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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1371514
審判番号 不服2020-3391  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-11 
確定日 2021-02-25 
事件の表示 特願2016-1780号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年7月13日出願公開、特開2017-121365号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月7日の出願であって、令和1年5月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月26日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月12日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、令和2年3月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和2年3月11日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年3月11日付け手続補正書についての補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてするものであって、令和1年7月26日付け手続補正により補正された本件補正前の請求項1に、
「 遊技球が入賞可能な入賞口と、
前記入賞口への遊技球の入賞に応じて、遊技者に有利な状態へ移行するか否かの抽選を行う抽選手段と、
前記抽選手段による抽選の結果を報知するための演出における既定の動作を行う複数の演出装置と、
前記複数の演出装置の演出動作を制御する演出装置制御手段と、
所定のエラーを報知するエラー報知手段と、
を備え、
前記所定のエラーには、2つ以上の前記演出装置を用いて報知される第一エラーと、1つの前記演出装置を用いて報知される第二エラーとがあり、
前記演出装置制御手段は、前記エラー報知手段によって前記第一エラーが報知されることに基づいて、前記複数の演出装置のうち前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置の所定の動作を抑制すること
を特徴とする遊技機。」とあったものを、

「 遊技球が入賞可能な入賞口と、
前記入賞口への遊技球の入賞に応じて、遊技者に有利な状態へ移行するか否かの抽選を行う抽選手段と、
前記抽選手段による抽選の結果を報知するための演出における既定の動作を行う複数の演出装置と、
前記複数の演出装置の演出動作を制御する演出装置制御手段と、
所定のエラーを報知するエラー報知手段と、
を備え、
前記所定のエラーには、2つ以上の前記演出装置を用いて報知される第一エラーと、1つの前記演出装置を用いて報知される第二エラーとがあり、
前記演出装置制御手段は、前記エラー報知手段によって前記第一エラーが報知されることに基づいて、前記複数の演出装置のうち前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置の所定の動作を消費電流が上限値を超えないように抑制すること
を特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(下線は合議体が付した。以下同様。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記演出装置制御手段は、前記エラー報知手段によって前記第一エラーが報知されることに基づいて、前記複数の演出装置のうち前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置の所定の動作を抑制すること」との記載を「前記演出装置制御手段は、前記エラー報知手段によって前記第一エラーが報知されることに基づいて、前記複数の演出装置のうち前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置の所定の動作を消費電流が上限値を超えないように抑制すること」とする補正。

2 請求人の主張する補正の根拠
請求人は、審判請求書の請求の理由において、以下のように補正の根拠を主張している。
「(1)補正の根拠及び本願発明の説明
本書と同時に提出した手続補正書により特許請求の範囲の請求項1を補正して「前記演出装置制御手段は、前記エラー報知手段によって前記第一エラーが報知されることに基づいて、前記複数の演出装置のうち前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置の所定の動作を消費電流が上限値を超えないように抑制する」という内容に変更しました。下線部が補正により変更した箇所です。この補正は、例えば出願当初の明細書段落[0370][0477]等に記載した事項に基づいています。」

3 新規事項の追加
(1)上記1(2)の補正に係る本件補正は、「少なくとも1つの演出装置の所定の動作を抑制すること」に関して、「少なくとも1つの演出装置の所定の動作を消費電流が上限値を超えないように抑制すること」としたものである。
しかしながら、本件補正後の請求項1の「前記演出装置制御手段は、前記エラー報知手段によって前記第一エラーが報知されることに基づいて、前記複数の演出装置のうち前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置の所定の動作を消費電流が上限値を超えないように抑制すること」という記載(以下「記載事項」という。)は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されていない。

(2)当初明細書等の記載
請求人が補正の根拠とする、【0370】、【0477】には、以下の事項が記載されている。

ア「【0370】
(エラー報知演出の一例) 次に、エラー報知演出について説明する。エラー報知演出は、演出表示部200a、枠部照明装置240および音声出力装置206といった演出装置の動作によって遊技機100に各種エラーや異常が発生したことを報知する演出である。エラー報知演出は、主制御基板300から副制御基板330にエラーコマンドが送信されたことに基づいて、サブCPU330aの制御により演出表示部200a、演出照明装置204、枠部照明装置240、音声出力装置206等の複数の演出装置において実行される。エラー報知演出は、各種エラーや異常の発生に伴い、変動演出中や大当たり演出中においても実行され得る。詳しくは後述するが、変動演出や大当たり演出における複数の演出装置の動作に加えて、枠部照明装置240の点灯動作等が行われる。このため、変動演出中や大当たり演出中にエラー報知演出が実行される場合、遊技機100での消費電流が増大し、電源が供給可能な電流量の上限値を超過する事態が発生し、これにより、例えば電気的に駆動する部材の可動不良や電源断が生じるおそれがある。したがって、本実施形態による遊技機100では、消費電流が上限値を超過するのを回避するため、エラー報知演出を実行する場合に、変動演出や大当たり演出に用いられる複数の演出装置のうち少なくとも1つの演出装置の動作が抑制される場合がある。遊技機100は、エラー報知演出の実行時において複数の演出装置のうち少なくとも1つの演出装置の動作を抑制することで、消費電流が増大するのを防止し、電気的に駆動する部材の可動不良や電源断が生じるおそれを低減することができる。」

イ「【0477】
このように、本実施形態による遊技機100では、不正に関するエラーを報知するためのエラー報知演出が実行される場合に、複数の演出装置のうち演出操作装置208の動作を抑制する。具体的には、演出操作装置208におけるボタン振動演出の実行を禁止する。これにより、遊技機100は、消費電流の増大を防止して消費電流が上限値を超えることを回避して、電気的に駆動する部材の可動不良や電源断が生じるおそれを低減しながら適切なエラー報知を行うことができる。また、遊技機100では、エラー報知演出中においても、複数の演出装置のうち動作が抑制された演出装置以外の演出装置(ここでは、演出表示部200a、演出役物装置202、演出照明装置204および音声出力装置206)の既定の動作(大当たり演出指定コマンドに基づく動作)を維持する。不正に関するエラーを報知するためのエラー報知演出中においても、演出表示部200a、演出役物装置202、演出照明装置204および音声出力装置206等による大当たり演出の主たる演出は継続するので、遊技機100は、ボタン振動演出が実行されないことによって遊技者に与える不安感や違和感を低減して、遊技者の遊技の継続を妨げないようにするとともに、複数の演出装置による演出効果を維持しながら適切なエラー報知を行うことができる。」

(3)上記記載事項に対応する記載として、当初明細書等には、【0370】に「本実施形態による遊技機100では、消費電流が上限値を超過するのを回避するため、エラー報知演出を実行する場合に、変動演出や大当たり演出に用いられる複数の演出装置のうち少なくとも1つの演出装置の動作が抑制される場合がある。遊技機100は、エラー報知演出の実行時において複数の演出装置のうち少なくとも1つの演出装置の動作を抑制することで、消費電流が増大するのを防止し、電気的に駆動する部材の可動不良や電源断が生じるおそれを低減することができる。」、【0477】に「本実施形態による遊技機100では、不正に関するエラーを報知するためのエラー報知演出が実行される場合に、複数の演出装置のうち演出操作装置208の動作を抑制する。具体的には、演出操作装置208におけるボタン振動演出の実行を禁止する。これにより、遊技機100は、消費電流の増大を防止して消費電流が上限値を超えることを回避して、電気的に駆動する部材の可動不良や電源断が生じるおそれを低減しながら適切なエラー報知を行うことができる。」と記載されている。
これらの記載からみて、当初明細書等には、「消費電流が上限値を超えないように」抑制するための構成として、演出操作装置208におけるボタン振動演出の実行を禁止することが記載されているといえる。
一方、上記記載事項において「消費電流が上限値を超えないように」することは、その字義どおり、実際の遊技機の消費電流が所定の上限値を必ず超えないようにする構成を含むと解釈することが相当であるところ、実際の遊技機の消費電流が、所定の上限値を必ず超えないようにするためには、第一エラーが報知されるときに必要となる遊技機の消費電流の合計値と所定の上限値とを比較してその大小関係を判定する必要があることは明らかであるから、上記記載事項は、遊技機の設計段階、もしくは、遊技機の動作中における第一エラーを報知するタイミングで、遊技機の消費電流の合計値と所定の上限値とを比較して、抑制する演出装置や、抑制する演出装置の動作、抑制の態様(禁止、強度の調整等)等を決定して制御するような構成を含むものであると認められる。
しかしながら、このような構成は、当初明細書等の【0370】、【0477】に記載されているとも、示唆されているとも認められない。また、当初明細書等の他の箇所にも、記載ないし示唆されているとは認められない。
してみると、「消費電流が上限値を超えないように」を追加する補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでない。
したがって、上記1(2)とする補正を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでないので、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものではない。

(4)本件補正は、以上のとおり、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

4 本件補正の目的
(1)上記1(2)の補正は、当初明細書等の【0370】、【0477】等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「演出装置制御手段」が「抑制する」「前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置の所定の動作」について、「消費電流が上限値を超えないように」「抑制する」ものに限定するものである。

(2)本件補正後の請求項1に係る本件補正は、上記(1)のとおり、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定する補正である。
そこで、請求項1に係る本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

5 独立特許要件について
(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしHは、分説するため合議体が付した。

「A 遊技球が入賞可能な入賞口と、
B 前記入賞口への遊技球の入賞に応じて、遊技者に有利な状態へ移行するか否かの抽選を行う抽選手段と、
C 前記抽選手段による抽選の結果を報知するための演出における既定の動作を行う複数の演出装置と、
D 前記複数の演出装置の演出動作を制御する演出装置制御手段と、
E 所定のエラーを報知するエラー報知手段と、
を備え、
F 前記所定のエラーには、2つ以上の前記演出装置を用いて報知される第一エラーと、1つの前記演出装置を用いて報知される第二エラーとがあり、
G 前記演出装置制御手段は、前記エラー報知手段によって前記第一エラーが報知されることに基づいて、前記複数の演出装置のうち前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置の所定の動作を消費電流が上限値を超えないように抑制すること
H を特徴とする遊技機。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-97681号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。

ア「【0012】
<全体構成>
まず、図1を用いて、パチンコ機100の全体構成について説明する。なお、同図はパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。」

イ「【0029】
第1特図始動口230は、遊技盤200の中央に1つだけ配設している。この第1特図始動口230への入球を所定の球検出センサが検出した場合、後述する払出装置152を駆動し、所定の個数(例えば、3個)の球を賞球として上皿126に排出するとともに、第1特図表示装置212による特図変動遊技を開始する。なお、第1特図始動口230に入球した球は、パチンコ機100の裏側に誘導した後、遊技島側に排出する。
【0030】
第2特図始動口232は、電動チューリップ(電チュー)と呼ばれ、第1特図始動口230の真下に1つだけ配設している。この第2特図始動口232は、左右に開閉自在な羽根部材232aを備え、羽根部材232aの閉鎖中は球の入球が不可能であり、普図変動遊技に当選し、普図表示装置210が当たり図柄を停止表示した場合に羽根部材232aが所定の時間間隔、所定の回数で開閉する。第2特図始動口232への入球を所定の球検出センサが検出した場合、払出装置152を駆動し、所定の個数(例えば、4個)の球を賞球として上皿126に排出するとともに、第2特図表示装置214による特図変動遊技を開始する。なお、第2特図始動口232に入球した球は、パチンコ機100の裏側に誘導した後、遊技島側に排出する。」

ウ「【0041】
パチンコ機100の制御部は、大別すると、遊技の中枢部分を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」と呼ぶ)に応じて主に演出の制御を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、主制御部300が送信するコマンドに応じて主に遊技球の払い出しに関する制御を行う払出制御部600と、遊技球の発射制御を行う発射制御部630と、パチンコ機100に供給される電源を制御する電源制御部660と、によって構成している。」

エ「【0052】
<副制御部>
次に、パチンコ機100の第1副制御部400について説明する。第1副制御部400は、主に主制御部300が送信したコマンド等に基づいて第1副制御部400の全体を制御する基本回路402を備えており、この基本回路402には、CPU404と、一時的にデータを記憶するためのRAM408と、各種デバイスの入出力を制御するためのI/O410と、時間や回数等を計測するためのカウンタタイマ412を搭載している。基本回路402のCPU404は、水晶発振器414が出力する所定周期のクロック信号をシステムクロックとして入力して動作し、第1副制御部400の全体を制御するための制御プログラム及びデータ、各種演出データ等が記憶されたROM406が接続されている。
【0053】
また、基本回路402には、スピーカ120(およびアンプ)の制御を行うための音源IC416と、各種ランプ418(例えば、チャンスボタンランプ138)の制御を行うための駆動回路420と、遮蔽装置246の駆動制御を行うための駆動回路432と、遮蔽装置246の現在位置を検出する遮蔽装置センサ430と、チャンスボタン700の可動部704に設けられた検知片704b4を検出するための検出部710と、遮蔽装置センサ430や検出部710からの検出信号を基本回路402に出力するセンサ回路428と、CPU404からの信号に基づいてROM406に記憶された画像データ等を読み出してVRAM436のワークエリアを使用して表示画像を生成して装飾図柄表示装置208に画像を表示するVDP434(ビデオ・ディスプレイ・プロセッサー)と、を接続している。
【0054】
次に、パチンコ機100の第2副制御部500について説明する。第2副制御部500は、第1副制御部400が送信した制御コマンドを入力インタフェースを介して受信し、この制御コマンドに基づいて第2副制御部500の全体を制御する基本回路502を備えており、この基本回路502は、CPU504と、一時的にデータを記憶するためのRAM508と、各種デバイスの入出力を制御するためのI/O510と、時間や回数等を計測するためのカウンタタイマ512を搭載している。基本回路502のCPU504は、水晶発振器514が出力する所定周期のクロック信号をシステムクロックとして入力して動作し、第2副制御部500の全体を制御するための制御プログラム及びデータ、画像表示用のデータ等が記憶されたROM506が設けられている。
【0055】
また、基本回路502には、演出可動体224の駆動制御を行うための駆動回路516と、演出可動体224の現在位置を検出するための演出可動体センサ424と、演出可動体センサ424からの検出信号を基本回路502に出力するセンサ回路518と、を接続している。ここにいう演出可動体224は、前面枠扉106に設けられた扉側演出可動体と、遊技盤200に設けられた盤側演出可動体2242を少なくとも含むものをいう。さらに、基本回路502には、チャンスボタン700の駆動部708の駆動制御を行うための駆動回路517と、遊技盤用ランプ532の制御を行うための遊技盤用ランプ駆動回路530と、遊技台枠用ランプ542の制御を行うための遊技台枠用ランプ駆動回路540と、遊技盤用ランプ駆動回路530と遊技台枠用ランプ駆動回路540との間でシリアル通信による点灯制御を行うシリアル通信制御回路520と、を接続している。」

オ「【0089】
<主制御部タイマ割込処理>
次に、図7を用いて、主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割込処理について説明する。なお、同図は主制御部タイマ割込処理の流れを示すフローチャートである。
・・・
【0099】
また、ステップS217では、入賞受付処理を行う。この入賞受付処理では、第1特図始動口230、第2特図始動口232、普図始動口228および可変入賞口234への入賞があったか否かを判定する。ここでは、ステップS203における入賞判定パターン情報と一致するか否かの判定結果を用いて判定する。第1特図始動口230へ入賞があった場合且つRAM308に設けた対応する保留数記憶領域が満タンでない場合、乱数値生成回路318の、第1特図始動口230に対応した乱数値記憶用レジスタから値を取得し、加工した値(例えば、取得した値+Rレジスタの値+1)を特図1当選乱数値として取得するとともに特図1乱数値生成用の乱数カウンタから値を取得し、加工した値(例えば、取得した値+Rレジスタの値+1)を特図1乱数値として取得して対応する乱数値記憶領域に格納する。第2特図始動口232へ入賞があった場合且つRAM308に設けた対応する保留数記憶領域が満タンでない場合、乱数値生成回路318の、第1特図始動口230に対応した乱数値カウンタ値記憶用レジスタから値を取得し、加工した値(例えば、取得した値+Rレジスタの値+1)を特図2当選乱数値として取得するとともに特図2乱数値生成用の乱数カウンタから値を取得し、加工した値(例えば、取得した値+Rレジスタの値+1)を特図2乱数値として取得して対応する乱数値記憶領域に格納する。
・・・
【0117】
ステップS225およびステップS227における特図状態更新処理が終了すると、今度は、特図1および特図2それぞれについての特図関連抽選処理を行う。ここでも先に、特図2についての特図関連抽選処理(特図2関連抽選処理)を行い(ステップS229)、その後で、特図1についての特図関連抽選処理(特図1関連抽選処理)を行う(ステップS231)。これらの特図関連抽選処理についても、主制御部300が特図2関連抽選処理を特図1関連抽選処理よりも先に行うことで、特図2変動遊技の開始条件と、特図1変動遊技の開始条件が同時に成立した場合でも、特図2変動遊技が先に変動中となるため、特図1変動遊技は変動を開始しない。また、装飾図柄表示装置208による、特図変動遊技の大当り判定の結果の報知は、第1副制御部400によって行われ、第2特図始動口232への入賞に基づく抽選の抽選結果の報知が、第1特図始動口230への入賞に基づく抽選の抽選結果の報知よりも優先して行われる。」

カ「【0169】
図13(a)では、前面枠扉106が閉じた状態で、装飾図柄表示装置208において装飾図柄の変動表示が行われており、装飾図柄の変動表示中、すなわち特図の図柄変動表示中に、同図(b)に示すように、扉側演出可動体2241が開くとともに、盤側演出可動体2242は装飾図柄表示装置208の前側に落下してくる。この同図(b)に示すように演出可動体224が動作中に、同図(c)に示すように前面枠扉106が開かれると、同図(d)に示すように、遊技盤200に設けられた盤側演出可動体2242は引き続き動作を続けるが、前面枠扉106に設けられた扉側演出可動体2241は初期位置に戻る。
・・・
【0178】
図15は、図13に示すパチンコ機100の第2変形例において前面枠扉106が開かれる様子を段階的に示す図である。
【0179】
図15に示すパチンコ機100の前面枠扉106の正面視右上部には、上方に開く第一の扉側演出可動体2241aが設けられ、前面枠扉106の正面視左下部には、前方に開く第二の扉側演出可動体2241bが設けられている。また、遊技盤200には、これまでと同じ盤側演出可動体2242が設けられている。第一の扉側演出可動体2241aの初期(原点)位置は、同図(a)に示す閉鎖した位置(前面枠扉106に収納された位置)であり、第二の扉側演出可動体2241bの初期(原点)位置も、同図(a)に示す閉鎖した位置(前面枠扉106に収納された位置)である。図15(b)に示すように、前面枠扉106が閉じた状態で、第一の扉側演出可動体2241aが上方に開くとともに、第二の扉側演出可動体2241bが前方に開き、盤側演出可動体2242は装飾図柄表示装置208の前側に落下してくる。この同図(b)に示すように演出可動体224が動作中に、同図(c)に示すように前面枠扉106が開かれると、同図(d)に示すように、遊技盤200に設けられた盤側演出可動体2242は引き続き動作を続けるが、遊技者に接触する可能性が相対的に高い、前方に開いた第二の扉側演出可動体2241bは、初期位置に戻る。一方、遊技者に接触する可能性が相対的に低い、上方に開いた第一の扉側演出可動体2241aは、動作を停止する。この第一の扉側演出可動体2241aは、遊技者が接触可能な位置に設けられた可動体であるが、上方まで回動して開いてしまえば、遊技者に接触する可能性が、初期位置に戻った場合と同程度に相対的に低くなる。なお、第一の扉側演出可動体2241aは前方に開いた水平姿勢を経由して上方まで開き、前方に開いた水平姿勢を経由して初期位置に戻る。このため、第一の扉側演出可動体2241aであっても、前方に開いた水平姿勢の際に前面枠扉106が開かれた場合には、初期位置に戻るか、あるいは反対に上方まで回動する。」

キ「【0638】
やがて下皿128が満タンになり、下皿満タンエラー(以下、第三のエラーと称する)が発生し、図55(d)に示す装飾図柄表示装置208には、エラー関連報知として球抜きを促す文字表示がなされている。」

ク「【0665】
ここで、内枠104が開放され、扉開放エラー(第一のエラー)が発生する。なお、前面扉105も内枠104に対して開放した場合であっても、以下の説明と同じである。図60(b)に示す装飾図柄表示装置208では、リーチ状態になっているが、その表示画面には、り、第一のエラーに関する報知としての文字表示がなされ、スピーカー120からも第一のエラーに関する報知として、エラー発生報知の音声が出力されている。
【0666】
図60(c)に示す装飾図柄表示装置208には、大当りに対応した「装飾7」-「装飾7」-「装飾7」の装飾図柄の組み合わせが停止表示されており、同図(d)に示すパチンコ機100では、大当り遊技が開始される。この段階でも、依然として内枠104が開放されたままであり、扉開放エラーは継続している。一方、大当り遊技が開始されたことによって、扉側演出可動体2241による、演出データに従った可動体演出の動作期間になるが、ここでは、先に発生した第一のエラーが解消されていないことから、扉側演出可動体2241の、演出データに従った動作を、最初から禁止する。すなわち、第1副制御部400には、主制御部300からエラー発生コマンドやエラー解消コマンド、あるいはエラー発生やエラー解消の内容を含んだコマンドを受信しており、第1副制御部400が主制御部300から大当り開始コマンドを受信しても、エラー発生コマンドを先に受信している状態でエラー解消コマンドを未受信の場合には、第1副制御部400は、扉側演出可動体2241の、演出データに従った制御を開始しない。この結果、図60(d)に示す第一の扉側演出可動体2241aも第二の扉側演出可動体2241bも動作が規制され、両者とも初期位置に留まっている。」

ケ「【図13】



コ「【図15】



サ「【図60】




シ 【0169】には「図13(a)では、前面枠扉106が閉じた状態で、装飾図柄表示装置208において装飾図柄の変動表示が行われており、装飾図柄の変動表示中、すなわち特図の図柄変動表示中に、同図(b)に示すように、扉側演出可動体2241が開くとともに、盤側演出可動体2242は装飾図柄表示装置208の前側に落下してくる。この同図(b)に示すように演出可動体224が動作中に、同図(c)に示すように前面枠扉106が開かれると、同図(d)に示すように、遊技盤200に設けられた盤側演出可動体2242は引き続き動作を続けるが、前面枠扉106に設けられた扉側演出可動体2241は初期位置に戻る」と、【0178】には「図15は、図13に示すパチンコ機100の第2変形例において前面枠扉106が開かれる様子を段階的に示す図である」と、【0179】には「図15に示すパチンコ機100の前面枠扉106の正面視右上部には、上方に開く第一の扉側演出可動体2241aが設けられ」と、それぞれ、記載されている。
図13(a)?(d)に関する上記【0169】の記載、図15(a)?(d)の記載からみて、図15(a)?(d)に記載されたパチンコ機100も、「装飾図柄表示装置208において装飾図柄の変動表示中」であることは明らかである。
よって、引用例には、「第一の扉側演出可動体2241aは、装飾図柄表示装置208において装飾図柄の変動表示中に、上方に開く」ことが示されていると認められる。

ス 【0665】には、「図60(b)に示す装飾図柄表示装置208では、」「その表示画面には、」「第一のエラーに関する報知としての文字表示がなされ、スピーカー120からも第一のエラーに関する報知として、エラー発生報知の音声が出力されている」と記載され、図60(b)には、装飾図柄表示装置208の表示画面に「扉開放エラー!」の文字が表示されるとともに、スピーカ120から「扉が開いています」という音声が出力されることが示されている。
また、【0666】には「図60」「(d)に示すパチンコ機100では、大当り遊技が開始される。この段階でも」「扉開放エラーは継続している」と記載され、図60(d)には、装飾図柄表示装置208の表示画面に、パンダの絵と「大当り中 1R」の文字が表示されるとともに、図60(b)と同様に「扉開放エラー!」の文字が表示され、スピーカから「扉が開いています」という音声が出力されていることが示されている。
さらに、図60(b)?(d)には、装飾図柄表示装置208の表示画面に「扉開放エラー!」の文字が継続して表示され、スピーカ120から「扉が開いています」という音声が継続して出力されていることが示されている。
よって、引用例には、「扉開放エラーが継続している段階で、大当り遊技が開始されると、装飾図柄表示装置208の表示画面に、パンダの絵と「大当り中 1R」の文字が表示されるとともに、第一のエラーに関する報知として装飾図柄表示装置208の表示画面に「扉開放エラー!」の文字が継続して表示され、スピーカ120から「扉が開いています」という音声が継続して出力される」ことが示されていると認められる。

セ 上記アないしスからみて、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「 球が入球する第1特図始動口230及び第2特図始動口232と(【0029】、【0030】)、
装飾図柄表示装置208、スピーカ120、第一の扉側演出可動体2241aを備え(【0053】、【0179】)、
第一の扉側演出可動体2241aは、装飾図柄表示装置208において装飾図柄の変動表示中に、上方に開くものであり(認定事項シ)、
扉開放エラー(第一のエラー)が発生すると、装飾図柄表示装置208の表示画面に、第一のエラーに関する報知としての文字表示がなされ、スピーカー120からも第一のエラーに関する報知として、エラー発生報知の音声が出力され(【0665】)、
下皿満タンエラー(第三のエラー)が発生すると、装飾図柄表示装置208に、エラー関連報知として球抜きを促す文字表示がなされ(【0638】)、
主制御部300は、第1特図始動口230または第2特図始動口232に入賞があった場合、特図関連抽選処理を行い(【0089】、【0099】、【0117】)、
主に演出の制御を行う第1副制御部400は、スピーカ120、装飾図柄表示装置208の制御を行い(【0041】、【0052】、【0053】)、
第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500は、扉側演出可動体2241の駆動制御を行う(【0041】、【0054】、【0055】)
パチンコ機100であって(【0012】)、
第1副制御部400は、扉開放エラー(第一のエラー)が発生し、装飾図柄表示装置208の表示画面に、第一のエラーに関する報知としての文字表示がなされ、スピーカ120からも第一のエラーに関する報知として、エラー発生報知の音声が出力され、扉開放エラーが継続している段階で、大当り遊技が開始されると、装飾図柄表示装置208の表示画面に、パンダの絵と「大当り中 1R」の文字が表示されるとともに、第一のエラーに関する報知として装飾図柄表示装置208の表示画面に「扉開放エラー!」の文字が継続して表示され、スピーカ120から「扉が開いています」という音声が継続して出力され、大当り遊技が開始されたことによって、扉側演出可動体2241による、演出データに従った可動体演出の動作期間になるが、先に発生した第一のエラーが解消されていないことから、扉側演出可動体2241の、演出データに従った動作を、最初から禁止する(【0665】、【0666】、認定事項ス)
パチンコ機100(【0012】)。」

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(h)は、本願補正発明のAないしHに対応させている。

(a)引用発明の「球が入球する第1特図始動口230及び第2特図始動口232」は、本願補正発明の「遊技球が入賞可能な入賞口」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Aを備える。

(b)引用発明の「第1特図始動口230または第2特図始動口232に入賞があった場合、」「行う」「特図関連抽選」が、「遊技者に有利な状態へ移行するか否かの抽選」であることは当業者にとって自明であるから、引用発明の「主制御部300」は、本願補正発明の「抽選手段」の機能を備える。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Bを備える。

(c)引用発明の「装飾図柄表示装置208に」おける「装飾図柄の変動表示」は、本願補正発明の「前記抽選手段による抽選の結果を報知するための演出」に相当するから、引用発明の「装飾図柄の変動表示」を表示する「装飾図柄表示装置208」及び「装飾図柄の変動表示中に、上方に開く」「第一の扉側演出可動体2241a」は、本願補正発明の「前記抽選手段による抽選結果を報知するための演出における規定の動作を行う複数の演出装置」に相当する。
また、抽選の結果を報知するための演出において、音声を出力することは自明であるから、引用発明の「スピーカ」も、本願補正発明の「複数の演出装置」の一つに相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Cを備える。

(d)引用発明の「スピーカ120、装飾図柄表示装置208の制御を行」う「第1副制御部400」及び「扉側演出可動体2241の駆動制御を行う」「第2副制御部500」は、本願補正発明の「前記複数の演出装置の演出動作を制御する演出装置制御手段」の機能を備える。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Dを備える。

(e)引用発明は、「扉開放エラー(第一のエラー)が発生すると、装飾図柄表示装置208の表示画面に、第一のエラーに関する報知としての文字表示がなされ、スピーカ120からも第一のエラーに関する報知として、エラー発生報知の音声が出力され、下皿満タンエラー(第三のエラー)が発生すると、装飾図柄表示装置208に、エラー関連報知として球抜きを促す文字表示がなされ」るのであるから、本願補正発明の「エラー報知手段」に相当する構成を備えることは明らかである。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Eを備える。

(f)引用発明の「発生すると、装飾図柄表示装置208の表示画面に、第一のエラーに関する報知としての文字表示がなされ、スピーカ120からも第一のエラーに関する報知として、エラー発生報知の音声が出力され」る「扉開放エラー(第一のエラー)」は、本願補正発明の「2つ以上の前記演出装置を用いて報知される第一エラー」に、また、引用発明の「発生すると、装飾図柄表示装置208に、エラー関連報知として球抜きを促す文字表示がなされ」る「下皿満タンエラー(第三のエラー)」は、本願補正発明の「1つの前記演出装置を用いて報知される第二エラー」に、それぞれ、相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Fを備える。

(g)上記(d)より、引用発明の「第1副制御部400」は、本願補正発明の「演出装置制御手段」の機能を備え、上記(f)より、引用発明の「扉開放エラー(第一のエラー)」は、本願補正発明の「第一エラー」に相当する。
引用発明は、「扉開放エラー(第一のエラー)が発生すると、装飾図柄表示装置208の表示画面に、第一のエラーに関する報知としての文字表示がなされ、スピーカ120からも第一のエラーに関する報知として、エラー発生報知の音声が出力され」るものであり、さらに、「扉開放エラーが継続している段階で、大当り遊技が開始されると、」「第一のエラーに関する報知として装飾図柄表示装置208の表示画面に「扉開放エラー!」の文字が継続して表示され、スピーカ120から「扉が開いています」という音声が継続して出力され」るが、「大当り遊技が開始されたことによって、扉側演出可動体2241による、演出データに従った可動体演出の動作期間になるが、先に発生した第一のエラーが解消されていないことから、扉側演出可動体2241の、演出データに従った動作を、最初から禁止」することから、引用発明の「扉側演出可動体2241」は、本願補正発明の「前記複数の演出装置のうち前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置」に相当する。
そうすると、引用発明の「扉側演出可動体2241の、演出データに従った動作を、最初から禁止する」ことは、本願補正発明の「少なくとも1つの演出装置の所定の動作を」「抑制する」ことに相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Gの「前記演出装置制御手段は、前記エラー報知手段によって前記第一エラーが報知されることに基づいて、前記複数の演出装置のうち前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置の所定の動作を」「抑制する」点を備える。

(h)引用発明の「パチンコ機100」は、本願発明の「遊技機」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Hを備える。

イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明とは、

「A 遊技球が入賞可能な入賞口と、
B 前記入賞口への遊技球の入賞に応じて、遊技者に有利な状態へ移行するか否かの抽選を行う抽選手段と、
C 前記抽選手段による抽選の結果を報知するための演出における既定の動作を行う複数の演出装置と、
D 前記複数の演出装置の演出動作を制御する演出装置制御手段と、
E 所定のエラーを報知するエラー報知手段と、
を備え、
F 前記所定のエラーには、2つ以上の前記演出装置を用いて報知される第一エラーと、1つの前記演出装置を用いて報知される第二エラーとがあり、
G’前記演出装置制御手段は、前記エラー報知手段によって前記第一エラーが報知されることに基づいて、前記複数の演出装置のうち前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置の所定の動作を抑制する
H 遊技機。」である点で一致し、次の点で一応相違する。

[相違点](構成G)
前記エラー報知手段によって前記第一エラーが報知されることに基づいて、
本願補正発明の前記演出装置制御手段は、前記複数の演出装置のうち前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置の所定の動作を消費電流が上限値を超えないように抑制するのに対し、
引用発明の第1副制御部400は、扉側演出可動体2241の、演出データに従った動作を、単に、最初から禁止するとしている点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
「消費電流が上限値を超えないように抑制する」ことは、前記第2[理由]3(3)で指摘したとおり、実際の遊技機の消費電流が所定の上限値を必ず超えないようにする構成を含むと解釈できるほかに、当初明細書等の【0370】、【0477】の記載から、エラー報知演出の実行時において、複数の演出装置のうち少なくとも1つの演出装置の動作を抑制する(ボタン振動演出の実行を禁止する)ことで、消費電流の増大を防止して消費電流が上限値を超えることを回避して、電気的に駆動する部材の可動不良や電源断が生じるおそれを低減する構成を含むと解釈することもできる。
この構成は、実際の遊技機の消費電流が所定の上限値を必ず超えないように、エラー報知されるときに必要となる消費電流の合計値と所定の電流値を比較することなく、単に、複数の演出装置のうち少なくとも1つの演出装置の動作を抑制することにより、消費電流の増大を防止して消費電流が上限値を超えることを回避して、電気的に駆動する部材の可動不良や電源断が生じるおそれを低減する(消費電流が上限値を超えることを確実に回避して、電気的に駆動する部材の可動不良や電源断が生じることを確実に防ぐわけではない。)ものである。
すなわち、「消費電流が上限値を超えないように抑制する」ことは、単に、複数の演出装置のうち少なくとも1つの演出装置の動作を抑制することを特定した構成も含むと認められる。
すると、引用発明の「扉側演出可動体2241の、演出データに従った動作を、最初から禁止する」ことは、本願補正発明の「演出装置の所定の動作を消費電流が上限値を超えないように抑制する」ことに相当する。
よって、上記相違点は実質的な相違点とはいえず、本願補正発明は、引用発明である。

(5) 審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、審判請求書において、
「(2)本願発明と引用発明との対比
補正後の本願請求項1に係る発明は「前記演出装置制御手段は、前記エラー報知手段によって前記第一エラーが報知されることに基づいて、前記複数の演出装置のうち前記第一エラーの報知に用いられていない少なくとも1つの演出装置の所定の動作を消費電流が上限値を超えないように抑制する」という特徴的構成を有しております。
上記特徴的構成を有することにより、補正後の本願請求項1に係る発明は、「消費電流の増大を防止して消費電流が上限値を超えることを回避して、電気的に駆動する部材の可動不良や電源断が生じるおそれを低減しながら適切なエラー報知を行うことができる」(同明細書段落[0477])という効果を奏します。すなわち、補正後の本願請求項1に係る発明は、「電流不足による不具合の発生を防ぎながらも適切なエラー報知を行う」(同明細書段落[0005])という
本願の課題を解決することができます。
・・・
引用文献1における上記構成は、「遊技者が接触可能な位置に可動体が設けられる場合においては、遊技者の安全等を考慮する必要」がある(段落[0006])との観点によるものです。つまり、引用文献1に記載された発明においては、遊技者の安全を担保するために演出可動体の動作を規制するのであって、本願請求項1に係る発明のように「消費電流が上限値を超えないように」規制するのではありません。このように、引用文献1に記載された発明には電流不足を回避するという観点はありません。」
と、概略主張している。

イ 請求人は、「消費電流が上限値を超えないように」が、所定の上限値を必ず超えないようにするものであることを前提としていると思われるが、前記(4)で検討したとおり、本願補正発明は、消費電流が上限値を必ず超えないようにするものに限定されないから、請求人の主張は、その前提において誤っており、失当であるというほかない。
なお、引用発明の「扉側演出可動体2241の、演出データに従った動作を、最初から禁止する」ことにより、「扉開放エラーが継続している」ときに、消費電流の増大を防止して、電気的に駆動する部材の可動不良や電源断が生じるおそれを低減できることは明らかであるから、この点からも本願補正発明と相違するものではない。

(6)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明である。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
本件補正は、上記3のとおり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、本願補正発明は、上記5のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和1年7月26日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。


引用文献1.特開2015-97681号公報

3 引用文献
引用文献1(引用例)の記載事項は、上記第2[理由]5(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]5で検討した本願補正発明から、形式的な相違点である「消費電流が上限値を超えないように」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2[理由]5(3)、(4)に記載したとおり、引用発明であるから、本願発明も、引用発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-12-08 
結審通知日 2020-12-15 
審決日 2021-01-05 
出願番号 特願2016-1780(P2016-1780)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 美佐  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 鉄 豊郎
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 森 哲也  

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