータを表示する。また、いずれもユーザが選択した病変の予想位置に対応する位置の横方向ビュー1350及び矢状方向ビュー1354も表示される。マークインジケータ1352及び1356は、それぞれビュー1350及び1354における病変の推定位置を示す。いくつかの実施形態によれば、システムは、式(12)、(13)、(14)及び(15)を使用して、マンモグラフィ上のユーザが選択した位置を、超音波画像上の表示された推定位置に関連づける。
[0091]いくつかの実施例によれば、ユーザインターフェースシステム1310は、上記方法とは逆の方法で動作することができる。すなわち、ユーザは、超音波ビュー上のいずれかの場所を選択し、そして、それに応答してシステムは、マンモグラフィ画像上に推定される対応する位置を表示する。例えば、ユーザは、冠状ビュー1340上の位置を選択する。それに応答して、システムは、マンモグラフィ画像のCC及びMLO上の対応する位置を推定し自動的に強調する。3D座標は、超音波画像の1つを1回選択するだけで決定できるため、システムは、超音波ビューを1回のみ選択することでマンモグラフィ上の位置を推定できることに注意が必要である。上記の通り、システムは、式(12)、(13)、(14)及び(15)に示されるような関係を使用して、超音波画像上のユーザが選択した位置を、マンモグラフィ画像上の対応する推定位置に関連づけることができる。
[0092]いくつかの実施例によれば、図13に関連して説明されたユーザインターフェースシステムは、トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像に適用できる。」)

(引1c)「



(2)引用文献1に記載された発明
ア 上記(引1a)より、引用文献1には、以下の技術事項が記載されている。

「CCマンモグラフィビューにおいて
超音波画像における乳頭1124に対する領域1122の位置、x_(u)、y_(u)及びz_(u)、
CCマンモグラフィ画像における、乳頭1134に対する距離、x_(m)、
皮膚表面1144から深さz_(u)に関心領域1142がある超音波スキャンの横方向の断面1140における皮膚表面1144と胸壁1146とからの乳房組織の全厚さ、T_(u)、
CCマンモグラフィ画像における距離、y_(m)、
乳頭1134から胸壁1136までの総距離、C_(m)、
である時に

x_(m)=x_(u) (12)
y_(m)=C_(m)(z_(u)/T_(u)) (13)

MLOマンモグラフィビューにおいて
超音波画像における乳頭1224に対する領域1222の位置、x_(u)、y_(u)及びz_(u)、
関心領域1242が皮膚表面1244から深さz_(u)にある超音波スキャンの横方向断面1240における皮膚表面1244から胸壁1246までの乳房組織の総厚、T_(u)、
MLOマンモグラフィ画像における距離、x_(m)、
乳頭1234から胸壁1236までの総距離、C_(m)、
MLOマンモグラフィ画像における距離、y_(m)、
関心領域の角度である角度、a_(u)、
マンモグラフィ画像の斜め画像角度、θ_(m)、
超音波冠状ビュー1210における乳頭1224からの領域1222の距離、r_(u)、
である時に、

x_(m)=C_(m)(z_(u)/T_(u)) (14)
y_(m)=r_(u) cos(a_(u)-θ_(m)) (15)

である関係を有する。」

イ 上記(引1b)において、段落[0090]には、「ユーザは、マウスポインタ1324でクリックすることでマンモグラフィ表示エリア1314内に領域1320及び1322のどちらも選択し、2つの領域1320及び1322の選択に応答して、システムは、超音波画像内の対応する位置を推定し、ユーザに適切な超音波画像を自動的に表示し、システムは、患者の右乳房の冠状ビュー1340及び冠状ビュー1340上の位置に破線の円1344としてマークインジケータを表示し、病変の予想位置に対応する位置の横方向ビュー1350も表示され、マークインジケータ1352は、ビュー1350における病変の推定位置を示す」旨記載され、段落[0091]には、「ユーザインターフェースシステム1310は、上記方法とは逆の方法で動作する」旨記載されていることから、段落[0090]に記載された「超音波画像内の対応する位置」として「推定」された「冠状ビュー1340上の位置」、「病変の予想位置に対応する位置の横方向ビュー1350」及び「マークインジケータ1352」が示される「ビュー1350における病変の推定位置」は、それぞれ、「超音波画像内の対応する位置」として選択された「冠状ビュー1340上の位置」、「選択された病変の位置に対応する位置の横方向ビュー1350」及び「マークインジケータ1352」が示される「ビュー1350における選択された病変の位置」であるといえる。

ウ 上記(引1c)より、「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316」に表示された「冠状ビュー1340」は、乳頭を中心とした円である点が見て取れる。また、「冠状ビュー1340上の」「マークインジケータを表示」した「破線の円1344」の位置は、x_(u)、y_(u)及びz_(u)であり、該位置の乳頭からの距離は、r_(u)である点が見て取れる。そして、「冠状ビュー1340上の位置に」「マークインジケータを表示」された「破線の円1344」は、上記アの技術事項における「領域1122」及び「領域1222」に相当する。また、上記「選択された病変の位置に対応する位置の横方向ビュー1350」は、上記アの技術事項における「横方向の断面1140」及び「横方向の断面1240に相当し、そして、上記「横方向ビュー1350」に示される、「マークインジケータ1352」は、上記アの技術事項における「関心領域1142」及び「関心領域1242」に相当する。
そうすると、上記アにおける技術事項を、上記(引1b)の段落[0091]における「ユーザインターフェースシステム1310」に当てはめると、

「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340上のマークインジケータを表示した破線の円1344の位置が、x_(u)、y_(u)及びz_(u)であり、皮膚表面から深さz_(u)にマークインジケータ1352がある超音波スキャンの横方向の断面1350における皮膚表面と胸壁とからの乳房組織の全厚さがT_(u)であって、乳頭から胸壁までの総距離がC_(m)である場合、

CCマンモグラフィビューにおいて
CCマンモグラフィ画像における、乳頭に対する距離、x_(m)、
CCマンモグラフィ画像における距離、y_(m)、
である時に

x_(m)=x_(u) (12)
y_(m)=C_(m)(z_(u)/T_(u)) (13)

MLOマンモグラフィビューにおいて
MLOマンモグラフィ画像における距離、x_(m)、
MLOマンモグラフィ画像における距離、y_(m)、
関心領域の角度である角度、a_(u)、
マンモグラフィ画像の斜め画像角度、θ_(m)、
冠状ビュー1340上の乳頭からマークインジケータを表示した破線の円1344の距離、r_(u)、
である時に、

x_(m)=C_(m)(z_(u)/T_(u)) (14)
y_(m)=r_(u) cos(a_(u)-θ_(m)) (15)

である関係を有する。」

エ 上記(引1b)における、「ユーザインターフェース1310」、「ユーザインターフェースシステム1310」及び「システム」は、いずれも同じものを指していることから、「ユーザインターフェースシステム1310」として整理した。

オ 上記エを踏まえると、上記(引1b)より、引用文献1には、以下の事項が記載されている。

「マンモグラフィ及び超音波画像の位置を関連づけるユーザインターフェースであるユーザインターフェースシステム1310は、
ディスプレイ1312、キーボード1362及びマウス1360のような入力デバイス若しくは処理システム1370を備え、
処理システム1370は、処理ユニット1342、医療画像及びデータベースと他の情報との関連を記憶する内蔵ストレージ1372を含み、
ディスプレイ1312は、
デジタルマンモグラフィ画像を表示するマンモグラフィ表示エリア1314と、
3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316との、
2つの領域を表示するものであり、
マンモグラフィ表示エリア1314には、関心領域1322が示された右CCビュー1334を表示し
3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340は、乳頭を中心とした円であり、
ユーザインターフェースシステム1310は、
超音波ビューである冠状ビュー1340上の位置を選択すると、
それに応答して、マンモグラフィ画像のCC及びMLO上の対応する位置を推定し自動的に強調するものであって、
式(12)、(13)、(14)及び(15)に示されるような関係を使用して、超音波画像上のユーザが選択した位置を、マンモグラフィ画像上の対応する推定位置に関連づけるものであり、
トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像に適用できる
ユーザインターフェースシステム1310。」

エ 上記ア及びウを踏まえると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「マンモグラフィ及び超音波画像の位置を関連づけるユーザインターフェースであるユーザインターフェースシステム1310は、
ディスプレイ1312、キーボード1362及びマウス1360のような入力デバイス若しくは処理システム1370を備え、
処理システム1370は、処理ユニット1342、医療画像及びデータベースと他の情報との関連を記憶する内蔵ストレージ1372を含み、
ディスプレイ1312は、
デジタルマンモグラフィ画像を表示するマンモグラフィ表示エリア1314と、
3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316との、
2つの領域を表示するものであり、
3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340は、乳頭を中心とした円であり、
ユーザインターフェースシステム1310は、
超音波ビューである冠状ビュー1340上の位置を選択すると、
それに応答して、マンモグラフィ画像のCC及びMLO上の対応する位置を推定し自動的に強調するものであって、
以下の式(12)、(13)、(14)及び(15)に示されるような関係を使用して、超音波画像上のユーザが選択した位置を、マンモグラフィ画像上の対応する推定位置に関連づけるものであり、
トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像に適用できる
ユーザインターフェースシステム1310。

3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340上のマークインジケータを表示した破線の円1344の位置が、x_(u)、y_(u)及びz_(u)であり、皮膚表面から深さz_(u)にマークインジケータ1352がある超音波スキャンの横方向の断面1350における皮膚表面と胸壁とからの乳房組織の全厚さがT_(u)であって、乳頭から胸壁までの総距離がC_(m)である場合、

CCマンモグラフィビューにおいて
CCマンモグラフィ画像における、乳頭に対する距離、x_(m)、
CCマンモグラフィ画像における距離、y_(m)、
である時に

x_(m)=x_(u) (12)
y_(m)=C_(m)(z_(u)/T_(u)) (13)

MLOマンモグラフィビューにおいて
MLOマンモグラフィ画像における距離、x_(m)、
MLOマンモグラフィ画像における距離、y_(m)、
関心領域の角度である角度、a_(u)、
マンモグラフィ画像の斜め画像角度、θ_(m)、
冠状ビュー1340上の乳頭からマークインジケータを表示した破線の円1344の距離、r_(u)、
である時に、

x_(m)=C_(m)(z_(u)/T_(u)) (14)
y_(m)=r_(u) cos(a_(u)-θ_(m)) (15)

である。」

2 引用文献2に記載された事項
令和2年9月30日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引2a)「【0027】
位置姿勢計測装置32は、第1の画像撮像装置31に接続されるプローブ40の位置姿勢を計測する。位置姿勢計測装置32は、例えば、米国Polhemus社のFASTRAK等で実現され、図2に示すセンサ座標系92(位置姿勢計測装置32が基準として定める座標系)を基準としたプローブ40の位置姿勢を計測する。プローブ40の位置姿勢を示す情報(位置姿勢データ)は、画像処理装置10に逐次的に入力される。なお、位置姿勢計測装置32は、プローブ40の位置姿勢を計測できるのであれば、どのような方式で位置姿勢の計測を行なっても良い。」

3 引用文献3に記載された事項
令和2年9月30日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引3a)「【0050】また本実施形態の異常陰影候補検出システムにおいては、画像のニップルPNの位置を基準位置としたが、図5に示すように、乳房と胸壁PK との境界線を基準位置として各異常陰影候補P1?P6の位置関係を求めるようにしてもよいし、ニップルPN から各異常陰影候補P1?P6までの距離と胸壁PK から各異常陰影候補P1?P6までの距離との比に基づいて、両画像間の異常陰影候補の位置関係を求めるようにしてもよい。このように比に基づいて位置関係を求めるのは、特に乳房の圧迫撮影においては、撮影方向ごとに圧迫度が異なる場合があり、絶対的な距離に基づいた両画像の位置関係が、必ずしも対応しなくなることが考えられるからである。」

4 引用文献4に記載された事項
令和2年9月30日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引4a)「【0079】
第一に、ボディマークBMの生成について説明する。まず、乳房Bの各部位P1?P5の位置座標(X、Y、Z)は第1の実施形態と同様に取得される。これらは3次元上の位置を表しているので、これらの位置情報を基に乳房の3次元的形状を推定することができる。プローブマーク生成部91はこのような推定された乳房の3次元的形状を基に3次元形状を示すボディマークBMを生成する。一例としては、図17(a)に示されるような乳房の斜視形態を模したものが挙げられる。(a)には特に示されていないが、このボディマークBMは、立体的形状をより明確にあらわすため、ワイヤーフレーム表示にしたり、複数の立方体ブロックによって表すのが好適である。本実施形態においては、プローブマークPMは、立方体ブロックの積み重なった状態によって表されるものとする。」

第6 当審拒絶理由についての判断
1 特許法第36条第6項第2号(明確性)について
当審は、本件補正前の本願請求項1には、「超音波プローブを用いて被検体の乳房を走査した際に前記超音波プローブが有する位置センサによって測定された位置情報に基づいて、前記乳房の模式図を生成し・・・前記乳房の模式図上に付された前記関心領域の位置に基づいて、前記トモシンセシス画像上の位置を求める演算部と」と記載されているが、「超音波プローブを用いて被検体の乳房を走査した際に前記超音波プローブが有する位置センサによって測定された位置情報に基づいて」「生成」される「前記乳房の模式図」とは、どのようなものであるか特定することができないし、「演算部」が「前記乳房の模式図上に付された前記関心領域の位置に基づいて」、どのようにして「前記トモシンセシス画像上の位置を求める」ことができるのか理解することができない旨通知したが、本件補正によって、本願発明1の「超音波プローブを用いて被検体の乳房を走査した際に前記超音波プローブが有する位置センサによって測定された位置情報に基づいて」「生成」される「前記乳房の模式図」は、「乳頭を中心とした円及び腋窩の位置を示す」ものであって、「演算部」は、「前記乳房の模式図における前記関心領域の位置に基づいて、前記模式図において前記関心領域を通り体軸方向又はX線管方向と平行な第1の直線と前記円との2つの交点を求め、当該2つの交点それぞれと前記関心領域との間の距離の比を求め、当該比を用いて、前記トモシンセシス画像上で前記関心領域を含む断面を決定する」旨補正されたので、上記理由は解消された。

2 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「マンモグラフィ及び超音波画像の位置を関連づけるユーザインターフェースであるユーザインターフェースシステム1310」は、本願発明1の「医用情報処理装置」に相当する。

(イ)引用発明の「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340」は、通常超音波プローブにより生成されるものであり、「乳頭を中心とした円であ」るから、引用発明の「乳頭を中心とした円であ」る「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340」と、本願発明1の「超音波プローブを用いて被検体の乳房を走査した際に前記超音波プローブが有する位置センサによって測定された位置情報に基づいて生成された、乳頭を中心とした円及び腋窩の位置を示す前記乳房の模式図」とは、「超音波プローブを用いて生成された、乳頭を中心とした円を示す前記乳房の模式図」である点で共通する。そして、引用発明の「内蔵ストレージ1372」は、「医療画像及びデータベースと他の情報との関連を記憶する」ものであって、「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340」も記憶されていることは明らかであるから、引用発明の「乳頭を中心とした円であ」る「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340」「を記憶する内蔵ストレージ1372」と、本願発明1の「超音波プローブを用いて被検体の乳房を走査した際に前記超音波プローブが有する位置センサによって測定された位置情報に基づいて生成された、乳頭を中心とした円及び腋窩の位置を示す前記乳房の模式図を記憶する第1の記憶部」とは、「超音波プローブを用いて生成された、乳頭を中心とした円示す前記乳房の模式図を記憶する記憶部」である点で共通する。

(ウ)引用発明の「ユーザインターフェースシステム1310は、超音波ビューである冠状ビュー1340上の位置を選択する」処理を行うものであって、「超音波ビューである冠状ビュー1340上の」「選択」される「位置」は、「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340上のマークインジケータを表示した破線の円1344の位置」であり、該処理は、「ユーザインターフェースシステム1310」の「処理システム1370」に含まれる「処理ユニット1342」が行うことは明らかである。
そうすると、引用発明の「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340上のマークインジケータを表示した破線の円1344」は、本願発明1の「関心領域」に相当するから、引用発明の「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340上のマークインジケータを表示した破線の円1344」「の位置を選択する」処理を行う「処理ユニット1342」は、本願発明1の「前記乳房の模式図における関心領域の位置を求める処理部」に相当する。

(エ)引用発明の「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340上のマークインジケータを表示した破線の円1344」の位置の情報は、「マンモグラフィ画像のCC及びMLO上の対応する位置を推定し自動的に強調する」ために、通常、ストレージ等の記憶装置に記憶されることから、該位置の情報は、「内蔵ストレージ1372」に記憶されていることは明らかである。そうすると、引用発明の「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340上のマークインジケータを表示した破線の円1344」の位置の情報を記憶する「内蔵ストレージ1372」と、本願発明1の「前記乳房の模式図における前記関心領域の位置を記憶する第2の記憶部」とは、「前記乳房の模式図における前記関心領域の位置を記憶する記憶部」である点で共通する。

(オ)引用発明の「ユーザインターフェースシステム1310」は、「トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像に適用できる」ものであって、「マンモグラフィ表示エリア1314」は、「3D超音波乳房画像を表示する」ものであるから、「内蔵ストレージ1372」に「記憶」された「医療画像」には、「トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像」である「3D超音波乳房画像」が含まれる。そして、「マンモグラフィ表示エリア1314」に表示される「トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像」である「3D超音波乳房画像」は、マンモグラフィ装置により取得されたものであって、本願発明1の「前記乳房の3次元画像であるトモシンセシス画像」に相当するから、引用発明のマンモグラフィ装置により取得された「マンモグラフィ表示エリア1314」に表示される「トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像」である「3D超音波乳房画像」を記憶する「内蔵ストレージ1372」と、本願発明1の「マンモグラフィ装置により取得された前記乳房の3次元画像であるトモシンセシス画像を記憶する第3の記憶部」とは、「マンモグラフィ装置により取得された前記乳房の3次元画像であるトモシンセシス画像を記憶する記憶部」である点で共通する。

(カ)引用発明は、「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340上のマークインジケータを表示した破線の円1344の位置」である「x_(u)、y_(u)及びz_(u)」に基づいて、「CCマンモグラフィビューにお」ける、「CCマンモグラフィ画像における、乳頭に対する距離、x_(m)、」及び「CCマンモグラフィ画像における距離、y_(m)、」を、式(12)及び(13)で求め、「マンモグラフィ画像のCC及びMLO上の対応する位置を推定し自動的に強調するものである。
そして、「マンモグラフィ画像のCC」「上の対応する位置」は、「マンモグラフィ表示エリア1314に」「表示」された「関心領域1322」であって、「関心領域1322が示された右CCビュー1334」は、「トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像」上の「関心領域1322」を含む断面であるから、「関心領域1322が示された右CCビュー1334」は、「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340上のマークインジケータを表示した破線の円1344の位置」に基づいて、「トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像」上で決定された「関心領域1322」を含む断面である「右CCビュー1334」であるといえる。
そうすると、引用発明の「ユーザインターフェースシステム1310」は、「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340上のマークインジケータを表示した破線の円1344の位置」に基づいて、「トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像」上で決定された「関心領域1322」を含む断面である「右CCビュー1334」を、式(12)及び(13)に示されるような関係を使用して求めるための演算部と、「トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像」上で決定された断面である「右CCビュー1334」を生成する画像生成処理部を有していることは明らかであるから、引用発明の「3D超音波乳房画像を表示する超音波表示エリア1316に表示された冠状ビュー1340上のマークインジケータを表示した破線の円1344の位置」に基づいて、「トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像」上で決定された「関心領域1322」を含む断面である「右CCビュー1334」を、式(12)及び(13)に示されるような関係を使用して求めるための演算部と、本願発明1の「前記乳房の模式図における前記関心領域の位置に基づいて、前記模式図において前記関心領域を通り体軸方向又はX線管方向と平行な第1の直線と前記円との2つの交点を求め、当該2つの交点それぞれと前記関心領域との間の距離の比を求め、当該比を用いて、前記トモシンセシス画像上で前記関心領域を含む断面を決定する演算部」とは、「前記乳房の模式図における前記関心領域の位置に基づいて、前記トモシンセシス画像上で前記関心領域を含む断面を決定する演算部」である点で共通し、引用発明の「トモシンセシスマンモグラフィ画像のような、3次元マンモグラフィ画像」上で決定された断面である「右CCビュー1334」を生成する画像生成処理部は、本願発明1の「前記トモシンセシス画像上で決定された断面の画像を生成する画像生成処理部」に相当する。

(キ)以上(ア)?(カ)より、本願発明1と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。

(一致点)「超音波プローブを用いて生成された、乳頭を中心とした円を示す前記乳房の模式図を記憶する記憶部と、
前記乳房の模式図における関心領域の位置を求める処理部と、
前記乳房の模式図における前記関心領域の位置を記憶する記憶部と、
マンモグラフィ装置により取得された前記乳房の3次元画像であるトモシンセシス画像を記憶する記憶部と、
前記乳房の模式図における前記関心領域の位置に基づいて、前記トモシンセシス画像上で前記関心領域を含む断面を決定する演算部と、
前記トモシンセシス画像上で決定された断面の画像を生成する画像生成処理部と
を備える、医用情報処理装置。」

(相違点1)前記乳房の模式図が、本願発明1は、「前記超音波プローブが有する位置センサによって測定された位置情報に基づいて生成された、乳頭を中心とした円及び腋窩の位置を示す」ものであるのに対し、引用発明は、「乳頭を中心とした円」であってどのように生成されたものであるか特定されていない点。

(相違点2)「前記乳房の模式図」、「前記乳房の模式図における前記関心領域の位置」及び「マンモグラフィ装置により取得された前記乳房の3次元画像であるトモシンセシス画像」が、本願発明1は、それぞれ「第1」?[第3の記憶部」の3つの記憶部に記憶されているのに対し、引用発明は、いずれも「内蔵ストレージ1372」に記憶されているものであって、本願発明1のような特定はなされていない点。

(相違点3)演算部における、前記乳房の模式図における前記関心領域の位置に基づく、前記トモシンセシス画像上で前記関心領域を含む断面の決定が、本願発明1は、「前記模式図において前記関心領域を通り体軸方向又はX線管方向と平行な第1の直線と前記円との2つの交点を求め、当該2つの交点それぞれと前記関心領域との間の距離の比を求め、当該比を用いて」の決定であるのに対し、引用発明は、「皮膚表面から深さz_(u)にマークインジケータ1352がある超音波スキャンの横方向の断面1350における皮膚表面と胸壁とからの乳房組織の全厚さ」及び「乳頭から胸壁までの総距離」を用いての決定である点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
「前記模式図において、前記超音波画像上の関心領域を通り体軸方向又はX線管方向と平行な第1の直線と前記円との2つの交点を求め、当該2つの交点それぞれと前記関心領域との間の距離の比を求め、当該比を用いて」、「前記乳房の模式図における前記関心領域の位置に基づ」く、「前記トモシンセシス画像上で前記関心領域を含む断面を決定する」構成は、引用文献1?4には記載されておらず、本出願前において周知の構成であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2?10について
本願発明2?10も、本願発明1の「前記模式図において、前記超音波画像上の関心領域を通り体軸方向又はX線管方向と平行な第1の直線と前記円との2つの交点を求め、当該2つの交点それぞれと前記関心領域との間の距離の比を求め、当該比を用いて」、「前記乳房の模式図における前記関心領域の位置に基づ」く、「前記トモシンセシス画像上で前記関心領域を含む断面を決定する」構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
本件補正により、補正後の請求項1?10は、「前記模式図において、前記超音波画像上の関心領域を通り体軸方向又はX線管方向と平行な第1の直線と前記円との2つの交点を求め、当該2つの交点それぞれと前記関心領域との間の距離の比を求め、当該比を用いて」、「前記乳房の模式図における前記関心領域の位置に基づ」く、「前記トモシンセシス画像上で前記関心領域を含む断面を決定する」という技術的事項を有するものとなった。当該「前記模式図において、前記超音波画像上の関心領域を通り体軸方向又はX線管方向と平行な第1の直線と前記円との2つの交点を求め、当該2つの交点それぞれと前記関心領域との間の距離の比を求め、当該比を用いて」、「前記乳房の模式図における前記関心領域の位置に基づ」く、「前記トモシンセシス画像上で前記関心領域を含む断面を決定する」構成は、原査定における引用文献A?C(当審拒絶理由における引用文献1?3)には記載されておらず、本願出願前における周知の構成でもないので、本願発明1?10は、当業者であっても、原査定における引用文献A?Cに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-02-03 
出願番号 特願2015-236960(P2015-236960)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 福島 浩司
磯野 光司
発明の名称 医用情報処理装置  
代理人 特許業務法人虎ノ門知的財産事務所  

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