• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1373250
審判番号 不服2019-16730  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-10 
確定日 2021-05-11 
事件の表示 特願2016- 16589「二重容器用キャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月 3日出願公開、特開2017-132539、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年5月14日付け:拒絶理由通知
令和元年7月22日 :意見書の提出
令和元年9月3日 :拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和元年12月10日 :審判請求書の提出
令和2年9月4日付け :拒絶理由通知
令和2年11月6日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、令和2年11月6日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、次のとおりの発明である。
「 【請求項1】
内容物を収容する減容変形可能な内層体と該内層体を内側に収容する外層体とを有する二重容器本体の口部に装着可能なキャップ本体と、
前記キャップ本体に設けられた前記内容物の注出孔を開閉可能に設けられると共に、前記注出孔を閉じることで、該注出孔に連通すると共に前記内容物を密封する密封空間を形成可能な蓋体と、
前記密封空間に面して設けられ、前記密封空間から外界に向かう空気の排出を許容する一方、前記密封空間への空気の進入を阻止する一方向弁と、
前記密封空間に面して設けられ、表裏の圧力差の変化に応じて変形可能な膜体と、を備え、
前記膜体の変形を外界から視認可能であることを特徴とする二重容器用キャップ。
【請求項2】
前記膜体は蓋体の内部に配置されており、
前記蓋体は、前記膜体を外部に露出させる開口部を備える、請求項1に記載の二重容器用キャップ。
【請求項3】
前記膜体は蓋体の内部に配置されており、
前記膜体には、前記蓋体に設けられた貫通孔を通じて前記蓋体の外部に露出する延長部が一体に設けられている、請求項1に記載の二重容器用キャップ。
【請求項4】
前記注出孔から空気を前記密封空間を通じて外界に排気するときの空気の通過によって音を生じさせる音出し部を備える、請求項1?3のいずれか一項に記載の二重容器用キャップ。
【請求項5】
前記一方向弁は前記膜体と一体に形成されている、請求項1?4のいずれか一項に記載の二重容器用キャップ。」

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2009-286435号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
圧搾可能な胴部10上に口頸部12を起立した形態をなし、且つ、保形性の外容器体A_(1)と、可撓性の内容器体A_(2)との二重構造をなす容器体Aと、口頸部12外周に着脱可能に嵌合させた周壁20上端縁より頂壁21を延設したキャップBと、キャップB内頂部に設けるとともに、口頸部12へキャップBを嵌着した際に口頸部12の開口を気密に閉塞する閉塞部材Cとを備え、キャップBを口頸部12へ嵌着した際に、外部と遮断され且つ内外容器体間と連通する密閉空間が画成される如く構成するとともに、容器体胴部10の圧搾により内容器体A_(2)内の空気を外部へ一方的に排出する排気弁v_(1)を設け、且つ、外容器体A_(1)の弾性復元で負圧化する内外容器体間に密閉空間を介して外気を一方的に導入する外気導入弁v_(2)を設けたことを特徴とする錠剤容器。
【請求項2】
閉塞部材Cは、キャップ周壁20内周上端部に嵌着した嵌合筒部30の下端縁より内方へフランジ31を延設するとともに、フランジ31下面より垂設したシール筒部32を口頸部12内面上端部に気密に嵌合させ、且つ、嵌合筒部30に連通用孔36を設けてなる基部材C_(1)と、フランジ31上面内縁部に下端を嵌着した区画壁40の上端をキャップ頂壁21に密接するとともに、区画壁40より延設したドーム状の閉塞壁41によりフランジ31内周の窓孔37を閉塞し、且つ、区画壁40の外面よりフランジ状弁板43を突設してなる弁部材C_(2)で構成し、閉塞壁41に設けたスリット42と、キャップ頂壁21に設けた排気弁口22とで排気弁v_(1)を形成し、キャップ頂壁21に設けた外気導入弁口23と、フランジ状弁板43とで外気導入弁v_(2)を形成した請求項1記載の錠剤容器。」
「【0023】
こうして弁部材C_(2)を装着したキャップBを容器体Aに螺着させた際に、外部と遮断され且つ内外容器体間と連通する密閉空間が画成される。密封空間は、大径部12a とキャップ周壁20とで下端を気密に閉塞され、口頸部12とキャップ周壁20とで囲成される下部空間と、連通用孔36を介してその上方に連通し、フランジ状弁板43,区画筒40,キャップ頂壁21,フランジ31,嵌合筒部30等で囲成される上部空間とで構成している。この密閉空間は、口頸部の透孔13を介して外容器体A_(1)と内容器体A_(2)との間と連通している。但し、製造当初は内容器体A_(2)が外容器体A_(1)に積層しているため一見非連通状態となっているが、内容器体A_(2)が外容器体A_(1)両者は易剥離性のため、容易に剥がれて連通する。従って、内容器体A_(2)と外容器体A_(1)との間が負圧化した際には、外気導入弁v_(2)から密閉空間を介して内容器体A_(2)と外容器体A_(1)との間に外気が導入される如く構成している。
【0024】
シール蓋Dは、未使用時にキャップBの頂面に剥離可能に着して排気弁口22や外気導入弁口23を閉塞し、使用時に取り外して廃棄する。
【0025】
上記の如く説明した錠剤容器1は、図2に示す如く、最初容器体Aは内容器体A_(2)が外容器体A_(1)に積層されたデラミ容器の状態で形成され、容器体Aの口頸部12内は錠剤が充満されていない状態であり、この状態から胴部10を圧搾すると内容器体A_(2)内の空気が排気弁v_(1)を介して外部に排気され、図1に示す如く、口頸部12内の上部まで錠剤が満弁なく行き渡っている。圧搾を解除すると排気弁v_(1)が閉じているため、内容器体A_(2)は容積を縮小したままの状態を維持し、また、外容器体A_(1)は弾性復元力で元の状態に戻ろうとするため、内容器体A_(2)が外容器体A_(1)から剥離して両者間に隙間が発生しするとともに、該隙間が負圧化し、そこに外気導入弁v_(2)を開いて導入された外気が透孔13を介して導入される。この状態でシール蓋Dを貼着して流通させる。尚、流通させる際は必ずこの様にする必要は無く、内容器体A_(2)を外容器体A_(1)から剥がさない状態で流通させることも当然可能である。
【0026】 また、使用に当たっては、図1の状態からシール蓋Dを剥がし、キャップBを外し、必要な数だけ錠剤を取り出す。次いでキャップBを螺着した後、胴部10を圧搾して内容器体A_(2)の内容積を必要量だけ縮小し、一方大小容器体間に外気導入弁v_(2)を介して外気を導入する。」
以上の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「圧搾可能な胴部10上に口頸部12を起立した形態をなし、且つ、保形性の外容器体A_(1)と、内容積を必要量だけ縮小できる可撓性の内容器体A_(2)との二重構造をなす容器体Aと、
口頸部12外周に着脱可能に嵌合させた周壁20上端縁より頂壁21を延設したキャップBと、
キャップB内頂部に設けるとともに、口頸部12へキャップBを嵌着した際に口頸部12の開口を気密に閉塞する閉塞部材Cとを備え、
キャップBを口頸部12へ嵌着した際に、外部と遮断され且つ内外容器体間と連通する密閉空間が画成される如く構成するとともに、容器体胴部10の圧搾により内容器体A_(2)内の空気を外部へ一方的に排出する排気弁v_(1)を設け、且つ、外容器体A_(1)の弾性復元で負圧化する内外容器体間に密閉空間を介して外気を一方的に導入する外気導入弁v_(2)を設けた錠剤容器。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2003-200956号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項2】 開口部を有し,所定の保存物を収容する容器本体の投入開口部を開閉する容器カバーと,前記容器カバーの板面に形成された陥没部と,前記陥没部の底面に設けられ,前記容器本体の内部と外部を相互連通させる空気連通口が形成されたボス部と,所定の収容部を有し,前記陥没部の開放部を開閉する回動カバーと,前記回動カバーの収容部に着脱可能に結合されたカバー部材からなる真空バルブであって:さらに,前記カバー部材の中央に形成された貫通孔と;前記カバー部材内に収容され,一端が前記ボス部の開口表面と気密に接触可能な気密フランジ部と,前記気密フランジ部から中央に向けて所定の高さに湾曲するよう突出形成され,前記容器本体の内部が真空または真空解除されることに伴って収縮または膨張することにより前記空気連通口を開閉する略半球状のヘッド部と,を有する真空保持部材と;前記ヘッド部から上方に向けて所定の高さに延出され,前記容器本体内部の真空状態に応じて前記貫通孔から上下移動して,前記カバー部材の外部において前記容器本体内部の真空状態を表す突起と;を含む,ことを特徴とする真空計機能を有する真空バルブ。
【請求項3】 開口部を有し,所定の保存物を収容する容器本体の投入開口部を開閉する容器カバーと,前記容器カバーの板面に形成された陥没部と,前記陥没部の底面に設けられ,前記容器本体の内部と外部を相互連通させる空気連通口が形成されたボス部と,所定の収容部を有し,前記陥没部の開放部を開閉する回動カバーと,前記回動カバーの収容部に着脱可能に結合されたカバー部材からなる真空バルブであって:さらに,前記カバー部材の中央に形成された貫通孔と;前記ボス部の開口より大きい直径を有し,前記空気連通口が形成された前記ボス部の開口表面と気密に接触可能な気密フランジ部と,前記気密フランジ部の内側から上方に向けて所定の高さに至るまで拡径され,折返し部を介してさらに上方に向けて所定の高さまで縮径される円錐体と,からなる真空保持部材と;を含む,ことを特徴とする真空計機能を有する真空バルブ。
【請求項4】 開口部を有し,所定の保存物を収容する容器本体の投入開口部を開閉する容器カバーと,前記容器カバーの板面に形成された陥没部と,前記陥没部の底面に設けられ,前記容器本体の内部と外部を相互連通させる空気連通口が形成されたボス部と,所定の収容部を有し,前記陥没部の開放部を開閉する回動カバーと,前記回動カバーの収容部に着脱可能に結合されたカバー部材からなる真空バルブであって,さらに,前記カバー部材の中央に形成された貫通孔と;前記ボス部に着脱可能に結合される中空の胴体部と,前記胴体部の少なくとも何れかの一面に半径方向に延出された膜状の延出フランジ部を有する気密部材と;前記カバー部材内に収容され,一端が前記気密部材の延出フランジ部と接触可能に形成された気密フランジ部と,前記気密フランジ部から中央に向けて所定の高さに湾曲されるよう突出形成され,前記容器本体の内部が真空および真空解除されることによる収縮および膨張により前記空気連通口を開閉する半球状のヘッド部を有する真空保持部材と;前記ヘッド部から上方に向けて所定の高さに延出され,前記容器本体内部の真空状態に応じて前記貫通孔から上下移動して前記容器本体内部の真空状態を前記カバー部材の外部へ表出する突起と,を含むことを特徴とする真空計機能を有する真空バルブ。」
「【0007】したがって,本発明の目的は,容器本体の内部をより効果的かつ確実に長期間の間,真空保持できると共に,簡易な構造で,容器本体内の真空状態を容易に認識することが可能な新規かつ改良された真空計機能を有する真空バルブを提供することにある。」
「【0044】一方,ボス部(25)の下部には,空気連通口(26)を介して容器本体(10)の内外側へ空気が流れる場合に,空気の流れを聴覚的に伝達して真空状態の有無を確認する音発生部(28)が設けられている。」
「【0047】次に,本実施形態にかかる真空バルブの作動方法について説明する。
【0048】まず,容器本体(10)内に所定の食品を収納する。その後,容器カバー(20)を容器本体(10)の投入開口部に載置し,係止部(22)を下げて係止部(22)が係り顎に係止して容器カバー(20)を固定する。
【0049】次に,把持部(36)を把持した状態でヒンジ部(34)を軸にして回動カバー(32)を回動させながら陥没部(24)の開放部を閉鎖する。かかる回動カバー(32)が陥没部(24)の開放部を閉鎖した状態においては,真空保持部材(50)の気密接触面(51a)が気密部材(30)の第1の延出フランジ部(31)に接触した状態となる。
【0050】このような状態において,容器カバー(20)の板面を容器本体(10)に向けて加圧すると,容器本体(10)内に存在している空気は,ボス部(25)に設けられている空気連通口(26)を介して外部に排出される。このとき,空気連通口(26)を通過する空気は音発生部(28)により聴覚的な音を発生するようになる。
・・・
【0055】一方,容器本体(10)内の食品を使用しようとする場合には,把持部(36)を把持した状態でヒンジ部(34)を軸として回動カバー(32)を回動させながら,陥没部(24)の開放部を開放する。このことにより,真空保持部材(50b)の気密接触面(51b)は,第1の延出フランジ部(31)から離脱されると共に,外部空気は空気連通口(26)及び音発生部(28)を介して容器本体(10)内に流入され,容器本体(10)の真空状態が解除される。このとき,音発生部(28)では,所定の聴覚的な音が発生し,真空保持部材(50b)のヘッド部(52b)に形成された突起(53b)は,原位置へ上向きに浮上して容器本体(10)の内部が真空解除された状態が示される。
【0056】その後,容器カバー(20)の係止部(22)を上げて,容器本体(10)の係り顎から係りが解除し,容器本体(10)の投入開口部から容器カバー(20)を分離することにより,容器本体(10)内に収容された食品を使用することができる。」

第4 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明を対比する。
引用発明の「内容積を必要量だけ縮小できる可撓性の内容器体A_(2)」及び「保形性の外容器体A_(1)」は、その機能・構成からみて、それぞれ本願発明1の「内容物を収容する減容変形可能な内層体」及び「該内層体を内側に収容する外層体」に相当するから、引用発明の「保形性の外容器体A_(1)と、内容積を必要量だけ縮小できる可撓性の内容器体A_(2)との二重構造をなす容器体A」及びその「口頸部12」は、本願発明1の「内容物を収容する減容変形可能な内層体と該内層体を内側に収容する外層体とを有する二重容器本体」及びその「口部」に相当する。
引用発明の「口頸部12へ嵌着」する「キャップB」と、本願発明1の「前記内容物の注出孔」が「設けられた」「内容物を収容する減容変形可能な内層体と該内層体を内側に収容する外層体とを有する二重容器本体の口部に装着可能なキャップ本体」とは、「内容物を収容する減容変形可能な内層体と該内層体を内側に収容する外層体とを有する二重容器本体の口部に装着可能なキャップ本体」という限りで一致する。
引用発明の「キャップB内頂部に設けるとともに、口頸部12へキャップBを嵌着した際に口頸部12の開口を気密に閉塞する閉塞部材C」と、本願発明1の「前記キャップ本体に設けられた前記内容物の注出孔を開閉可能に設けられると共に、前記注出孔を閉じることで、該注出孔に連通すると共に前記内容物を密封する密封空間を形成可能な蓋体」とは、「前記内容物を密封する密封空間を形成可能な蓋体」の限りで一致する。
引用発明の「容器体胴部10の圧搾により内容器体A_(2)内の空気を外部へ一方的に排出する排気弁v_(1)」は、本願発明1の「前記密封空間に面して設けられ、前記密封空間から外界に向かう空気の排出を許容する一方、前記密封空間への空気の進入を阻止する一方向弁」に相当する。
引用発明の「キャップB」及び「キャップB内頂部に設けるとともに、口頸部12へキャップBを嵌着した際に口頸部12の開口を気密に閉塞する閉塞部材C」は、本願発明1の「二重容器用キャップ」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「内容物を収容する減容変形可能な内層体と該内層体を内側に収容する外層体とを有する二重容器本体の口部に装着可能なキャップ本体と、
前記内容物を密封する密封空間を形成可能な蓋体と、
前記密封空間に面して設けられ、前記密封空間から外界に向かう空気の排出を許容する一方、前記密封空間への空気の進入を阻止する一方向弁と、を備えた
二重容器用キャップ。」
[相違点1]
「キャップ本体」について、本願発明1は、「前記内容物の注出孔」が「設けられ」ているのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。
[相違点2]
「前記内容物を密封する密封空間を形成可能な蓋体」について、本願発明1は、「蓋体」が「前記キャップ本体に設けられた前記内容物の注出孔を開閉可能に設けられると共に、前記注出孔を閉じることで、該注出孔に連通すると共に前記内容物を密封する密封空間を形成可能な」ものであるのに対し、引用発明は、「閉塞部材C」は、「前記キャップ本体に設けられた前記内容物の注出孔を開閉可能に設けられる」ものではないため、「前記注出孔を閉じる」ものではない点。
[相違点3]
本願発明1は、「前記密封空間に面して設けられ、表裏の圧力差の変化に応じて変形可能な膜体」「を備え、」「前記膜体の変形を外界から視認可能である」ものであるのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

まず、相違点1について検討する。
引用発明の「キャップB」に「錠剤を取り出す」ための孔を設けるためには、「口頸部12へキャップBを嵌着した際に口頸部12の開口を気密に閉塞する閉塞部材C」にも「錠剤を取り出す」ための孔を設けることが要されるところ、引用文献1の【0025】の記載によれば、引用発明は、「胴部10を圧搾すると内容器体A_(2)内の空気が」「排気弁v_(1)を介して外部に排気され、」「圧搾を解除すると排気弁v_(1)が閉じているため、内容器体A_(2)は容積を縮小したままの状態を維持」する機能を奏するものなのであるから、「キャップB」及び「閉塞部材C」に「錠剤を取り出す」ための孔を設けることとなれば、前記「排気弁v_(1)」による機能を損なうこととなる。
すなわち、引用発明において、「キャップB」に「錠剤を取り出す」ための孔を設けること、すなわち、相違点1に係る構成のようにすることには阻害要因がある。
そして、当該阻害要因がある以上、引用発明において、「閉塞部材C」を、「キャップB」の「錠剤を取り出す」ための孔を開閉可能に設けるように構成すること、すなわち、相違点2に係る構成のようにすることにも阻害要因がある。
また、引用文献2には、「開口部を有し,所定の保存物を収容する容器本体の投入開口部を開閉する容器カバーと,前記容器カバーの板面に形成された陥没部と,前記陥没部の底面に設けられ,前記容器本体の内部と外部を相互連通させる空気連通口が形成されたボス部と,所定の収容部を有し,前記陥没部の開放部を開閉する回動カバーからなる真空バルブ。」が記載されているが、「容器カバー」には、「容器本体・・・の内外側へ空気が流れる」「空気連通孔」が形成され、「容器本体・・・の投入開口部から容器カバー・・・を分離することにより,容器本体・・・内に収容された食品を使用することができる」ものであり、「容器カバー」に、「容器本体」内に「収容された食品」を取り出す孔を設けたものではないから、仮に、上記阻害要因がなく、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用したとしても、引用発明を、上記相違点1及び相違点2に係る構成のようにすることはできない。
したがって、引用発明において、上記相違点1及び相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、上記相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2?5について
本願発明2?5は、本願発明1を更に限定するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定の要旨は、請求項1?5に係る発明について、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかし、本願発明1?5は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由(特許法第36条第6項第2号)について
当審では、請求項1の「前記注出孔を閉じることで該注出孔に連通する密封空間」という記載が不明確である旨の拒絶理由を通知しているが、令和2年11月6日に提出された手続補正書による補正によって、「前記注出孔を閉じることで、該注出孔に連通すると共に前記内容物を密封する密封空間」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?5は、当業者が、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
 
審決日 2021-04-13 
出願番号 特願2016-16589(P2016-16589)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
P 1 8・ 537- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 正宗  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 石井 孝明
藤井 眞吾
発明の名称 二重容器用キャップ  
代理人 杉村 憲司  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 片岡 憲一郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ