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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F26B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F26B
管理番号 1373065
審判番号 不服2019-7062  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-30 
確定日 2021-04-15 
事件の表示 特願2016-505705「流動化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月13日国際公開、WO2015/117577、平成28年 7月 7日国内公表、特表2016-519749〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)年4月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年4月3日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年10月27日付けで拒絶理由の通知(平成29年11月1日発送)
平成30年1月24日に意見書及び手続補正書の提出
平成30年6月26日付けで拒絶理由の通知(平成30年7月4日発送)
平成30年10月31日に意見書及び手続補正書の提出
平成31年1月31日付けで拒絶査定(平成31年2月6日発送)
令和元年5月30日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の提出
令和2年6月11日付けで拒絶理由の通知(令和2年6月17日発送)
令和2年8月28日に意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和2年8月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ガス状乾燥媒体を分配室(2)に供給するための一つの導管(4)が付設された分配室(2)、分配室(2)の上方に配置された渦流室(3)、固体粒子入口ユニット(6)ならびに固体粒子出口ユニット(7)、受流底面(11)及び受流底面(11)の下方に配置された空気分配板(18)を有し、渦流室(3)内に星型回転式乾燥機(8)が回転可能に配置され、この星型回転式乾燥機に隔壁(10)が配置され、これら隔壁が、過流室(3)を分割するために受流底面(11)と共に処理室(12)を仕切り、星型回転式乾燥機(8)の周囲に、固体粒子入口ユニット(6)から固体粒子出口ユニット(7)までの固体粒子用の搬送路が形成されている、固体粒子を処理するための流動化装置(1)において、
分配室(2)が分割化されていないこと、及び、空気分配板(18)は、異なる直径を備えている開口部(22)を有し、開口部(22)の直径は、搬送路に沿った固体粒子入口ユニット(6)からの移動距離の増大と共に変化することを特徴とする流動化装置(1)。」

第3 令和2年6月11日付けで通知した拒絶の理由
当審において、令和2年6月11日付けで通知した拒絶の理由における理由2は、概ね以下のとおりである。
<理由2(進歩性)>
本願の請求項1?2に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用例1?2に記載された発明に基いて、以下同様に、請求項3?8に係る発明は引用例1?3に記載された発明に基いて、請求項9?10に係る発明は引用例1?4に記載された発明に基いて、請求項11に係る発明は引用例1?5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用例1.特開平8-29057号公報
引用例2.特開平7-265683号公報
引用例3.特公昭50-33150号公報
引用例4.特開平3-284343号公報
引用例5.英国特許出願公告第1059077号明細書

第4 引用例
1 引用例1
(1)引用例1に記載された事項
引用例1には、次の事項が記載されている(下線は、参考のため当審で付与したものである。以下、同様。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、製粒中の湿った粒状の練合物等を乾燥させるための流動乾燥装置に関するものである。」
「【0012】
【実施例】本発明の槽移動式流動乾燥装置を、その好適な一実施例の構成を示す斜視図である図1を参照しつつ説明する。図1において、槽移動式流動乾燥装置100は、略円筒状の筐体101と、筐体101の内部を垂直方向に下部の送風チャンバー110及び上部の流動層チャンバー120の2つに分割するフィルター102と、流動層チャンバー120の内部の中心に設けられた垂直軸121と、垂直軸121を中心としてその周囲に配列された複数の移動槽122と、送風チャンバー110を水平方向に複数に分割する第1の仕切板111と、第1の仕切板111により仕切られた各部分に所定の温風を供給するための送風管112と、流動層チャンバー120内の第1の所定位置Xに設けられ、移動槽122に所定量の被乾燥物を供給するための被乾燥物供給シュート123と、流動層チャンバー120内の第2の所定位置Yに設けられ、移動槽122から乾燥された被乾燥物を排出するための吸引ノズル124と、筐体101の天井部に設けられた排気口125とを具備している。
【0013】移動槽122は、垂直軸121を中心とする円筒状容器を、垂直軸121から放射状に等角度で設けられた複数の第2の仕切板(隔板)126で仕切ったものであり、図示しない駆動機構により垂直軸121を中心として間欠的に循環駆動(回転)される。一般的に、移動槽122の数は4?20であることが好ましく、この実施例では例えば12に仕切られている。送風チャンバー11と流動層チャンバー120との間にフィルター102を設けているが、円筒状容器の底面を直接フィルターとし、フィルター102を省略してもよい。また、第1の所定位置Xと第2の所定位置Yとは隣接し、未乾燥の湿った被乾燥物と乾燥された被乾燥物とが混ざらないように、第3の仕切板127により仕切られている。
【0014】送風チャンバー110は、第1の仕切板111により3以上(この実施例では4つ)の部分(以下、分割部分)に分割されている。各分割部分の内、第1の所定位置Xに対応する分割部分113には送風管112が設けられておらず、温風は供給されない。一方、分割部分113の第2の所定位置Yとは反対側に隣接する分割部分114には送風管112が設けられており、この部分の風量が最も多くなるように、風量調節装置(図示せず)により風量調節されている。また、各分割された部分は、第2の所定位置Yに対応する分割部分116の風量が最も少なくなるように、順次各分割部分115、116の風量が少くなるように調節されている。この実施例では、分割部分113は第1の所定位置Xに停止している1つの移動槽122にのみ対応し、他の分割部分114、115、116はそれぞれ3個、4個、4個の移動槽122に対応する。
【0015】移動槽122を間欠駆動する機構としては、移動槽122の底部にラチェット機構を設け、例えばエアーシリンダーのピストンの伸縮により、ラチェット機構の爪を1つずつ送る構成が考えられる。また、金属部材の摩耗防止等を考慮して、移動槽122を駆動する際、垂直軸121及び各移動槽122全体を持ち上げ、その状態で所定角度回転させるように構成してもよい。
【0016】以上のように構成された槽移動式流動乾燥装置100において、各移動槽122はそれぞれ略同じ大きさであり、各移動槽122の側壁(第2の仕切板)126の高さは、例えば粒状の練合物等の被乾燥物1がそれを乗り越えて隣の移動槽122に移動しないように設定されている。流動層チャンバー120内の第1の所定位置Xおいて、被乾燥物供給シュート123により移動槽122に所定量の被乾燥物1が供給され、被乾燥物1を収納した移動槽122は流動層チャンバー120内において間欠的に循環駆動され、一定の時間をかけて流動層チャンバー120内を一周する。そして、流動層チャンバー120内の第2の所定位置Yにおいて、吸引ノズル124により移動槽122から乾燥された被乾燥物1が排出される。下部の送風チャンバー110に導入された温風は、フィルター102を通って上部の流動層チャンバー120に流入し、各移動槽122の内部で被乾燥物1を巻き上げ、流動させる。この時、被乾燥物1は温風により乾燥される。送風チャンバー110は水平方向に複数の分割部分113、114、115、116に分割され、風量調節装置(図示せず)により分割部分114、115、116の風量が順に少なくなるように調節されているため、乾燥が進み被乾燥物1の重量が軽くなっても、被乾燥物1が移動槽122の側壁126を乗り越えて隣の移動槽122に移動することはない。その結果、被乾燥物1の全ての粒子は、第1の所定位置Xで移動槽122に供給されてから第2の所定位置Yで排出されるまで一定時間流動層チャンバー120内に滞留するため、乾燥時間が一定であり、均一に乾燥される。その結果、乾燥された粒子中に乾燥されていない粒子や粘性を示す粒子は含まれず、これらの粒子を核とする大きな粒子も生じない。」
「【0023】また、送風チャンバーを3以上の部分に分割し、各分割された部分の内、第1の所定位置に対応する部分には温風を供給しないことにより、第1の所定位置で被乾燥物の逆流を防止することができる。また、第1の所定位置に対応する部分の第2の所定位置とは反対側に隣接する部分の風量を最も多くすることにより、最も水分が高く重量が重い被乾燥物の流動性が増大し、効率よく乾燥させることができる。さらに、第2の所定位置に対応する部分は吸引により排出されるため、風量が最も少なくなるように、順次各分割された部分の風量を少くすることにより、乾燥が進み被乾燥物の重量が徐々に軽くなることに対応して、被乾燥物が移動槽の側壁を乗り越えることがなく、また恒率乾燥域から減率乾燥域への移行に合せて風量を効率的に使用することができ、全ての被乾燥物の流動層チャンバー内部の滞留時間を一定にすることができる。また、分割された部分の内、第1の所定位置に対応する部分を第1の所定位置に停止している1つの移動槽にのみ対応させ、他の分割された部分をそれぞれ2以上の移動槽に対応させることにより、風量調節手段の数を少なくすることができ、装置の構造を簡単にすることができる。」
「【図1】



「【図2】



上記【0013】の「送風チャンバー11と流動層チャンバー120との間にフィルター102を設けているが、円筒状容器の底面を直接フィルターとし、フィルター102を省略してもよい。」との記載から、円筒状容器の底面の下方にフィルター102が設けられていて、さらに【図1】及び【図2】から、フィルター102が薄く平たい形状であることは明らかである。

(2)引用例1に記載された発明
上記(1)の各記載事項を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「所定の温風を供給するための送風管112が設けられた送風チャンバー110、略円筒状の筐体101、筐体101の内部を垂直方向に下部の送風チャンバー110及び上部の流動層チャンバー120の2つに分割するフィルター102、被乾燥物供給シュート123、吸引ノズル124並びに円筒状容器の底面、から成り、
フィルター102は、円筒状容器の底面の下方に設けられており、薄く平たい形状であり、
流動層チャンバー120が垂直軸121を中心とする円筒状容器を垂直軸121から放射状に等角度で設けられた複数の第2の仕切板126で12に仕切った移動槽122を備え、
流動層チャンバー120内の第1の所定位置Xおいて、被乾燥物供給シュート123により移動槽122に所定量の被乾燥物1が供給され、被乾燥物1を収納した移動槽122は一定の時間をかけて流動層チャンバー120内を一周し、流動層チャンバー120内の第2の所定位置Yにおいて吸引ノズル124により移動槽122から乾燥された被乾燥物1が排出され、
下部の送風チャンバー110に導入された温風は、フィルター102を通って上部の流動層チャンバー120に流入し、各移動槽122の内部で被乾燥物1を巻き上げ、流動させ、この時、被乾燥物1は温風により乾燥される、
製粒中の湿った粒状の練合物等を乾燥させるための槽移動式流動乾燥装置100において、
送風チャンバー110が第1の仕切板111により4つの部分に分割され、各分割部分の内、被乾燥物供給シュート123が設けられた第1の所定位置Xに対応する分割部分113には送風管112が設けられておらず、温風は供給されず、吸引ノズル124が設けられた第2の所定位置Yとは反対側に隣接する分割部分114には送風管112が設けられており、この部分の風量が最も多くなるように、風量調節装置により風量調節されて、各分割された部分は、第2の所定位置Yに対応する分割部分116の風量が最も少なくなるように、順次各分割部分115、116の風量が少なくなるように調節されていて、
分割部分113は第1の所定位置Xに停止している1つの移動槽122にのみ対応し、他の分割部分114、115、116はそれぞれ3個、4個、4個の移動槽122に対応する、
槽移動式流動乾燥装置100。」

2 引用例2
(1)引用例2に記載された事項
引用例2には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粉粒体の造粒、コーティング、乾燥などに用いられる流動層装置の技術に関する。」
「【0035】(実施例2)図3は本発明の他の実施例である流動層装置を示す断面図、図4はその流動層装置に用いられた目皿板を示す平面図である。
【0036】本実施例に示す流動層装置は回分式の流動室1の底部に設けられた落下防止ネット4および目皿板25が、流入部側を高く対向部側が低くなるように傾斜して設けられ、また、図4に示すように、この目皿板25が、気体供給室8の流入口8aが位置する流入部側から対向部側に向かって3つの区域D,E,Fに円弧状に区画され、流入部側の区域Dから区域E,Fと行くにしたがって通気孔25aの穿孔密度が大きく設定されて開口率が相違されているものである。
【0037】すなわち、落下防止ネット4および目皿板25をこのように傾斜して設けた場合は、落下防止ネット4の高い位置から低い位置に向かうにしたがって堆積する粉粒体の層が厚くなるために、流入口側が最も通気抵抗が小さくなることに着目して目皿板5の開口率をこのように異ならせているものである。
【0038】なお、それ以外においては前記実施例1の流動層装置と同様であり、したがって、同一の部材には同一の符合が付されている。
【0039】本実施例に示す流動層装置によれば、粉粒体が流動用気体による上昇と自重による落下とを繰り返して流動層が形成される。そして、前記のように傾斜して設けられた目皿板25の開口率は流入部側の区域Dから区域E、そして対向部側の区域Fに向かって大きく設定されているので、やはり均一な流動状態の流動層を得ることができる。」
「【0041】たとえば、目皿板5,25の開口率は、本実施例に示すように通気孔5a,25aの穿孔密度を違えることの他にも、孔径を違えることや、穿孔に替えてスリットなどを用いてもよい。」
「【0043】目皿弁の開口率は、このように複数の区域に区画して互いに異ならせることの他にも、流入部側から対向部側に向かって漸次変化させることも可能である。この場合には、図7に示す目皿板55のように一方端から他方端に向かって通気孔55aの孔径を次第に変化させるように設定することや、図8に示す目皿板65ように異なる開口率のゾーンの境目をぼかすような孔径の通気孔65aを設けることができる。」
「【図3】


「【図4】


「【図7】


「【図8】


そして、上記【図3】に示された事項から、気体供給室8が分割化されていないことは、明らかである。

(2)引用例2に記載された技術
上記(1)の各記載事項を総合すると、引用例2には、以下の発明(以下「引用例2技術」という。)が記載されていると認められる。
「粉粒体が流動用気体による上昇と自重による落下とを繰り返して流動層が形成され、粉粒体の乾燥に用いられる流動層装置の技術であって、
目皿板が、分割化されていない気体供給室8の流入口8aが位置する流入部側から対向部側に向かって3つの区域D,E,Fに円弧状に区画され、最も通気抵抗が小さくなる流入部側の区域Dから区域E,Fと行くにしたがって通気孔の孔径が大きく設定されて開口率が相違されていて、
均一な流動状態の流動層を得ることができる、流動層装置の技術。」

第5 対比・判断
1 引用発明と本願発明との対比
(ア)引用発明の「所定の温風」は、「下部の送風チャンバー110に導入された温風」であって、「フィルター102を通って上部の流動層チャンバー120に流入し、各移動槽122の内部で被乾燥物1を巻き上げ、流動させ、この時、被乾燥物1は温風により乾燥される」ものであるから、本願発明の「ガス状乾燥媒体」に相当する。
引用発明は、「下部の送風チャンバー110に導入された温風は、フィルター102を通って上部の流動層チャンバー120に流入し、各移動槽122の内部で被乾燥物1を巻き上げ、流動させ」、「送風チャンバー110が第1の仕切板111により4つの部分に分割され」、「分割部分114には送風管112が設けられており、この部分の風量が最も多くなるように、風量調節装置により風量調節されて、各分割された部分は、第2の所定位置Yに対応する分割部分116の風量が最も少なくなるように、順次各分割部分115、116の風量が少なくなるように調節されていて」、「他の分割部分114、115、116はそれぞれ3個、4個、4個の移動槽122に対応」していて、分割部分114,115、116がそれぞれ温風を移動層に分配するものである。そうすると、各分割部分を備える、引用発明の「送風チャンバー110」は、温風を移動槽に分配するといえ、本願発明の「分配室(2)」に相当する。
上記の相当関係を踏まえると、引用発明の「所定の温風を供給するための送風管112」は、本願発明の「ガス状乾燥媒体を分配室(2)に供給するための」「導管(4)」に相当し、「送風管112が設けられた送風チャンバー110」は、本願発明の「導管(4)が付設された分配室(2)」に相当する。

(イ)引用発明は、「略円筒状の筐体101、筐体101の内部を垂直方向に下部の送風チャンバー110及び上部の流動層チャンバー120の2つに分割するフィルター102」を備えているから、引用発明において、「流動層チャンバー120」が「送風チャンバー110」の上方に配置されていることは明らかである。また、引用発明は「流動層チャンバー120が垂直軸121を中心とする円筒状容器を垂直軸121から放射状に等角度で設けられた複数の第2の仕切板126で12に仕切った移動槽122を備え」、「移動槽122は一定の時間をかけて流動層チャンバー120内を一周」し、「下部の送風チャンバー110に導入された温風は、フィルター102を通って上部の流動層チャンバー120に流入し、各移動槽122の内部で被乾燥物1を巻き上げ、流動させ」るから、引用発明の「流動層チャンバー120」は、渦流室であるといえる。
そうすると、引用発明の「流動層チャンバー120」は、本願発明の「分配室(2)の上方に配置された渦流室(3)」に相当する。

(ウ)引用発明において、「被乾燥物」が「製粒中の湿った粒状の練合物等」であることは明らかであるから、引用発明の「被乾燥物」は固体粒子であるといえる。また、引用発明は「被乾燥物供給シュート123により移動槽122に所定量の被乾燥物1が供給され」るから、引用発明の「被乾燥物供給シュート123」は、槽移動式流動乾燥装置100において被乾燥物の入口を構成する要素をなし、被乾燥物の入口ユニットであるといえる。そうすると、引用発明の「被乾燥物供給シュート123」は、本願発明の「固体粒子入口ユニット(6)」に相当する。
また、引用発明は「吸引ノズル124により移動槽122から乾燥された被乾燥物1が排出され」るから、引用発明の「吸引ノズル124」は、被乾燥物の出口を構成する要素をなし、被乾燥物の出口ユニットであるといえる。そうすると、引用発明の「吸引ノズル124」は、本願発明の「固体粒子出口ユニット(7)」に相当する。

(エ)引用発明は「流動層チャンバー120が」「円筒状容器を」「仕切った移動槽122を備え」、「下部の送風チャンバー110に導入された温風は、フィルター102を通って上部の流動層チャンバー120に流入」するものであるから、引用発明の「円筒状容器の底面」は、温風を受ける受流面であるといえる。そうすると、引用発明の「円筒状容器の底面」は、本願発明の「受流底面(11)」に相当する。
また、引用発明は「下部の送風チャンバー110に導入された温風は、フィルター102を通って上部の流動層チャンバー120に流入」するものであり、上記(ア)の「送風チャンバー110」と「分配室(2)」との相当関係を踏まえると、引用発明の「フィルター102」は、温風を分配するものであるといえる。さらに、フィルター102は「薄く平たい形状」であるから、板であるといえる。そうすると、引用発明の「フィルター102」は、本願発明の「空気分配板(18)」に相当する。
したがって、引用発明の「フィルター102は、円筒状容器の底面の下方に設けられており」という事項は、本願発明の「受流底面(11)の下方に配置された空気分配板(18)を有し、」という事項に相当する。

(オ)引用発明の「流動層チャンバー120が垂直軸121を中心とする円筒状容器を垂直軸121から放射状に等角度で設けられた複数の第2の仕切板126で12に仕切った移動槽122を備え、」から、「円筒状容器」が、中心の垂直軸121から放射状に等角度で設けられた複数の第2の仕切板126で仕切られた構造であることは明らかであり、当該構造から、引用発明の「円筒状容器」は星型であるといえる。また、引用発明は「各移動槽122の内部で被乾燥物1を巻き上げ、流動させ、この時、被乾燥物1は温風により乾燥される」ものであるから、各移動槽122の全体を示す「円筒状容器」は、乾燥機であるといえる。さらに、引用発明において「移動槽122は一定の時間をかけて流動層チャンバー120内を一周」するから、各移動槽122の全体を示す「円筒状容器」は、回転式であり、流動層チャンバー120内に配置されているといえる。上記(イ)の「流動層チャンバー120」と「渦流室(3)」との相当関係も踏まえると、引用発明の「円筒状容器」は、本願発明の「星型回転式乾燥機(8)」に相当し、引用発明は、本願発明の「渦流室(3)内に星型回転式乾燥機(8)が回転可能に配置され」という事項に相当するものを備える。

(カ)引用発明の「流動層チャンバー120が垂直軸121を中心とする円筒状容器を垂直軸121から放射状に等角度で設けられた複数の第2の仕切板126で12に仕切った移動槽122を備え、」という事項について、上記(イ)の「流動層チャンバー120」と「渦流室(3)」との相当関係、(オ)の「円筒状容器」と「星型回転式乾燥機(8)」との相当関係、(エ)の「円筒状容器の底面」と「受流底面(11)」との相当関係を踏まえると、引用発明の「第2の仕切板126」及び「移動槽122」は、本願発明の「隔壁(10)」及び「処理室(12)」にそれぞれ相当する。そして、引用発明は、「流動層チャンバー120が垂直軸121を中心とする円筒状容器を垂直軸121から放射状に等角度で設けられた複数の第2の仕切板126で12に仕切った移動槽122を備え」るものであるから、本願発明の「この星型回転式乾燥機に隔壁(10)が配置され、これら隔壁が、過流室(3)を分割するために受流底面(11)と共に処理室(12)を仕切り」という事項に相当するものを備える。

(キ)引用発明の「製粒中の湿った粒状の練合物等を乾燥させるための槽移動式流動乾燥装置100」は、本願発明の「固体粒子を処理するための流動化装置(1)」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「ガス状乾燥媒体を分配室(2)に供給するための導管(4)が付設された分配室(2)、分配室(2)の上方に配置された渦流室(3)、固体粒子入口ユニット(6)ならびに固体粒子出口ユニット(7)、受流底面(11)及び受流底面(11)の下方に配置された空気分配板(18)を有し、渦流室(3)内に星型回転式乾燥機(8)が回転可能に配置され、この星型回転式乾燥機に隔壁(10)が配置され、これら隔壁が、過流室(3)を分割するために受流底面(11)と共に処理室(12)を仕切り、固体粒子を処理するための流動化装置(1)。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は、「星型回転式乾燥機(8)の周囲に、固体粒子入口ユニット(6)から固体粒子出口ユニット(7)までの固体粒子用の搬送路が形成されている、」のに対して、引用発明は、そのような構成を備えるか不明な点。

[相違点2]
分配室及び空気分配板について、本願発明においては、「一つの導管(4)が付設された分配室(2)」であり、「分配室(2)が分割化されていない」及び「空気分配板(18)は、異なる直径を備えている開口部(22)を有し、開口部(22)の直径は、搬送路に沿った固体粒子入口ユニット(6)からの移動距離の増大と共に変化する」態様としているのに対して、引用発明は、「送風チャンバー110が第1の仕切板111により4つの部分に分割され、各分割部分の内、被乾燥物供給シュート123が設けられた第1の所定位置Xに対応する分割部分113には送風管112が設けられておらず、温風は供給されず、吸引ノズル124が設けられた第2の所定位置Yとは反対側に隣接する分割部分114には送風管112が設けられており、この部分の風量が最も多くなるように、風量調節装置により風量調節されて、各分割された部分は、第2の所定位置Yに対応する分割部分116の風量が最も少なくなるように、順次各分割部分115、116の風量が少なくなるように調節されている」態様としている点。

2 相違点に関する判断
(1)相違点1について
引用発明の「流動層チャンバー120が垂直軸121を中心とする円筒状容器を垂直軸121から放射状に等角度で設けられた複数の第2の仕切板126で仕切った移動槽122を備え、流動層チャンバー120内の第1の所定位置Xおいて、被乾燥物供給シュート123により移動槽122に所定量の被乾燥物1が供給され、被乾燥物1を収納した移動槽122は一定の時間をかけて流動層チャンバー120内を一周し、流動層チャンバー120内の第2の所定位置Yにおいて吸引ノズル124により移動槽122から乾燥された被乾燥物1が排出される」という点から、引用発明は「円筒状容器の周囲に、被乾燥物供給シュート123から吸引ノズル124までの被乾燥物用の搬送路が形成されている」ものであることが明らかである。
そうすると、上記「1 引用発明と本願発明との対比」で示した相当関係も踏まえると、引用発明は、本願発明の「星型回転式乾燥機(8)の周囲に、固体粒子入口ユニット(6)から固体粒子出口ユニット(7)までの固体粒子用の搬送路が形成されている」という事項に相当する構成を有する。
したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。
なお、引用発明において、「円筒状容器の周囲に、被乾燥物供給シュート123から吸引ノズル124までの被乾燥物用の搬送路が形成されている」という点については、本願明細書の【0006】「渦流室は固体粒子を搬送するために搬送路に沿って複数の隔壁を備えている。」及び【0025】「図5は星型回転式乾燥機8の斜視図を示す。星型回転式乾燥機は、円錐体9、回転方向15に湾曲された隔壁閉鎖部16を備えた隔壁10、および取外し可能あるいは不動に配置された受流底面11から成る。これにより処理室12が提供され、これらの処理室内で、固体粒子が正確に定義された滞留時間でもって渦流室3を通って搬送される。」という事項に基づき、引用発明の「流動層チャンバー120」、「円筒状容器」、「第2の仕切板126」、「円筒状容器の底面」及び「移動槽122」の機能・作用などを考慮して、上記のとおり判断した。

(2)相違点2について
引用例1に記載された「風量調節装置(図示せず)により分割部分114、115、116の風量が順に少なくなるように調節されているため、乾燥が進み被乾燥物1の重量が軽くなっても、被乾燥物1が移動槽122の側壁126を乗り越えて隣の移動槽122に移動することはない。」(【0016】)という事項を踏まえると、引用発明は、被乾燥物1の重量が重い(すなわち、通気抵抗が大きい)部分から、被乾燥物1の重量が軽い(通気抵抗が小さい)部分にかけて、風量が順に少なくなるように調整されているといえる。そして、引用発明は、「被乾燥物1が供給され、被乾燥物1を収納した移動槽122は一定の時間をかけて流動層チャンバー120内を一周」するもので、上記「(1)相違点1について」の判断を踏まえると、被乾燥物1の搬送路に沿って、被乾燥物1の重量が乾燥により軽くなるものといえる。
また、引用例2の【0036】に記載された「目皿板25が、気体供給室8の流入口8aが位置する流入部側から対向部側に向かって3つの区域D,E,Fに円弧状に区画され、流入部側の区域Dから区域E,Fと行くにしたがって通気孔25aの穿孔密度が大きく設定されて開口率が相違されている」及び【0037】に記載された「流入口側が最も通気抵抗が小さくなることに着目して目皿板5の開口率をこのように異ならせている」という事項を踏まえると、引用例2技術は、通気抵抗が大きい部分から、通気抵抗が小さい部分にかけて、風量が順に少なくなるように調整されているといえる。
そうしてみると、引用例1発明と引用例2技術とは、通気抵抗が大きい部分から、通気抵抗が小さい部分にかけて、風量が順に少なくなるように調整されているという点で共通するものであるから、引用例1に記載された「風量調節手段の数を少なくすることができ、装置の構造を簡単にすることができる」(【0023】)という事項及び装置構成の簡素化という引用発明が当然内在する課題を踏まえ、引用発明の送風チャンバー110及びフィルター102に引用例2技術を適用して、送風チャンバー110を分割する第1の仕切板111を設けず、送風チャンバー110に設ける送風管112を一つにして、フィルター102の通気孔の孔径が、分割部分114に相当する部分で最も大きく、分割部分116に相当する部分で最も小さくなるように順次調節することで、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたことである。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本願発明の効果
本願発明の効果は、引用発明及び引用例2技術に基いて、当業者が予測できる範囲を超えるものではない。

4 小括
上記1ないし3の検討によれば、本願発明は、引用発明及び引用例2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 請求人の主張について
請求人は、令和2年8月28日付け意見書において、「まず、当業者は、引用文献1の連続的に作業する流動化装置と引用文献2の不連続的に作業する流動化装置とを互いに組み合わせないことを指摘したいと考える。」と主張している。
しかしながら、引用発明と引用例2技術とは、“装置の位置に応じて異なる風量の気体を供給して、粒状の被乾燥物を乾燥させる流動乾燥装置”という点で、その機能において共通するものであるから、引用発明に引用例2技術を適用する動機付けが当業者にはあるものと認められる。連続的に作業するか、不連続的に作業するかという点は、引用発明の送風チャンバー110及びフィルター102に引用例2技術を適用するにあたり、特段の阻害事由とはならない。

また、請求人は、同意見書において「当業者が両引用文献1と2を組み合わせた場合、当業者は、星形回転式乾燥機(8)に配置された隔壁(10)と受流底面(11)により仕切られた各処理室(12)内で、流動層高さを均等にし、受流底面(11)の開口部を、相応にそれぞれの処理室(12)の半径方向の広がりに適合させることを試みることになる。従って、当業者は、受流底面内の開口部を変更し、受流底面(11)の上に落下防止ネットを張ることになる。これに応じて、当業者は、確かに、渦流室(3)の各処理室(12)内に均一な流動層高さを達成することはできるが、当業者は、例えば固体粒子に対する液体の噴霧のような異なる処理条件に対応するために、搬送路上で固体粒子入口ユニット(6)からの移動距離の増加と共に固体粒子を異なるように流動化することはできない。」と主張している。
当該主張については、「各処理室(12)内で、流動層高さを均等にし、受流底面(11)の開口部を、相応にそれぞれの処理室(12)の半径方向の広がりに適合させることを試みる」という点に十分な根拠を見いだせない。引用発明の送風チャンバー110及びフィルター102に引用例2技術を適用して「吸引ノズル124が設けられた第2の所定位置Yとは反対側に隣接する分割部分114・・・この部分の風量が最も多くなるように、風量調節装置により風量調節されて、各分割された部分は、第2の所定位置Yに対応する分割部分116の風量が最も少なくなるように、順次各分割部分115、116の風量が少くなるように調節されている」という機能と同等の機能を有する構成を実現するにあたり、「各処理室(12)内で、流動層高さを均等にし、受流底面(11)の開口部を、相応にそれぞれの処理室(12)の半径方向の広がりに適合させることを試みる」必要性は認められない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

6 まとめ
上記1ないし5の検討によれば、本願発明は、引用発明及び引用例2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-11-05 
結審通知日 2020-11-11 
審決日 2020-11-26 
出願番号 特願2016-505705(P2016-505705)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (F26B)
P 1 8・ 121- WZ (F26B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 礒部 賢  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 槙原 進
山田 裕介
発明の名称 流動化装置  
代理人 中村 真介  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 江崎 光史  

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