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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1373084
審判番号 不服2020-1846  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-10 
確定日 2021-04-12 
事件の表示 特願2014-265158「複合容器およびその製造方法、複合プリフォーム、ならびにプラスチック製部材」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月11日出願公開、特開2016-124147〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年10月16日付け:拒絶理由通知
同年12月20日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 1月 7日付け:拒絶理由通知(最後)
同年 3月14日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月10日付け:拒絶理由通知
令和 1年 6月14日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月22日付け:拒絶理由通知
同年 9月13日 :意見書の提出
同年11月18日付け:拒絶査定
令和 2年 2月10日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和1年6月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「複合容器の製造方法において、
プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームの外側に、ポリオレフィン系樹脂を含むプラスチック製部材を設ける工程と、
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程とを備え、
前記プリフォームは、口部と胴部と底部とを有し、前記プラスチック製部材は、前記プリフォームの少なくとも前記胴部を覆うように設けられ、
前記プラスチック製部材は、前記プリフォームに対して収縮する作用を有し、
前記プラスチック製部材は、貼り合わせ部を有さず、
前記プリフォームは、熱可塑性樹脂により構成されることを特徴とする複合容器の製造方法。」

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1ないし4に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.特表2004-532147号公報
2.特開昭61-206623号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献
1 引用文献1の記載事項等
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は、引用文献1に当初から記入されたもの又は当審で付与したものである。

ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレフォームの外面の少なくとも一部の上にラベルスリーブを配置してスリーブ付きプレフォームを製造せしめ;
そして前記スリーブ付きプレフォームをブロー成形してラベル付き容器を製造することを含んでなる、ブロー成形プロセスを用いてラベル付き容器を製造する方法。
・・・<略>・・・
【請求項5】
前記ラベルスリーブが配向及び非配向フィルム原料からなる群から選ばれたポリマーフィルム原料から作られる請求項1に記載の方法。
・・・<略>・・・
【請求項7】
前記ラベルスリーブがポリエステル、コポリエステル、ポリオレフィン及びそれらの混合物からなる群から選ばれたポリマーから作られる請求項1に記載の方法。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、ストレッチブロー成形プロセスを用いたラベル付き容器の製造方法を提供することにある。」
ウ「【0017】
本発明において有用な好ましいラベルスリーブは、容器を製造するためのプレフォームのブロー成形前にプレフォームの上にフィットするように作られたゆがみ印刷ラベルスリーブである。このラベルスリーブは、インフレート用プレフォームと共に膨張する配向又は非配向(unoriented)ポリマーフィルム原料から製造する。スリーブは非配向フィルム素材から製造するのが好ましいが、これは得られるスリーブは、ブロー成形プロセスの間にプレフォームと共に延伸されることになるからである。ラベルスリーブに非配向ポリマーフィルム原料すると、フィルムの配向に必要な追加の幅出機又はダブル-バブル工程を排除することによって、フィルム原料製造プロセスが単純化される。また、配向工程は実施に費用がかかり、容器の収縮フィルムラベリングプロセスのコストを増す。別の実施態様においては、スリーブは二軸配向又は一軸配向フィルム素材から製造する。」
エ「【0020】この方法で使用するラベルスリーブには、当業者によく知られた方法を用いて所望のラベルデザインを印刷しなければならない。好ましくは、ブロー成形プロセスの間にフィルムが受けるであろう膨張を補正するゆがみ印刷を使用する。膨張は場所によって異なる、即ち、容器のネックは側壁よりも膨張が少ないので、ゆがみ印刷パターンはそれに応じて変化させなければならないであろう。印刷は通常、フラットフィルム上で行い、スリーブチューブを作るにはフラットフィルムの両縁をつなぎ合わせなければならない。しかし、インフレート法を用いてフィルムを形成する場合には、スリッチング(slitting)及び再接着プロセスを経ずに直接チューブに印刷することが可能である。特定用途のための最も望ましいラベルスリーブ印刷法は、所望のパターン及び容器の製造に使用できる装置の型によって異なるであろう。更に、インフレートフィルムは、印刷の必要はなく、機能添加剤が望ましい用途に適している。例えば、着色剤又は顔料をポリマーに添加して、着色ラベルスリーブを作成できる。同様に、UV遮断コンセントレート、バリヤー層又は他の機能添加剤を、ラベルスリーブの作成に使用するポリマーに取り入れることができる。同様に、顔料添加チューブをプレフォームの周囲にフィットさせて、容器の色全体を変化させ、次いで、顔料添加チューブの上部を覆うように従来の貼り付けラベルを適用することができる。」
オ「【0027】
本発明において使用するプレフォームは、ポリエステル、ポリオレフィン及びポリカーボネートのような従来の成形用ポリマーから形成する。ポリマーは単層又は多層であることができる。他のポリマーを使用して、多層容器の一部の層を形成することもできる。このようなポリマーは当業界で公知であり、リサイクルポリマー、例えばポリエステル、機能性ポリマー(performance polymers)、例えばEVOH及びポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリエーテル、ブレンド並びにそれらのコポリマーを含む。」
カ「【実施例1】
【0038】
本発明を、その好ましい実施態様に関する以下の実施例によってさらに説明することができるが、言うまでもなく、これらの実施例は説明のためにのみ記載するのであって、特に断らない限り、本発明の範囲を制限することを目的としない。
【0039】
例1
PETスリーブを用いた2リットルボトル用輪郭ラベリング
インフレート法を用いて、わずかに配向されたPET 12822フィルムのスリーブを作った。これらのスリーブは、直径が1.44インチであり、呼称厚さが4milであった。ラベリングをシミュレートするために、マジックインキを用いて試験前のスリーブにグリッドパターンを描いた。使用したプレフォームは、外径1.15インチの2リットルボトル用プレフォームである。スリーブは、プレフォームよりもかなり大きかったが、これは試験時に使用できる唯一のスリーブ直径であった。
【0040】
実験室規模のRHBユニットを用いて、再加熱ブロー成形を行った。プレフォームはまず、赤外線石英型ヒーターのバンクを用いて約100℃の温度に加熱した。次に、プレフォームを速やかにブロー成形ステーションに移した。一方、金型を閉じる前に、スリーブはプレフォームを覆うように配置した。スリーブは、一端がネックリングに接触し且つ他端がほんのわずかにプレフォームの底面を越えるように、プレフォームの長さをカットした呼称(約5インチ)。25秒間の均熱処理時間を用いて、熱プレフォームの熱をフィルムに移した。次いで、軸方向延伸ロッド及と(当審注:「軸方向延伸ロッドと」の誤記。)空気圧を併用して、プレフォームをブロー成形した。
【0041】
金型から取り出すと、ラベルフィルムはボトルをほとんど完全に包み且つ輪郭の全てにタイトフィットしているのがわかった。最初のスリーブに描いたグリッドパターンは、ボトル中の延伸量(即ち、ネック部では少なく、側壁部では多い)に比例して膨張したので、ゆがみ印刷の補正がどの程度必要かがわかった。延伸後のラベルフィルムは、延伸量に応じて名目上約1/2mil又はそれ以下であった。
【0042】
例2
ポロプロピレンスリーブを用いた2リットルボトル用輪郭ラベル
前記例1と同様な手法に従って、PETの代わりにポリプロピレンを用いてインフレート法によってスリーブを作った。ポリプロピレンは、低コスト及び低密度のために既にラベルに最適の材料とされているので望ましい。ポリプロピレンは、呼称厚さ3mil及び幅1.6インチとした。例1と同様にボトルをブロー成形後、フィルムはボトルの輪郭にぴったりとフィットしているのがわかった。しかし、PETラベルフィルムとは異なり、このフィルムはベースボトルに密着しなかったので、リサイクルの間に容易に剥がすことができる。
【0043】
例3
IR加熱前にスリーブを加える、PETを用いた1.5リットルの詰め替え可能ボトル用輪郭ラベリング
例1に使用したPETスリーブを、呼称外径1.25インチの1.5リットル用プレフォームに適用した。しかし、このプレフォーム及び金型の組み合わせは異なる再加熱ブロー成形機に取り付けたので、方法は少し変更しなければならなかった。実験時には、加熱とブロー成形の間に、プレフォームスリーブを取り付けるのに充分な時間、機械を停止させる方法がなかった。従って、プレフォームスリーブは、赤外線加熱工程を始開始し且つスリーブが加熱及びブロー成形プロセス全体を経る前にプレフォームの上に配置した。スリーブにはまた、黒のマジックインキでグリットを描いた。加熱工程の間に、スリーブはプレフォームの周囲で下に向かってわずかに収縮し、それによってスリーブとプレフォームとの密着が増したことが観察された。ブロー成形工程の間に、スリーブはうまく延伸し、グリッドは均一にゆがみ、見栄えがする形態にフィットするラベルを形成した。しかし、ボトルへの密着は、スリーブを加熱後に加えた例1の場合よりも強かった。これは、ラベルとボトルとをより長い時間一緒にする追加の加熱によるものであったとするのが最も可能性が高い。」
キ「【図2】



(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)の記載事項カの例2、及び記載事項キの図2に、プレフォームが口部と胴部と底部とを有するものが示されていることから、引用文献1には、次の引用発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポリプロピレンを用いてインフレート法によってラベルスリーブを作った後、口部と胴部と底部とを有するプレフォームはまず、約100℃の温度に加熱し、次に、プレフォームを速やかにブロー成形ステーションに移す一方、金型を閉じる前に、ラベルスリーブはプレフォームを覆うように配置し、25秒間の均熱処理時間を用いて、プレフォームの熱をラベルスリーブに移し、次いで、軸方向延伸ロッドと空気圧を併用して、プレフォームをブロー成形してなるラベル付き容器を製造する方法。」

2 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
(1)「(1)熱可塑性樹脂製パリソンの表面に熱収縮フィルムを被覆させたのち二軸延伸ブロー成形する多層容器の製造方法において、熱収縮フィルムが環状インフレーションフィルムであることを特徴とする多層容器の製造方法。」(特許請求の範囲)
(2)「一方、あらかじめ延伸ブロー成形された容器に熱収縮フィルムをかぶせシュリンクトンネル内で熱収縮により定着させる方法では、延伸容器自体が熱収縮しやすく高温長時間の加熱をすることができない為、熱収縮フィルムを充分に収縮させる条件を選ぶことが難かしく、特に複雑な形状の容器の場合延伸容器との密着性が問題となる。
又、通常熱収縮フィルムをかぶせる場合、その熱収縮フィルムを熱又は接着剤でシールして使用する為、フィルムの継目が残り容器の外観に問題が生じるおそれがある。
本発明はこれらの問題点を解決し、複雑な装置を必要とせず安価で、本体樹脂層と被覆樹脂層との密着性に優れた多層容器の製造方法を提供するものである。」(第2ページ右上欄第5?19行)
(3)「熱収縮フィルムは、インフレーション法によって製造されたものが使用される。インフレーション法による熱収縮フィルムの製造法は公知の方法によって製造され、例えば通常の製膜温度より低目の温度で熱可塑性樹脂を押出し、横方向に1.1?4倍にブローする方法等によって得られる。」(第3ページ左上欄第8?13行)
(4)「本発明において熱可塑性樹脂製パリソンの表面に熱収縮フィルムの被覆を行なうには、例えば次の方法によって行なわれる。
射出延伸ブロー成形のうち、いわゆるホットパリソン方式の成形方法では、射出成形→予備加熱→二軸延伸ブローが連続工程で行なわれるが、円筒状の熱収縮フィルムは射出成形されたホットパリソンに装着され、パリソンの保持する熱によって熱収縮して、パリノン表面を被覆する。この多層パリソンは引続き次の工程へ進んで予備加熱後、二軸延伸ブローされ多層容器が得られる。熱収縮フィルムのパリソンへの被覆は、二軸延伸ブローする前であれば他の工程で行なっても良い。
また、いわゆるコールドパリソン方式の射出延伸ブロー成形では、射出成形されたパリソンが一度冷却して得られ、これを次の工程で延伸に適した温度に再加熱してから延伸ブロー成形されるが、熱収縮フィルムの装着は延伸ブロー成形する前の工程であれば良く、再加熱の前に装着し再加熱の温度を利用してフィルムを熱収縮させる方法、再加熱されたパリソンに装着してパリソンの持つ熱によって収縮する方法、また再加熱工程の前に別途フィルムを装着し熱収縮させる方法など、いずれの方法でもかまわない。
このようにしてパリソンは上記いずれの場合も。
パリソン全表面のうち口部直下から胴部周囲全面および底部の一部にかかる範囲で熱収縮フィルムで被覆される。」(第3ページ左上欄第19行?左下欄第7行)
(5)「〔発明の効果〕
通常二軸延伸ブロー成形に使用されるパリソンは、円筒状ないしはそれに類似する極簡単な形状をしているので、これに熱収縮フィルムを収縮させて密着させることは容易に且つ確実に行なわれ、外観上優れた容器を得ることができる。」(第4ページ左下欄第7?12行)

第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ラベル付き容器」、「プレフォーム」、「ポリプロピレンを用いてインフレート法によって」作られた「ラベルスリーブ」は、各々、本願発明の「複合容器」、「プリフォーム」、「ポリオレフィン系樹脂を含むプラスチック製部材」に相当する。また、引用発明の「ラベルスリーブ」は、インフレート法によって作られたものであり、引用文献1の上記記載事項第4 1(1)エの「印刷は通常、フラットフィルム上で行い、スリーブチューブを作るにはフラットフィルムの両縁をつなぎ合わせなければならない。しかし、インフレート法を用いてフィルムを形成する場合には、スリッチング(slitting)及び再接着プロセスを経ずに直接チューブに印刷することが可能である。」との記載からも、貼り合わせ部を有さないものである。
そして、引用文献1の上記記載事項第4 1(1)カの段落【0040】の「スリーブは、一端がネックリングに接触し且つ他端がほんのわずかにプレフォームの底面を越えるように、プレフォームの長さをカットした呼称(約5インチ)。」より、引用発明のラベルスリーブは、プリフォームの少なくとも胴部を覆うように設けられるものである。
そうすると、両者は、
「複合容器の製造方法において、
プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームの外側に、ポリオレフィン系樹脂を含むプラスチック製部材を設ける工程と、
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程とを備え、
前記プリフォームは、口部と胴部と底部とを有し、前記プラスチック製部材は、前記プリフォームの少なくとも前記胴部を覆うように設けられた
複合容器の製造方法。」で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
プラスチック製部材について、本願発明が「前記プリフォームに対して収縮する作用を有し」と特定しているのに対し、引用発明はそのような特定がされていない点。
<相違点2>
プリフォームについて、本願発明が「熱可塑性樹脂により構成される」と特定しているのに対し、引用発明はそのような特定がされていない点。

2 相違点の検討
上記相違点について検討する。
<相違点1>について
(1)引用発明のラベルスリーブは、インフレート法によって製造されたものである。引用文献1の上記記載事項第4 1(1)カの段落【0039】には、PETスリーブの例ではあるが、「インフレート法を用いて、わずかに配向されたPET 12822フィルムのスリーブを作った。」と記載されているし、インフレート法によって製造されたフィルムは、膨張時に延伸され配向されるものであるから、引用発明の「ポリプロピレンを用いてインフレート法によって」作られた「ラベルスリーブ」は、多少なりとも延伸され配向されていると解するのが自然である。そして、インフレート法(インフレーション法)により延伸され配向されたフィルムは、引用文献1の上記記載事項第4 1(1)カの段落【0043】に、「加熱工程の間に、スリーブはプレフォームの周囲で下に向かってわずかに収縮し」と記載されていることや、例えば、引用文献2の上記記載事項第4 2(3)の「熱収縮フィルムは、インフレーション法によって製造されたものが使用される。」との記載からも明らかなように、熱によって「収縮する作用を有する」ものである。そして、25秒間の均熱処理時間を用いて、プレフォームの熱がラベルスリーブに移ることから、引用発明の「ポリプロピレンを用いてインフレート法によって」作られた「ラベルスリーブ」は、「プレフォームに対して収縮する作用を有する」と解するのが自然である。
よって、この点は、実質的な相違点ではない。

(2)相違点1が実質的な相違点であるとした場合について、以下検討する。
ア 引用文献1の上記記載事項第4 1(1)アの「【請求項5】前記ラベルスリーブが配向及び非配向フィルム原料からなる群から選ばれたポリマーフィルム原料から作られる」や、同記載事項第4 1(1)ウ「別の実施態様においては、スリーブは二軸配向又は一軸配向フィルム素材から製造する。」との記載から、ラベルスリーブは、配向された二軸配向又は一軸配向フィルムを用いることが可能なことが記載されている。そして、上記したように配向されたフィルムは、熱によって「収縮する作用を有する」ものである。
してみると、引用発明におけるスリーブとして、配向された二軸配向又は一軸配向フィルム、すなわち熱によって「収縮する作用を有する」ものを採用し、もって、「プレフォームに対して収縮する作用を有する」ようにすることは当業者が容易になし得たことである。

イ また、プリフォームにプラスチック製部材を被覆させたのち、プリフォームおよびプラスチック製部材を一体として膨張させるブロー成形により複合容器を製造する方法において、プラスチック製部材として熱収縮フィルムを用いることも、例えば、上記引用文献2に示されるように、本願出願前に周知の技術であり、当該周知の技術により「複雑な装置を必要とせず安価で、本体樹脂層と被覆樹脂層との密着性に優れた」効果が奏される(上記記載事項第4 2(2))。
してみると、引用発明におけるスリーブとして、本体樹脂層と被覆樹脂層との密着性に優れた等の効果を奏する周知の「プレフォームに対して収縮する作用を有する」ものを採用することは当業者が容易になし得たことである。

<相違点2>について
引用文献1の上記記載事項第4 1(1)オに示されるように、プリフォームとして、「熱可塑性樹脂により構成される」ものは周知慣用のものである。
そうすると、引用発明のプレフォームについて、周知慣用の「熱可塑性樹脂により構成される」ものを採用することは当業者が容易になし得たことである。

3 効果について
本願発明の効果について、本願明細書の段落【0100】には、「プリフォーム10a(容器本体10)とプラスチック製部材40a(プラスチック製部材40)とを別部材から構成することができる。したがって、プラスチック製部材40の種類や形状を適宜選択することにより、複合容器10Aに様々な機能や特性を自在に付与することができる。」と記載されている。
しかしながら、上記記載事項第4 1(1)オに示されるように引用発明の「プレフォーム」はポリエステル等から構成され、「ラベルスリーブ」はポリプロピレンから構成されるように別部材から構成されるものであるし、引用文献1の上記記載事項第4 1(1)エの「更に、インフレートフィルムは、印刷の必要はなく、機能添加剤が望ましい用途に適している。例えば、着色剤又は顔料をポリマーに添加して、着色ラベルスリーブを作成できる。同様に、UV遮断コンセントレート、バリヤー層又は他の機能添加剤を、ラベルスリーブの作成に使用するポリマーに取り入れることができる。」との記載から、引用発明も、ラベル付き容器に様々な機能や特性を自在に付与することができるものである。
してみると、本願発明の効果は、引用発明、周知の技術及び周知慣用の事項から当業者が予測し得る範囲のものである。

4 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「3.本願が特許されるべき理由」において、
「引用文献1においては、ブロー成形時において、樹脂を配向させると共に、延伸させることにより、熱収縮性を付与しており、プリフォームへのラベル装着時においては、ラベルは熱収縮性を有していないのであります。」(以下、主張アという。)
「審査官殿がご説示されますように、引用文献2および3においては、インフレーション法により作製された熱収縮性フィルムが開示されております。
しかしながら、引用文献1において開示される発明、このようにして作製した熱収縮性フィルムはコスト面で好ましくなく、これを改善するために発明されたものであり、これら引用文献1の発明がなされた背景に鑑みれば、引用文献2および3において開示される技術的事項を、引用文献1の発明に組み合わせることは当業者であれば行わないものと思料いたします。」(以下、主張イという。)と主張しているため、以下検討する。

(1)主張アについて
上記「2<相違点1>について」で述べたように、引用文献1に記載される他の実施形態を認定した引用発明は、「ポリプロピレンを用いてインフレート法によって」作られた「ラベルスリーブ」を用いるのであるから、当該ラベルスリープは、「プレフォームに対して収縮する作用を有する」と解するのが自然であるし、引用文献1の上記記載事項第4 1(1)ア又はウにおいて記載されているように、当該ラベルスリーブは、配向されたフィルム、すなわち、熱によって「収縮する作用を有する」ものを用いることが可能なことが記載されている。
このため、請求人が主張する「引用文献1においては、・・・プリフォームへのラベル装着時においては、ラベルは熱収縮性を有していないのであります。」との主張アは首肯することができない。

(2)主張イについて
上記(1)で検討したように、引用発明は、熱収縮性を有するラベルスリーブを使用することが否定されるものではない。
そして、インフレート法により作られたラベルスリーブは、フィルム成形時に同時に延伸されるもので、引用文献1の課題に記載されるような、別途、幅出機を用いて延伸するものに比べ、製造コストが抑えられるものである。このため、請求人の「引用文献1において開示される発明、このようにして作製した熱収縮性フィルムはコスト面で好ましくなく」との主張は採用できない。そして、引用発明におけるラベルスリーブとして、引用文献2等に例示される周知技術を採用する上で特段の阻害要因も見当たらないため、請求人の上記主張イは、やはり首肯することができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明のみから、あるいは引用発明、周知の技術及び周知慣用の事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-02-05 
結審通知日 2021-02-09 
審決日 2021-02-26 
出願番号 特願2014-265158(P2014-265158)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 貴夫  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 細井 龍史
大島 祥吾
発明の名称 複合容器およびその製造方法、複合プリフォーム、ならびにプラスチック製部材  
代理人 朝倉 悟  
代理人 浅野 真理  
代理人 中村 行孝  
代理人 末盛 崇明  

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