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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  H04W
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04W
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04W
管理番号 1372682
異議申立番号 異議2019-700727  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-12 
確定日 2021-02-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6484195号発明「基地局、無線装置および無線通信システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6484195号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1-3、8〕〔4-7〕について訂正することを認める。 特許第6484195号の請求項1-3、5-8に係る特許を維持する。 特許第6484195号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6484195号の請求項1-6に係る特許についての出願は、平成28年3月31日に出願され、平成31年2月22日にその特許権の設定登録がされ、平成31年3月13日に特許掲載公報が発行された。そして、本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 1年 9月12日 : 特許異議申立人 東京総合コンサルティ
ング株式会社(以下、「異議申立人」と
いう。)による請求項1-6に係る特許
に対する特許異議の申立て
令和 1年11月22日付け: 取消理由通知書
令和 2年 1月24日 : 特許権者による意見書の提出及び訂正の
請求
令和 2年 7月15日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
令和 2年 9月17日 : 特許権者による意見書の提出及び訂正の
請求
なお、令和2年1月24日及び令和2年9月17日の訂正請求に対して、特許異議申立人に意見を述べる機会を与えたが、特許異議申立人から意見書の提出はなかった。
また、令和2年1月24日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取下げたものとみなす。

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和2年9月17日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正個所を示す。)
(1)請求項1-3および請求項8からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項1
a 特許請求の範囲の請求項1に「タイミングを規定する同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット処理と、」と記載されているのを、「タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット処理と、」に訂正する。
b 特許請求の範囲の請求項1に「前記制御部は、・・・同期パケット送信処理と、・・・要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、」と記載されているのを、「前記制御部は、・・・同期パケット送信処理と、・・・要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを送信する処理を実行し、」に訂正する。
c 特許請求の範囲の請求項1に「前記制御部は、先の前記送受信処理で前記同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、」と記載されているのを、「前記制御部は、前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行し、先の前記送受信処理で前記同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、」に訂正する。
(また、請求項1の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。)

イ 訂正事項2
a 特許請求の範囲の請求項2に「タイミングを規定する同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット処理と、」と記載されているのを、「タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット処理と、」に訂正する。
b 特許請求の範囲の請求項2に「前記制御部は、・・・同期パケット送信処理と、・・・要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、」と記載されているのを、「前記制御部は、・・・同期パケット送信処理と、・・・要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを送信する処理を実行し、」に訂正する。
c 特許請求の範囲の請求項2に「前記制御部は、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻と、」と記載されているのを、「前記制御部は、前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻と、」に訂正する。
(また、請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。)

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または請求項2に記載の基地局において、」と記載されているのを、「請求項2に記載の基地局において、」に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または、請求項2に記載の基地局において、・・・を含むことを特徴とする基地局。」と記載されているのを、「請求項1に記載の基地局において、前記送受信処理は、複数の前記無線装置のうち少なくとも1つについて前記情報要求パケットを受信しなかった場合に、前記同期パケットを再送する再送処理と、再送された前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各前記情報要求パケットを受信する再受信処理と、を含むことを特徴とする基地局。」とし、新たに請求項8とする。

オ 訂正事項5
明細書の段落0010に「本発明は、複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、前記制御部は、タイミングを規定する同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット送信処理と、前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、前記要求受信処理は、前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、先の前記送受信処理で前記同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻とを、次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする。」と記載されているのを、「本発明は、複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、前記制御部は、タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット送信処理と、前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを送信する処理を実行し、前記要求受信処理は、前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行し、先の前記送受信処理で前記同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻とを、次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする。」に訂正する。

カ 訂正事項6
明細書の段落0011に「また、本発明は、複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、前記制御部は、タイミングを規定する同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット送信処理と、前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、前記要求受信処理は、前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻と、次の前記送受信処理で前記同期パケットが送信される時刻を示す同期パケット送信時刻とを、当該次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする。」と記載されているのを、「また、本発明は、複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、前記制御部は、タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット送信処理と、前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを送信する処理を実行し、前記要求受信処理は、前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻と、次の前記送受信処理で前記同期パケットが送信される時刻を示す同期パケット送信時刻とを、当該次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする。」に訂正する。

(2)請求項4-7からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に「前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに情報要求パケットを送信する要求送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、」と記載されているのを、「前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、前記基地局は、タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信し、前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する1つの前記同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行し、」に訂正する。
(また、請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「請求項4または請求項5に記載の無線装置を複数備え、複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められていることを特徴とする無線通信システム。」と記載されているのを、「請求項5に記載の無線装置を複数備え、複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められていることを特徴とする無線通信システム。」に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項4または請求項5に記載の無線装置を複数備え、複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められていることを特徴とする無線通信システム。」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、「基地局との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を含む無線装置を複数備え、前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに情報要求パケットを送信する要求送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、前記同期パケットは、先の前記送受信処理で前記基地局が前記同期パケットを送信した時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、前記同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求め、複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められていることを特徴とする無線通信システム。」とし(以下、「訂正事項4a」という。)、さらに、当該事項について「基地局との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を含む無線装置を複数備え、前記基地局は、タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信し、前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する1つの前記同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行し、前記同期パケットは、先の前記送受信処理で前記基地局が前記同期パケットを送信した時刻を示す同期パケット送信時刻と、 先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、前記同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求め、複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められていることを特徴とする無線通信システム。」に訂正し(以下、「訂正事項4b」という。)、新たに請求項7とする。

オ 訂正事項5
明細書の段落0013を削除する。

カ 訂正事項6
明細書の段落0014に「また、本発明は、基地局との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに情報要求パケットを送信する要求送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、前記同期パケットは、前記同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、前記同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求めることを特徴とする。」と記載されているのを、「また、本発明は、基地局との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、前記基地局は、タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信し、前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する1つの前記同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行し、前記同期パケットは、前記同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、前記同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求めることを特徴とする。」に訂正する。

キ 訂正事項7
明細書の段落0015に「前記無線装置を複数備える通信システムでは、望ましくは、複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められている。」と記載されているのを、「前記無線装置を複数備える通信システムでは、望ましくは、複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められている。また、本発明は、基地局との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を含む無線装置を複数備え、前記基地局は、タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信し、前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する1つの前記同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行し、前記同期パケットは、先の前記送受信処理で前記基地局が前記同期パケットを送信した時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、前記同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求め、複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められていることを特徴とする。」に訂正する。

2.訂正の適否についての判断
(1)請求項1-3および請求項8からなる一群の請求項に係る訂正について
ア 一群の請求項について
訂正前の請求項1及び3について、請求項3は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。また、訂正前の請求項2及び3において、請求項3は、請求項2を引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし3に対応する訂正後の請求項1ないし3及び8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

イ 訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は
a 訂正前の請求項1の発明特定事項である「同期パケット送信処理」において送信される「タイミングを規定する同期パケット」の数について、「1つ」であることを特定するものであり、
b 訂正前の請求項1の発明特定事項である「前記制御部」において「先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを送信する処理を実行」し、
c 訂正前の請求項1の発明特定事項である「前記制御部」において「前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行」することを特定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
a 願書に添付した明細書の段落0024には「基地局10は、時刻t0に同期用無線装置14-1?14-3を宛先とする同期パケットを送信する(S101)。同期パケットは、同期処理を実行するタイミングを規定するために各同期用無線装置に送信するパケットである。同期パケットを送信する際に、基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3に対して共通に割り当てられた同報アドレスを同期パケットに含ませる。また、基地局10は、直前のパケット送受信処理に応じて求めた情報を同期パケットに含ませる。」と記載されている。また、願書に添付した明細書の段落0023には「図2には、通信システムで実行される繰り返し同期処理のシーケンスチャートが示されている。繰り返し同期処理は、基地局10が所定の送信周期STで各同期用無線装置に同期パケットを繰り返し送信し、同期パケットを受信した各同期用無線装置が、情報要求パケットを基地局10に送信する処理である。」と記載され、段落0081には、「制御部52は、無線部54と共にパケット送受信処理を実行する。」と記載されている。そうすると、上記記載及び願書に添付した図2からは、1つの同期パケットが同期用無線装置に同報パケットとして同報送信されていることが見て取れるから、「同期パケット」は「タイミングを規定する同期パケット」であり、「同期パケット」は「1つの同期パケット」であるといえる。
したがって、これらの記載より、「タイミングを規定する同期パケット」は「1つの同期パケット」であるといえる。
b 願書に添付した明細書の段落0027には「基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3のそれぞれから送信された各情報要求パケットを受信する。基地局10は、各情報要求パケットを受信した情報要求受信時刻t31、t32およびt33を、基地局時計によって求めて記憶する。」と記載されている。また、願書に添付した明細書の段落0030には「基地局10が同期パケットを送信してから送信周期STが経過した時刻t4に、基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3を宛先とする次の同期パケットを送信する(S103)。」と記載されている。そして、願書に添付した図2には、時刻t0に送信された同期パケットの次の同期パケット(次の送受信処理における同期パケット)が、情報要求受信時刻t33の直近の後の時刻t4に送信されることが示されている。そうすると、上記記載及び願書に添付した図2からは、「先の送受信処理で各情報要求パケット受信した情報要求受信時刻t33の直近の後の時刻t4に次の送受信処理における同期パケットを送信する処理」を実行するものであるといえる。そして、上記aで述べたとおり、「制御部52は、無線部と共にパケット送受信処理を実行する。」ものであるから、該処理は制御部において実行されるものであるといえる。
そうすると、「前記制御部」は、「先の送受信処理で各情報要求パケットを受信する処理の次に、次の送受信処理における同期パケットを送信する処理を実行」するものであること、は明らかである。
c 上記aで述べたとおり、「図2には、通信システムで実行される繰り返し同期処理のシーケンスチャートが示されている。繰り返し同期処理は、基地局10が所定の送信周期STで各同期用無線装置に同期パケットを繰り返し送信し、同期パケットを受信した各同期用無線装置が、情報要求パケットを基地局10に送信する処理である。」と記載され、「制御部52は、無線部54と共にパケット送受信処理を実行する。」ものである。そうすると、「前記制御部」において「前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行」するものであること、は明らかである。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項1は特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

ウ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、
a 訂正前の請求項2の発明特定事項である「同期パケット送信処理」において送信される「タイミングを規定する同期パケット」について、送信される「タイミングを規定する同期パケット」が「1つの同期パケット」であることを特定するものであり、
b 訂正前の請求項2の発明特定事項である「前記制御部」において「先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを送信する処理を実行」することを特定し、
c 訂正前の請求項2の発明特定事項である「前記制御部」において「前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行」することを特定するものである。
また、請求項2を引用する請求項3についても同様の理由である。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
a 明細書の段落0024には「基地局10は、時刻t0に同期用無線装置14-1?14-3を宛先とする同期パケットを送信する(S101)。同期パケットは、同期処理を実行するタイミングを規定するために各同期用無線装置に送信するパケットである。同期パケットを送信する際に、基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3に対して共通に割り当てられた同報アドレスを同期パケットに含ませる。また、基地局10は、直前のパケット送受信処理に応じて求めた情報を同期パケットに含ませる。」と記載されている。また、明細書の段落0023には「図2には、通信システムで実行される繰り返し同期処理のシーケンスチャートが示されている。繰り返し同期処理は、基地局10が所定の送信周期STで各同期用無線装置に同期パケットを繰り返し送信し、同期パケットを受信した各同期用無線装置が、情報要求パケットを基地局10に送信する処理である。」と記載され、段落0081には、「制御部52は、無線部54と共にパケット送受信処理を実行する。」と記載されている。そうすると、上記記載及び図2からは、1つの同期パケットが同期用無線装置に同報パケットとして同報送信されていることが見て取れるから、「同期パケット」は「タイミングを規定する同期パケット」であり、「同期パケット」は「1つの同期パケット」であるといえる。
したがって、これらの記載より、「タイミングを規定する同期パケット」は「1つの同期パケット」であるといえる。
b 願書に添付した明細書の段落0027には「基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3のそれぞれから送信された各情報要求パケットを受信する。基地局10は、各情報要求パケットを受信した情報要求受信時刻t31、t32およびt33を、基地局時計によって求めて記憶する。」と記載されている。また、願書に添付した明細書の段落0030には「基地局10が同期パケットを送信してから送信周期STが経過した時刻t4に、基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3を宛先とする次の同期パケットを送信する(S103)。」と記載されている。そして、願書に添付した図2には、時刻t0に送信された同期パケットの次の同期パケット(次の送受信処理における同期パケット)が、情報要求受信時刻t33の直近の後の時刻t4に送信されることが示されている。そうすると、上記記載及び願書に添付した図2からは、「先の送受信処理で各情報要求パケット受信した情報要求受信時刻t33の直近の後の時刻t4に次の送受信処理における同期パケットを送信する処理」を実行するものであるといえる。そして、上記aで述べたとおり、「制御部52は、無線部と共にパケット送受信処理を実行する。」ものであるから、該処理は制御部において実行されるものであるといえる。
そうすると、「前記制御部」は、「先の送受信処理で各情報要求パケットを受信する処理の次に、次の送受信処理における同期パケットを送信する処理を実行」するものであること、は明らかである。
c 上記aで述べたとおり、「図2には、通信システムで実行される繰り返し同期処理のシーケンスチャートが示されている。繰り返し同期処理は、基地局10が所定の送信周期STで各同期用無線装置に同期パケットを繰り返し送信し、同期パケットを受信した各同期用無線装置が、情報要求パケットを基地局10に送信する処理である。」と記載され、「制御部52は、無線部54と共にパケット送受信処理を実行する。」ものである。そうすると、「前記制御部」において「前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行」するものであること、は明らかである。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項2は特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項3は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項3は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上の特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

オ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的について
訂正事項4は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項4は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項4は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上の特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

カ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的について
訂正事項5は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項5は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正を目的としているものであるから、上記訂正事項1と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否か等について
上記(ア)に示したとおり、訂正事項5は上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、上記訂正事項1と同様に、実質上の特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。

キ 訂正事項6について
(ア)訂正の目的について
訂正事項6は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項6は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正を目的としているものであるから、上記訂正事項2と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否か等について
上記(ア)に示したとおり、訂正事項6は上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、上記訂正事項2と同様に、実質上の特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。

(2)請求項4-7からなる一群の請求項に係る訂正について
ア 一群の請求項について
訂正前の請求項4及び6について、請求項6は、請求項4を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。また、訂正前の請求項5及び6において、請求項6は、請求項5を引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項4ないし6に対応する訂正後の請求項4ないし7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

イ 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではないこと、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

ウ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、
a 訂正前の請求項5の発明特定事項である「基地局」及び「タイミングを規定する同期パケット」について、「前記基地局は、タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信」することを特定するものであり、
b 訂正前の請求項5の発明特定事項である「同期パケット受信処理」において受信される「タイミングを規定する同期パケット」の数について、「1つ」であることを特定するものであり、
c 訂正前の請求項5の発明特定事項である「要求送信処理」について「前記同期パケット」が「前記同期パケット受信処理」によって受信されるものであることを特定するものであり、
d 訂正前の請求項5の発明特定事項である「前記制御部」において「先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行」することを特定するものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に揚げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
a 願書に添付した明細書の段落0023には「図2には、通信システムで実行される繰り返し同期処理のシーケンスチャートが示されている。繰り返し同期処理は、基地局10が所定の送信周期STで各同期用無線装置に同期パケットを繰り返し送信し、同期パケットを受信した各同期用無線装置が、情報要求パケットを基地局10に送信する処理である。」と記載されている。
そして、上記記載及び図2からは、同期パケットが同期用無線装置に同報パケットとして同報送信されていることが見て取れるから、「同期パケット」は「タイミングを規定する同期パケット」であり、「同期パケット」は繰り返し送信されるのであるから「所定の周期で繰り返し送信」するものであるといえる。
そうすると、これらの記載から、「基地局」は「タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信」するものであることは、明らかである。
b 願書に添付した明細書の段落0024には「基地局10は、時刻t0に同期用無線装置14-1?14-3を宛先とする同期パケットを送信する(S101)。同期パケットは、同期処理を実行するタイミングを規定するために各同期用無線装置に送信するパケットである。同期パケットを送信する際に、基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3に対して共通に割り当てられた同報アドレスを同期パケットに含ませる。また、基地局10は、直前のパケット送受信処理に応じて求めた情報を同期パケットに含ませる。」と記載されている。そして、上記記載及び図2からは、基地局は、同期用無線装置14-1?14-3を宛先とする同期パケットを「1つ」送信するものであることが見て取れるから、「タイミングを規定する同期パケット」は「1つの同期パケット」であるといえる。
そうすると、これらの記載より、「タイミングを規定する同期パケット」は「1つの同期パケット」であるといえる。
c 願書に添付した明細書の段落0087には「制御部56は、無線部60と共にパケット送受信処理を実行する。」と記載され、願書に添付し明細書の段落0088には「パケット送受信処理は、例えば、(1)基地局10から送信され、タイミングを規定する同期パケットを受信する同期パケット受信処理、・・・を含む。」と記載されている。
そうすると、これらの記載より、受信される「前記同期パケット」が「前記同期パケット受信処理」によって受信されるものであり、「前記同期パケット受信処理」を実行するには「制御部」であることは明らかである。
d 願書に添付した明細書の段落0026には、「各同期用無線装置は、同期パケットを受信してから所定の応答遅延時間が経過した時に、情報要求パケットを送信する(S102)。図2に示されている例では、同期用無線装置14-1?14-3に対し、それぞれ、応答遅延時間d1?d3が定められている。情報要求パケットを送信する際に、各同期用無線装置は、情報要求パケットを送信する情報要求送信時刻を、各自が備えるローカル時計によって求め、情報要求送信時刻を記憶する。すなわち、同期用無線装置14-1?14-3は、それぞれ、情報要求送信時刻t21?t23を記憶する。」と記載されている。また、願書に添付した明細書の段落0030には、「基地局10が同期パケットを送信してから送信周期STが経過した時刻t4に、基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3を宛先とする次の同期パケットを送信する(S103)。」と記載されている。そして、願書に添付した図2からは、同期用無線装置14-1?14-3が情報要求パケットを送信する情報要求送信時刻t21?t23の後の時刻t4において次の同期パケットが同期用無線装置14-1?14-3を宛先として送信されること、情報要求パケットの送信時刻を表す時刻t21?t23と同期パケットの送信時刻を表す時刻t4は、それぞれ、前後関係にあるパケット送受信処理であることが見て取れ、上記cでも述べたとおり、パケット送受信処理を実行するのは制御部56である。
そうすると、「前記制御部」は、「先の送受信処理で各情報要求パケットを送信する処理の次に、次の送受信処理における同期パケットを受信する処理を実行」するものであること、は明らかである。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項2は特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項3は、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項3は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上の特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

オ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的について
訂正事項4のうち、訂正事項4aは、訂正前の請求項4を引用する訂正前の請求項6を独立形式請求項に改めて請求項7とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項4bについては、
a 訂正前の請求項4を引用する訂正前の請求項6の発明特定事項である「基地局」及び「タイミングを規定する同期パケット」について、「前記基地局は、タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信」することを特定するものであり、
b 訂正前の請求項4を引用する訂正前の請求項6の発明特定事項である「同期パケト受信処理」において受信される「タイミングを規定する同期パケット」の数について、「1つ」であることを特定するものであり、
c 訂正前の請求項4を引用する訂正前の請求項6の発明特定事項である「要求送信処理」について「前記同期パケット」が「前記同期パケット受信処理」によって受信されるものであることを特定するものであり、
d 訂正前の請求項4を引用する訂正前の請求項6の発明特定事項である「制御部」が「先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行」することを特定するものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に揚げる特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
a 願書に添付した明細書の段落0085には「図8には同期用無線装置14のハードウエアの例が示されている。同期用無線装置14は、制御部56、ローカル時計57、インターフェース58、および無線部60を備える。インターフェース58には、上述の無線LANノード、情報端末等の情報処理装置が接続される。ローカル時計57は、インターフェース58に接続された情報処理装置の動作タイミングを規定する時刻を発し、制御部56に出力する。」と記載されている。また、願書に添付した図8からは、同期用無線装置の各部の接続構成を読み取ることでき、該段落0085及び図8の記載からは制御部や無線部が同期用無線装置の外にあるものとして解釈した場合、そのための通信を行うための部位を備えていないことから、制御部や無線部は同期用無線装置に含まれているものであることは明らかである。
b 願書に添付した明細書の段落0023には「図2には、通信システムで実行される繰り返し同期処理のシーケンスチャートが示されている。繰り返し同期処理は、基地局10が所定の送信周期STで各同期用無線装置に同期パケットを繰り返し送信し、同期パケットを受信した各同期用無線装置が、情報要求パケットを基地局10に送信する処理である。」と記載されている。
そして、上記記載及び図2からは、同期パケットが同期用無線装置に同報パケットとして同報送信されていることが見て取れるから、「同期パケット」は「タイミングを規定する同期パケット」であり、「同期パケット」は繰り返し送信されるのであるから「所定の周期で繰り返し送信」するものであるといえる。
そうすると、これらの記載から、「基地局」は「タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信」するものであることは、明らかである。
c 願書に添付した明細書の段落0024には「基地局10は、時刻t0に同期用無線装置14-114-3を宛先とする同期パケットを送信する(S101)。同期パケットは、同期処理を実行するタイミングを規定するために各同期用無線装置に送信するパケットである。同期パケットを送信する際に、基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3に対して共通に割り当てられた同報アドレスを同期パケットに含ませる。また、基地局10は、直前のパケット送受信処理に応じて求めた情報を同期パケットに含ませる。」と記載されている。そして、上記記載及び図2からは、基地局は、同期用無線装置14-1?14-3を宛先とする同期パケットを「1つ」送信するものであることが見て取れるから、「タイミングを規定する同期パケット」は「1つの同期パケット」であるといえる。
そうすると、これらの記載より、「タイミングを規定する同期パケット」は「1つの同期パケット」であるといえる。
d 願書に添付した明細書の段落0087には「制御部56は、無線部60と共にパケット送受信処理を実行する。」と記載され、願書に添付し明細書の段落0088には「パケット送受信処理は、例えば、(1)基地局10から送信され、タイミングを規定する同期パケットを受信する同期パケット受信処理、・・・を含む。」と記載されている。
そうすると、これらの記載より、受信される「前記同期パケット」が「前記同期パケット受信処理」によって受信されるものであり、「前記同期パケット受信処理」を実行するには「制御部」であることは明らかである。
e 願書に添付した明細書の段落0026には、「各同期用無線装置は、同期パケットを受信してから所定の応答遅延時間が経過した時に、情報要求パケットを送信する(S102)。図2に示されている例では、同期用無線装置14-1?14-3に対し、それぞれ、応答遅延時間d1?d3が定められている。情報要求パケットを送信する際に、各同期用無線装置は、情報要求パケットを送信する情報要求送信時刻を、各自が備えるローカル時計によって求め、情報要求送信時刻を記憶する。すなわち、同期用無線装置14-1?14-3は、それぞれ、情報要求送信時刻t21?t23を記憶する。」と記載されている。また、願書に添付した明細書の段落0030には、「基地局10が同期パケットを送信してから送信周期STが経過した時刻t4に、基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3を宛先とする次の同期パケットを送信する(S103)。」と記載されている。そして、願書に添付した図2からは、同期用無線装置14-1?14-3が情報要求パケットを送信する情報要求送信時刻t21?t23の後の時刻t4において次の同期パケットが同期用無線装置14-1?14-3を宛先として送信されること、情報要求パケットの送信時刻を表す時刻t21?t23と同期パケットの送信時刻を表す時刻t4は、それぞれ、前後関係にあるパケット送受信処理であることが見て取れ、上記cでも述べたとおり、パケット送受信処理を実行するのは制御部56である。
そうすると、「前記制御部」は、「先の送受信処理で各情報要求パケットを送信する処理の次に、次の送受信処理における同期パケットを受信する処理を実行」するものであること、は明らかである。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否かについて
上記(ア)に示したとおり、訂正事項4は特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

カ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的について
訂正事項5は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項5は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正を目的としているものであるから、上記訂正事項1と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否か等について
上記(ア)に示したとおり、訂正事項5は上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上の特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。

キ 訂正事項6について
(ア)訂正の目的について
訂正事項6は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項6は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正を目的としているものであるから、上記訂正事項2と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否か等について
上記(ア)に示したとおり、訂正事項6は上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、上記訂正事項2と同様に、実質上の特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。

ク 訂正事項7について
(ア)訂正の目的について
訂正事項7は、上記訂正事項4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項7は、上記訂正事項4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正を目的としているものであるから、上記訂正事項4と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか否か等について
上記(ア)に示したとおり、訂正事項7は上記訂正事項4及び訂正事項5に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上の特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に揚げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。なお、訂正前の全ての請求項に対して特許異議の申立てがなされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
よって、訂正後の請求項〔1-3、8〕〔4-7〕について訂正を認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし8に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、
前記制御部は、
タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット送信処理と、
前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理と、
を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、
先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを送信する処理を実行し、
前記要求受信処理は、
前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行し、
先の前記送受信処理で前記同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻とを、次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする基地局。
【請求項2】
複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、
前記制御部は、
タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット送信処理と、
前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理と、
を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、
先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを送信する処理を実行し、
前記要求受信処理は、
前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行し、
先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻と、次の前記送受信処理で前記同期パケットが送信される時刻を示す同期パケット送信時刻とを、当該次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする基地局。
【請求項3】
請求項2に記載の基地局において、
前記送受信処理は、
複数の前記無線装置のうち少なくとも1つについて前記情報要求パケットを受信しなかった場合に、前記同期パケットを再送する再送処理と、
再送された前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各前記情報要求パケットを受信する再受信処理と、
を含むことを特徴とする基地局。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
基地局との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、
前記基地局は、タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信し、
前記制御部は、
前記基地局から送信され、タイミングを規定する1つの前記同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、
前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理と、
を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、
先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行し、
前記同期パケットは、
前記同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、
先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、
前記同期パケット受信処理は、
前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、
前記要求送信処理は、
前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求めることを特徴とする無線装置。
【請求項6】
請求項5に記載の無線装置を複数備え、
複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
基地局との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を含む無線装置を複数備え、
前記基地局は、タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信し、
前記制御部は、
前記基地局から送信され、タイミングを規定する1つの前記同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、
前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理と、
を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、
先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行し、
前記同期パケットは、
先の前記送受信処理で前記基地局が前記同期パケットを送信した時刻を示す同期パケット送信時刻と、
先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、
前記同期パケット受信処理は、
前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、
前記要求送信処理は、
前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求め、
複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項1に記載の基地局において、
前記送受信処理は、
複数の前記無線装置のうち少なくとも1つについて前記情報要求パケットを受信しなかった場合に、前記同期パケットを再送する再送処理と、
再送された前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各前記情報要求パケットを受信する再受信処理と、
を含むことを特徴とする基地局。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1-3、5-8(令和2年1月24日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載の請求項1-3、5-8)に係る特許に対して、当審が令和2年7月15日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された技術事項及び引用文献3に記載された技術事項に基づいて、
請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された技術事項、引用文献3に記載された技術事項及び引用文献4に記載された技術事項に基づいて、
請求項3に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された技術事項、引用文献3に記載された技術事項、引用文献4に記載された技術事項及び引用文献5に記載された技術事項に基づいて、
請求項5に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された技術事項、引用文献3に記載された技術事項及び引用文献4に記載された技術的事項に基づいて、
請求項6に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された技術事項、引用文献3に記載された技術事項及び引用文献4に記載された技術事項に基づいて、
請求項7に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された技術事項、及び引用文献3に記載された技術事項に基づいて、
請求項8に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された技術事項、引用文献3に記載された技術事項及び引用文献5に記載された技術事項に基づいて、
当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1-3、5-8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。


引用文献1:米国特許出願公開第2011/0002251号明細書(特許異議申立人が提出した第1号証)
引用文献3:特開2013-135315号公報(特許異議申立人が提出した第3号証)
引用文献4:特開2011-223419号公報(特許異議申立人が提出した第4号証)
引用文献5:特開2016-1808号公報(特許異議申立人が提出した第5号証)

2.引用文献の記載
(1)引用文献1(米国特許出願公開第2011/0002251号明細書)
引用文献1には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

ア 「(前略)
[0023] Also, according to the present invention, it is possible to provide a low power routing function in a mesh network environment without correction of an Institute of Electrical and Electronics Engineers (IEEE) 802.15.4 physical (PHY)/Media Access Control (MAC) layer.」
(中略)
[0080] FIG. 4 is a block diagram illustrating an apparatus 400 for performing time synchronization and low power routing in a wireless sensor network according to an embodiment of the present invention.
[0081] The apparatus 400 for performing time synchronization and low power routing denotes a device that constitutes a node in the wireless sensor network. Therefore, depending on embodiments, the apparatus 400 may be a parent node or a child node. Also, the apparatus 400 may be any one of a source node to transmit data, a relay node to relay the data, and a destination node of the data.
[0082] Referring to FIG. 4, the apparatus 400 includes a time synchronization and low power routing unit 401 and a transceiver 403.
(中略)
[0085]
The synchronization packet may include any one of a first synchronization request command packet for informing about time synchronization information of the synchronization region, a second synchronization request command packet that has transmission time information of the first synchronization request command packet, a synchronization reply packet corresponding to the second synchronization request command packet, and a synchronization reply packet for error synchronization restoration.
(中略)
[0093] The transceiver 403 may transmit and receive data, the synchronization packet, and the reservation packet according to a control of an upper layer block (not shown).
(中略)
[0097] FIG. 5 illustrates an example of nodes performing time synchronization in a wireless sensor network according to an embodiment of the present invention.
[0098] In FIG. 5, node A 501 is a parent node, and node B 503, node C 505, and node D 507 correspond to child nodes of the node A 501.
[0099] According to a principle of performing time synchronization in the wireless sensor network, the child nodes 503, 505, and 507 sequentially receives two synchronization request command packets from the parent node 501, and matches synchronization of the parent node 501 using a difference between a transmission time of first synchronization request command packet and a reception time of second synchronization request command packet.
[0100]
Accordingly, the child nodes 503, 505, and 507 receive the first synchronization request command packet from the parent node 501 that manages time synchronization for a predetermined synchronization region, receive, from the parent node 501, the second synchronization request command packet that has a transmission timestamp value of the first synchronization request command packet, and perform time synchronization based on the reception time of the first synchronization request command packet, the reception time of the second synchronization request command packet, and the transmission timestamp value of the first synchronization request command packet.
(中略)
[0127] In a first embodiment, a child node is synchronized with a time of a parent node through a message exchange between the parent node and the child node.
[0128] Specifically, according to the first embodiment, time synchronization of the network may be performed based on two synchronization request messages that are transmitted at different point in times from the parent node and transmission time information of the two synchronization request messages.
[0129] The first embodiment may be arranged as follows:
[0130] 1) Parent node A unicasts a first synchronization request message to particular child node B in time T1.
[0131] 2) The child node B receives the first synchronization request message in time T2.
[0132] 3) The child node B transmits a synchronization reply message corresponding to the first synchronization request message to the parent node A in time T3.
[0133] 4) The parent node A receives the synchronization reply message from the child node B in time T4.
[0134] 5) When the synchronization reply message is received from the child node B, the parent node A transmits, to the child node B, a second synchronization request message that includes time information associated with T1 and T4.
[0135] 6) When the second synchronization request message is received, the child node B performs synchronization using a difference value between T1 and T2, and a difference value between T3 and T4.
[0136] In a second embodiment, the parent node A broadcasts the first synchronization request message in time TA1.
[0137] The second embodiment may be arranged as follows:
[0138] 1) The parent node A broadcasts a first synchronization request message in time TA1.
[0139] 2) Child nodes B, C, and D receive the first synchronization request message in time TB2, TC2, and TD2, respectively.
[0140] 3) The child nodes B, C, and D transmit a synchronization reply message corresponding to the first synchronization request message to the parent node A in time TB3, TC3, and TD3, respectively.
[0141] 4) The parent node A receives the synchronization reply message from the child node B in time TA4-TB3, receives the synchronization reply message from the child node C in time TA4-TC3, and receives the synchronization reply message from the child node D in time TA4-TD3.
[0142] 5) When the synchronization reply message is received from each of the child nodes B, C, and D, the parent node A broadcasts a second synchronization request message including time information associated with TA1, TA4-TB3, TA4-TC3, and TA4-TD3.
[0143] 6) When the second synchronization request message is received, the child nodes B, C, and D perform synchronization based on a difference value between TA1 and TA4-TB3, a difference value between TA1 and TA4-TC3, and a difference value between TA1 and TA4-TD3.」

(当審訳:(前略)
[0023]
また、本発明によれば、電気電子学会(IEEE)802.15.4(PHY)/メディアアクセス制御(MAC)層の修正なしにメッシュネットワーク環境で低電力ルーティング機能を提供することが可能である。
(中略)
[0080]
図4は、本発明の一実施形態による、無線センサネットワークにおいて時間同期及び低電力ルーティングを実行するための装置400を示すブロック図である。
[0081]
時間同期及び低電力ルーティングを実行するための装置400は、無線センサーネットワーク内のノードを構成するデバイスを示す。したがって、実施形態に応じて、装置400は親ノードまたは子ノードであり得る。また、装置400は、データを送信するソースノード、データを中継する中継ノード、およびデータの宛先ノードのいずれか1つであり得る。
[0082]
図4を参照すると、装置400は、時間同期および低電力ルーティングユニット401およびトランシーバ403を含む。
(中略)
[0085]
同期パケットは、同期領域の時間同期情報を通知するための第1の同期要求コマンドパケットと、第1の同期要求コマンドパケットの送信時間情報を有する第2の同期要求コマンドパケットと、第2の同期要求コマンドパケットに対応する同期応答パケットと、エラー同期復元のための同期応答パケットとのうち、いずれか1つを含んでいてもよい。
(中略)
[0093]
トランシーバ403は、上位層ブロック(図示せず)の制御に従って、データ、同期パケット、および予約パケットを送受信することができる。
(中略)
[0097]
図5は、本発明の実施形態による無線センサネットワークにおいて時間同期を実行するノードの例を示す。
[0098]
図5において、ノードA501は親ノードであり、ノードB503、ノードC505、およびノードD507は、ノードA501の子ノードに対応する。
[0099]
無線センサネットワークで時間同期を実行する原理によれば、子ノード503、505、および507は、親ノード501から2つの同期要求コマンドパケットを順次受信する。そして、第1の同期要求コマンドパケットの送信時間と第2の同期要求コマンドパケットの受信時間との差を使用して、親ノード501の同期を一致させる。
[0100]
したがって、子ノード503、505、507は、所定の同期領域の時間同期を管理する親ノード501から第1の同期要求コマンドパケットを受信し、親ノード501から第1の同期要求コマンドパケットの送信タイムスタンプ値を有する第2の同期要求コマンドパケットを受信し、第1の同期要求コマンドパケットの受信時刻、第2の同期要求コマンドパケットの受信時刻、及び第1の同期要求コマンドパケットの送信タイムスタンプ値に基づいて時刻同期を実行する。
(中略)
[0127]
第1の実施形態では、子ノードは、親ノードと子ノードとの間のメッセージ交換を通じて親ノードの時間と同期される。
[0128]
具体的には、第1実施形態によれば、親ノードから異なる時点で送信される2つの同期要求メッセージと、2つの同期要求メッセージの送信時間情報とに基づいて、ネットワークの時間同期を行うことができる。
[0129]
第1の実施形態は、次のように構成することができる。
[0130]
1)親ノードAは、時間T1に特定の子ノードBに第1の同期要求メッセージをユニキャストする。
[0131]
2)子ノードBは、時間T2で第1の同期要求メッセージを受信する。
[0132]
3)子ノードBは、時間T3において、第1の同期要求メッセージに対応する同期応答メッセージを親ノードAに送信する。
[0133]
4)親ノードAは、時間T4で子ノードBから同期応答メッセージを受信する。
[0134]
5)同期応答メッセージが子ノードBから受信されると、親ノードAは、T1およびT4に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを子ノードBに送信する。
[0135]
6)第2の同期要求メッセージが受信されると、子ノードBは、T1とT2の差の値、およびT3とT4の差の値を使用して同期を実行する。
[0136]
第2の実施形態では、親ノードAは、時間TA1で第1の同期要求メッセージをブロードキャストする。
[0137]
第2の実施形態は、以下のように構成され得る。
[0138]
1)親ノードAは、時間TA1で第1の同期要求メッセージをブロードキャストする。
[0139]
2)子ノードB、C、およびDは、それぞれ時間TB2、TC2、およびTD2で第1の同期要求メッセージを受信する。
[0140]
3)子ノードB、C、およびDは、それぞれ、時間TB3、TC3、およびTD3において、第1の同期要求メッセージに対応する同期応答メッセージを親ノードAに送信する。
[0141]
4)親ノードAは、時間TA4-TB3で子ノードBから同期応答メッセージを受信し、時間TA4-TC3で子ノードCから同期応答メッセージを受信し、時間TA4-TD3で子ノードDから同期応答メッセージを受信する。
[0142]
5)同期応答メッセージが子ノードB、C、およびDのそれぞれから受信されると、親ノードAは、TA1、TA4-TB3、TA4-TC3、およびTA4-TD3に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージをブロードキャストする。
[0143]
6)第2の同期要求メッセージを受信すると、子ノードB、C、およびDは、TA1とTA4-TB3の差分値、TA1とTA4-TC3の差分値、TA1およびTA4-TD3の差分値に基づいて同期を実行する。
(後略)
)

上記段落[0080]によれば、装置400は「無線センサネットワークにおいて時間同期を実行するための装置400」といえ、上記段落[0081]の「装置400は親ノードまたは子ノードであり得る。」との記載によれば、親ノードである装置400があるといえ、上記段落[0082]によれば、「装置400は、時間同期および低電力ルーティングユニット401およびトランシーバ403を含む」ものといえ、段落[0093]によれば、「トランシーバ403は、上位層ブロックの制御に従って、データ、同期パケット、及び予約パケットを送受信することができる」といえ、段落[0138]によれば、「親ノードAは、時間TA1で第1の同期要求メッセージをブロードキャストする」といえ、段落[0141]によれば、「親ノードAは、時間TA4-TB3で子ノードBから同期応答メッセージを受信し、時間TA4-TC3で子ノードCから同期応答メッセージを受信し、時間TA4-TD3で子ノードDから同期応答メッセージを受信する」といえ、段落[0142]によれば、「同期応答メッセージが子ノードB、CおよびDのそれぞれから受信されると、親ノードAは、TA1、TA4-TB3、TA4-TC3、およびTA4-TD3に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージをブロードキャストする」といえる。

したがって、親ノードAに着目して以上を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1-1」という。)が記載されていると認められる。

「無線センサネットワークにおいて時間同期を実行するための親ノードAであって、
前記親ノードAは、時間同期および低電力ルーティングユニット401およびトランシーバ403を含むものであり、トランシーバ403は、上位層ブロックの制御に従って、データ、同期パケット、および予約パケットを送受信するものにおいて、
前記親ノードAは、時間TA1に第1の同期要求メッセージをブロードキャストし、
前記親ノードAは、時間TA4-TB3で子ノードBから同期応答メッセージを受信し、時間TA4-TC3で子ノードCから同期応答メッセージを受信し、時間TA4-TD3で子ノードDから同期応答メッセージを受信し、
前記同期応答メッセージが子ノードから受信されると、前記親ノードAは、TA1、TA4-TB3、TA4-TC3、およびTA4-TD3に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを子ノードにブロードキャストする、親ノードA。」

また、上記段落[0080]によれば、装置400は「無線センサネットワークにおいて時間同期を実行するための装置400」といえ、上記段落[0081]の「装置400は親ノードまたは子ノードであり得る。」との記載によれば、子ノードである装置400があるといえ、上記段落[0082]によれば、「装置400は、時間同期および低電力ルーティングユニット401およびトランシーバ403を含む」ものといえ、段落[0093]によれば、「トランシーバ403は、上位層ブロックの制御に従って、データ、同期パケット、及び予約パケットを送受信することができる」といえ、上記段落[0127]によれば、「子ノードは、親ノードと子ノードとの間のメッセージ交換を通じて親ノードの時間と同期される」といえ、上記段落[0130]によれば、「親ノードAは、時間T1に特定の子ノードBに第1の同期要求メッセージをユニキャストする」といえ、段落[0131]によれば、「子ノードBは、時間T2で第1の同期要求メッセージを受信する」といえ、段落[0132]によれば、「子ノードBは、時間T3において、第1の同期要求メッセージに対応する同期応答メッセージを前記親ノードAに送信する」といえ、段落[0133]によれば、「親ノードAは、時間T4で子ノードBから同期応答メッセージを受信する」といえ、段落[0134]によれば、「同期応答メッセージが子ノードBから受信されると、親ノードAは、T1およびT4に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを子ノードBに送信する」といえ、段落[0135]によれば、「第2の同期要求メッセージが受信されると、子ノードBは、T1とT2の差の値、およびT3とT4の差の値を使用して同期を実行する」といえる。

したがって、子ノードBに着目して、以上を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1-2」という。)が記載されていると認められる。

「 無線センサネットワークにおいて時間同期を実行するための子ノードBであって、
子ノードは、親ノードと子ノードとの間のメッセージ交換を通じて親ノードの時間と同期されるものであり、
前記子ノードBは、時間同期および低電力ルーティングユニット401およびトランシーバ403を含むものであり、トランシーバ403は、上位層ブロックの制御に従って、データ、同期パケット、および予約パケットを送受信するものにおいて、
前記子ノードBは、親ノードAが、時間T1にユニキャストした第1の同期要求メッセージを、時間T2で受信し、
前記子ノードBは、時間T3において、第1の同期要求メッセージに対応する同期応答メッセージを前記親ノードAに送信し、
前記同期応答メッセージが時刻T4で前記子ノードBから受信されると前記親ノードAから送信される、T1およびT4に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを前記子ノードBは受信し、
前記第2の同期要求メッセージが受信されると、前記子ノードBは、T1とT2の差の値、およびT3とT4の差の値を使用して同期を実行する、子ノードB。」

(2)引用文献3(特開2013-135315号公報)
引用文献3には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

ア 「【0051】
図3は、本発明の実施形態のIEEE1588プロトコルにおける時刻同期の処理を示すシーケンス図である。
【0052】
図3は、Master装置8とSlave装置9との間のIEEE1588プロトコルによる時刻同期処理、及び、Master機能を有する装置とSlave機能を有する装置との間のPTPメッセージ送信の時間間隔を示す。
【0053】
伝送路によって接続されたMaster装置8とSlave装置9との間でデータを送受信する場合、一方の装置から送信されたデータは、Master装置8とSlave装置9との間の伝送距離に従って遅延して相手装置に到達する。ここで発生するデータの遅延時間を、伝送路遅延と記載する。
【0054】
時刻情報を含むデータをMaster装置8が送信した場合、Slave装置9は、送信されたデータを処理するために伝送路遅延分の遅れを考慮する必要がある。IEEE1588は、Master装置8とSlave装置9との間の時刻のずれと伝送路遅延とを検出し、検出された時刻のずれと伝送路遅延とを用いて時刻を補正する方法を提案している。
【0055】
図3に示すMaster装置8は、IEEE1588プロトコルに従ってPTPメッセージ送信間隔14ごとにPTPメッセージを送信する。ここで、PTPメッセージ送信間隔14は、Master装置8があらかじめ保持する時間間隔である。
【0056】
Master装置8は、PTPメッセージ送信間隔14の時間の長さを示す情報を含むPTPメッセージをSlave装置9に送信する。Slave装置9は、受信したPTPメッセージの内容と、受信したPTPメッセージに含まれるPTPメッセージ送信間隔14とに従って、PTPメッセージを生成する。そして、生成されたPTPメッセージをMaster装置8に送信する。
【0057】
Master装置8は、IEEE1588プロトコルを起動するタイミングにおいて、IEEE1588プロトコルを起動する時刻を時刻情報t1として、Master装置8
に備わるメモリに格納する。そして、Master装置8は、時刻情報t1を含むSyncメッセージ11を生成し、生成されたSyncメッセージ11をSlave装置9へ送信する。
【0058】
なお、Syncメッセージ11は、PTPメッセージである。
【0059】
Slave装置9は、Syncメッセージ11を受信した場合、Syncメッセージ11を受信した時刻を時刻情報t2として、Slave装置9に備わるメモリに格納する。これによって、Slave装置9は、Syncメッセージ11から時刻情報t1を取得し、Syncメッセージ11を受信した時刻を示す時刻情報t2を取得する。
【0060】
Slave装置9は、時刻情報t1と時刻情報t2との間の差を算出する。これによって、Master装置8における時刻とSlave装置9における時刻とのずれ、及び、伝送路遅延の和の時間を算出することができる。なお、ここで算出される時刻のずれと伝送路遅延との和は、Master装置8からSlave装置9への方向の伝送路遅延に対応する。
【0061】
Syncメッセージ11を受信した後、Slave装置9は、Delay_Reqメッセージ12を生成し、生成されたDelay_Reqメッセージ12をMaster装置8へ送信する。Delay_Reqメッセージ12を送信する際、Slave装置9は、Delay_Reqメッセージ12を送信する時刻を時刻情報t3として、Slave装置9が備えるメモリに格納する。
【0062】
なお、Delay_Reqメッセージ12は、PTPメッセージである。
【0063】
Master装置8は、Delay_Reqメッセージ12を受信した場合、Delay_Reqメッセージ12を受信した時刻を時刻情報t4として含むDelay_Respメッセージ13を生成する。そして、生成されたDelay_Respメッセージ13をSlave装置9に送信する。
【0064】
なお、Delay_Respメッセージ13は、PTPメッセージである。
【0065】
Slave装置9は、Delay_Reqメッセージ12を送信した時刻を示す時刻情報t3を取得する。そして、Slave装置9は、Delay_Respメッセージ13を受信した場合、Master装置8がDelay_Reqメッセージ12を受信した時刻を示す時刻情報t4を取得する。
【0066】
Slave装置9は、時刻情報t3と時刻情報t4との間の差を算出することによって、Master装置8における時刻とSlave装置9における時刻とのずれ、及び、伝送路遅延の和の時間を算出することができる。なお、ここで算出される時刻のずれと伝送路遅延との和は、Slave装置9からMaster装置8への方向の伝送路遅延に対応する。
【0067】
また、時刻情報t3及び時刻情報t4の差と、時刻情報t1及び時刻情報t2の差との和は、伝送路遅延の二倍の時間に相当する。また、時刻情報t3及び時刻情報t4の差と、時刻情報t1及び時刻情報t2の差との差は、Master装置8における時刻とSlave装置9における時刻とのずれの二倍の時間に相当する。
【0068】
IEEE1588プロトコルによる遅延算出方法は、Master装置8からSlave装置9への方向、及び、Slave装置9からMaster装置8への方向の両方向の
伝送路遅延が同じであると仮定し、片方向の伝送路遅延を算出することによって時刻同期を実現する方法である。
【0069】
すなわち、Slave装置9は、伝送路遅延を式(1)によって、Master装置8とSlave装置9との間の時間差(時刻のずれ)を式(2)に求めることができる。
【0070】
{(t2-t1)+(t4-t3)}/2=伝送路遅延 (1)
{(t2-t1)-(t4-t3)}/2=Master装置8とSlave装置9との間の時間差 (2)
Slave装置9は、式(1)及び式(2)によって求められる、Master装置8における時刻とSlave装置9における時刻との間の伝送路遅延と、Master装置8とSlave装置9との間の時間差とを用いて、Slave装置9における時刻をMaster装置8における時刻に従属して動作することができる。
【0071】
図4は、本発明の実施形態の上位NW装置1と運用系OSU20との間のPTPメッセージ、及び、上位NW装置1と待機系OSU21との間のPTPメッセージを示すシーケンス図である。
【0072】
図4に示す上位NW装置1及び運用系OSU20は、運用系PTPメッセージ送信間隔15によって、時刻同期を行う。具体的には、上位NW装置1及び運用系OSU20は、図3に示すSyncメッセージ11、Delay_Reqメッセージ12、及び、Delay_Respメッセージ13を、運用系PTPメッセージ送信間隔15において送受信する。
【0073】
さらに、図4に示す上位NW装置1及び待機系OSU21は、待機系PTPメッセージ送信間隔16によって、時刻同期を行う。具体的には、上位NW装置1及び待機系OSU21は、図3に示すSyncメッセージ11、Delay_Reqメッセージ12、及び、Delay_Respメッセージ13を、待機系PTPメッセージ送信間隔16によって送受信する。
【0074】
本実施形態における運用系PTPメッセージ送信間隔15は、待機系PTPメッセージ送信間隔16より長い時間間隔である。なお、図4に示す白丸は、PTPメッセージを生成した装置を示し、黒丸は、PTPメッセージを受信した装置を示す。」

イ 「




ウ 「



上記アに記載の段落【0052】には、「Master装置8とSlave装置9との間のIEEE1588プロトコルによる時刻同期処理」を行うこと、及び「Master機能を有する装置とSlave機能を有する装置との間のPTPメッセージ送信の時間間隔が示」されている。そして、上記イの図3、上記ウの図4の記載を総合する時刻同期処理は、PTPメッセージ送信間隔ごとに繰り返されることが見て取れる、すなわち、時刻同期処理は、時間間隔ごとに繰り返されるものが記載されていると認められる。
よって、引用文献3には、
「時刻同期処理が、時間間隔ごとに繰り返し行われる。」
という技術事項が記載されている。

(3)引用文献4(特開2011-223419号公報)
引用文献4には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

ア 「【0020】
図3は、同期動作を説明するための図である。同期処理は、NTP(Network Time Protocol)等で使用されている同期シーケンスを使用して実行される。たとえば、同期処理前は、タイムマスタ(例:GW12)とスレーブ(例:端末1)は、独立の時計で動いている。この状態で、スレーブが、スレーブの送信時刻(T1)を設定した時刻同期要求信号を送出する。時刻同期要求信号を受信したタイムマスタは、時刻同期要求信号の受信時刻(T2)と時刻同期応答の送信時間(T3)を設定した時刻同期応答信号を返送する。時刻同期応答信号を受信したスレーブは、時刻同期応答信号の受信時刻(T4)を設定する。ここで、上り/下り伝送時間が等しいと仮定すると、伝送時間dは「d=((T4-T1)-(T3-T2))/2」となり、タイムマスタとスレーブの時刻差Toffsetは「Toffset=T4-T3-d」となるので、スレーブは、Toffset分だけ自局の時計を修正し、タイムマスタの時計に同期させる。なお、時刻同期要求信号、時刻同期応答信号は、遅延時間の測定に使用するため、無線MACレイヤでの再送が発生すると誤差が大きくなる。そのため、これらの信号は、再送制御の発生しないマルチキャストパケットを使用して送信する。また、図2記載の周辺端末探索および周辺端末情報に、時刻同期の情報を載せて、周辺端末探索処理と同期処理とを同時に実行することとしてもよい。」

イ「




上記アの記載の段落【0020】には、「時刻同期要求信号を受信したタイムマスタは、時刻同期要求信号の受信時刻(T2)と時刻同期応答の送信時間(T3)を設定した時刻同期応答信号を返送する。」ものが記載されており、図3の記載も総合すると、引用文献4には、
「時刻同期処理において、時刻同期のための信号の受信時刻と今から送信される時刻同期のための信号の送信時間を両方設定した時刻同期のための信号を送信する。」
という技術事項が記載されている。

(4)引用文献5(特開2016-1808号公報)
引用文献5には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

ア 「【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、移動体制御部と移動体通信装置の間に通信障害等の発生時には、このような障害を検知し、同期時刻を補正して正確に保つことができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
(中略)
【0013】
前述したように、従来の各機器間の時刻同期は、同期元機器からの信号に基づき、クロックの補正等を行っているが、同期信号自体に誤差が生じる事については考慮されていない。
しかし、有線/無線に関わらず、通信は外部及び内部的要因により通信誤りを生じることがあり、通信誤りを完全に抑制することは不可能である。例えば、移動体制御部-移動体通信装置間通信路(1-6)における通信障害等の発生等により、通信誤りが発生することはありえるのである。
(中略)
【0017】
以上の点を、個々の動作毎に、図1に則して説明する。
移動体通信装置(1-7)は地上通信装置(1-16)と通信が行われた場合、メッセージと共にメッセージの受信時刻を移動体制御部(1-2)へ伝送する。
続いて、移動体制御部(1-2)は、通信部(1-3)使用し、伝送路(1-6)を介しシステム時刻を移動体通信装置(1-7)へ送信する。また、前記通信は、冗長性確保のため、再送制御部(1-4)、(1-9)により再送制御を行う。
再送制御は、例えばStop-and-wait ARQ方式などが用いられる。Stop-and-wait ARQ方式は、メッセージ中にCRCなどの誤り検定が可能な手段を組み込み、受信側でメッセージを受信時、メッセージに誤りが無ければ肯定応答(ACK)を、誤りがあれば否定応答(NACK)を返信する。送信側は、メッセージ送信後に肯定応答(ACK)を受信すれば通信成功とみなし、否定応答(NACK)を受信した場合には、通信失敗とみなし再度メッセージの送信(再送)を行う。
【0018】
また、送信側は送信時より時間をカウントし一定時間までに、肯定応答(ACK)及び否定応答(NACK)双方とも受信できなかった場合、メッセージ送信失敗と判断し再送を行う。送信機器または受信機器が故障している場合、永続的に再送が行われないように、1つのメッセージに対しての再送回数の上限が、通信路の環境を鑑みて決められている。
本実施例のような有線通信の場合、再送回数の上限は1回が一般的であり、送信側で2回目のタイムアウトまたはNACKを受信した場合は、故障と判断しシステムを停止する。
また、移動体制御部(1-2)の通信部(1-3)は、移動体通信装置(1-7)からのメッセージを受信作業も行い、本通信に関しても再送制御部(1-4)、(1-9)により前記と同様の再送制御が行われる。
(中略)
【0023】
次に図4?図6のタイムチャートを使用し、本発明を適応した場合、再送の有無によって、移動体制御部と移動体通信装置との同期がどのように取られるのかを、T_(C、N)、T_(R、N)、T_(G、N)の関係により説明する。
図4は、再送が発生しなかった場合のタイムチャートであり、図3のステップ(3-6)の判定では通信は全てステップ(3-7)側へ分岐し、システム時刻と内部タイマの同期も取れており問題なく地上通信装置検知時刻を算出できる。
図5では、T_(c、1)を送信している2回目の通信にて再送が発生している。この場合、二回目の通信時、内部タイマの差ΔT_(R、N)が、システム時刻の差ΔT_(C、N)より再送遅延T_(D)分だけ大きくなる。そのため、図3のステップ(3-6)の判定ではステップ(3-8)側へ分岐し補正が掛かる。(後略)」

上記アの記載の段落【0007】、【0023】によれば、引用文献5は「時刻同期」を行うことについて記載されており、その時刻同期を行う際に、段落【0017】にあるように、「受信側でメッセージを受信時、メッセージに誤りが無ければ肯定応答(ACK)を、誤りがあれば否定応答(NACK)を返信する。送信側は、メッセージ送信後に肯定応答(ACK)を受信すれば通信成功とみなし、否定応答(NACK)を受信した場合には、通信失敗とみなし再度メッセージの送信(再送)を行う。」ものであるから、引用文献5には、
「時刻同期を行う際、メッセージに対する応答(肯定応答(ACK)及び否定応答(NACK))が受信できなかった場合、メッセージの再送を行う。」
という技術事項が記載されている。

3.当審の判断
(1)請求項1(本件発明1)について
本件発明1と引用発明1-1を対比する。
ア 引用発明1-1の親ノード及び子ノードは、無線センサネットワークにおいて同期要求メッセージ、同期応答メッセージの送受信を行うものであるから無線装置に含まれ、引用発明1-1の親ノードAは無線センサネットワークにおいて時間同期を実行するための装置であり、該親ノードAの「トランシーバ」は、データ、同期パケット等を親ノード及び子ノード間で送受信するものであるから、「無線装置との間でパケットを送受信する無線部」であるといえる。ここで、親ノードのトランシーバは、上位層ブロックの制御に従って、同期パケットを送受信するものであり、該送受信によって同期要求メッセージ、同期応答メッセージの送受信が行われることは自明であるから、親ノードAは、パケットを送受信することによって各メッセージを送受信するものであることは明らかである。そして親ノードAは第1の同期要求メッセージをブロードキャストし、第1の同期要求メッセージは子ノードB、子ノードC及び子ノードDにおいて受信されるのであるから、引用発明1-1の「トランシーバ」は、「複数の無線装置との間でパケットを送受信する」ものであるといえる。また、「トランシーバ」は「上位層ブロックの制御に従う」ものであるから、引用発明1-1の「上位層ブロック」は「無線を制御する制御部」であるといえる。そして、本件発明1と引用発明1-1は、いずれも、メッセージを同報パケットを用いて同報送信(ブロードキャスト)した時間及び自分以外の装置から受信した受信時刻を再度自分以外の装置に対して同報送信するものであるから、引用発明の親ノードは、本件発明1の「基地局」に相当するといえる。
そうすると、引用発明1-1の「無線センサネットワークにおいて時間同期を実行するための親ノードAあって、前記親ノードAは、時間同期および低電力ルーティングユニット401およびトランシーバ403を含むものであり、トランシーバ403は、上位層ブロックの制御に従って、データ、同期パケット、および予約パケットを送受信するもの」は、本件発明1と「複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局」に相当する。

イ 引用発明1-1の「同期要求メッセージ」は、親ノードと子ノードの間で時刻同期を行う際、当該「同期要求メッセージ」をブロードキャストすることにより時刻同期が行われるものであり、同期とはタイミングを揃えることであるから、「同期要求メッセージ」は同期処理を実行する「タイミング」を規定しているものであるといえる。また、親ノードと子ノードは、親ノードから送信される「同期要求メッセージ」及び「同期要求メッセージ」に応答し、子ノードから送信される「同期応答メッセージ」の受信が、親ノードの「上位層ブロック」の制御のもと「トランシーバ」によって処理されていることは明らかであり、親ノードは例えば子ノードBからの「同期応答メッセージ」を時間TA4-TB3で受信したことを「第2の同期要求メッセージ」で子ノードに対して送信するのであるから、「同期応答メッセージを受信した時刻を示す受信時刻を求める処理」が行われていること、及び当該処理が上位層ブロックで行われていることは明らかである。そして、「ブロードキャスト」とは「同報送信」を意味することは明らかであり、親ノードAは「時刻同期」のために、子ノードB-Dに対して「同期要求メッセージ」を同報送信し、子ノードB-Dから送信される「同期要求メッセージ」に対応する「同期応答メッセージ」を受信するものであるから、「同期要求メッセージ」は「時刻同期の要求を表す情報」、「同期応答メッセージ」は「時刻同期の要求に対する応答を表す情報」であるといえる。また、ブロードキャストとは、子ノードB-Dそれぞれ個別に送信されるものではなく、子ノードB-Dに対して同じブロードキャストが送信されるもの、すなわち子ノードB-Dに対して、1つのブロードキャストが送信されるものといえる。そして、親ノードAは、「同期要求メッセージ」を「同報送信」する送信処理、すなわち「タイミングを規定する時刻同期の要求を表す情報を各前記無線装置に同報送信する時刻同期の要求を表す情報送信処理」、及び各子ノードから「同期応答メッセージ」を受信する受信処理、すなわち「時刻同期の要求を表す情報に応答して各無線装置から送信された各時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信する受信処理」を行うのであるから、当該処理及び当該処理を行うための制御部を備えていることは自明である。そうすると、上記「同期応答メッセージを受信した時刻を示す受信時刻を求める処理」は「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求に対する応答受信時刻を求める処理」であるといえる。
一方、本件発明1においても、基地局は「タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット」を送信し、「前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケット」を受信し、当該送受信を行うことによって時刻の同期を行うものであるといえるから、本件発明1の「同期パケット」、「情報要求パケット」は、「時刻同期の要求を表す情報」、「時刻同期の要求に対する応答を表す情報」であるといえ、本件発明1の「同期パケット」、「情報要求パケット」は、引用発明1-1の「同期要求メッセージ」、「同期応答メッセージ」と、「時刻同期の要求」を表す情報、「時刻同期の要求に対する応答」を表す情報、であるという点で共通するといえるから、本件発明1の「タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット送信処理」、「同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理」、「情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理」は、「タイミングを規定する1つの時刻同期の要求を表す情報を各前記無線装置に同報送信する時刻同期の要求を表す情報送信処理」、「時刻同期の要求を表す情報に応答して各無線装置から送信された各時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信する要求受信処理」、「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求に対する応答受信時刻を求める処理」といえる。
そうすると、本件発明1の「前記制御部は、タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット送信処理と、前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に実行し、前記要求受信処理は、前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含む」ことと、引用発明1-1の「親ノードAは、時間TA1に第1の同期要求メッセージをブロードキャストし、前記親ノードAは、時間TA4-TB3で子ノードBから同期応答メッセージを受信し、時間TA4-TC3で子ノードCから同期応答メッセージを受信し、時間TA4-TD3で子ノードDから同期応答メッセージを受信」することは、「前記制御部は、タイミングを規定する1つの時刻同期の要求を表す情報を各前記無線装置に同報送信する時刻同期の要求を表す情報送信処理と、前記時刻同期を表す情報に応答して各前記無線装置から送信された各時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信する要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に実行し、前記要求受信処理は、前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求に対する応答受信時刻を求める処理を含」む点で共通する。

ウ 引用発明1-1の「第1の同報要求メッセージをブロードキャストし」た時間を表す「時間TA1」は、本件発明1と同様に「先の送受信処理で時刻同期の要求を表す情報が送信された時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻」といえる。また、引用発明1-1の「親ノード」が子ノードB、子ノードC、子ノードDから「同期応答メッセージを受信し」た時間である「時間TA4-TB3」、「時間TA4-TC3」、「時間TA4-TD3」は、本件発明1と同様に「先の送受信処理で各無線装置に対応して求められた時刻同期の要求に対する応答受信時刻」といえる。
そして、引用発明1-1の「第2の同期要求メッセージ」は、「第1の同報要求メッセージをブロードキャストし」た時間を表す「時間TA1」と「親ノード」が各「同期応答メッセージを受信し」た時間を含むませるものであるから、本件発明1と同様に「次の送受信処理で送信される時刻同期の要求を表す情報を含ませる」といえる。
そして、引用発明1-1は「TA1、TA4-TB3、TA4-TC3、およびTA4-TD3に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを子ノードにブロードキャストする」のであるから、「TA1、TA4-TB3、TA4-TC3、およびTA4-TD3に関連する時間情報を第2の同期要求メッセージに含ませる」処理が行われていること、当該処理を行うための制御部を備えていることは自明である。
そうすると、本件発明1の「前記制御部は、先の前記送受信処理で前記同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻とを、次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませる」ことと、引用発明1-1の「前記同期応答メッセージが子ノードから受信されると、前記親ノードは、TA1、TA4-TB3、TA4-TC3、およびTA4-TD3に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを子ノードにブロードキャストする」ことは、「前記制御部は、先の前記送受信処理で前記時刻同期の要求を表す情報が送信された時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻と、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記時刻同期の要求に対する応答受信時刻とを、次の前記送受信処理で送信される前記時刻同期の要求を表す情報に含ませる」点で共通する。

以上を総合すると、本件発明1と引用発明1-1とは、
「複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、
前記制御部は、
タイミングを規定する1つの時刻同期の要求を表す情報を各前記無線装置に同報送信する時刻同期の要求を表す情報送信処理と、
前記時刻同期の要求を表す情報に応答して各前記無線装置から送信された各時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信する要求受信処理と、
を含む送受信処理を前記無線部と共に実行し、
前記要求受信処理は、
前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求に対する応答受信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
先の前記送受信処理で前記時刻同期の要求を表す情報が送信された時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻と、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記時刻同期の要求に対する応答受信時刻とを、次の前記送受信処理で送信される前記時刻同期の要求を表す情報に含ませる、前記基地局。」

である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:「時刻同期の要求を表す情報」及び「時刻同期の要求に対する応答を表す情報」が、本件発明1においてはそれぞれ「パケット」であるのに対し、引用発明1-1においてはそれぞれ「メッセージ」である点。

相違点2:「制御部」は、本件発明1においては「先の前記送受信処理で各前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記時刻同期の要求を表す情報を送信する処理を実行」するのに対し、引用発明1-1において「制御部」は、「先の前記送受信処理で各前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記時刻同期の要求を表す情報を送信する処理を実行」することが特定されていない点。

相違点3:「時刻同期の要求を表す情報送信処理」と「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信する要求受信処理」を含む送受信処理が、本件発明1においては前記無線部と共に「所定の周期」で「繰り返し実行」されるのに対し、引用発明1-1においては前記無線部と共に「所定の周期」で「繰り返し実行」されることが特定されていない点。

そこで、まず上記相違点2について検討する。
引用文献3には、上記「2.(2)」でも述べたとおり「時刻同期処理が、時間間隔ごとに繰り返し行われる。」ことが記載されている。また引用文献3の図3には、時刻同期処理についてのシーケンスが記載されている。しかしながら、該図3によれば、本件発明1の先の送受信処理で各情報要求パケットを受信する処理に相当する「delay_req Message」の受信処理の次に、次の送受信処理における同期パケットを送信する処理に相当する「Sync Message」が送信されることは記載されておらず、また、引用文献1及び引用文献4-5にも該送受信処理を連続して行うことは記載されていないし、周知技術であるとも認められない。
したがって、上記相違点1及び相違点3を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1-1、引用文献1に記載された技術事項及び引用文献3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、本件発明1は、引用発明1-1、引用文献1に記載された技術事項及び引用文献3-5に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、特許異議申立人が特許異議申立書に添付した甲第2号証、甲第6号証にも、少なくとも上記相違点2に係る構成を示すあるいは示唆する記載はない。 よって、本件発明1は、甲第1-6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とはいえない。

(2)請求項2(本件発明2)について
本件発明2と引用発明1-1を対比する。
ア 上記「(1)請求項1(本件発明1)について」の「ア?イ」で説示した対比は、本件発明2と引用発明1-1との対比においても同様である。

イ 本件発明2の「先の送受信処理で各無線装置に対応して求められた情報要求受信時刻」と、引用発明1-1の「親ノード」が「同期応答メッセージを受信し」た時間である「時間TA4-TB3」、「時間TA4-TC3」、「時間TA4-TD3」は、「先の送受信処理で各無線装置に対応して求められた時刻同期の要求に対する応答受信時刻」という点で共通し、引用発明1-1の「第2の同期要求メッセージ」は、「親ノード」が各「同期応答メッセージを受信し」た時間を含むものであるから、本件発明2と引用発明1-1は「先の送受信処理で各無線装置に対応して求められた時刻同期の要求に対する応答受信時刻」を「次の送受信処理で送信される時刻同期の要求を表す情報に含ませる」という点で共通する。そして、引用発明1-1は「TA4-TB3、TA4-TC3、およびTA4-TD3に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを子ノードに送信する」のであるから、「TA4-TB3、TA4-TC3、およびTA4-TD3に関連する時間情報を第2の同期要求メッセージに含ませる」処理が行われていること、当該処理を行うための制御部を備えていることは自明である。また、引用発明1-1の「ブロードキャスト」は「送信」に含まれることは明らかである。
そうすると、本件発明2の「前記制御部は、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻と、次の前記送受信処理で同期パケットが送信される時刻を示す同期パケット送信時刻とを、次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませる」ことと、引用発明1-1の「同期応答メッセージが子ノードから受信されると、親ノードは、TA1、TA4-TB3、TA4-TC3、およびTA4-TD3に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを子ノードにブロードキャストする」ことは、「前記制御部は、先の送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた時刻同期の要求に対する応答受信時刻を、次の前記送受信処理で送信される前記時刻同期の要求を表す情報に含ませる」点で共通する。

そうすると、本件発明2と引用発明1-1とは、

「複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、
前記制御部は、
タイミングを規定する1つの時刻同期の要求を表す情報を各前記無線装置に同報送信する時刻同期の要求を表す情報送信処理と、
前記時刻同期の要求を表す情報に応答して各前記無線装置から送信された各時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信する要求受信処理と、
を含む送受信処理を前記無線部と共に実行し、
前記要求受信処理は、
前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
先の送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた時刻同期の要求に対する応答受信時刻を、次の前記送受信処理で送信される前記時刻同期の要求を表す情報に含ませる、基地局。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:「時刻同期の要求を表す情報」及び「時刻同期の要求に対する応答を表す情報」が、本件発明2においてはそれぞれ「パケット」であるのに対し、引用発明1-1においてはそれぞれ「メッセージ」である点。

相違点2:「制御部」は、本件発明2においては「先の前記送受信処理で各前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記時刻同期の要求を表す情報を送信する処理を実行」するのに対し、引用発明1-1においては「先の前記送受信処理で各前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記時刻同期の要求を表す情報を送信する処理を実行」することが特定されていない点

相違点3:「時刻同期の要求を表す情報送信処理」と「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信する要求受信処理」を含む送受信処理が、本件発明2において前記無線部と共に「所定の周期」で「繰り返し実行」されるのに対し、引用発明1-1においては前記無線部と共に「所定の周期」で「繰り返し実行」されることが特定されていない点。

相違点4:「次の前記送受信処理で送信される前記時刻同期の要求を表す情報」が、本件発明2において「先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻と、次の前記送受信処理で前記同期パケットが送信される時刻を示す同期パケット送信時刻」を含むのに対し、引用発明1-1においては「TA1およびTA4-TB3、TA4-TC3、およびTA4-TD3に関連する時間情報(先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻)を含む」ものであり、「次の前記送受信処理で前記同期パケットが送信される時刻を示す同期パケット送信時刻」を含んでいない点。

そこで、まず上記相違点2について検討する。
引用文献3には、上記「2.(2)」でも述べたとおり「時刻同期処理が、時間間隔ごとに繰り返し行われる。」ことが記載されている。また引用文献3の図3には、時刻同期処理についてのシーケンスが記載されている。しかしながら、該図3によれば、本件発明2の先の送受信処理で各情報要求パケットを受信する処理に相当する「delay_req Message」の受信処理の次に、次の送受信処理における同期パケットを送信する処理に相当する「Sync Message」が送信されることは記載されておらず、また、引用文献1及び引用文献4-5にも該送受信処理を連続して行うことは記載されていないし、周知技術であるとも認められない。
したがって、上記相違点1、相違点3及び相違点4を検討するまでもなく、本件発明2は、引用発明1-1、引用文献1に記載された技術事項、引用文献3に記載された技術事項及び引用文献4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、本件発明2は、引用発明1-1、引用文献1に記載された技術事項及び引用文献3-5に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、特許異議申立人が特許異議申立書に添付した甲第2号証、甲第6号証にも、少なくとも上記相違点2に係る構成を示すあるいは示唆する記載はない。 よって、本件発明2は、甲第1-6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とはいえない。

(3)請求項3(本件発明3)及び請求項8(本件発明8)について
本件発明3は、本件発明2の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(2)に説示した上記本件発明2についての判断と同様の理由により、本件発明3は、引用発明1-1、引用文献1に記載された技術事項、引用文献3に記載された技術事項、引用文献4に記載された技術事項及び引用文献5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、特許異議申立人が特許異議申立書に添付した甲第2号証、甲第6号証にも、少なくとも、上記相違点2に係る構成を示すあるいは示唆する記載はない。
同様に、本件発明8は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)に説示した上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明8は、引用発明1-1、引用文献1に記載された技術事項、引用文献3に記載された技術事項及び引用文献5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、特許異議申立人が特許異議申立書に添付した甲第2号証、甲第4号証、及び甲第6号証にも、少なくとも上記相違点2に係る構成を示すあるいは示唆する記載はない。 よって、本件発明3、8は、甲第1-6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とはいえない。

(4)請求項5(本件発明5)について
本件発明5と引用発明1-2を対比する。
ア 引用発明1-2の親ノード及び子ノードは、無線センサネットワークにおいて同期要求メッセージ、同期応答メッセージの送受信を行うものであるから無線装置に含まれ、引用発明1-2の子ノードBは無線センサネットワークにおいて時間同期を実行するための装置であり、該子ノードBの「トランシーバ」は、データ、同期パケット等を送受信するものであるから、「無線装置との間でパケットを送受信する無線部」であるといえる。ここで、子ノードのトランシーバは、上位層ブロックの制御に従って、同期パケットを送受信するものであり、該送受信によって同期要求メッセージ、同期応答メッセージの送受信が行われることは自明であるから、子ノードBは、パケットを送受信することによって各メッセージを送受信するものであることは明らかである。そして子ノードBは、第1の同期要求メッセージを受信するのであるから、引用発明1-2の「トランシーバ」は、「無線装置との間でパケットを送受信する」ものであるといえる。また、「トランシーバ」は「上位層ブロックの制御に従う」ものであるから、引用発明1-2の「上位層ブロック」は「無線を制御する制御部」であるといえる。そして、引用発明1-2の子ノードは親ノードとの間で、「同期要求メッセージ」、「同期応答メッセージ」を送受信することによって、時間同期を行うものであり、「親ノードA」は時間同期を開始する無線装置である。そして、引用発明1-2の「子ノードB」は、親ノードAからの、本件発明5の同期パケット送信時刻に相当する時間T1、本件発明5の同期パケット受信時刻に相当する時間T2、本件発明5の情報要求送信時刻に相当する時間T3及び本件発明5の情報要求受信時刻に相当する時間T4を受信し、同期のための計算を行うものであるから、引用発明1-2の「親ノードA」は、本件発明5の「基地局」に相当し、引用発明1-2の「子ノードB」は、本件発明5の「無線装置」に相当するといえる。
そうすると、引用発明1-2の「無線センサネットワークにおいて時間同期を実行するための子ノードBであって、子ノードは、親ノードと子ノードとの間のメッセージ交換を通じて親ノードの時間と同期されるものであり、前記子ノードBは、時間同期および低電力ルーティングユニット401およびトランシーバ403を含むものであり、トランシーバ403は、上位層ブロックの制御に従って、データ、同期パケット、および予約パケットを送受信するもの」は、本願発明5と「基地局との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置」に相当する。

イ 引用発明1-2の「第1の同期要求メッセージ」は、親ノードAと子ノードBの間で時刻同期を行う際、当該「第1の同期要求メッセージ」をユニキャストすることにより時刻同期が行われるものであり、同期とはタイミングを揃えることであるから、「第1の同期要求メッセージ」は同期処理において「タイミング」を規定するものであるといえ、タイミングを規定する「同期要求メッセージ」は親ノードAから送信され、子ノードBは時間T2で「第1の同期要求メッセージ」を受信し、子ノードBは時間T3において、第1の同期要求メッセージに対応する同期応答メッセージを親ノードAに送信し、前記同期応答メッセージが時刻T4で前記子ノードBから受信されると、前記親ノードAから送信される、T1およびT4に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを前記子ノードBは受信し、子ノードBは後続の処理において時間T1?T4を使用して同期を実行するものであるから、子ノードは「第1の同期要求メッセージを受信する同期要求メッセージ受信処理」、「第1の同期要求メッセージを受信した時間を求める処理」、「同期要求メッセージが受信されてから同期応答メッセージを送信する同期応答メッセージ送信処理」、「同期応答メッセージを送信した時間を求める処理」を備えることは自明であり、同期要求メッセージが受信されてから同期応答メッセージを送信する同期応答メッセージ送信処理は、同期要求メッセージが受信されてから行われる処理であるから、「同期要求メッセージ受信処理によって、同期要求メッセージが受信されてから同期応答メッセージを送信する同期応答メッセージ送信処理」が行われることも自明である。また、「第1の同期要求メッセージ」が時間T2で受信され、「第1の同期要求メッセージ」に対応する「同期応答メッセージ」を時間T3において親ノードAに送信するのであるから「同期応答メッセージ」は「同期要求メッセージ」が受信されてから「所定の遅延時間」が経過したときに「同期応答メッセージ」が親ノードAに対して送信する処理を行っているものであるといえる。そしてこれらの処理の制御を行う制御部を引用発明1-2においても有していることは自明である。
更に、親ノードAは同期応答メッセージが子ノードBから受信されると、T1及びT4に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを子ノードBに送信するものであり、「T1」は親ノードAが同期要求メッセージを送信した時間を示す「同期要求メッセージ送信時刻」、「T4」は、親ノードAが同期応答メッセージを受信した時間を示す「同期応答メッセージ受信時刻」であるといえ、そして、親ノードAは「時間の同期」のために、子ノードB対して「同期要求メッセージ」を送信し、子ノードBから送信される「同期要求メッセージ」に対応する「同期応答メッセージ」を受信するものであるから、「同期要求メッセージ」は「時刻同期の要求」を表す情報、「同期応答メッセージ」は「時刻同期の要求に対する応答」を表す情報であるといえる。
そうすると、子ノードにおける上記「第1の同期要求メッセージを受信する同期要求メッセージ受信処理」、「第1の同期要求メッセージを受信した時間を求める処理」、「同期要求メッセージ受信処理によって、同期要求メッセージが受信されてから同期応答メッセージを送信する同期応答メッセージ送信処理」、「同期応答メッセージを送信した時間を求める処理」は、「タイミングを規定する時刻同期の要求を表す情報を受信する時刻同期の要求を表す情報受信処理」、「タイミングを規定する時刻同期の要求を表す情報を受信した時間を求める処理」、「時刻同期の要求を表す情報受信処理によって、時刻同期の要求を表す情報が受信されてから所定の遅延時間が経過したときに時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信する時刻同期の要求に対する応答送信処理」、「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時間を求める処理」であるといえ、引用発明1-2における「第1の同期要求メッセージ」の送信から、子ノードにおける「同期応答メッセージ」の受信までの送受信処理を、「第2の同期要求メッセージ」から見ると、先に行われる送受信処理であるといえるから、「先の送受信処理」といえる。
そして、引用発明1-2の親ノードAは、T1およびT4に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを子ノードBに送信するものであるから、「親ノードAは、先の送受信処理の同期要求メッセージ送信時刻、先の送受信処理の同期応答メッセージ受信時刻を含む第2の時刻同期の要求を表す情報を子ノードBに送信する」もの、すなわち「親ノードAは、先の送受信処理の時刻同期の要求を表す情報送信時刻、先の送受信処理の時刻同期の要求に対する応答を表す情報受信時刻を含む第2の時刻同期の要求を表す情報を子ノードBに送信する」ものであるといえる。
一方、本件発明5においても、無線装置は「タイミングを規定する1つの同期パケットを受信」し「前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに情報要求パケットを送信する」ものであり、無線装置は、基地局から「同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含」む同期パケットを受信し、無線装置の「同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求める」ものであり、該送受信を行うことによって時刻の同期を行うものであるといえるから、「情報要求パケット」は「同期パケット」に対する応答であるといえる。よって、本件発明5の「同期パケット」、「情報要求パケット」は、「時刻同期の要求」を表す情報、「時刻同期の要求に対する応答」を表す情報であるといえ、本件発明5の「同期パケット」、「情報要求パケット」は、引用発明1-2の「同期要求メッセージ」、「同期応答メッセージ」と、「時刻同期の要求」を表す情報、「時刻同期の要求に対する応答」を表す情報、であるという点で共通する。
また、同様に本件発明5の「タイミングを規定する1つの同期パケットを受信する同期パケット受信処理」、「前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに情報要求パケットを送信する要求送信処理」、「前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理」、「前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理」は、「タイミングを規定する1つの時刻同期の要求を表す情報を受信する時刻同期の要求を表す情報受信処理」、「前記時刻同期の要求を表す情報受信処理によって前記時刻同期の要求を表す情報が受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信する応答送信処理」、「前記時刻同期の要求を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報受信時刻を求める処理」、「前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時刻を示す応答送信時刻を求める処理」といえる。
そして、本件発明5の「同期パケット送信時刻」、「同期パケット受信時刻」、「情報要求送信時刻」、「情報要求受信時刻」と、引用発明1-2の「時刻同期の要求」を表す情報及び「時刻同期の要求に対する応答」を表す情報の親ノードと子ノードの送受信の時間「T1」、「T2」、「T3」、「T4」は、それぞれ「時刻同期の要求を表す情報を送信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻」、「時刻同期の要求を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報受信時刻」、「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時刻を示す応答送信時刻」、「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻」といえる点で共通する。
さらに、「前記同期パケットは、前記同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含む」ことは、「前記時刻同期の要求を表す情報は、前記時刻同期の要求を表す情報が前記基地局から送信された時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻と、を含む」ことであるといえ、本件発明5の、「前記パケットは、前記同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含む」ことと、引用発明1-2の「親ノードAは、先の送受信処理の時刻同期の要求を表す情報送信時刻、先の送受信処理の時刻同期の要求に対する応答を表す情報受信時刻を含む第2の時刻同期の要求を表す情報を子ノードBに送信する」ことは、「前記時刻同期の要求を表す情報は、先の前記送受信処理で前記基地局が前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻と、を含む、」点で共通するといえる。
そうすると、本件発明5の「前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する1つの同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに情報要求パケットを送信する要求送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、前記同期パケットは、前記同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、前記同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含」むことと、引用発明1-2の「前記子ノードBは、親ノードAが、時間T1にユニキャストした第1の同期要求メッセージを、時間T2で受信し、前記子ノードBは、時間T3において、第1の同期要求メッセージに対応する同期応答メッセージを前記親ノードAに送信し、前記同期応答メッセージが時刻T4で前記子ノードBから受信されると、前記親ノードAから送信される、T1およびT4に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを前記子ノードBは受信」することは、
「前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する時刻同期の要求を表す情報を受信する時刻同期の要求を表す情報受信処理と、前記時刻同期の要求を表す情報受信処理によって前記時刻同期の要求を表す情報が受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信する応答送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に実行し、前記時刻同期の要求を表す情報は、先の前記送受信処理で前記基地局が前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻と、を含み、前記時刻同期の要求を表す情報受信処理は、前記時刻同期の要求を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時刻を示す応答送信時刻を求める処理を含」む点で共通する。

ウ 本件発明5の「同期パケット送信時刻」と引用発明1-2の親ノードAが同期要求メッセージを送信した時間を示す「T1」、本件発明5の「同期パケット受信時刻」と引用発明1-2の子ノードBが「同期要求メッセージ」を受信する時間を示す「T2」、本件発明5の「情報要求送信時間」と引用発明1-2の子ノードBが親ノードAに対して「同期応答メッセージ」を送信する時間を示す「T3」、本件発明5の「情報要求受信時刻」と引用発明1-2の親ノードAが同期応答メッセージを受信した時間を示す「T4」は、「時刻同期の要求を表す情報を送信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻」、「時刻同期の要求を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報受信時刻」、「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時刻を示す応答送信時刻」、「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻」という点で共通し、T1、T2、T3、T4は「同期要求メッセージ」に対応する「同期応答メッセージ」に関する時間であるから、上記「T1、T2、T3、T4」は同一の送受信処理における時間であるといえる。そして、引用発明1-2の「T1とT2の差の値、およびT3とT4の差の値を使用して同期を実行する」ことが、子ノード装置が有する制御部で行われることは自明である。
更に、本件発明5の「無線装置が発する時刻を求める」ことは、本件発明5の明細書段落[0064]によれば、自らのローカル時計が発する時刻を基地局時刻に合わせること、すなわち時刻の同期を行うことである。
そうすると、本件発明5の「前記制御部は、同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求めること」と、引用発明1-2の「前記第2の同期要求メッセージが受信されると、前記子ノードBは、T1とT2の差の値、およびT3とT4の差の値を使用して同期を実行する」ことは、「前記制御部は、同一の前記送受信処理における、時刻同期の要求を表す情報を送信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻、時刻同期の要求を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報受信時刻、時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時刻を示す応答求送信時刻、および、時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求める」点で共通する。

以上を総合すると、本件発明5と引用発明1-2とは、

「基地局との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、
前記制御部は、
前記基地局から送信され、タイミングを規定する時刻同期の要求を表す情報を受信する時刻同期の要求を表す情報受信処理と、
前記時刻同期の要求を表す情報受信処理によって前記時刻同期の要求を表す情報が受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信する応答送信処理と、
を含む送受信処理を前記無線部と共に実行し、
前記時刻同期の要求を表す情報は、
先の前記送受信処理で前記基地局が前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻と、を含み、
前記時刻同期の要求を表す情報受信処理は、
前記時刻同期の要求を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報受信時刻を求める処理を含み、
前記要求送信処理は、
前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時刻を示す応答送信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
同一の前記送受信処理における、前記時刻同期の要求を表す情報を送信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻、前記時刻同期の要求を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報受信時刻、前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時刻を示す応答送信時刻、および、前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求める、無線装置。」

である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:「時刻同期の要求を表す情報」及び「時刻同期の要求に対する応答を表す情報」が、本件発明5においてはそれぞれ「パケット」であるのに対し、引用発明1-2においてはそれぞれ「メッセージ」である点。

相違点2:「時刻同期の要求を表す情報受信処理」と「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信する応答送信処理」を含む送受信処理が、本件発明5においては前記無線部と共に「所定の周期」で「繰り返し実行」されるのに対し、引用発明1-2においては前記無線部と共に「所定の周期」で「繰り返し実行」されることが特定されていない点。

相違点3:本件発明5の「時刻同期の要求を表す情報を受信する時刻同期の要求を表す情報受信処理」において受信される「時刻同期の要求を表す情報」が「1つの」同期パケットであるのに対し、引用発明1-2の「時刻同期の要求を表す情報」はいくつのメッセージで構成されているのかについて特定がなされていない点。

相違点4:「制御部」は、本件発明5においては「先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行」するのに対し、引用発明1-2においては、「先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行」することが特定されていない点。

相違点5:「前記時刻同期の要求を表す情報」は、本件発明5において「前記同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含」むのに対し、引用発明1-2においては「T1およびT4に関連する時間情報(先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻)を含む」ものであるが、「前記同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻」を含んでいない点。

そこで、まず上記相違点4について検討する。
引用文献3には、上記「2.(2)」でも述べたとおり「時刻同期処理が、時間間隔ごとに繰り返し行われる。」ことが記載されている。また引用文献3の図3には、時刻同期処理についてのシーケンスが記載されている。しかしながら、該図3によれば、本件発明5の先の送受信処理で各情報要求パケットを受信する処理に相当する「delay_req Message」の受信処理の次に、次の送受信処理における同期パケットを送信する処理に相当する「Sync Message」が送信されることは記載されておらず、また、引用文献1及び引用文献4-5にも該送受信処理を連続して行うことは記載されていないし、周知技術であるとも認められない。
したがって、上記相違点1-3及び相違点5を検討するまでもなく、本件発明5は、引用発明1-2、引用文献1に記載された技術事項、引用文献3に記載された技術事項及び引用文献4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、本件発明5は、引用発明1-2、引用文献1に記載された技術事項及び引用文献3-5に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、特許異議申立人が特許異議申立書に添付した甲第2号証、甲第6号証にも、少なくとも上記相違点4に係る構成を示すあるいは示唆する記載はない。 よって、本件発明5は、甲第1-6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とはいえない。

(5)請求項6(本件発明6)について
本件発明6は、本件発明5の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(4)に説示した上記本件発明5についての判断と同様の理由により、本件発明6は、引用発明1-2に記載された発明、引用文献1に記載された技術事項、引用文献3に記載された技術事項及び引用文献4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、特許異議申立人が特許異議申立書に添付した甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証にも、少なくとも、上記相違点4に係る構成を示すあるいは示唆する記載はない。
よって、本件発明6は、甲第1-6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とはいえない。

(6)請求項7(本件発明7)について
本件発明7と引用発明1-2を対比する。
ア 上記「(4)請求項5(本件発明5)について」の「ア」で説示した対比は、本件発明7と引用発明1-2との対比においても同様である。
そうすると、引用発明1-2の「無線センサネットワークにおいて時間同期を実行するための子ノードBであって、子ノードは、親ノードと子ノードとの間のメッセージ交換を通じて親ノードの時間と同期されるものであり、前記子ノードBは、時間同期および低電力ルーティングユニット401およびトランシーバ403を含むものであり、トランシーバ403は、上位層ブロックの制御に従って、データ、同期パケット、および予約パケットを送受信するもの」は、本件発明7と「基地局との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を含む無線装置を備える」という点で共通する。
また、上記「(4)請求項5(本件発明5)について」の「ウ」で説示した対比は、本件発明7と引用発明1-2との対比においても同様である。

イ 引用発明1-2の「第1の同期要求メッセージ」は、親ノードAと子ノードBの間で時刻同期を行う際、当該「第1の同期要求メッセージ」をユニキャストすることにより時刻同期が行われるものであり、同期とはタイミングを揃えることであるから、「第1の同期要求メッセージ」は同期処理において「タイミング」を規定するものであるといえ、タイミングを規定する「同期要求メッセージ」は親ノードAから送信され、子ノードBは時間T2で「第1の同期要求メッセージ」を受信し、子ノードBは時間T3において、第1の同期要求メッセージに対応する同期応答メッセージを親ノードAに送信し、前記同期応答メッセージが時刻T4で前記子ノードBから受信されると、前記親ノードAから送信される、T1およびT4に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを前記子ノードBは受信し、子ノードBは後続の処理において時間T1?T4を使用して同期を実行するものであるから、子ノードは「第1の同期要求メッセージを受信する同期要求メッセージ受信処理」、「第1の同期要求メッセージを受信した時間を求める処理」、「同期要求メッセージが受信されてから同期応答メッセージを送信する同期応答メッセージ送信処理」、「同期応答メッセージを送信した時間を求める処理」を備えることは自明であり、同期要求メッセージが受信されてから同期応答メッセージを送信する同期応答メッセージ送信処理は、同期要求メッセージが受信されてから行われる処理であるから、「同期要求メッセージ受信処理によって、同期要求メッセージが受信されてから同期応答メッセージを送信する同期応答メッセージ送信処理」が行われることも自明である。また、「第1の同期要求メッセージ」が時間T2で受信され、「第1の同期要求メッセージ」に対応する「同期応答メッセージ」を時間T3において親ノードAに送信するのであるから「同期応答メッセージ」は「同期要求メッセージ」が受信されてから「所定の遅延時間」が経過したときに「同期応答メッセージ」が親ノードAに対して送信する処理をおこなっているものであるといえる。そしてこれらの処理の制御を行う制御部を引用発明1-2においても有していることは自明である。
更に、親ノードAは同期応答メッセージが子ノードBから受信されると、T1及びT4に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを子ノードBに送信するから、「T1」は親ノードAが同期要求メッセージを送信した時間を示す「同期要求メッセージ送信時刻」、「T4」は、親ノードAが同期応答メッセージを受信した時間を示す「同期応答メッセージ受信時刻」であるといえる。そして、親ノードAは「時間の同期」のために、子ノードB対して「同期要求メッセージ」を送信し、子ノードBから送信される「同期要求メッセージ」に対応する「同期応答メッセージ」を受信するものであるから、「同期要求メッセージ」は「時刻同期の要求を表す情報」、「同期応答メッセージ」は「時刻同期の要求に対する応答を表す情報」であるといえる。
そうすると、子ノードにおける上記「第1の同期要求メッセージを受信する同期要求メッセージ受信処理」、「第1の同期要求メッセージを受信した時間を求める処理」、「同期要求メッセージが受信されてから同期応答メッセージを送信する同期応答メッセージ送信処理」、「同期応答メッセージを送信した時間を求める処理」は、「タイミングを規定する時刻同期の要求を表す情報を受信する時刻同期の要求を表す情報受信処理」、「前記時刻同期の要求を表す情報を受信した時間を求める処理」、「時刻同期の要求を表す情報が受信されてから所定の遅延時間が経過したときに時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信する時刻同期の要求に対する応答を表す情報送信処理」、「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時間を求める処理」であるといえ、引用発明1-2における「第1の同期要求メッセージ」の送信から、子ノードにおける「同期応答メッセージ」の受信までの送受信処理を、「第2の同期要求メッセージ」から見ると、先に行われる送受信処理であるといえるから、「先の送受信処理」といえる。
そして、引用発明1-2の親ノードAは、T1およびT4に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを子ノードBに送信するものであるから、「親ノードAは、先の送受信処理の同期要求メッセージ送信時刻、先の送受信処理の同期応答メッセージ受信時刻を含む第2の時刻同期の要求を表す情報を子ノードBに送信する」もの、すなわち「親ノードAは、先の送受信処理の時刻同期の要求を表す情報送信時刻、先の送受信処理の時刻同期の要求に対する応答を表す情報受信時刻を含む第2の時刻同期の要求を表す情報を子ノードBに送信する」ものであるといえる。
一方、本件発明7においても、無線装置は「タイミングを規定する1つの同期パケットを受信」し「前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに情報要求パケットを送信する」ものであり、無線装置は、基地局から「先の送受信処理で前記基地局が前記同期パケットを送信した時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含む」同期パケットを受信し、無線装置の「同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求める」ものであり、該送受信を行うことによって時刻の同期を行うものであるといえるから、「情報要求パケット」は「同期パケット」に対する応答であるといえる。よって、本件発明7の「同期パケット」、「情報要求パケット」は、「時刻同期の要求を表す情報」、「時刻同期の要求に対する応答を表す情報」であるといえ、本件発明7の「同期パケット」、「情報要求パケット」は、引用発明1-2の「同期要求メッセージ」、「同期応答メッセージ」と、「時刻同期の要求を表す情報」、「時刻同期の要求に対する応答を表す情報」であるという点で共通する。
また、同様に本件発明7の「タイミングを規定する1つの同期パケットを受信する同期パケット受信処理」、「前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに情報要求パケットを送信する要求送信処理」、「前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理」、「前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理」は、「タイミングを規定する1つの時刻同期の要求を表す情報を受信する時刻同期の要求を表す情報受信処理」、「前記時刻同期の要求を表す情報受信処理によって前記時刻同期の要求を表す情報が受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信する応答送信処理」、「前記時刻同期の要求を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報受信時刻を求める処理」、「前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時刻を示す応答送信時刻を求める処理」といえる。
そして、本件発明7の「同期パケット送信時刻」、「同期パケット受信時刻」、「情報要求送信時刻」、「情報要求受信時刻」と引用発明1-2の「時刻同期の要求」を表す情報及び「時刻同期の要求に対する応答」を表す情報の親ノードと子ノードの送受信の時間「T1」、「T2」、「T3」、「T4」は、それぞれ「時刻同期の要求を表す情報を送信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻」、「時刻同期の要求を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報受信時刻」、「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時刻を示す応答送信時刻」、「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻」といえる点で共通する。
さらに、「前記同期パケットは、先の前記送受信処理で前記基地局が前記同期パケットを送信した時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含む」ことは、「前記時刻同期の要求を表す情報は、先の前記送受信処理で前記基地局が前記時刻同期の要求を表す情報を送信した時刻を示す情報送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻と、を含む」ことであるといえ、本件発明7の、「前記同期パケットは、先の前記送受信処理で前記基地局が前記同期パケットを送信した時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含む」ことと、引用発明1-2の「親ノードAは、先の送受信処理の時刻同期の要求を表す情報送信時刻、先の送受信処理の時刻同期の要求に対する応答を表す情報受信時刻を含む第2の時刻同期の要求を表す情報を子ノードBに送信する」ことは、文言上の微差はあるものの、「前記時刻同期の要求を表す情報は、先の前記送受信処理で前記基地局が前記時刻同期の要求を表す情報を送信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻と、を含む、」点で共通するといえる。
そうすると、本件発明7の「前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する1つの同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、前記同期パケットは、先の前記送受信処理で前記基地局が前記同期パケットを送信した時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、前記同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含」むことと、引用発明1-2の「前記子ノードBは、親ノードAが、時間T1にユニキャストした第1の同期要求メッセージを、時間T2で受信し、前記子ノードBは、時間T3において、第1の同期要求メッセージに対応する同期応答メッセージを前記親ノードAに送信し、前記同期応答メッセージが時間T4で前記子ノードBから受信されると、前記親ノードAから送信される、T1およびT4に関連する時間情報を含む第2の同期要求メッセージを前記子ノードBは受信」することは、
「前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する時刻同期の要求を表す情報を受信する時刻同期の要求を表す情報受信処理と、前記時刻同期の要求を表す情報受信処理によって前記時刻同期の要求を表す情報が受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信する応答送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に実行し、前記時刻同期の要求を表す情報は、先の前記送受信処理で前記基地局が前記時刻同期の要求を表す情報を送信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻と、を含み、前記時刻同期の要求を表す情報受信処理は、前記時刻同期の要求を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時刻を示す応答送信時刻を求める処理を含」む点で共通する。

以上を総合すると、本件発明7と引用発明1-2とは、

「基地局との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、
前記制御部は、
前記基地局から送信され、タイミングを規定する時刻同期の要求を表す情報を受信する時刻同期の要求を表す情報受信処理と、
前記時刻同期の要求を表す情報受信処理によって前記時刻同期の要求を表す情報が受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信する応答送信処理と、
を含む送受信処理を前記無線部と共に実行し、
前記時刻同期の要求を表す情報は、
先の前記送受信処理で前記基地局が前記時刻同期の要求を表す情報を送信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻と、
先の前記送受信処理で前記基地局が前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻と、を含み、
前記時刻同期の要求を表す情報受信処理は、
前記時刻同期の要求を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報受信時刻を求める処理を含み、
前記要求送信処理は、
前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時刻を示す応答送信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
同一の前記送受信処理における、
前記時刻同期の要求を表す情報を送信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報送信時刻、前記時刻同期の要求を表す情報を受信した時刻を示す時刻同期の要求を表す情報受信時刻、前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信した時刻を示す応答送信時刻、および、前記時刻同期の要求に対する応答を表す情報を受信した時刻を示す応答受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求める、無線装置。」

である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:「時刻同期の要求を表す情報」及び「時刻同期の要求に対する応答を表す情報」が、本件発明7においてはそれぞれ「パケット」であるのに対し、引用発明1-2においてはそれぞれ「メッセージ」である点。

相違点2:「時刻同期の要求を表す情報受信処理」と「時刻同期の要求に対する応答を表す情報を送信する応答送信処理」を含む送受信処理が、本件発明7においては前記無線部と共に「所定の周期」で「繰り返し実行」されるのに対し、引用発明1-2においては前記無線部と共に「所定の周期」で「繰り返し実行」されることが特定されていない点。

相違点3:本件発明7の「時刻同期の要求を表す情報を受信する時刻同期の要求を表す情報受信処理」において受信される「時刻同期の要求を表す情報」が「1つの」同期パケットであるのに対し、引用発明1-2の「時刻同期の要求を表す情報」はいくつのメッセージで構成されているのかについて特定がなされていない点。

相違点4:「制御部」は、本件発明7においては「先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行」するのに対し、引用発明1-2においては、「先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行」することが特定されていない点。

相違点5:本件発明7は「複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められている無線通信システム」であるのに対し、引用発明1-2は、当該発明特定事項を有していない点。

そこで、まず上記相違点4について検討する。
引用文献3には、上記「2.(2)」でも述べたとおり「時刻同期処理が、時間間隔ごとに繰り返し行われる。」ことが記載されている。また引用文献3の図3には、時刻同期処理についてのシーケンスが記載されている。しかしながら、該図3によれば、本件発明7の先の送受信処理で各情報要求パケットを受信する処理に相当する「delay_req Message」の受信処理の次に、次の送受信処理における同期パケットを送信する処理に相当する「Sync Message」が送信されることは記載されておらず、また、引用文献1及び引用文献4-5にも該送受信処理を連続して行うことは記載されていないし、周知技術であるとも認められない。
したがって、上記相違点1-3及び相違点5を検討するまでもなく、本件発明7は、引用発明1-2、引用文献1に記載された技術事項及び引用文献3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、本件発明7は、引用発明1-2、引用文献1に記載された技術事項及び引用文献3-5に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、特許異議申立人が特許異議申立書に添付した甲第2号証、甲第6号証にも、少なくとも上記相違点4に係る構成を示すあるいは示唆する記載はない。 よって、本件発明7は、甲第1-6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とはいえない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由の概要
上述のとおり、本件訂正請求による訂正により、請求項4は削除された。したがって、請求項4に対して、特許異議申立人がした特許異議申立てについてはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
一方、請求項1-3、及び請求項5-8について、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。

ア 取消理由3(サポート要件)
請求項5ないし6は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求しており、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。
イ 取消理由4(明確性要件)
請求項1-3及び請求項5-6に係る本件発明は、特許を受けようとする発明が不明瞭であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。
ウ 取消理由5(明確性要件)
請求項1-3及び請求項5-6に係る本件発明は、特許を受けようとする発明が不明瞭であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。

(2)申立理由についての当審の判断
ア 取消理由3(サポート要件)について
特許異議申立人は、訂正前の請求項5に係る発明について、「『所定の遅延時間』は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである。発明の詳細な説明には、複数の無線装置の同期処理を迅速に実行することを目的として、複数の無線装置が基地局と時刻同期を行う際に、夫々の無線装置が同期パケットを受信してから異なる遅延時間が経過した後に情報要求パケットを送信することで、複数の無線装置の夫々が送信する情報要求パケットが基地局側で時間帯を重ねて受信されないようにすることのみが記載されている。他方、請求項には、他の通信装置と異なる遅延時間であることが記載されていない。ここで、出願時の技術常識を考慮しても、他の通信装置と同じ遅延時間で情報要求パケットを送信した場合、情報要求パケット同士が衝突することで基地局へ情報要求パケットが到達せず、通信装置は情報要求パケットを再送しなければならなくなることから、同期処理を迅速に実行するという発明の課題を解決できないことは明らかである。」と主張している。
しかしながら、技術常識に照らせば無線通信を行う際、衝突が発生するような通信方法においては、衝突をさける技術が大前提となっている(例えば無線LANではCSMS/CAが採用されている。)ことは周知であるから、衝突をさける技術事項が請求項に記載されていなくても、所定の遅延時間が他のものと重ねて送受信されない前提になっていることは自明である。そして、当該部分のみをもって同期処理を迅速に実行するという発明の課題が解決できないとまでいうことはできないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

イ 取消理由4(明確性要件)について
特許異議申立人は、訂正前の請求項1、2、5に係る発明について「『タイミングを規定する同期パケット』は、何れの『タイミング』であるかが不明確であるから、特許を受けようとする発明が明確でないと主張する。
しかしながら、訂正後の請求項1-3、及び8に係る発明は、基地局についての記載であって「タイミングを規定する1つの同期パケットを各無線装置に同報する」と記載されており、訂正後の請求項5-7に係る発明は、無線装置及び無線通信システムについての記載であって、「基地局から送信され、タイミングを規定する1つの同期パケットを受信」し、「同期パケットが受信されてから所定の遅延時間を経過したときに、情報要求パケットを送信する」ことを、無線部と制御部を備える無線装置が繰り返し実行することが記載されているから、該「タイミング」は、基地局と無線装置間のタイミングであることを把握することができ、「タイミング」が何れのタイミングであるかの定義がないからといって、訂正後の請求項1-3及び8に係る発明、訂正後の請求項5-7に係る発明が明確なものでないとまではいえないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

ウ 取消理由5(明確性要件)について
特許異議申立人は、訂正前の請求項1、2、5に係る発明について「『情報要求メッセージ』は、何れの『情報』を要求するかが不明確であるから、特許を受けようとする発明が明確でない」と主張する。
しかしながら、訂正前の請求項1、2、5に係る発明、及び訂正後の請求項1-3、及び8に係る発明のいずれにも、「情報要求メッセージ」なる記載は存在しない。仮に「情報要求メッセージ」ではなく、「情報要求パケット」であるとしても、各請求項には、基地局についての記載として「情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を同期パケットに含ませて送信する」ことが記載されており、訂正後の請求項5-7に係る発明は、無線装置及び無線通信システムについての記載として、「基地局が情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時間を含む同期パケットを無線装置が受信し、それらを用いて同期のための時刻を求める」ものであることが記載されていると把握できるから、該「情報要求メッセージ(パケット)」は、同期を行うために必要となる情報を要求するためのものであると把握できる。
よって、訂正後の請求項1-3及び8に係る発明、訂正後の請求項5-7に係る発明が明確なものでないとまではいえないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

第6.むすび
以上のとおり、請求項1-3、8及び請求項5-7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1-3、8及び請求項5-7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てにおける、請求項4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
基地局、無線装置および無線通信システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局、無線装置および無線通信システムに関し、特に、パケットの送受信による同期処理に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)が広く用いられている。無線LANには、インターネット等の通信網に通信接続された複数のアクセスポイントが設置されるものがある。パーソナルコンピュータ、スマートホン等の情報端末は、アクセスポイントとの間で無線信号によるパケット通信を行い、アクセスポイントを介して通信網に通信接続する。
【0003】
各アクセスポイントは、情報端末との間で無線通信が可能なサービスエリアを形成する。また、各アクセスポイントは情報端末との間で時分割通信を行い、複数の通信回線を実現する。情報端末は、あるサービスエリアから他のサービスエリアに移動するときにはハンドオーバ処理によって途切れのない通信を行う。このように、各アクセスポイントが時分割通信を行い、複数のアクセスポイントが連携して動作するためには、各アクセスポイントのパケット送受信タイミングが同期している必要がある。
【0004】
そこで、各アクセスポイントは、例えば、GPS(Global Positioning System)から送信された信号から同期処理用の時刻情報を取得する。また、各アクセスポイントが、NTP(Network Time Protocol)を用いてインターネットから時刻情報を取得する無線LANもある。
【0005】
以下の特許文献1には、GPSを利用した時刻同期処理システムが記載されている。このシステムでは、マスタがGPS衛星から送信された基準時刻情報を受信して、時刻の同期を行うための時刻パケットを生成する。マスタは、無線LANを介して複数のスレーブに時刻パケットをブロードキャスト(同報送信)する。また、非特許文献2には、複数の計測ノードの間で無線通信が行われる無線LANが記載されている。各計測ノードは、計測対象の物理量を計測する装置を備えており、計測値を含むパケットを送受信する。複数の計測ノードのうち1つはGPS衛星から時刻情報を受信し、複数の計測ノードの間の通信に基づいて、複数の計測ノードが動作タイミングの同期を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-111654号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日山 雅之他、「無線LANにおける高精度時刻同期方式の検討と実験」、信学技報,vol.108,no.460,IA2008-79,pp.73-78,2009年3月.資料番号,SITE2008-56,IA2008-79.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
無線通信の規格には、無線信号の送信を行った後、所定時間以上の送信休止が要求されるものがある。このような規格の下で複数の無線装置が同期処理を実行する場合、各無線装置は、無線信号の送信時間の制限の下で同期処理を実行する必要がある。そのため、各無線装置が確実に同期処理を実行することが困難となる場合がある。
【0009】
本発明は、複数の無線装置の同期処理を迅速に実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、前記制御部は、タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット送信処理と、前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを送信する処理を実行し、前記要求受信処理は、前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行し、先の前記送受信処理で前記同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻とを、次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、前記制御部は、タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット送信処理と、前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを送信する処理を実行し、前記要求受信処理は、前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻と、次の前記送受信処理で前記同期パケットが送信される時刻を示す同期パケット送信時刻とを、当該次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする。
【0012】
望ましくは、前記送受信処理は、複数の前記無線装置のうち少なくとも1つについて前記情報要求パケットを受信しなかった場合に、前記同期パケットを再送する再送処理と、再送された前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各前記情報要求パケットを受信する再受信処理と、を含む。
【0013】(削除)
【0014】
また、本発明は、基地局との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、前記基地局は、タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信し、前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する1つの前記同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行し、前記同期パケットは、前記同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、前記同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求めることを特徴とする。
【0015】
前記無線装置を複数備える通信システムでは、望ましくは、複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められている。また、本発明は、基地局との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を含む無線装置を複数備え、前記基地局は、タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信し、前記制御部は、前記基地局から送信され、タイミングを規定する1つの前記同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行し、前記同期パケットは、先の前記送受信処理で前記基地局が前記同期パケットを送信した時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、前記同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求め、複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の無線装置の同期処理を迅速に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】繰り返し同期処理のシーケンスチャートである。
【図3】同期パケットの構造を示す図である。
【図4】同期パケット再送処理が実行される場合のシーケンスチャートである。
【図5】応用実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【図6】アドホック通信システムの構成を示す図である。
【図7】基地局のハードウエアの例を示す図である。
【図8】同期用無線装置のハードウエアの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、本発明の実施形態に係る通信システムの構成が示されている。通信システムは、基地局10、アクセスポイント12-1?12-3、および情報端末20を備える。ここでは、3台のアクセスポイント12-1?12-3が設けられた例が示されているが、アクセスポイントの数は任意である。
【0019】
各アクセスポイント12-j(j=1?3)はインターネット18に接続されており、無線LANを構成する。情報端末20は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機である。
【0020】
各アクセスポイント12-jは、情報端末20との無線通信が可能なサービスエリアを形成する。情報端末20は、自らが存在するサービスエリアを形成するアクセスポイントと無線通信を行い、インターネット18に通信接続する。
【0021】
基地局10は、動作タイミング規定用の基地局時計を備えている。基地局10は、GPS衛星から基準時刻情報を受信し、基地局時計が発する時刻(基地局時刻)を基準時刻情報が表す基準時刻に合わせる。
【0022】
アクセスポイント12-jは、同期用無線装置14-jおよび無線LANノード16-jを備える。同期用無線装置14-jは、無線LANノード16-jに時刻を出力するローカル時計を備えている。基地局10は、アクセスポイント12-jが備える同期用無線装置14-jとの間で通信を行い、同期用無線装置14-jと共に同期処理を実行する。同期用無線装置14-jは、同期処理を実行することによって、自らのローカル時計が発する時刻を基地局時刻に合わせる。ローカル時計は、基地局時刻に合わせられた時刻を無線LANノード16-jに与える。無線LANノード16-jは、ローカル時計から与えられた時刻に従うタイミングで動作する。これによって、無線LANノード16-1?16-3の動作が同期する。
【0023】
図2には、通信システムで実行される繰り返し同期処理のシーケンスチャートが示されている。繰り返し同期処理は、基地局10が所定の送信周期STで各同期用無線装置に同期パケットを繰り返し送信し、同期パケットを受信した各同期用無線装置が、情報要求パケットを基地局10に送信する処理である。基地局10は、情報要求パケットに応じて求めた情報を、次に送信する同期パケットに含ませる。このように繰り返し同期処理では、基地局10による同期パケットの送信と、各同期用無線装置による情報要求パケットの送信(パケット送受信処理)による同期処理が繰り返される。
【0024】
基地局10は、時刻t0に同期用無線装置14-1?14-3を宛先とする同期パケットを送信する(S101)。同期パケットは、同期処理を実行するタイミングを規定するために各同期用無線装置に送信するパケットである。同期パケットを送信する際に、基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3に対して共通に割り当てられた同報アドレスを同期パケットに含ませる。また、基地局10は、直前のパケット送受信処理に応じて求めた情報を同期パケットに含ませる。この情報は、同期用無線装置14-1?14-3のそれぞれのローカル時計を、基地局時計に同期させるための情報であり、詳細については後述する。基地局10は、さらに、同期パケットを送信した初期時刻t0(同期パケット送信時刻)を自らの基地局時計によって求め、初期時刻t0を記憶する。各同期用無線装置は、受信された同期パケットに同報アドレスが含まれていることを認識することで、同期パケットに応じた処理を実行する。
【0025】
具体的には、同期用無線装置14-1は時刻t0から時間Δ1後の時刻t11に同期パケットを受信する。同期用無線装置14-2は、時刻t0から時間Δ2後の時刻t12に同期パケットを受信する。同期用無線装置14-3は、時刻t0から時間Δ3後の時刻t13に同期パケットを受信する。各同期用無線装置は、同期パケットを受信した同期パケット受信時刻を、各自が備えるローカル時計によって求め、同期パケット受信時刻を記憶する。すなわち、同期用無線装置14-1?14-3は、それぞれ、同期パケット受信時刻t11?t13を記憶する。
【0026】
各同期用無線装置は、同期パケットを受信してから所定の応答遅延時間が経過した時に、情報要求パケットを送信する(S102)。図2に示されている例では、同期用無線装置14-1?14-3に対し、それぞれ、応答遅延時間d1?d3が定められている。情報要求パケットを送信する際に、各同期用無線装置は、情報要求パケットを送信する情報要求送信時刻を、各自が備えるローカル時計によって求め、情報要求送信時刻を記憶する。すなわち、同期用無線装置14-1?14-3は、それぞれ、情報要求送信時刻t21?t23を記憶する。
【0027】
基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3のそれぞれから送信された各情報要求パケットを受信する。基地局10は、各情報要求パケットを受信した情報要求受信時刻t31、t32およびt33を、基地局時計によって求めて記憶する。
【0028】
なお、各同期用無線装置に対して定められる応答遅延時間は、複数の同期用無線装置から送信された複数の情報要求パケットが、基地局10で時間帯を重ねて受信されないように決定される。例えば、同期用無線装置14-1?14-3のうちの1つである同期用無線装置14-iが、初期時刻t0から時間Δi後に同期パケットを受信することが既知であるものとする。そして、他の同期用無線装置14-jが、初期時刻t0から時間Δj後に同期パケットを受信することが既知であるものとする。この場合、基地局10と同期用無線装置14-iとの間のパケットの伝搬時間はΔiであり、基地局10と同期用無線装置14-jとの間のパケットの伝搬時間はΔjである。
【0029】
同期用無線装置14-iの応答遅延時間をdiとした場合、基地局10は、時刻t0+di+2Δiに同期用無線装置14-iから送信された情報要求パケットを受信する。同様に、同期用無線装置14-jの応答遅延時間をdjとした場合、基地局10は、時刻t0+dj+2Δjに同期用無線装置14-jから送信された情報要求パケットを受信する。同期用無線装置14-iおよび同期用無線装置14-jから送信された情報要求パケットが基地局10で時間帯を重ねて受信されないようにするためには、t0+di+2Δiとt0+dj+2Δjとが異なるように応答遅延時間diおよびdjを設定すればよい。例えば、応答遅延時間diと応答遅延時間djとの差の絶対値を、伝搬時間Δiと伝搬時間Δjとの差の絶対値よりも十分に大きくなるように設定すればよい。
【0030】
基地局10が同期パケットを送信してから送信周期STが経過した時刻t4に、基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3を宛先とする次の同期パケットを送信する(S103)。
【0031】
同期パケットを送信する際に、基地局10は、同期パケットに同報アドレス、初期時刻t0、および各同期用無線装置についての受信時刻情報を含ませる。初期時刻t0および受信時刻情報は、先の送信周期ST内で実行された同期パケットの送信(S101)、および情報要求パケットの受信(S102)に伴って基地局10が取得した情報である。受信時刻情報は、送信元の同期用無線装置のアドレスと、その同期用無線装置から送信された情報要求パケットの受信時刻(情報要求受信時刻)とを対応付けた情報である。同期用無線装置14-1?14-3のアドレスを、それぞれ、AD1?AD3とすると、アドレスAD1と情報要求受信時刻t31とを対応付けた受信時刻情報、アドレスAD2と情報要求受信時刻t32とを対応付けた受信時刻情報、および、アドレスAD3と情報要求受信時刻t33とを対応付けた受信時刻情報が同期パケットに含められる。
【0032】
図3には、同期パケットの構造が示されている。同期パケットは、ヘッド部22およびペイロード部32を含む。ヘッド部22は、プリアンブル24、通信用データ26および宛先アドレス28を含む。プリアンブル24は、同期パケットが受信されたことを同期用無線装置が識別するための符号を含む。通信用データ26には、例えば、同期パケットに含まれる符号を読み取るための情報が含まれる。宛先アドレス28には同報アドレスが記述される。
【0033】
ペイロード部32は、初期時刻36、受信時刻情報38-1?38-nおよび誤り訂正符号40を含む。受信時刻情報38-1?38-nは、それぞれ、同期用無線装置14-1?14-nに宛てられる情報である。各受信時刻情報に含まれる情報要求受信時刻は、ある時刻からの経過時間の積算値を表す値であってもよいし、GMT(Greenwich Mean Time)を表す値であってもよい。誤り訂正符号40は、プリアンブル24、通信用データ26、宛先アドレス28、初期時刻36、および受信時刻情報38-1?38-nを表す符号についての誤り検出および誤り訂正を、同期用無線装置が実行するための符号である。
【0034】
図2に戻って引き続き繰り返し同期処理について説明する。各同期用無線装置は、受信された同期パケットに同報アドレスが含まれていることを認識することで、同期パケットに応じた処理を実行する。
【0035】
具体的には、同期用無線装置14-1は時刻t4から時間Δ1後の時刻t51に同期パケットを受信する。同期用無線装置14-2は、時刻t4から時間Δ2後の時刻t52に同期パケットを受信する。同期用無線装置14-3は、時刻t4から時間Δ3後の時刻t53に同期パケットを受信する。
【0036】
各同期用無線装置は、同期パケットから初期時刻t0を抽出し記憶する。また、同期パケットから自らに対応する受信時刻情報を抽出し、さらに、その受信時刻情報から情報要求受信時刻を取得し記憶する。すなわち、同期用無線装置14-1は、初期時刻t0および情報要求受信時刻t31を取得し記憶する。同期用無線装置14-2は、初期時刻t0および情報要求受信時刻t32を取得し記憶する。同期用無線装置14-3は、初期時刻t0および情報要求受信時刻t33を取得し記憶する。
【0037】
このように、同期用無線装置14-1は同期パケットを受信し、情報要求パケットを送信し、さらに、次の同期パケットを受信することで、初期時刻t0、同期パケット受信時刻t11、情報要求送信時刻t21、および情報要求受信時刻t31を記憶する。同様に、同期用無線装置14-2は、初期時刻t0、同期パケット受信時刻t12、情報要求送信時刻t22、および情報要求受信時刻t32を記憶する。同期用無線装置14-3は、初期時刻t0、同期パケット受信時刻t13、情報要求送信時刻t23、および情報要求受信時刻t33を記憶する。
【0038】
ここでは、3台のアクセスポイント12-1?12-3があり、各アクセスポイント12-j(j=1?3)が同期用無線装置14-jを備える例について説明したが、アクセスポイントの数は任意である。
【0039】
n個の同期用無線装置14-1?14-nのうち1つである同期用無線装置14-kが、パケット送受信処理によって、初期時刻t0、同期パケット受信時刻t1k、情報要求送信時刻t2k、および情報要求受信時刻t3kを記憶したものとする。同期用無線装置14-kは、次の(数1)に従って、同期用無線装置14-kと基地局10との間の伝搬時間Dkを求める。
【0040】
(数1)Dk=[(t1k-t0)+(t3k-t2k)]/2
【0041】
(数1)は次のように導かれる。初期時刻t0および情報要求受信時刻t3kは基地局10が備える基地局時計によって求められた時刻であり、同期パケット受信時刻t1kおよび情報要求送信時刻t2kは、同期用無線装置14-kが備えるローカル時計によって求められた時刻である。基地局時計に対してローカル時計がオフセット時間Toだけ進んでいるものとすると、同期パケットの伝搬時間Ds、および情報要求パケットの伝搬時間Ddはそれぞれ(数2)および(数3)のように表される。
【0042】
(数2)Ds=t1k-t0-To
(数3)Dd=t3k-t2k+To
【0043】
伝搬時間Dsと伝搬時間Ddは等しくDkであるため、(数2)および(数3)の両辺を加算して2で割ることで(数1)が求められる。
【0044】
同期用無線装置14-kは、次の(数4)に従ってオフセット時間Toを求める。
【0045】
(数4)To=(t1k-t0)-Dk
【0046】
同期用無線装置14-kは、自らのローカル時計の時刻からオフセット時間Toを減算することで、自らのローカル時計の時刻を基地局時刻に合わせる。同期用無線装置14-kは、無線LANノード16-kに自らのローカル時計の時刻を出力する。
【0047】
なお、同期用無線装置14-kは、(数4)の代わりに、次の(数5)に基づいてオフセット時間Toを求め、自らのローカル時計の時刻を基地局時刻に合わせてもよい。
【0048】
(数5)To=[(t1k-t0)-(t3k-t2k)]/2
【0049】
(数5)は、(数2)および(数3)をオフセット時間Toについて解くことで求められる式である。また、(数5)は、(数4)のDkに(数1)のDkを代入することによっても求められる。
【0050】
n個の同期用無線装置14-1?14-nのうち、その他の同期用無線装置も同様の処理を実行する。すなわち、それぞれが備えるローカル時計の時刻からオフセット時間を減算した時刻に、それぞれが備えるローカル時計の時刻を合わせる。各同期用無線装置は、それぞれに付設された無線LANノードに自らのローカル時計が発する時刻を出力する。
【0051】
このような処理によって、各無線LANノードは、基地局時刻に同期した時刻を取得する。基地局時刻は、GPS衛星から送信される基準時刻に同期しているため、各無線LANノードが認識する時刻は、基準時刻に同期する。これによって、複数の無線LANノードのそれぞれの動作が同期する。
【0052】
通信システムでは、パケット送受信処理が繰り返し実行される。各同期用無線装置は、同期パケットを受信する度に、各自が備えるローカル時計の時刻を基地局時刻に合わせる。これによって、各無線LANノードが認識する時刻を基準時刻に同期させる同期処理が送信周期ごとに実行される。
【0053】
また、通信システムで実行される処理によれば、複数の同期用無線装置を宛先として同期パケットが同報送信される。これによって、迅速に各同期用無線装置に同期処理に関する情報が与えられる。
【0054】
パケット通信に関する規格であるIEEE1588では、マスタ(基地局)からスレーブ(同期用無線装置)に送信されるパケットとして、Syncメッセージ、Follow-upメッセージおよびDelay-Responseメッセージが規定されている。また、スレーブからマスタに送信されるパケットとしてDelay-Requestメッセージが規定されている。本発明に係る通信システムでは、Syncメッセージに相当する同期パケット、およびDelay-Requestメッセージに相当する情報要求パケットのみが繰り返し同期処理に用いられる。したがって、用いられるパケットの種類は2種類でよいため、IEEE1588に従った場合に比べて処理が簡単となり、迅速に同期処理が行われる。
【0055】
上記では、先に基地局10から送信される同期パケットについての初期時刻t0を、次に送信される同期パケットによって基地局10から各同期用無線装置に送信する実施形態について説明した。初期時刻t0は、その初期時刻t0に送信される同期パケット自身によって基地局10から各同期用無線装置に送信してもよい。この場合、図3に示されるペイロード部32の初期時刻36には、この同期パケットが送信される時刻が記述される。基地局10は、同期パケット(第1の同期パケット)を送信する際に、第1の同期パケットが送信される初期時刻t0を求め、第1の同期パケットに初期時刻t0を含ませる。
【0056】
第1の同期パケットを受信した各同期用無線装置14-kは、同期パケット受信時刻t1kを求めて記憶すると共に、第1の同期パケットから初期時刻t0を抽出し記憶する。そして、情報要求パケットを送信すると共に、情報要求送信時刻t2kを求めて記憶する。各同期用無線装置14-kは、次の送信周期で基地局10から送信される同期パケット(第2の同期パケット)を受信し、第2の同期パケットから情報要求受信時刻t3kを抽出し記憶する。各同期用無線装置14-kは、先に記憶された初期時刻t0、同期パケット受信時刻t1k、および情報要求送信時刻t2kに加え、第2の同期パケットから抽出された情報要求受信時刻t3kに基づいてオフセット時間Toを求め、各自が備えるローカル時計の時刻を基地局時刻に合わせる。
【0057】
上述のように、無線通信の規格には、無線信号の送信を行った後、所定時間以上の送信休止が要求されるものがある。この規格に従って通信システムを設計する場合、送信周期STは、規格で定められている送信休止時間以上の長さに設定される。送信周期STが送信休止時間の2倍より長く設定されている場合、通信システムは、次のような同期パケット再送処理を実行してもよい。
【0058】
同期パケット再送処理では、基地局10が同期パケットを送信した後、所定時間が経過するまでの間に予め定められた複数の同期用無線装置のうち少なくとも1つについて、基地局10が情報要求パケットを受信しなかった場合に、基地局10は同期パケットを再送信する。
【0059】
基地局10は、同期パケットを送信してから、各同期用無線装置について情報要求パケットが受信されるまでの時間として予め定められた時間が経過したときに、各情報要求パケットが受信されたか否かを判定する。基地局10は、予め定められた複数の同期用無線装置総てについて情報要求パケットを受信した場合には、次の送信周期の開始時刻に次の同期パケットを送信する。一方、予め定められた複数の同期用無線装置のうち少なくとも1つについて、情報要求パケットを受信しなかった場合には、基地局10は同期パケットを再送信する。
【0060】
図4には、同期パケット再送処理の例が示されている。この例では、図2と同様、同期用無線装置14-1?14-3のそれぞれは、同期パケットを受信した後、情報要求パケットを送信している。しかし、同期用無線装置14-1?14-3のうち、同期用無線装置14-2から送信された情報要求パケットが、通信状況が良好でない等の原因によって基地局10で受信されていない。
【0061】
基地局10は、同期用無線装置14-2から受信されるべき情報要求パケットが受信されていないことを認識すると、同期パケットを再送信する(S201)。基地局10が同期パケットを再送信する時刻は、初期時刻t0から再送時間RTが経過した時刻u0である。再送時間RTは、送信休止時間以上の長さに設定されている。
【0062】
基地局10が同期パケットを再送信した後、同期用無線装置14-1?14-3、および基地局10は、上述のパケット送受信処理と同様の処理を実行する。すなわち、各同期用無線装置は、基地局10から再送信された同期パケットを受信し、同期パケットに同報アドレスが含まれていることを認識することで、同期パケットに応じた処理を実行する。
【0063】
具体的には、同期用無線装置14-1は時刻u0から時間Δ1後の時刻u11に同期パケットを受信する。同期用無線装置14-2は、時刻u0から時間Δ2後の時刻u12に同期パケットを受信する。同期用無線装置14-3は、時刻u0から時間Δ3後の時刻u13に同期パケットを受信する。各同期用無線装置は、同期パケットを受信した同期パケット受信時刻を、各自が備えるローカル時計によって求め、同期パケット受信時刻を記憶する。すなわち、同期用無線装置14-1?14-3は、それぞれ、同期パケット受信時刻u11?u13を記憶する。
【0064】
再送信された同期パケットを受信した各同期用無線装置は、初期時刻t0の直前のパケット送受信処理に応じた同期処理を実行してもよい。この場合、各同期用無線装置は、基地局10から再送信された同期パケットから、初期時刻t0の直前のパケット送受信処理における初期時刻および情報要求受信時刻を抽出する。そして、抽出された初期時刻および情報要求受信時刻に加え、初期時刻t0の直前のパケット送受信処理において記憶した同期パケット受信時刻および情報要求送信時刻に基づいて、自らのローカル時計の時刻を基地局時刻に合わせる。
【0065】
各同期用無線装置は、同期パケットを受信してから所定の応答遅延時間が経過した時に、情報要求パケットを送信する(S202)。情報要求パケットを送信する際に、各同期用無線装置は、情報要求パケットを送信する情報要求送信時刻を、各自が備えるローカル時計によって求め、情報要求送信時刻を記憶する。すなわち、同期用無線装置14-1?14-3は、それぞれ、情報要求送信時刻u21?u23を記憶する。
【0066】
基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3のそれぞれから送信された各情報要求パケットを受信する。基地局10は、各情報要求パケットを受信した情報要求受信時刻u31、u32およびu33を、基地局時計によって求めて記憶する。
【0067】
基地局10が初期時刻t0に同期パケットを送信してから送信周期STが経過した時刻t4に、基地局10は、同期用無線装置14-1?14-3を宛先とする次の同期パケットを送信する(S103)。これ以降の処理は図2を参照して説明した処理と同様である。
【0068】
ここでは、1つの同期用無線装置から送信された情報要求パケットが基地局10で受信されなかった場合について説明したが、同期用無線装置14-1?14-3のうち2つ以上から送信された情報要求パケットが基地局10で受信されなかった場合にも、同様の同期パケット再送処理が実行される。また、初期時刻t0に送信された同期パケットが、同期用無線装置14-1?14-3のうち少なくとも1つで受信されなかった場合には、同期パケットを受信しなかった同期用無線装置から情報要求パケットは送信されない。したがって、この場合にも同期パケット再送処理が実行される。
【0069】
また、送信周期STが十分に長い場合には、1つの送信周期内で同期パケット再送処理が複数回に亘って実行されてもよい。すなわち、再送された同期パケットが基地局10から各同期用無線装置に送信されず、あるいは、再送された同期パケットに対し、情報要求パケットが各同期用無線装置から基地局10に送信されなかった場合には、基地局10は再度、同期パケットを送信してもよい。
【0070】
同期パケット再送処理によれば、同期パケットが基地局10から各同期用無線装置に送信されず、あるいは情報要求パケットが各同期用無線装置から基地局10に送信されなかった場合には、基地局10から同期パケットが再送信される。これによって、各送信周期において同期処理が問題なく実行される確率が高くなる。
【0071】
図5には、応用実施形態に係る通信システムの構成が示されている。この通信システムは、図1に示される通信システムに対し、中継局42を設けたものである。中継局42は、中継無線装置44および中継基地局46を備える。中継無線装置44は同期用無線装置14-1および14-2と同様の構成を有し、同期用無線装置14-1および14-2と同様の処理を実行する。中継基地局46は基地局10と同様の構成を有し、基地局10と同様の処理を実行する。
【0072】
中継無線装置44は基地局10との間で同期処理を実行し、そのローカル時計の時刻を基地局時刻に合わせる。中継無線装置44は、ローカル時計の時刻を中継基地局46に与える。中継基地局46は、自らが備える基地局時計の基地局時刻を、中継無線装置44から与えられた時刻に合わせる。
【0073】
中継基地局46は、各アクセスポイント12-j(j=1または2)が備える同期用無線装置14-jとの間で同期処理を実行する。同期処理を実行すると共に、同期用無線装置14-jは、それぞれに付設された無線LANノード16-jにローカル時計の時刻を与える。
【0074】
このような処理によって、各無線LANノード16-jは、中継基地局46の基地局時刻に同期し、さらには、基地局10の基地局時刻に同期した時刻を取得する。各無線LANノード16-jが同期用無線装置14-jから与えられた時刻に従ったタイミングで動作することで、複数のアクセスポイントの動作が同期する。また、基地局10の基地局時刻は、GPS衛星から送信される基準時刻に同期しているため、各アクセスポイントが認識する時刻は、基準時刻に同期する。
【0075】
この通信システムでは、各アクセスポイント12-jが、中継局42との間で同期処理を実行し、中継局42が基地局10との間で同期処理を実行する。したがって、図1に示される通信システムに比べて、基地局10と各アクセスポイント12-jの間の距離を大きくしてもよい。
【0076】
同期用無線装置および無線LANノードは、無線LANのアクセスポイントを構成する他、アドホック無線装置を構成してもよい。複数のアドホック無線装置はマルチホップ通信によって、送信元のアドホック無線装置から宛先のアドホック無線装置にパケットを送信する。マルチホップ通信とは、送信元のアドホック無線装置から送信されたパケットが、他の1つまたは複数のアドホック無線装置による中継送信によって、通信状況によっては直接、宛先のアドホック無線装置に伝送される通信形態をいう。
【0077】
図6にはアドホック通信システムの構成が示されている。アドホック無線装置48-j(j=1?3)は、同期用無線装置14-jおよび無線LANノード16-jを備える。同期用無線装置14-jは、基地局10との間で同期処理を実行し、基準時刻に同期した時刻を発生する。同期用無線装置14-jは基準時刻に同期した時刻を無線LANノード16-jに与える。無線LANノード16-jは、同期用無線装置14-jから与えられた時刻に従って動作する。これによって無線LANノード16-1?16-3の動作タイミングが同期する。無線LANノード16-1?16-3は動作タイミングが同期した状態でマルチホップ通信を行う。
【0078】
無線LANノード16-jには、情報端末20-jが接続されている。情報端末20-jは、無線LANノード16-jにマルチホップ通信を行わせることで、宛先の情報端末との間でパケット通信を行う。
【0079】
図7には基地局10のハードウエアの例が示されている。基地局10は、GPS受信部50、基地局時計51、制御部52、無線部54を備える。GPS受信部50は、GPS衛星から基準時刻情報を受信し、基準時刻を制御部52に出力する。基地局時計51は、基地局時刻を制御部52に出力する。制御部52は、基地局時計51を制御して、基地局時刻を基準時刻に合わせる。
【0080】
無線部54はパケットを受信し制御部52に出力する。また、無線部54は、制御部52から出力されたパケットを送信する。
【0081】
制御部52は、例えば、予め読み込まれたプログラム、または、予め書き込まれたプログラムによって演算処理を実行するプロセッサによって構成される。制御部52は、無線部54と共にパケット送受信処理を実行する。
【0082】
パケット送受信処理は、例えば、(1)同期パケットを各同期用無線装置に同報送信する同期パケット送信処理、および(2)同期パケットに応答して各同期用無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理を含む。
【0083】
要求受信処理には、情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理が含まれる。制御部52は、先のパケット送受信処理で同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先のパケット送受信処理で各同期用無線装置に対応して求められた情報要求受信時刻とを、次のパケット送受信処理で送信される同期パケットに含ませる。なお、同期パケット送信時刻は、先のパケット送受信処理で同期パケットが送信された時刻ではなく、同期パケット自らが送信される時刻であってもよい。
【0084】
また、パケット送受信処理は、複数の同期用無線装置のうち少なくとも1つについて情報要求パケットを受信しなかった場合に、次のパケット送受信処理を実行する前に同期パケットを再送する再送処理と、再送された同期パケットに応答して各同期用無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する再受信処理とを含んでいてもよい。
【0085】
図8には同期用無線装置14のハードウエアの例が示されている。同期用無線装置14は、制御部56、ローカル時計57、インターフェース58、および無線部60を備える。インターフェース58には、上述の無線LANノード、情報端末等の情報処理装置が接続される。ローカル時計57は、インターフェース58に接続された情報処理装置の動作タイミングを規定する時刻を発し、制御部56に出力する。
【0086】
無線部60はパケットを受信し制御部56に出力する。また、無線部60は、制御部56から出力されたパケットを送信する。
【0087】
制御部56は、例えば、予め読み込まれたプログラム、または、予め書き込まれたプログラムによって演算処理を実行するプロセッサによって構成される。制御部56は、無線部60と共にパケット送受信処理を実行する。
【0088】
パケット送受信処理は、例えば、(1)基地局10から送信され、タイミングを規定する同期パケットを受信する同期パケット受信処理、(2)同期パケットが受信されてから所定の応答遅延時間が経過したときに情報要求パケットを送信する要求送信処理を含む。
【0089】
同期パケットには、先のパケット送受信処理で基地局10が同期パケットを送信した時刻を示す同期パケット送信時刻と、先のパケット送受信処理で基地局10が情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻とが含まれる。同期パケット受信処理には、同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理が含まれる。要求送信処理には、情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理が含まれる。なお、同期パケット送信時刻は、先のパケット送受信処理で基地局10が同期パケットを送信した時刻ではなく、同期パケット自らが基地局10から送信された時刻であってもよい。複数の同期用無線装置のそれぞれについては、異なる応答遅延時間が定められていてもよい。
【0090】
制御部56は、初期時刻、同期パケット受信時刻、情報要求送信時刻、および、情報要求受信時刻に基づいてローカル時計57を制御し、ローカル時計57が発する時刻を基地局時刻に合わせる。
【0091】
制御部56は、インターフェース58に接続された情報処理装置に、ローカル時計57が発する時刻を出力する。
【符号の説明】
【0092】
10 基地局、12-1?12-3 アクセスポイント、14-1?14-3 同期用無線装置、16-1?16-3 無線LANノード、18 インターネット、20 情報端末、22 ヘッド部、24 プリアンブル、26 通信用データ、28 宛先アドレス、32 ペイロード部、36 初期時刻、38-1?38-n 受信時刻情報、40 誤り訂正符号、42 中継局、44 中継無線装置、46 中継基地局、48-1?48-3 アドホック無線装置、50 GPS受信部、51 基地局時計、52,56 制御部、54,60 無線部、57 ローカル時計、58 インターフェース。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、
前記制御部は、
タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット送信処理と、
前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理と、
を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、
先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを送信する処理を実行し、
前記要求受信処理は、
前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行し、
先の前記送受信処理で前記同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻とを、次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする基地局。
【請求項2】
複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、
前記制御部は、
タイミングを規定する1つの同期パケットを各前記無線装置に同報送信する同期パケット送信処理と、
前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理と、
を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、
先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを受信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを送信する処理を実行し、
前記要求受信処理は、
前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
前記同期パケット送信処理を前記無線部と共に所定の周期で繰り返し実行し、
先の前記送受信処理で各前記無線装置に対応して求められた前記情報要求受信時刻と、次の前記送受信処理で前記同期パケットが送信される時刻を示す同期パケット送信時刻とを、当該次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする基地局。
【請求項3】
請求項2に記載の基地局において、
前記送受信処理は、
複数の前記無線装置のうち少なくとも1つについて前記情報要求パケットを受信しなかった場合に、前記同期パケットを再送する再送処理と、
再送された前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各前記情報要求パケットを受信する再受信処理と、
を含むことを特徴とする基地局。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
基地局との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、
前記基地局は、タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信し、
前記制御部は、
前記基地局から送信され、タイミングを規定する1つの前記同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、
前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理と、
を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、
先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行し、
前記同期パケットは、
前記同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、
先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、
前記同期パケット受信処理は、
前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、
前記要求送信処理は、
前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求めることを特徴とする無線装置。
【請求項6】
請求項5に記載の無線装置を複数備え、
複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
基地局との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を含む無線装置を複数備え、
前記基地局は、タイミングを規定する同期パケットを所定の周期で繰り返し送信し、
前記制御部は、
前記基地局から送信され、タイミングを規定する1つの前記同期パケットを受信する同期パケット受信処理と、
前記同期パケット受信処理によって前記同期パケットが受信されてから所定の遅延時間が経過したときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理と、
を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、
先の前記送受信処理で各前記情報要求パケットを送信する処理の次に、次の前記送受信処理における前記同期パケットを受信する処理を実行し、
前記同期パケットは、
先の前記送受信処理で前記基地局が前記同期パケットを送信した時刻を示す同期パケット送信時刻と、
先の前記送受信処理で前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻と、を含み、
前記同期パケット受信処理は、
前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、
前記要求送信処理は、
前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
同一の前記送受信処理における、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求め、
複数の前記無線装置のそれぞれについて、異なる前記遅延時間が定められていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項1に記載の基地局において、
前記送受信処理は、
複数の前記無線装置のうち少なくとも1つについて前記情報要求パケットを受信しなかった場合に、前記同期パケットを再送する再送処理と、
再送された前記同期パケットに応答して各前記無線装置から送信された各前記情報要求パケットを受信する再受信処理と、
を含むことを特徴とする基地局。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-02-04 
出願番号 特願2016-72080(P2016-72080)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H04W)
P 1 651・ 16- YAA (H04W)
P 1 651・ 121- YAA (H04W)
最終処分 維持  
前審関与審査官 桑江 晃  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 永田 義仁
本郷 彰
登録日 2019-02-22 
登録番号 特許第6484195号(P6484195)
権利者 大井電気株式会社
発明の名称 基地局、無線装置および無線通信システム  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  

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