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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1372081
審判番号 不服2020-7760  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-05 
確定日 2021-03-11 
事件の表示 特願2015-230705号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 1日出願公開、特開2017- 93885号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年11月26日の出願であって、令和1年7月26日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年10月4日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和2年3月2日付け(送達日:令和2年3月10日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和2年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月5日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正であって、令和1年10月4日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「配線層を板厚方向に複数設けた基板を備え、
前記複数の配線層のうちの第1配線層に、所定方向に配列された複数の端子を設け、
前記複数の端子から略平行に引き出された複数の配線路を、夫々層間導通部を介して第2配線層側に導通させた
遊技機において、
前記複数の配線路を、前記複数の端子から前記複数の層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設し、
前記複数の層間導通部を、前記複数の端子の配列方向に沿ってジグザグ状に配列した
ことを特徴とする遊技機。」
とあったものを、
「配線層を板厚方向に複数設けた基板を備え、
前記複数の配線層のうちの第1配線層に、所定方向に配列された複数の端子を設け、
前記複数の端子から引き出された複数の第1配線路を、夫々層間導通部を介して第2配線層側の複数の第2配線路に導通させた
遊技機において、
前記複数の第1配線路を、前記所定方向に直交する第1方向に向けて前記複数の端子から前記層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設し、
前記複数の第2配線路は、前記層間導通部から屈折部まで前記第1方向に向けて一定間隔の平行直線状に配設された引き出し部と、前記屈折部から前記第1方向とは異なる第2方向に向けて一定間隔の平行直線状に配設された平行配線部とを含み、
複数の前記層間導通部を、前記複数の端子の近傍に該複数の端子の配列方向に沿ってジグザグ状に配列し、
前記複数の第2配線路における複数の前記屈折部を略直線状に配列した
ことを特徴とする遊技機。」
とする補正を含むものである(下線は補正箇所を明示するために合議体が付した。)。

2 補正の適否について
(1)本件補正の概要
本件補正のうち請求項1についてする補正は、以下のものである。
ア 本件補正前の請求項1における「前記複数の端子から略平行に引き出された複数の配線路を、夫々層間導通部を介して第2配線層側に導通させた」を「前記複数の端子から引き出された複数の第1配線路を、夫々層間導通部を介して第2配線層側の複数の第2配線路に導通させた」とする補正
イ 本件補正前の請求項1における「前記複数の配線路を、前記複数の端子から前記複数の層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設し」を「前記複数の第1配線路を、前記所定方向に直交する第1方向に向けて前記複数の端子から前記層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設し」とする補正
ウ 「前記複数の第2配線路は、前記層間導通部から屈折部まで前記第1方向に向けて一定間隔の平行直線状に配設された引き出し部と、前記屈折部から前記第1方向とは異なる第2方向に向けて一定間隔の平行直線状に配設された平行配線部とを含み」との限定を追加する補正
エ 本件補正前の請求項1における「前記複数の層間導通部を、前記複数の端子の配列方向に沿ってジグザグ状に配列した」を「複数の前記層間導通部を、前記複数の端子の近傍に該複数の端子の配列方向に沿ってジグザグ状に配列し」とする補正
オ 「前記複数の第2配線路における複数の前記屈折部を略直線状に配列した」との限定を追加する補正。

(2)本件補正の目的
上記アの補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「配線路」に関して、夫々層間導通部を介して導通させたものが、本件補正前には「第2配線層側に」とされていたものを、「第2配線層側の複数の第2配線路」とするとともに、第1配線層に所定方向に配列された複数の端子から引き出された複数の「配線路」を「第1配線路」とするものである。上記アの補正により、本件補正前の「前記複数の端子から略平行に引き出された複数の配線路」が、「前記複数の端子から引き出された複数の第1配線路」と補正され、「略平行に」との記載が削除されたが、本件補正後には「前記複数の第1配線路を、前記所定方向に直交する第1方向に向けて前記複数の端子から前記層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設し」との記載もあって、「一定間隔の平行直線状に配設し」という「略平行に引き出された」ことを含む限定がなされていることから、上記アの補正の「略平行に引き出された」との記載の削除は、実質的に「略平行に引き出された」という限定を削除するものではない。

上記イの補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1配線層」に関して、第1配線層に設けられる複数の端子から引き出された「前記複数の第1配線路」(本件補正前にあっては「前記複数の配線路」)を「前記複数の端子から前記層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設」する方向について、「前記所定方向に直交する第1方向に向けて」であることを限定するものである。

上記ウの補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第2配線層」に関して、第2配線層側の「前記複数の第2配線路」が、「前記層間導通部から屈折部まで前記第1方向に向けて一定間隔の平行直線状に配設された引き出し部と、前記屈折部から前記第1方向とは異なる第2方向に向けて一定間隔の平行直線状に配設された平行配線部とを含」むことを限定するものである。

上記エの補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「層間導通部」に関して、「前記複数の端子の近傍に」配列することを限定するものである。

上記オの補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第2配線層」に関して、「前記複数の第2配線路における複数の前記屈折部を略直線状に配列した」ことを限定するものである。

また、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められる。

以上によれば、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)新規事項
本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における【0103】-【0105】及び図13(b1)、(b2)等の記載に基づくものであり、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)についても、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである(なお、記号AないしGは、分説するため合議体が付した。)。
「A 配線層を板厚方向に複数設けた基板を備え、
B 前記複数の配線層のうちの第1配線層に、所定方向に配列された複数の端子を設け、
C 前記複数の端子から引き出された複数の第1配線路を、夫々層間導通部を介して第2配線層側の複数の第2配線路に導通させた
D1 遊技機において、
E 前記複数の第1配線路を、前記所定方向に直交する第1方向に向けて前記複数の端子から前記層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設し、
F 前記複数の第2配線路は、前記層間導通部から屈折部まで前記第1方向に向けて一定間隔の平行直線状に配設された引き出し部と、前記屈折部から前記第1方向とは異なる第2方向に向けて一定間隔の平行直線状に配設された平行配線部とを含み、
G 複数の前記層間導通部を、前記複数の端子の近傍に該複数の端子の配列方向に沿ってジグザグ状に配列し、
H 前記複数の第2配線路における複数の前記屈折部を略直線状に配列した
D2 ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-176405号公報(平成26年9月25日出願公開、以下「引用例」という。)には、遊技台(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている(なお、下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。

ア 「【請求項1】 電気回路が少なくとも設けられた基板と、第一の部品と、を備えた遊技台であって、前記基板は、遊技球が少なくとも通過可能な孔を、少なくとも有するものであり、前記第一の部品は、該第一の部品の内側を遊技球が少なくとも通過可能なものであり、前記第一の部品は、遊技球が少なくとも通過可能な球通路を、少なくとも構成するものであり、前記孔は、前記球通路を少なくとも構成するものである、ことを特徴とする遊技台。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ぱちんこ機やスロットマシン(パチスロ機)、封入式遊技機に代表される遊技台に関する。」

ウ 「【0176】
基板1700は、貫通している孔1701を有する。孔1701は、アタッカー234に入球した遊技球702が通過する孔である。
【0177】
基板1700には、LED1706a、LED1706aを駆動するLED駆動回路1706bおよびLED駆動回路1706b1、LED駆動回路1706b1に対するバイパスコンデンサ170hなどを実装している。」

エ 「【0211】
図25は、図17に示した基板1700を示す図であり、(a)は正面図(表面側を示す図)であり、(b)は背面図(裏面側を示す図)である。
【0212】
基板1700の表面側においては、基板1700に設けた孔1701(遊技球702が通過する孔)の周囲は、GND(接地部)1706cおよび/または絶縁部1706dで囲まれている。
【0213】
基板1700の裏面側においては、基板1700に設けた孔1701(遊技球702が通過する孔)の周囲は、GND(接地部)1706c、絶縁部1706dおよび/または配線パターン1706gで囲まれている。
【0214】
基板1700には、表面側から裏面側へ貫通して電気的接続を可能とする貫通孔であるviaホール1701aを設けている。
【0215】
基板1700の裏面側においては、電気回路である抵抗器1706eやコネクタ1706fを実装している。
【0216】
なお、基板1700の両面ともに、図25(a)と同様に、遊技球702が通過する孔1701の周りはGND(接地部)1706cおよび絶縁部1706dで囲うようにしてもよい。
【0217】
なお、基板1700の両面ともに、図25(b)と同様に、遊技球702が通過する孔1701の周りに配線パターン1706gが設けてあってもよい。
【0218】
なお、基板1700のLED1706aが実装されている面が、図25(b)のように、遊技球702が通過する孔1701の周辺になっていてもよい。」

オ 「図25(a)



カ 「図25(b)



キ 基板1700の表面側を示す図25(a)から、接地部1706c、絶縁部1706dのほか、符号が付されていないが、基板1700の裏面側に配線パターン1706gが設けられている(図25(b)参照)のと同様に、基板1700の表面側にも配線パターンが設けられていることが見てとれる(認定事項1)。
基板1700の裏面側を示す図25(b)から、接地部1706c、絶縁部1706d、配線パターン1706gが設けられていることが見てとれる(認定事項2)。

ク viaホールは基板の表面側から裏面側へ貫通して電気的接続を可能とする貫通孔であり、基板の表面側及び裏面側のそれぞれの対応する位置に存在するものであって、配線パターンの端部等に設けられるとの技術常識を踏まえると、図25(a)及び(b)に示されている配線パターン1706gの端部等に設けられている黒い点は、図25(a)及び(b)のそれぞれにおいて対応する位置に存在していることから、符号が省略されているものも含めてviaホール1701aであると認められる(認定事項3)。

ケ 一般に、基板に実装される駆動回路等のチップは、チップの辺から通常同じ長さに延びるピンと、基板に設けられた端子状の電極とがハンダ等によって電気的に接続及び固定されることが技術常識である。図25(a)において、LED駆動回路1706bの2つの長辺から長辺と直交する方向に同じ長さで延びる複数の線分が示されており、上記技術常識によれば、これらの複数の線分は、LED駆動回路1706bのピンであり、そのピンの直下には、ハンダ等によってピンと電気的に接続及び固定される端子状の電極が基板1700の表面側に設けられているものと認められる。そうすると、図25(a)及び技術常識から、基板1700の表面側に、LED駆動回路1706bの長辺に沿って設けられたピンに接続される複数の端子状の電極が設けられ(認定事項4)、前記複数の端子状の電極に接続された配線パターンのうちの一部の複数の配線パターンは、前記複数の端子状の電極からviaホール1701aまで平行に引き出され(認定事項5)、前記複数の端子状の電極に接続された配線パターンのうちの一部の複数の配線パターンは、LED駆動回路1706bの長辺と直交する方向に向けて、前記複数の端子状の電極からviaホールまで一定間隔の平行直線状に設けられ(認定事項6)、複数の前記viaホールが、前記複数の端子状の電極の近傍に該複数の端子状の電極の配列方向に沿ってジグザグ状に設けられている(認定事項7)ことが見てとれる(上記で認定した「ピン」、「端子状の電極」、「前記複数の端子状の電極に接続された配線パターンのうちの一部の複数の配線パターン」及び「viaホール」については、以下の参考図1(図25(a)の拡大図)に示した。)。

参考図1(図25(a)の拡大図)


上記アないしケから、引用例には、次の発明が記載されている。なお、aないしgについては本願発明のAないしGに概ね対応させて付与し、引用箇所の段落番号、図面番号等を併記した。

「a 表面側及び裏面側に接地部1706c、絶縁部1706d、配線パターン1706gが設けられた基板1700を備え(図25(a)及び(b)、認定事項1、2)、
b 基板1700の表面側に、LED駆動回路1706bの長辺に沿って設けられたピンに接続される複数の端子状の電極が設けられ(図25(a)、認定事項4)、
c’ 前記複数の端子状の電極に接続された配線パターンのうちの一部の複数の配線パターンは、前記複数の端子状の電極からviaホール1701aまで平行に引き出された(図25(a)、認定事項3、5)
d1 遊技台において(【0001】)、
e 前記複数の端子状の電極に接続された配線パターンのうちの一部の複数の配線パターンは、LED駆動回路1706bの長辺と直交する方向に向けて、前記複数の端子状の電極からviaホールまで一定間隔の平行直線状に設けられ(図25(a)、認定事項3、6)、
g 複数の前記viaホールが、前記複数の端子状の電極の近傍に該複数の端子状の電極の配列方向に沿ってジグザグ状に設けられている(図25(a)、認定事項3、7)
d2 遊技台。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(見出し(a)ないし(g)は、本願補正発明の特定事項AないしGに対応する。)。

(a)引用発明の「接地部1706c」及び「配線パターン1706g」は、本願補正発明の「配線層」に相当する。したがって、引用発明の「a 表面側及び裏面側に接地部1706c、絶縁部1706d、配線パターン1706gが設けられた基板1700を備え」ることは、本願補正発明の「A 配線層を板厚方向に複数設けた基板を備え」ることに相当する。

(b)引用発明の「b 基板1700の表面側に、LED駆動回路1706bの長辺に沿って設けられたピンに接続される複数の端子状の電極が設けられた」ことは、本願補正発明の「B 前記複数の配線層のうちの第1配線層に、所定方向に配列された複数の端子を設け」ることに相当する。

(d)引用発明の「遊技台」は、本願補正発明の「D1 遊技機」及び「D2 遊技機」に相当する。

(e)引用発明の「e 前記複数の端子状の電極に接続された配線パターンのうちの一部の複数の配線パターンは、LED駆動回路1706bの長辺と直交する方向に向けて、前記複数の端子状の電極からviaホールまで一定間隔の平行直線状に設けられ」ることは、本願補正発明の「E 前記複数の第1配線路を、前記所定方向に直交する第1方向に向けて前記複数の端子から前記層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設し」たことに相当する。

(g)引用発明の「g 複数の前記viaホールが、前記複数の端子状の電極の近傍に該複数の端子状の電極の配列方向に沿ってジグザグ上に設けられている」ことは、本願補正発明の「G 複数の前記層間導通部を、前記複数の端子の近傍に該複数の端子の配列方向に沿ってジグザグ状に配列し」たことに相当する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「A 配線層を板厚方向に複数設けた基板を備え、
B 前記複数の配線層のうちの第1配線層に、所定方向に配列された複数の端子を設け、
D1 遊技機において、
E 前記複数の第1配線路を、前記所定方向に直交する第1方向に向けて前記複数の端子から前記層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設し、
G 複数の前記層間導通部を、前記複数の端子の近傍に該複数の端子の配列方向に沿ってジグザグ状に配列し、
D2 遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1(特定事項C)
「複数の端子から引き出された複数の第1配線路」(引用発明における「前記複数の端子状の電極に接続された配線パターンのうちの一部の複数の配線パターン」)について、本願補正発明では、「夫々層間導通部を介して第2配線層側の複数の第2配線路に導通させた」のに対して、引用発明では、夫々viaホール1701aまで引き出されているものの、第2配線層側(裏面側)の複数の第2配線路に導通させることについては特定されていない点。

・相違点2(特定事項F)
本願補正発明は、「前記複数の第2配線路は、前記層間導通部から屈折部まで前記第1方向に向けて一定間隔の平行直線状に配設された引き出し部と、前記屈折部から前記第1方向とは異なる第2方向に向けて一定間隔の平行直線状に配設された平行配線部とを含み」との構成を有しているのに対して、引用発明は、当該構成を有していない点。

・相違点3(特定事項H)
本願補正発明は、「前記複数の第2配線路における複数の前記屈折部を略直線状に配列した」との構成を有しているのに対して、引用発明は、当該構成を有していない点。

(5)判断
ア 相違点1について
引用例の【0215】、図25(a)及び(b)には、(図25(a)における)「LED駆動回路1706b」(の上側)の長辺に沿って設けられたピンが、基板1700の表面側に設けられた端子状の電極、配線パターン、viaホール1701a、基板の裏面側に設けられた配線パターン、基板の裏面側に設けられた抵抗器1706e、viaホール1701a、基板の表面側に設けられた配線パターンを経てLED1706aに接続されている回路構成が記載されている(以下、「引用例記載の回路構成1」という。)。
引用発明において「LED駆動回路1706b」のピンのうち、どのピンをLEDを駆動するために用いるか、LEDを駆動するために用いられるピンからLEDに接続するまでの配線パターン等をどのようなものとするかは当業者が適宜決定しうる設計的事項であるから、図25(a)における「LED駆動回路1706b」の2つの長辺に沿って設けられたピンのうち、下側の長辺に沿って設けられたピンについて、LEDを駆動するために用いてもよいことは自明であって、引用例記載の回路構成1のごとく、基板1700の表面側に設けられた端子状の電極、配線パターン、viaホール1701a、基板の裏面側に設けられた配線パターン、基板の裏面側に設けられた抵抗器1706e、viaホール1701a、基板の表面側に設けられた配線パターンを経てLED1706aに接続することは当業者が容易に想到できたことである。そうすると、LED駆動回路1706bの下側の長辺に沿って設けられたピンに接続される複数の端子状の電極に接続されている配線パターンは、それぞれviaホール1701aを介して基板の裏面側に設けられた配線パターンに導通することとなり、この「基板の裏面側に設けられた配線パターン」は、相違点1に係る本件補正発明の構成の「第2配線層側の複数の第2配線路」に相当するから、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の特定事項となすことは、当業者が容易に想到できたことである。

イ 相違点2及び相違点3について
引用例の図25(a)及び(b)を参照すると(特に以下の参考図2(図25(b)の拡大図)を参照。)、LED駆動回路1706bの上側の長辺に沿って設けられたピンと、基板1700の表側の端子状の電極及び配線パターン、viaホール1701aを介して導通される基板1700の裏面側の複数の配線パターンの一部は、viaホール1701aから屈折部まで第1の方向(図25(b)では左上方向)に向かっておおよそ一定間隔の平行直線状の部分と、屈折部から第1の方向とは異なる第2の方向(図25(b)では左方向)に向かっておおよそ一定間隔の平行直線状の部分を有していることが示されている(以下、「引用例記載の回路構成2」という。)。上記アで検討したように、図25(a)における「LED駆動回路1706b」の下側の長辺に沿って設けられたピンを、LEDを駆動するために用いるべく、引用例記載の回路構成1のごとく構成するに際して、基板1700の裏面側の複数の配線パターンを、引用例記載の回路構成2のごとく構成することは当業者が容易に想到できたことであり、配線パターンをどのような形状に構成するか、特に、おおよそ一定間隔の平行直線状とするか、一定間隔の平行直線状とするかは、当業者が適宜選択しうる設計的事項であるから、viaホール1701aから屈折部まで第1の方向に向かって一定間隔の平行直線状の部分と、屈折部から第1の方向とは異なる第2の方向に向かって一定間隔の平行直線状の部分を有するよう配線パターンを構成することに格別の困難はない。

参考図2(図25(b)の拡大図)


(6)本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、引用例に記載された事項から、予測することができた程度のものである。

(7)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「(3)本願発明が特許されるべき理由」の「ハ)本願発明と引用文献との対比」において、以下のとおり主張する。

(主張1)「ここで、本願発明のように層間導通部を互いの干渉を避けるべくジグザグ状に配列する場合、図13(a2)のように直線状に配列する場合と比べて配線引き出し方向(第1方向)に対する層間導通部の配置領域の幅を小さくできるため、それら層間導通部をなるべく端子に近い位置に設けることで(上記G)、第2配線層側の最初の屈折部までの距離をより短くすることが可能となります。
また、第2配線路の平行配線部を任意のピッチで任意の方向に向けて配線すべく、屈折部を略直線状に配列する場合(上記H)、上述のように層間導通部をジグザグ状に配列することにより、屈折部を、層間導通部の近くで任意の方向に配列することができるため、第1配線層側の端子から第2配線層側の平行配線部に至る配線エリアを最小化できるという利点もあります。」

(主張2)「これに対し、引用文献1には、複数の端子から引き出された複数の第1配線路を、夫々層間導通部を介して第2配線層側に導通させるとともに、それら複数の層間導通部をジグザグ状に配列する点については開示されておりますが、端子からジグザグ状の層間導通部までの第1配線路を一定間隔の平行直線状に配設したものではなく、またジグザグ状の層間導通部を端子の近傍に配置するものでもありません。また引用文献1には、層間導通部を介して接続される第2配線路側の構成は開示されておりません。即ち、引用文献1に記載の発明は上記E?Hの構成を備えていない点で本願発明とは相違します。」

主張1について検討する。上記(5)アで検討したように、図25(a)における「LED駆動回路1706b」の2つの長辺に沿って設けられたピンのうち、下側の長辺に沿って設けられたピンについても、上側の長辺に沿って設けられたピンと同様に、LEDを駆動するために用いることとした場合、引用発明において、複数のviaホールは、本願補正発明の「層間導通部」と同じく、複数の端子状の電極の近傍に該複数の端子状の電極の配列方向に沿ってジグザグ上に設けられていることから、主張1の
「それら層間導通部をなるべく端子に近い位置に設けることで(上記G)、第2配線層側の最初の屈折部までの距離をより短くすることが可能」
「屈折部を、層間導通部の近くで任意の方向に配列することができるため、第1配線層側の端子から第2配線層側の平行配線部に至る配線エリアを最小化できる」
との効果と同様の効果が得られると認められる。そして、当該効果は、上記(6)で検討したように当業者が予測することができた程度のものである。

主張2について検討する。上記(3)(e)で検討したように、(e)引用発明の「e 前記複数の端子状の電極に接続された配線パターンのうちの一部の複数の配線パターンは、LED駆動回路1706bの長辺と直交する方向に向けて、前記複数の端子状の電極からviaホールまで一定間隔の並行直線上に設けられ」ることは、本願補正発明の「E 前記複数の第1配線路を、前記所定方向に直交する第1方向に向けて前記複数の端子から前記層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設し」たことに相当することから、主張2における引用発明についての「端子からジグザグ状の層間導通部までの第1配線路を一定間隔の平行直線状に配設したものではなく、またジグザグ状の層間導通部を端子の近傍に配置するものでもありません」との主張は根拠がない。
また、「引用文献1には、層間導通部を介して接続される第2配線路側の構成は開示されておりません。即ち、引用文献1に記載の発明は上記E?Hの構成を備えていない点で本願発明とは相違します。」との主張については、上記で相違点1ないし相違点3について検討したように、層間導通部を介して接続される第2配線路側の構成は、当業者が容易に想到することができたものである。

したがって、上記請求人の主張1及び主張2を採用することはできない。

(8)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が、引用発明及び引用例に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和1年10月4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2〔理由〕1に本件補正前の請求項1として記載した以下のとおりのものである(本願補正発明と同一の構成については同じ符号A等を付し、本願補正発明と同一でない構成については符号にダッシュ(’)を付した。)。

「A 配線層を板厚方向に複数設けた基板を備え、
B 前記複数の配線層のうちの第1配線層に、所定方向に配列された複数の端子を設け、
C’ 前記複数の端子から略平行に引き出された複数の配線路を、夫々層間導通部を介して第2配線層側に導通させた
D1 遊技機において、
E’ 前記複数の配線路を、前記複数の端子から前記複数の層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設し、
G’ 前記複数の層間導通部を、前記複数の端子の配列方向に沿ってジグザグ状に配列した
D2 ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、以下を含むものである。
(新規性)この出願の平成31年4月19日提出の手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2014-176405号公報

3 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(上記「第2 3(2)」における「引用例」に対応する。)の記載事項及び引用発明の認定については、前記「第2 3(2)引用例」に記載したとおりである。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する(見出し(a)ないし(g)は、本願発明の特定事項AないしGに対応する。)。

(a)引用発明の「接地部1706c」及び「配線パターン1706g」は、本願発明の「配線層」に相当する。したがって、引用発明の「a 表面側及び裏面側に接地部1706c、絶縁部1706d、配線パターン1706gが設けられた基板1700を備え」ることは、本願発明の「A 配線層を板厚方向に複数設けた基板を備え」ることに相当する。

(b)引用発明の「b 基板1700の表面側に、LED駆動回路1706bの長辺に沿って設けられたピンに接続される複数の端子状の電極が設けられた」ことは、本願発明の「B 前記複数の配線層のうちの第1配線層に、所定方向に配列された複数の端子を設け」ることに相当する。

(c’)引用発明の「c’ 前記複数の端子状の電極に接続された配線パターンのうちの一部の複数の配線パターンは、前記複数の端子状の電極からviaホール1701aまで平行に引き出された」ことは、本願発明の「C’ 前記複数の端子から略平行に引き出された複数の配線路を、夫々層間導通部を介して第2配線層側に導通させた」ことに相当する。

(d)引用発明の「遊技台」は、本願発明の「D1 遊技機」及び「D2 遊技機」に相当する。

(e)引用発明の「e 前記複数の端子状の電極に接続された配線パターンのうちの一部の複数の配線パターンは、LED駆動回路1706bの長辺と直交する方向に向けて、前記複数の端子状の電極からviaホールまで一定間隔の並行直線状に設けられ」ることは、本願発明の「E’ 前記複数の配線路を、前記複数の端子から前記複数の層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設し」たことに相当する。

(g)引用発明の「g 複数の前記viaホールが、前記複数の端子状の電極の近傍に該複数の端子状の電極の配列方向に沿ってジグザグ上に設けられている」ことは、本願発明の「G’ 前記複数の層間導通部を、前記複数の端子の配列方向に沿ってジグザグ状に配列した」ことに相当する。

以上のとおりであるから、本願発明と引用発明とは、
「A 配線層を板厚方向に複数設けた基板を備え、
B 前記複数の配線層のうちの第1配線層に、所定方向に配列された複数の端子を設け、
C’ 前記複数の端子から略平行に引き出された複数の配線路を、夫々層間導通部を介して第2配線層側に導通させた
D1 遊技機において、
E’ 前記複数の配線路を、前記複数の端子から前記複数の層間導通部まで一定間隔の平行直線状に配設し、
G’ 前記複数の層間導通部を、前記複数の端子の配列方向に沿ってジグザグ状に配列した
D2 遊技機。」
である点で一致し、相違するところはない。

したがって、本願発明は、引用発明と同一であり、引用例に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-12-24 
結審通知日 2021-01-05 
審決日 2021-01-19 
出願番号 特願2015-230705(P2015-230705)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾  
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 北川 創
太田 恒明
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人谷藤特許事務所  

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