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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1370837
審判番号 不服2020-4614  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-06 
確定日 2021-02-04 
事件の表示 特願2018-203500号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年1月24日出願公開、特開2019-10587号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成25年7月17日に出願した特願2013-148603号の一部を平成30年10月30日に新たな特許出願(特願2018-203500号)としたものであって、令和1年8月13日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月4日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月26日付け(送達日:令和2年1月7日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年4月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和2年4月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年4月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正により、令和1年10月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「遊技演出構造体を備える遊技機において、
前記遊技演出構造体は、少なくとも、
支持部材により支持され、動作演出を実行することが可能な可動部材と、 端部からの光の照射によって発光する発光パターンが形成される導光板と、
窓部を有する前面構造体と、
前記窓部を介して視認される表示手段と、
装飾部と、を備え、
前記表示手段は、
前記導光板が発光している時における前記導光板の非発光領域を介して遊技者が視認可能となるように演出画像を表示することが可能である遊技機。」は、審判請求時に提出された手続補正書(令和2年4月6日付け)における
「遊技演出構造体を備える遊技機において、
前記遊技演出構造体は、少なくとも、
支持部材により支持され、
動作演出を実行することが可能な可動部材と、
端部からの光の照射によって発光する発光パターンが形成される導光板と、
窓部を有する前面構造体と、
前記窓部を介して視認される表示手段と、
装飾部と、を備え、
前記表示手段は、
前記導光板が発光している時における前記導光板の非発光領域を介して遊技者が視認可能となるように演出画像を表示することが可能であり、前記発光パターンが発光する発光演出と前記演出画像とが関連した演出を実行可能である遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)。

2 補正の適否
本件補正は、「表示手段」において実行可能な演出に関して、補正前の請求項1に、「前記表示手段は、」「前記発光パターンが発光する発光演出と前記演出画像とが関連した演出を実行可能である」ことを加えるものであって、請求項1を限定することを含むものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0572】、【0595】?【0603】、【0639】?【0641】の記載、および、願書に最初に添付した図面の【図48】?【図49】、【図51】、【図56】の図示内容からみて、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Dは、分説するため当審で付した。)。
「A 遊技演出構造体を備える遊技機において、
B 前記遊技演出構造体は、少なくとも、
B1 支持部材により支持され、
B2 動作演出を実行することが可能な可動部材と、
B3 端部からの光の照射によって発光する発光パターンが形成される導光板と、
B4 窓部を有する前面構造体と、
B5 前記窓部を介して視認される表示手段と、
B6 装飾部と、を備え、
C 前記表示手段は、
前記導光板が発光している時における前記導光板の非発光領域を介して遊技者が視認可能となるように演出画像を表示することが可能であり、前記発光パターンが発光する発光演出と前記演出画像とが関連した演出を実行可能である
D 遊技機。」

(2)引用発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-175994号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線部は当審で付した。以下同様。)。
ア 記載事項
(ア)
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、表示装置の前方に移動する演出役物を光で装飾して演出効果を十分に得ようとすることが考えられるが、演出役物に発光源を搭載すると、演出役物の重量が増加して演出役物用の駆動源に負荷が掛かり易くなってしまう。この結果、演出役物がスムーズに駆動することができなくなり、却って演出効果が十分に得られない虞がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、演出用可動役物に発光源を備えていなかったとしても演出効果を十分に期待することができる遊技機を提供しようとするものである。」

(イ)
「【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、代表的な遊技機であるパチンコ遊技機を例に挙げて本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、説明においては、遊技者に近い側を前方、遠い側を後方とする。
パチンコ遊技機1は、図1に示すように、矩形状の機枠(外枠)2に前面枠(内枠)3を開閉可能な状態で軸着し、該前面枠3には矩形状の遊技盤5(図2参照)を前方から収納可能としている。また、前面枠3の前側には、側部(図1中、左側)が軸着された透明部材保持枠8を開閉可能に設け、該透明部材保持枠8に透視可能な透明部材9を保持し、透明部材9を通して遊技盤5の表面をパチンコ遊技機1の前方から透視できるように構成している。さらに、透明部材保持枠8の下部には上皿ユニット11を設け、透明部材保持枠8の下方には下皿ユニット12を上皿ユニット11に対して左右方向にずれた位置に配置している。また、下皿ユニット12の一側方(図1中、右側方)には、発射装置(図示せず)を操作するための発射操作ユニット(発射操作ハンドル)14を備え、他側方(図1中、左側方)には下側スピーカ15を備えている。さらに、上皿ユニット11の前側には、遊技中に遊技者が操作するための遊技演出用ボタン18を備え、透明部材保持枠8の上縁部の左右両側には可動式の発光装置(ムービングライト)20を備え、該発光装置20の下方には上側スピーカ21を備えている。」

(ウ)
「【0025】
センターケースユニット51は、遊技領域25のうち変動表示装置31の前方に配置された枠体構造のユニットであり、当該センターケースユニット51の中央部分には表示開口部56が遊技盤5の表裏方向へ貫通する状態で開設され、該表示開口部56から変動表示装置31の表示部31aを遊技盤5の前方へ臨ませている。具体的な構造を説明すると、図4に示すように、遊技盤本体22の表面のうち枠体装着開口部22aの開口縁に沿って止着される環状の装飾ベース57を備え、該装飾ベース57の上部には庇状の鎧部58を左右両側方へ向けて下り傾斜した状態で備えるとともに、装飾ベース57よりも前方へ突出した状態に設定している。また、鎧部58のうち普図始動ゲート36側(図4中、左側)の傾斜下端から縦長な側辺部59を装飾ベース57よりも前方へ突出した状態で備え、鎧部58と側辺部59とで円弧状の壁を形成して遊技球(詳しくは遊技領域25内を包 囲枠体30の上方から流下してくる遊技球)が鎧部58や側辺部59に当接可能とし、遊技球が包囲枠体30の内部へ入ることを規制している。そして、装飾ベース57の下部には、上面に遊技球が横方向(遊技盤5の表裏方向および左右方向)へ転動可能なステージ部60を遊技盤5の左右方向に沿って横長に延設し、装飾ベース57の前面のうち表示開口部56およびステージ部60を挟んで側辺部59とは反対側(図4中、右側)には、センターケースユニット51の一側を装飾する側部装飾部材62を止着している。」

(エ)
「【0033】
次に、枠体基部52について説明する。
枠体基部52は、図3および図9に示すように、遊技盤5の裏面側に止着される額縁状の基部ケース91を前側が開放した状態で備え、該基部ケース91の後部には矩形状の開口窓91aを遊技盤5の表裏方向へ貫通して開設し、基部ケース91の後方から変動表示装置31を装着して、変動表示装置31の表示部31aを開口窓91aおよびセンターケースユニット51の表示開口部56から包囲枠体30の前方へ臨ませている。さらに、開口窓91aの周縁の前側には、複数の演出用役物装置54(演出役物ユニット95、昇降役物ユニット96)を備えている。
【0034】
詳しくは、開口窓91aの外周縁の前側には額縁状のユニット取付枠97を備え、該ユニット取付枠97の内側開口の上縁部および左右両側縁部には複数の装飾材98を止着している。また、ユニット取付枠97の上辺部の前面には、演出役物ユニット95の一部を構成する第1可動役物ユニット101を装着して表示開口部56の上縁部と変動表示装置31との間に配置し、ユニット取付枠97のうち装飾パネル78側に位置する右側辺部の前面には、演出役物ユニット95の一部を構成する第2可動役物ユニット102を装着して装飾パネル78と変動表示装置31との間に配置している。さらに、ユニット取付枠97のうち球導入路64側に位置する左側辺部の前面には、LED等の発光体が実装された 取付枠発光基板104を装着して透明な取付枠レンズカバー105で前方から被覆し、ユニット取付枠97の下辺部には昇降役物ユニット96を装着して仕切り壁部71(詳しくは表示開口部56の下縁部に位置する仕切り壁部71)と変動表示装置31との間に配置している。そして、図2および図3に示すように、第1可動役物ユニット101が表示部31aの上方に位置し、第2可動役物ユニット102が装飾パネル78により前方から被覆された状態で表示部31aの側方に位置し、昇降役物ユニット96が仕切り壁部71により前方から被覆された状態で表示部31aの下方に位置するように構成されている。
【0035】
演出役物ユニット95は、第1可動役物ユニット101(本発明における上下動役物ユニットに相当)と第2可動役物ユニット102とを備えて演出動作を実行可能なユニットである。第1可動役物ユニット101は、図10および図11に示すように、ユニット取付枠97に止着される横長な可動役物ベースパネル110を備え、該可動役物ベースパネル110の前面の球導入路64寄り(図11中、左寄り)には、LED等の発光体が実装されたベース発光部(図示せず)を止着して透光性を有するベース装飾レンズカバー111で被覆し、ベース発光部から発生する光をベース装飾レンズカバー111に通して可動役物ベースパネル110の前方へ照射可能としている。また、可動役物ベースパネル110の前面のうち球流下領域82寄り(図11中、右寄り)には装飾動作ユニット112を装着している。
【0036】
装飾動作ユニット112は、図12に示すように、可動役物ベースパネル110に止着される動作ベース114と、該動作ベース114に回動可能な状態で軸着される短冊状の第1ユニットベース115(本発明におけるユニットベースに相当)と、該第1ユニットベース115を回動(揺動)させる第1ユニット駆動機構116とを備えている。そして、動作ベース114のうちベース装飾レンズカバー111側に位置する端部(図12中、左端部)には第1ユニット回動軸受118を遊技盤5の表裏方向に沿って貫通し、第1ユニットベース115の一端部(詳しくは球流下領域82側に位置する軸着端部(図12中、右端部)の裏面側からは第1ユニット回動軸119を遊技盤5の表裏方向に沿って延設し、第1ユニット回動軸119を第1ユニット回動軸受118へ挿通して第1ユニットベース115を動作ベース114へ軸着している。そして、第1ユニットベース115のうち第1ユニット回動軸119から外れた箇所と、動作ベース114のうち第1ユニット回動軸受118から外れた箇所とを第1ユニット駆動機構116で接続している。」

(オ)
「【0042】
第2可動役物ユニット102は、図16?図18に示すように、ユニット取付枠97に止着される第2ユニットベース150に、作動により装飾効果を発揮する複数(本実施形態では3つ)の第2装飾本体部151と、該第2装飾本体部151に装飾動作を実行させる第2本体駆動機構152とを搭載して構成されており、第2ユニットベース150の前面に第2装飾本体部151を第2ユニットベース150の長手方向に沿って並べて配置して、第2装飾本体部151を遊技盤5の前方から装飾パネル78の装飾視認窓部89を通して視認可能としている。また、最も下側に位置する第2装飾本体部151を他の第2装飾本体部151よりも前方の装飾パネル78側へ寄せた位置に配置している(図18(b)参照)。」

(カ)
「【0077】
さらに、遊技盤5は、包囲枠体30と変動表示装置31との間に、表示部31aに表示される演出表示とは異なる補助表示を実行して演出を行う補助演出ユニット260を備えている。補助演出ユニット260は、図32(a)に示すように、表示部31aの前方に重なって配置される矩形状の透明な導光板261と、該導光板261の外方に配置された補助表示光源262とを備えて構成されている。導光板261は、透明アクリルや透明ガラスなどの透光性部材で構成された平板であり、遊技者が当該導光板261を通して表示部31a上の演出表示を視認可能としている。また、表示部31a側を向いた裏面のうち遊技盤5の前方から見て表示部31aの各変動表示領域31bと重なる箇所には、変動表示領域31b毎に対応する補助表示領域265(左側補助表示領域265L,中央補助表示領域265C,右側補助表示領域265R)をそれぞれ設定している。また、各補助表示領域265にはドット溝267を複数刻設して、複数の花びらの輪郭を表現するドットパターンをそれぞれ施している。また、補助表示領域265毎に形成されたドット溝267には光屈曲部267aを形成し、当該補助表示領域265を照射対象として補助表示光源262から照射された光のみを光屈曲部267aにより導光板261の前方へ向けて屈曲させ、当該補助表示領域265を照射対象としない光については、導光板261の前方へ屈曲させずに導光板261の側方へ透過させるように構成されている。したがって、照射対象となった補助表示領域265においてのみドットパターンが屈曲光により光り、複数の花びらの輪郭を表示して補助表示を実行できるように構成されている。
【0078】
補助表示光源262は、補助表示領域265毎に対応して光を照射する照明装置269を導光板261の縁に沿って複数並べて構成されている。具体的には、導光板261の左右両側の上方には、導光板261の左右両側に位置する補助表示領域265に光を照射する照明装置269(左側表示用照明装置269L,右側表示用照明装置269R)をそれぞれ配置し、導光板261の側方(図32(a)中、左側方)には、導光板261の左右方向の中央に設定された補助表示領域265に光を照射する照明装置269(中央表示用照明装置269C)を配置している。各照明装置269は、図33(a)に示すように、導光板261の縁に沿って長尺な照明ケース272のうち導光板261側を開放し、該照明ケース272内にはLED等の発光素子273が実装された発光基板274を発光素子273が導光板261側を向いた状態で収納し、照明ケース272の開放口には、発光素子273からの光を拡散する拡散レンズ275を配置し、導光板261のうち照明装置269が対向する縁部全体に亘って光が照射されるように構成されている(図33(b)参照)。なお、各照明装置269の位置は、導光板261の上方または左側方に限定されない。要は、光屈曲部267aが照明装置269からの光を導光板261の前方へ屈曲可能であれば、導光板261の下方や右側方に配置してもよい。」

(キ)
「【0096】
そして、演出役物ユニット95の演出動作と、変動表示装置31における表示動作および補助演出ユニット260における表示動作との連動は、第1ユニットベース115の第1ユニット動作時(演出制御装置295による第1ユニット動作制御の実行時)に行われる。具体的には、演出制御装置295は、変動表示装置31の変動表示領域31bにおいて識別情報を変動表示させておき、図37のタイムチャートに示すように、第1ユニット動作制御を実行し始めて第1ユニットベース115が上昇状態から下方へ移動している最中に、左側表示用照明装置269Lおよび右側表示用照明装置269Rを点灯する制御を実行して、導光板261の左側補助表示領域265Lおよび右側補助表示領域265Rにおいて補助表示を行う(図38(a)参照)。また、第1ユニットベース115が下降状態へ変換したことを契機にして、左側表示用照明装置269Lおよび右側表示用照明装置269Rを消灯とともに中央表示用照明装置269Cを点灯する制御を実行して、導光板261の左側補助表示領域265Lおよび右側補助表示領域265Rにおける補助表示を停止するとともに中央補助表示領域265Cにおいて補助表示を行う(図38(b)参照)。
【0097】
さらに、第1ユニットベース115が下降状態から上方へ移動して上昇状態に戻る最中には、まず、第1ユニットベース115が上昇し始めたタイミングで、中央表示用照明装置269Cを消灯するとともに右側表示用照明装置269Rを点灯する制御を実行して、中央補助表示領域265Cにおける補助表示を停止するとともに右側補助表示領域265Rにおいて補助表示を行う。そして、第1ユニットベース115が上昇している途中、例えば、第1ユニットベース115の先端部が左側補助表示領域265Lの前方に到達したタイミングで、右側表示用照明装置269Rを消灯するとともに左側表示用照明装置269Lを点灯する制御を実行して、右側補助表示領域265Rにおける補助表示を停止するとともに左側補助表示領域265Lにおいて補助表示を行う。
【0098】
このようにして補助演出ユニット260が第1ユニットベース115の第1ユニット動作を契機にして補助表示を実行するので、第1可動役物ユニット101の演出動作を際立たせることができ、第1可動役物ユニット101による演出と補助演出ユニット260による演出との相乗効果を期待することができる。また、補助演出ユニット260が変動表示領域31bに対応して設定された補助表示領域265にて補助表示を実行し、さらに、演出制御装置295が第1ユニットベース115の第1ユニット動作および補助演出ユニット260における補助表示と、変動表示装置31における識別情報の変動表示と、を連動させる制御を実行するので、変動表示ゲームの結果態様に対する期待感を遊技者に与えることができ、遊技の興趣の向上を図ることができる。そして、補助演出ユニット260を導光板261と補助表示光源262とで構成し、導光板261上に設定された補助表示領域265には光屈曲部267aを形成し、該光屈曲部267aにより屈曲された光により補助表示を実行するように構成したので、従来にない斬新な演出表示を実行可能な補助 演出ユニット260を簡単な構成で実現することができる。また、導光板261を透明にしたので、発光表示される補助表示が宙に浮いているかのように遊技者に見せることができ、一層斬新な演出表示を行うことができる。しかも、補助演出ユニット260が補助表示を実行していない状態(非実行状態)においては、変動表示装置31における表示が見え難くなることがない。」

(ク)
「【0109】
また、演出制御装置295は、表示部31aに複数の花びらが散る様子の映像を表示する制御を実行し、第1可動役物ユニット101が上下動して揺動装飾部材311が揺動動作を実行している最中には、複数の花びらが揺動装飾部材311の揺動方向(左右方向)に沿って移動しながら散る様子の映像を表示する制御を実行する。このようにして変動表示装置31の表示部31aが第1ユニットベース115の第1ユニット動作を契機にして演出表示を実行すれば、第1可動役物ユニット101の揺動装飾部材311の演出動作(揺動および光の反射)を際立たせることができ、揺動装飾部材311による演出と変動表示装置31による演出との相乗効果を期待することができる。さらに、揺動装飾部材311が備えられた第1ユニットベース115を、表示部31aに表示中の識別情報の変動方向に沿って上下動させれば、特図変動表示ゲームの結果態様に対する期待感を遊技者に十分に与えることができ、遊技の興趣を高めることができる。」

イ 引用発明
上記ア(ア)?(キ)の記載事項、および、図面の図示内容を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?dは、本件補正発明のA?Dに対応させて付与した。)。
「a パチンコ遊技機1(【0020】)であって、
b 演出動作を実行可能なユニットであって、第1可動役物ユニット101と第2可動役物ユニット102とを具備する演出役物ユニット95(【0033】、【0035】)と、
b3 変動表示装置31の表示部31aの前方に重なって配置され、表示部31aの各変動表示領域31bと重なる箇所には、変動表示領域31b毎に対応する補助表示領域265(左側補助表示領域265L,中央補助表示領域265C,右側補助表示領域265R)がそれぞれ設定され、
各変動表示領域31b毎に対応する補助表示領域265には、複数の花びらの輪郭を表現するドットパターンがそれぞれ施され、
補助表示領域265毎に対応して光を照射する照明装置269を導光板261の縁に沿って複数並べて構成されている、補助表示光源262からの光を、照射対象となった補助表示領域265に照射することで、照射対象となった補助表示領域265においてのみドットパターンが屈曲光により光る、透光性部材で構成された平板である、補助表示を実行して演出を行う補助演出ユニット260に具備された導光板261(【0025】、【0077】?【0078】)と、
b4 中央部分に表示開口部56が遊技盤5の表裏方向へ貫通する状態で開設されたセンターケースユニット51(【0025】)と、
b5 表示開口部56から、表示部31aを遊技盤5の前方へ臨ませている変動表示装置31(【0025】)と、を備え、
b1、b2 上下動する第1可動役物ユニット101には、第1ユニットベース115を有する装飾動作ユニット112が装着され、第1ユニットベース115の一端部からは、第1ユニット回動軸119が遊技盤5の表裏方向に沿って延設され(【0035】?【0036】、【0109】)、
b6 第2可動役物ユニット102は、作動により装飾効果を発揮する複数の第2装飾本体部151を搭載して構成され(【0042】)、
c 第1ユニットベース115の第1ユニット動作時(演出制御装置295による第1ユニット動作制御の実行時)に、
第1ユニットベース115が下降状態へ変換したことを契機にして、左側表示用照明装置269Lおよび右側表示用照明装置269Rを消灯とともに中央表示用照明装置269Cを点灯する制御を実行して、導光板261の左側補助表示領域265Lおよび右側補助表示領域265Rにおける補助表示を停止するとともに中央補助表示領域265Cにおいて補助表示を行うことで、演出役物ユニット95の演出動作と、変動表示装置31における変動表示動作および補助演出ユニット260における補助表示動作との連動を行い、
演出制御装置295が第1ユニットベース115の第1ユニット動作および補助演出ユニット260における補助表示と、変動表示装置31における識別情報の変動表示と、を連動させる制御を実行する(【0096】、【0098】)
d パチンコ遊技機1(【0020】)。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本件補正発明の構成A?Dと引用発明の構成a?dについて、それぞれ(a)?(d)の見出しを付して行った。)。
(b1、b2)
引用発明における構成b1、b2の「第1ユニット回動軸119」は、本件補正発明における構成B1の「支持部材」に相当する。
そして、引用発明における構成b1、b2の「第1可動役物ユニット101」を備える「演出役物ユニット95」は、構成bによると、「演出動作を実行可能なユニットである」から、「演出役物ユニット95」を構成する「第1可動役物ユニット101」も、「演出動作を実行可能なユニット」である。
したがって、引用発明における「演出役物ユニット95」が有する「上下動する第1可動役物ユニット101」は、本件補正発明における「可動部材」に相当する。
ゆえに、引用発明の構成b1、b2は、本件補正発明の構成B1、B2に相当する。

(b3)
引用発明における「補助表示領域265毎に対応して光を照射する照明装置269を導光板261の縁に沿って複数並べて構成されている、補助表示光源262からの光」は、「導光板261の縁」から「照射」されることから、本件補正発明における「端部からの光」に相当する。
そして、引用発明における「屈曲光により光る」「変動表示領域31b毎に対応する補助表示領域265に」「それぞれ施され」ている「複数の花びらの輪郭を表現するドットパターン」は、本件補正発明における「発光する発光パターン」に相当する。
また、引用発明における「導光板261」は、本件補正発明における「導光板」に相当する。
したがって、引用発明における構成b3は、本件補正発明における構成B3に相当する。

(b4)
引用発明における「表示開口部56」、「センターケースユニット51」は、それぞれ、本件補正発明における「窓部」、「前面構造体」に相当する。
したがって、引用発明における構成b4は、本件補正発明における構成B4に相当する。

(b5)
引用発明における構成b5の「表示開口部56から、」「表示部31aを遊技盤5の前方へ臨ませている変動表示装置31」は、「表示開口部56」を通して、「変動表示装置31の表示部31a」を視認可能であるから、本件補正発明における構成B5の「窓部を介して視認される表示手段」に相当する。

(b6)
引用発明における構成b6の「作動により装飾効果を発揮する複数の第2装飾本体部151を搭載して構成され」た「第2可動役物ユニット102」は、本件補正発明における構成B6の「装飾部」に相当する。

(b)
上記(b1、b2)?(b6)より、引用発明における「第1可動役物ユニット101」、「導光板261」、「センターケースユニット51」、「変動表示装置31」、および、「第2可動役物ユニット102」を併せて構成される演出手段は、本件補正発明における構成Bの「遊技演出構造体」に相当する。

(a、d)
上記(b)より、引用発明における「第1可動役物ユニット101」、「導光板261」、「センターケースユニット51」、「変動表示装置31」、および、「第2可動役物ユニット102」を併せて構成される演出手段を備える「パチンコ遊技機1」は、本件補正発明における「遊技演出構造体」を備える「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明における構成a、dは、本件補正発明における構成A、Dに相当する。

(c)
引用発明における「第1ユニットベース115の第1ユニット動作時(演出制御装置295による第1ユニット動作制御の実行時)」は、「中央表示用照明装置269C」が「点灯」される「制御」が「実行」される時であるから、本件補正発明における「導光板が発光している時」に相当する。
そして、引用発明において、「左側表示用照明装置269Lおよび右側表示用照明装置269Rを消灯」し、「導光板261の左側補助表示領域265Lおよび右側補助表示領域265Rにおける補助表示を停止する」と、「透光性部材で構成された平板」(構成b3)である「導光板261の左側補助表示領域265Lおよび右側補助表示領域265R」を介して、後方に配置された「変動表示装置31の表示部31aの」左側および右側の「変動表示領域31b」(構成b3)における「識別情報の変動表示」が視認可能となるものと認める。
ここで、引用発明における「変動表示」される「識別情報」、「左側表示用照明装置269Lおよび右側表示用照明装置269Rを消灯」「する制御を実行して、」「補助表示を停止」された「導光板261の左側補助表示領域265Lおよび右側補助表示領域265R」は、それぞれ、本件補正発明における「演出画像」、「導光板の非発光領域」に相当する。
そうすると、引用発明における、「左側表示用照明装置269Lおよび右側表示用照明装置269Rを消灯」し、「導光板261の左側補助表示領域265Lおよび右側補助表示領域265Rにおける補助表示を停止する」と、「透光性部材で構成された平板」である「導光板261の左側補助表示領域265Lおよび右側補助表示領域265R」を介して、後方に配置された「変動表示装置31の表示部31aの」左側および右側の「変動表示領域31b」における「識別情報の変動表示」が視認可能となることは、本件補正発明における「導光板の非発光領域を介して遊技者が視認可能となるように演出画像を表示することが可能であ」ることに相当する。
また、引用発明における「演出制御装置295が第1ユニットベース115の第1ユニット動作および補助演出ユニット260における補助表示と、変動表示装置31における識別情報の変動表示と、を連動させる制御を実行する」ことは、「第1ユニット動作および」「補助表示と、」「識別情報の変動表示」「を連動させる」ことであるから、本件補正発明における「発光パターンが発光する発光演出と演出画像とが関連した演出を実行可能である」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成cの「変動表示装置31」は、本件補正発明における構成Cの「表示手段」に相当する。

(e)
上記(a)?(d)によれば、本件補正発明と引用発明は、
[一致点]
「A 遊技演出構造体を備える遊技機において、
B 前記遊技演出構造体は、少なくとも、
B1 支持部材により支持され、
B2 動作演出を実行することが可能な可動部材と、
B3 端部からの光の照射によって発光する発光パターンが形成される導光板と、
B4 窓部を有する前面構造体と、
B5 前記窓部を介して視認される表示手段と、
B6 装飾部と、を備え、
C 前記表示手段は、
前記導光板が発光している時における前記導光板の非発光領域を介して遊技者が視認可能となるように演出画像を表示することが可能であり、前記発光パターンが発光する発光演出と前記演出画像とが関連した演出を実行可能である
D 遊技機。」の点で一致し、相違点はない。

よって、本件補正発明は、引用発明である。

(4)請求人の主張について
請求人は、令和2年4月6日付けの審判請求書の「3.(3)新規性欠如、進歩性欠如を解消したことについて」(ii)(イ)対比」において、次の主張をする。
「・・・引用文献1には、桜の花弁が発光しない『非発光領域』を介して視認可能な演出画像が表示されることが記載されておらず、また、桜の花弁が発光しない『非発光領域』に何らかの画像が表示されるとしてもその画像と導光板261の発光パターンとが関連した演出を実行することについても記載されていない。
このため、引用文献1に開示の発明は、本願発明と同一ではない。
また、引用文献1に開示の発明が、演出画像に対応する領域が発光せずにその周囲の領域が発光するので、導光板の発光を表示演出のエフェクトとして用いることができ、演出効果が向上する、という効果を奏し得ないことから、かかる効果の相違を参酌すると、本願発明は、引用文献1に開示の発明に基づいて進歩性を欠くものではない。」

そこで、請求人の上記主張について検討する。
上記(3)(c)において検討したように、引用発明における「変動表示」される「識別情報」、「左側表示用照明装置269Lおよび右側表示用照明装置269Rを消灯」「する制御を実行して、」「補助表示を停止」された「導光板261の左側補助表示領域265Lおよび右側補助表示領域265R」は、それぞれ、本件補正発明における「演出画像」、「導光板の非発光領域」に相当する。
したがって、引用発明は、「左側表示用照明装置269Lおよび右側表示用照明装置269Rを消灯」し、「導光板261の左側補助表示領域265Lおよび右側補助表示領域265Rにおける補助表示を停止する」と、「透光性部材で構成された平板」である「導光板261の左側補助表示領域265Lおよび右側補助表示領域265R」を介して、後方に配置された「変動表示装置31の表示部31aの」左側および右側の「変動表示領域31b」における「識別情報の変動表示」が視認可能となるものである。

また、引用発明は、「左側表示用照明装置269Lおよび右側表示用照明装置269Rを消灯とともに中央表示用照明装置269Cを点灯する制御を実行」するものであるから、点灯された「中央表示用照明装置269C」から照射される光による、エフェクト効果を発揮するものである。
したがって、引用発明は、本件補正発明と同様の効果を奏するものである。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(5)小括
上記(3)、(4)において検討したように、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 まとめ
上記3において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和1年10月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「A 遊技演出構造体を備える遊技機において、
B 前記遊技演出構造体は、少なくとも、
B1 支持部材により支持され、
B2 動作演出を実行することが可能な可動部材と、
B3 端部からの光の照射によって発光する発光パターンが形成される導光板と、
B4 窓部を有する前面構造体と、
B5 前記窓部を介して視認される表示手段と、
B6 装飾部と、を備え、
C-2 前記表示手段は、
前記導光板が発光している時における前記導光板の非発光領域を介して遊技者が視認可能となるように演出画像を表示することが可能である
D 遊技機。」

2 拒絶の理由(令和1年8月13日付け)
原査定の拒絶の理由は、
「(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」という理由を含んでいる。

引用文献1:特開2012-175994号公報

3 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である特開2012-175994号公報(前記「第2 3(2)」における「引用文献1」に対応する。)の記載事項及び引用発明の認定については、前記「第2 3(2)引用文献」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]」で検討した本件補正発明の「表示手段」において実行可能な演出に関して、「前記表示手段は、」「前記発光パターンが発光する発光演出と前記演出画像とが関連した演出を実行可能である」との限定を省くものである。

そうすると、本件補正発明における構成Cの限定を省いてC-2とした本願発明と引用発明とは、
「A 遊技演出構造体を備える遊技機において、
B、B1、B2 前記遊技演出構造体は、少なくとも、
支持部材により支持され、動作演出を実行することが可能な可動部材と、
B3 端部からの光の照射によって発光する発光パターンが形成される導光板と、
B4 窓部を有する前面構造体と、
B5 前記窓部を介して視認される表示手段と、
B6 装飾部と、を備え、
C-2 前記表示手段は、
前記導光板が発光している時における前記導光板の非発光領域を介して遊技者が視認可能となるように演出画像を表示することが可能である
D 遊技機。」の点で一致し、相違する点はない。

したがって、本願発明は、引用発明である。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-11-17 
結審通知日 2020-11-24 
審決日 2020-12-08 
出願番号 特願2018-203500(P2018-203500)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀 圭史  
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 澤田 真治
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  

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