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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63G
管理番号 1371473
審判番号 不服2019-16598  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-20 
確定日 2021-03-09 
事件の表示 特願2019-86603「遊具複合体」拒絶査定不服審判事件〔令和2年10月22日出願公開、特開2020-171651〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成30年4月10日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和1年 7月29日付け 拒絶理由通知
令和1年 9月 4日付け 意見書・手続補正
令和1年10月 9日付け 拒絶査定
令和1年11月20日付け 審判請求・手続補正
令和2年 8月 4日付け 拒絶理由通知
令和2年 8月24日付け 意見書

第2 当審の判断
1 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,令和1年11月20日付けで補正された特許請求の範囲における,請求項1に記載された事項によって特定されるものであり,その記載は次のとおりである。
「【請求項1】
複数の遊具を配置する複合体であって,空洞を形成する立体の内部と外部に,それぞれ異なる遊具を配置することを特徴とする遊具複合体。」

2 引用文献に記載された事項
(1)引用文献1
令和2年8月4日付け拒絶理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開2011/158423号(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。他の下線についても同じ。)
ア「【0006】
上記課題を達成するための本発明は,遊具装置本体と回転基体とを備えた回転遊具装置を前提とする。そして,遊具装置本体は,遊戯室と,気密性部材と,送風手段とを備える。遊戯室は,遊戯領域を仕切る仕切部材で囲まれた領域であり,気密性部材は,遊戯室の壁部を構成する仕切部材の下方に設けられる。そして,遊戯室内の空気を対流させるための送風手段を遊戯室内に備え,遊戯室に配置された複数の風船が送風手段により乱舞することを特徴とする。上記構成を採用することで,複数のユーザが同時に遊戯可能な中規模の遊具設備であっても回転をさせることが可能となる。」
イ「【0011】
上記の構成において,遊具装置本体を構成する遊戯室の上部から,ユーザが掴まることが可能な把持部材を垂下させる構成を採用することができる。更に,回転遊具に電力を供給するスリップリングを備えることが望ましい。回転遊具が回転しているとしても,回転遊具に備えたLED等の電気装飾部材に電力を供給することが可能となる。更に,駆動モータの回転軸に装着されて,回転軸の駆動トルクが予め定められた値以内になるように制御するトルクリミッタを備えてもよい。」
ウ「【0016】
すなわち,図1に示すように,本発明の回転遊具装置100は,遊具装置本体110と,回転基体200を備える。上記遊具装置本体110は,複数のブロア160を有する遊戯室を備える。本実施例では,以下のようにして,図2に示す上面視6角形状の遊具装置本体110を形成した。なお,以下ではユーザ(幼児等を想定している)が遊戯する部屋を遊戯室と称する。
【0017】
まず,後述の回転基体200上に6角形を形成する位置に支柱118を立設する。当該各支柱118の内,隣同士の支柱118の上端同士を連結することで,遊戯室枠体120を形成する。あるいは,平面状の6角形状の枠体を予め形成しておき,上記各支柱118の上端と,当該6角形枠体のいずれか一の頂点付近同士とを結合し,上記遊戯室枠体120を形成する構成を採用することができる。
【0018】
上記のように形成された遊戯室枠体120に,遊戯室の壁面として透光性の素材で形成されたシート122を張る。このとき,上面視6角形状の上記遊戯室枠体120の5側面(入口となる部分を除く),及び,上面の6箇所の側面に,上記透光性素材のシート122を張る構成を採用する。
【0019】
上記透光性素材のシート122で形成された壁面には所定の空気孔が形成される。本発明の回転遊具装置100は,上記遊戯室内部に風船162(空気が充填された状態の風船を言う。以下同じ。)を多数配置し,当該風船162が旋回することを前提としている。従って,空気を対流させるために,空気孔が必要である。本実施例では,菱形の空気孔部124を形成した。子供が好むようにキャラクタ等の形状を模した空気孔部124を形成しても構わない。なお,図1に示すように,本実施例では,空気孔部124にメッシュを設けた。」
エ「【0023】
上記のように形成された遊具装置本体110には,ユーザが掴まることのできる把持部材140が備えられる。本実施例では,把持部材140として上記遊戯室の上部からボールを垂下する構成を採用した。例えば,上記遊戯室上部の頂点付近に屈曲部材の一端を回転自在に配置し,当該屈曲部材の他端から上記ボールを吊り下げ部材で吊り下げる構成を採用することができる。」

したがって,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「遊戯室,気密性部材,送風手段を備えた遊具装置本体と,回転機体と,からなる回転遊具装置であって,
幼児等が遊戯する遊戯室は,遊戯領域を仕切る仕切部材で囲まれた領域であり,
気密性部材は,遊戯室の壁部を構成する仕切部材の下方に設けられ,
送風手段は,遊戯室内の空気を対流させて,遊戯室に配置された複数の風船が乱舞するために遊戯室内に備えられ,
遊具装置本体を構成する遊戯室の上部から,遊戯室上部の頂点付近に屈曲部材の一端を回転自在に配置し,当該屈曲部材の他端から上記ボールを吊り下げ部材で吊り下げてユーザが掴まることが可能な把持部材を垂下した回転遊具装置。」

(2)引用文献2
令和2年8月4日付け拒絶理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-103971号公報(以下「引用文献2」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
ア「【0012】
以下に,本発明の遊具装置100について図面を参照して説明する。図1は,本発明の遊具装置100の全体構成を示す概略模式図であり,図2は後述の装飾カバーを示す図であり,図3,図4は,回転基体の概略模式図を示している。ただし,本発明に直接には関係しない各部の詳細は省略している。
すなわち,図1に示すように,本発明の遊具装置100は,中空の登り台200と,当該登り台の側面に設置される装飾台300とを備える。
【0013】
登り台200は,所定の高さを備えた上面視矩形状の基体210の上面短手方向両端部に,一対の登り台側面215を形成する。上記一対の登り台側面215は,その各上端を結合することで,上記登り台200に断面形状(側面形状)が三角形状の空洞が形成される。上記登り台200の断面形状は,三角形状だけでなく,四角形,五角形,六角形等の多角形になるように形成してもよい。この場合,基体210上面(登り台200の空洞内の床に相当する)を水平にした状態で,上記多角形を構成することが望ましい。なお,登り台200の中空の形状のみを上記多角形状として構成してよい。すなわち,登り台200の外側を三角形状に,登り台200の内側を多角形状として構成する。
【0014】
上記登り台200の内側には,鏡220が張り付けられる。すなわち,上記基体210の上面及び,上記一対の登り台200側面の内側全面に鏡220を張り付ける。上記鏡220は,通常のガラス素材やアクリル素材の鏡220でもよいし,透明板にアルミを蒸着した鏡シートを採用しても構わない。
上記登り台200側面の外側には,ユーザ(幼児や年少者を想定している)が登り降り可能な昇降手段が設けられる。例えば,本実施例では,上記登り台200側面に梯子250をかけて昇降手段とする。
【0015】
更に,図2に示すように,上記昇降手段として,岩の形状を模した大小様々の把持部材260を複数形成し,各把持部材260を所定間隔空けて上記登り台200側面に固定する構成を採用することができる。
次に装飾台300を形成する。装飾台300は,上記登り台200の側面に設けられる台で,後述のように,装飾台300の一方面には,装飾が施された回転板が設けられる。
【0016】
まず,上記登り台200の側面形状(空洞の形状をいう)と略同じ形状の側面基体305を形成する。例えば,本実施例では,登り台200の側面形状は三角形状としたので,側面基体305の形状も三角形状とする。上記登り台200の側面(空洞)と,側面基体305の一方端面が対向するように当該側面基体305を設置した場合,側面基体305の他端面から見たとき,上記登り台200の側面が隠れるように,側面基体305の大きさを調整する。
【0017】
上記側面基体305の一方端面には,回転可能な装飾部材が設けられる。図4は,本発明で使用する装飾部材の回転機構である。図4では,説明の都合上,側面基体305を省略して記載しているが,後述の回転板と,積層プーリ320の間に側面基体305が配置されることになる。
まず,大小一対のプーリを積層し,積層したプーリ(以下積層プーリ320と称す)を形成し,当該積層プーリ320の下面中央を回転軸330により軸支する。回転軸330の他端(上記積層プーリ320が固定されていない側)を突出させた状態(すなわち,側面基体305に貫通させた状態)で,当該回転軸330を上記側面基体305の一方端面に配置する。回転軸305の配置は任意であるが,本実施例では,複数の回転軸330を配置し,所定間隔をあけて上記側面基体305の一方端面に各回転軸330を配置した。図4では,各回転軸330が三角形の頂点及び,重心に位置するように配置した。」
イ「【0021】
次に,上記円形状の回転板に,装飾部材を配置する。本実施例では,上記回転板を装飾シートで被覆し,当該装飾シートの上に,LED等の電飾部材を複数配置した。上記装飾台300の一方端面の領域の内,登り台200の側面に設置したときに当該登り台200の側面から見える領域(以下,万華鏡側面領域)の全面が被覆されるように,上記装飾部材を配置する。そして,各大回転板310の隙間を埋めるように,装飾シート360を張り付ける構成を採用した。上記装飾シート360は例えば,透明シートにラメ(金糸・銀糸または金属の切り箔を織り込んだ織物をいう)をあしらった素材や,アルミニウム等で表面を加工したシートを使用することができる。装飾シート360の表面を更に透明シートで加工しても構わない。」
ウ「【0025】
したがって,本発明の遊具装置100は,登り台200の外側を通常の山型の遊具装置100として使用でき,登り台200の内側に貼り付けられた鏡220に映る像が万華鏡のように次々と変化する遊具として機能することができる。登り台200の内側からは,装飾台300に設けられた回転板が全ては見えないように,回転板の一部がはみ出るように装飾台300を設置しているので,更に変化に富んだ像を上記鏡220に映すことが可能となる。」

したがって,引用文献2には,以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「中空の登り台と,当該登り台の側面に設置される装飾台とを備える遊具装置であって,
登り台は,所定の高さを備えた上面視矩形状の基体の上面短手方向両端部に,一対の登り台側面を形成し,
上記一対の登り台側面は,その各上端を結合することで,上記登り台に断面形状(側面形状)が三角形状の空洞が形成され,
上記基体の上面及び,上記一対の登り台側面の内側全面に鏡を張り付けるとともに,上記登り台側面の外側には,幼児や年少者が登り降り可能な梯子や岩の形状を模した大小様々の把持部材などの昇降手段が設けられ,
上記登り台の側面には,装飾台が設けられ,該装飾台の一方面には,装飾シートで被覆され,当該装飾シートの上に,LED等の電飾部材を複数配置することで装飾が施された回転板が設けられており,
登り台の外側を通常の山型の遊具装置として使用でき,登り台の内側に貼り付けられた鏡に映る像が万華鏡のように次々と変化する遊具装置。」

(3)引用文献3
令和2年8月4日付け拒絶理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-116959号公報(以下「引用文献3」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
ア「【0005】
【発明の実施の形態】次に,本発明の好ましい実施の形態を図1,2に基づいて詳細に説明する。1は主体部周面に階段部2が波状に形成されてドーム形魚礁のごとき外観を呈するコンクリート製の登り台であって,この登り台1は地上に並べて設置された4個のコンクリート製の中空の縦割りブロック1aと,2個の縦割りブロック1a,1a間に介在させて地上に設置されたコンクリート製の中空ブロック状の滑り台5とを組み合わせたものである。また,登り台1の階段部2の上面は高さを異ならせた波状隆起3とされ,隣接する波状隆起3は下側の階段部2の山部と上側の階段部2の谷部とが略一致するとともに,下側の階段部2の谷部と上側の階段部2の山部とが略一致する逆位相となっている。このため,下側の階段部2と上側の階段部2間の段差に高低差がつくこととなり,遊戯者は自身の運動能力や身長に応じた段差を選択して上側の階段部2に移行するものとしている。また,最下段の階段部2は波状隆起3によって地面からの段差に高低差がつくようになっており,さらに,階段部2の上面には滑り止め効果のある塗装が施されて着色されている。」
イ「【0009】次に,図3?図6に示される他の好ましい実施の形態を詳細に説明する。この実施の形態は,前記好ましい実施の形態の登り台1と滑り台5のほかに,仕切壁板10と,ドーム構造体15と,ネット17を組み込んだものである。この仕切壁板10は多数のチーク材を繋ぎ合わせたパネルよりなり,登り台1の各階段部2間を仕切っており,この仕切壁板10には高さを異ならせた通り抜け孔12が複数の形成されている。また,仕切壁板10は,1段目の階段部2の外周面に沿い,地面に埋設されたコンクリートブロックBにモルタル固定されて立設される第1の仕切壁板10と,2段目の階段部2の外周面に沿い,登り台1に形成された隙間13にモルタル固定されて立設される第2の仕切壁板10と,滑り台5の待機台5aの円筒部に沿い,円筒部と階段部2間に形成される隙間14にモルタル固定されて立設される第3の仕切壁板10とからなる。
【0010】一方,登り台1の上方を被套するトラスにより骨組みされたドーム構造体15には複数の通り抜け孔16が形成されている。そして,このドーム構造体15は地中のコンクリートブロックBにモルタル固定されて立設される多数の支柱15a,15aと,登り台1の階段部2間に形成される隙間13間にモルタル固定されて立設される多数の支柱15bと,滑り台5の円筒部と登り台1の階段部2間に形成される隙間14間にモルタル固定されて立設される多数の支柱15cとにより支持されている。また,前記ネット17はドーム構造体15の上面に被覆固定されるもので,このネット17にはドーム構造体15の通り抜け孔16と一致する通り抜け孔18が形成されている。」
ウ「【0012】そして,構築されたコンクリート製遊具で遊ぶときには,登り台1の周面に階段部2が波状に形成されているから,遊戯者が身長や体力に応じて自分が登れる高さの階段部2を探しつつ登り台1を登ってゆくことができるものであるが,登り台1の各階段部2間が通り抜け孔12を複数形成した仕切壁板10により仕切られ,また,登り台1の上方に通り抜け孔16を複数形成したドーム構造体15が被套されて,このドーム構造体15には前記した通り抜け孔16と一致させた通り抜け孔18を形成したネット17が被覆固定されているから,地面に近いネット17の通り抜け孔18,あるいはネット17をよじ登って上方の通り抜け孔18から,ドーム構造体15の通り抜け孔16を通じて内部に進入するか,ネット17の頂部まで登り,頂部の通り抜け孔18からドーム構造体15の通り抜け孔16を通じて内部に進入する。そして,ドーム構造体15の頂部から進入した場合は,その場所は滑り台5の待機台5aであるので,そのまま滑り台5の滑走部7に進んで滑走遊戯を楽しめば良い。
【0013】そして,ネット17の上方の通り抜け孔18や下方の通り抜け孔18を通じてドーム構造体15内に進入した遊戯者は,階段部2間に立設された仕切壁板10により進路を阻まれることとなる。そこで,遊戯者は仕切壁板10の形成された通り抜け孔12を見つけるために仕切壁板10に沿って地面あるいは波状隆起3上を歩き,通り抜け孔12を探すこととなるが,この時,地面あるいは波状隆起3の位置から遊戯者自身が進入できる高さにある通り抜け孔12を見つける必要がある。そして,通り抜けできる通り抜け孔12が見つかったら,その通り抜け孔12より次の階段部2に進入する。この階段部2も前記と同様,仕切壁板10により仕切られているので前記同様,遊戯者自身が進入できる高さにある通り抜け孔12を見つける必要がある。このような遊びを行いつつ滑り台5の待機台5aまで登ったら,滑り台5の待機台5aから滑走面7の滑り出し面7aに移動し,斜面7bへ滑り出せばよく,滑走後,遊戯者は斜面7bに続く水平端部7cにより減速されて地面に着地するものである。また,前記説明では,滑り台5による滑走遊戯を楽しむものとしているが,ドーム構造体15やドーム構造体15に被覆固定されたネット17を利用してジャングルジムのような遊びをしても良いことは勿論である。」

したがって,引用文献3には,以下の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「地上に並べて設置された4個のコンクリート製の中空の縦割りブロックと,2個の縦割りブロック間に介在させて地上に設置されたコンクリート製の中空ブロック状の滑り台とを組み合わせた主体部周面に階段部が波状に形成されてドーム形魚礁のごとき外観を呈するコンクリート製の登り台に,仕切壁板と,ドーム構造体と,ネットを組み込み,
仕切壁板は多数のチーク材を繋ぎ合わせたパネルよりなり,登り台の各階段部間を仕切り,高さを異ならせた通り抜け孔が複数の形成されており,
登り台の上方を被套するトラスにより骨組みされたドーム構造体には,複数の通り抜け孔が形成され
ネットはドーム構造体の上面に被覆固定されるもので,このネットにはドーム構造体の通り抜け孔と一致する通り抜け孔が形成され,
地面に近いネットの通り抜け孔,あるいはネットをよじ登って上方の通り抜け孔から,ドーム構造体の通り抜け孔を通じて内部に進入するか,ネットの頂部まで登り,頂部の通り抜け孔からドーム構造体の通り抜け孔を通じて内部に進入したり,滑り台の滑走部に進んで滑走遊戯を楽しみ,ドーム構造体やドーム構造体に被覆固定されたネットを利用してジャングルジムのような遊びを行うコンクリート製遊具。」

(4)引用文献4
令和2年8月4日付け拒絶理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である実願平2-64290号(実開平4-22979)のマイクロフィルム(以下「引用文献4」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
ア「これらの図中(1)は底部が開口し,かつ中空状をなす三角錐形状の筐体であり,この筐体(1)は横長の木材(1a),(1b),(1c)・・・(1n)を略高さ方向に結合して三角錐状に組立てられている。(2)は筐体(1)の下方隅部に立設された例えば角材状の脚部であり,この脚部(2)により筐体(1)の下縁と床面(3)との間に間隔が設けられている。この間隔としては幼児ないし大人が屈んで筐体(1)内に入ることができる寸法に設定される。
(4)は紐やゴム等の部材(5)によって吊り下げられた吊り具であり,部材(5)の一端は,例えば本材(1b)と木材(1c)との適位置の接合部分に取付けられ,かつ他端には適形状をなす吊り具(4)が取付けられている。この吊り具(4)は筐体(1)の外面側および/もしくは内面側に適数設けられている。
また,(6)は,例えば四角形状に組まれた木材からなる囲い部材で床上に配され,その内側には多数の木片(7)が設けられている。なお,脚部(2)は囲い部材(6)の中に設けられている。」(第4頁第11行?第5頁第11行)
イ「すなわち,例えば内部に人Mが入り,吊り具(4)を内壁部(1B)に当てたり,叩きつけたりすると振動・共鳴音発生装置のスプリング(9)が振動し,また,内部の空間部分が共鳴箱として作用し,その振動が外壁部(1A)や内壁部(1B)に伝達され,手で触るとビーンと響き触角を刺激する。」(第6頁第6行?第11行)
ウ「さらに,囲い部材(6)中に木片(7)があり,この木片(7)を積木のようにして遊ぶことも可能であり,あるいは吊り具(4)の代わりに,もしくは吊り具(4)と共に内壁部(1B)に当てたりして遊ぶこともできる。」(第7頁第16行?第20行)

したがって,引用文献4には,以下の発明(以下,「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「横長の木材を略高さ方向に結合して三角錐状に組立てた筐体は,底部が開口し,かつ中空状をなすものであり,筐体の下方隅部に立設された例えば角材状の脚部により,筐体の下縁と床面との間に幼児ないし大人が屈んで筐体内に入ることができる寸法に設定された間隔が設けられており,
該脚部は囲い部材の中に設けられており,
筐体の外面側および内面側には,吊り具が適数設けられており,該吊り具は,一端が例えば本材と木材との適位置の接合部分に取付けられた紐やゴム等の部材の他端に取付けられ,
囲い部材は,四角形状に組まれた木材からなる囲い部材で床上に配され,その内側には多数の木片が設けられている遊具であって,
筐体の内部に人Mが入り,吊り具を内壁部に当てたり,叩きつけたりすると振動・共鳴音発生装置のスプリングが振動し,また,内部の空間部分が共鳴箱として作用し,その振動が外壁部や内壁部に伝達され,手で触るとピーンと響き触角を刺激し,
囲い部材中の木片を積木のようにして遊ぶことも可能である遊具。」

(5)引用文献5
令和2年8月4日付け拒絶理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭55-24021号公報(以下「引用文献5」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
ア「第1図は本発明に係る複合遊戯装置の一実施例を示す全体斜視図である。同図において,1は複合遊戯装置を示し,この複合遊戯装置1は,図からも明らかなように,所定の設置場所に人工池2を形成すると共にこの人工池2に少なくとも一部が臨む船舶を象つた船体3を形成し,この船体3の各部および周囲にかけて後述する複数個の異つた遊戯具を巧みに組合せ設置することにより構成される。前記船体3は主として丸太を組合せて所謂バイキング舟に似た形状に形成され,その船首部4が前記人工池2に臨んでいる。また船体3の上甲板5上には船楼6が丸太によつて設置されると共に上甲板5の前後および中央に3本のマスト7?9が建てられ,これらマスト7?9にそれぞれ帆10が取付けられている。」(第2頁左上欄第4行?第18行)
イ「前記船首部4の船舷には第2図に示すように鎖11によつてそれぞれ吊り下げられた重量の異なる複数個の錨12(第1図では図の繁雑化を避けるため1個のみ示す)が設置されており,この鎖11に連繋されたロープ13を上甲板5上で引張つたり緩めたりすることにより,前記錨12を上下させて遊べるように構成されている。また,船首部4の船舷下部には窓15が適当な間隔をおいて船体3の長手方向に多数形成されている。これらの窓15には第1図および第3図に示すように船体3内で座つて漕いで遊べるオール16がそれぞれ配設されている。」(第2頁右上欄第1行?第12行)
ウ「また,人工池2の辺から船体3の上甲板5にかけてロープを円筒状に網組みした籠くぐり21(第1図および第4図参照)が設置されており,この籠くぐり21をくぐつて地上から上甲板5へ上つたりあるいは上甲板5から地上に降れるようになつている。さらに,地上から前記船楼6にかけてはロープを縦横に網組みして略階段状に形成したネツト登り22が設置されている。そのため,このネツト登り22を登つていけば直接船楼6上に達することができる。」(第2頁右上欄第16行?同頁左下欄第5行)
エ「前記マスト7?9にはそれぞれネツト31?33が設置されており,これら縄ばしご31?33をつたつて見張台34?36に上れるようになつている。さらに,マスト7の見張台34と船楼6の間および船楼6とマスト9の見張台36の間には吊り橋37,38がそれぞれ設置されることにより,マスト7,8,9間を自在に往き来することができるようになつている。」(第2頁左下欄第20行?同頁右下欄第7行)

したがつて,引用文献5には,以下の発明(以下,「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「主として丸太を組合せて所謂バイキング舟に似た形状に形成された船体の上甲板上には船楼が丸太によつて設置されると共に,上甲板の前後および中央に3本のマストが建てられ,これらマストにそれぞれ帆が取付けられており,
船首部の船舷には鎖によつてそれぞれ吊り下げられた重量の異なる複数個の錨が設置されており,この鎖に連繋されたロープを上甲板上で引張つたり緩めたりすることにより,前記錨を上下させて遊べるように構成され,
船首部の船舷下部には窓が適当な間隔をおいて船体の長手方向に多数形成され,これらの窓には船体内で座つて漕いで遊べるオールがそれぞれ配設されており,
マストに設置されたネツトをつたつて見張台に上れるように,マストの見張台と船楼の間および船楼とマストの見張台の間にそれぞれ設置された吊り橋により,マスト間を自在に往き来することができるようになつている複合遊戯装置。」

3 対比
(1)本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「遊戯室」は,本願発明の「空洞」に相当する。
引用発明1の「遊戯室」を備える「遊具装置本体」は,本願発明の「(空洞を形成する)立体」に相当する。
引用発明1の「複数の風船」は,本願発明の「遊具」のうち「立体の内部に配置」されたものに相当する。
引用発明1の「ボール」は,本願発明の「遊具」のうち「立体の外部に配置」されたものに相当する。
引用発明1の「遊具装置本体」は,空洞を形成する立体の内部と外部に,それぞれ異なる遊具を配置しているといえるから,本願発明の「複数の遊具を配置する複合体」及び「遊具複合体」に相当する。
以上のことより,両者は,
「複数の遊具を配置する複合体であって,空洞を形成する立体の内部と外部に,それぞれ異なる遊具を配置することを特徴とする遊具複合体。」
である点で一致し,相違点はない。

(2)本願発明と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「中空の登り台」の「中空」の部分は,本願発明の「空洞」に相当する。
引用発明2の「登り台」は,本願発明の「(空洞を形成する)立体」に相当する。
引用発明2の「鏡」,「回転板」は,本願発明の「遊具」のうち「立体の内部に配置」されたものに相当する。
引用発明2の「梯子」,「把持部材」は,本願発明の「遊具」のうち「立体の外部に配置」されたものに相当する。
引用発明2の「中空の登り台」は,空洞を形成する立体の内部と外部に,それぞれ異なる遊具を配置しているといえるから,本願発明の「複数の遊具を配置する複合体」及び「遊具複合体」に相当する。
以上のことより,両者は,
「複数の遊具を配置する複合体であって,空洞を形成する立体の内部と外部に,それぞれ異なる遊具を配置することを特徴とする遊具複合体。」
である点で一致し,相違点はない。

(3)本願発明と引用発明3とを対比する。
引用発明3の「(登り台の上方を被套するトラスにより骨組みされた)ドーム構造体」内側の空間の部分は,本願発明の「空洞」に相当する。
引用発明3の「ドーム構造体」の部分は,本願発明の「(空洞を形成する)立体」に相当する。
引用発明3の「登り台」は,本願発明の「遊具」のうち「立体の内部に配置」されたものに相当する。
引用発明3の「ネット」は,本願発明の「遊具」のうち「立体の外部に配置」されたものに相当する。
引用発明3の「ドーム構造体」は,空洞を形成する立体の内部と外部に,それぞれ異なる遊具を配置しているといえるから,本願発明の「複数の遊具を配置する複合体」及び「遊具複合体」に相当する。
以上のことより,両者は,
「複数の遊具を配置する複合体であって,空洞を形成する立体の内部と外部に,それぞれ異なる遊具を配置することを特徴とする遊具複合体。」
である点で一致し,相違点はない。

(4)本願発明と引用発明4とを対比する。
引用発明4の「筐体の内部」は,本願発明の「空洞」に相当する。
引用発明4の「筐体」は,本願発明の「(空洞を形成する)立体」に相当する。
引用発明4の「木片」は,本願発明の「遊具」のうち「立体の内部に配置」されたものに相当する。
引用発明4の「(外面側に設けられた)吊り具」は,本願発明の「遊具」のうち「立体の外部に配置」されたものに相当する。
引用発明4の「筐体」は,空洞を形成する立体の内部と外部に,それぞれ異なる遊具を配置しているといえるから,本願発明の「複数の遊具を配置する複合体」及び「遊具複合体」に相当する。
以上のことより,両者は,
「複数の遊具を配置する複合体であって,空洞を形成する立体の内部と外部に,それぞれ異なる遊具を配置することを特徴とする遊具複合体。」
である点で一致し,相違点はない。

(5)本願発明と引用発明5とを対比する。
引用発明5の「船体内」は,本願発明の「空洞」に相当する。
引用発明5の「船体」は,本願発明の「(空洞を形成する)立体」に相当する。
引用発明5の「オール」は,本願発明の「遊具」のうち「立体の内部に配置」されたものに相当する。
引用発明5の「錨」,「ネット」,「見張台」,「船楼」,「吊り橋」,「マスト」は,本願発明の「遊具」のうち「立体の外部に配置」されたものに相当する。
引用発明5の「船体」は,空洞を形成する立体の内部と外部に,それぞれ異なる遊具を配置しているといえるから,本願発明の「複数の遊具を配置する複合体」及び「遊具複合体」に相当する。
以上のことより,両者は,
「複数の遊具を配置する複合体であって,空洞を形成する立体の内部と外部に,それぞれ異なる遊具を配置することを特徴とする遊具複合体。」
である点で一致し,相違点はない。

4 令和2年8月24日に出願人が提出した意見書について
令和2年8月24日に出願人が提出した意見書において,出願人は「(本願発明は)〔空洞を形成する立体〕,〔立体の内部と外部に異なる遊具を配置〕の2つの条件を主張するものである」旨の主張を行っている。
そして,引用発明1ないし5は,いずれも「空洞を形成する立体」を有し,「立体の内部と外部に異なる遊具を配置」したものであり,本願発明と同様に「空洞立体の内外部利用の設置容量枠を介して,少しでも多くの異なる遊具活用を多種多様に創出,場所に適応可能な設置容量枠での遊具の活用が楽しめるように工夫をした」といえるものである。
また,「遊具」という発明特定事項に関し,「遊具」とは,「遊戯に用いる器具。遊び道具。」と定義される語句であるから,引用発明1ないし5の「空洞を形成する立体の内部と外部に配置された異なる遊具」は,すべて上記定義に当てはまる「遊具」である。
したがって,出願人の上記主張は当を得ないものである。

第3 むすび
以上のとおり,本願発明1は,引用発明1,または引用発明2,または引用発明3,または引用発明4,または引用発明5であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができず,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-10-27 
結審通知日 2020-11-10 
審決日 2020-11-24 
出願番号 特願2019-86603(P2019-86603)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A63G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 藤田 年彦
特許庁審判官 吉村 尚
尾崎 淳史
発明の名称 遊具複合体  

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