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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1371682
異議申立番号 異議2020-700075  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-04-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-02-13 
確定日 2020-12-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6558870号発明「具材入り液状混合物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6558870号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?9]について訂正することを認める。 特許第6558870号の請求項[1?9]に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6558870号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成25年9月9日になされたものであって、令和1年7月26日に特許権の設定登録がされ、令和1年8月14日にその特許公報が発行され、令和2年2月13日に、その請求項1?9に係る発明の特許に対し、特許異議申立人 角田 朗(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 5月25日付け 取消理由通知
同年 7月28日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年 8月17日付け 特許法第120条の5第5項の規定に
基づく通知書
特許異議申立人から意見書の提出はなかった。

第2 訂正の適否について

1 訂正の内容
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和2年7月28日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。 その訂正内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「調味料に混合するための具材入り液状混合物」と記載されているのを、「調味料に混合するための具材入り液状混合物(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)」に訂正する(決定注:下線は訂正部分を示す。以下同様。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「具材を除く液部のアミノ態窒素含有量が0.1質量%以下であり」と記載されているのを、「具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下であり」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に「具材の粒径が1.18mm以上5.6mm未満である」と記載されているのを「塩をさらに含み、具材の粒径が1.18mm以上5.6mm未満である」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に「アミノ酸系調味料を含まない、請求項1又は2に記載の具材入り液状混合物。」と記載されているのを、以下のように訂正する。
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下であり、かつ、当該液部の粘度が、25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下である、調味料に混合するための具材入り液状混合物であって、
塩をさらに含み、アミノ酸系調味料を含まない、具材入り液状混合物。」

2 訂正の適否

(1)一群の請求項ごとに訂正を請求することについて
訂正前の請求項1?9について、請求項2?9は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?9に対応する、訂正後の請求項1?9は、特許法施行規則第45条の4に規定する関係を有する一群の請求項であって、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

(2)訂正事項1について

ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「具材入り液状混合物」を、「(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)」と、特定の態様を除くことにより、「具入り液状混合物」を限定するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

新規事項の追加の有無
訂正事項1の「調味料に混合するための具材入り液状混合物(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)」との訂正は、訂正前の請求項1に係る発明から特定の態様を除くものであって、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載の範囲で特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項2について

ア 訂正の目的の適否
訂正前の請求項1に記載の「アミノ態窒素含有量」は、本件明細書の段落【0009】に、「ケルダール法」にて求められる窒素値である旨記載されているが、ケルダール法にて求められる窒素値は、「アミノ態窒素含有量」ではなく「全窒素」であったため、技術的に整合せず不明瞭なものとなっていた。
そこで、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1の「アミノ態窒素含有量」について、技術的に整合するよう、「窒素含有量」が「ケルダール法で測定した場合」の値であることを明確化するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

新規事項の追加の有無
訂正事項2の「具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下であり」との訂正は、訂正前の請求項1の「アミノ態窒素含有量」について、技術的に整合するよう、「窒素含有量」が「ケルダール法で測定した場合」の値となるように明確化するものであって、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項3について

ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項2の「具材入り液状混合物」が、「塩をさらに含」むものであることを規定し、「具材入り液状混合物」を限定するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

新規事項の追加の有無
訂正事項3の「具材入り液状混合物」が「塩をさらに含」むとする事項については、願書に添付した明細書に、「【0010】本発明の具材入り液状混合物の調製に当たっては・・必要により・・塩・・等の各種材料等を・・混合することにより調製すればよい・・」と記載され、具体的に、実施例1(【0013】)では、食塩を含む具材入り液状混合物を調製したことが記載されている。
そうすると、本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載の範囲で特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項4について

ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は2を引用するものであったところ、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む独立形式請求項へ改めるとともに、訂正前の請求項3の「具材入り液状混合物」が、「塩をさらに含」むものであることを規定し、「具材入り液状混合物」を限定するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。

新規事項の追加の有無
本件訂正の訂正事項4に係る訂正における、訂正事項4の訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む独立形式請求項へ改める事項については、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたことが明らかである。
訂正事項4の「具材入り液状混合物」が、「塩をさらに含」むものであるとする事項については、前記(4)イで述べたように、願書に添付した明細書に、「【0010】本発明の具材入り液状混合物の調製に当たっては・・必要により・・塩・・等の各種材料等を・・混合することにより調製すればよい・・」と記載され、具体的に、実施例1(【0013】)では、食塩を含む具材入り液状混合物を調製したことが記載されている。
そうすると、本件訂正の訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
前記ア及びイで述べたとおり、本件訂正の訂正事項4に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、他の請求項との引用関係を解消することを目的とする訂正であって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載の範囲で特許請求の範囲を減縮するものであるとともに、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲特許請求の範囲の拡張・変更するものではない。
したがって、本件訂正の訂正事項8に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1、3及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?9]についての訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1?9に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下であり、かつ、当該液部の粘度が、25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下である、調味料に混合するための具材入り液状混合物(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)。
【請求項2】
塩をさらに含み、具材の粒径が1.18mm以上5.6mm未満である、請求項1に記載の具材入り液状混合物。
【請求項3】
水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下であり、かつ、当該液部の粘度が、25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下である、調味料に混合するための具材入り液状混合物であって、
塩をさらに含み、アミノ酸系調味料を含まない、具材入り液状混合物。
【請求項4】
液部の糖度が50質量%以下である、及び/又は
液部の油分含量が0.5質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項5】
水性の増粘剤がキサンタンガムである、請求項1から4のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項6】
具材の一部又は全てが、乾燥された具材に由来するものであり、水性の増粘剤を含む水溶液を吸収した具材である、請求項1から5のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項7】
具材がピクルス、タマネギ、白ネギ、及びショウガからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から6のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項8】
2種以上の具材を含む、請求項1から7のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項9】
具材を除く液部の塩分含量が3.0質量%以上6.0質量%以下であり、pHが3.4以上4.2以下である、請求項1から8のいずれかに記載の具材入り液状混合物。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由

1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第21号証を提出して、以下の申立理由を主張している。
(証拠方法)
甲第1号証:国際公開第2006/070882号(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開昭57-58864号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開平3-219844号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:remiの部屋ブログ,「レモン、柚子、金柑、生姜で保存食作り」,[online],2010年1月19日,[令和2年1月28日検索],インターネットURL: https://reminoheya.exblog.jp/9703479/(以下「甲4」という。)
甲第5号証:cookpadの公式ホームページ,「電子レンジで♪しょうがジャム」,[online],2011年2月20日,[令和2年1月28日検索],インターネットURL: https://cookpad.com/recipe/1366392(以下「甲5」という。)
甲第6号証:cookpadの公式ホームページ,「きらきらジャム?玉ねぎマーマレード?」,[online],2012年7月31日,[令和2年2月10日検索],インターネットURL: https://cookpad.com/recipe/1899575(以下「甲6」という。)
甲第7号証:独立行政法人海上災害防止センター著、「流出油事故対応 総合マニュアル」(平成17年9月)、p.48(以下「甲7」という。)
甲第8号証:アズワンの公式ホームページ,「アカデミー・コーナー 粘度」,[online],2016年,[令和2年1月28日検索],インターネットURL: https://www.as-1.co.jp/academy/6/6.html(以下「甲8」という。)
甲第9号証:Rakutenレシピの公式ホームページ,「ジャムを活用★鶏肉の甘辛しょうゆ焼き レシピ・作り方」,[online],2011年11月3日,[令和2年1月28日検索],インターネットURL: https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1220003839/(以下「甲9」という。)
甲第10号証:cookpadの公式ホームページ,「アメリカ風☆簡単甘辛ミートボール」,[online],2006年10月14日,[令和2年1月28日検索],インターネットURL: https://cookpad.com/recipe/290569(以下「甲10」という。)
甲第11号証:cookpadの公式ホームページ,「苺ジャム&マヨネーズ混ぜてトースト!」,[online],2011年2月17日,[令和2年1月28日検索],インターネットURL: https://cookpad.com/recipe/1363886(以下「甲11」という。)
甲第12号証:林弘子のブログ,「梅ジャムから、美味しいソースへと」,[online],2009年6月11日,[令和2年1月29日検索],インターネットURL: http://hayashihiroko.net/?p=1462(以下「甲12」という。)
甲第13号証:Amazon公式ホームページ,「コルナビー社 Jam in a Jiffy-インスタントフレッシュ又は冷凍ジャムミックス、調理不要、低糖、正味重量18オンス」,[online],2013年6月26日,[令和2年1月28日検索],インターネットURL: https://www.amazon.com/Cornabys-Jam-Jiffy-Instant-Freezer/dp/B00910LWI4(以下「甲13」という。)
甲第14号証:特開2006-213867号公報(以下「甲14」という。)
甲第15号証:cookpadの公式ホームページ,「ドライフルーツ・ジャム」,[online],2007年2月25日,[令和2年1月28日検索],インターネットURL: https://cookpad.com/recipe/334725(以下「甲15」という。)
甲第16号証:ハウス食品株式会社の公式ホームページ,「基本のキ 切り方編 みじん切り」,[online],[令和2年1月28日検索],インターネットURL: https://housefoods.jp/recipe/kihon/cut/cut_17.html(以下「甲16」という。)
甲第17号証:特開平8-317771号公報(以下「甲17」という。)
甲第18号証:文部科学省の公式ホームページ,「食品成分データベース」,[online],[令和2年1月29日検索],インターネットURL: https://fooddb.mext.go.jp/result/result_top.pl?USER_ID=13078(以下「甲18」という。)
甲第19号証:一般財団法人 食品分析開発センターSUNATECの公式ホームページ,「栄養成分分析の実際」,[online],2012年12月,[令和2年1月30日検索],インターネットURL: http://www.mac.or.jp/mail/121201/02.shtml(以下「甲19」という。)
甲第20号証:「鹿工技ニュース」、鹿児島県工業技術センター発行、No.84、(2009.1)、p.5(以下「甲20」という。)
甲第21号証:「長野県工業技術総合センター 研究報告」、長野県工業技術総合センター発行、No.3、(2008)、p.F4(以下「甲21」という。)

(申立理由の概要)
申立理由1(新規性)
訂正前の本件発明1?4、7、8は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の本件発明1?4、7、8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

申立理由2(進歩性)
訂正前の本件発明1?9は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び技術常識に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の本件発明1?9に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

申立理由3(実施可能要件)
訂正前の本件発明1?9に係る特許は、以下のとおり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

本件明細書の実施例1(【0013】?【0014】)と比較例1(【0018】?【0019】)の粘度を比較すると、醤油の添加や食塩・砂糖の量の軽微な調整によって、劇的に粘度が変わっており、いかなる方法で粘度を制御しているのか理解できないから、発明の詳細な説明には、粘度の制御について当業者が本件発明1?9を作れるように記載されていない。

申立理由4(サポート要件)
訂正前の本件発明1?9は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、訂正前の本件発明1?9に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(1)訂正前の本件発明1?9に記載の「具材の含有量」について、本件明細書に記載の実施例/比較例は、いずれも具材の含有量が50質量%であり、具材が70質量%となった場合、30質量%となった場合に、課題を解決できるか否か、理解することができない。

(2)訂正前の本件発明1?9に記載の「アミノ態質素含有量」について、本件明細書の記載からアミノ態窒素含有量が0.1質量%であるとき課題が解決できないと考えられ、いかなるアミノ態窒素含有量であれば課題を解決できるか理解できない。

(3)訂正前の本件発明1?9に記載の「液部の粘度」について、本件明細書に記載の実施例1の粘度は3400mPa・s、比較例1、3の粘度は4mPa・sであり、粘度が下限値の2000mPa・sとなった場合や、3400mPa・sよりも高くなった場合に、どの程度の数値範囲まで課題が解決できるか理解できない。
また、実施例1と比較例1の粘度とを比較すると、醤油の添加や食塩・砂糖の量の軽微な調整によって、劇的に粘度が変わっていることから、いかなる方法で粘度を制御しているのか理解できず、粘度の制御方法によって、課題が解決可能であるか不明である。

(4)訂正前の本件発明4?9に記載の「液部の糖度」及び「液部の油分含量」について、本件明細書中においては、具材入り液状混合物の実施例が1つしかないため、糖度及び油分の上限値付近において、課題が解決可能であるか認識することはできない。

(5)訂正前の本件発明9に記載の「液部の塩分含量」及び「pH」について、本件明細書中においては、具材入り液状混合物の実施例が1つしかないため、塩分及びpHの上限値付近において、課題が解決可能であるか認識することはできない。

申立理由5(明確性要件)
訂正前の本件発明1?9は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項2号に適合するものではないから、訂正前の本件発明1?9に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

訂正前の本件発明1?9に記載の「アミノ態窒素」について、食品中の全窒素のうち一部の窒素含有量を意味すると考えられるところ、本件明細書(【0009】)には「本発明において、液部のアミノ態窒素含有量は、栄養成分公定法で定められたケルダール法にて求められた液部の窒素値を指す」と、食品中の全窒素を測定する方法(甲19?甲21)にて求められる窒素値であることが記載されていることから、当該「アミノ態窒素」という文言の意味を理解することができず、不明確である。

2 当審が通知した取消理由の概要
訂正前の請求項1?9に係る発明に対して、令和2年5月25日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由1 訂正前の請求項1?8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

理由2 訂正前の請求項1?9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

訂正前の本件発明1において、アミノ態窒素が0.1質量%の場合を含む「具材を除く液部のアミノ態窒素含有量が0.1質量%以下であり」(決定注:下線は当審が付与。以下同様。)については、本件発明1の課題である、多様な調味料に混合して用いることができ、高い汎用性を有すると共に、調味料に新鮮な具材感を付与して、多様な風味や食感を有する調味料を提供できるように記載されているとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本願出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。
よって、本件発明1は、その範囲全体にわたって前記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものではない。
本件発明1を直接引用して特定されている本件発明2?9についても、同様の取消理由が存在する。

なお、当審が通知した取消理由1は、特許異議申立理由2のうち甲1?甲4をそれぞれ主引用例とする場合に対応するものであり、取消理由2は、特許異議申立理由4のうち(2)に対応するものである。

第5 当審の判断
当審は、請求項1?9に係る特許は、当審の通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。

1 当審が通知した取消理由についての判断

(1)理由1(進歩性)について

ア 甲1?21の記載、並びに、乙第1号証及びその記載

(ア)甲1?21の記載

a 甲1
甲1a「 請求の範囲
[1]果実類を含む食品材料の減圧加熱濃縮工程を含むジャム類の製造方法において、減圧加熱濃縮工程で発生した蒸気の初留分を凝縮水として回収し、該凝縮水を減圧加熱濃縮した食品材料に戻すことを特徴とするジャム類の製造方法。」

甲1b「技術分野
[0001]本発明は、新鮮な果実類の香気を有するジャム類の製造方法に関する。」

甲1c「発明が解決しようとする課題
[0013]上述した従来のジャムの製造方法に対し、本発明は、香料を添加物として使用することなく、新鮮な果実類の香気を有し、常温流通させることのできるジャム類を消費者に安価に提供できるようにすることを目的とし、特に、新鮮感のある香りとイチゴの華やかな香りとジャム様の甘い香りに富んだイチゴジャムを提供することを目的とする。
・・・・・
発明の効果
[0018]本発明のジャム類の製造方法によれば、果実類を含む食品材料の濃縮を減圧加熱濃縮により行うので、果実類の風味、香り、色調、栄養成分等を良好に維持したジャム類を得ることができ、これを常温流通させることも可能となる。さらに、本発明によれば、この減圧加熱濃縮工程で発生する蒸気の初留分の凝縮水を、減圧加熱濃縮した食品材料に戻すので、新鮮な果実類の香気を有するジャム類を製造することができる。特に、トランス-2-へキセノールの濃度が100?500ppbのイチゴジャム類は、新鮮なイチゴの香りに富み、かつ青臭さがなく優れた風味となり、さらに、エチルへキサノエート (ethyl hexanoate)の濃度が40ppb以上であると、イチゴ特有の華やかな香りが強く感じられる美味しいものとなり、 2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-2H-フラン-3-オン(2,5-dimethyl-4-hydroxy-2H-furan-3-one、以下、「DMHF」と称する)の濃度が790?1200ppbであるとジャム様の甘い香りに富んだものとなる。
[0019]なお、減圧加熱濃縮した食品材料に戻す凝縮水は、専ら初留分であるため、得られるジャム類は、所期の糖度や粘度に容易に調製することができる。
[0020]また、この初留分は、格別加工されることなく、減圧加熱濃縮した食品材料に直ちに戻されるので食品添加物とはならず、食品添加物として香料を含有しない製品を製造することが可能となる。」

甲1d「実施例
[0047]以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
試験例1(イチゴ)
(1)表1の配合のイチゴジャムを次のように製造した。まず、減圧加熱濃縮に用いる容器内でイチゴと砂糖を40℃まで加熱することにより、砂糖を溶解させた。次に、バキュームニーダ一の絶対圧7.4kpa、品温40℃で減圧加熱濃縮を行い、8分間で2800ml(仕込み重量の27%)を留去させて濃縮した。この場合、留去させた蒸気は、多管式熱交換器で凝縮させ(冷媒1℃)、凝縮水(熱交換部から排出直後の温度:4℃)100ml(仕込み重量の約1%)ずつ、No.1?No.28の28個の留分に区分した。
[0048]次に、濃縮物に酸味料 (クエン酸)水溶液とペクチン水溶液を加え、またNo.1?No.3の凝縮水300ml(仕込み重量の2.9%)を濃縮物に戻し、清水を添加することにより糖度50%に調整し、イチゴジャムを得た。このイチゴジャムは、ガラス容器に充填密封し、殺菌(90℃、10分)した(出来上がり重量10000g)。
[0049][表1]イチゴジャムの配合



b 甲2
甲2a「2.特許請求の範囲
(1)生の果実に、糖類、ペクチンおよび必要に応じてクエン酸を添加混合して粘稠な状態とし、その粘稠化処理に際し少くとも果実の煮つめは行なわないことを特徴とするジャム様食品の製造方法。」(特許請求の範囲 請求項1)

甲2b「本発明の目的は、果実の新鮮時の香りに富むジャム様食品の製造方法を提供することである。」(1頁右下欄5?7行)

甲2c「実施例1
蔗糖20gに低メトキシルペクチン8gをよく混合したのち300gの水に投入し、液が80℃となるまで加温し溶解させた。次いでこの液の中へ、蔗糖280g、クエン酸2gを添加溶解させたのち、液温が60℃に下ってから、ヘタを除去してすりつぶした生のイチゴ400gを添加し5分間静かに混合した。放冷により品温が18℃に低下したとき、製品は粘稠な状態のジャム様食品(糖度34、酸度0.50、糖酸比68)となり、イチゴの香りに富むものであった。
・・・・・
実施例2
実施例1での、ペクチンの添加量を9gとし、使用する水の量を350gとし、クエン酸の添加量を3gとし、後から添加する蔗糖をブドウ糖にかえ、また、ヘタを除去してすりつぶしたイチゴ400gを内皮を除去してバラバラにほぐした生のミカンにかえた以外は実施例1と同様にしてジャム様食品(糖度35、酸度0.54、糖酸比65を製した。」(2頁左下欄下から5行?3頁左下欄末行)

c 甲3
甲3a「2.特許請求の範囲
(1)原料混合物を加熱することなく超高圧処理に付して得られる超高圧処理ジャム。」(特許請求の範囲 請求項1)

甲3b「 本発明者らは食品の超高圧処理の実用化について研究を重ねる間に、この処理が果実加工品、特に、ジャムに適しており、従来、ジャムの製造に必要であると考えられている加熱処理を全く行わずに、新鮮な生果実の色や風味を活かした、十分に商業的に流通可能な製品が得られることを見出した。」(1頁右下欄4?10行)

甲3c「 実施例1
苺ジャム
成分 配合量(重量%)
苺(蔕を除き、水洗したもの) 50
糖類 36.3
クエン酸 0.15
ビタミンC 0.1
ペクチン 0.5
水 12.95
この配合に従い、これらの成分を混合し、加熱することなくプラチック容器に充填し、密封した後、超高圧処理装置に入れ、4000kg/cm^(2)にて15分間加圧し、糖度40度ブリックスの所望のプレザーブ・スタイルの苺ジャムを得た。

実施例2
オレンジ・マーマレード
成分 配合量(重量%)
前処理したオレンジ外皮 25
オレンジ果肉 30
糖類 31.5
クエン酸 0.35
ビタミンC 0.2
ペクチン 0.4
水 12.55
この配合に従い、前記実施例1と同様に原料混合物を超高圧処理に付し、糖度35度ブリックスの所望のオレンジ・マーマレードを得た。なお、用いたオレンジ外皮はつぎのとおり前処理した。
生果実を水洗後、外皮を剥離し、適当なサイズにスライスし、50mg%のビタミンC水溶液に浸漬した。ついで、水洗し、水切りし、2%クエン酸水溶液と1:1の重量比で混合し、可撓性の容器に密封後、前記と同様に超高圧処理を行った。このようにして得られた前処理ずみのオレンジ外皮をさらに水洗し、水切りして前記マーマレード製造に用いた。」(2頁右上欄末行?右下欄15行)

d 甲4
甲4a「レモン、柚子、金柑、生姜で保存食作り」(標題)

甲4b「まず、レモンをよく洗い、皮を剥いたら水に晒します。生姜も皮を剥いて、みじん切り(ジャム用)、薄くスライス(はちみつ漬け用)したものを、それぞれ水に晒します。水に晒す時間は30分ほど。
短い千切りにしたレモンの皮と果汁、刻んだ生姜、砂糖、水を入れて煮ます。レモンの皮が柔らかくなったら味を見て、蜂蜜を足します。
ジャムはこれで出来上がり。」(レモンジャムの作り方の説明)

甲4c「生姜のはちみつ漬けは、スライスした生姜の水気をよく拭き取り、熱湯消毒した清潔な瓶に、蜂蜜と交互に入れます。一番上が蜂蜜になるようにして、このまま1週間エキスが出るのを待ちます。(ちょっと残したレモン汁もスプーン1杯分加えてみました。)」(生姜のはちみつ漬けの作り方の説明)

甲4d「もう一つ、金柑の甘露煮と柚子ジャムを作りました。
金柑は、前回と同じく蜂蜜で煮ました。」(金柑の甘露煮の作り方の説明)

e 甲5
甲5a「電子レンジで♪しょうがジャム」(標題)

甲5b「しょうが 50グラム位
パルスイート 大さじ4
(上白糖なら 50グラム)
はちみつ 大さじ1
レモン汁 大さじ1
水 大さじ1

作り方
1 しょうがを皮ごとすりおろす。
2 耐熱容器に、材料をすべて入れて混ぜる。ラップはかけずにそのまま電子レンジで500Wで4分加熱する。
3 一度取り出して混ぜて、様子をみながら更に1?2分加熱する。
4 冷めると固まってしまってくるので、ややゆるめの感じで止めておく。
5 出来立てのぴりっとした味わいが好きなので少量のレシピを書きましたが、倍量で作っても充分に美味しいと思います。」(作り方の説明)

f 甲6
甲6a「きらきらジャム?玉ねぎマーマレード?」(標題)

甲6b「材料(ジャム瓶1個分)
玉ねぎ 3個(400g)
塩 3つまみ
酢 100cc
砂糖 100g

作り方
1 玉ねぎをスライサーでスライスしてボウルに入れ、塩3つまみを入れ全体に揉み込んで、しんなりしたら水で洗います。
2 ザルにあげ、水気を軽く絞ります。鍋に酢と砂糖を入れ煮立て、玉ねぎを入れ、蓋をして弱火で20分程煮ます。
3 途中、何度か蓋をあけ混ぜて下さい。20分後、玉ねぎにしっかり火が通っていたら、今度は蓋をあけて煮ます。
4 少し色づいてきて、とろっとして水分が無くなってきたら出来上がりです。」(作り方の説明)

g 甲7
甲7a「粘度の指標 1,400?1,500cSt コンデンスミルク
4,000?5,000 イチゴジャム、ハチミツ
・・・・ 」(48頁9?10行)

h 甲8
甲8a「 物質の粘度表
物質名 粘度cP
・・・・・
いちごジャム(23℃) 6,000
・・・・・ 」(標題下の表)

i 甲9
甲9a「ジャムを活用★鶏肉の甘辛しょうゆ焼き レシピ・作り方
・・・・・
料理レシピ
材料(1?2人分)
鶏もも肉 1枚(250g程度)
いちごジャム 40g
しょうゆ 大さじ2
塩、こしょう 少々
片栗粉 大さじ2程度
オリーブオイル(サラダ油でも可)大さじ1

作り方
・・・・・
3 ボウルかビニール袋に入れて、塩とこしょう、しょうゆ、ジャムを加えて軽くもみ。10分ほど漬けておく。・・・・・
・・・・・ 」(標題、写真下)

j 甲10
甲10a「 ■ 甘辛ソース:
醤油 1/4カップ
ケチャップ 1/2カップ
グレープジェリー(イチゴジャムでも可)1/4カップ
にんにく 1つ 」(標題下の材料の下)

k 甲11
甲11a「 苺ジャム&マヨネーズ混ぜてトースト!
・・・・・
作り方
1 苺ジャムとマヨネーズを混ぜ合わす。苺ジャム1:マヨネーズ1.5の割り合いで、マヨネーズ少し多めで混ぜておく。・・・」(標題、写真下)

l 甲12
甲12a「 梅ジャムから、美味しいソースへと
・・・・・
左は先ほども書いた「梅醤油タレ」です。梅ジャム、調味醤油(醤油、みりん、だし汁を同量で煮詰めた醤油)をほぼ同量くらい、ごま油、ナンプラー、オイスターソース、すりおろしにんにく、赤トウガラシ粉は各少々。混ぜ合わせるだけ。
・・・・・
右側は「梅ドレッシング・クリーミー」。普通のドレッシング(酢・油・玉ねぎみじん切り・塩コショウ)に、すきなだけ梅ジャムを混ぜ合わせるだけ。・・・」(標題及びその下)

m 甲13(訳文で示す。)
甲13a「コルナビー社 Jam in a Jiffy-インスタントフレッシュ又は冷凍ジャムミックス、調理不要、低糖、正味重量18オンス
材料:砂糖、ブドウ糖、食品用改質デンプン、ペクチン、クエン酸、キサンタンガム、ソルビン酸カリウム・・」(標題、写真)

n 甲14
甲14a「【0025】
本発明の改質されたキサンタンガムを含む組成物として、食品の場合は、例えば・・・;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム及びプレザーブ等のジャム類;・・・等を挙げることができる。」

o 甲15
甲15a「ドライフルーツ・ジャム

フランスのレシピをアレンジしました。ドライフルーツのたっぷり入った、スパイシーなジャムはそのまま食べても美味しい!
材料(約一瓶分)
砂糖(グラニュー糖) 150g
水 300cc
オレンジ 1個
レモン 1個
*シナモン ひとつまみ
*グローブ ひとつまみ
*ナツメグ ひとつまみ
*ジンジャー ひとつまみ
**くるみ 30g
**レーズン 30g
**プルーン 30g
**ドライアプリコット 30g
**ドライいちじく 100g
グランマニエ(お好みで)大さじ1? 」(標題、写真右)

p 甲16
甲16a「基本のキ」(標題)

甲16b「みじん切り
・・・・・
細かく切り刻む切り方で、あられ切りよりも細かく、1?2mm角に切るきり方です。」(標題下)

q 甲17
甲17a「【請求項1】 冷凍おろし野菜を切削し、次いで切削した冷凍おろし野菜を攪拌中の調味液体に加えることを特徴とするおろし野菜含有液体調味料の製造方法。」

甲17b「【0007】・・ここで、すりおろした後の野菜の大きさとしては、・・おろし野菜全体の60%以上が粒径1?6mmまたは40以上が粒径2?6mmの大きさのものが好ましいが、おろし野菜全体の60%以上(特に60?100%)が粒径1?6mmで、かつ、40%以上(特に40?100%)が粒径2?6mmであるのがさらに好ましい。」

r 甲18
甲18a「



s 甲19
甲19a「[栄養成分分析の実際]
・・・・・
1 たんぱく質
栄養表示基準の方法では窒素定量換算法が採用されています。・・・ケルダール法により測定された全窒素を、換算係数を乗じてたんぱく質量としています。・・」(1頁)

t 甲20
甲20a「Q:醤油では全窒素とホルモール窒素を分析していると聞きます。その意味を教えてください。
A:・・・・全窒素は,一般的にケルダール法で分析され,アミノ酸をはじめとする高・低分子ペプチドを構成する窒素の総量を求めることが出来ます。一方,ホルモール窒素はアミノ酸あるいは水溶性の性質を持つかなり低分子ペプチドの窒素量を求めることが出来ます。・・」(5頁左欄)

u 甲21
甲21a「表2 製造方式別の成分平均値
種別 製法方式 ・・・ T.N.(%)F.N.(%)・・・
濃口 本醸造 全体・・・ 1.58 0.87・・・」(F4頁表2)

(イ)乙第1号証及びその記載
特許権者は、令和2年7月28日付け意見書に添付した証拠方法として、以下の乙第1号証(以下「乙1」という。)を提出している。

(証拠方法)
乙1:農林水産省、「ジャム類の日本農林規格」(改正平成20年7月17日農林水産省告示第1128号、最終改正平成25年12月24日農林水産省告示第3111号)、p.1?3

(乙1の記載)
乙1a「(適用の範囲)
第1条 この規格は、ジャム及びマーマレードに適用する。

(定義)
第2条 この規格において、次の表の左欄に掲げる用語の定義は、それぞれ同表の右欄に掲げるとおりとする。

・・・・・
(規格)
第3条 ジャム及びマーマレードの規格は、次のとおりとする。」



イ 甲1?6に記載又は示された発明

(ア)甲1に記載された発明
甲1は、「新鮮な果実類の香気を有するジャム類の製造方法」(甲1b)に関し記載するものであって、その具体例として、試験例1(甲1d)には、表1の配合のイチゴジャムを試験例1に記載のように製造したことが記載されている。

そうすると、試験例1に記載の製造方法により得られたイチゴジャムを、表1の配合を踏まえ書き表すと、甲1の試験例1には、
「減圧加熱濃縮に用いる容器内でイチゴ6000gと砂糖4415gを40℃まで加熱することにより、砂糖を溶解させ、次に、バキュームニーダーの絶対圧力7.4kpa、品温40℃で減圧加熱濃縮を行い、8分間で2800ml (仕込み重量の27%)を留去させて濃縮し、この場合、留去させた蒸気は、多管式熱交換器で凝縮させ(冷媒1℃)、凝縮水 (熱交換部から排出直後の温度:4℃) 100ml(仕込み重量の約1%)ずつ、No.1?No.28の28個の留分に区分し、次に、濃縮物に酸味料(クエン酸) 5gの水溶液とペクチン100gの水溶液(酸味料とペクチンの溶解水1900g)を加え、またNo.1?No.3の凝縮水300ml(仕込み重量の2.9%)を濃縮物に戻し、清水(糖度調整用)80gを添加することにより糖度50%に調整し、ガラス容器に充填密封し、殺菌(90℃、10分)して製造されたイチゴジャム(出来上がり重量10000g)」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(イ)甲2に記載された発明
甲2は、「生の果実に、糖類、ペクチンおよび必要に応じてクエン酸を添加混合して粘稠な状態とし、その粘稠化処理に際し少くとも果実の煮つめは行なわないことを特徴とするシャム様食品の製造方法」(甲2a)に関し記載するものであって、その具体例として、実施例1には、イチゴのジャム様食品を製造したこと、及び、実施例2には、ミカンのジャム様食品を製造したこと、がそれぞれ記載されている(甲2c)。

そうすると、甲2には、実施例1に、
「蔗糖20gに低メトキシルペクチン8gをよく混合したのち300gの水に投入し、液が80℃となるまで加温し溶解させ、次いでこの液の中へ、蔗糖280g、クエン酸2gを添加溶解させたのち、液温が60℃に下がってから、ヘタを除去してすりつぶした生のイチゴ400gを添加し5分間静かに混合し、放冷により品温が18℃に低下して得られた、イチゴの香りに富む、粘稠な状態のジャム様食品(糖度34、酸度0.50、糖酸比68)」の発明(以下、「甲2発明1」という。)、及び、

実施例2には、実施例2の記載に基づき、実施例1の記載を踏まえて書き表すと、
「蔗糖20gに低メトキシルペクチン9gをよく混合したのち350gの水に投入し、液が80℃となるまで加温し溶解させ、次いでこの液の中へ、ブドウ糖280g、クエン酸3gを添加溶解させたのち、液温が60℃に下がってから、内皮を除去してバラバラにほぐした生のミカン400gを添加し5分間静かに混合し、放冷により品温が18℃に低下して得られた、粘稠な状態のジャム様食品(糖度35、酸度0.54、糖酸比65)」の発明(以下、「甲2発明2」という。)
がそれぞれ記載されているといえる。

(ウ)甲3に記載された発明
甲3は、「原料混合物を加熱することなく超高圧処理に付して得られる超高圧処理ジャム」(甲3a)に関し記載するものであって、その具体例の一つとして、実施例1には苺ジャムを、実施例2にはオレンジ・マーマレードを、それぞれ製造したことが記載されている(甲3c)。

そうすると、甲3には、実施例1に、
「苺(蔕を除き、水洗したもの)50重量%、糖類36.3重量%、クエン酸0.15重量%、ビタミンC0.1重量%、ペクチン0.5重量%、水12.95重量%を混合し、加熱することなくプラチック容器に充填し、密封した後、超高圧処理装置に入れ、4000kg/cm^(2)にて15分間加圧して得られた、糖度40度ブリックスのプレザーブ・スタイルの苺ジャム」の発明(以下、「甲3発明1」という。)、及び、実施例2に、

「前処理したオレンジ外皮をさらに水洗し、水切りしたオレンジ外皮25重量%、オレンジ果肉30重量%、糖類31.5重量%、クエン酸0.35重量%、ビタミンC0.2重量%、ペクチン0.4重量%、水12.55重量%、を混合し、加熱することなくプラチック容器に充填し、密封した後、超高圧処理装置に入れ、4000kg/cm^(2)にて15分間加圧して得られた、糖度35度ブリックスのオレンジ・マーマレード」の発明(以下、「甲3発明2」という。)
が、それぞれ記載されているといえる。

(エ)甲4に示された発明
甲4は、「レモン、柚子、金柑、生姜で保存食作り」(甲4a)に関し示すものであって、その具体例の一つとして、レモンジャムが示されている(甲4b)。

そうすると、甲4には、
「レモンをよく洗い、皮を剥いたら水に晒し、生姜も皮を剥いて、みじん切り(ジャム用)したものを、水に晒し、水に晒す時間は30分ほど、短い千切りにしたレモンの皮と果汁、刻んだ生姜、砂糖、水を入れて煮、レモンの皮が柔らかくなったら味を見て、蜂蜜を足して作ったレモンジャム」の発明(以下、「甲4発明」という。)が示されているといえる。

(オ)甲5に示された発明
甲5は、「電子レンジで♪しょうがジャム」(甲5a)に関し示すものであって、その具体例として、しょうがジャムの作り方が示され、出来上がったしょうがジャムが示されている(甲5b)。

そうすると、レシピにおいて上白糖を選択した場合、甲5には、
「しょうが50グラム位を皮ごとすりおろし、耐熱容器に、上白糖50グラム、はちみつ大さじ1、レモン汁大さじ1及び水大さじ1をすべて入れて混ぜ、ラップはかけずにそのまま電子レンジで500Wで4分加熱し、一度取り出して混ぜて、様子をみながら更に1?2分加熱し、冷めると固まってしまってくるので、ややゆるめの感じで止めておいて作った、しょうがジャム」の発明(以下、「甲5発明」という。)が示されているといえる。

(カ)甲6に示された発明
甲6は、「きらきらジャム?玉ねぎマーマレード?」(甲6a)に関し示すものであって、その具体例として、玉ねぎマーマレードの作り方が示され、出来上がった玉ねぎマーマレードが示されている(甲6b)。

そうすると、甲6には、
「玉ねぎ3個(400g)をスライサーでスライスしてボウルに入れ、塩3つまみを入れ全体に揉み込んで、しんなりしたら水で洗い、ザルにあげ、水気を軽く絞り、鍋に酢と砂糖を入れ煮立て、玉ねぎを入れ、蓋をして弱火で20分程煮、途中、何度か蓋をあけ混ぜ、20分後、玉ねぎにしっかり火が通っていたら、今度は蓋をあけて煮、少し色づいてきて、とろっとして水分が無くなってきたら出来上がりの、玉ねぎマーマレード」の発明(以下、「甲6発明」という。)が示されているといえる。

ウ 本件発明1について

(ア)甲1に記載された発明(甲1発明)との対比・判断

a 対比
(a)甲1発明の「ペクチン」は、本件発明1の「水性の増粘剤」に、また、甲1発明の「イチゴ」は本件発明1の「具材」に、それぞれ相当する。

(b)甲1発明の「イチゴジャム」は、「ペクチン」及び「イチゴ」を含み、最終的に「清水(糖度調整用)80gを添加することにより糖度50%に調整し」ていることから、「ペクチン」及び「イチゴ」を水中に含んでいるといえ、具材入り液状混合物といえる。
そうすると、甲1発明の「イチゴジャム」は、前記(a)で述べたことを踏まえると、本件発明1の「水中に水性の増粘剤及び具材を含」む、「具材入り液状混合物」に相当する。

(c)甲1発明の「イチゴ6000g」について、イチゴジャム製造中、減圧加熱濃縮により、凝縮水の減少はあるにせよ、「出来上がり重量10000g」であることから、製造されたイチゴジャム中のイチゴの含有量は、60重量%(=100×6000g/10000g)といえ、30質量%以上70質量%の範囲に入っているといえる。
そうすると、甲1発明の「イチゴ6000g」は、前記(a)で述べたことを踏まえると、本件発明1の「具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり」に相当する。

(d)甲1発明の「イチゴジャム」は、具材であるイチゴ以外の液部に、アミノ酸系調味料は含まれていないことから、本件発明1の「具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下」であるものに相当する。

(e)したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部のの窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲1-1:本件発明1は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲1発明では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲1-2:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲1発明では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲1-3:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)」ものであるのに対し、甲1発明では、イチゴジャムである点

b 判断(進歩性)

(a)相違点について
事案に鑑み、相違点甲1-3から検討する。

甲1は、「香料を添加物として使用することなく、新鮮な果実類の香気を有し、常温流通させることのできるジャム類を消費者に安価に提供できるようにすることを目的」(甲1c[0013])とした「新鮮な果実類の香気を有するジャム類の製造方法」(甲1b)に関し記載するものであり、「ジャム類」を発明の対象として前提にしているものである。
そうすると、甲1発明の「イチゴジャム」を、ジャム類以外のものにすることが、甲1には記載も示唆もされておらず、また、本件出願当時の技術常識を勘案しても、ジャムをジャム類以外のものにすることが技術常識であったとも認められない以上、甲1発明の「イチゴジャム」を、ジャム類以外のものにしようとする動機付けが当業者にあったとは認められない。
そして、当該動機付けがない以上、甲7?18に記載の技術常識(以下、単に「技術常識」という。)を検討するまでもない。
したがって、甲1発明の「イチゴジャム」を、「ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く」ものとすることは、甲1の記載及び技術常識から容易に想到し得たとはいえない。

(b)本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、本件明細書の段落【0006】の記載及び実施例(【0012】?【0023】)により裏付けられているように、
・本願発明1の具材入り液状混合物は、アミノ酸系調味料等を含む旨味成分の含有量が少ないため、具材入り液状混合物の保存時等に、具材にアミノ酸系調味料等に由来する味が浸透しにくいことから、具材入り液状混合物を汎用調味料と混合した場合には、汎用調味料と具材が有する旨味が干渉して風味が損なわれるといった問題が生じず、具材が新鮮味のある特有の食味を有し、具材と調味液とが異なる不均一な味を有する特有の食味を実現できること、
・具材入り液状混合物の塩分含量、糖度、及び酸度等を増大させなくても保存性を維持することができ、結果として、具材入り調味料中の具材の味が濃いものとならず、具材入り液状混合物を汎用調味料と混合した場合に、具材が新鮮味のある食味を有し、家庭で調理される具材入り調味料と同様の新鮮味のある調味料を提供することができること、及び、
・本願発明1の具材入り液状混合物は水性の増粘剤を含有するため、保存時等は液状混合物中に具材が均一に保持されており、汎用調味料と具材入り液状混合物を混合した場合には、具材入り液状混合物に含まれる具材や液部が汎用調味料中に円滑且つ均一に混合され、均一な具材入り調味料を得ることができること、
であると認められ、そのような効果は、甲1に記載された事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

(c)したがって、本件発明1は、相違点甲1-1?相違点甲1-2を検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

(イ)甲2に記載された発明(甲2発明1、甲2発明2)との対比・判断

a 甲2発明1

(a)対比
i 甲2発明1の「低メトキシルペクチン」は、本件発明1の「水性の増粘剤」に、また、甲2発明1の「イチゴ」は本件発明1の「具材」に、それぞれ相当する。

ii 甲2発明1の「ジャム様食品」は、「ペクチン」及び「イチゴ」を含み、これらを「水に投入し」「液の中へ」入れていることから、「ペクチン」及び「イチゴ」を水中に含んでいるといえ、具材入り液状混合物といえる。
そうすると、甲2発明1の「ジャム様食品」は、前記iで述べたことを踏まえると、本件発明1の「水中に水性の増粘剤及び具材を含」む、「具材入り液状混合物」に相当する。

iii 甲2発明1の「イチゴ400g」について、ジャム様食品の製造では、「蔗糖20g」、「低メトキシルペクチン8g」、「300gの水」、「蔗糖280g」、「クエン酸2g」「イチゴ400g」を用いており、製造されたジャム様食品中のイチゴの含有量は、約39.6重量%[=100×400g/(20g+8g+300g+280g+2g+400g)]といえ、30質量%以上70質量%の範囲に入っているといえる。
そうすると、甲2発明1の「イチゴ400g」は、前記iで述べたことを踏まえると、本件発明1の「具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり」に相当する。

iv 甲2発明1の「ジャム様食品」は、具材であるイチゴ以外の液部に、アミノ酸系調味料は含まれていないことから、本件発明1の「具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下」であるものに相当する。

v したがって、本件発明1と甲2発明1とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲2-1-1:本件発明1は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲2発明1では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲2-1-2:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲2発明1では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲2-1-3:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)」ものであるのに対し、甲2発明1では、ジャム様食品である点

(b)判断(進歩性)
事案に鑑み、相違点甲2-1-3から検討する。
甲2は、「生の果実に、糖類、ペクチンおよび必要に応じてクエン酸を添加混合して粘稠な状態とし、その粘稠化処理に際し少くとも果実の煮つめは行なわないことを特徴とするジャム様食品の製造方法」(甲2a)に関し記載するものであり、「ジャム様食品」を発明の対象として前提にしているものである。
そうすると、甲2発明1の「ジャム様食品」を、ジャム様食品以外のものにすることが、甲2には記載も示唆もされておらず、また、本件出願当時の技術常識を勘案しても、ジャム様食品をジャム様食品以外のものにすることが技術常識であったとも認められない以上、甲2発明1の「ジャム様食品」を、ジャム様食品以外のものにしようとする動機付けが当業者にあったとは認められない。
したがって、甲2発明1の「ジャム様食品」を、「ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く」ものとすることは、甲2の記載及び技術常識から容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明1の効果は、甲2に記載された事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

b 甲2発明2

(a)対比
i 甲2発明2の「低メトキシルペクチン」は、本件発明1の「水性の増粘剤」に、また、甲2発明2の「ミカン」は本件発明1の「具材」に、それぞれ相当する。

ii 甲2発明2の「ジャム様食品」は、「ペクチン」及び「ミカン」を含み、これらを「水に投入し」「液の中へ」入れていることから、「ペクチン」及び「ミカン」を水中に含んでいるといえ、具材入り液状混合物といえる。
そうすると、甲2発明2の「ジャム様食品」は、前記iで述べたことを踏まえると、本件発明1の「水中に水性の増粘剤及び具材を含」む、「具材入り液状混合物」に相当する。

iii 甲2発明2の「ミカン400g」について、ジャム様食品の製造では、「蔗糖20g」、「低メトキシルペクチン9g」、「350gの水」、「ブドウ糖280g」、「クエン酸3g」「ミカン400g」を用いており、製造されたジャム様食品中のミカンの含有量は、約37.7重量%[=100×400g/(20g+9g+350g+280g+3g+400g]といえ、30質量%以上70 質量%の範囲に入っているといえる。
そうすると、甲2発明2の「ミカン400g」は、前記iで述べたことを踏まえると、本件発明1の「具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり」に相当する。

iv 甲2発明2の「ジャム様食品」は、具材であるミカン以外の液部に、アミノ酸系調味料は含まれていないことから、本件発明1の「具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下」であるものに相当する。

v したがって、本件発明1と甲2発明2とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲2-2-1:本件発明1は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲2発明2では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲2-2-2:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲2発明2では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲2-2-3:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)」ものであるのに対し、甲2発明2では、ジャム様食品である点

(b)判断(進歩性)
相違点甲2-2-3は、前記a(a)vに記載の相違点甲2-1-3と同じであり、前記a(b)で述べたとおりである。

c 小括(進歩性)
本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲2に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

(ウ)甲3に記載された発明(甲3発明1、甲3発明2)との対比・判断

a 甲3発明1

(a)対比
i 甲3発明1の「ペクチン」は、本件発明1の「水性の増粘剤」に、また、甲3発明1の「苺(蔕を除き、水洗したもの)」は本件発明1の「具材」に、それぞれ相当する。

ii 甲3発明1の「苺ジャム」は、「ペクチン」、「苺」及び「水」を含んでいることから、「ペクチン」及び「苺」を水中に含んでいるといえ、具材入り液状混合物といえる。
そうすると、甲3発明1の「苺ジャム」は、前記iで述べたことを踏まえると、本件発明1の「水中に水性の増粘剤及び具材を含」む、「具材入り液状混合物」に相当する。

iii 甲3発明1の「苺(蔕を除き、水洗したもの)50重量%」は、前記iで述べたことを踏まえると、本件発明1の「具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり」に相当する。

iv 甲3発明1の「苺ジャム」は、具材である苺以外の液部に、アミノ酸系調味料は含まれていないことから、本件発明1の「具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下」であるものに相当する。

v したがって、本件発明1と甲3発明1とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲3-1-1:本件発明1は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲3発明1では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲3-1-2:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲3発明1では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲3-1-3:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)」ものであるのに対し、甲3発明1では、苺ジャムである点

(b)判断(進歩性)
事案に鑑み、相違点甲3-1-3から検討する。
甲3は、「原料混合物を加熱することなく超高圧処理に付して得られる超高圧処理ジャム」(甲3a)に関し記載するものであり、「超高圧処理ジャム」を発明の対象として前提にしているものである。
そうすると、「超高圧処理ジャム」の具体例の一つである、甲3発明1の「苺ジャム」を、超高圧処理ジャム以外のものにすることが、甲3には記載も示唆もされておらず、また、本件出願当時の技術常識を勘案しても、超高圧処理ジャムを超高圧処理ジャム以外のものにすることが技術常識であったとも認められない以上、甲3発明1の「苺ジャム」を、超高圧処理ジャム以外のものにしようとする動機付けが当業者にあったとは認められない。
したがって、甲3発明1の「苺ジャム」を、「ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く」ものとすることは、甲3の記載及び技術常識から容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明1の効果は、甲3に記載された事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

b 甲3発明2

(a)対比
i 甲3発明2の「ペクチン」は、本件発明1の「水性の増粘剤」に、また、甲3発明2の「オレンジ外皮」及び「オレンジ果肉」は本件発明1の「具材」に、それぞれ相当する。

ii 甲3発明2の「オレンジ・マーマレード」は、「ペクチン」、「オレンジ外皮」、「オレンジ果肉」及び「水」を含んでいることから、「ペクチン」、「オレンジ外皮」及び「オレンジ果肉」を水中に含んでいるといえ、具材入り液状混合物といえる。
そうすると、甲3発明2の「オレンジ・マーマレード」は、前記iで述べたことを踏まえると、本件発明1の「水中に水性の増粘剤及び具材を含」む、「具材入り液状混合物」に相当する。

iii 甲3発明2の「オレンジ外皮25重量%」及び「オレンジ果肉30重量%」は、具材の含有量の合計が55重量%(=25重量%+30重量%)であり、前記iで述べたことを踏まえると、本件発明1の「具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり」に相当する。

iv 甲3発明2の「オレンジ・マーマレード」は、具材である「オレンジ外皮」及び「オレンジ果肉」以外の液部に、アミノ酸系調味料は含まれていないことから、本件発明1の「具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下」であるものに相当する。

v したがって、本件発明1と甲3発明2とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲3-2-1:本件発明1は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲3発明2では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲3-2-2:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲3発明2では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲3-2-3:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)」ものであるのに対し、甲3発明2では、オレンジ・マーマレードである点

(b)判断(進歩性)
甲3発明2の「オレンジ・マーマレード」も、甲3発明1の「苺ジャム」と同じく、「超高圧処理ジャム」の具体例の一つである。
そして、相違点甲3-2-3は、前記a(a)vに記載の相違点甲3-1-3と同じであり、前記a(b)で述べたとおりである。

c 小括
本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲3に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

(エ)甲4に示された発明(甲4発明)との対比・判断

a 対比
(a)甲4発明の「レモン」にペクチンが含まれていることは周知事項であるから、甲4発明の「レモン」中のペクチンは、本件発明1の「水性の増粘剤」に、また、甲4発明の「短い千切りにしたレモンの皮と果汁」「刻んだ生姜」は本件発明1の「具材」に、それぞれ相当する。

(b)甲4発明の「レモンジャム」は、「ペクチン」、「レモン」及び「生姜」を含み、これらに「水を入れて」煮ていることから、「ペクチン」、「レモン」及び「生姜」を水中に含んでいるといえ、具材入り液状混合物といえる。
そうすると、甲4発明の「レモンジャム」は、前記(a)で述べたことを踏まえると、本件発明1の「水中に水性の増粘剤及び具材を含」む、「具材入り液状混合物」に相当する。

(c)甲4発明の「レモンジャム」は、具材であるレモン及び生姜以外の液部に、アミノ酸系調味料は含まれていないことから、本件発明1の「具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下」であるものに相当する。

(d)したがって、本件発明1と甲4発明とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲4-1:本件発明1は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲4発明では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲4-2:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲4発明では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲4-3:本件発明1では、具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であるのに対し、甲4発明では、具材の含有量(重量%)は明らかでない点
相違点甲4-4:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)」ものであるのに対し、甲4発明では、レモンジャムである点

b 判断(進歩性)
事案に鑑み、相違点甲4-4から検討する。
甲4は、「レモン、柚子、金柑、生姜で保存食作り」(甲4a)に関し示すものであり、甲4発明はその保存食の具体例の一つの「レモンジャム」である。
甲4には、ジャム以外の保存食の具体例として、「生姜のはつみつ漬け」(甲4c)及び「金柑の甘露煮」(甲4d)が示されているが、「生姜のはちみつ漬け」の作り方(甲4c)をみると水を使っていないことから、このはちみつ漬けは本件発明1に記載の「水中に・・具材を含み」というものではなく、また、「金柑の甘露煮」の作り方(甲4c)をみても、「水」を使っているか不明であるが、一般に、甘露煮は食材を糖類で煮詰めて作るものであるから、本件発明1に記載の「水中に・・具材を含み」というものでもない。
そうすると、甲4には、保存食として「水中に・・具材を含」むものは示されても示唆もされていないことから、本件出願当時の技術常識を踏まえても、甲4発明の「レモンジャム」を、保存食として「水中に・・具材を含」むものにしようとする動機付けがあったとは認められない。
したがって、甲4発明の「レモンジャム」を、「具材入り液状混合物」として、「ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く」ものとすることは、甲4に示された事項及び技術常識から容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明1の効果は、甲4に示された事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

c 小括
本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲4に示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

エ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1をさらに限定した発明である。
したがって、本件発明2は、本件発明1と同様の理由により、甲1?4に記載又は示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

オ 本件発明3について

(ア)甲1に記載された発明(甲1発明)との対比・判断

a 対比
本件発明3は、本件発明1の「具材入り液状混合物」において、「(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く」という発明特定事項がなく、「塩をさら含み」という発明特定事項を有するものである。
そうすると、前記ウ(ア)aで述べたことを踏まえると、本件発明3と甲1発明とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲1-4:本件発明3は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲1発明では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲1-5:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲1発明では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲1-6:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「塩をさらに含」むものであるのに対し、甲1発明では、塩をさらに含むものか明らかでない点

b 判断(進歩性)
事案に鑑み、相違点甲1-6から検討する。
前記ウ(ア)bで述べたように、甲1は、「ジャム類」を発明の対象として前提にしているものである。
甲1には、「ジャム類」において、塩を含むものとすることは記載も示唆もされていない。
また、ジャム類についての技術常識を検討すると、「ジャム類の日本農林規格」(乙1)には、第2条にジャム類、ジャム、マーマレード等の用語の定義が記載され、第3条にジャム及びマーマレードの規格につき、「食品添加物以外の原材料」として、「次に掲げるもの以外のものを使用していないこと。1 果実等 2 砂糖類 3 糖アルコール 4 蜂蜜 5 酒類 6 かんきつ類の果汁(含有率が4%以下である場合に限る。)」(乙1b)と記載されており、塩は記載されていない。それ故、ジャム及びマーマレードは塩を使用しないものであることが、技術常識であるといえる。
そうすると、甲1には、「ジャム類」において、塩を含むものとすることが記載も示唆もされておらず、また、ジャム及びマーマレードにおいて、塩を含むものとすることが技術常識であったとも認められない以上、ジャムの一種である、甲1発明の「イチゴジャム」において、塩をさらに含むものにしようとする動機付けが当業者にあったとは認められない。
したがって、甲1発明の「イチゴジャム」において、塩をさらに含むものとすることは、甲1の記載及び技術常識から容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明3の効果は、甲1に記載された事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

c 小括
したがって、本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

(イ)甲2に記載された発明(甲2発明1、甲2発明2)との対比・判断

a 甲2発明1

(a)対比
前記ウ(イ)a(a)で述べたことを踏まえると、本件発明3と甲2発明1とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲2-1-4:本件発明3は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲2発明1では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲2-1-5:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲2発明1では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲2-1-6:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「塩をさらに含」むものであるのに対し、甲2発明1では、塩をさらに含むものか明らかでない点

(b)判断(進歩性)
事案に鑑み、相違点甲2-1-6から検討する。
前記ウ(イ)a(b)で述べたように、甲2は、「ジャム様食品」を発明の対象として前提にしているものである。
甲2には、「ジャム様食品」に塩を添加することは、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲2には、「ジャム様食品」に塩を添加することが記載も示唆もされていない以上、「ジャム様食品」の一具体例である甲2発明1の「ジャム様食品」において、塩をさらに含むものにしようとする動機付けが当業者にあったとは認められない。
したがって、甲2発明1の「ジャム様食品」において、塩をさらに含むものとすることは、甲2の記載及び技術常識から容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明3の効果は、甲2に記載された事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

b 甲2発明2

(a)対比
前記ウ(イ)b(a)で述べたことを踏まえると、本件発明3と甲2発明2とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲2-2-4:本件発明3は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲2発明1では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲2-2-5:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲2発明1では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲2-2-6:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「塩をさらに含」むものであるのに対し、甲2発明1では、塩をさらに含むものか明らかでない点

(b)判断(進歩性)
事案に鑑み、相違点甲2-2-6から検討する。
相違点甲2-2-6は、前記a(a)に記載の相違点甲2-1-6と同じであり、前記a(b)で述べたとおりである。

c 小括
本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲2に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

(ウ)甲3に記載された発明(甲3発明1、甲3発明2)との対比・判断

a 甲3発明1

(a)対比
前記ウ(ウ)a(a)で述べたことを踏まえると、本件発明3と甲3発明1とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲3-1-4:本件発明3は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲3発明1では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲3-1-5:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲3発明1では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲3-1-6:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「塩をさらに含」むものであるのに対し、甲3発明1では、塩をさらに含むものか明らかでない点

(b)判断(進歩性)
事案に鑑み、相違点甲3-1-6から検討する。
前記ウ(ウ)a(b)で述べたように、甲3は、「超高圧処理ジャム」を発明の対象として前提にしているものである。
甲3には、「超高圧処理ジャム」に塩を添加することは、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲3には「超高圧処理ジャム」に塩を添加することが記載も示唆もされていない以上、「超高圧処理ジャム」の具体例の一つである、甲3発明1の「苺ジャム」において、塩をさらに含むものにしようとする動機付けが当業者にあったとは認められない。
したがって、甲3発明1の「苺ジャム」において、塩をさらに含むものとすることは、甲3の記載及び技術常識から容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明3の効果は、甲3に記載された事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

b 甲3発明2

(a)対比
前記ウ(ウ)b(a)で述べたことを踏まえると、本件発明3と甲3発明2とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲3-2-4:本件発明3は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲3発明2では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲3-2-5:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲3発明2では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲3-2-6:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「塩をさらに含」むものであるのに対し、甲3発明2では、塩をさらに含むものか明らかでない点

(b)判断(進歩性)
事案に鑑み、相違点甲3-2-6から検討する。
相違点甲3-2-6は、前記a(a)に記載の相違点甲3-1-6と同じであり、前記a(b)で述べたとおりである。

c 小括
本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲3に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

(エ)甲4に記載された発明(甲4発明)との対比・判断

a 対比
前記ウ(エ)aで述べたことを踏まえると、本件発明3と甲4発明とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲4-5:本件発明3は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲4発明では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲4-6:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲4発明では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲4-7:本件発明3では、具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であるのに対し、甲4発明では、具材の含有量(重量%)は明らかでない点
相違点甲4-8:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「塩をさらに含」むものであるのに対し、甲4発明では、塩をさらに含むものか明らかでない点

b 判断(進歩性)
事案に鑑み、相違点甲4-8から検討する。
前記ウ(エ)bで述べたように、甲4は、「レモン、柚子、金柑、生姜で保存食作り」(甲4a)に関し示すものであり、甲4発明はその保存食の具体例の一つの「レモンジャム」である。
甲4には、「レモンジャム」を含む「レモン、柚子、金柑、生姜で」の「保存食」に塩を添加することは、何ら示されておらず示唆もされていない。
また、前記(ア)bで述べたように、ジャムは塩を使用しないものであることが、技術常識であるといえる。
そうすると、甲4には、「レモンジャム」を含む「レモン、柚子、金柑、生姜で」の「保存食」に塩を添加することは、何ら示されておらず示唆もされておらず、また、ジャムにおいて、塩を含むものとすることが技術常識であったとも認められない以上、ジャムの一種である、甲4発明の「レモンジャム」において、塩をさらに含むものにしようとする動機付けがあったとは認められない。
したがって、甲4発明の「レモンジャム」において、塩をさらに含むものとすることは、甲4に示された事項載及び技術常識から容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明3の効果は、甲4に示された事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

c 小括
したがって、本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲4に示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

カ 本件発明4?8について
本件発明4?8は、本件発明1?3をさらに限定した発明である。
したがって、本件発明4?8は、本件発明1?3と同様の理由により、甲1?4に記載又は示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

キ まとめ
以上ア?カより、本件発明1?8は、甲1?4に記載又は示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
よって、本件発明1?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

(2)理由2(サポート要件)について

ア 特許法第36条第6項第1号の判断の前提について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。

イ 発明の詳細な説明の記載

(ア)背景技術に関する記載
「【背景技術】
【0002】
マヨネーズ、ケチャップ、醤油、味噌等の家庭用の汎用調味料を使用する際、一味違った風味と食感を付与するために汎用調味料にネギ、タマネギ、ピクルス等の刻み野菜を混合することが従来行われている。しかしながら、このような刻み野菜の混合の際には、複数の素材を予め準備して細断する等の処理を行わなければならず、手間を要することが課題となっている。
刻み野菜等、細断された複数の素材が混合された調味料を、手間をかけずに使用したいというニーズに対応するため、従来、タルタルソースやチリソース等の各種の具材入り調味料が市販されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
上記の細断された複数の素材が混合された調味料のほかにも、刻みピクルスや刻みタマネギの瓶詰め、乾燥青ネギ等の具材も提供されている。
・・・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、具材入り調味料は調味料として完成されたものであり、各々の調味料の風味や食感等は単一のものである。したがって、多様な風味や食感を楽しむためには、複数の調味料を別々に購入して使用しなくてはならない。そのような場合、それぞれの調味料を消費するための時間が長くなるために保存期間が長期化し、冷蔵庫のスペース等を占有してしまう等の問題があった。
更に、具材入り調味料は、アミノ酸系調味料等を含んでおり、調味液中のアミノ態窒素含有量が高く、そのままでは保存性に劣ったものとなる。このため、保存性を向上させるために不可避的に塩分含量、糖分含量、及び酸度等を増大させる必要があり、具材部分にもこれらが浸透し、具材の味を含めて、家庭で調理される具材入り調味料と比較して味が濃いものとなっていた。
また、刻み野菜の瓶詰めや乾燥野菜等についても、単一の具材のみを供するものであって使用用途も限られるため、同様に保存期間が長期化するという問題を有していた。現在、家庭用の汎用調味料に混合して具材感を出す用途に用いられる具材は提供されていない。
従って、本発明は、多様な調味料に混合して用いることができ、高い汎用性を有すると共に、調味料に新鮮な具材感を付与して、多様な風味や食感を有する調味料とすることを可能にする食品を提供することを目的とする。」

(イ)発明の効果に関する記載
「【発明の効果】
【0006】
本発明の具材入り液状混合物は、具材を除く液部のアミノ態窒素含有量が0.1質量%以下であり、アミノ酸系調味料等を含む旨味成分の含有量が少ない。このため、具材入り液状混合物の保存時等に、具材にアミノ酸系調味料等に由来する味が浸透しにくい。したがって、具材入り液状混合物を汎用調味料と混合した場合には、汎用調味料と具材が有する旨味が干渉して風味が損なわれるといった問題が生じず、具材が新鮮味のある特有の食味を有し、具材と調味液とが異なる不均一な味を有する特有の食味を実現できる。
また、具材を除く液部のアミノ態窒素含有量が0.1質量%以下であることにより、具材入り液状混合物の塩分含量、糖度、及び酸度等を増大させなくても保存性を維持することができ、結果として、具材入り調味料中の具材の味が濃いものとならず、具材入り液状混合物を汎用調味料と混合した場合に、具材が新鮮味のある食味を有し、家庭で調理される具材入り調味料と同様の新鮮味のある調味料を提供することができる。
更に、具材入り液状混合物は水性の増粘剤を含有するため、保存時等は液状混合物中に具材が均一に保持されており、汎用調味料と具材入り液状混合物を混合した場合には、具材入り液状混合物に含まれる具材や液部が汎用調味料中に円滑且つ均一に混合され、均一な具材入り調味料を得ることができる。」

(ウ)実施の態様に関する記載
「【0007】
・・・・・
<具材入り液状混合物>
本発明の具材入り液状混合物は、具材と、具材を除く液部とを含むものであり、より具体的には、水中に水性の増粘剤及び具材を含み、具材を除く液部のアミノ態窒素含有量が0.1質量%以下のものであり、当該具材入り液状混合物は調味料に混合するためのものである。
本発明の具材入り液状混合物において、具材、及び具材を除く液部は、具材入り液状混合物を目開き(基準寸法)1.18mmのJIS標準ふるいに掛けた場合に、ふるいにONしたものを具材とし、ふるいをPASSしたものを液部として定義される。
上記のふるい分けをするに際しては、具材入り液状混合物の粘度が、25℃の温度において、B型粘度計(東機産業社製)ローターNo.3、ローター回転数30rpmで30秒後に測定した値が10mPa・s以下となるように、具材入り液状混合物を水で希釈する。希釈した具材入り液状混合物を前記のようにしてふるい分けし、ふるいにONしたものを具材とし、液部の体積を希釈前の具材入り液状混合物の液部の体積に換算して各種成分の含有量や液部の量を算出する。具材入り液状混合物の粘度が前記の範囲にある場合には、具材入り液状混合物を直接ふるい分けをすればよい。
[具材]
本発明の具材入り液状混合物に用いられる具材としては、調味材等の具材として用いられる具材であれば何れであっても使用することができる。具体的には、野菜、果実、肉類、及びスパイスを挙げることができる。具材は、好ましくは1.18mm以上5.6mm未満、更に好ましくは2.0mm以上4.0mm未満の粒径のもの、あるいはこのような粒径に細断又は粉砕したものを使用することができる。なお、1.18mm以上5.6mm未満の粒径とは、前記と同様にして、所定の粘度となるように必要により希釈した具材入り液状混合物をJIS標準ふるいでふるい分けした場合に、目開き(基準寸法)5.6mmのふるいをPASSし、かつ目開き(基準寸法)1.18mmのふるいにONする具材が、具材全体の90質量%以上存在することを意味する。同様に、2.0mm以上4.0mm未満の粒径とは、目開き4.0mmのふるいをPASSし、かつ目開き2.0mmのふるいにONする具材が、具材全体の90質量%以上存在することを意味する。通常、具材はより均一な粒径のものとすることが好ましい。
具材として使用可能な野菜としては、例えば、ダイコン、タマネギ、ニンジン、ショウガ、ニンニク、ピクルス、白ネギ、シソ、セロリ、パセリ、ミツバ、ニラ、白ゴマ、及び黒ゴマを挙げることができる。果実としては、ユズ、リンゴ、及びオリーブを挙げることができる。肉類としては、ベーコン、鶏肉ミンチ、豚肉ミンチ、及び牛肉ミンチを挙げることができる。スパイスとしては、粒マスタード及びバジルを挙げることができる。これらの具材中でも、野菜である具材を使用することが好ましく、特に、ピクルス、オニオン、白ネギ、及びショウガを使用することが好ましい。また、新鮮味のある食味を有し、不均一な特有の食味を達成するために、具材は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
本発明で用いる具材としては、生の食材を使用できることはもちろんのこと、冷凍品を解凍したものや乾燥品等を使用することもできる。なお、本発明の具材入り液状混合物においては、具材の一部又は全てが乾燥された具材であることが好ましい。乾燥された具材を用いることにより、具材が、水性の増粘剤を含む水溶液を吸収し、具材のシャキシャキとした食感を向上できる。
これらの具材は、具材入り液状混合物の全重量に対して、30質量%以上70質量%以下であることが好ましく、50質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。なお、具材として乾燥物を用いる場合、上記具材の含有量は乾燥させた具材に水分を吸収させた状態で、上記のようにJIS標準ふるいに掛けて、ふるいにONした具材の質量に基づいて計算されるものである。上記の含有量で具材を配合することにより、具材入り液状混合物を汎用調味料に混合して調製される具材入り調味料中での具材の存在感、食味、食感を良好なものとすることができる。
なお、本発明の具材入り液状混合物においては、ふるい等を用いて、具材と液部とを容易に分離できるような、液部の流動性が高い状態であることが好ましい。また、本発明の具材入り液状混合物においては、具材が液部中に均一に保持され、具材入り液状混合物中の具材の分布が見かけ上均一に近い状態にあることが好ましい。具材入り液状混合物をこのような状態のものとすることにより、汎用調味料と具材入り液状混合物とを混合した場合に、具材を汎用調味料中に円滑且つ均一に混合でき、均一な具材入り調味料を得ることができる。
【0008】
[液部]
(水)
水は本発明の具材入り液状混合物における媒体である。水に水性の増粘剤を所望の量配合した水溶液に、更に具材を、所望の量配合することにより、具材入り液状混合物が構成される。媒体となる水は、純粋な水の他に水を含む調味液等であってもよい。
(水性の増粘剤)
本発明の具材入り液状混合物は、水性の増粘剤を含む。水性の増粘剤としては、水溶性の増粘剤であれば特に限定されるものではないが、キサンタンガム、カラギーナン、グアガム等の各種ガム類やデンプン類を使用することができる。これらの中でもガム類を使用することが好ましく、キサンタンガムを使用することが更に好ましい。増粘剤、好ましくはキサンタンガムは、本発明の具材入り液状混合物を油や油を含む汎用調味料に混合させる場合に好適に使用することができる。なお、一般に、刻み野菜の瓶詰め等は水性の増粘剤を含まない。
本発明の具材入り液状混合物において、液部の粘度は、25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であることが好ましく、2000mPa・s以上4000mPa・s以下であることが更に好ましい。具材入り液状混合物において、液部の粘度が上記の範囲内のものであることにより、液部が具材を均一に保持することができると共に、具材入り液状混合物を混合する汎用調味料の粘度に関わらず、結果として得られる具材入り調味料に適当な粘度を付与することができる。
なお、具材入り調味料の液部の粘度は、25℃の温度において、B型粘度計(東機産業社製)を使用して測定することができる。この場合、上記B型粘度計によりローターNo.3、ローター回転数30rpmで30秒後に測定した値を粘度とし、この測定でローターの抵抗値が100%を超えた場合は、同じB型粘度計によりローターNo.4、ローター回転数30rpmで30秒後に測定した値を粘度とすればよい。液部の粘度が高くなるとローターの抵抗値が高くなって、適正に粘度を測定することが困難になるため、液部の粘度が3600mPa・s以下の場合はローターNo.3を使用し、3600mPa・sを超える場合はローターNo.4を使用することを目安として、測定を行えばよい。
本発明の具材入り液状混合物の液部が上記の粘度を有するためには、具材入り液状混合物が、液部の質量に対して、水性の増粘剤を0.2質量%以上2.0質量%以下含むことが好ましく、0.2質量%以上1.5質量%以下含むことが更に好ましい。
本発明の具材入り液状混合物では、具材が、水性の増粘剤を含む水溶液中に保持された状態となっているため、増粘剤を吸収した具材内部と水溶液との間の水分交換が起こりにくく、具材は水分を保持して外部から水を吸水しにくい。したがって、具材入り液状混合物を汎用調味料と混合した場合に、汎用調味料の味が具材の内部に浸透しにくく、具材の新鮮味のある特有の食味が保たれ、具材と調味液とが異なる不均一な味を有する特有の食味の具材入り調味料を得ることができる。さらに、具材入り液状混合物を汎用調味料と混合した場合に、汎用調味料の種類を問わず、液状混合物の具材と液部が汎用調味料にスムーズに混合され、汎用調味料のもつ粘性を活かすことができる。この点も水性の増粘剤によりもたらされる本発明の効果である。
【0009】
(具材を除く液部のアミノ態窒素含有量)
本発明の具材入り液状混合物においては、具材を除く液部のアミノ態窒素含有量が0.1質量%以下であり、0.06質量%以下であることが好ましい。アミノ態窒素含有量の調整はアミノ酸系調味料等で行うことができる。これにより、液部の、アミノ酸系調味料等を含む旨味成分の含有量が少量であるので、保存時に、具材にアミノ酸系調味料等に由来する味が浸透しにくく、具材入り液状混合物を汎用調味料と混合した場合に、具材が新鮮味のある特有の食味を有し、具材と調味液とが異なる不均一な味を有する特有の食味を実現できる。
また、具材を除く液部のアミノ態窒素含有量が0.1質量%以下であることにより、具材入り液状混合物の塩分含量、糖度、及び酸度を増大させなくても保存性を維持することができ、結果として、具材入り液状混合物を汎用調味料と混合した場合に、得られる具材入り調味料は、具材が新鮮味のある食味を有し、同時に汎用調味料の食味が活かされたものとなる。液部のアミノ態窒素含有量の下限は限定されないが、例えば原料に由来して0.01質量%以上である場合に、具材入り液状混合物は、具材が新鮮味のある食味を有し、同時に汎用調味料の食味が活かされたものとなる。
具材入り液状混合物は、アミノ酸系調味料を含まないことが好ましい。ここで、アミノ酸系調味料としては、グルタミン酸ナトリウム、DL-アラニン、L-イソロイシン、及びグリシンを挙げることができる。具材入り液状混合物は、パッケージに「調味料(アミノ酸等)」と表示されるアミノ酸系調味料を含まないことが好ましい。
本発明において、液部のアミノ態窒素含有量は、栄養成分公定法で定められたケルダール法にて求められた液部の窒素値を指す。
(液部の糖度及び/又は油分含量)
本発明の具材入り液状混合物は、液部の糖度、すなわち、アッベ屈折計(ATAGO社製)で測定した糖度が50質量%以下であることが好ましく、30質量%以上40質量%以下であることが更に好ましい。また、液部の油分含量すなわち、ソックスレー65℃3時間抽出法で測定した油分含量が0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることが更に好ましい。糖度及び油分含量の調整は各種糖類、油類等で行うことができる。液部の糖度及び/又は油分含量を上記の範囲内のものとすることにより、具材入り液状混合物に含まれる具材が液部の味に染まりにくく、具材入り液状混合物を汎用調味料と混合して、具材入り調味料を調製した際に、具材の新鮮味のある特有の食味と、具材と調味液とが異なる不均一な味を有する食味を実現できると共に、汎用調味料の食味が活かされたものとなる。
(具材を除く液部の塩分含量及びpH)
本発明の具材入り液状混合物においては、具材を除く液部の塩分含量が3.0質量%以上6.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以上5.5質量%以下であることが更に好ましい。液部の塩分含量は、栄養成分公定法で定められた、誘導結合プラズマ発光分析法を用いてナトリウム量を測定し、その結果に2.54を乗じた値を指す。また、具材を除く液部のpHは3.4以上4.2以下であることが好ましく、3.6以上4.0以下であることが更に好ましい。
なお、塩分含量の調整は食塩等で、pHの調整は、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、及びグルコン酸等の可食性の酸で行うことが好ましい。具材を除く液部の塩分含量及びpHが上記の範囲内のものとなることにより、具材入り液状混合物の味がさっぱりしたものとなり、具材が液部の味に染まりにくく、具材入り液状混合物を汎用調味料と混合して、具材入り調味料を調製した際に具材の新鮮味のある特有の食味と、具材と調味液とが異なる不均一な味を有する食味を実現できると共に、汎用調味料の食味が活かされたものとなる。」

(エ)実施例に関する記載
「【実施例】
【0012】
・・・・・
【0013】
<実施例1>
以下の原料をニーダーで混合し、85℃まで加熱した後、樹脂製ボトルに充填して容器入りの具材入り液状混合物を製造した。
(具材)
乾燥オニオン(カットサイズ7mm) 7
ピクルス(カットサイズ5mm) 6
(液部)
食塩 5
ソルビトール 2
砂糖 23
食酢 11
キサンタンガム 0.2
水 残量
具材と液部の合計 100
※数値は質量部/100質量部を示す。
【0014】
(具材入り液状混合物の性能)
色調:L値=28.0、a値=-2.1、b値=5.4
色調は色差計(反射光、日本電色工業株式会社製)で測定したものであり、混ぜる対象となる汎用調味料本来の色合いを壊さない、透明に近い色調のものであった。具材入り液状混合物中には、具材が見かけ上均一に分布していた。
具材入り液状混合物を目開き(基準寸法)1.18mmのJIS標準ふるいに掛け、ふるいにONした具材(水和された乾燥オニオンとピクルス)50質量部/100質量部と、ふるいをPASSした液部50質量部/100質量部とに分けた。
液部のアミノ態窒素含有量、糖度、油分含量、塩分含量及びpHは次のとおりであった。これらの数値は各々前述の方法により求めたものである。
アミノ態窒素含有量:0.04質量%、
糖度:36質量%、
油分含量:0.03質量%、
塩分含量:5質量%、
pH:3.7
なお、具材入り液状混合物には、アミノ酸系調味料等の旨み調味料は添加しておらず、アミノ態窒素は具材に由来していると考えられる。
JIS標準ふるいを用いて具材の粒径を測定したところ、目開き(基準寸法)5.6mmのふるいをPASSし、かつ目開き(基準寸法)1.18mmのふるいにONする具材が、具材全体の95質量%以上存在し、目開き4.0mmのふるいをPASSし、かつ目開き2.0mmのふるいにONする具材が、具材全体の90質量%以上存在した。
具材入り液状混合物の液部の粘度は、25℃において、B型粘度計(東機産業社製)を使用し、ローターNo.3、ローター回転数30rpmで30秒後に測定したところ、3400mPa・sであった。
【0015】
<実施例2>
実施例1で得られた具材入り液状混合物をマヨネーズと体積比1:1の比率で混合し、タルタルソース風の具材入り調味料として食材にかけて食した。この場合に、液状混合物の具材と液部をマヨネーズにスムーズに混合することができた。タルタルソース風の具材入り調味料は色調がL値=76.20、a値=-1.25、b値=17.36であり、マヨネーズの本来の色調が維持され、且つタルタルソース風の具材感が付与されたものであった。
また、タルタルソース風の具材入り調味料は、具材が新鮮味のある特有の食味を有すると共に、具材と調味液とが異なる不均一な味を有する特有の食味のものであった。具材入り調味料中には、具材が略均一に分布していた。
このタルタルソース風の具材入り調味料については、マヨネーズの風味が活かされており、粘度:約10200mPa・s(前記の方法によりB型粘度計でローターNo.4を使用して測定した)のもので、具材感と食材にかけた場合のトッピング性能と特有の口どけを有し、タルタルソース風の具材入り調味料として新規な風味、食感を有していた。
【0016】
<実施例3>
実施例1で得られた具材入り液状混合物をケチャップと体積比1:1の比率で混合し、チリソース風の具材入り調味料として食材にかけて食した。この場合に、液状混合物の具材と液部をケチャップにスムーズに混合することができた。チリソース風の具材入り調味料は色調がL値=20.79、a値=-1.25、b値=17.36であり、ケチャップの本来の色調が維持され、且つチリソース風の具材感が付与されたものであった。
また、チリソース風の具材入り調味料は、具材が新鮮味のある特有の食味を有すると共に、具材と調味液とが異なる不均一な味を有する特有の食味のものであった。具材入り調味料中には、具材が略均一に分布していた。
このチリソース風の具材入り調味料については、ケチャップの風味が活かされており、粘度:約3200mPa・s(前記の方法によりB型粘度計でローターNo.3を使用して測定した)のもので、具材感と食材にかけた場合のトッピング性能と特有の口どけを有し、チリソース風の具材入り調味料として新規な風味、食感を有していた。
【0017】
<実施例4>
実施例1で得られた具材入り液状混合物を醤油と体積比1:1の比率で混合し、薬味入り甘酢だれ風の具材入り調味料として食材につけて食した。この場合に、液状混合物の具材と液部を醤油にスムーズに混合することができた。甘酢だれ風の具材入り調味料は色調がL値=16.10、a値=4.42、b値=7.82であり、醤油の本来の色調が維持され、且つ薬味入り甘酢だれ風の具材感が付与されたものであった。
また、薬味入り甘酢だれ風の具材入り調味料は、具材が新鮮味のある特有の食味を有すると共に、具材と調味液が異なる不均一な味を有する特有の食味のものであった。
この薬味入り甘酢だれ風の具材入り調味料については、醤油の風味が活かされており、粘度:約930mPa・s(前記の方法によりB型粘度計でローターNo.3を使用して測定した)のもので、具材感と食材につけた場合に調味液が食材にからまる性能と特有の口どけを有し、薬味入り甘酢だれ風の具材入り調味料として新規な風味、食感を有していた。
【0018】
<比較例1>
液部に砂糖27質量部及び醤油9質量部を用いて、以下の原料100質量部とした点以外は実施例1と同様にして容器入りの具材入り液状混合物を調製した。
(具材)
乾燥オニオン(カットサイズ7mm) 7
ピクルス(カットサイズ5mm) 6
(液部)
醤油 9
食塩 3.8
ソルビトール 2
砂糖 27
食酢 11
キサンタンガム 0.2
水 残量
具材と液部の合計 100
※数値は質量部/100質量部を示す。
【0019】
(具材入り液状混合物の性能)
色調:L値=16.5、a値=5.2、b値=8.6
色調は色差計(反射光、日本電色工業株式会社製)で測定したものであるが、実施例1の具材入り液状混合物と比較して明らかに色調の暗いものであった。具材入り液状混合物中には、具材が見かけ上均一に分布していた。
具材入り液状混合物を、実施例1の場合と同様にしてふるいに掛け、ふるいにONした具材50質量部/100質量部と、液部50質量部/100質量部とに分けた。
液部のアミノ態窒素含有量、糖度、油分含量、塩分含量及びpHは次のとおりであった。これらの数値は各々前述の方法により求めたものである。
アミノ態窒素含有量:0.15質量%、
糖度:59質量%、
油分含量:0.03質量%
塩分:5質量%、
pH:4.0
実施例1の具材入り調味料に比べ、砂糖を多量に使用し、且つ醤油を使用しているので、糖度及びアミノ態窒素含量は実施例1のものと比べて高くなった。
JIS標準ふるいを用いて具材の粒径を測定したところ、目開き(基準寸法)5.6mmのふるいをPASSし、かつ目開き(基準寸法)1.18mmのふるいにONする具材が、具材全体の95質量%以上存在し、目開き4.0mmのふるいをPASSし、かつ目開き2.0mmのふるいにONする具材が、具材全体の90質量%以上存在した。具材入り調味料の液部の粘度は、前記の方法によりB型粘度計でローターNo.3を使用して測定したところ、4mPa・sであった。
【0020】
<比較例2>
前記の実施例2から4と同様に、比較例1で得られた具材入り液状混合物をマヨネーズ、ケチャップ、及び醤油と体積比1:1で混合して具材入り調味料とした。
具材入り液状混合物を醤油と混合したものは醤油本来の色合いが残されていたが、マヨネーズ又はケチャップと混ぜたものは色あいが黒ずみ、マヨネーズ、ケチャップの色合いの特徴を活かすことができないものとなり、不自然な色調の液部に具材が保持された食欲をそそらない具材入り調味料となった。
また、各具材入り調味料は、具材の味が濃いもので、具材の食味とマヨネーズ、ケチャップ及び醤油の食味とのバランスが崩れており、調味料の全体としての食味において、マヨネーズ、ケチャップ及び醤油の食味が不自然に感じられるものであった。具材入り調味料中には、具材が略均一に分布していた。
【0021】
<比較例3>
キサンタンガムを用いず、以下の原料で100質量部とした点以外は実施例1と同様にして容器入り調味料を調製した。
(具材)
乾燥オニオン(カットサイズ7mm) 7
ピクルス(カットサイズ5mm) 6
(液部)
食塩 5
ソルビトール 2
砂糖 27
食酢 11
水 残量
具材と液部の合計 100
※数値は質量部/100質量部を示す。
【0022】
(具材入り液状混合物の性能)
色調:L値=28.0、a値=-2.1、b値=5.4
色調は色差計(反射光、日本電色工業株式会社製)で測定したものであるが、実施例1の具材入り液状混合物と同様の色調のものであった。一方、具材入り液状混合物中には、具材が沈降して見かけ上均一に分布していないものであった。
具材入り液状混合物を、実施例1の場合と同様にしてふるいに掛け、ふるいにONした具材50質量部/100質量部と、液部50質量部/100質量部とに分けた。
液部のアミノ態窒素含有量、糖度、油分含量、塩分含量及びpHは次のとおりであった。これらの数値は各々前述の方法により求めたものである。
アミノ態窒素含有量:0.04質量%、
糖度:59質量%、
油分含量:0.03質量%、
塩分含量:5質量%、
pH:4.0
JIS標準ふるいを用いて具材の粒径を測定したところ、目開き(基準寸法)5.6mmのふるいをPASSし、かつ目開き(基準寸法)1.18mmのふるいにONする具材が、具材全体の95質量%以上存在し、目開き4mmのふるいをPASSし、かつ目開き2mmのふるいにONする具材が、具材全体の90質量%以上存在した。具材入り調味料の液部の粘度は、前記の方法によりB型粘度計でローターNo.3を使用して測定したところ、4mPa・sであった。
【0023】
<比較例4>
前記の実施例2から4と同様に、比較例3で得られた具材入り液状混合物をマヨネーズ、ケチャップ、及び醤油と体積比1:1で混合して具材入り調味料とした。
具材入り調味料は、粘度の高いマヨネーズ、ケチャップでは、これらと均一に混ざりにくいものであった。また、容器を十分に振ってからでないと、具材を汎用調味料に均一に混合することができず、いずれの汎用調味料に対しても、具材が均一に保持されなかった。」

ウ 本件発明の解決しようとする課題について
発明の詳細な説明の背景技術の記載(【0002】?【0004】)、発明が解決しようとする課題の記載(【0004】)及び実施例の記載(【0012】?【0023】)からみて、本件発明1?9の解決しようとする課題は、多様な調味料に混合して用いることができ、高い汎用性を有すると共に、調味料に新鮮な具材感を付与して、多様な風味や食感を有する調味料を提供することであると認める。

エ 特許請求の範囲の記載
前記第3に記載したとおりである。

オ 判断
発明の詳細な説明の実施例1(【0013】?【0014】)には、水中に水性の増粘剤であるキサンタンガム、具材であるオニオン及びピクルス、並びに、塩を含み、具材の含有量が30質量%以上70質量%以下の50質量%、具材を除く液部の窒素含有量が、「アミノ態窒素含有量:0.04質量%」であり、かつ、当該液部の粘度が、25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下の3400mPa・sである、具材入り液状混合物が記載され、さらに、実施例2?4(【0015】?【0017】)では、実施例1で得られた具材入り液状混合物を、調味料であるマヨネーズ、ケチャップ及び醤油に混合し、それぞれ、具材入り調味料として、新鮮な風味、食感を有していたことが記載されている。

ここで、上記「アミノ態窒素含有量:0.04質量%」について、本件明細書には、「本発明において、液部のアミノ態窒素含有量は、栄養成分公定法で定められたケルダール法にて求められた液部の窒素値を指す。」(【0009】)と記載されていることから、上記「アミノ態窒素含有量:0.04質量%」とは、ケルダール法にて求められた液部の窒素値が0.04質量%であると理解される。

そうすると、実施例1の具材入り液状混合物は、本件発明1?9の具体例であり、高い汎用性を有すると共に、調味料に新鮮な具材感を付与して、多様な風味や食感を有する調味料を提供できていることを、客観的に確認されているといえ、本件発明1?9の上記課題を解決し得ると認識できるといえる。

なお、比較例1には、液部に砂糖27質量部及び醤油9質量部を用いて、以下の原料100質量部とした点以外は実施例と同様にした具材入り液状混合物が記載され、この具材入り液状混合物は「アミノ態窒素含有量:0.15質量%」であることが記載されている。
これは、上記本件明細書段落【0009】の記載からすると、ケルダール法にて求められた液部の窒素値が0.15質量%であるものと理解され、本件発明1?9には該当しないものといえる。
したがって、比較例1の実施の結果は、本件発明1?9がサポート要件を満たすという結論に影響を与えるものではない。

カ まとめ
したがって、本件発明1?9は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
よって、本件発明1?9に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由についての判断

(1)申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について

ア 本件発明1について

(ア)甲1に記載された発明(甲1発明)との対比・判断

a 対比
本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、前記1(1)ウ(ア)aに記載したとおりである。

b 判断

(a)新規性について
事案に鑑み、相違点甲1-3から検討する。
前記1(1)ウ(ア)bで検討したように、甲1発明は「イチゴジャム」で、ジャム類に該当するものであり、本件発明1のただし書きにより、本件発明1の具材入り液状混合物から除かれているものである。
そして、甲1には、ジャム類以外のものについては記載されておらず、技術常識から記載されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲1-3は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明1は、相違点甲1-1?相違点甲1-2を検討するまでもなく、甲1に記載された発明とはいえない。

(b)進歩性について
前記1(1)ウ(ア)bで述べたとおりである。

c 小括
よって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、また、甲1に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(イ)甲2に記載された発明(甲2発明1、甲2発明2)との対比・判断

a 甲2発明1

(a)対比
本件発明1と甲2発明1との一致点及び相違点は、前記1(1)ウ(イ)a(a)に記載したとおりである。

(b)判断

i 新規性について
事案に鑑み、相違点甲2-1-3から検討する。
前記1(1)ウ(イ)a(b)で検討したように、甲2発明1は「ジャム様食品」であり、本件発明1のただし書きにより、本件発明1の具材入り液状混合物から除かれているものである。
そして、甲2には、ジャム様食品以外のものについては記載されておらず、技術常識から記載されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲2-1-3は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明1は、相違点甲2-1-1?相違点甲2-1-2を検討するまでもなく、甲2に記載された発明とはいえない。

ii 進歩性について
前記1(1)ウ(イ)a(b)で述べたとおりである。

b 甲2発明2

(a)対比
本件発明1と甲2発明2との一致点及び相違点は、前記1(1)ウ(イ)b(a)に記載したとおりである。

(b)判断

i 新規性について
事案に鑑み、相違点甲2-2-3から検討する。
前記1(1)ウ(イ)b(b)で述べたように、相違点甲2-2-3は、相違点甲2-1-3と同様であり、前記a(b)で述べたことと同様である。
したがって、相違点甲2-2-3は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明1は、相違点甲2-2-1?相違点甲2-2-2を検討するまでもなく、甲2に記載された発明とはいえない。

ii 進歩性について
前記1(1)ウ(イ)b(b)で述べたとおりである。

c 小括
よって、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえないし、また、甲2に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ウ)甲3に記載された発明(甲3発明1、甲3発明2)との対比・判断

a 甲3発明1

(a)対比
本件発明1と甲3発明1との一致点及び相違点は、前記1(1)ウ(ウ)a(a)に記載したとおりである。

(b)判断

i 新規性について
事案に鑑み、相違点甲3-1-3から検討する。
前記1(1)ウ(ウ)a(b)で検討したように、甲3発明1の「苺ジャム」は、「超高圧処理ジャム」の具体例の一つであり、超高圧処理ジャムは、本件発明1のただし書きにより、本件発明1の具材入り液状混合物から除かれているものである。
そして、甲3には、超高圧処理ジャム以外のものについては記載されておらず、技術常識から記載されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲3-1-3は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明1は、相違点甲3-1-1?相違点甲3-1-2を検討するまでもなく、甲3に記載された発明とはいえない。

ii 進歩性について
前記1(1)ウ(ウ)a(b)で述べたとおりである。

b 甲3発明2

(a)対比
本件発明1と甲3発明2との一致点及び相違点は、前記1(1)ウ(ウ)b(a)に記載したとおりである。

(b)判断

i 新規性について
事案に鑑み、相違点甲3-2-3から検討する。
前記1(1)ウ(ウ)b(b)で検討したように、甲3発明2の「オレンジ・マーマレード」は、「超高圧処理ジャム」の具体例の一つであり、本件発明1のだだし書きにより、本件発明1の具材入り液状混合物から除かれているものである。
そして、相違点甲3-2-3は、相違点甲3-1-3と同様であり、前記a(b)で述べたとことと同様である。
したがって、相違点甲3-2-3は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明1は、相違点甲3-2-1?相違点甲3-2-2を検討するまでもなく、甲3に記載された発明とはいえない。

ii 進歩性について
前記1(1)ウ(ウ)b(b)で述べたとおりである。

c 小括
よって、本件発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえないし、また、甲3に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(エ)甲4に示された発明(甲4発明)との対比・判断

a 対比
本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、前記1(1)ウ(エ)aに記載したとおりである。

b 判断

(a)新規性について
事案に鑑み、相違点甲4-4から検討する。
前記1(1)ウ(エ)bで検討したように、甲4発明は「レモンジャム」であり、ジャム類に該当するものであり、本件発明1のただし書きにより、本件発明1の具材入り液状混合物から除かれているものである。
そして、甲4には、ジャム類以外の保存食として「水中に・・具材を含」むものは示されても示唆もされておらず、技術常識から示されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲4-4は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明1は、相違点甲4-1?相違点甲4-3を検討するまでもなく、甲4に示された発明とはいえない。

(b)進歩性について
前記1(1)ウ(エ)bで述べたとおりである。

c 小括
よって、本件発明1は、甲4に示された発明であるとはいえないし、また、甲4に示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(オ)甲5に示された発明(甲5発明)との対比・判断

a 対比

(a)甲5発明の「レモン汁」にペクチンが含まれていることは周知事項であるから、甲5発明の「レモン汁」中のペクチンは、本件発明1の「水性の増粘剤」に、また、甲5発明の「しょうが」は本件発明1の「具材」に、それぞれ相当する。

(b)甲5発明の「しょうがジャム」は、「ペクチン」及び「しょうが」を含み、これらに「水を・・入れて」混ぜて加熱し液状となっていることから、「ペクチン」及び「しょうが」を水中に含んでいるといえ、具材入り液状混合物といえる。
そうすると、甲5発明の「しょうがジャム」は、前記(a)で述べたことを踏まえると、本件発明1の「水中に水性の増粘剤及び具材を含」む、「具材入り液状混合物」に相当する。

(c)甲5発明の「しょうがジャム」は、具材でしょうが以外の液部に、アミノ酸系調味料は含まれていないことから、本件発明1の「具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下」であるものに相当する。

(d)したがって、本件発明1と甲5発明とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲5-1:本件発明1は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲5発明では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲5-2:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲5発明では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲5-3:本件発明1では、具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であるのに対し、甲5発明では、具材の含有量(重量%)は明らかでない点
相違点甲5-4:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)」ものであるのに対し、甲5発明では、しょうがジャムである点

b 判断

(a)新規性について
事案に鑑み、相違点甲5-4から検討する。
甲5発明は「しょうがジャム」であり、本件発明1のただし書きにより、本件発明1の具材入り液状混合物から除かれている「ジャム類」に相当するものである。
そして、甲5には、ジャム類以外のものについては示されておらず、技術常識から示されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲5-4は、実質的な相違点といえる。

(b)進歩性について
事案に鑑み、相違点甲5-4から検討する。
甲5は、「しょうがジャム」(甲5a)のレシピを示すものであり、「ジャム類」を発明の対象として前提にしているものである。
そうすると、甲5発明の「しょうがジャム」を、ジャム類以外のものにすることが、甲5には示されておらず示唆もされておらず、また、本件出願当時の技術常識を勘案しても、ジャムをジャム類以外のものにすることが技術常識であったとも認められない以上、甲5発明の「しょうがジャム」を、ジャム類以外のものにしようとする動機付けが当業者にあったとは認められない。
したがって、甲5発明の「しょうがジャム」を、「ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く」ものとすることは、甲5に示された事項及び技術常識から容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明1の効果は、甲5に示された事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

c 小括
以上より、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲5に示された発明であるとはいえないし、また、甲5に示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(カ)甲6に示された発明(甲6発明)との対比・判断

a 対比

(a)甲6発明の「玉ねぎ」にペクチンが含まれていることは周知事項であるから、甲6発明の「玉ねぎ」中のペクチンは、本件発明1の「水性の増粘剤」に、また、甲6発明の「玉ねぎ」は本件発明1の「具材」に、それぞれ相当する。

(b)甲6発明の「玉ねぎマーマレード」は、「ペクチン」及び「玉ねぎ」を含み、これらに酢(食酢は4?5%の酢酸を主体とする酸性液体調味料であることは周知事項である。)と砂糖を入れて煮立て、液状となっていることから、「ペクチン」及び「玉ねぎ」を水中に含んでいるといえ、具材入り液状混合物といえる。
そうすると、甲6発明の「玉ねぎマーマレード」は、前記(a)で述べたことを踏まえると、本件発明1の「水中に水性の増粘剤及び具材を含」む、「具材入り液状混合物」に相当する。

(c)甲6発明の「玉ねぎマーマレード」は、具材で玉ねぎ以外の液部に、アミノ酸系調味料は含まれていないことから、本件発明1の「具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下」であるものに相当する。

(d)したがって、本件発明1と甲6発明とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲6-1:本件発明1は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲6発明では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲6-2:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲6発明では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲6-3:本件発明1では、具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であるのに対し、甲6発明では、具材の含有量(重量%)は明らかでない点
相違点甲6-4:具材入り液状混合物が、本件発明1では、「(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)」ものであるのに対し、甲6発明では、玉ねぎマーマレードである点

b 判断

(a)新規性について
事案に鑑み、相違点甲6-4から検討する。
甲6発明は「玉ねぎマーマレード」であり、本件発明1のただし書きにより、本件発明1の具材入り液状混合物から除かれている「ジャム類」に相当するものである。
そして、甲6には、ジャム類以外のものについては示されておらず、技術常識から示されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲6-4は、実質的な相違点といえる。

(b)進歩性について
事案に鑑み、相違点甲6-4から検討する。
甲6は、「玉ねぎマーマレード」(甲6a)のレシピを示すものであり、「ジャム類」を発明の対象として前提にしているものである。
そうすると、甲6発明の「玉ねぎマーマレード」を、ジャム類以外のものにすることが、甲6には示されておらず示唆もされておらず、また、本件出願当時の技術常識を勘案しても、ジャム類をジャム類以外のものにすることが技術常識であったとも認められない以上、甲6発明の「玉ねぎマーマレード」を、ジャム類以外のものにしようとする動機付けが当業者にあったとは認められない。
したがって、甲6発明の「玉ねぎマーマレード」を、「ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く」ものとすることは、甲6に示された事項及び技術常識から容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明1の効果は、甲6に示された事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

c 小括
以上より、本件発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲6に示された発明であるとはいえないし、また、甲6に示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1をさらに限定した発明である。
したがって、本件発明2は、前記ア(ア)?(カ)で述べた本件発明1と同様の理由により、甲1?6に記載又は示された発明であるとはいえないし、また、甲1?6に記載又は示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

ウ 本件発明3について

(ア)甲1に記載された発明(甲1発明)との対比・判断

a 対比
本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点は、前記1(1)オ(ア)aに記載したとおりである。

b 判断

(a)新規性について
事案に鑑み、相違点甲1-6から検討する。
甲1発明において、製造過程で塩を含有させた記載はない。
また、一般に、ジャム類は塩を使用しないものであることが、技術常識であることから(乙1a)、甲1発明が塩を含むことが、技術常識からみて、記載されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲1-6は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲1に記載された発明とはいえない。

(b)進歩性について
前記1(1)オ(ア)bに記載したとおりである。

c 小括
よって、本件発明3は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、また、甲1に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(イ)甲2に記載された発明(甲2発明1、甲2発明2)との対比・判断

a 甲2発明1

(a)対比
本件発明3と甲2発明1との一致点及び相違点は、前記1(1)オ(イ)a(a)に記載したとおりである。

(b)判断

i 新規性について
事案に鑑み、相違点甲2-1-6から検討する。
甲2発明1において、製造過程で塩を含有させた記載はない。
また、甲2発明1が塩を含むことが、技術常識からみて、記載されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲2-1-6は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲2に記載された発明とはいえない。

ii 進歩性について
前記1(1)オ(イ)a(b)で述べたとおりである。

b 甲2発明2

(a)対比
本件発明3と甲2発明2との一致点及び相違点は、前記1(1)オ(イ)b(a)に記載したとおりである。

(b)判断

i 新規性について
事案に鑑み、相違点甲2-2-6から検討する。
甲2発明2において、製造過程で塩を含有させた記載はない。
また、甲2発明2が塩を含むことが、技術常識からみて、記載されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲2-2-6は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲2に記載された発明とはいえない。

ii 進歩性について
前記1(1)オ(イ)b(b)で述べたとおりである。

c 小括
よって、本件発明3は、甲2に記載された発明であるとはいえないし、また、甲2に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ウ)甲3に記載された発明(甲3発明1、甲3発明2)との対比・判断

a 甲3発明1

(a)対比
本件発明3と甲3発明1との一致点及び相違点は、前記1(1)オ(ウ)a(a)に記載したとおりである。

(b)判断

i 新規性について
事案に鑑み、相違点甲3-1-6から検討する。
甲3発明1において、製造過程で塩を含有させた記載はない。
また、甲3発明1が塩を含むことが、技術常識からみて、記載されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲3-1-6は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲3に記載された発明とはいえない。

ii 進歩性について
前記1(1)オ(ウ)a(b)で述べたとおりである。

b 甲3発明2

(a)対比
本件発明3と甲3発明2との一致点及び相違点は、前記1(1)オ(ウ)b(a)に記載したとおりである。

(b)判断

i 新規性について
事案に鑑み、相違点甲3-2-6から検討する。
甲3発明2において、製造過程で塩を含有させた記載はない。
また、甲3発明2が塩を含むことが、技術常識からみて、記載されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲3-2-6は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲3に記載された発明とはいえない。

ii 進歩性について
前記1(1)オ(ウ)b(b)で述べたとおりである。

c 小括
よって、本件発明3は、甲3に記載された発明であるとはいえないし、また、甲3に記載された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(エ)甲4に示された発明(甲4発明)との対比・判断

a 対比
本件発明3と甲4発明との一致点及び相違点は、前記1(1)オ(エ)aに記載したとおりである。

b 判断(新規性)

(a)新規性について
事案に鑑み、相違点甲4-8から検討する。
甲4発明において、製造過程で塩を含有させたことは特定されていない。
また、一般に、ジャム類は塩を使用しないものであることが、技術常識であることから(乙1a)、甲4発明が塩を含むことが、技術常識からみて、示されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲4-8は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲4に示された発明とはいえない。

(b)進歩性について
前記1(1)オ(エ)bに記載したとおりである。

c 小括
よって、本件発明3は、甲4に示された発明であるとはいえないし、また、甲4に示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(オ)甲5に示された発明(甲5発明)との対比・判断

a 対比
前記1(1)オ(オ)aに記載したことを踏まえると、本件発明3と甲5発明とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲5-5:本件発明3は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲5発明では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲5-6:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲5発明では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲5-7:本件発明3では、具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であるのに対し、甲5発明では、具材の含有量(重量%)は明らかでない点
相違点甲5-8:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「塩をさらに含」むものであるのに対し、甲5発明では、塩をさらに含むものか明らかでない点

b 判断

(a)新規性について
事案に鑑み、相違点甲5-8から検討する。
甲5発明は「しょうがジャム」であり、甲5発明において、製造過程で塩を含有させたことは示されていない。
また、一般に、ジャム類は塩を使用しないものであることが、技術常識であることから(乙1a)、甲5発明が塩を含むことが、技術常識からみて、示されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲5-8は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲5に示された発明とはいえない。

(b)進歩性について
事案に鑑み、相違点甲5-8から検討する。
甲5は、「しょうがジャム」(甲5a)のレシピを示すものであり、「ジャム類」を発明の対象として前提にしているものである。
甲5には、「しょうがジャム」において、塩を含むものとすることは示されておらず示唆もされていない。また、ジャム及びマーマレードにおいて、塩を含むものとすることが技術常識であったとも認められない(乙1a)。
そうすると、甲5発明の「しょうがジャム」において、塩をさらに含むものにしようとする動機付けが当業者にあったとは認められない。
したがって、甲5発明の「しょうがジャム」において、塩をさらに含むものとすることは、甲5に示された事項及び技術常識から容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明3の効果は、甲5に示された事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

c 小括
以上より、本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲5に示された発明であるとはいえないし、また、甲5に示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(カ)甲6に示された発明(甲6発明)との対比・判断

a 対比
前記1(1)オ(カ)aに記載したことを踏まえると、本件発明3と甲6発明とは、

(d)したがって、本件発明1と甲6発明とは、
「水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下である、具材入り液状混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲6-5:本件発明3は、具材を除く液部の粘度が25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であるのに対し、甲6発明では、具材を除く液部の粘度は明らかでない点
相違点甲6-6:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「調味料に混合するための」ものであるのに対し、甲6発明では、調味料に混合するためのものか明らかでない点
相違点甲6-7:本件発明3では、具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であるのに対し、甲6発明では、具材の含有量(重量%)は明らかでない点
相違点甲6-8:具材入り液状混合物が、本件発明3では、「塩をさらに含」むものであるのに対し、甲5発明では、塩をさらに含むものか明らかでない点

b 判断

(a)新規性について
事案に鑑み、相違点甲6-8から検討する。
甲6発明は「玉ねぎマーマレード」であり、甲6発明において、製造過程で塩を含有させたことは示されていない。
また、一般に、ジャム類は塩を使用しないものであることが、技術常識であることから(乙1a)、甲6発明が塩を含むことが、技術常識からみて、示されているに等しい事項であるともいえない。
したがって、相違点甲6-8は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲6に示された発明とはいえない。

(b)進歩性について
事案に鑑み、相違点甲6-8から検討する。
甲6は、「玉ねぎマーマレード」(甲6a)のレシピを示すものであり、「ジャム類」を発明の対象として前提にしているものである。
甲6には、「玉ねぎマーマレード」において、塩を含むものとすることは示されておらず示唆もされていない。また、ジャム及びマーマレードにおいて、塩を含むものとすることが技術常識であったとも認められない(乙1a)。
そうすると、甲6発明の「玉ねぎマーマレード」において、塩をさらに含むものにしようとする動機付けが当業者にあったとは認められない。
したがって、甲6発明の「玉ねぎマーマレード」において、塩をさらに含むものとすることは、甲6に示された事項及び技術常識から容易に想到し得たとはいえない。
また、本件発明3の効果は、甲6に示された事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

c 小括
以上より、本件発明3は、他の相違点を検討するまでもなく、甲6に示された発明であるとはいえないし、甲6に示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

エ 本件発明4?9について
本件発明4?9は、本件発明1?3をさらに限定した発明である。
したがって、本件発明4、7、8は、本件発明1?3と同様の理由により、甲1?6に記載又は示された発明であるとはいえない。
また、本件発明4?9は、本件発明1?3と同様の理由により、甲1?6に記載又は示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

オ まとめ
以上ア?エより、本件発明1?4、7、8は、甲1?6に記載又は示された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件発明1?9は、甲1?6に記載又は示された発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
よって、本件発明1?9に係る特許は、特許法第29条各項の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

(2)申立理由5(明確性要件)について
事案に鑑み、申立理由5(明確性要件)から検討する。

訂正前の本件発明1の「具材を除く液部のアミノ態窒素含有量が0.1質量%以下であり」という記載は、本件訂正により、本件明細書の段落【0009】の記載や技術常識(甲19、甲20)と整合し合理的に認識できる、「具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下であり」という記載に訂正されているので、明確となった。
さらに、本件訂正により、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は2を引用するものであったところ、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む独立形式請求項へ改めたことにより、本件発明3に記載されることとなった「具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下であり」という記載も、明確となっている。

したがって、本件発明1及び3は、明確であるといえ、本件発明1又は3を直接引用して特定されている本件発明2、4?9も、同様に明確であるといえるから、本件発明1?9は、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。
よって、本件発明1?9に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

(3)申立理由4(サポート要件)について
事案に鑑み、申立理由4(サポート要件)を次に検討する。
前記第4 1 申立理由4(サポート要件)の(1)、(3)?(5)についても申し立てているので、(1)、(3)?(5)を纏めて検討する。
なお、申立理由4(2)については、前記第4 2で述べたとおり、取消理由2であり、前記1(2)で述べたとおり、理由がない。

ア 本件発明1?9の「具材の含有量が30質量%以上70質量%以下」について、発明の詳細な説明には、一般的な態様の記載として、「【0007】・・これらの具材は、具材入り液状混合物の全重量に対して、30質量%以上70質量%以下であることが好ましく、50質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。・・上記の含有量で具材を配合することにより、具材入り液状混合物を汎用調味料に混合して調製される具材入り調味料中での具材の存在感、食味、食感を良好なものとすることができる」と記載されている。

イ 本件発明1?9の「液部の粘度が、25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下」について、発明の詳細な説明には、一般的な態様の記載として、「【0008】・・本発明の具材入り液状混合物において、液部の粘度は、25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下であることが好ましく、2000mPa・s以上4000mPa・s以下であることが更に好ましい。具材入り液状混合物において、液部の粘度が上記の範囲内のものであることにより、液部が具材を均一に保持することができると共に、具材入り液状混合物を混合する汎用調味料の粘度に関わらず、結果として得られる具材入り調味料に適当な粘度を付与することができる。・・本発明の具材入り液状混合物の液部が上記の粘度を有するためには、具材入り液状混合物が、液部の質量に対して、水性の増粘剤を0.2質量%以上2.0質量%以下含むことが好ましく、0.2質量%以上1.5質量%以下含むことが更に好ましい」と記載されている。

ウ 本件発明4?9の「液部の糖度が50質量%以下」及び「液部の油分含量が0.5質量%以下」について、発明の詳細な説明には、一般的な態様の記載として、「【0009】・・(液部の糖度及び/又は油分含量)本発明の具材入り液状混合物は、液部の糖度、すなわち、アッベ屈折計(ATAGO社製)で測定した糖度が50質量%以下であることが好ましく、30質量%以上40質量%以下であることが更に好ましい。また、液部の油分含量すなわち、ソックスレー65℃3時間抽出法で測定した油分含量が0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることが更に好ましい。糖度及び油分含量の調整は各種糖類、油類等で行うことができる。液部の糖度及び/又は油分含量を上記の範囲内のものとすることにより、具材入り液状混合物に含まれる具材が液部の味に染まりにくく、具材入り液状混合物を汎用調味料と混合して、具材入り調味料を調製した際に、具材の新鮮味のある特有の食味と、具材と調味液とが異なる不均一な味を有する食味を実現できると共に、汎用調味料の食味が活かされたものとなる」と記載されている。

エ 本件発明9に記載の「液部の塩分含量が3.0質量%以上6.0質量%以下」及び「pHが3.4以上4.2以下」について、発明の詳細な説明には、一般的な態様の記載として、「【0009】・・(具材を除く液部の塩分含量及びpH)本発明の具材入り液状混合物においては、具材を除く液部の塩分含量が3.0質量%以上6.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以上5.5質量%以下であることが更に好ましい。液部の塩分含量は、栄養成分公定法で定められた、誘導結合プラズマ発光分析法を用いてナトリウム量を測定し、その結果に2.54を乗じた値を指す。また、具材を除く液部のpHは3.4以上4.2以下であることが好ましく、3.6以上4.0以下であることが更に好ましい。なお、塩分含量の調整は食塩等で、pHの調整は、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、及びグルコン酸等の可食性の酸で行うことが好ましい。具材を除く液部の塩分含量及びpHが上記の範囲内のものとなることにより、具材入り液状混合物の味がさっぱりしたものとなり、具材が液部の味に染まりにくく、具材入り液状混合物を汎用調味料と混合して、具材入り調味料を調製した際に具材の新鮮味のある特有の食味と、具材と調味液とが異なる不均一な味を有する食味を実現できると共に、汎用調味料の食味が活かされたものとなる」と記載されている。

オ 前記ア?エの記載を裏付けるように、前記1(2)オに記載したように、発明の詳細な説明の実施例1(【0013】?【0014】)には、水中に水性の増粘剤であるキサンタンガム、具材であるオニオン及びピクルス、並びに、塩を含み、具材の含有量が50質量%、具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.04質量%であり、かつ、当該液部の粘度が、25℃において、3400mPa・sである、具材入り液状混合物が記載され、さらに、実施例2?4(【0015】?【0017】)では、実施例1で得られた具材入り液状混合物を、調味料であるマヨネーズ、ケチャップ及び醤油に混合し、それぞれ、具材入り調味料として、新鮮な風味、食感を有していたことを客観的に確認している。

カ そうすると、実施例1?4で客観的に確認されていることを踏まえると、本件発明1?9の「具材入り液状混合物」における、具材の含有量、液部の粘度、糖度、油分含量、塩分含量及びpHについては、前記ア?エに記載のそれぞれの実施の態様の記載に基づく範囲内で実施すれば、得られる「具材入り液状混合物」は、多様な調味料に混合して用いることができ、高い汎用性を有すると共に、調味料に新鮮な具材感を付与して、多様な風味や食感を有する調味料を提供し得ると、当業者は理解できるといえ、本件発明1?9の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。

キ なお、実施例1と比較例1との粘度の比較から、粘度の制御方法が理解できないということについては、発明の詳細な説明には、具材入り液状混合物の液部の粘度の測定方法についての一般的な態様の記載として、「【0008】・・具材入り調味料の液部の粘度は、25℃の温度において、B型粘度計(東機産業社製)を使用して測定することができる。この場合、上記B型粘度計によりローターNo.3、ローター回転数30rpmで30秒後に測定した値を粘度とし、この測定でローターの抵抗値が100%を超えた場合は、同じB型粘度計によりローターNo.4、ローター回転数30rpmで30秒後に測定した値を粘度とすればよい。液部の粘度が高くなるとローターの抵抗値が高くなって、適正に粘度を測定することが困難になるため、液部の粘度が3600mPa・s以下の場合はローターNo.3を使用し、3600mPa・sを超える場合はローターNo.4を使用することを目安として、測定を行えばよい」と記載されており、液部の粘度の測定方法としてこの一般的な公知の測定方法により測定し、具材入り液状混合物の液部の粘度を調整・制御できることは技術的に理解できることである。
したがって、実施例1と比較例1との粘度の比較に基づく主張は、本件発明1?9が前記課題を解決し得るという結論に影響を与えるものではない。

ク まとめ
したがって、本件発明1?9は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
よって、本件発明1?9に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

(4)申立理由3(実施可能要件)について

ア 本件発明に関する特許法第36条第4項第1号の判断の前提
明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、当業者に通常期待する程度を超える過度の試行錯誤なく、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づいて、その物を生産でき、かつ、使用できるように記載されていることが必要と解される。

イ 発明の詳細な説明の記載
前記1(2)イに記載したとおりである。

ウ 判断
前記(3)キで述べたとおり、発明の詳細な説明の段落【0008】には、具材入り液状混合物の液部の粘度の測定方法についての一般的な態様の記載が記載されており、当該液部の粘度の測定方法として、記載されている一般的な公知の測定方法により測定し、具材入り液状混合物の液部の粘度を調整・制御できることは、当業者であれば技術的に理解できることであり、当業者に通常期待する程度を超える過度の試行錯誤なく、本件発明1?9の具材入り液状混合物を生産し使用し得るといえる。

したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?9を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものといえ、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであるから、本件発明1?9に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由並びに証拠によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下であり、かつ、当該液部の粘度が、25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下である、調味料に混合するための具材入り液状混合物(ただし、ジャム類、ジャム様食品(生の果実に、糖類、ペクチン及び必要に応じてクエン酸を添加混合して果実を煮詰めずに粘稠な状態としたもの)、及び超高圧処理ジャム(原料混合物を加熱することなく超高圧処理したもの)を除く)。
【請求項2】
塩をさらに含み、具材の粒径が1.18mm以上5.6mm未満である、請求項1に記載の具材入り液状混合物。
【請求項3】
水中に水性の増粘剤及び具材を含み、
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下であり、
具材を除く液部の窒素含有量が、ケルダール法で測定した場合に0.1質量%以下であり、かつ、当該液部の粘度が、25℃において、2000mPa・s以上8000mPa・s以下である、調味料に混合するための具材入り液状混合物であって、
塩をさらに含み、アミノ酸系調味料を含まない、具材入り液状混合物。
【請求項4】
液部の糖度が50質量%以下である、及び/又は
液部の油分含量が0.5質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項5】
水性の増粘剤がキサンタンガムである、請求項1から4のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項6】
具材の一部又は全てが、乾燥された具材に由来するものであり、水性の増粘剤を含む水溶液を吸収した具材である、請求項1から5のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項7】
具材がピクルス、タマネギ、白ネギ、及びショウガからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から6のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項8】
2種以上の具材を含む、請求項1から7のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項9】
具材を除く液部の塩分含量が3.0質量%以上6.0質量%以下であり、pHが3.4以上4.2以下である、請求項1から8のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-12-04 
出願番号 特願2013-186010(P2013-186010)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川合 理恵  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 大熊 幸治
齊藤 真由美
登録日 2019-07-26 
登録番号 特許第6558870号(P6558870)
権利者 ハウス食品グループ本社株式会社
発明の名称 具材入り液状混合物  
代理人 服部 博信  
代理人 山崎 一夫  
代理人 浅井 賢治  
代理人 弟子丸 健  
代理人 弟子丸 健  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 服部 博信  
代理人 箱田 篤  
代理人 小松 邦光  
代理人 市川 さつき  
代理人 市川 さつき  
代理人 浅井 賢治  
代理人 山崎 一夫  
代理人 小松 邦光  
代理人 箱田 篤  
代理人 田中 伸一郎  

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