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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1371521 |
審判番号 | 不服2020-7511 |
総通号数 | 256 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-02 |
確定日 | 2021-02-25 |
事件の表示 | 特願2018- 96537「発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月31日出願公開、特開2019- 16780〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年5月18日(優先権主張平成29年7月4日)の出願であって、その後の主な手続経緯は、以下のとおりである。 平成30年10月 1日 :出願審査請求書の提出 令和元年 7月31日付け:拒絶理由通知(同年8月6日発送) 同年10月 2日 :手続補正書・意見書の提出 令和2年 2月28日付け;拒絶査定(同年3月3日送達) 同年 6月 2日 :審判請求書の提出 同年 7月15日 :手続補正書(方式)の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし12に係る発明は、令和元年10月2日付けの手続補正により補正された請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 基体と、 前記基体の上面において、実装領域を囲むように設けられた枠体と、 前記実装領域に設けられた複数の第1発光素子と、 前記実装領域に設けられた複数の第2発光素子と、 上面と下面とを有する無機材料からなる透光体と、前記透光体の下面に設けられた第1蛍光体層と、を備え、前記第1発光素子上にそれぞれ設けられた第1波長変換部材と、 前記第2発光素子と前記第1波長変換部材を覆うように前記枠体の内側の前記基体上に設けられ、封止樹脂と第2蛍光体粒子とを含んでなる第2波長変換部材と、を含み、 前記第1発光素子及び前記第2発光素子は、その中心がそれぞれ矩形格子の格子点に一致するように配置されており、 前記枠体の形状は八角形である発光装置。」 第3 引用文献 1 原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された米国特許出願公開第2016/0284950号明細書 (以下「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の記載がある(なお、下線は、当審で付したものである。以下同様。)。 (1)「 」(第3頁右欄ないし第4頁左欄) (日本語訳 【特許請求の範囲】 1.発光ダイオードパッケージ素子であって、 ダイ取り付け領域を有する基板と、 前記基板上に配置された複数の発光ダイと、 いくつかの前記発光ダイをそれぞれ覆う複数の第1の波長変換層であって、前記第1の波長変換層の各々は、第1の色温度を有する光への変換を行うように構成される、複数の第1の波長変換層と、 前記ダイ取り付け領域、前記発光ダイ、および前記第1の波長変換層を覆う第2の波長変換層であって、前記第2の波長変換層は、第2の色温度を有する光への変換を行うように構成され、前記第1の色温度は前記第2の色温度とは異なる、第2の波長変換層と、 を含む、発光ダイオードパッケージ素子。 2.前記いくつかの前記発光ダイは第1の量を有し、残りの前記発光ダイは第2の量を有し、前記第1の量は前記第2の量以下である、請求項1に記載の発光ダイオードパッケージ素子。 3.前記第1の波長変換層の各々は、 前記いくつかの前記発光ダイの1つを覆うシートと、 前記シート内に分散され、前記第1の色温度を有する光への変換を行うように構成された複数の蛍光粉末と、 を含む、請求項1に記載の発光ダイオードパッケージ素子 4.前記第2の波長変換層は、 前記基板、前記発光ダイ、および前記第1の波長変換層を覆う本体と、 前記本体に分散され、前記第2の色温度を有する光への変換を行うように構成された複数の蛍光粉末と、 を含む、請求項1に記載の発光ダイオードパッケージ素子) (2)「 」 (日本語訳 【0016】以下に、当業者が本開示の態様をよりよく理解できるように、いくつかの実施形態の特徴を開示する。当業者は、ここで紹介した実施形態の同じ目的を実行するため、および/または同じ利点を達成するための他のプロセスおよび構造を設計または修正するための基礎として本開示を容易に使用できることを理解すべきである。当業者はまた、そのような同等の構造が本開示の趣旨および範囲から逸脱しないこと、および本開示の趣旨および範囲から逸脱することなくここで様々な変更、置換、および修正を行うことができることを理解すべきである。 【0017】図1および図2を参照する。図1は、本開示のいくつかの実施形態による、発光ダイオードパッケージ素子10の上面図である。図2は、本開示のいくつかの実施形態による、図1の線2-2に沿った発光ダイオードパッケージ素子10の横断面図である。いくつかの実施形態では、発光ダイオードパッケージ素子(LED)10は、基板100、複数の第1の発光ダイ210、220、複数の第1の波長変換層310、および第2の波長変換層500を含む。基板100は、互いに反対側の第1の表面110および第2の表面150を含む。基板100は、第1の表面110上にダイ取り付け領域120を有する。LEDパッケージ素子10は、バリケード部分400をさらに含む。バリケード部分400は、第1の表面110上に配置され、第1の表面110から突出している。さらに、バリケード部分400は、ダイ取り付け領域120の周囲に配置され、ダイ取り付け領域120を露出させる凹部410を形成する。いくつかの発光ダイ210は、以後、第1の発光ダイと呼ばれ、残りの発光ダイ220は、以後、第2の発光ダイと呼ばれる。第1の波長変換層310は、第1の発光ダイ210を覆うか、または第1の発光ダイ210に付着することができる。言い換えれば、第1の波長変換層310は、第2の発光ダイ220を覆わない。第1の発光ダイ210の各々および第2の発光ダイ220の各々は、ダイボンディングなどの方法によってダイ取り付け領域120に固定される。さらに、第1の発光ダイ210の各々および第2の発光ダイ220の各々は、ワイヤボンディングの方法によって、ダイ取り付け領域120上に電気的に配置される。例えば、第1の発光ダイ210の各々および第2の発光ダイ220の各々は、その波長が360nmから480nmの範囲にある青色光LEDダイである。より具体的には、第1の波長変換層310は、それぞれ、第1の発光ダイ210の上面L1を覆い、前述の素子は、発光ユニットを形成する。第2の波長変換層500は、凹部410に充填され、ダイ取り付け領域120、第1の発光ダイ210、第2の発光ダイ220、および第1の波長変換層310を覆う。 【0018】したがって、第1の波長変換層310は、第1の発光ダイ210が発光する間に、第1の発光ダイ210の光の波長の大部分をそれぞれ第1の色温度を有する光への変換を行う。同時に、第2の波長変換層500は、第2の発光ダイ220が発光する間に、第2の発光ダイ220の光の波長の大部分を、それぞれ第2の色温度を有する光への変換を行う。第2の色温度は第1の色温度とは異なる。例えば、いくつかの実施形態では、第1の色温度は1000Kから4999Kの範囲にあり、第2の色温度は5000Kから10000Kの範囲にある。第1の色温度を有する光の少なくとも一部は、第1の色温度が第2の色温度よりも低いため、第2の色温度を有する光の少なくとも一部と混合して第1の色温度と第2の色温度との間の所期の色温度にすることができる。) (3)「 」 (日本語訳 【0024】より具体的には、例えば、いくつかの実施形態では、第1の波長変換層310は、蛍光体含有層であり得る。第1の波長変換層310の各々は、第1のシート311および複数の第1の蛍光粉末312を含む。第1のシート311は、第1の発光ダイ210のうちの1つの上面L1を覆う。前述の第1の蛍光粉末312は、YAG、TAG、BOSE、ケイ酸塩などの蛍光体であり得る。第1の蛍光粉末312は、第1のシート311内に分布し、580nmから670nmの範囲で放出される光の波長を有する。これは、第1の色温度を有する光への変換を行うように構成できる。第1の蛍光粉末312は、黄色、またはシャルトリューズ色、またはシャルトリューズ近似色などであり得る。蛍光体含有層は、例えば、乾式プレス法、押出法、一方向凝固法、射出成形法、またはテープキャスティング法により形成されるが、前述の方法は限定することを意図したものではない。 【0025】第2の波長変換層500は、部分基板100、第1の発光ダイ210、および第2の発光ダイ220を覆う硬化した光透過性プラスチック材料から形成される。第2の波長変換層500は、単体510を含む。単体510は、ダイ取り付け領域120全体に一度に形成され、部分基板100、第1の発光ダイ210、第2の発光ダイ220、および第1の波長変換層310を覆うものとして言及される。単体510は、基板100、第1の発光ダイ210の表面、第2の発光ダイ220の表面(上面L2を含む)、および第1の波長変換層310に直接接触する。単体510は、基板100、第1の発光ダイ210、第2の発光ダイ220、および第1の波長変換層310を固定する。さらに、単体510は、その中に均一に分布された第2の蛍光粉末520を含む。第2の蛍光粉末520は、第2の色温度を有する光への変換を行うように構成されている。第2の蛍光粉末520は、YAG、TAG、BOSE、ケイ酸塩などの蛍光体であり得る。第2の蛍光粉末520は、520nmから580nmの範囲で発光する光の波長を有する。第2の蛍光粉末520は、黄色またはシャルトリューズ色、またはシャルトリューズ近似色などであり得る。また、第2の蛍光粉末520を含む第2の波長変換層500は、例えば、乾式プレス法、押出法、一方向凝固法、射出成形法、またはテープキャスティング法により形成されるが、前述の方法は、限定することを意図したものではない。) (4)「 」 (日本語訳 【0026】いくつかの実施形態では、基板100は金属基板である。基板100はまた、銅基板またはアルミニウム基板であり得る。実際の実装では、基板100はまた、プリント回路基板、金属コアプリント回路基板(MCPCB)、セラミック基板、または良好な電気伝導率および熱伝導率を有する他の基板であり得る。良好な熱伝導率を有する基板は、発光ダイから発生する熱を素早く逃がすことができる。これにより、温度が高すぎる場合があり発光ダイの寿命や光の効率と安定性に影響を与える可能性があるという問題を回避できる。さらに、基板100の外観は、限定することを意図するものではなく、例えば、外観は、長方形、多角形、または円形などであり得る。 【0027】図1および図2において、第1の発光ダイ210および第2の発光ダイ220は、マトリックス状に配置され、さらに、互いに千鳥状に配置される。そうすることで、放出された光の混合は、適切な色温度の範囲で適切な白色光品質を提供するように、より均一な状態になる。 【0028】しかしながら、上記の配置は単なる例であり、限定することを意図するものではないことに留意されたい。当業者は、実際の必要性または制限に応じて、第1の発光ダイ210および第2の発光ダイ220の配置態様を選択する必要がある。) (5)図1及び図2は、以下のものである。 2 引用文献に記載された発明 (1)上記1(1)の記載からして、引用文献には、 「発光ダイオードパッケージ素子であって、 ダイ取り付け領域を有する基板と、 前記基板上に配置された複数の発光ダイと、 いくつかの前記発光ダイをそれぞれ覆う複数の第1の波長変換層であって、前記第1の波長変換層の各々は、第1の色温度を有する光への変換を行うように構成される、複数の第1の波長変換層と、 前記ダイ取り付け領域、前記発光ダイ、および前記第1の波長変換層を覆う第2の波長変換層であって、前記第2の波長変換層は、第2の色温度を有する光への変換を行うように構成され、前記第1の色温度は前記第2の色温度とは異なる、第2の波長変換層と、 を含み(請求項1)、 前記第1の波長変換層の各々は、 前記いくつかの前記発光ダイの1つを覆うシートと、 前記シート内に分散され、前記第1の色温度を有する光への変換を行うように構成された複数の蛍光粉末と、を含み(請求項3)、 前記第2の波長変換層は、 前記基板、前記発光ダイ、および前記第1の波長変換層を覆う本体と、 前記本体に分散され、前記第2の色温度を有する光への変換を行うように構成された複数の蛍光粉末と、を含む(請求項4)、 発光ダイオードパッケージ素子。」が記載されていると認められる。 (2)上記1(2)及び(3)の記載を踏まえて、図1及び図2を見ると、以下のことが理解できる。 ア 「複数の発光ダイ」は、各々、青色光LEDダイであり、第1の発光ダイ210と第2の発光ダイ220からなること。 以下、「第1青色ダイオード」及び「第2青色ダイオード」という。 イ 「第1の波長変換層」は、「第1青色ダイオード」を覆い、580nmから670nmの範囲の光を放射すること。 ウ 「第2の波長変換層」は、光透過性プラスチック材料から形成され、ダイ取り付け領域、第1青色ダイオード、第1の波長変換層及び第2青色ダイオードを覆い、520nmから580nmの範囲の光を放射すること。 (3)上記1(4)の記載を踏まえて、図1及び図2を見ると、以下のことが理解できる。 ア 第1青色ダイオード及び第2青色ダイオードは、マトリックス状、かつ、互いに千鳥状に配置されていること。 イ 「ダイ取り付け領域」は、円形の「バリケード部分400」(以下「円形の枠体」という。)により囲まれていること。 (4)上記(1)ないし(3)の検討からして、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「発光ダイオードパッケージ素子であって、 ダイ取り付け領域を有する基板と、 前記ダイ取り付け領域を囲む円形の枠体と、 前記基板上に配置された複数の第1青色ダイオード及び複数の第2青色ダイオードと、 前記第1青色ダイオードを覆う第1の波長変換層と、 前記基板、前記ダイ取り付け領域、前記第1青色ダイオード、前記第1の波長変換層及び第2青色ダイオードを覆う、第2の波長変換層と、 を含み、 前記第1の波長変換層の各々は、 前記第1青色ダイオードを覆うシートと、前記シート内に分散され、580nmから670nmの範囲の光を放射する複数の蛍光粉末と、を含み、 前記第2の波長変換層は、 前記ダイ取り付け領域、前記第1青色ダイオード、前記第1の波長変換層及び前記第2青色ダイオードを覆う、光透過性プラスチック材料から形成される本体と、前記本体に分散され、520nmから580nmの範囲の光を放射する複数の蛍光粉末と、を含み、 前記第1青色ダイオード及び前記第2青色ダイオードは、マトリックス状、かつ、互いに千鳥状に配置されている、 発光ダイオードパッケージ素子。」 第4 当審の判断 1 対比 (1)本願発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。 ア(ア)引用発明の「ダイ取り付け領域を有する基板」は、本願発明の「基板」に相当する。 以下、同様に、 「ダイ取り付け領域」は、「実装領域」に、 「ダイ取り付け領域を囲む円形の枠体」は、「実装領域を囲むように設けられた枠体」に、 「基板上に配置された複数の第1青色ダイオード及び複数の第2青色ダイオード」は、「実装領域に設けられた複数の第1発光素子と、実装領域に設けられた複数の第2発光素子」に、それぞれ、相当する。 (イ)上記(ア)から、本願発明と引用発明とは、 「基体と、 前記基体の上面において、実装領域を囲むように設けられた枠体と、 前記実装領域に設けられた複数の第1発光素子と、 前記実装領域に設けられた複数の第2発光素子と、を備える」点で一致する。 イ 引用発明の「第1の波長変換層」の各々は、「第1青色ダイオードを覆うシートと、前記シート内に分散され、580nmから670nmの範囲の光を放射する複数の蛍光粉末と、を」含み、該「シート」は蛍光体層を構成するから、本願発明と引用発明とは、「第1蛍光体層を備え、第1発光素子上にそれぞれ設けられた第1波長変換部材を含む」点で一致する。 ウ 引用発明の「第2の波長変換層」は、「ダイ取り付け領域、第1青色ダイオード、第1の波長変換層及び第2青色ダイオードを覆う、光透過性プラスチック材料から形成される本体と、前記本体に分散され、520nmから580nmの範囲の光を放射する複数の蛍光粉末と、を含み」、該「光透過性プラスチック材料」は封止樹脂を構成するから、本願発明と引用発明とは、「前記第2発光素子と前記第1波長変換部材を覆うように前記枠体の内側の前記基体上に設けられ、封止樹脂と第2蛍光体粒子とを含んでなる第2波長変換部材を含む」点で一致する。 エ 引用発明においては、「第1青色ダイオード及び第2青色ダイオードは、マトリックス状、かつ、互いに千鳥状に配置されている」から、本願発明と引用発明は、「第1発光素子及び第2発光素子は、その中心がそれぞれ矩形格子の格子点に一致するように配置されており、枠体の形状は所定形状である」点で一致する。 オ 引用発明の「発光ダイオードパッケージ素子」は、本願発明の「発光装 置」に相当する。 カ 上記アないしオからして、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。 〈一致点〉 「基体と、 前記基体の上面において、実装領域を囲むように設けられた枠体と、 前記実装領域に設けられた複数の第1発光素子と、 前記実装領域に設けられた複数の第2発光素子と、 第1蛍光体層を備え、前記第1発光素子上にそれぞれ設けられた第1波長変換部材と、 前記第2発光素子と前記第1波長変換部材を覆うように前記枠体の内側の前記基体上に設けられ、封止樹脂と第2蛍光体粒子とを含んでなる第2波長変換部材と、を含み、 前記第1発光素子及び前記第2発光素子は、その中心がそれぞれ矩形格子の格子点に一致するように配置されており、 前記枠体の形状は所定形状である発光装置。」 (2)一方、両者は、以下の点で相違する。 〈相違点1〉 第1波長変換部材に関して、 本願発明は、「上面と下面とを有する無機材料からなる透光体と、前記透光体の下面に設けられた第1蛍光体層と」を備えているのに対して、 引用発明は、無機材料からなる透光体を備えていない点。 〈相違点2〉 枠体の所定形状に関して、 本願発明は、「八角形」であるのに対して、 引用発明は、円形である点。 2 判断 (1)上記〈相違点1〉について検討する。 ア 蛍光物質の劣化防止等を目的として、波長変換部材を、透光体と、該透光体の下面に設けられた波長変換層とから構成することは、原査定の拒絶の理由において引用した引用文献2(国際公開第2015/193763号の図9)、引用文献3(特開2013-077679号公報の図1)、引用文献4(特開2017-033967号公報の図1)等に記載されているように、本願の優先日時点(2017年7月4日)において周知である(以下「周知技術1」という。)。 ちなみに、引用文献4の図1(b)は、以下のものである。 20…波長変換部材 21…母材 25…蛍光物質 30…透光部材 イ してみると、引用発明において、蛍光物質の劣化防止等を目的として、「透光体と、該透光体の下面に設けられた波長変換層とから構成された波長変換部材」を採用することは、当業者が上記周知技術1に基づいて容易になし得たことである。 ウ 以上の検討からして、引用発明において、上記〈相違点1〉に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術1に基づいて容易になし得たことである。 (2) 上記〈相違点2〉について検討する。 ア 引用文献には、以下の記載がある。 「 」 (日本語訳 [0027] 図1及び図2において、第1の発光ダイ210および第2ダイ220はマトリクス状に配列され、また相互に千鳥状に配置されている。そうすることで、放射される光の混合は、より均一な状態を有する、色温度の適切な範囲で十分な白色品質を提供することができる。 [0028] しかし、上記の構成は一例であって限定するものではないことに留意されたい。当業者であれば、実際の要求または制限に応じて、第1の発光チップ210及び第2発光ダイオードダイ220の配置態様を選択するべきである。) イ 上記記載からして、引用発明は、異なる色を均一に混合して白色光を放射するものであって、第1青色ダイオードと第2青色ダイオードの配置態様は求める特性等に応じて適宜変更可能であると解される。 また、求める特性等に応じて、枠体の形状を好適化し、例えば八角形等の多角形にすることは、原査定の拒絶の理由において引用した引用文献8(特開2016-127281号公報)及び引用文献9(特開2016-29720号公報)等に記載されているように周知である(以下「周知技術2」という。)。 ちなみに、引用文献8の【0019】には「また、凹部の平面視における外形は、矩形状とする他、八角形等の多角形状や、円形状とすることもできる。さらに凹部の底面と開口部分とで異なる形状としてもよい。」と記載されている。 また、引用文献9の【0044】には「…本実施形態に係る発光装置1において、第1枠体11は、上面視で、略矩形の環状に形成されている。なお、第1枠体11は、楕円形の環状や、円形の環状や、多角形の環状等様々な形状に形成してもよい。」と記載されてい ウ してみると、引用発明において、求める特性等に応じて、枠体の形状を円形から八角形に変更[se1]することは、当業者が上記周知技術2に基づいて容易になし得たことである。 また、円形を八角形に変更することを妨げる特段の事情は認められない。 エ 以上の検討からして、引用発明において、上記〈相違点2〉に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術2に基づいて容易になし得たことである。 (3)効果 本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果、上記周知技術1及び周知技術2の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。 3 審判請求書における主張について (1)請求人は、「(1)本願発明の説明(独立請求項1について)」において、本願発明は、外周部に位置する全ての発光素子と枠体の内周下端との間隔を同一にでき、一部の発光素子と内周下端との間隔が大きくなることはないので、発光装置の発光面を小さくすることができる旨主張する。 ア しかしながら、本願発明の「枠体の形状」は正八角形に限定されるものではなく、複数の発光素子の配置形状も何ら特定されるものではないので、発光素子を、例えば、本願の図6において、「4行×4列」の正方形に配置した場合には、「外周部に位置する全ての発光素子と枠体の内周下端との間隔」は、同一にならない。 ちなみに、本願の図6は、以下のものである。 イ よって、請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであり、採用できない。 (2)請求人は、「(3)拒絶査定の備考欄における審査官の指摘及び指摘にたいする意見」において、引用文献9の段落[0078]の記載は、「第1枠体11はマトリクス状に配置された9個の発光素子2の周囲を囲むように上面視略矩形状に形成」した結果として、「上面視略正方形状に配置された発光素子2において、正方形の外周から第1枠体11までの距離が均一となるため、第1枠体近傍の色むらを低減することができる。」と記載されているに留まり、当該記載をもって「色むらを抑制するために、枠体と配置された発光素子との距離を考慮して、枠体を設計することは周知な知見である」とはいえない旨主張する。 ア しかしながら、引用文献9には、以下の記載がある。 「【0004】 …具体的には、LED素子から放出された出射光が、発光装置の発光面から出るまでの間の光路長に着目すると、LED素子の直上から出射される光と、LED素子の側面から出射されて封止材内を通過する光とでは、光路長に差が生じる。この結果、光路長が長い程、封止樹脂内に分散された蛍光体を励起する成分が増えるため色調のシフトが生じる。このため、発光装置の発光面を平面から見た場合に、発光素子の直上と発光素子の周囲との間に色むらが発生することがあった。」 「【0041】 複数の発光素子2は、上面視略正方形状に載置されている。これにより、複数の発光素子2間の第1封止樹脂21の量が均一となり、発光色のむらを低減することができる。なお、複数の発光素子2は、長方形や多角形や円形などの他の形状に配置されていてもよいが、上記色むらの観点から上面視正方形となるように配置されることが好ましい。」 「【0044】 …本実施形態に係る発光装置1において、第1枠体11は、上面視で、略矩形の環状に形成されている。なお、第1枠体11は、楕円形の環状や、円形の環状や、多角形の環状等様々な形状に形成してもよい。本明細書において、矩形とは長方形及び正方形を意味する。」 「【0049】 …このような略矩形状の第1枠体11の内側に複数の発光素子2が、マトリクス状に配置されることにより、第1枠体11と第1枠体11と近接する発光素子2との距離を均一にすることが可能となり、第1封止樹脂21上面の中央部と端部との色むらを抑制することができる。」 「【0078】 …第1枠体11はマトリクス状に配置された9個の発光素子2の周囲を囲むように上面視略矩形状に形成される。これにより、上面視略正方形状に配置された発光素子2において、正方形の外周から第1枠体11までの距離が均一となるため、第1枠体近傍の色むらを低減することができる。」 イ 上記記載から、色むらは、LED素子の直上から出射される光と、LED素子の側面から出射される光とでは、蛍光体を含有する封止樹脂内を通過する際の光路長差が原因であること、複数のLED素子の配置形状及び第1枠体の形状は、ともに、正方形、長方形、円形、多角形であってもよいことが理解できる。 ウ してしみると、引用文献9に接した当業者であれば、色むらの原因となる光路長差が生じないように、 複数のLED素子を正方形に配置した場合には、枠体の形状を正方形に、 複数のLED素子を長方形に配置した場合には、枠体の形状を長方形に、 複数のLED素子を円形に配置した場合には、枠体の形状を円形に、 複数のLED素子を多角形に配置した場合には、枠体の形状を多角形に、する必要があるものと理解する。 エ よって、請求人の上記主張は、上記「2 判断(2)」の判断を左右するものではない。 4 まとめ 本願発明は、当業者が引用発明、上記周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明、上記周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-12-08 |
結審通知日 | 2020-12-15 |
審決日 | 2021-01-05 |
出願番号 | 特願2018-96537(P2018-96537) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森口 忠紀、淺見 一喜、吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 近藤 幸浩 |
発明の名称 | 発光装置 |
代理人 | 山尾 憲人 |
代理人 | 言上 惠一 |