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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G06K
管理番号 1372681
異議申立番号 異議2019-700836  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-23 
確定日 2021-02-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6505732号発明「2次元バーコードおよびそのようなバーコードの認証方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6505732号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-8〕,〔9-25〕,〔26-33〕について訂正することを認める。 特許第6505732号の請求項1ないし5,7ないし16,18ないし33に係る特許を維持する。 特許第6505732号の請求項6,17に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6505732号の請求項1ないし33に係る特許についての出願は,平成26年11月6日に出願され,平成31年4月5日にその特許権の設定登録がされ,同年4月24日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許について,令和1年10月23日に特許異議申立人ウー-ニカ システムズ アーゲー(以下,「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ,当審は,同年12月23日付けで取消理由を通知した。特許権者は,その指定期間内である令和2年4月3日に意見書の提出及び訂正の請求を行ったところ,その訂正の請求に対して,申立人は,同年6月3日に意見書を提出した。
当審は,同年8月21日付けで取消理由を通知した。特許権者は,その指定期間内である同年9月24日に意見書の提出及び訂正の請求(以下,この訂正の請求を単に「本件訂正請求」という。)を行った。当審は,同年10月7日付けで訂正請求があった旨を通知したが(特許法120条の5第5項),申立人から意見書の提出はなかった。


第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は,以下の訂正事項1ないし訂正事項13のとおりである。(下線は訂正箇所を示すために,特許権者が付したものである。)

(1)訂正事項1
特許請求項の範囲の請求項1に,「前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成され」と記載されているのを,「前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成され、」「前記可視パターン(420)は、前記2次元バーコード(400)の信頼性をチェックするために前記2次元バーコードリーダーに接続された機器によりローカルに認証され得る署名(424)を含む」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?5,8も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれか1項に記載の方法において、」とあるうち,請求項1を引用するものについて,独立形式に改め,「2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成され、」に訂正する(請求項7を引用する請求項8も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8における「請求項1?7のいずれか1項に記載の方法」との記載を,「請求項1?5、7のいずれか1項に記載の方法」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求項の範囲の請求項9に,「前記可視パターンは、該可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され」と記載されているのを,「前記可視パターンは、該可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、」「前記可視パターンは、前記2次元バーコードの信頼性をチェックするために、前記2次元バーコードリーダーに直接接続された機器によって、ローカルに認証され得る、署名(424)を含む」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10?16,18?25も同様に訂正する)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項17を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項18に「請求項9?17のいずれか1項に記載の製品において、」との記載を,「請求項9?16のいずれか1項に記載の製品において」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項19に「請求項9?18のいずれか1項に記載の製品において」との記載を,「請求項9?16、18のいずれか1項に記載の製品において」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項20に「請求項17に記載の製品の特徴を含む製品上の2次元バーコードを認証する方法において」との記載を,「請求項9に記載の製品の特徴を含む製品上の2次元バーコードを認証する方法において」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項24に「請求項9?19のいずれか1項に記載の製品の特徴を含む製品を製造する方法において」との記載を,「請求項9?16、18、19のいずれか1項に記載の製品の特徴を含む製品を製造する方法において」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項24に「請求項1?8のいずれか1項に記載の元の2次元バーコードを作成するステップ」とあるうち,請求項1を引用するものについて,独立形式に改め,「2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成される、元の2次元バーコードを作成するステップ」に訂正する(請求項24を引用する請求項25も同様に訂正する)。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項26に「請求項1?8のいずれか1項に記載の方法において」とあるうち,請求項1を引用するものについて,独立形式に改め,「2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成される、方法において」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項27に「請求項1に記載の方法」と記載されているのを,独立形式に改め,「2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成される、方法」に訂正する(請求項27を引用する請求項28?33も同様に訂正する)。

(14)一群の請求項
訂正前の請求項1ないし8について,請求項2ないし8は,訂正の対象である請求項1を直接または間接的に引用する関係にあるから,訂正後の請求項2ないし8は,特許法120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。
訂正前の請求項9ないし25について,請求項10ないし25は,訂正の対象である請求項9を直接または間接的に引用する関係にあるから,訂正後の請求項9ないし25は,特許法120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。
訂正前の請求項26ないし33は,訂正の対象である請求項1を直接または間接的に引用する関係にあるから,訂正後の請求項26ないし33は,特許法120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。

(15)別の訂正単位とする求め
特許権者は,訂正後の請求項26ないし33は,当該請求項についての訂正が認められる場合には,他の請求項とは別途訂正することを求めている。

2 訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
訂正事項1は,訂正前の「可視パターン(420)」について,「前記2次元バーコード(400)の信頼性をチェックするために前記2次元バーコードリーダーに接続された機器によりローカルに認証され得る署名(424)を含む」との限定事項を付加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,訂正前の請求項6に,「前記可視パターン(420)は、前記2次元バーコード(400)の信頼性をチェックするために前記2次元バーコードリーダーに接続された機器によりローカルに認証され得る署名(424)を含む」と記載されていることから新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は請求項6を削除するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は,請求項1との引用関係を解消するものであるから,引用関係の解消を目的としており,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は,訂正事項2に伴い引用する請求項の一部を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は,訂正前の「可視パターン」について,「前記2次元バーコードの信頼性をチェックするために、前記2次元バーコードリーダーに直接接続された機器によって、ローカルに認証され得る、署名(424)を含む」との限定事項を付加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,訂正前の請求項17に,「前記可視パターンは、前記2次元バーコードの信頼性をチェックするために、前記2次元バーコードリーダーに直接接続された機器によって、ローカルに認証され得る、署名(424)を含む」と記載されていることから新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は,請求項17を削除するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は,訂正事項6に伴い引用する請求項の一部を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は,訂正事項6に伴い引用する請求項の一部を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(9)訂正事項9について
訂正事項9は,訂正事項6に伴い引用する請求項を,訂正前に請求項17であったものから訂正後の請求項9に変更するものである。
訂正後の請求項9は,訂正事項5によって訂正前の請求項17の内容で限定されたものであるから,訂正事項9は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(10)訂正事項10について
訂正事項10は,訂正事項6に伴い引用する請求項の一部を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(11)訂正事項11について
訂正事項11は,請求項1との引用関係を解消するとともに,訂正事項6に伴い引用する請求項の一部を削除するものであるから,引用関係の解消及び特許請求の範囲の減縮を目的としており,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(12)訂正事項12について
訂正事項12は,請求項1との引用関係を解消するものであるから,引用関係の解消を目的としており,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(13)訂正事項13について
訂正事項13は,請求項1との引用関係を解消するものであるから,引用関係の解消を目的としており,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

3 小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-8〕,〔9-25〕,〔26-33〕について訂正することを認める。


第3 訂正後の本件発明

本件訂正請求により訂正された請求項1ないし33に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明33」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1ないし33に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(下線は,特許権者が付したものである。)

「 【請求項1】
2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成され、
前記可視パターン(420)は、前記2次元バーコード(400)の信頼性をチェックするために前記2次元バーコードリーダーに接続された機器によりローカルに認証され得る署名(424)を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記可視パターン(120;220;320;420)は、前記2次元バーコード内の、ただ1つの領域に埋め込まれる、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記二次情報は、黒色および白色の基本サブセル(122)により形成され、黒色の基本サブセル(122)の50%±5%とは異なる平均黒色濃度を有する、方法。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の方法において、
前記二次情報は、前記可視パターン(120;320)の少なくとも2つの異なる部分(120a、120b、320a、320b1?320b4)に全体が位置し、少なくとも1つの部分は、黒色の基本サブセルの50%±5%とは異なる平均黒色濃度を有する、方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法において、
前記平均黒色濃度は、黒色の基本サブセル(122)の45%以下または55%以上である、方法。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成され、
前記可視パターン(420)中の前記秘密の信頼性は、遠隔機器(30)を用いることによってのみ、認証され得る、方法。
【請求項8】
請求項1?5、7のいずれか1項に記載の方法において、
前記秘密鍵(K2)は、ランダムまたは疑似ランダムに生成される、方法。
【請求項9】
2次元バーコードリーダーにより読み取られることができる一次情報を表す一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)と、変更なしで再現することが困難にされた二次情報を表す可視パターン(120;220;320;420;520;620)とを含む、2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を埋め込んだ製品において、
前記可視パターン(120;220;320;420;520;620)は、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれ、
前記可視パターンは、該可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記可視パターンは、前記2次元バーコードの信頼性をチェックするために、前記2次元バーコードリーダーに直接接続された機器によって、ローカルに認証され得る、署名(424)を含むことを特徴とする、製品。
【請求項10】
請求項9に記載の製品において、
前記2次元バーコードは、修正されたQRコードまたはデータマトリックスを、データ領域を形成するシンボルの形態で含み、前記データ領域は、前記シンボルの3つの角に位置する位置検出パターン、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)により表される一次情報、および可視パターン(120;220;320;420;520;620)により表される二次情報を含む、製品。
【請求項11】
請求項9または10に記載の製品において、
前記可視パターンは、二次情報のみを備えた矩形の中に全体が含まれている、製品。
【請求項12】
請求項9?11のいずれか1項に記載の製品において、
前記可視パターンは、7×7ピクセル、または8×8もしくは9×9個の基本セルのゾーン、または10×10個の基本セルのゾーンに形成されている、製品。
【請求項13】
請求項10に記載の製品において、
前記QRコードは、基本セルが29×29個のタイプのQRコードであるか、または基本セルが33×33個のタイプのQRコードである、製品。
【請求項14】
請求項9?13のいずれか1項に記載の製品において、
前記可視パターンは、前記一次情報パターンの境界の内側に位置している、製品。
【請求項15】
請求項9?14のいずれか1項に記載の製品において、
前記可視パターンは、前記一次情報パターンの中心に重なっている、製品。
【請求項16】
請求項9?13のいずれか1項に記載の製品において、
前記可視パターン(520;620)は、前記一次情報パターンの境界の外側に位置している、製品。
【請求項17】(削除)
【請求項18】
請求項9?16のいずれか1項に記載の製品において、
前記可視パターンにおける前記秘密の信頼性は、遠隔機器(30)を用いることによってのみ、認証され得る、製品。
【請求項19】
請求項9?16、18のいずれか1項に記載の製品において、
前記秘密鍵(K2)は、ランダムまたは擬似ランダムに生成されている、製品。
【請求項20】
請求項9に記載の製品の特徴を含む製品上の2次元バーコードを認証する方法において、
2次元バーコードリーダーで前記2次元バーコードを読み取るステップと、
前記可視パターンを識別し、前記二次情報内部の前記署名を識別し、これにより、検出された署名を形成するステップと、
前記検出された署名を署名鍵と比較し、比較の結果として、署名類似性スコアを決定するステップと、
前記署名類似性スコアを所定の署名閾値と比較するステップと、
前記所定の署名閾値以上であれば成功であり、前記所定の署名閾値未満であれば失敗である、認証署名結果を確立するステップと、
を含む、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、
前記2次元バーコードリーダーは、モバイル機器(20)の一部であり、
前記署名鍵は、前記検出された署名と前記署名鍵との比較ステップを実施する、前記モバイル機器(20)に格納される、方法。
【請求項22】
請求項18または19に記載の製品の特徴を含む製品上の2次元バーコードを認証する方法において、
2次元バーコードリーダーで前記2次元バーコードを読み取るステップと、
前記可視パターンを識別し、前記二次情報内部の前記秘密を識別し、これにより、検出された秘密を形成するステップと、
前記検出された秘密を、元の2次元バーコードの秘密鍵と比較し、比較の結果として、秘密類似性スコアを決定するステップと、
前記秘密類似性スコアを、所定の秘密閾値と比較するステップと、
前記所定の秘密閾値以上であれば成功であり、前記所定の秘密閾値未満であれば失敗である、認証秘密結果を確立するステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
前記2次元バーコードリーダーは、遠隔機器(30)に接続された、モバイル機器(20)の一部であり、
前記元の2次元バーコードの前記秘密鍵は、前記検出された秘密と前記秘密鍵との比較ステップを実施する前記遠隔機器(30)に格納され、
前記方法は、前記認証秘密結果を前記モバイル機器(20)に送り返すステップをさらに含む、方法。
【請求項24】
請求項9?16、18、19のいずれか1項に記載の製品の特徴を含む製品を製造する方法において、
製品を準備するステップと、
2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成される、元の2次元バーコードを作成するステップと、
前記製品に前記元の2次元バーコードを印刷するステップであって、これにより、オリジナルの2次元バーコードを備えた製品を作る、印刷するステップと、
を含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、
前記印刷するステップは、前記製品に前記元の2次元バーコードを印刷する2つのサブステップを含み、前記2つのサブステップは、
一次情報を含む前記一次情報パターンを印刷する第1の印刷手段を使用すること、および、
二次情報を含む前記可視パターンを印刷する第2の印刷手段を使用し、これにより、オリジナルの2次元バーコードを備えた製品を作ること、
である、方法。
【請求項26】
2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成される、方法において、
前記二次情報が、最初にオフセット印刷で印刷され、次に、一次情報が、インクジェット印刷で印刷される、方法。
【請求項27】
2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成される、方法に従って作られた2次元バーコードの特徴を含む2次元バーコードを認証する方法において、
少なくとも1つの画像フレームを生成するためにローカル機器を用いて前記2次元バーコードをスキャンするステップと、
前記画像フレームから、前記ローカル機器の一次情報を読み取るステップと、
前記画像フレームから、前記ローカル機器の二次情報を抽出するステップと、
前記ローカル機器に格納された鍵を用いて二次情報の一部を生成するステップであって、前記一部は、前記二次情報の署名を含むか、またはこれを形成する、ステップと、
前記二次情報の前記署名を、抽出された二次情報と比較して、前記2次元バーコードの信頼性を第1のローカルレベルで認証する工程と、
を含む、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、
前記一次情報またはこれと相互に関連する情報、および抽出された二次情報の画像を、遠隔サーバーに送るステップと、
抽出された二次情報の画像を、前記遠隔サーバーに格納されるか、もしくは前記遠隔サーバーにおいて生成されたオリジナルの2次元バーコード画像と比較することにより、2次元バーコードを認証するステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項29】
請求項27または28に記載の方法において、
前記二次情報の前記署名を抽出された二次情報と比較することで、スコアが生成される、方法。
【請求項30】
請求項27?29のいずれか1項に記載の方法において、
前記ローカル機器を用いて前記2次元バーコードをスキャンすることにより、複数の画像フレームが生成され、その結果、複数のスコアが得られ、
前記複数のスコアは、遠隔サーバーによる第2のレベルの認証が行われるべきかどうか決定するために使用される、方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法において、
前記画像が遠隔サーバーによる2次元バーコードの認証に適しているかどうかを決定するために、前記少なくとも1つの画像フレームの画像品質を確かめるステップを含む、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法において、
画像品質を確かめる技術は、
前記画像フレームから、前記ローカル機器の二次情報を抽出することと、
前記ローカル機器に格納された鍵を用いて二次情報の一部を生成することであって、前記一部は、二次情報の署名を含むか、またはこれを形成する、ことと、
前記二次情報の前記署名を、抽出された二次情報と比較して、スコアを生成することと、
画像品質のインジケーターとして1組のスコアを使用することと、
を含む、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、
画像品質を確かめる技術は、一次情報の黒色のセルと白色のセルとの間の移行の鮮鋭度を測定することを含む、方法。」


第4 取消理由通知に記載した取消理由について

1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし請求項5に係る特許,請求項8に係る特許及び請求項9に係る特許に対して,当審が令和2年8月21日に特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。

請求項1ないし2,8及び9に係る発明は,甲第7号証に記載された発明と同一であり,請求項1ないし2,8及び9に係る特許は,特許法29条1項3号の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである
また,請求項1ないし5に係る発明,請求項8に係る発明及び請求項9に係る発明は,甲第7号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明することができたものであって,請求項1ないし請求項5に係る特許,請求項8に係る特許及び請求項9に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。

2 甲号証の記載

(1)甲第7号証に記載された事項及び引用発明
甲第7号証(特表2010-529531号公報)には,次の事項が記載されている。

A 「【0001】
本発明は、文書をセキュア化するための方法及び装置に関する。本発明は、特に、文書を一意的な方法で識別し、それを認証し、すなわち、その文書に関する情報、例えば、文書に関連する知的所有権の所有者及び/又は文書の製造サイトを識別する情報をそれがコピーしている及び/又は文書上に保持していることを検出することができることを考えている。文書という用語は、全てのデータ担体、例えば、ハードコピー文書、設計図、パッケージ、製造物、鋳造物、及びカード、例えば、身分証明カード又はキャッシュカードを含む。」

B 「【0045】
本発明の様々な特定的な実施形態の詳細内容を提供する前に、本明細書に用いることになる定義を下記に提供する。
-「情報マトリックス」:これは、一般的に、固体表面上に添付された機械可読の物理的メッセージ表現である(印刷されるデザインのピクセル値を修正する透かしマーク又はデジタル透かしマークとは異なる)。情報マトリックスの定義は、例えば、2Dバーコード、1次元バーコード、及び「Dataglyphs」(データマーク付け)のような情報を表すための他の侵害性の低い手段を含む。(中略) -「セル」:これは、最大でも所定数のドットが存在する特性可変ドットパターン(VCDP)の規則的な区域、一般的に、矩形、又は更には正方形であり、所定数は、示している変形を除き、一般的に1に等しい。(以下略)」

C 「【0134】
更に、本発明者は、ある一定の実施形態では、コピーにおける予期されない未知要素の結果として、印刷ドットの上述の幾何学的特性のいわゆる予測不能な「コピー」変動をドット毎に引き起こすコピーに対して文書のセキュリティを高めるためには、文書上にドット分布を印刷する時に、この印刷が、印刷における予期されない未知要素の結果として、印刷ドットの上述の幾何学的特性のいわゆる予測不能な「印刷」変動をドット毎に引き起こし、予測不能な印刷変動の平均的マグニチュードが、これらのコピーの予測不能な変動の平均最小マグニチュードと同じ大きさの程度のものであることが好ましいことを見出した。文書を認証及び識別する機能に関していずれか他の箇所で説明するように、好ましくは、次に、予測不能な印刷変動を表す物理的マグニチュードを決定する段階が実施される。【0135】
例えば、予測不能な変動の絶対値の平均値が0.2ピクセルと20ピクセルの間にある場合に、2×2の発生ピクセルの大きさの「ドット」を有する1/6インチの印刷表面積において1200ドット毎インチで印刷された200×200ピクセルのVCDPを用いることができる。1×1ピクセルを有する600ドット毎インチで印刷された100×100ピクセルのVCDPは、同等の結果を出すことができることに注意されたい。それにも関わらず、より高い画像解像度は(同じサイズの印刷区域に対して)、下記に詳述するように、ドットのサイズ及び/又は位置を変更するのにより高い柔軟性を可能にする。」

D 「【0137】
セキュリティの理由から、VCDPは、例えば、秘密に保たれた鍵が供給される暗号アルゴリズムから発生される擬似ランダム性のものが望ましい。この鍵は、何者であれ鍵が既知であるいずれかの者は取得することができるが、鍵を持たないいかなる者に対しても割り出すことが非常に困難である擬似ランダム数を発生させるアルゴリズムの初期化値として用いられる。」

E 「【0163】
情報をVCDPに記憶するために、区域毎に1ビットを記憶するように、例えば、ドットの各々に割り当てられたセル内の各ドットに対して、可能な2つの形状、2つの位置、又は2つの寸法を定めることができる。ビット値(「0」又は「1」)が、各位置、寸法、又は形状に割り当てられる。」

F 「【0168】
他のデジタル認証コードとの統合に関して、VCDPは、付加的な保護層及び/又は文書を追跡する目立たない手段を提供するように、デジタル認証コードと統合することができる。図8は、VCDP156が挿入された区域を中心に備えるセキュア化された情報マトリックス155を示している。図9は、VCDP161によって囲まれたセキュア化された情報マトリックス160を示している。図9の場合には、デジタル認証コード160を配置させる、例えば、そのコーナに配置させる要素は、VCDP161の大体のドット位置を位置付けて決定する のに用いることができることに注意されたい。」

G「

図8」

H 中心にVCDPを含むセキュア化された情報マトリックスの拡大図である【図8】から,“情報マトリックス155内のただ1つの領域に,濃い色と薄い色のドットパターンで構成されるVCDP156が該情報マトリックス155から分離するように埋め込まれ”る態様が読み取れる。

以上によれば,甲第7号証は,以下の発明(以下「引用発明」という。)を開示していると認められる。

「文書をセキュア化するための方法であって,
該方法は,情報マトリックス内のただ1つの領域に,VCDPが該情報マトリックスから分離するように埋め込まれることで実現され,
前記情報マトリックスは,2Dバーコード等の機械可読の物理的メッセージ表現であり,
前記VCDPは,コピーに対して文書のセキュリティを高めるために,文書上にドット分布を印刷する時に,この印刷が,印刷における予期されない未知要素の結果として,印刷ドットの上述の幾何学的特性のいわゆる予測不能な「印刷」変動をドット毎に引き起こし,予測不能な印刷変動の平均的マグニチュードが,これらのコピーの予測不能な変動の平均最小マグニチュードと同じ大きさの程度のものである,1200ドット毎インチ,または600ドット毎インチの濃い色と薄い色のドットパターンで構成され,前記VCDPには情報が記憶され,
セキュリティの理由から,前記VCDPは,秘密に保たれた鍵が供給される暗号アルゴリズムから発生される擬似ランダム性のものである,方法。」

3 当審の判断

(1)特許法29条1項3号(理由1)及び2項(理由2)について

ア 本件発明1について

(ア)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

a 引用発明の「2Dバーコード」は,本件発明1の「2次元バーコード」に相当する。引用発明の当該「2Dバーコード」は,2次元バーコードリーダーにより読取ることができることは自明である。
引用発明の「情報マトリックス」は,「2Dバーコード等の機械可読の物理的メッセージ表現であ」ることから,本件発明1の「一次情報パターン」に相当する。また引用発明の「2Dバーコード等」が表す情報は,本件発明1の「一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込」まれた「一次情報」に相当するといえるから,引用発明と本件発明1とは,“2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を,一次情報パターンに埋め込むステップ”を有する点で一致するといえる。

b 引用発明の「文書をセキュア化するための方法」は,「情報マトリックス内のただ1つの領域に,VCDPが該情報マトリックスから分離するように埋め込まれることで実現され」るところ,上記aの認定事項を踏まえると,引用発明の「情報マトリックス内のただ1つの領域」は,本件発明1の「前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域」に相当するといえる。
また,引用発明の「VCDP」は,「1200ドット毎インチ,または600ドット毎インチの濃い色と薄い色のドットパターンで構成され,前記VCDPには情報が記憶され」るものであり,本件発明1の「可視パターン」に相当する。また,当該「VCDP」に「記憶され」ている「情報」は,本件発明1の「二次情報」に相当するといえ,当該「VCDP」と「情報マトリックス」は分離していることから,以上総合して,引用発明と本件発明1とは,“二次情報が前記一次情報から分離するように,前記2次元バーコード内の,いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターンに前記二次情報を埋め込むステップ”を有する点で一致するといえる。

c 引用発明の「VCDP」は,「1200ドット毎インチ,または600ドット毎インチの濃い色と薄い色のドットパターンで構成され」るものであり,21.2μm(1200ドット毎インチ),または42.3μm(600ドット毎インチ)毎のドットにより構成されるものであるといえるから,本件発明1の「50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され」るところの,「可視パターン内の前記二次情報」と,その大きさにおいて一致する。
また,同じく「VCDP」は,「コピーに対して文書のセキュリティを高めるために,文書上にドット分布を印刷する時に,この印刷が,印刷における予期されない未知要素の結果として,印刷ドットの上述の幾何学的特性のいわゆる予測不能な「印刷」変動をドット毎に引き起こし,予測不能な印刷変動の平均的マグニチュードが,これらのコピーの予測不能な変動の平均最小マグニチュードと同じ大きさの程度のものであ」り,本件発明1と“変更なしでは再現することが困難となるように構成され”ている点で一致するといえるから,以上総合して,引用発明と本件発明1とは,“可視パターン内の前記二次情報は,変更なしでは再現することが困難となるように構成された,50μmより小さい最大寸法を有する,薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され”る点で一致するといえる。

d 引用発明の「VCDP」はまた,「セキュリティの理由から,…(中略)…秘密に保たれた鍵が供給される暗号アルゴリズムから発生される擬似ランダム性のものである」ことから,当該「秘密に保たれた鍵」は,本件発明1の「秘密鍵」に相当し,「暗号アルゴリズムから発生される擬似ランダム性のものである」ことは,本件発明1と“二次情報”が“可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成され”ている点で一致しているといえるから,引用発明と本件発明1とは,“前記二次情報は,前記可視パターンが秘密を含むように秘密鍵を用いて生成される”点で一致するといえる。

e 以上,上記aないしdで検討した内容を踏まえると,本件発明1と引用発明とは,次の点で一致し,また相違する。

〈一致点〉
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を,一次情報パターンに埋め込むステップと,
二次情報が前記一次情報から分離するように,前記2次元バーコード内の,いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターンに前記二次情報を埋め込むステップと,
を含み,
可視パターン内の前記二次情報は,変更なしでは再現することが困難となるように構成された,50μmより小さい最大寸法を有する,薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され,
前記二次情報は,前記可視パターンが秘密を含むように秘密鍵を用いて生成される,
方法。

〈相違点1〉
本件発明1の方法は,「2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法」であるのに対し,引用発明の方法は,「文書をセキュア化するための方法」である点。

〈相違点2〉
本件発明1の「可視パターン」は,「前記2次元バーコード(400)の信頼性をチェックするために前記2次元バーコードリーダーに接続された機器によりローカルに認証され得る署名(424)を含む」ものであるのに対し,引用発明の「VCDP」は,「秘密に保たれた鍵が供給される暗号アルゴリズムから発生される擬似ランダム性のものである」点。

(イ)判断

a 特許法29条1項3号について
本件発明1と引用発明とは,上記した相違点1および2の点で異なっており,本件発明1は甲第7号証に記載された発明(引用発明)と同一とはいえない。

b 特許法29条2項について
事案に鑑み,相違点2を先に検討する。
甲第7号証には,「2次元バーコードリーダーに接続された機器によりローカルに認証され得る署名」については記載も示唆も無く,本件発明1は,この構成により,「2Dバーコードにおける正しい署名もしくは誤った署名の存在について表示され、それによって、2Dバーコードのオリジナルの特徴もしくはオリジナルでない特徴(コピー)に関する表示が得られる。例えば、擬似ランダムに生成された第1の鍵K1(もしくは「署名鍵」)が、すべての2Dバーコードに使用され、モバイル機器に存在するか、または、モバイル機器にとって利用可能であり、元の署名(source signature)の再構成は、好ましくは、モバイル機器に存在する第1のアルゴリズムを通じて、第1の鍵K1、および2Dコードメッセージの一部、すなわち一次情報(例えば、一次情報パターンの一部として存在する固有ID)を用いて行われる。したがって、第1のセキュリティレベル認証チェックは、チェックされるべき2Dバーコードの署名と、元の署名との比較によって行われる(この「比較」は、例えば、スコアを生み出す画像類似性計算、およびそのスコアと閾値との比較である)。第1のセキュリティ認証チェックは、認証機器がインターネットに接続されていない場合に有利となり得る。署名の別の大きな利点は、署名に対する測定を行うことにより、スキャンが適切な画像品質を有しているかどうかをローカルに認証し得ることである。例えば、連続したフレームに関し、測定が安定し、かつ一貫性がある場合、これは、それらのフレームが認証に使用でき、完全な認証のため遠隔サーバーに送られ得ることを示すものとなり得る。」(【0039】)という本件発明1特有の効果を有するものである。
そして,相違点2に係る構成,すなわち「可視パターン」を,「前記2次元バーコード(400)の信頼性をチェックするために前記2次元バーコードリーダーに接続された機器によりローカルに認証され得る署名(424)を含む」ことは,本件特許出願前に周知な技術ともいえず,本件発明1は,上記相違点1について検討するまでもなく,甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとまではいえない。

(ウ)小括
よって,本件発明1は,甲第7号証に記載された発明とは同一とはいえず,また,甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

イ 本件発明2ないし5及び8について
本件発明2ないし5及び8は,本件発明1をさらに減縮したものであるから,本件発明1と同じ理由により,甲第7号証に記載された発明とは同一とはいえず,また甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

ウ 本件発明9について
本件発明9は,本件発明1と概ねそのカテゴリー表現のみ異なるものであって,本件発明1と同じ理由により,甲第7号証に記載された発明とは同一とはいえず,また甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

エ 小括
以上判断したとおり,本件発明1ないし5,8及び9は,甲第7号証に記載された発明と同一とはいえず,また甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(2)小括
よって,本件発明1ないし5,8及び9は,甲第7号証に記載された発明と同一ではなく,また甲第7号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明し得るものともいえず,本件発明1ないし5,8及び9は,令和2年8月21日付けの取消理由通知の理由によっては,取り消すことはできない。


第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

1 特許法29条1項3号及び2項(理由1)について

(1)本件発明1について
申立人は,特許異議申立書において,訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,甲第1号証ないし甲第4号証及び甲第7号証ないし甲第9号証に記載された発明であるから特許法29条1項3号の規定により特許を取り消されるべきものである旨,及び,甲第1号証ないし甲第4号証及び甲第7号証ないし甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから同法同条2項の規定により特許を取り消されるべきものである旨主張する。
しかしながら,上記第4の3(1)で示したとおり,本件発明1は,甲第7号証に記載された発明と同一とはいえず,また甲第7号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明し得るものともいえない。
また,甲第1号証ないし甲第4号証及び甲第8号証ないし甲第9号証には,本件発明1の,特に「前記可視パターン(420)は、前記2次元バーコード(400)の信頼性をチェックするために前記2次元バーコードリーダーに接続された機器によりローカルに認証され得る署名(424)を含む」との事項は開示しておらず,少なくともこの点において相違しているから同一とはいえず,また当該事項を開示しない甲第1号証ないし甲第4号証及び甲第8号証ないし甲第9号証に基づいて当業者が容易に発明し得たともいえない。
したがって,かかる申立人の主張する理由によっては,本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

(2)本件発明2ないし5及び8について
本件発明2ないし5及び8は,本件発明1をさらに減縮した発明であり,上記(1)に示した理由と同様に,申立人の主張する理由によっては,本件請求項2ないし5及び8に係る特許を取り消すことはできない。

(3)本件発明7について
申立人は,特許異議申立書において,訂正前の特許請求の範囲の請求項7に係る発明は,甲第3号証,甲第4号証及び甲第7号証に記載された発明であるから特許法29条1項3号の規定により特許を取り消されるべきものである旨,及び,甲第3号証ないし甲第4号証及び甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから同法同条2項の規定により特許を取り消されるべきものである旨主張する。
そこで,甲第3号証ないし甲第4号証に記載された内容について検討する。

ア 甲第3号証に記載された事項
甲第3号証(特開2003-291535号公報)には,次の事項が記載されている。

A 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は印刷したインク面にレーザマーキングにより文字や図形を形成する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、商品の管理や販売時の売上計算などに用いるため商品の包装に、縞状ストライプを印刷したバーコードが使用されている。しかしながらこの縞状ストライプによるバーコードは、使用する面積に比べて記録できるデーター量が少なく、製品の品番の管理程度にしか利用できなかった。
【0003】このため近年は、ドット状の明暗模様によるマトリックスで形成された二次元コードが使用されるようになってきた。これは1mm角当り英数12文字も記録でき単位面積当たりのデーター量がバーコードに比べて極めて多く、多量の情報を記録できると共に、360度どの方向からも読取装置で読取ることができる利点がある。更にコードの一部が破損したり汚れたりしていてもデーターを回復できる機能がある上、データーを暗号化することにより情報を秘密裏に管理することができることからその用途が広がってきている。」

B 「【0017】図4は本発明の他の実施の形態を示すもので、株券9の偽造防止用のマーク印刷面4に、レーザビームを照射してインク膜6を昇華させて飛ばし、紙5が露出した白い部分と、インク膜6とで明暗の模様の二次元コード1を形成したものである。この方法によれば、乾燥したインク膜6にレーザビームを瞬間的に照射してインク膜6を昇華させるので、インクのにじみがない微細な二次元コード1を形成することができると共に、二次元コード1に暗号化した情報を組込むことができるので、セキュリティ性が向上し、偽造を防止することができる。
【0018】また本発明は、1mm角以下の小さな面積の二次元コード1に十数文字を記録できるので、キャッシュカード、クレジットカード、プリペイドカードなどのカード類や、商品券、小切手、手形などの有価証券、紙幣などに印刷された文字や模様の中に微小な二次元コード1を埋め込むことにより、コピー機やパソコンのスキャナーで複写しても、明暗模様のセル2を再現できず、複写したものは読取装置で識別できないので真偽を容易に判別することができ偽造を防止することができる。

…(中略)…

【0020】つまりオフセット印刷や、インクジェットプリンターにより二次元コード1を形成することもできるが、これは単位セル2の面積が大きくなり複写や作成が容易となるが、本発明は一旦、インク膜6を形成した後、レーザビームを照射してインク膜6を部分的に除去または変色させるので、単位セル2の1辺が10?50μm程度の、複写による再現が不可能な微細な二次元コード1を形成することができ、セキュリティ性を大幅に向上させることができる。」

C 「【0024】また上記説明ではインク膜6に二次元コード1を形成した場合について示したが、図7に示すように、透明なプラスチック袋10の表面に黒インクで帯状に印刷した印刷面4を形成し、ここにレーザビームを照射して、数字11やバーコード12、バーを傾斜させた変形バーコード12Aなどを形成しても良い。この場合も収納物の情報に応じて記録内容を変更することが容易である。

…(中略)…

【0032】このように錠剤包装21にレーザビームを照射して二次元コード1を形成することにより、薬局で薬を出す時に読取装置で錠剤包装21に形成された二次元コード1を読み取ることにより錠剤20の種類を確認することができる。また1粒ごとの錠剤20について、その薬品名、製造業者名、製造番号、製造年月日など多くの情報を記録でき、誤った薬を出すことを防止できると共に、在庫の管理も容易である。」

D 「

図4」

E 「

図7」


イ 甲第4号証に記載された事項
甲第4号証(特開2008-234643号公報)には,次の事項が記載されている。

F 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなバーコードシステムは、しばしば、文書の全体イメージを保存することができない。つまり、既存のバーコードシステムは、実現可能なデータパラメータの範囲内で、十分に原本イメージを復元するために必要な量のバーコードデータを記憶するには、記憶容量が不十分かもしれない。一般的に、バーコードから十分に文書を復元することができるシステムは、ファイルサイズがかなり大きくなるという結果を被る。それ故に、上記バーコードシステムは、例えば、過度に重荷となるデータ記憶条件や遅いファイル転送、その他の関連する不都合などの欠点を含んでいるかもしれない。
【0005】
このため、伝送前に、暗号化されたバーコードに文書画像データを安全に保管できるように、慎重に取り扱うべき文書の伝送を改善することが望まれていた。また、バーコードが、比較的小さなバーコード内に十分な情報をコード化して文書の完全な復元を生成することができるように、バーコードを文書と関連付けるシステム及び方法が望まれていた。また、必要に応じて、少なくとも原本イメージのファイルサイズを低減した復元を伝送している間は、文書と該文書に関連するバーコードとの全体的なファイルサイズを減少させることが望まれていた。

…(中略)…

【0008】
本発明の典型的な一実施形態によれば、オリジナル画像からオリジナル画像データを取得する画像取得部と、オリジナル画像が復元され得るようにオリジナル画像データをコード化する二次元バーコード用のバーコードデータを生成する命令を含む命令のプログラムを記憶する記憶部と、オリジナル画像データを処理するプロセッサと、オリジナル画像データに基づく二次元バーコードを生成するバーコード生成部と、二次元バーコードとオリジナル画像の復元とを含む文書を生成する文書生成部と、を備え、文書が低減されたファイルサイズを有することにより、オリジナル画像より少ないデータ量で復元される画像データ処理システムが開示される。」

G 「【0019】
図2は、文書及びこれと関連するバーコードの画像データを処理するための、典型的な処理工程を示すフローチャートである。まず、オリジナル画像202は、様々な方法のいずれによって取得されてもよい。一部の実施形態において、オリジナル画像はスキャナによって取得される。この実施例では、ハードコピー紙製品が、パーソナルコンピュータに伝送するためにデジタル画像形式に読み取られてもよい。あるいは、オリジナル画像は、例えば、電話通信ベースのネットワーク、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、無線ネットワーク、イントラネット、インターネットその他の様々な通信手段のようなネットワーク手段を介して伝送され得るように、文書のデジタル画像として取得されてもよい。更なる実施形態において、文書のデジタル画像は、電子メールへの添付ファイルとして取得される。また、オリジナル画像は、例えば、フロッピーディスク、CD-ROM、DVD、USBドライブ又はその他の様々なデータ記憶手段の様な、局所的に接続される媒体から取得されてもよい。」

H 「【0042】
具体的に、更なる実施形態では、300DPIで5×5ピクセルのバーコードで、タイルサイズ400μm×400μm、ピクセルの直径80μmの場合、600DPIの解像度に増加することができる。この実施においては、より高い解像度のバーコードは、各ピクセルは直径40μmとなっていることから、200μm×200μmのタイルサイズのより小さい領域(例えば、実装面積)を有することができる。このより高い解像度は、単位面積につき、より多くのデータを格納することができるため、低減された領域のバーコードは、実質的に同等か、より多くの容量を提供し得る。
【0043】
本発明においては、種々の二次元バーコードが組み込まれ、使用されうる。多くの先行技術文献が無数のバーコードの種類について詳述しているが、そのうちの多くはここに開示する方法及びシステムに適用される。例えば、米国特許第 5,490,217号は、文書との関連づけのための高容量の二次元バーコードを開示している。米国特許第 5,513,264号は、UPC、Code39及びCode128等の一次元バーコードや、PDF417、Code49及びCode16K等の二次元バーコードや、DataCode、Code1、Varicode及びMaxiCode等のマトリックスコードや、Glyphs等のグラフィックスコードを開示している。米国特許第 6,565,003号は、20×20のデータビッツの配列を有する二次元バーコードを開示している。米国特許第 6,753,977号は、人間の目では感知できない文書バーコードを開示している。いくつかの特定のバーコードは、単なる例示としての目的のために、ここに開示されたにすぎない。本発明に従った一部の実施形態では、レンダリングされるバーコードは、矩形の二次元バーコードである。具体的には、図5は、5×5ピクセルのタイルサイズを有し、最大のデジタル専用データ容量が90,000ビット、最大の閉ループデータ容量が3,600ビットである白黒バーコードの一種を示している。このバーコードのサイズは、効率的な読み取り、印刷及び走査を許容し得る。図6は、1×1ピクセルのタイルサイズを有し、最大のデジタル専用データ容量が720,000ビット、最大の閉ループデータ容量が28,800ビットである、8ビットのグレースケールバーコードを示している。相対的に、このバーコードはより低い印刷及び走査効率を有する。図7に示すPDF417及び図8に示すQRCODE等のより高い容量のバーコードも、本開示に適用することができる。」

I 「

図5














図6

図7

図8」

ウ 判断
上記ア及びイに示したとおり,甲第3号証及び甲第4号証のいずれにも,本件発明7の「前記可視パターン(420)中の前記秘密の信頼性は、遠隔機器(30)を用いることによってのみ、認証され得る」ことは記載されていない。また,上記第3の2に示したように,甲第7号証にも当該事項は記載されておらず,当該事項は本件特許出願前周知な技術ともいえない。
したがって,本件発明7は,甲第3号証,甲第4号証及び甲第7号証に記載された発明とは同一とはいえず,また甲第3号証,甲第4号証及び甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないから,申立人の主張する理由によっては,本件請求項7に係る特許を取り消すことはできない。

(4)本件発明9について
本件発明9は,本件発明1と概ねそのカテゴリー表現のみ異なるものであって,本件発明1と同じ理由により,甲第1号証ないし甲第4号証及び甲第8号証ないし甲第9号証に記載された発明とは同一とはいえず,また甲第1号証ないし甲第4号証及び甲第8号証ないし甲第9号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないから,申立人の主張する理由によっては,本件請求項9に係る特許を取り消すことはできない。

(5)本件発明10ないし16及び18ないし25について
本件発明10ないし16及び18ないし25は,本件発明9をさらに減縮した発明であり,上記(4)に示した理由と同様に,申立人の主張する理由によっては,本件請求項10ないし16及び18ないし25に係る特許を取り消すことはできない。

(6)本件発明26について
申立人は,特許異議申立書において,訂正前の特許請求の範囲の請求項26に係る発明は,甲第3号証に記載された発明であるから特許法29条1項3号の規定により特許を取り消されるべきものである旨,及び,甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから同法同条2項の規定により特許を取り消されるべきものである旨主張する。
甲第3号証には,上記(3)アに示した事項が記載されており,そのうち,上記Bには,「オフセット印刷や、インクジェットプリンターにより二次元コード1を形成することもできる」ことは記載されているものの,本件発明26の「前記二次情報が、最初にオフセット印刷で印刷され、次に、一次情報が、インクジェット印刷で印刷される」ことは記載されていない。
したがって,本件発明26は,甲第3号証に記載された発明とは同一とはいえず,また甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないから,申立人の主張する理由によっては,本件請求項26に係る特許を取り消すことはできない。

(7)本件発明27について
申立人は,特許異議申立書において,訂正前の特許請求の範囲の請求項27に係る発明は,甲第5号証に記載された発明であるから特許法29条1項3号の規定により特許を取り消されるべきものである旨,及び,甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから同法同条2項の規定により特許を取り消されるべきものである旨主張する。
そこで,甲第5号証に記載された内容について検討する。

ア 甲第5号証に記載された事項
甲第5号証(米国特許出願公開第2013/0173405号明細書)には,次の事項が記載されている。

J 「[0029] FIG. 1 illustrates a bank card 100 according to the invention. This is a card of dimensions 54×85.6×0.76 mm, but other dimensions can be used. It comprises a microcircuit 110 including a controller and memory in a secure assembly with flush contacts.
[0030] On one of its surfaces, here the surface on which the contacts of the microcircuit 110 are flush, the card also presents a two-dimensional barcode 120, responding to the QR standard (Quick Response). Other two-dimensional barcode standards could be used, and a one-dimensional barcode is also a possible variant. A pictogram responding to other coding conventions can also be used, provided it codes information for a transaction.」
(当審訳:
[0029] 図1は,本発明による銀行カード100を示している。これは,寸法54×85.6×0.76mmのカードであるが,他の寸法を用いることができる。コントローラとフラッシュ・コンタクトのセキュア・アセンブリ中のメモリとを含むマイクロ回路110を備えている。
[0030] その一方の表面上に,ここでは,マイクロ回路110の接点面はフラッシュであり,カードはさらにQR(Quick Response)標準に対応する2次元バーコード120を示す。他の2次元バーコード規格を使用することができ,一次元バーコードを用いることも可能である。他の符号化規則に対応する絵文字を使用し,トランザクションのための情報を提供することができる。)

K 「[0040] FIG. 3 illustrates a reading terminal 300, used for the transaction, and which is connected by a network 310 to a server 320.
[0041] The reading terminal 300 comprises a keypad 280 (or at least a man-machine interface for inputting an alphanumeric chain), a camera 302 for reading barcodes 2D, a SIM card (Subscriber Identification Module 309) and a control unit 305 comprising especially local software 307 for processing transaction requests. A transaction counter 308 is also present in the control unit 305 or alternatively in the SIM card 309 for greater security (alternative not illustrated). In a variant, the SIM card is included in the control unit 305. The screen 200 forms part of the reading terminal 300.
[0042] The server 320 can comprise in a memory a reference password 325 associated with the owner of the card 100 and a messaging address 327 associated with the owner of the card 100.」
(当審訳:
[0040] 図3には,トランザクションのために使用される閲覧端末300が,ネットワーク310を通じてサーバ320に接続されている様子が図示される。
[0041] 閲覧端末300は,キーパッド280(又は,英数字を入力するためのマン・マシン・インターフェース),2次元バーコード用のカメラ302,SIMカード(加入者識別モジュール309),及び,特にトランザクション要求を処理するための局所ソフトウェア307を備えた制御部305を備えている。制御部305,或いは代替で,より強力なセキュアのためにSIMカード309(図示せず)にトランザクションカウンタ308が存在する。変形例において,SIMカードは,制御部305に含まれる。表示部200は,閲覧端末300の一部を形成する。
[0042] サーバ320は,カード100の所有者に関連付けられた参照パスワード325とカード100の所有者に関連付けられたメッセージングアドレス327をメモリに含むことができる。)

L 「

図1

図3」

イ 判断
上記甲第5号証には,本件発明27のうち,とりわけ「二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップ」,「可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され」ること,及び,「前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成される」ことについては,記載されていない。
したがって,本件発明27は,甲第5号証に記載された発明とは同一とはいえず,また甲第5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないから,申立人の主張する理由によっては,本件請求項27に係る特許を取り消すことはできない。

(8)本件発明28ないし33について
本件発明28ないし33は,本件発明26または27をさらに減縮した発明であり,上記(6)及び(7)に示した理由と同様に,申立人の主張する理由によっては,本件請求項28ないし33に係る特許を取り消すことはできない。

2 特許法36条4項1号及び6項(理由2)について

(1)特許法36条4項1号(実施可能要件違反)について
申立人は,特許異議申立書において,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし33に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない旨を主張し,訂正前の請求項1に係る発明の,特に「可視パターン内の前記二次情報」が,「変更なしでは再現することが困難となるように構成」する点,及び,訂正前の請求項9に係る発明の,「変更なしで再現することが困難にされ」る点について,本件明細書及び図面のいずれにも記載が無い旨を主張する。
そこで,本件明細書の発明の詳細な説明において,とりわけ,「変更無しで(は)再現することが困難とな(にされ)」ることについて,どのような記載がなされるかを検討する。
本件明細書段落【0028】ないし【0030】及び【0034】には,次のとおりの記載が認められる。(下線は,当審が説明のために付加。以下同様。)

「【0028】
本明細書には、2Dバーコードを作成する方法が開示され、この方法は、
2Dバーコードリーダーで読み取ることのできる一次情報を、一次情報パターンに埋め込むことと、
変更なしで再現することが難しくされた二次情報を、可視パターンに埋め込むことと、
を含み、
このパターンは、このバーコードの、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれ、これにより、元の2Dバーコード(source 2D barcode)を形成する。
本テキスト内で別段の指示がない限り、2Dバーコード、および2Dバーコードのすべての要素、例えば一次情報パターンおよびその一次情報、可視パターンおよびその二次情報、データ領域、基本セル、基本サブセル、署名、秘密等は、元の2Dバーコードおよびそのような2Dバーコードのすべての要素に関係するが、オリジナルの2Dバーコードおよびそのような2Dバーコードのすべての要素(すなわち、例えば、印刷されるか、またはスクリーンに表示された、元の2Dバーコード)には関係せず、またオリジナルの2Dバーコードを再現した後の、オリジナルでない2Dバーコード(すなわち、例えば、スキャンされるか、またはコピーされたオリジナルの2Dバーコード)には関係しない。
【0029】
この文脈では、「一次情報」は、専門のユーザー(dedicated users)にとって容易にアクセス可能である、製品もしくはサービスに関する情報に関連しており、この情報の存在は、検出するのが容易であり、2Dバーコード内で容易に認識される。また、この一次情報は、ある2Dバーコードタイプとして容易に認識されるように2Dバーコードの基準に従っていて、複製するのが容易となり得る、フォーマットである、認証するのが容易な内容を有する。
【0030】
「二次情報」は、2Dバーコードの信頼性(オリジナルの特徴)を確認することを目的とし、かつ、一次情報よりも、変更なしで複製するのが困難である、情報に関する。したがって、二次情報は、2Dバーコードが付された製品もしくは書類に関する何らかのメッセージを必ずしも含んでいる必要はないが、全体的に、偽造検出手段を提供することに重点を置いている。したがって、二次情報は、復号器の観点からするといかなるメッセージも復号されないが、オリジナルパターンとの類似性を測定するという意味で、一次情報のような情報ではない。一次情報および二次情報は双方、ピクセル、または複数群のピクセルの形態であることが好ましい。よって、「二次情報」は、いわゆる「フィンガープリント」を形成する基本サブセルのパターンの形態であってよく、基本サブセルは、エラーを引き起こさずに、パターンの再現を防ぐように十分小さい。よって、二次情報を表す基本サブセルの、最初に印刷したパターンのコピー(スキャン)に、視覚的再現(例えば、スクリーン上に印刷もしくは表示すること)が続くことにより、「フィンガープリント」の変更を引き起こし、これは、本明細書に記載するさまざまな手段によって(例えば、フィンガープリントを二次情報生成ファイルと比較することによって、または、二次情報のオリジナルプリントのスキャンに対応する画像との比較によって)検出され得る。本明細書で論じるように、二次情報は、特に、秘密のままである、ランダムまたは擬似ランダムに生成された鍵を使用することにより、ランダムに生成され得、このため、二次情報は、偽造者により再生成されるのを防ぐ、秘密を含む。偽造者は、印刷されたオリジナルにアクセスできるだけであり、この印刷されたオリジナルは、何らかの検出可能な変更なしで、コピーおよび再現することができない。」

「【0034】
「変更なしで再現が難しい」という表現は、コピーの影響を受けること、すなわち、可視パターンの変更なしで、大部分のコピー機、スキャナ、画像取り込み機器もしくはプリンタが、2Dバーコードをコピー、取り込み、または再現することができないこと、を意味し、これにより、オリジナルの印刷された可視パターンのスキャンもしくはコピー後に二次情報を体系的に読み取り不可能にするかもしくはその正確な読み取りを不可能にする。例えば、オリジナルの2Dバーコードの、オリジナルの印刷された可視パターンは、コピーに耐えることができない、細かい項目を含んでおり、認証は、オリジナルでない2Dバーコードよりもオリジナルの2Dバーコードで数が多い、可視パターンの細部をスキャンおよび分析することに基づいている。言い換えれば、「変更なしで再現が難しい」という表現は、二次情報が、コピーおよび再現されると劣化することを意味しており、二次情報において特徴的であるか、または最初からある特徴が失われている。」

上記記載によれば,「変更なしで再現が難しい」とは,「コピーの影響を受けること、すなわち、可視パターンの変更なしで、大部分のコピー機、スキャナ、画像取り込み機器もしくはプリンタが、2Dバーコードをコピー、取り込み、または再現することができないこと」を意味し,これにより,「オリジナルの印刷された可視パターンのスキャンもしくはコピー後に二次情報を体系的に読み取り不可能にするかもしくはその正確な読み取りを不可能にする」ような効果を奏するものであることを意味していることを読取ることができる。(【0034】)
また,本件明細書に開示された内容には,「変更なしで再現することが難しくされた二次情報を、可視パターンに埋め込むこと」が含まれていること(【0028】),「二次情報」は,「2Dバーコードの信頼性(オリジナルの特徴)を確認することを目的とし、かつ、一次情報よりも、変更なしで複製するのが困難である、情報」であり,「いわゆる「フィンガープリント」を形成する基本サブセルのパターンの形態であってよく、基本サブセルは、エラーを引き起こさずに、パターンの再現を防ぐように十分小さい。よって、二次情報を表す基本サブセルの、最初に印刷したパターンのコピー(スキャン)に、視覚的再現(例えば、スクリーン上に印刷もしくは表示すること)が続くことにより、「フィンガープリント」の変更を引き起こし、これは、本明細書に記載するさまざまな手段によって(例えば、フィンガープリントを二次情報生成ファイルと比較することによって、または、二次情報のオリジナルプリントのスキャンに対応する画像との比較によって)検出され得る」こと(【0030】)などを読取ることができ,このことにより,「偽造者」が,「印刷されたオリジナルにアクセスできるだけであり、この印刷されたオリジナルは、何らかの検出可能な変更なしで、コピーおよび再現することができない」という効果を奏するものであること(【0030】)も読取ることができる。

さらに,本件明細書段落【0036】及び【0046】には,次のとおりの記載が認められる。

「【0036】
二次情報は、オリジナルの2Dバーコードにおいて、0.2mmより小さい、好ましくは0.1mmより小さい、好ましくは50μmより小さい、最大寸法を有する、黒色および白色の基本サブセル(特にピクセル)により形成され得る。」

「【0046】
図1から分かるように、この可視パターン120は、一次情報パターン110を形成する基本セル102より小さいピクセル(正方形として、非限定的に図示)の選択された配列として表わされていて、二次情報を符号化する、黒色および白色の基本サブセル122により形成される。基本サブセル122のサイズにより、大部分のコピー機は、この可視パターン120が後で正しく復号されるのを妨げる十分大幅な変更を行って、二次情報パターン110をコピーすることができる。本発明の重要な特徴は、印刷またはコピー前において、フィンガープリントに、さらに一般的にはオリジナルの可視パターン120に、どれだけ多くの情報があるかではなく、印刷もしくはコピー後に、どれだけ多くの情報が可視パターン120にあるかということである。同じ可視パターン120では、印刷もしくはコピーの影響、および印刷もしくはコピーされた可視パターン120における情報の密度は、印刷もしくはコピーの特性(プリンタもしくはコピー機の種類、紙の種類、インク、および印刷もしくはコピージョブに対する特定の色濃度要件)によって決まる。可視パターン120において二次情報を符号化する基本サブセル122の典型的かつ非限定的なサイズは、1×1ピクセル?5×5ピクセル、特に1×1ピクセル?3×3ピクセルの範囲であり、好ましくは、1×1ピクセルまたは2×2ピクセルである。これは、5μm(マイクロメートル)?300μm、特に10μm?200μm、好ましくは、特に20μm?100μm、好ましくは、特に30?50μmの範囲の、オリジナルの2Dバーコード100の基本サブセル122の典型的かつ非限定的なサイズ(最大寸法)に対応し得る。例えば、600ppi(ピクセル/インチ)のプリンタ解像度では、オリジナルの2Dバーコード100の典型的なサイズは、エッジ長さが約1.11cmの正方形であり、約0.34mmのサイズをそれぞれが有する基本セル102が33×33個あり、約40μm(マイクロメートル)のサイズを有するピクセルでそれぞれが形成されている基本サブセル122が8×8個ある可視パターンを有している。」

上記記載によれば,「変更無しで(は)再現することが困難とな(にされ)」る具体的態様についても読取ることができ,当該記載に接した当業者は,本件明細書から,訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし33に係る発明を実施することができる程度の明確かつ十分な記載を見いだすことができるといえ,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし33に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとまではいえない。

したがって,申立人のかかる主張は,採用することができない。

(2)特許法36条6項について
申立人は,特許異議申立書において,訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし33に係る発明は明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでは無く,かつ,不明確である旨を主張し,とりわけ,訂正前の請求項1に係る発明の,特に「可視パターン内の前記二次情報」が,「変更なしでは再現することが困難となるように構成」する点,及び,訂正前の請求項9に係る発明の,「変更なしで再現することが困難にされ」る点について,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず,かつ,不明確である旨を主張する。
しかしながら,上記(1)に示したとおり,「変更無しで(は)再現することが困難とな(にされ)」る点については,本件明細書の発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されており,不明確であるともいえない。

したがって,申立人のかかる主張は,採用することができない。

(3)まとめ
上記(1)及び(2)の検討によれば,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし33に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであって,特許法36条4項1号の規定に違反するものとはいえず,また,訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし33に記載された発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであり,かつ,不明確とまではいえず,同法同条6項の規定に違反するものともいえないから,申立人の主張する理由2によっては,本件請求項1ないし5,7ないし16,18ないし33に係る特許を取り消すことはできない。


第6 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1ないし5,7ないし16,18ないし33に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1ないし5,7ないし16,18ないし33に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また,請求項6及び17に係る特許は,上記のとおり,訂正により削除された。これにより,申立人による特許異議の申立てについて,請求項6及び17に係る申立ては,申立ての対象が存在しないものとなったため,特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成され、
前記可視パターン(420)は、前記2次元バーコード(400)の信頼性をチェックするために前記2次元バーコードリーダーに接続された機器によりローカルに認証され得る署名(424)を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記可視パターン(120;220;320;420)は、前記2次元バーコード内の、ただ1つの領域に埋め込まれる、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記二次情報は、黒色および白色の基本サブセル(122)により形成され、黒色の基本サブセル(122)の50%±5%とは異なる平均黒色濃度を有する、方法。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の方法において、
前記二次情報は、前記可視パターン(120;320)の少なくとも2つの異なる部分(120a、120b、320a、320b_(1)?320b_(4))に全体が位置し、少なくとも1つの部分は、黒色の基本サブセルの50%±5%とは異なる平均黒色濃度を有する、方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法において、
前記平均黒色濃度は、黒色の基本サブセル(122)の45%以下または55%以上である、方法。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成され、
前記可視パターン(420)中の前記秘密の信頼性は、遠隔機器(30)を用いることによってのみ、認証され得る、方法。
【請求項8】
請求項1?5、7のいずれか1項に記載の方法において、
前記秘密鍵(K2)は、ランダムまたは疑似ランダムに生成される、方法。
【請求項9】
2次元バーコードリーダーにより読み取られることができる一次情報を表す一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)と、変更なしで再現することが困難にされた二次情報を表す可視パターン(120;220;320;420;520;620)とを含む、2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を埋め込んだ製品において、
前記可視パターン(120;220;320;420;520;620)は、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれ、
前記可視パターンは、該可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記可視パターンは、前記2次元バーコードの信頼性をチェックするために、前記2次元バーコードリーダーに直接接続された機器によって、ローカルに認証され得る、署名(424)を含むことを特徴とする、製品。
【請求項10】
請求項9に記載の製品において、
前記2次元バーコードは、修正されたQRコードまたはデータマトリックスを、データ領域を形成するシンボルの形態で含み、前記データ領域は、前記シンボルの3つの角に位置する位置検出パターン、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)により表される一次情報、および可視パターン(120;220;320;420;520;620)により表される二次情報を含む、製品。
【請求項11】
請求項9または10に記載の製品において、
前記可視パターンは、二次情報のみを備えた矩形の中に全体が含まれている、製品。
【請求項12】
請求項9?11のいずれか1項に記載の製品において、
前記可視パターンは、7×7ピクセル、または8×8もしくは9×9個の基本セルのゾーン、または10×10個の基本セルのゾーンに形成されている、製品。
【請求項13】
請求項10に記載の製品において、
前記QRコードは、基本セルが29×29個のタイプのQRコードであるか、または基本セルが33×33個のタイプのQRコードである、製品。
【請求項14】
請求項9?13のいずれか1項に記載の製品において、
前記可視パターンは、前記一次情報パターンの境界の内側に位置している、製品。
【請求項15】
請求項9?14のいずれか1項に記載の製品において、
前記可視パターンは、前記一次情報パターンの中心に重なっている、製品。
【請求項16】
請求項9?13のいずれか1項に記載の製品において、
前記可視パターン(520;620)は、前記一次情報パターンの境界の外側に位置している、製品。
【請求項17】(削除)
【請求項18】
請求項9?16のいずれか1項に記載の製品において、
前記可視パターンにおける前記秘密の信頼性は、遠隔機器(30)を用いることによってのみ、認証され得る、製品。
【請求項19】
請求項9?16、18のいずれか1項に記載の製品において、
前記秘密鍵(K2)は、ランダムまたは擬似ランダムに生成されている、製品。
【請求項20】
請求項9に記載の製品の特徴を含む製品上の2次元バーコードを認証する方法において、
2次元バーコードリーダーで前記2次元バーコードを読み取るステップと、
前記可視パターンを識別し、前記二次情報内部の前記署名を識別し、これにより、検出された署名を形成するステップと、
前記検出された署名を署名鍵と比較し、比較の結果として、署名類似性スコアを決定するステップと、
前記署名類似性スコアを所定の署名閾値と比較するステップと、
前記所定の署名閾値以上であれば成功であり、前記所定の署名閾値未満であれば失敗である、認証署名結果を確立するステップと、
を含む、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、
前記2次元バーコードリーダーは、モバイル機器(20)の一部であり、
前記署名鍵は、前記検出された署名と前記署名鍵との比較ステップを実施する、前記モバイル機器(20)に格納される、方法。
【請求項22】
請求項18または19に記載の製品の特徴を含む製品上の2次元バーコードを認証する方法において、
2次元バーコードリーダーで前記2次元バーコードを読み取るステップと、
前記可視パターンを識別し、前記二次情報内部の前記秘密を識別し、これにより、検出された秘密を形成するステップと、
前記検出された秘密を、元の2次元バーコードの秘密鍵と比較し、比較の結果として、秘密類似性スコアを決定するステップと、
前記秘密類似性スコアを、所定の秘密閾値と比較するステップと、
前記所定の秘密閾値以上であれば成功であり、前記所定の秘密閾値未満であれば失敗である、認証秘密結果を確立するステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
前記2次元バーコードリーダーは、遠隔機器(30)に接続された、モバイル機器(20)の一部であり、
前記元の2次元バーコードの前記秘密鍵は、前記検出された秘密と前記秘密鍵との比較ステップを実施する前記遠隔機器(30)に格納され、
前記方法は、前記認証秘密結果を前記モバイル機器(20)に送り返すステップをさらに含む、方法。
【請求項24】
請求項9?16、18、19のいずれか1項に記載の製品の特徴を含む製品を製造する方法において、
製品を準備するステップと、
2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成される、元の2次元バーコードを作成するステップと、
前記製品に前記元の2次元バーコードを印刷するステップであって、これにより、オリジナルの2次元バーコードを備えた製品を作る、印刷するステップと、
を含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、
前記印刷するステップは、前記製品に前記元の2次元バーコードを印刷する2つのサブステップを含み、前記2つのサブステップは、
一次情報を含む前記一次情報パターンを印刷する第1の印刷手段を使用すること、および、
二次情報を含む前記可視パターンを印刷する第2の印刷手段を使用し、これにより、オリジナルの2次元バーコードを備えた製品を作ること、
である、方法。
【請求項26】
2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成される、方法において、
前記二次情報が、最初にオフセット印刷で印刷され、次に、一次情報が、インクジェット印刷で印刷される、方法。
【請求項27】
2次元バーコード(100;200;300;400;500;600)を作成する方法において、
2次元バーコードリーダーにより読み取ることができる一次情報を、一次情報パターン(110;210;310;410;510;610)に埋め込むステップと、
二次情報が前記一次情報から分離するように、前記2次元バーコード内の、いかなる一次情報も含まない少なくとも1つの領域に埋め込まれた可視パターン(120;220;320;420;520;620)に前記二次情報を埋め込むステップと、
を含み、
可視パターン内の前記二次情報は、変更なしでは再現することが困難となるように構成された、50μmより小さい最大寸法を有する、薄い色と濃い色の基本サブセルにより形成され、
前記二次情報は、前記可視パターンが秘密(426)を含むように秘密鍵を用いて生成される、方法に従って作られた2次元バーコードの特徴を含む2次元バーコードを認証する方法において、
少なくとも1つの画像フレームを生成するためにローカル機器を用いて前記2次元バーコードをスキャンするステップと、
前記画像フレームから、前記ローカル機器の一次情報を読み取るステップと、
前記画像フレームから、前記ローカル機器の二次情報を抽出するステップと、
前記ローカル機器に格納された鍵を用いて二次情報の一部を生成するステップであって、前記一部は、前記二次情報の署名を含むか、またはこれを形成する、ステップと、
前記二次情報の前記署名を、抽出された二次情報と比較して、前記2次元バーコードの信頼性を第1のローカルレベルで認証する工程と、
を含む、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、
前記一次情報またはこれと相互に関連する情報、および抽出された二次情報の画像を、遠隔サーバーに送るステップと、
抽出された二次情報の画像を、前記遠隔サーバーに格納されるか、もしくは前記遠隔サーバーにおいて生成されたオリジナルの2次元バーコード画像と比較することにより、2次元バーコードを認証するステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項29】
請求項27または28に記載の方法において、
前記二次情報の前記署名を抽出された二次情報と比較することで、スコアが生成される、方法。
【請求項30】
請求項27?29のいずれか1項に記載の方法において、
前記ローカル機器を用いて前記2次元バーコードをスキャンすることにより、複数の画像フレームが生成され、その結果、複数のスコアが得られ、
前記複数のスコアは、遠隔サーバーによる第2のレベルの認証が行われるべきかどうか決定するために使用される、方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法において、
前記画像が遠隔サーバーによる2次元バーコードの認証に適しているかどうかを決定するために、前記少なくとも1つの画像フレームの画像品質を確かめるステップを含む、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法において、
画像品質を確かめる技術は、
前記画像フレームから、前記ローカル機器の二次情報を抽出することと、
前記ローカル機器に格納された鍵を用いて二次情報の一部を生成することであって、前記一部は、二次情報の署名を含むか、またはこれを形成する、ことと、
前記二次情報の前記署名を、抽出された二次情報と比較して、スコアを生成することと、
画像品質のインジケーターとして1組のスコアを使用することと、
を含む、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、
画像品質を確かめる技術は、一次情報の黒色のセルと白色のセルとの間の移行の鮮鋭度を測定することを含む、方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-01-29 
出願番号 特願2016-552683(P2016-552683)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (G06K)
P 1 651・ 121- YAA (G06K)
P 1 651・ 537- YAA (G06K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 甲斐 哲雄  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 小林 秀和
山崎 慎一
登録日 2019-04-05 
登録番号 特許第6505732号(P6505732)
権利者 スキャントラスト・エスエイ
発明の名称 2次元バーコードおよびそのようなバーコードの認証方法  
代理人 加藤 公延  
代理人 永田 豊  
代理人 大島 孝文  
代理人 太田 司  
代理人 特許業務法人平和国際特許事務所  
代理人 永田 豊  
代理人 加藤 公延  
代理人 押野 宏  
代理人 押野 宏  
代理人 太田 司  
代理人 福川 晋矢  
代理人 大島 孝文  
代理人 福川 晋矢  

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