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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1372342
審判番号 不服2020-7339  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-29 
確定日 2021-04-13 
事件の表示 特願2016-214799「カード保持装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月10日出願公開、特開2018- 73259、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は,平成28年11月2日の出願であって,令和1年9月10日付けで拒絶理由通知がされ,令和1年11月12日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,令和2年3月26日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされたが,これに対し,令和2年5月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,令和2年11月20日に上申書が提出されたものである。

第2 令和2年3月26日付けの原査定の概要

1.令和2年3月26日付けの原査定の概要は以下のとおりである。

本願請求項1-11に係る発明は,以下の引用文献1-4に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-75640号公報
2.登録実用新案第3138751号公報
3.特開平10-154211号公報
4.特開平2-92695号公報

第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

審判請求時の補正によって,請求項1の,「底面に弾性部が浮き上がり」を「底部から弾性部が浮き上がり」とし,「底面の肉厚」を「底部の位置の肉厚」とし,「底面の側へ」を「底部の側へ」とする補正,及び,「弾性部の両端にそれぞれの一端部が連続している」,「それぞれの他端部が前記肉厚の中に埋設して固定された両持ち構造であり」,「座屈状態に変形可能な」,「前記第1のリード部及び前記第2のリード部の幅より前記弾性部の幅の少なくとも一部は幅広である」という事項を追加する補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか,また,当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討すると,この事項は,補正前の発明特定事項である「コンタクト」を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,この事項は,当初明細書等の段落【0023】-【0026】,【図2】に記載された事項であるから,新規事項を追加するものではないといえる。

審判請求時の補正によって請求項1に「前記コンタクトとは分離しており」,「前記凹部の正面側から覆うタイプであり」という事項を追加する補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか,また,当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討すると,この事項は,補正前の発明特定事項である「蓋」を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,この事項は,当初明細書等の段落【0017】,【図1】に記載された事項であるから,新規事項を追加するものではないといえる。

請求項6の補正についても同様。

そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-11に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明

本願請求項1-11に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は,令和2年5月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
なお,符号A-Fは,説明のために当審で付与したものであり,以下「構成A」-「構成F」という。

「【請求項1】
A 絶縁材であり肉厚を有する薄板状のホルダと,
B 前記ホルダの一方の平面に窪んで形成され,平面視した形状が収容物の形状に合わせた形状の凹部と,
C 前記凹部の底部から弾性部が浮き上がり露呈し,前記弾性部の両端にそれぞれの一端部が連続している第1のリード部と第2のリード部は,それぞれの他端部が前記底部の位置の前記肉厚の中に埋設して固定された両持ち構造であり,前記弾性部が前記底部の側へ押圧され座屈状態に変形可能な導電性であり,前記第1のリード部及び前記第2のリード部の幅より前記弾性部の幅の少なくとも一部は幅広である,コンタクトと,
D 前記コンタクトとは分離しており,前記ホルダを前記凹部の正面側から覆うタイプであり,前記凹部の開口を閉じるとともに前記ホルダに係合し,前記凹部に収容される収容物を押し付ける弾性部材を有した蓋と,
E 前記係合した状態を維持するために前記係合の状態において互いに対向している前記蓋の面と前記ホルダの面との間に形成されているロック機構と,
F を備えたカード保持装置。」

なお,本願発明2-11の概要は以下のとおりである。

本願発明2-11は,本願発明1をさらに減縮した発明である。

第4 引用文献,引用発明等

1.引用文献1

(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2009-75640号公報)には,以下の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

「【0017】
この車載通信端末装置1は,ICカードであるETCカード2が載置される載置面3aを有する上ケース3と,下ケース4と,上ケース3にヒンジ5を介して連結され,上ケース3に対して開閉自在に設けられたカバー部6と,カバー部6を上ケース3に対して閉じた状態で保持するバックル7とを備えている。上ケース3,下ケース4,カバー部6およびバックル7は樹脂材料から成形されている。また,ETCカード2には,車載通信端末装置1と電気的に接続されるICチップ2aが設けられており,このICチップ2aはCPU,メモリおよび入出力インターフェースを備え,車両情報,ETCカード情報,課金情報等が記憶されるようになっている。」

「【0019】
上ケース3は,ICカードであるETCカード2が載置される載置面3aと,載置面3aに載置されたETCカード2の四方を包囲するよう載置面3aの周囲に立設された包囲壁8を備えている。上ケース3は,本発明における収納部材を構成する。包囲壁8の上部は,カバー部6が閉塞したときに,カバー部6に設けられた後述するパッキン9と圧接するようになっている。また,包囲壁8は,車載通信端末装置1が傾斜した状態であっても,載置面3aに載置されたETCカード2が滑り落ちることのないよう,ETCカード2の縁部を外方から包囲して,ETCカード2を載置面3a上に保持するようになっている。載置面3aには,ICチップ2aの端子側の面が下向きになるようにETCカード2が載置される。」

「【0021】
載置面3a上には,回路基板13の接触端子16aが配置されており,ETCカード2がストッパ片8aにより載置面3a上の適正位置に位置決めされた状態においては,ICチップ2aと接触端子16aとが良好に接触するようになっている。接触端子16aは可撓性を有する導電性部材から構成されており,カバー部6が閉じられたときに,接触端子16aがICチップ2aに弾性的に接触するようになっている。」

「【0026】
また,上ケース3の長手方向他端部には,基端部7aを回動中心として上端部7bが揺動するバックル7が設けられている。バックル7の上端部7bは凸形状に形成されており,カバー部6を閉じた状態で,上端部7bがカバー部6に形成された係合凹部6c(図3参照)に係合することにより,カバー部6が上ケース3に強固に係合されるようになっている。」

「【0028】
また,カバー部6の内側には,台座部6aが形成されており,この台座部6aには弾性シート10が,接着,インサート成型または嵌め込み等の手段によって設けられている。弾性シート10は,カバー部6を閉じた状態において,上ケース3の載置面3aとの間でETCカード2を挟持するものであり,ETCカード2が載置面3aから浮き上がったり振動することを防止し,ICチップ2aを接触端子16aに圧接させるようになっている。台座部6aおよび弾性シート10は,カバー部6を閉じた状態においてICチップ2aおよび接触端子16aの直上となる位置に設けられる。この弾性シート10は,弾性を有するポリウレタンやシリコーンなどの樹脂,ニトリルゴムやネオプレンゴムなどのゴムまたは熱可塑性のエラストマー等から構成されている。また,弾性シート10として,市販のゲル状のシート,例えば,シリコーンゲルシートやウレタンゲルシートを用いることができる。弾性シート10は,1mm?5mmの厚みからなり,任意の大きさおよび形状,例えば,縦が1cm?5cm,横が1cm?5cmからなる四角形,円形,楕円形,多角形などでもよい。弾性シート10は,本発明における挟持部材を構成する。」

「【図1】


図1からは,“上ケース3,下ケース4及び包囲壁8が,薄板状である”こと,“接触端子16aとカバー部6が分離している”ことが読み取れる。

「【図2】


図2からは,“載置されたETCカード2が,上ケース3が備える包囲壁8から上に,はみ出していない”こと,“載置されたETCカード2の側面と上ケース3が備える包囲壁8の間に隙間がない”ことが読み取れる。

「【図3】


図3からは,“カバー部6が,上ケース3,下ケース4及び包囲壁8を正面側から覆うタイプである”こと,“係合した状態を維持するために,係合の状態において互いに対向しているカバー部6の面と上ケース3,下ケース4及び包囲壁8の面との間にバックル7が形成されている”ことが読み取れる。

(2)上記引用文献1の記載(特に下線部の記載)より,上記引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

なお,符号a-nは,説明のために当審で付与したものであり,以下「構成a」-「構成n」という。

「a 車載通信端末装置であって,
b 上ケース及び下ケースは樹脂材料から成形され,
c ETCカードには,ICチップが設けられており,
d 上ケースは,包囲壁を備え,包囲壁はETCカードの縁部を外方から包囲して,ETCカードを保持し,
e 載置面上には,接触端子が配置され,
f バックルが設けられ,バックルはカバー部を上ケースに係合し,
g カバー部には弾性シートが設けられ,弾性シートはETCカードのICチップを圧接させ,
h 上ケース,下ケース及び包囲壁が,薄板状であり,
i 接触端子とカバー部が分離しており,
j 載置されたETCカードが,上ケースが備える包囲壁から上に,はみ出しておらず,
k 載置されたETCカードの側面と上ケースが備える包囲壁の間に隙間がなく,
m カバー部が,上ケース,下ケース及び包囲壁を正面側から覆うタイプであり,
n 係合した状態を維持するために,係合の状態において互いに対向しているカバー部の面と上ケース,下ケース及び包囲壁の面との間にバックルが形成されている,
a 車載通信端末装置。」

2.引用文献2

(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(登録実用新案第3138751号公報)には,以下の事項が記載されている。

「【0014】
図2乃至図4に示すように,本考案に係るカード用コネクタの実施例では,カード用コネクタ(1)が,矩形のシート状プラスティックからなる絶縁体(2)及び複数の端子(3)を備え,該絶縁体(2)は,その厚さが約0.5mmであり,表面(21)と,回路板に位置決めするための,少なくとも2つの位置決めロッド(221)が設けられる裏面(22)と,対向し合う短側面(23)と,対向し合う長側面(24)とを有し,更に,絶縁体(2)には,表面(21)と裏面(22)とを貫通し,互いに並列状を成す複数の開口(20)が形成され,該各開口(20)はそれぞれ第1壁(201)と,該第1壁(201)と対向する第2壁(202)と,第3壁(203)と,該第3壁(203)と対向する第4壁(204)とに囲まれた範囲とする。

【0015】
また,図2及び図4に示すように,端子(3)は,導電性に優れた合金を,プレスし折り曲げてなる部材であり,第1延出部(31)と,SIMカード(S)の導電範囲に接触する,逆U字状の接触部(33)と,第2延出部(35)と,湾曲部(37)と,回路板(P)に半田付けするための半田付け部(39)とを順に有し,該接触部(33)は,接触時における,下方への最大変位量が0.3mmであり,前記絶縁体(2)より薄いので,回路板(P)に接触することはない。

【0016】
本考案のカード用コネクタを製造する時は,当業者が慣用するインサート成形(insert molding)により,複数の端子(3)を絶縁体(2)に取り付け,該端子(3)をそれぞれ,対応する開口(20)に位置させ,第1延出部(31)を,第1壁(201)から貫通させるように絶縁体(2)に埋め込むと共に,第2延出部(35)を,第2壁(202)から貫通させるように絶縁体(2)に埋め込み,該湾曲部(37)及び半田付け部(39)を絶縁体(2)の外部に位置させる。即ち,簡単に言うと,該各端子(3)をそれぞれ,両端を絶縁体(2)に固定するように,対応する開口(20)に取り付けるということである。なお,この構造を採用すれば,製造が従来よりも容易となり,製造コストも削減することができる。」

「【図2】


図2からは,“底部から接触部(33)が浮き上がり露呈している”こと,“ 第1延出部(31)と第2延出部(35)が接触部(33)の両端にそれぞれの一端部が連続している”ことが読み取れる。
また,段落【0016】の記載も踏まえると,“第1延出部(31)と第2延出部(35)のそれぞれの他端部が絶縁体(2)に埋め込まれている”ことが読み取れる。

(2)上記引用文献2の記載(特に下線部の記載)より,上記引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。

なお,符号oは,説明のために当審で付与したものであり,以下「構成o」という。

「o 端子は,導電性であり,第1延出部と,接触部と,第2延出部とを順に有し,該接触部は,下方へ変位でき,第1延出部は絶縁体に埋め込まれ,第2延出部は絶縁体に埋め込まれ,端子を絶縁体に固定し,底部から接触部が浮き上がり露呈し,第1延出部と第2延出部が接触部の両端に第1延出部と第2延出部のそれぞれの一端部が連続しており,それぞれの他端部が絶縁体に埋め込まれているカード用コネクタ。」

第6 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

ア.構成Aについて

構成bに示される,引用発明の「樹脂材料」は,本願発明1の「絶縁材」に相当する。
構成jによれば,引用発明の「上ケース,下ケース及び包囲壁」は,「ETCカード」が「載置された」際に,「ETCカードが,上ケースが備える包囲壁から上に,はみ出して」いないので,肉厚を有しているといえる。
構成hによれば,引用発明の「上ケース,下ケース及び包囲壁」は,「薄板状」である。
構成dによれば,引用発明の「上ケース,下ケース及び包囲壁」は,「ETCカードを保持し」ているので,上記構成b,j,hの検討も踏まえると,本願発明1の「絶縁材であり肉厚を有する薄板状のホルダ」に相当する。

イ.構成Bについて

構成d,jによれば,引用発明の「上ケース,下ケース及び包囲壁」は,「ETCカードの縁部を外方から包囲して,ETCカードを保持し」,「載置されたETCカードが,上ケースが備える包囲壁から上に,はみ出して」いないので,ホルダの一方の平面に窪んで形成された凹部を実質的に備えているといえる。
構成kによれば,引用発明の「上ケース,下ケース及び包囲壁」は,「載置されたETCカードの側面と上ケースが備える包囲壁の間に隙間がな」いので,平面視した形状が収容物の形状に合わせた形状の凹部を実質的に備えているといえる。
したがって,引用発明の「上ケース,下ケース及び包囲壁」は,本願発明1の「前記ホルダの一方の平面に窪んで形成され,平面視した形状が収容物の形状に合わせた形状の凹部」を実質的に備えているといえる。

ウ.構成Cについて

構成eに示される,引用発明の「接触端子」と,本願発明1の「コンタクト」とは,下記の点で相違するものの,“コンタクト”である点で共通する。

エ.構成Dについて

構成c,d,gによれば,引用発明の「弾性シート」は,「包囲壁を備え」る「上ケース」に「保持」された「ETCカード」に「設けられ」た「ICチップ」を「圧接させ」るので,本願発明1の「前記凹部に収容される収容物を押し付ける弾性部材」に相当する。
構成iによれば,引用発明の「カバー部」は,「接触端子と」は「分離して」いる。
構成mによれば,引用発明の「カバー部」は,「上ケース,下ケース及び包囲壁を正面側から覆うタイプであり」,また,凹部の開口を閉じているといえる。
構成nによれば,引用発明の「カバー部」は,「上ケース,下ケース及び包囲壁」に「係合」している。
したがって,引用発明の「弾性シート」が「設けられ」た「カバー部」は,本願発明1の「前記コンタクトとは分離しており,前記ホルダを前記凹部の正面側から覆うタイプであり,前記凹部の開口を閉じるとともに前記ホルダに係合し,前記凹部に収容される収容物を押し付ける弾性部材を有した蓋」に相当する。

オ.構成Eについて

構成nによれば,引用発明の「バックル」は,「係合した状態を維持するために,係合の状態において互いに対向しているカバー部の面と上ケース,下ケース及び包囲壁の面との間に」「形成されている」ので,本願発明1の「前記係合した状態を維持するために前記係合の状態において互いに対向している前記蓋の面と前記ホルダの面との間に形成されているロック機構」に相当する。

カ.構成Fについて

構成a,cによれば,引用発明の「車載通信端末装置」は,「ETCカードを保持」するので,本願発明1の「カード保持装置」に対応する。

したがって,上記ア.-カ.の検討内容を踏まえると,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「絶縁材であり肉厚を有する薄板状のホルダと,
前記ホルダの一方の平面に窪んで形成され,平面視した形状が収容物の形状に合わせた形状の凹部と,
コンタクトと,
前記コンタクトとは分離しており,前記ホルダを前記凹部の正面側から覆うタイプであり,前記凹部の開口を閉じるとともに前記ホルダに係合し,前記凹部に収容される収容物を押し付ける弾性部材を有した蓋と,
前記係合した状態を維持するために前記係合の状態において互いに対向している前記蓋の面と前記ホルダの面との間に形成されているロック機構と,
を備えたカード保持装置。」

(相違点)
本願発明1の「コンタクト」は,「前記凹部の底部から弾性部が浮き上がり露呈し,前記弾性部の両端にそれぞれの一端部が連続している第1のリード部と第2のリード部は,それぞれの他端部が前記底部の位置の前記肉厚の中に埋設して固定された両持ち構造であり,前記弾性部が前記底部の側へ押圧され座屈状態に変形可能な導電性であり,前記第1のリード部及び前記第2のリード部の幅より前記弾性部の幅の少なくとも一部は幅広である」ものであるのに対して,引用発明の「接触端子」は,そのようなものではない点。

(2)相違点についての判断

引用文献2には「カード用コネクタ」に関する技術が記載されているところ,構成oによれば,引用文献2の「第1延出部」及び「第2延出部」は,「接触部の両端にそれぞれの一端部が連続しており」,「それぞれの他端部が絶縁体に埋め込まれて」「固定」されており,よって,両持ち構造であるといえることから,それぞれ本願発明1の「第1のリード部」及び「第2のリード部」に相当する。
また,同じく構成oによれば,引用文献2の「接触部」は,「下方へ変位でき」るので,弾性部であるといえ,また,「底部から」「浮き上がり露呈し」,「導電性」である。
しかしながら,引用文献2の「接触部」は,底部の側へ押圧され座屈状態に変形可能ではなく,また,「接触部」の幅の少なくとも一部が「第1延出部」及び「第2延出部」の幅より幅広ではない。
したがって,本願発明1の「コンタクト」は,「前記弾性部が前記底部の側へ押圧され座屈状態に変形可能であり,前記第1のリード部及び前記第2のリード部の幅より前記弾性部の幅の少なくとも一部は幅広である」ものであるのに対して,引用文献2の「接触部」は,そのようなものではない点,で相違する。
また,上記相違点に係る構成は,本願の出願前に周知な構成ともいえない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-11について

本願発明2-11は,本願発明1をさらに減縮した発明であり,本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について

1.理由1(特許法第29条第2項)について

審判請求時の補正により,本願発明1-11は上記第4に示したとおりのものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。


 
審決日 2021-03-26 
出願番号 特願2016-214799(P2016-214799)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山澤 宏
塚田 肇
発明の名称 カード保持装置  
代理人 特許業務法人スズエ国際特許事務所  

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