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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A61M
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A61M
管理番号 1371049
審判番号 訂正2020-390073  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2020-08-19 
確定日 2021-01-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6566159号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6566159号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、3について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第6566159号(以下「本件特許」という。)は、平成29年6月2日(優先権主張 平成28年6月3日)を国際出願日とする特願2018-521150号の一部を平成31年4月26日に新たな特許出願(特願2019-86613号)としたものである。その後、令和1年8月9日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:令和1年8月28日)がされ、令和2年8月19日に本件訂正審判が請求され、令和2年10月29日に上申書が提出されたものである。

第2 請求の趣旨
本件訂正審判は、本件特許の特許請求の範囲を本件審判請求書(以下、「請求書」という。)に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、3について訂正することを認める、との審決を求めるものであって、その請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。

1.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2において、「前記係止片は、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、」とあるのを、「前記係止片は、弾性変形可能で、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、」と訂正する。

2.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3において、「前記係止片は、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される」とあるのを、「前記係止片は、弾性変形可能で、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記拡開部の内部にあって、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される」と訂正する。

第3 当審の判断
1 訂正の目的
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項2の「係止片」を「弾性変形可能」なものに限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項3の「係止片」を「弾性変形可能で」あって「拡開部の内部にあ」るものに限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(1)訂正事項1について
願書に添付した明細書には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した(以下同様。)。
ア 「係止片74,74が針ハブ本体26のテーパ状面34により外周側へ押圧されつつ係止爪78,78がテーパ状面34に対して摺動せしめられる。これにより、係止片74,74には内周側への弾性復元力が付勢力として及ぼされる。」(【0069】)

イ 「係止片74,74の係止爪78,78が針ハブ本体26のテーパ状面34を乗り越えて弾性復帰して、係止凹部36内に入り込むようになっている。」(【0070】)

ウ 「係止部(係止片74,74)の外周側に向かって突出するように設けられていてもよい。尤も、変形量制限部は、拡径部の内周面に設けられる態様に限定されるものではなく、例えば係止部の外周面に設けられて、係止部の外周側への弾性変形時に拡径部の内周面に当接することで、その変形が制限されるようになっていてもよい。」(【0104】)

以上のように、係止片が弾性変形可能であることは、願書に添付した明細書に記載されているから、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2における、「係止片」を「弾性変形可能」なものとする訂正は、上記(1)において検討したとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

また、願書に添付した明細書には、以下の事項が記載されている。
ア 「拡開部が、互いに直交する小径部と大径部とを備えた略楕円筒形状とされており、該大径部の周壁で覆われた内部に前記係止部が設けられている」(【0023】)

イ 「拡開部としての拡径部64」(【0054】)
「拡径部64の内部には、断面が、図6中の左右方向寸法より図6中の上下方向寸法の方が大きくされた略長円形状とされて、且つ、基端側に向かって図6中の上下方向寸法が次第に大きくなる内部空間70が、針先プロテクタ10を貫通する内孔60の基端側に形成されている。」(【0056】)
「かかる内部空間70内において、周壁58の内周面65からは、内部に突出する一対の係止部としての係止片74,74が一体的に形成されている。」(【0058】)

ウ 「係止片74,74が、かかる略楕円形状の拡径部64を構成する大径部68,68の内側に設けられている」(【0078】)

以上のように、係止片が拡開部の内部にあることは、願書に添付した明細書に記載されているから、訂正事項2における、「係止片」を「拡開部の内部にあ」るものとする訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

したがって、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、上記1(1)で検討したとおり、訂正前の特許請求の範囲の請求項2の「係止片」を限定するものであり、また、発明を特定するための事項の入替えや発明の対象の変更、発明のカテゴリーの変更を行うものでもない。
よって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、上記1(2)で検討したとおり、訂正前の特許請求の範囲の請求項3の「係止片」を限定するものであり、また、発明を特定するための事項の入替えや発明の対象の変更、発明のカテゴリーの変更を行うものでもない。
よって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。

4 訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
上記1で検討したとおり、訂正事項1及び2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。

4-1 訂正後の発明
訂正後の請求項2及び3に係る発明(以下、「本件訂正発明2」、「本件訂正発明3」という。)は、次のとおりである。

【請求項2】
針先を有する金属製の留置針と、
前記留置針の基端側に設けられた針ハブと、
筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え、
該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において、該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって、
a)前記針先プロテクタは、
針軸方向に延びる円筒状部を有し、
前記円筒状部の基端側には、前記係止片と、前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ、
前記大径部の周壁に、前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ、
前記係止片は、弾性変形可能で、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、
b)前記針ハブは、
前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して、前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と、
外部管路と接続して前記外部管路から前記留置針に至る流体流路を形成する接続筒部とを有し、
前記接続筒部の少なくとも一部が、前記係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している、留置針組立体。

【請求項3】
針先を有する留置針と、
前記留置針の基端側に設けられた針ハブと、
筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え、
該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において、該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって、
a)前記針先プロテクタは、
その先端部分に、翼状部を有し、
針軸方向に延びる円筒状部を有し、
前記円筒状部の基端側には、前記係止片と、前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ、
前記大径部の周壁に、前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ、
前記係止片は、弾性変形可能で、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記拡開部の内部にあって、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、
b)前記針ハブは、
前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して、前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と、
外部管路と接続して前記外部管路から前記留置針に至る流体流路を形成する接続筒部とを有し、
前記接続筒部の少なくとも一部が、前記係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している、留置針組立体。

4-2 請求人の主張
(1)請求人は、本件特許に基づいて、特許侵害訴訟を提起している(東京地方裁判所令和元年(ワ)第27053号 特許権侵害行為差止請求事件)ところ、被告の主張する無効の抗弁(甲4、甲5、甲11)は、理由はなく、訂正後の請求項2及び3に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(2)無効の抗弁の概要
上記無効の抗弁(甲4、甲5、甲11)に係る無効理由は次のとおりである。

理由1:本件特許は、甲第2号証に基く拡大先願(特許法第29条の2)の規定に違反してされたものであり、無効とされるべきものである。

理由2:本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、甲第3号証に記載の発明と同一の発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、無効にされるべきものである。

理由3:本件訂正発明2、3は、甲第3号証に記載の発明、甲第12号証に記載された技術及び甲第13号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をするものができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、無効にされるべきものである。

甲第1号証:東京地方裁判所令和元年(ワ)第27053号 特許権侵害行為差止請求事件 準備書面(原告その2)
甲第2号証:特開2017-196060号公報(同事件 乙2)
甲第3号証の1:中国実用新案第204219517号明細書(同事件 乙23)
甲第3号証の2:中国実用新案第204219517号明細書抄訳(同事件 乙23抄訳)
甲第4号証:同事件 被告第2準備書面 抄録(表紙(1頁)、目次(2-3頁)、細目次(4-6頁)、第5 無効論(拡大先願違反)(34-39頁))
甲第5号証:同事件 被告第3準備書面
甲第6号証:特許第3134920号公報(同事件 乙1)
甲第7号証:米国特許出願公開第2004/0236287号明細書(同事件 乙16、甲11)
甲第7号証の2:米国特許公開第2004/0236287号明細書抄訳(同事件 乙16、甲11抄訳)
甲第8号証:再公表特許第2006/123645号(同事件 乙17)
甲第9号証:再公表特許第2007/083770号(同事件 乙18)
甲第10号証:国際公開第2009/021263号(同事件 乙19)
甲第10号証の2:国際公開第2009/021263号抄訳
甲第11号証:同事件 被告第5準備書面
甲第12号証:米国特許出願公開第2007/0260190号明細書(同事件 乙36)
甲第13号証:中国実用新案第200951238号明細書(同事件 乙37)

以下、「甲第2号証」を「甲2」といい、甲2に記載された発明を「甲2発明」という。他の甲号証も同様である。

4-3 甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明について
ア 甲2の記載事項及び甲2発明について
甲2(特願2016-88440号(特開2017-196060号公報))は、本件特許の優先日(平成28年6月3日)前に特許出願(平成28年4月26日)され、本件特許の優先日後に公開(平成29年11月2日)されたものであって、その出願人(株式会社トップ)は本件特許に係る出願の出願人(ニプロ株式会社)とは異なる。

甲2には、以下の記載がある。
(ア)「【0030】
図1に示すように、本実施形態のプロテクタ付き医療用針1は、前端が鋭利な針管2を支持するハブ3と、ハブ3が組み付けられる筒状のプロテクタ4と、プロテクタ4に外嵌された一対の翼状部材5とを備える。
【0031】
プロテクタ4はポリプロピレン樹脂等の射出成形により形成されて針管2を収容可能とされており、翼状部材5は塩化ビニル樹脂等の軟質樹脂の射出成形により形成されている。
【0032】
図2Aに示すように、ハブ3は、後端に可撓性チューブ6が接続されるハブ基部7と、該ハブ基部7の先端から先端方向に延びる円筒状の小円筒部71とからなる。この小円筒部71の先端に、針管2の後端部が支持される。」

(イ)「【0034】
図2B及び図2Cに示すように、小円筒部71は、先端側に針管2が挿入されて支持される針管支持部72aを備え、また、ハブ基部7は、後端側に可撓性チューブ6が接続される接続管部72bを備えている。この針管支持部72aと接続管部72bとは、中間に設けられた空洞部72cを介して相互に連通している。
【0035】
ハブ基部7の後端部には、図2A及び図2Cに示すように、小円筒部71の中心軸に対して対称となるように、1対の腕部73,73が設けられている。腕部73,73は、ハブ基部7との間に間隔を存して、小円筒部71の長さ方向に沿って設けられている。腕部73の先端部には頸部73aを介して鉤部73bが設けられており、鉤部73bの先端には小円筒部71に近接する側を鋭利とする傾斜面73cが先端側から後端側に向けて形成されている。」

(ウ)「【0037】
図2A乃至図2Cに示すように、小円筒部71の先端部の外周面上には、第1突出部74と第2突出部75とが設けられている。第1突出部74は、小円筒部71の先端に設けられ、第2突出部75は、第1突出部74より後端側に、第1突出部74との間に第1の所定間隔を存して設けられている。
【0038】
第1突出部74は、先端側から見たときに、腕部73,73を結ぶ線と直交する線(本発明の第1の軸線に相当)に沿って突出している。また、第2突出部75は、先端側から見たときに、腕部73,73を結ぶ線(本発明の第2の軸線に相当)に沿って突出している。
【0039】
第1突出部74は、先端部にスロープ74aを備え、上下(図2A参照)対称に1対設けられている。スロープ74aは、先端から後端に向けて徐々に高さが高くなるよう形成されている。また、第2突出部75は、後端部にスロープ75aを備え、左右(図2A参照)対称に1対設けられている。スロープ75aは、先端から後端に向けて徐々に高さが低くなるよう形成されている。」

(エ)「【0043】
図3A乃至図3Cに示すように、プロテクタ4は、筒状の大円筒部41の後端部に平面視(図3B参照)において、先端側から後端側に次第に拡幅する拡幅部42を備える。大円筒部41の内部空間は、小円筒部71(突出部74,75を含む)が摺動可能とされている。
【0044】
拡幅部42の後端部には、腕部73,73が挿入される挿入部42a,42aを備えている。挿入部42aは、側方に窓部42bを備えており、挿入部42aに挿入された腕部73の鉤部73bが窓部42bに係止されるようになっている。即ち、ハブ基部7の腕部73、鉤部73bと、プロテクタ4の挿入部42a、窓部42bとにより第1係止手段が構成される。
【0045】
また、図3A乃至図3Cに示すように、プロテクタ4の後端部には、突片43,43と側壁部44,44とが設けられている。
【0046】
図3A及び図3Bに示すように、突片43,43は、プロテクタ4の軸線に向かって傾斜しつつ後端側に延びる板状部材である。突片43,43は、大円筒部41の後端部から連続して、左右(図3A参照)対称に一対設けられている。なお、この左右方向が、本発明におけるプロテクタ4の軸線と直交する第3の軸線に相当する。
【0047】
また、突片43は、プロテクタ4の軸線から外側に凸状に湾曲されている。一対の突片43,43の突端間は、第2突出部75,75の高さ以下の距離に形成されている。なお、本実施形態では、一対の突片43,43の突端間の距離は、小円筒部71の直径と実質的に等しい長さに形成されている。
【0048】
プロテクタ4は、前述のようにポリプロピレン樹脂からなるので、突片43は、大円筒部41の軸線から離れる方向(図3Aの左右方向)に弾性的に変形することができる。」

(オ)「【0055】
針管2が血管等に穿刺されるときには、図4Aに示すように、ハブ基部7の腕部73の先端に設けられた鉤部73bがプロテクタ4の窓部42bに係止されることにより、針管2がプロテクタ4から突出した状態とされている。」

(カ)「【0059】
その後、さらにハブ3を後退させて、図示を省略した針管2を大円筒部41内に収納すると、図5Bに示すように、突片43,43は第2突出部75,75を乗り越え、それ自体の弾性力により原状に復帰して、第1突出部74と第2突出部75と間の間隙に嵌合される。これにより、平面視(図5B参照)において、突片43,43の後端は、第2突出部75,75の先端により係止される。」

(キ)「【0062】
この結果、突片43及び側壁部44と突出部74,75との係止は、突片43を外方に変形させない限り解除不能であるので、大円筒部41内に収納された針管2は再突出することがなく、誤穿刺を防止することができる。」

(ク)図1及び図3から、プロテクタの大円筒部41は、針管2の軸方向に延びることが看て取れる。

(ケ)図3から、拡幅部42は、大円筒部41より大径で突片43よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えていることが看て取れる。

(コ)図1及び図3から、窓部42bは、拡幅部42の大径部の周壁に設けられていることが看て取れる。

(サ)図3及び【0046】の記載から、突片43は、プロテクタ4の軸線に向かって傾斜した内側面を有し、拡幅部42の内部にあって、大径部側に大円筒部41と一体形成される一方、小径部側には設けられていないことが看て取れる。

(シ)図6から、接続管部72bは、可撓性チューブ6が挿入されて接続するものと看て取れる。

(ス)図4から、接続管部72bは、腕部73が弾性変形する支点となる当該腕部73の基端部分よりも基端側に突出していないことが看て取れる。

上記(ア)?(ス)の各記載事項を整理すると、甲2には、次の甲2発明が記載されている。

「前端が鋭利な針管2と
前記針管2の後端部を支持するハブ3と、
筒状であって、前記ハブ3に組み付けられて該針管2を収容可能なプロテクタ4とを備え、
該針管2の前端側へ該プロテクタ4が移動せしめられた所定位置において、該プロテクタ4に設けられた突片43が該ハブ3に対して係止されることで該針管2の再突出及び誤穿刺が防止されるようになっているプロテクタ付き医療用針1であって、
前記プロテクタ4は、
翼状部5を有し、
針管2の軸方向に延びる大円筒部41を有し、
前記大円筒部41の後端部には、前記突片43と、前記大円筒部41より大径で前記突片43よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡幅部42とが設けられ、
大径部の周壁に、前記ハブ3が係止されて前記針管2が突出した状態に保持される窓部42bが設けられ、
前記突片43は、弾性的に変形することができ、前記プロテクタ4の軸線に向かって傾斜した内側面を有し、拡幅部42の内部にあって、前記大径部側に前記大円筒部41と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、
前記ハブ3は、
前記プロテクタ4の前記窓部42bに係止して、前記針管2を突出した状態に保持する腕部73と、
可撓性チューブ6が挿入されて接続する接続管部72bとを有し、
前記接続管部72bが、前記腕部73が弾性変形する支点となる当該腕部73の基端部分よりも基端側に突出していない、プロテクタ付き医療用針1。」

イ 甲3の1の記載事項及び甲3発明について
甲3の1には、以下の記載がある。
(ア)「


([0020] 実施例図1?4に示すように、本考案は、内腔12を有する外筒10と、内腔12内を往復動しかつ針22を有する針ハブ20と、針ハブ20と互いに係合される係合端部28と、係合端部28の内部と連通するチューブ30とを含み、外筒10の内腔12には、制限受部120及び係止受部122が設けられ、針ハブ20には、制限受部120と当接係合する制限部24及び係止受部122と互いにロック係合しかつ弾性変形可能な係止部26が対応して設けられる、安全な自滅式医療用針の具体的な実施例を提供する。制限受部120は、針ハブ20の継続的な移動を阻止し、係止受部122は、針ハブ20の逆方向への移動を阻止する。係止部26は、好ましくは、弾性的に開き可能な一対の拡張アームであり、拡張アームの末端と係止受部122とが平面で当接しており、制限受部120と制限部24との間が平面で当接する。
[0021] 外筒10は、一端が開口し、他端が半開放した中空楕円形筒であり、一端に設けられかつ対向して設けられる一対の係合窓14と、他端に設けられかつ針22に隣接した蝶形翼16とをさらに含む。開口は、針22の出し入れを許容し、制限受部120は、開口と係止受部122との間に位置しており、制限受部120と係止受部122との間には、拡張アームを通過させかつ拡張アームを徐々に収縮させる斜面が設けられる。
[0022] 針ハブ20の形状は、外筒10に合わせ、針22及び係合端部28の内部と連通する通路21と、係合窓14と互いに係合される係合端部28とをさらに含み、該係合端部28は、対応する係合窓14に係合されかつ弾性変形可能な一対の係合腕280と、チューブ30と連通する貫通孔282とを含む。制限部24は、針22と係止部26の間に位置すると共に、針ハブ20が外筒10から外れることを防止することができる。係合腕280の末端には、外向きに延伸し、かつ受圧変形時に係合窓14の内壁にロックされる凸部が設けられる。係合腕280と係合端部28との間に弾性変形を許容する隙間がある。針ハブ20と外筒10との間が楕円柱と穴との係合を用い、その他の形状の係合を用いてもよいため、針ハブ20が外筒10内で回転することを効果的に防止でき、針22と針ハブ20とが固定的に接続され、針22を使用し引き戻す場合に、係合端部28を摘んで、係合腕280を弾性変形させて係合窓14から外して係合端部28を解放することにより、針ハブ20と針22を後方へ引き戻す必要があり、また、針ハブ20と外筒10との間が楕円柱と穴との係合を用いるため、操作時の人為的な回動を防止する。)(甲3の2参照。)

(イ)図2から、針ハブ20は、針の基端側に設けられていることが看て取れる。

(ウ)図2、図4、[0020]及び[0022]の記載から、外筒10は、針ハブ20に外挿装着されて針22を後方へ引き戻すことで該針22を覆い、外筒22に対し針22を後方へ引き戻された所定位置において、該外筒に設けられた係止受部122が該針ハブ22の係止部26に対して係合されることで針22の再露出を防止するものであることが看て取れ、さらに、同じくされた所定位置において、該外筒に設けられた制限受部120が該針ハブ22の制限部24に対して係合されることで針ハブ20が外筒10から外れることを防止するものであることが看て取れる。

(エ)図1ないし図4及び[0021]の記載から、外筒10は、針22の軸方向に延びる楕円形筒部を有することが看て取れる。

(オ)図1ないし図4から、楕円形筒部の基端側には、係止受部122と、前記楕円形筒部より大径で前記係止受部122よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられていることが看て取れる。

(カ)図1ないし図3及び[0022]の記載から、係合窓14は、大径部の周壁に設けられ、針ハブ20が係合されて針22が突出状態に保持されるものと看て取れる。

(キ)図2及び図4から、係止受部122は、針ハブ20に向かって傾斜した内側面を有し、大径部側に楕円形筒部と一体成形されていると看て取れる。

(ク)図2から、貫通孔282は、チューブ30が挿入されて連通するものと看て取れる。

上記(ア)?(ク)の各記載事項を整理すると、甲3には、次の甲3発明が記載されている。

「針22と、
前記針22の基端側に設けられた針ハブ20と、
中空楕円筒であって、針ハブ20に外挿装着されて針22を後方へ引き戻すことで該針22を覆う外筒22とを備え、
外筒22に対し針22を後方へ引き戻された所定位置において、該外筒に設けられた係止受部122が該針ハブ22の係止部26に対して係合されることで該針22の再露出が防止され、該外筒に設けられた制限受部120が該針ハブ22の制限部26に対して係合されることで該針ハブ20が該外筒10から外れることが防止されるようになっている自滅式医療用針であって、
前記係止部26は弾性変形可能であり、
前記外筒22は、
針22に隣接した蝶形翼16を有し、
針22の軸方向に延びる楕円形筒部を有し、
前記楕円形筒部の基端側には、前記係止受部122と、前記楕円形筒部より大径で前記係止受部122よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ、
前記大径部の周壁に、前記針ハブ20が係合されて前記針22が突出状態に保持される係合窓14が設けられ、
前記係止受部122は、前記針ハブ20に向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側に前記楕円形筒部と一体成形され、
前記外筒20の前記係合窓14に係合して、針22を突出状態に保持する係合腕280と、
チューブ30が挿入されて連通する貫通孔282とを有している自滅式医療用針。」

ウ 甲6の記載事項
甲6には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は翼付留置針に関し、より詳しくは、使用後、留置針をプロテクタに仕舞う際に生じていた誤穿刺事故を防止するために、翼付保持筒にプロテクタ機能を付与し、単に留置針をスライドさせるだけで針先を翼付保持筒内に収容して保護することができる様にした翼付留置針に関する。」

(イ)「【0010】・・・そしてハブ2の基端部にはチューブ3の接続部24とこの接続部24から先端側に延びる一対の可撓性の係合腕21が設けられている。この係合腕21としては図2?5に示すような先端にフック211を有し、スリット212によってハブ2の軸方向に撓むことができるようにされたものが採用される。」

(ウ)「【0012】保持筒4の内壁には、さらにその係合孔41に近接して先端側にフランジ42が設けられており、このフランジ42には保持筒4の基端方向に延びる可撓性衝合枝43が設けられている。この可撓性衝合枝43は、ハブ2の環状溝23の幅と同等の長さを有しており、これと保持筒4のフランジ42とを係合部とし、ハブ2の環状凸部22と環状溝23とを被係合部とする第2係合手段が構成されている。この第2係合手段により、ハブ2が保持筒4の第2の位置にあるときに、環状凸部22の環状溝23側端面とフランジ42が衝合してハブ2の後方への移動が阻止され、かつ環状溝23のハブ2基端側の端面231と可撓性衝合枝43の先端が衝合してハブ2の前方への移動が阻止され、その結果、ハブ2は保持筒4の第2の位置に実質的に解除不能に係止される。」

(エ)「【0013】・・・第1の位置では、ハブ2と保持筒4は、ハブ2の係合腕21(正確には係合腕21のフック211)と保持筒4の係合孔41からなる第1係合手段によって相互に係合されており、翼付留置針を患者の皮膚に穿刺した時に、ハブ2が保持筒4の後方すなわち基端側に移動しないようなっている。」

(オ)「【0014】・・・環状溝23のハブ2基端側の端面231と可撓性衝合枝43の先端が衝合してハブ2の前方への移動が阻止される(図4、図5参照)。この時、カヌラ1の刃先11は完全に保持筒4の中に収容されている。」

(カ)図2から、接続部24は、係合腕21が撓む支点となる係合腕21の基端部分よりも基端側に突出していることが看て取れる。

(キ)図3及び図5から、可撓性衝合枝43は、ハブ2に向かって傾斜した内側面を有していることが看て取れる。

(ク)図2から、接続部24は、チューブ3に挿入されて接続するものと看て取れる。

上記(ア)?(ク)の各記載事項を整理すると、甲6には、次の甲6技術が記載されている。

「保持筒4に設けられた可撓性衝合枝43がハブ2に対して係止されることでカヌラ1の針先11を完全に保持筒4の中に収容する翼付留置針であって、
可撓性衝合枝43は、可撓性であって、前記ハブ2に向かって傾斜した内側面を有しており、
前記ハブ2は、
保持筒4の係合孔41に係合して、翼付留置針を患者の皮膚に穿刺した時に、ハブ2が保持筒4の基端側に移動しないようにしている係合腕21と、
チューブ3に挿入されて接続する接続部24とを有し、
前記接続部24は、係合腕21が撓む支点となる係合腕21の基端部分よりも基端側に突出している、翼付留置針。」

エ 甲7の記載事項
甲7には、以下の記載がある。
(ア)「[0032] Referring to FIGS.1 and 2, a first embodiment of the medical device 10 is shown. The medical device 10 generally includes a needle cannula 12, a hub 22, a needle shield 40, a release element 60 releasably connecting the hub 22 and needle shield 40 and a biasing member 80, for actuating (i.e., moving) the needle shield 40 to the safety, needle-enclosing position or configuration. The hub 22 is adapted for connection to a receptacle (not shown) of, for example, a blood collection set by way of a flexible tube 98 by means and procedures known in the art.」
([0032] 図1及び図2には、医療器具10の第1の実施形態が示されている。医療器具10は、針シールド40の作動(例えば、移動)によって、安全な針包囲位置または構成のために、針カニューレ12、ハブ22、針シールド40、ハブ22および針シールド40を解除可能に結合する解除部材60及び付勢部材80を含む。ハブ22は、当技術分野で知られている手段及び方法により可撓性管98によって、例えば、血液収集セットである容器(図示せず)への接続のために適合されている。)

(イ)「[0034] The hub 22 is preferably a unitary structure, which is desirably molded from a thermoplastic material. The hub 22 has a generally tubular-shaped body 24 with a proximal end 26 and a distal end 28. The body 24 has an outer surface 30 and defines an internal passageway or lumen 32 extending from proximal end 26 to distal end 28. The passageway 32 communicates with the lumen 18 defined in the needle cannula 12 to enable fluid, such as blood, to pass through the medical device 10 and to the tube 98 connecting the medical device 10 to the blood collection receptacle.
[0035] The proximal end 14 of needle cannula 12 is received within and supported by the distal end 28 of the body 24. Particularly, the proximal end 14 of the needle cannula 12 is disposed in the passageway 32, with the distal end 16 of needle cannula 12 projecting outward from the distal end 28 of the body 24. The needle cannula 12 is preferably secured to the hub 22 through the use of an appropriate medical grade adhesive, mechanical means, or the like. In particular, the proximal end 14 of the needle cannula 12 may be secured adhesively within the passageway 32 at the distal end 28 of the body 24 of the hub 22. The proximal end 26 of the body 24 may include a tapered or reduced diameter portion 34 having a shoulder 36, whose function will be discussed hereinafter. The proximal end 26 of the body 24 is generally adapted to cooperate with the tube 98 used to connect the medical device 10 to, for example, a blood collection receptacle. The passageway 32 at the distal end 28 of the body 24 preferably includes a reduced diameter portion or area 38 sized to accept and support the proximal end 14 of the needle cannula 12.」
([0034] ハブ22は、一体成形であり、熱可塑性材料から望ましくは成形されることが好ましい。ハブ22は、近位端26および遠位端28を有するほぼ管状の形状をした本体24を有している。本体24は、外側表面30を有し、遠位端28と近位端部26から延びる内側の通路または管腔32を規定する。通路32は、針カニューレ12の内腔18と連通する血液のような流体は、医療装置10と医療装置10を血液収集容器に接続している管98へと通過することを可能にする。
[0035] 針カニューレ12の近位端14は、本体24の遠位端28によって支持されている。特に、針カニューレ12の遠位端16が本体24の遠位端28から外方に突出し、針カニューレ12の近位端14は通路32内に配置される。針カニューレ12は、適当な医用接着剤、機械的手段、または類似物の使用を介してハブ22に固定されることが好ましい。特に、針カニューレ12の近位端14は、ハブ22の本体24の遠位端28で通路32内に接着固定されてもよい。本体24の近位端26は肩部36を有し、その機能は以下に説明するテーパまたは小径部分34を含むことができる。本体24の近位端26は、医療装置10を、例えば、血液収集容器に接続するために用いられる管98と協働するように適合されている。本体24の遠位端部28における通路32は、針カニューレ12の近位端14を受け入れて、支持するような大きさの直径の減少した部分または領域38を備えている。)

(ウ)「[0039] The needle shield 40 is secured releasably in the first position by a release element 60. The release element 60 is preferably fixed to the hub 22, for example, by a medical grade adhesive or by mechanical methods. The release element 60 has a body 62 with a first or proximal end 64 and second or distal end 66. The body 62 defines an internal bore or passageway 68 adapted to receive the hub 22. The body 62 of the release element 60 is generally comprised of an annular-shaped inner member 70 defining the passageway 68, and one or more locking arms 72 located about the inner member 70. An annular groove or pocket 74 is formed or defined by the inner member 70, the locking arms 72, and the outer surface 30 of the hub 22. The function of the annular groove or pocket 74 will be described hereinafter. While illustrated as a separate structure from the hub 22, the release element 60 may be integrally formed as part of the hub 22. The release element 60 is desirably molded from a thermoplastic material, either separate from or integrally with the hub 22 as indicated. Thus, the release element 60 may be considered to be part of the hub 22 in accordance with the present invention and generally forms a "grippable" or "graspable" portion of the hub 22, which extends proximally out from the needle shield 40. The release element 60 thus forms a convenient handle means for manipulating the medical device 10. An outer surface 75 of the body 62 of the release element 60 and, more particularly, the locking arms 72 may be textured providing a surface grip for ease in grasping and manipulating the medical device 10 during a fluid collection procedure. When formed as a separate structure, the release element 60 in this embodiment of the medical device 10 is preferably fixedly connected to the hub 22, for example by a medical grade adhesive or by mechanical methods, so that the locking arms 72 are positioned at fixed locations around the hub 22.
[0040] The body 62 of the release element 60 generally coaxially receives the proximal end 26 of the body 24 of the hub 22, as illustrated in FIGS. 1 and 2. In particular, the reduced diameter portion 34 at the proximal end 26 of the body 24 of the hub 22 is received in the annular-shaped inner member 70, and preferably extends proximally outward from the proximal end 64 of the body 62 of the release element 60 to cooperate with the tube 98. The inner member 70 defines a distal recess 76 opening to the internal passageway 68. The distal recess 76 has a larger diameter than the diameter of the internal passageway 68. The distal recess 76 is adapted to cooperate with the reduced diameter or tapered portion 34 defined by the body 24 of the hub 22. The shoulder 36 of the reduced diameter portion 34 engages the distal recess 76 in the first position of the needle shield 40 and prevents axial movement of the release element 60 along the body 24 of the hub 22 in the distal direction, as is most apparent in FIG. 2.
[0041] The locking arms 72 extend distally along the inner member 70 and terminate in integrally formed barbs or hooks 78 adapted to mate with the detents 58 provided at the proximal end 44 of the needle shield 40. In particular, as indicated previously, the detents 58 are formed in the outwardly bulged portion 56 at the proximal end 44 of the body 42 of the needle shield 40. The detents 58 and locking arms 72 form a locking element of the medical device 10. The engagement of the hooks 78 with the detents 58 secures the needle shield 40 in the first or retracted position. As indicated previously, the release element 60 is preferably fixedly connected to or integrally formed with the hub 22. Thus, the locking arms 72 and, more particularly, the hooks 78 are positioned at fixed locations around the hub 22 opposite the detents 58 to properly engage the detents 58 and secure the needle shield 40 in the first or retracted position.」
([0039] 針シールド40は、解放要素60によって第1の位置に解放可能に固定されている。解放要素60は、例えば、医用接着剤によって、または機械的な方法によってハブ22に固定されている。解放要素60は、第1の端部または近位端64と、第2の端部または遠位端66を有する本体62を有する。本体62は、ハブ22を受容するように適合される内部孔または通路68を画定する。解放要素60の本体62は、通路68を画定する環状の形状をした内側部材70と、内側部材70の周りに配置された1つまたは複数の係止アーム72から構成されている。環状溝またはポケット74は、内側部材70、係止アーム72、及びハブ22の外側表面30によって形成され、または画定される。環状溝またはポケット74の機能については後述する。ハブ22は別体の構造として図示されているが、解放要素60は、ハブ22の一部として一体的に形成されてもよい。示されたように、解放要素60は、ハブ22と分離して、または、ハブ22と一体的に、熱可塑性材料から成形されることが望ましい。それ故、放出要素60は、本発明に従ったハブ22の一部とみなすことができ、一般的にハブ22の”把持できる”または”掴める”部分を形成しており、これは、針シールド40から近位方向に外へ延びている。解除要素60は、医療装置10を操作するための便利なハンドル手段を構成している。放出要素60の本体62、とりわけ係止アーム72の外面75は、流体収集手順の間に医療装置10を把持し、操作するのを容易にするためのグリップを提供することができる。別体の構造として形成される場合に、医療器具10のこの実施形態では、解除要素60は、医用接着剤により、または機械的な方法によってハブ22に固定され、係止アーム72は、ハブ22の周囲の固定位置に設置されるようになっている。
[0040] 図1及び図2に示されるように、解放要素60の本体62は、一般的に、ハブ22の本体24の近位端26を同軸に受け入れる。特に、ハブ22の本体24の近位端26の小径部分34は、環状の内側部材70内に受容され、好ましくは、チューブ98と協働するために、解放要素60の本体62の近位端64から近位方向に外向きに延びている。内側部材70は、内部通路68に開口する遠位くぼみ76を画定している。遠位くぼみ76は、内部通路68の直径よりも大きな直径を有している。遠位くぼみ76は、ハブ22の本体24によって形成された縮径部又はテーパ部34と協働するように適合されている。図2において最も明らかなように、縮径部34の肩部36は、針シールド40の第1の位置において、遠位くぼみ76を係合し、遠位方向にハブ22の本体24に沿って解放要素60の軸方向移動を阻止する。
[0041] 係止アーム72は、内側部材70に沿って遠位方向に延び、針シールド40の近位端44に設けられた拘束部材58と係合するように適合される、一体的に形成された返しまたはフック78で終端する。具体的には、先に示したように、拘束部材58は、針シールド40の本体42の近位端44で外側に膨出した部分56に形成されている。拘束部材58及び係止アーム72は、医療装置10の係止要素を形成する。拘束部材58とフック78との係合は、針シールド40を第1の位置または後退位置で固定する。前述したように、解放要素60は、ハブ22と固定的に接続されているか、一体形成されている。このように、係止アーム72、より具体的には、フック78は、拘束部材58と係合するため、ハブ22の外周で拘束部材58に対向した決められた位置に位置合わせされ、針シールド40を第1の位置または後退位置に保持される。)

(エ)図1から、小径部分34は、チューブ98に挿入されて協働するものと看て取れる。

上記(ア)?(エ)の各記載事項を整理すると、甲7には、次の甲7技術が記載されている。

「針シールド40の移動によって、安全な針包囲位置となる医療装置10であって、
ハブ22は、
針シールド40の拘束部材58係合して、針シールド40を後退位置に保持する係止アーム72と、
チューブ98に挿入されて協働する小径部分34とを有し、
前記小径部分34は、係止アーム72から構成される解放要素60の近位端64から近位方向に外向きに延びている、医療装置10。」

オ 甲8の記載事項
甲8には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、使用後の翼状針による誤穿刺事故を防止しうるように、簡単な操作で使用後の翼状針をプロテクター内に収容して保護することができる機構を備えた翼状針組立体に関する。」

(イ)「【0019】
該針ハブ2は、図4に示されるように、針管1の基端部を保持する先端部21と、チューブ6が接続される基端部23、および該先端部21と基端部23とをつなぐ中間部22の3つの部材からなる。該針ハブ2は、該先端部21、該中間部22および該基端部23が、それぞれ接着などの方法により一体的に固着されたものであってもよいが、全体が射出成形などの公知の方法により一体成形されていてもよい。」

(ウ)「【0027】
前記第一係合手段としては、例えば針ハブ2の基端部23に設けられた第一係合部と、プロテクター3の基端部に設けられた第一被係合部とからなる手段が用いられる。具体的には、図1および図4に示されるように、該針ハブ2の基端部23には、該基端部23の外周面から先端側へと延在する可撓性の腕部232が設けられ、さらに該腕部232の先端部に外方向へ突出する突起233が第一係合部として設けられる。また、該プロテクター3の基端部には、貫通する孔31または内方向へ開口した凹部が第一被係合部として設けられる。該腕部232が外側へ付勢するように形成されており、該突起233がプロテクター3の内側から該孔31内に突出することにより、針ハブ2はプロテクター3に係合される。」

(エ)「【0030】
前記第二係合手段としては、例えばプロテクター3の基端部に設けられた第二係合部と、針ハブ2の先端部21に設けられた第二被係合部とからなる手段が用いられる。具体的には、図3および5に示されるように、プロテクター3の基端部には内方向へ突出する可撓性のフランジ32が第二係合部として設けられる。また、該針ハブ2の先端部21には、外方向へ突出する突部211と、該突部211の基端側に配置された溝部212とが第二被係合部として設けられる。該溝部212は、該フランジ32の軸方向長さと同じかまたは該軸方向長さよりもわずかに長く設計されている。該フランジ32は内側へ付勢するように形成されており、該溝部212内に嵌合することにより、先端側の端部が突部211と接合し、基端側の端部が溝部212の基端側の縁と接合するため、針ハブ2はプロテクター3に係合される。該溝部212は、針ハブ2の先端部21に設けられてもよいし、図3および図5に示されるように、針ハブ2の先端部21および中間部22の固着により形成されるものであってもよい。」

(オ)「【0036】
次に、本発明の翼状針組立体の使用方法を図面に基づいて説明する。 まず、翼状針組立体の針管1に被嵌されるキャップを取り外し、第一係合手段によって針管1の先端部がプロテクター4の先端側から突出する第一の位置に針ハブ2が係止された状態で、該針管1の刃先11を患者に穿刺する。医療処置終了後、翼状針組立体の針ハブ2の基端部23に設けられた腕部232が外側から押圧されることにより第一係合手段が解除され、バネ4により針ハブ2が基端側へと摺動して針管1がプロテクター3内に収容される。該針ハブ2が針管1がプロテクター内に完全に収容される第二の位置まで摺動すると、第二係合手段により該針ハブ2が解除不能に係止され、針管1が再度プロテクター3から露出することを防止する。」

(カ)図1、図4及び【0027】の記載から、基端部23は、腕部232が撓む支点となる腕部232の基端部分よりも基端側に突出しているしていることが看て取れる。

(キ)図3及び図6から、フランジ32は、針ハブ2に向かって傾斜した内側面を有していることが看て取れる。

(ク)図3から、基端部23は、チューブ6が挿入されて接続するものと看て取れる。

上記(ア)?(ク)の各記載事項を整理すると、甲8には、次の甲8技術が記載されている。

「プロテクター4に設けられたフランジ32が針ハブ2に対して係止されることで針管1が再度プロテクター3から露出することを防止する翼状針組立体であって、
前記フランジ32は、可撓性であって、針ハブ2に向かって傾斜した内側面を有しており、
前記針ハブ2は、
プロテクター3の孔31に係合して、前記針管1の先端部が突出する第一の位置で係止する腕部232と、
チューブ6が挿入されて接続する基端部23とを有し、
前記基端部23は、前記腕部232が撓む支点となる当該腕部232の基端部分よりも基端側に突出している、翼状針組立体。」

カ 甲9の記載事項
甲9には、以下の記載がある。
(ア)「【0006】
図19?図20Bには、従来の医療用針装置の他の一例が示めされている。図19?図20Bに示した医療用針装置は、硬質針100、ハブ200、チューブ300、およびハブ200をその内部に収容して保持可能とするシールド筒400から構成されている。シールド筒400にはその先端側に翼500が設けられている。ハブ200は、シールド筒400内を軸方向にスライド可能である。図19に示すように、硬質針100がシールド筒400の先端から所定長突出したときに、係合腕211のフック222とシールド筒400の係合孔410とを係合させれば、ハブ200のシールド筒400後端側方向へのスライドが阻止される。使用後は、係合腕211を指で摘まんで上記係合を解除し、ハブ200をシールド筒400の後端側方向へスライドさせる。図20Aおよび図20Bに示すように、環状凸部220が段差部420に衝突して、ハブ200のシールド筒400後端側方向への移動が阻止される。同時に、環状溝230の基端側面231と可撓性衝合枝430の先端が衝合して、ハブ200のシールド筒400先端側方向への移動も阻止される。この時、硬質針の100の刃先111は完全にシールド筒400の中に収容される(例えば、特許文献2参照)。」

(イ)図19、図20A及び【0006】の記載から、ハブ200は、係合腕211とチューブ300に挿入されて接続する部分とを有し、チューブ300に接続する部分は、係合腕211が撓む支点となる係合腕211の後端部分よりも後端側に突出していることが看て取れる。

(ウ)図20A、図20B及び【0006】の記載から、環状溝230の基端側面231は、ハブ200に設けられていることが看て取れる。

(エ)図20B及び【0006】の記載から、可撓性衝合枝430は、シールド筒400に設けられており、ハブ200に向かって傾斜した内側面を有していることが看て取れる。

上記(ア)?(エ)の各記載事項を整理すると、甲9には、次の甲9技術が記載されている。

「シールド筒400に設けられた可撓性衝合枝430がハブ200に対して衝突されることで硬質針100の刃先111がシールド筒400の中に収容された状態で移動を阻止する医療用針装置であって、
前記可撓性衝合枝430は、可撓性であって、ハブ200に向かって傾斜した内側面を有しており、
前記ハブ200は、
シールド筒400の係合孔410に係合して、前記硬質針100が突出した状態で移動を阻止する係合腕211と、
チューブ300に挿入されて接続する部分とを有し、
前記チューブ300に接続する部分は、前記係合腕211が撓む支点となる当該係合腕211の後端部分よりも後端側に突出している、医療用針装置。」

キ 甲10の記載事項
甲10には、以下の記載がある。
(ア)「Referring to figures 1 to 14 there is shown a first example of a retractable infusion or transfusion needle assembly 10 according to a first example of the invention. The retractable needle assembly 10 has an elongate housing 12 in which a needle sub assembly 14 is movable between an extended position, shown in figure 1 and a retracted position, shown in figure 11.
The needle sub assembly (see figure 2) comprises a hollow shaft 16 having a cannula 18 mounted at a front end 20. A plastics tube 22 may be mounted at the other end 24. Fluid may thus be supplied via the plastics tube 22 and bore 17 of hollow shaft 16 to the cannula 18 or vice versa. In the extended position the point 26 of the cannula 18 extends out of housing 12 and may be inserted into a patient's vein. In the retracted position the cannula, and in particular its point 26, is located within the housing 12 and is not exposed to the user.」(8頁21行-32行)
(図1?図14を参照すると、本発明の第1の例に係る格納式の注射用または輸血用針アセンブリ10の第1の例が示されている。格納式針アセンブリ10は細長いハウジング12を有し、その内部において、針サブアセンブリ14は、図1に示される伸長位置と図11に示される格納位置との間で移動可能である。
針サブアセンブリ(図2を参照)は、前側端部20に取り付けられたカニューレ18を有する中空シャフト16を含む。プラスチックチューブ22は、他端24に取り付けられてもよい。そして、流体は、プラスチックチューブ22および中空シャフト16の穴17を介してカニューレ18に、またはその逆向きに供給することができる。伸張位置では、カニューレ18の先端26はハウジング12から延在し、患者の静脈に挿入され得る。格納位置では、カニューレ、特にその先端26はハウジング12内に配置され、ユーザに対して露出されない。)

(イ)「The shaft 16 has an annular flange 28 located between its ends. The length of the shaft 16 and the location of the flange 28 depend on the length of the housing 12.
Located toward the upper end 24 of the shaft 16 are two resilient legs 30. These legs 30 extend backwards and away from the axis of the shaft 16 and (as seen in figure 8) at their free ends 32 have a surface 34 extending generally perpendicular to the axis of the shaft 16. A small protrusion 36 extends backwards beyond the surface 34. The legs 30 are flexible and may be bent toward the shaft 16 on application of an inwards directed force, springing back when the force is released.
The housing 12 comprises a main body 40 and an end body 42. The main body 12 is elongate and has a generally cylindrical bore 44 within which the cannula 18 and front portion of shaft 16 are located. 」(9頁6行-18行)
(シャフト16は、その両端の間に配置された環状フランジ28を有する。シャフト16の長さ、およびフランジ28の位置は、ハウジング12の長さによる。
シャフト16の上端24に向かって配置されているのは、2つの弾性脚30である。これらの脚30は、シャフト16の軸から離れて後方に延在し、(図8に見られるように)それらの自由端32において、シャフト16の軸とほぼ垂直に延びる表面34を有する。小突起36は、表面34を越えて後方に延在する。脚30は可撓性であり、内向きの力を加えるとシャフト16に向かって曲げることができ、力を解放すると弾性的に戻る。
ハウジング12は、本体(メインボディ)40と端部体(エンドボディ)42を含む。本体12は細長く、そして、内部にカニューレ18とシャフト16の先端とが配置される略円筒形の穴44を有している。)

(ウ)「The end body 42 has a first pair of diametrically opposed resilient legs 66 that extend rearwards and inwards toward the longitudinal axis. When assembled the legs 66 extend into the slots 58. The free ends 68 of these legs 66 extend inwards further than the outer diameter of the central annular flange 28 on shaft 16 and preferably engage with and are biased against the surface of the shaft 16. In the extended position the flange 28 is located between the legs 66 and the front end 46.」(10頁11行-17行)
(端部体42は、長手方向軸に向かって後方内向きに延在してなる直径方向に対向した第1対の弾性脚66を有する。組み立てると、脚66は、スロット58内に延在する。これらの脚66の自由端68は、シャフト16上の中央環状フランジ28の外径よりも内側に延在し、好ましくは、シャフト16の表面と係合し。かつシャフト16の表面に対してバイアスされる。伸長位置では、フランジ28は、脚66と前側端部46との間に配置される。)

(エ)「In the extended state the spring 52 is compressed and so biases the needle sub assembly 14 toward the rear end. However, this is prevented by the legs 30, and in particular surfaces 34, engaging the surfaces 35 on the end of the end body 42, as seen in figure 8.」(11頁19行-22行)
(伸張状態では、ばね52は圧縮され、針サブアセンブリ14を後端側に付勢する。しかしながら、これは、図8に示されるように、脚30、特に表面34が端部体42の表面35に係合することによって妨げられている。)

(オ)「The spring 52 pushes the shaft 16 rearwards until the flange 28 contacts the ends 68 of the legs 66 of the end body 42. As the shaft moves backwards the flange 28 pushes the legs 66 outwards, continues its backwards motion and passes the legs 66, which then snap back towards their unreflected state against the shaft 16. Movement continues until the flange 28 contacts the end of the end body 42. In this position the cannula point 26 is located wholly within the housing 14, as seen in figure 12 & 14 and the flange is located between the end of the end body 42 and the ends of the legs 66.
The legs 66 may engage the spring, but because the flange 28 extends radially more than the spring there will be an outer portion of the flange 28 that extends radially beyond the position of the legs 66. Attempting to extend the cannula 18 will result in the flange 28 contacting the ends 68 of the legs 66. The legs 66 are sized so that normal "accidental" force will resist and prevent any significant movement. If a user deliberately attempts to extend the cannula by application of excessive force the angle of the legs will cause the legs to deflect inwards rather than deflect outwards.
Thus once the cannula has been retracted it cannot be accidentally or easily extended again and either reused or merely exposed.」(13頁6行-23行)
(ばね52は、フランジ28が端部体42の脚66の端68と接触するまで、シャフト16を後方へ押圧する。シャフトが後方に移動すると、フランジ28は、脚66を外側に押し、その後方移動を継続し、脚66を通過して、脚66は、シャフト16に対して元の状態にスナップバックする。移動は、フランジ28が端部体42の端部に接触するまで継続する。この位置において、カニューレ先端26は、図12及び14に見られるように、ハウジング14内に全体が配置され、フランジは端部体42の端部と脚66の端部との間に配置されている。脚66は、ばねと係合するかもしれないが、フランジ28は、ばねよりも半径方向に延在しているので、脚66の位置を越えて半径方向に延在するフランジ28の外側部分が存在することになる。カニューレ18を伸長しようとすると、フランジ28が脚66の端68に接触する。脚66は、通常の「偶発的な」力がいかなる有意な動きにも抵抗し、それを防止するような大きさである。使用者が過度の力を加えることによってカニューレを故意に伸長しようとすると、脚部の角度は、脚部を外側にたわませるのではなく、内側にたわませる。
したがって、カニューレが格納させられると、カニューレは、偶発的にまたは容易に再び伸張され得ず、再使用されるかまたは単にさらされるかのいずれかであり得る。 )

(カ)図2及び図7から、プラスチックチューブ22に接続される他端24は、脚30が曲げられる支点となる部分、及び、脚30の後端部分よりも後端側に突出していることが看て取れる。

(キ)図5及び図13から、脚66は、シャフト16に向かって傾斜した内側面を有していることが看て取れる。

(ク)図7から、他端24は、プラスチックチューブ22に挿入されて接続するものと看て取れる。

上記(ア)?(ク)の各記載事項を整理すると、甲10には、次の甲10技術が記載されている。

「ハウジング12に設けられた脚66がシャフト16に接触されることでカニューレ18が格納されると容易に再び伸張され得ない格納式針アセンブリ10であって、
前記脚66は、弾性脚であって、シャフト16に向かって傾斜した内側面を有しており、
前記シャフト16は、
ハウジング12の表面35に係合して、前記カニューレ18が後端側への移動を妨げる脚30と、
プラスチックチューブ22に挿入されて接続される他端24とを有し、
前記他端24は、前記脚30が曲げられる支点となる部分、及び、脚30の後端部分よりも後端側に突出している、格納式針アセンブリ10。」

ク 甲12の記載事項
甲12には、以下の記載がある。
(ア)「[0016] Referring to FIGS. 1 to 3, the intravenous injection unit of the present invention comprises a needle set 10 including a connection end on a first end thereof so as to be connected with an end of a hose 13, and a needle 12 is connected to a second end of the needle set 10. A protrusion 14 and a wing 11 extend from an outer periphery of the needle set 10 at a distance. A connector 15 which is connected to the other end of the hose 13 so that medicine can be supplied to the hose 13 via the connector 15.
[0017] A sleeve 20 has a slot 21 longitudinally defined through a wall thereof and a head 23 is connected to a first end of the sleeve 20. The slot 21 is terminated before the head 23 and communicates with a second end of the sleeve 20. A plurality of stop plates 22 extending from an inner periphery of the first end of the sleeve 20 inclinedly and inward. Each of the stop plates 22 is a thin and flexible plate and can be pushed outward slightly.
[0018] The wing 11 and the protrusion 14 are movably engaged with the slot 21 and the hose 13 extends out from the first end of the sleeve 20. A cover 16 is removably connected to the needle set 10 and the needle 12 is received in the cover 16. When in use, the cover 16 is first removed and the wing 11 is taped to the patient's limb. Medicine is supplied via the hose 13 and enters the patient's vein via the needle 12.
[0019] After use, as shown in FIG. 4, the sleeve 20 is moved toward the needle set 10 until the protrusion 14 moves over and is engaged with the stop plates 22. By the engagement of the stop plates 22 and the protrusion 14, the sleeve 20 cannot be pulled backward so as to ensure that the needle 12 is received in the sleeve 20.」
([0016] 図1から図3までを参照すると、本発明の静脈注射ユニットは針セット10を備え、ホース13の端部と接続されるように、針セット10はその第1の端部に接続端部を含み、針12が針セット10の第2の端部に接続されている。突起部14および翼11が、少し離れて、針セット10の外周面から延在している。薬がコネクタ15を介してホース13に供給され得るように、ホース13の他方の端部に接続されているコネクタ15が設けられている。
[0017] スリーブ20が、その壁を貫通して長手方向に画定されているスロット21を有し、ヘッド23がスリーブ20の第1の端部に接続されている。スロット21はヘッド23の前に終端し、スリーブ20の第2の端部と連通している。複数の停止プレート22がスリーブ20の第1の端部の内周面から傾斜して内向きに延在している。停止プレート22の各々は薄い可撓性プレートであり、若干、外向きに押され得る。
[0018] 翼11および突起部14はスロット21と移動可能に係合され、ホース13はスリーブ20の第1の端部から延出している。カバー16が針セット10に取外し可能に接続されており、針12はカバー16内に受容されている。使用中の場合、カバー16は最初に除去され、翼11は患者の肢にテープで貼られる。薬がホース13を介して供給され、針12を介して患者の血管に入る。
[0019] 使用後、図4に示されている通り、スリーブ20は、突起部14が移動して停止プレート22と係合されるまで、針セット10に向かって移動される。停止プレート22と突起部14との係合により、スリーブ20は後方に引き戻されることが不可能となり、針12がスリーブ20内に受容されることを確実にする。)

(イ)図4から、停止プレート22は、針セット10に向かって傾斜した内側面を有していることが看て取れる。

上記(ア)?(イ)の各記載事項を整理すると、甲12には、次の甲12技術が記載されている。

「スリーブ20から延在している複数の停止プレート22が針セット10の突起部14に係合されることで針12がスリーブ20内に受容されることを確実にする静脈注射ユニットであって、
前記停止プレート22は、薄い可撓性プレートであり、若干、外向きに押され得るものであって、針セット10に向かって傾斜した内側面を有している、静脈注射ユニット。」

ケ 甲13の記載事項
甲13には、以下の記載がある。
(ア)「

」(3頁3行-4行)
(本考案は、医療機器の技術分野に関し、具体的には、使い捨ての安全な静脈点滴針である。)

(イ)「

」(4頁23行-5頁8行)
(本考案は、針11を除いて、いずれもプラスチック製であり、針キャップ12、ホース19及び針もと20は従来技術と同じであり、針もと20と点滴チューブとの接続方式も従来技術と同じである。図1に示すように、針キャップ12は針11に被覆され、ホース19は、針もと20により点滴チューブに接続され、次いで点滴ボトルに接続される。針11は、射出成形プロセスにより、針棒14の前端に装着可能であり、針棒14の後端には抜針ハンドル18が設けられ、両者は一体に接着される。スライドスリーブ16は針棒14に被覆され、針棒14の末端はホース19に接続される。針棒14の前部には外部係止溝13が設けられ、抜針ハンドル18には外部係止ブロック17が設けられ、スライドスリーブ16の内部には内部係止ブロック22が設けられ、後部の内周には内部係止溝21が設けられる。使用前には、抜針ハンドル18の外部係止ブロック17がスライドスリーブ16の内部係止溝21内に係止され、点滴が終了した後には、両翼15と人体皮膚との間の固定を分離する必要がなく、抜針ハンドル18の外部係止ブロック17を押してから、針棒14をスライドスリーブ16に沿って後方へ引き、図2に示すように、針11が患者の血管から引き抜かれ、スライドスリーブ16の内部係止ブロック22が針棒14の前部の外部係止溝13内に係止され、スライドスリーブ16が針11を防護するようになるまで、最後に両翼15を人体の皮膚から取り外す。内部係止ブロック22が外部係止溝13内に係止された後、スライドスリーブ16が後方に移動するか、又は針棒14に再装着することができなくなり、すなわち、自己破壊機能が生じ、スライドスリーブ16は針11を防護して、医療廃棄物の処理を容易にし、医療廃棄物による環境汚染を防止する。両翼15は、射出成形プロセスでスライドスリーブ16の前端に固定することができる。)

(ウ)図2及び図3から、内部係止ブロック22は、弾性変形可能で、針棒14に向かって傾斜した内側面を有し、針棒14に設けられた抜針ハンドル18が係止している内部係止溝21と同一平面上に形成されている点が看て取れる。

上記(ア)?(ウ)の各記載事項を整理すると、甲13には、次の甲13技術が記載されている。

「針棒14をスライドスリーブ16に沿って後方へ引き、スライドスリーブ16に設けられた内部係止ブロック22が針棒14の外部係止溝13に係止されることでスライドスリーブ16が針11を防護した後、スライドスリーブ16が後方に移動することを防止する静脈点滴針であって、
前記内部係止ブロック22は、弾性変形可能で、前記針棒14に向かって傾斜した内側面を有し、前記針棒14に設けられた抜針ハンドル18が係止している内部係止溝21と同一平面上に形成されており、
前記針棒14は、
前記スライドスリーブ16の前記内部係止溝21に係止する前記抜針ハンドル18を有する、静脈点滴針。」

4-4 判断
(1)甲2発明に基づく拡大先願について(無効の抗弁における理由1)
ア 本件訂正発明2について
(ア)対比
甲2発明の「前端が鋭利な針管2」と本件訂正発明2の「針先を有する金属性の留置針」とは、「針先を有する留置針」という限りにおいて一致する。そして、甲2発明の「針管2」は本件訂正発明の「留置針」に相当し、以下同様に、「針管2の後端部を支持するハブ3」は「留置針の基端側に設けられた針ハブ」に、「ハブ3」は「針ハブ」に、「筒状であって、前記ハブ3に組み付けられて該針管2を収容可能なプロテクタ4」は「筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタ」に、「プロテクタ4」は「針先プロテクタ」に、「前端側」は「針先側」に、「突片43」は「係止片」に、「針管2の再突出及び誤穿刺」は「針先の再露出」に、「プロテクタ付き医療用針1」は「留置針組立体」に、「針管2の軸方向」は「針軸方向」に、「大円筒部41」は「円筒状部」に、「後端部」は「基端側」に、「拡幅部42」は「拡開部」に、「係止」は「係合」に、「針管2が突出した状態」は「留置針の針先が突出状態」に、「窓部42b」は「針ハブ係合部」に、「弾性的に変形することができ」は「弾性変形可能で」に、「プロテクタ4の軸線に向かって傾斜した内側面」は「針ハブに向かって傾斜した内側面」に、「針管2を突出した状態」は「留置針の針先を突出状態」に、「腕部73」は「係合腕」に、「可撓性チューブ6」は「外部管路」に、それぞれ相当する。また、甲2発明も、可撓性チューブ6と接続管部72bとを接続することによって、当然可撓性チューブ6から針管2に至る流体流路を形成しているといえるから、甲2発明の「可撓性チューブ6と接続する接続管部72b」は本件訂正発明2の「外部管路と接続して外部管路から留置針に至る流体流路を形成する接続筒部」に相当し、同様に「接続管部72b」は「接続筒部」に相当する。

したがって、本件訂正発明2と甲2発明とは、
「針先を有する留置針と、
前記留置針の基端側に設けられた針ハブと、
筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え、
該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において、該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって、
前記針先プロテクタは、
針軸方向に延びる円筒状部を有し、
前記円筒状部の基端側には、前記係止片と、前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ、
前記大径部の周壁に、前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ、
前記係止片は、弾性変形可能で、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、
前記針ハブは、
前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して、前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と、
外部管路と接続して前記外部管路から前記留置針に至る流体流路を形成する接続筒部とを有している、留置針組立体。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
留置針に関し、本件訂正発明2は金属製であるのに対し、甲2発明はそのように特定されない点。

[相違点2]
接続筒部に関し、本件訂正発明2は、接続筒部の少なくとも一部が、係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出しているのに対し、甲2発明は、接続管部72bが、腕部73が弾性変形する支点となる当該腕部73の基端部分よりも基端側に突出していない点。

(イ)相違点について
a[相違点1]について
留置針組立体において、留置針を金属製とすることは、文献を挙げるまでもなく周知、慣用技術である。甲2発明は、針管2の材料について特定の例示はないが、実施に際し、針管の材料を具体的に金属製とすることは、上記周知、慣用技術に照らせば、単なる設計的事項である。よって、上記相違点1は周知、慣用技術を単に付加したにすぎず、それにより新たな効果を奏するものともいえないから、実質的な相違点とはいえない。

b[相違点2]について
本件訂正発明2の「接続筒部」に相当する甲2発明の「接続管部72b」は、外部管路である可撓性チューブ6を挿入して接続するものである。
そして、外部管路を挿入して接続する構造の接続筒部であって、接続筒部の少なくとも一部が、係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出させるようなものは、わずかに甲8技術一例のみであって、ただちには周知技術とはいえない。
甲6技術、甲7技術及び甲9技術のものは、外部管路に挿入されて接続する構造の接続筒部であるから、接続筒部と外部管路との接続構造が甲2発明とは異なり、また、そのために「可撓性チューブ6」の形質転換も要する可能性もあって、これらを上記相違点2に関し、直ちに甲2発明の「接続管部72b」と転換し得る周知技術に位置づけることはできない。
一方、甲3発明は、上記4-3 イに示すとおり、甲2発明と同様、チューブ30が挿入されて連通する貫通孔282の少なくとも一部が、係合腕280が弾性変形する支点となる当該係合腕280の基端部分よりも基端側に突出していないものとして認定される。
したがって、仮に甲2発明と同様の接続筒部構造が周知のものであるとしても、上記相違点2に係る本件訂正発明2の構成は、周知技術の単なる付加または転換ということはできず、本件訂正発明2の課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。

なお、仮に、甲3発明の貫通孔282の少なくとも一部が、係合腕280が弾性変形する支点となる当該係合腕280の基端部分よりも基端側に突出しているものと認定される場合には、甲3発明及び甲8技術から、外部管路を挿入して接続する構造の接続筒部であって、接続筒部の少なくとも一部が、係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している点は、周知技術であるということもできる。しかしながら、その場合、甲2発明の「外部管路を挿入して接続する構造の接続筒部において、接続管部72bが、腕部73が弾性変形する支点となる当該腕部73の基端部分よりも基端側に突出しない」構造のものは、他に例がみられない特徴的な構造とみなされることとなるから、他の周知技術と単純に転換できるようなものとすることはできない。

したがって、上記相違点2は実質的な相違点である。

(ウ)小括
以上より、本件訂正発明2は、甲2発明と同一ないし実質同一であるとはいえない。
したがって、本件訂正発明2に対する上記理由1は、理由がない。

イ 本件訂正発明3について
本件訂正発明3と甲2発明とを対比すると、少なくとも上記ア(ア)の相違点2で相違する。
そして、当該相違点2についての判断は、上記ア(イ)のとおりであるから、本件訂正発明3は、甲2発明と同一であるとはいえない。
したがって、本件訂正発明3に対する上記理由1は、理由がない。

ウ まとめ
本件訂正は、上記理由1によっては、特許法第126条第7項に適合しない、ということはできない。

(2)甲3発明に基づく新規性進歩性について(無効の抗弁における理由2、3)
ア 本件訂正発明2について
(ア)対比
甲3発明の「針22」と本件訂正発明2の「針先を有する金属性の留置針」とは、「針先を有する留置針」という限りにおいて一致する。そして、甲3発明の「針22」は本件訂正発明の「留置針」に相当し、以下同様に、「針ハブ20」は「針ハブ」に、「中空楕円筒であって、針ハブ20に外挿装着されて針22を後方へ引き戻すことで該針22を覆う外筒22」は「筒状の周壁を有し、針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタ」に、「外筒22」は「針先プロテクタ」に、「外筒22に対し針22を後方へ引き戻された所定位置」は「留置針の針先側へ針先プロテクタが移動せしめられた所定位置」に、「係止受部122」は「係止片」に、「係合」は「係止」に、「針22の再露出が防止される」は「留置針の針先の再露出が防止される」に、「自滅式医療用針」は「留置針組立体」に、「針22の軸方向」は「針軸方向」に、「楕円形筒部」は「円筒状部」に、「針22が突出状態」は「留置針の針先が突出状態」に、「係合窓14」は「針ハブ係合部」に、「針22を突出状態」は「留置針の針先が突出状態」に、「係合腕280」は「係合腕」に、「チューブ30」は「外部管路」に、それぞれ相当する。また、甲3発明も、チューブ30と貫通孔282とを接続することによって、当然チューブ30から針22に至る流体流路を形成しているといえるから、甲3発明の「チューブ30と連通する貫通孔282」は本件訂正発明2の「外部管路と接続して外部管路から留置針に至る流体流路を形成する接続筒部」に相当し、同様に「貫通孔282」は「接続筒部」に相当する。

したがって、本件訂正発明2と甲3発明とは、
「針先を有する留置針と、
前記留置針の基端側に設けられた針ハブと、
筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え、
該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において、該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって、
前記針先プロテクタは、
針軸方向に延びる円筒状部を有し、
前記円筒状部の基端側には、前記係止片と、前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ、
前記大径部の周壁に、前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ、
前記係止片は、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成され、
前記針ハブは、
前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して、前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と、
外部管路と接続して前記外部管路から前記留置針に至る流体流路を形成する接続筒部とを有している、留置針組立体。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
留置針に関し、本件訂正発明2は金属製であるのに対し、甲3発明はそのように特定されない点。

[相違点2]
係止片に関し、本件訂正発明2は弾性変形可能であるのに対し、甲3発明はそのように構成されていない点。

[相違点3]
係止片に関し、本件訂正発明2は小径部側には設けられていないのに対し、甲3発明はそのように構成されているか不明な点。

[相違点4]
接続筒部に関し、本件訂正発明2は接続筒部の少なくとも一部が、係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出しているのに対し、甲3発明はそのように構成されていない点。

(イ)相違点について
[相違点2]について
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。

弾性変形可能な係止片は、甲6技術、甲8技術ないし甲10技術、甲12技術及び甲13技術にみられるとおり周知技術である。
しかしながら、甲3発明は、係止受部122が係合する針ハブ20の係止部26が弾性変形可能であるから、さらに係止受部122に上記周知技術を採用して弾性変形可能とすることに意義があるとはいえず、製造コストが増加したり、係止受部122や係止部26が破損する可能性が増加するだけであるといえる。
よって、甲3発明に上記周知技術を採用する動機があるとはいえない。

また、甲3発明に、甲6技術、甲8技術ないし甲10技術及び甲12技術に共通してみられる、周知の針ハブと針先プロテクタとの係止の態様、すなわち針ハブの係止部と針先プロテクタの係止片とを採用することも検討する。
しかしながら、甲6、甲8ないし甲10及び甲12には、いずれも拡開部の大径部側に形成された係止片や、針ハブ係合部が設けられた側に形成された係止片は記載されていない。
よって、甲3発明に上記周知の針ハブと針先プロテクタとの係止の態様を採用したとしても、本件訂正発明2には到らない。
この点、甲13技術は、係合腕が係合する針ハブ係合部が設けられた側に係止片が形成されているといえる。
しかしながら、甲3発明は、針ハブ20の係止部26と外筒10の係止受部122とが、また、針ハブ20の制限部24と外筒10の制限受部120とがそれぞれ係合することにより、針22の再露出が防止され、かつ、針ハブ20が外筒10から外れることが防止されるものであるのに対し、甲13技術は、針棒14の外部係止溝13とスライドスリーブ16の内部係止ブロック22とが係止されることにより、スライドスリーブ16の後方への移動、すなわち、針11の再露出を防止するものではあるものの、針棒14がスライドスリーブ16から外れることを防止しているかは不明である。
よって、甲3発明の針ハブ20と外筒10との係合の態様と、甲13技術の針棒14とスライドスリーブ16との係止の態様とは、その課題、機能、作用が異なるといえるから、甲3発明に甲13技術を適用する動機があるとはいえない。

したがって、本件訂正発明2は甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)小括
したがって、本件訂正発明2に対する上記理由2及び3は、理由がない。

イ 本件訂正発明3について
本件訂正発明3と甲3発明とを対比すると、少なくとも上記ア(ア)の相違点2で相違する。
そして、当該相違点2についての判断は、上記ア(イ)のとおりであるから、本件訂正発明3は甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ まとめ
以上より、本件訂正発明2及び3に対する上記理由2及び3は、理由がない。
したがって、本件訂正は、上記理由2及び3によっては、特許法第126条第7項に適合しない、ということはできない。

(3)甲6ないし10、12及び13記載の発明のいずれかを主引用発明とする新規性ないし進歩性について
以下、甲6ないし10、12及び13記載の発明のいずれかを主引用発明とした場合の新規性ないし進歩性について、念のため検討する。

ア 本件訂正発明2と甲6発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
[相違点]
係止片に関し、本件訂正発明2は大径部側に形成される一方、小径部側には設けられていないのに対し、甲6発明は、そのように構成されていない点。

上記相違点について検討する。
係止片について、大径部側に形成される一方、小径部側には設けられていないようにする構成は、甲3、甲7ないし10、12及び13のいずれにも記載されていない。また、本件特許の優先日における技術常識とするに足る証拠も見当たらない。そして、上記相違点における本件訂正発明2に係る構成は、それにより「大径部68,68が厚肉となることも回避されて、成形時の部材内への気泡の混入などによる寸法誤差の発生や品質精度の低下が抑えられる」([0078])という作用効果を奏するものである。よって、係止片を大径部側に形成する一方、小径部側には設けないことは、当業者が適宜なし得る単なる設計変更ともいえない。
よって、上記相違点は実質的な相違点であり、また、当業者が容易に想到し得ることではない。

イ そして、本件訂正発明2と甲7ないし10、12及び13発明のいずれかとの対比、並びに本件訂正発明3と甲6ないし10、12及び13発明のいずれかとの対比においても、上記相違点で相違するから、本件訂正発明2及び3は、甲6ないし10、12及び13発明のいずれかでもないし、これらに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4-5 まとめ
上記(1)?(3)に示したとおり、証拠提示された甲2発明に基づく拡大先願、甲3、甲6ないし10、12及び13に基づく新規性進歩性は、理由がない。
また、他に、本件訂正発明2及び3が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針先を有する留置針と、
前記留置針の基端側に設けられた針ハブと、
筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え、
該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において、該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって、
a)前記針先プロテクタは、
針軸方向に延びる円筒状部を有し、
前記円筒状部の基端側には、前記係止片と、前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ、
前記大径部の周壁に、前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ、
前記係止片は、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、
b)前記針ハブは、
前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して、前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と、
外部管路と接続して前記外部管路から前記留置針に至る流体流路を形成する接続筒部とを有し、
前記接続筒部の少なくとも一部が、前記係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している、留置針組立体。
【請求項2】
針先を有する金属製の留置針と、
前記留置針の基端側に設けられた針ハブと、
筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え、
該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において、該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって、
a)前記針先プロテクタは、
針軸方向に延びる円筒状部を有し、
前記円筒状部の基端側には、前記係止片と、前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ、
前記大径部の周壁に、前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ、
前記係止片は、弾性変形可能で、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、
b)前記針ハブは、
前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して、前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と、
外部管路と接続して前記外部管路から前記留置針に至る流体流路を形成する接続筒部とを有し、
前記接続筒部の少なくとも一部が、前記係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している、留置針組立体。
【請求項3】
針先を有する留置針と、
前記留置針の基端側に設けられた針ハブと、
筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え、
該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において、該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって、
a)前記針先プロテクタは、
その先端部分に、翼状部を有し、
針軸方向に延びる円筒状部を有し、
前記円筒状部の基端側には、前記係止片と、前記円筒状部より大径で前記係止片よりも外周側にあり、小径部と大径部とを備えた拡開部とが設けられ、
前記大径部の周壁に、前記針ハブが係合されて前記留置針の針先が突出状態に保持される針ハブ係合部が設けられ、
前記係止片は、弾性変形可能で、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記拡開部の内部にあって、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、
b)前記針ハブは、
前記針先プロテクタの前記針ハブ係合部に係合して、前記留置針の針先を突出状態に保持する係合腕と、
外部管路と接続して前記外部管路から前記留置針に至る流体流路を形成する接続筒部とを有し、
前記接続筒部の少なくとも一部が、前記係合腕が弾性変形する支点となる当該係合腕の基端部分よりも基端側に突出している、留置針組立体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2020-12-11 
結審通知日 2020-12-16 
審決日 2021-01-07 
出願番号 特願2019-86613(P2019-86613)
審決分類 P 1 41・ 851- Y (A61M)
P 1 41・ 856- Y (A61M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 豊田 直希竹下 晋司  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 倉橋 紀夫
宮崎 基樹
登録日 2019-08-09 
登録番号 特許第6566159号(P6566159)
発明の名称 留置針組立体  
代理人 田村 啓  
代理人 大釜 典子  
代理人 田村 啓  
代理人 大釜 典子  

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