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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1373336
審判番号 不服2020-4059  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-26 
確定日 2021-05-12 
事件の表示 特願2017-526045「反射に基づくコントロールのアクティブ化」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 4日国際公開、WO2016/018957、平成29年 9月 7日国内公表、特表2017-526096、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)7月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年8月1日、米国(以下、この日を「優先権主張日」という。))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 7月20日 手続補正書の提出
令和 元年 6月 5日付け 拒絶理由通知書
令和 元年 8月23日 意見書の提出
令和 元年11月29日付け 拒絶査定
令和 2年 3月26日 審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年11月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の請求項1,2,4,5,7,9,10,12,13,15及び17ないし19に係る発明は、その優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の請求項1ないし19に係る発明は、その優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1ないし3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2013-200654号公報
2.特開平10-097376号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平05-204526号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明19」という。)は、平成30年7月20日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりである。

「【請求項1】
プロセッサが実施する方法であって、
2以上のユーザインターフェースコントロールを電子デバイスの光学的反射面に表示するステップと、
前記電子デバイスの前記光学的反射面において光学的に映し出された光学的反射像と、前記2以上のユーザインターフェースコントロールのうちの1つのユーザインターフェースコントロールが表示される前記光学的反射面における物理的位置との間の位置合わせを検出するステップと、
前記位置合わせが、前記1つのユーザインターフェースコントロールが表示される前記物理的位置において維持されている間に、選択アクションを検出するステップと、
検出された前記位置合わせ及び検出された前記選択アクションに応答して前記1つのユーザインターフェースコントロールをアクティブにするステップと
を含む方法。」

なお、本願発明2ないし19の概要は以下のとおりである。
本願発明2ないし8は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明9ないし16は、本願発明1ないし8の「方法」の発明を、それぞれ「電子システム」の発明としたものであり、カテゴリー表現が異なるだけの発明である。
本願発明17は、本願発明1の「方法」の発明を、「プログラム」の発明としたものであり、カテゴリー表現が異なるだけの発明である。
本願発明18は、本願発明17を減縮した発明である。
本願発明19は、本願発明17及び18の「プログラム」の発明を記憶した「1以上のコンピュータ可読記憶媒体」の発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置、表示制御方法、情報表示システム及びプログラムに関する。」

「【0008】
図1は、本実施形態の情報表示システム10の概要を示す。情報表示システム10は、使用者1の姿勢を検出し、使用者1の姿勢から使用者1の右手22及び左手24のうち操作用の手を特定し、当該操作用の手の動きに応じて制御された表示内容を表示する。情報表示システム10は、検出センサ装置100、表示制御装置200、及び表示装置300を備える。」

「【0027】
表示制御部210は、使用者1の操作指示に応じて表示装置300の表示内容を制御する。例えば、表示制御部210は、画像入力部202から取得した画像を表示装置300の表示画面に表示する。表示制御部210は、使用者1の操作指示の対象であるアプリケーション等の処理を実行する。表示制御部210は、アプリケーション等のアイコン、及び/又は、指示取得部206から取得した操作指示の実行結果等の情報を表示装置300の表示画面に反映する。」

【図1】

「【0032】
図3は、本実施形態の情報表示システム10の処理フローを示す。本実施形態において、表示制御装置200は、検出センサ装置100から取得した画像及び予め記憶した人体形状のパターン等に基づいて、使用者1の操作用の手を特定する。情報表示システム10は、S110からS120までの処理により情報を表示する。図3に示す処理フローは、例えば、情報表示システム10が表示装置300の前に使用者1が立ったことを検出した時に開始するか、あるいは、情報表示システム10が、使用者1から操作用の手の設定開始の指示を受け取った時に開始してよい。
【0033】
まず、S110において、検出センサ装置100は、光波測距センサ及び/又はビデオカメラにより、使用者1の画像を取得して、使用者1の身体の一部又は全体の三次元及び/又は二次元空間上の位置を検出する。検出センサ装置100は、使用者1の画像を表示制御装置200の画像入力部202に供給する。使用者1の画像は、画素ごとに使用者1の検出センサ装置100からの距離データを含んでいてよい。
【0034】
次に、S112において、画像入力部202は、検出センサ装置100から使用者1を撮像した画像を入力し、当該画像を特定部204、指示取得部206、及び表示制御部210に供給する。ここで、情報表示システム10が表示装置300に使用者1の鏡像を表示させる場合、画像入力部202は入力した使用者1の画像を左右反転させた後に、当該画像を特定部204等に供給してよい。
【0035】
次に、S114において、特定部204は、検出された使用者1の両手の位置の相互関係に基づいて、使用者1の右手22及び左手24のうちいずれの手を操作用の手とするのかを特定する。具体的には、特定部204は、画像入力部202から使用者1の画像を取得する。次に、特定部204は、予め記憶した多数の人の身体形状のパターン、輪郭パターン又はシルエットパターン等に基づいて、取得した画像から人物の立体パターン等と概ね一致する部分のみを抽出し、背景等を除くことにより、使用者1の画像を抽出する。
【0036】
次に、特定部204は、予め記憶した身体形状のパターン、輪郭パターン又はシルエットパターン等に基づいて、抽出した画像中における使用者1の左手及び右手の領域をそれぞれ特定する。例えば、抽出した使用者1の鏡像画像中において、使用者1の左側に予め記憶した手のパターン等と略一致する形状の領域が発見された場合、特定部204は当該領域を使用者1の右手に対応する領域と特定する。同様に、特定部204は、使用者1の左手に対応する領域を特定する。
【0037】
次に、特定部204は、抽出した使用者1の両手のうちいずれかを操作用の手と特定する。例えば、特定部204は、使用者1の両手のうち、より高い位置もしくは低い位置にある方の手を、操作用の手として特定してよい。また、特定部204は、より高い位置にある方の手で、且つ、予め定められた基準位置より上に挙げられたことを更に条件として、操作用の手を特定してよい。例えば、特定部204は、基準位置を使用者1の肩、首又は頭の位置とし、使用者1の高い位置にある方の手が使用者の肩、首又は頭の位置より上に挙げられたことを認識したことに応じて、当該手を操作用の手として特定してよい。
【0038】
また、特定部204は、使用者1の手のひらが検出センサ装置100に向いている、すなわち表示装置300の画面に向いていることを更に条件として、操作用の手を特定してよい。この場合、特定部204は、抽出した使用者1の画像の左手及び右手の形を予め記憶した多数の左手及び右手の手のひらの立体パターン、輪郭パターン又はシルエットパターン等とそれぞれ対比し、手のひらが表示装置300の画面に向いていると判断した手を操作用の手と特定してよい。特定部204は、使用者1の両手に対応する領域に関する情報及び特定した操作用の手が両手のどちらの手であるかの情報を指示取得部206に供給する。
・・・ 中 略 ・・・
【0042】
例えば、指示取得部206は、使用者1の操作用の手の位置に対応する画面位置が表示装置300の表示画面内のアイコンの位置と重なった状態で、使用者1が操作用の手で予め定められたジェスチャー等をしたことを認識した場合は、当該アイコンと対応するアプリケーションに関連する指示を操作指示としてよい。
【0043】
予め定められたジェスチャーは、例えば、開いた手を握った状態にすること、握った手を開くこと、手を左右方向に振ること、手を上下方向に動かすこと、手でボタンを押す動作をすること、手でクリック又はダブルクリックする動作をすること、手で円を描く動作をすること、手を一定時間静止させること、一部又は全ての指を動かすこと、その他の手の運動又はこれらの組み合わせであってよい。
【0044】
アプリケーションに関連する指示は、当該アプリケーションの実行、削除、又はプロパティの表示等であってよい。例えば、使用者1の操作用の手のの位置に対応する画面上の位置が表示装置300の表示画面内のアイコンの位置と重なった状態で、操作用の手がボタンを押す動作をしたことを指示取得部206が検出した場合、指示取得部206は当該アイコンと対応するアプリケーションを実行する指示を取得してよい。
・・・ 中 略 ・・・
【0050】
次に、S120において、表示制御部210は、使用者1の操作指示に応じて表示装置300の表示内容を制御する。具体的には、表示制御部210は、画像入力部202から取得した使用者1の画像を表示装置300の表示画面に表示する。光波測距センサから取得した画像を表示する場合、表示制御部210は使用者1のシルエット画像を表示してよい。ビデオカメラから取得した画像を表示する場合、表示制御部210は使用者1のカラー画像、カラー画像を画像処理した使用者1の白黒画像又はシルエット画像を表示してよい。
【0051】
更に、表示制御部210は、操作対象であるアプリケーションのアイコンを、表示装置300の使用者1の画像上に重ねて表示してよい。更に、表示制御部210は、指示取得部206から取得した操作指示の実行結果を表示装置300の表示画面に反映してよい。
【0052】
例えば、操作指示がアプリケーションの実行である場合、表示制御部210は当該アプリケーションを実行し、その実行結果を表示装置300の使用者1の画像及びアイコン上に重ねて表示する。また、例えば、操作指示がアプリケーションの削除である場合、表示制御部210は、表示画面から削除対象となったアプリケーションのアイコンを削除する。また、例えば、操作指示がアプリケーションのプロパティの表示である場合、表示制御部210は、当該アプリケーションのプロパティを表示画面に表示する。」

「【0081】
図8は、表示制御装置200として機能するコンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ1900は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、及び、表示装置300として機能しうる表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、及びCD-ROMドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070を有するレガシー入出力部を備える。
・・・ 中 略 ・・・
【0086】
コンピュータ1900にインストールされ、コンピュータ1900を表示制御装置200として機能させるプログラムは、画像入力モジュールと、特定モジュールと、指示取得モジュールと、カーソル制御モジュールと、表示制御モジュールと、通信モジュール、認識モジュールと、検索モジュールと、判断モジュールとを備える。これらのプログラム又はモジュールは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、画像入力部202と、特定部204と、指示取得部206と、カーソル制御部208と、表示制御部210と、通信部212と、認識部232と、検索部234と、判断部236としてそれぞれ機能させてよい。
【0087】
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ1900に読込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である画像入力部202と、特定部204と、指示取得部206と、カーソル制御部208と、表示制御部210と、通信部212と、認識部232と、検索部234と、判断部236として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ1900の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の表示制御装置200が構築される。」

そうすると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「検出センサ装置100、表示制御装置200、及び表示装置300を備える、情報表示システム10の表示制御方法であって、
表示制御装置200は、CPU2000を備えるコンピュータ1900により機能し、
プログラムは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、画像入力部202と、特定部204と、指示取得部206と、表示制御部210として機能させ、
検出センサ100は、使用者1の画像を取得し、使用者1の画像を表示制御装置200の画像入力部202に供給し、
画像入力部202は、入力した使用者1の画像を左右反転させた後に、当該左右反転させた画像を特定部204、指示取得部206、及び表示制御部210に供給し、
特定部204は、検出された使用者1の両手の位置の相互関係に基づいて、使用者1の右手22及び左手24のうちいずれの手を操作用の手とするのかを特定し、使用者1の両手に対応する領域に関する情報及び特定した操作用の手が両手のどちらの手であるかの情報を指示取得部206に供給し、
指示取得部206は、使用者1の操作用の手の位置に対応する画面上の位置が表示装置300の表示画面内のアイコンの位置と重なった状態で、操作用の手がボタンを押す動作をしたことを指示取得部206が検出した場合、指示取得部206は当該アイコンと対応するアプリケーションを実行し、
表示制御部210は、アプリケーション等のアイコン、及び/又は、指示取得部206から取得した操作指示の実行結果等の情報を表示装置300の表示画面に反映するものであって、画像入力部202から取得した使用者1の画像を表示装置300の表示画面に表示するとともに、操作指示がアプリケーションの実行である場合、当該アプリケーションを実行し、その実行結果を表示装置300の使用者1の画像及びアイコン上に重ねて表示する、
表示制御方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、眼線方向を検出して視線により操作を行う視線操作装置に関するものである。」

「【0007】
【発明の実施の形態】本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。図1は実施例の視線操作装置の構成図を示し、視線操作装置は操作者の眼の前方にあり、操作者の眼Eの周囲を照明するLEDなどの赤外光源1、駆動手段2により駆動されて自動的に合焦する撮影レンズ3、この撮影レンズ3の後方に配置され映像のぼけを検知する赤外テレビカメラから成る撮像手段4、校正用視標a、bや操作スイッチ5a、5bを表示するCRTである表示部材6、角膜反射像の位置計算を行う演算制御手段7により構成されている。なお、演算制御手段7には、表示部材6に表示する記号の発生回路、その表示制御プログラム、視線演算プログラム、小画面M用のメモリなどが含まれている。
【0008】図2、図3は表示部材6の画面を示し、図2には装置を使用する前に視線方向の較正に使用する較正用視標a、bが表示されており、図3には装置の操作をするための種々の操作スイッチ5a、5b等が記号発生回路から発生されて表示され、画面の右下角には図4に示すような前眼部像を表示する小画面Mが設けられている。
【0009】装置を使用する前に表示部材6に校正用視標a、bを逐次に表示し、操作者眼Eはそれらを見て予め眼Eの視線方向を校正しておく。次に、操作者は眼Eで表示部材6に表示された操作スイッチ5a、5bを見て視線によって装置の操作を行う。
【0010】赤外光源1からの光束は鎖線で示すように操作者の眼Eの周囲を照明し、眼Eの瞳孔P内には赤外光源1による角膜反射像が生ずる。赤外光源1に照明された眼Eの前眼部像は撮影レンズ3を介して撮像手段4に撮像され、この前眼部像を基に演算制御手段7により演算が行われて映像のぼけが検知され、駆動手段2により撮影レンズ3が駆動されて自動的に合焦が行われる。そして、合焦時の撮影レンズ3の位置が検知されて、演算制御手段7により眼Eまでの距離が算出される。
【0011】また、演算制御手段7では撮像手段4の映像信号から瞳孔Pと赤外光源1の角膜反射像の位置が演算されるが、このとき赤外光源1が点滅することによって外光と区別され外光による映像は差し引かれる。角膜反射光は非常に強いので閾値を設けて検出し、瞳孔Pはその周りの暗い丸い領域として認識される。赤外光源1と眼Eの眼底はほぼ共役なので、眼底反射光は赤外光源1に戻り撮像手段4には入射することはないので、瞳孔Pの内側は黒く映り、瞳孔Pの縁を容易に認識することができる。また、瞳孔Pの画面内の位置が分かれば撮像手段4から見た眼Eの方向が分かるので、眼Eの距離と合わせて眼Eの位置を特定することができ、この眼Eの位置情報を使って視線方向を演算する。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、情報処理装置の入力装置に係り、特に、選択入力情報を画面に表示することで操作者からの入力情報指示を待つ情報処理装置の入力装置に関する。」

「【0011】(第一実施例)図1は本発明の第一実施例のブロック図であり、表示装置2、映像装置1、画像処理装置3、制御装置4を少なくとも備えて成る。
【0012】表示装置2は、操作者に対して選択入力を促す項目を表示するもので、その表示形式は、具体的には、メニュー形式で項目を文字列あるいが画像で複数表示する形式、あるいは図2(a)、図2(b)に示すように、対話形式で画面上に質問内容を表示してその下に画面を区分した解答を表示する形式がとられる。
【0013】この場合、回答および選択項目を操作者が選択したことを操作者自身に伝えるために、選択項目別に区別された画面を反転する動作、視点の位置を操作者に伝えるために視点まわりの画面のコントラストを変化させる動作等を制御装置4の指示により行う。これにより操作者は自分の現在の視点位置と選択入力の適否を確認することができる。
【0014】表示装置2は、また、画面の位置基準となる中心、右端、左端を表示する。これにより、映像装置1による視点監視の位置補正を行うことができる。
【0015】映像装置1は、例えばCCDカメラとこのカメラの方向を補正する駆動機構とを有し、操作者が表示装置2の画面を見て質問および選択画面を読み、項目別に区分された表示領域に視点が止まるまでの間、操作者の目の映像を撮る。そして操作者の目のレンズの動き、焦点等の情報を画像処理装置3および制御装置4に送る役割を持つ。
【0016】画像処理装置3は、映像装置1から送られてくる画像を受け、この画像を解析処理することにより、焦点の合っている領域の画像を抽出して、その画像を表示画面の中から検索する。これにより画面のどの領域(文字等)を見ているかを検出することができる。また、この目の動きから操作者の選択(入力)意志に変換する解析処理を行う。この解析処理は、操作者が説明、選択文を読んでいるとき、目の動きは上下左右に視点が動いているが、選択をする場合、視点は選択文の一箇所付近に止まることが多くなる。これを利用して意志判断を抽出する。
【0017】制御装置4は、映像装置1からの画像と画像処理装置3で抽出した情報とを表示装置2に送る。また、操作者の顔、目の位置、形、レンズ等のパターン認識を行なうとともに、常に目の付近の映像を得るためにCCDカメラを上下左右に制御し、その向きの補正を行う。
【0018】図3は上記構成の視点監視入力装置の動作を示すフローチャートであり、表示装置1の画面を用いて撮像装置2の位置補正を行った後、操作者が見ている画像を撮る(ステッフ゜100 )。この画像を画像処理装置3でパターン認識等の画像処理を行うことにより(ステッフ゜101 )操作者の視野を確認する(ステッフ゜102 )。これを表示中の画面と比較して(ステッフ゜103 )操作者の視点を検出する(ステッフ゜104 )。検出した視点を画面上の質問項目等の表示位置と対応させることで操作者の入力意志の検出処理を行い(ステッフ゜105 )、検出された情報を入力意志情報として(ステッフ゜106 )情報処理装置に入力する。
【0019】これにより、操作者は表示画面を見るだけで画面選択、質問事項に対する回答等を行うことが可能となり、従来のような煩わしい手入力から解放される。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「情報表示システム10」は、本願発明1の「電子デバイス」に対応する。
また、引用発明の「アイコン」は、「使用者1の操作用の手の位置に対応する画面上の位置が表示装置300の表示画面内のアイコンの位置と重なった状態で、操作用の手がボタンを押す動作をしたことを指示取得部206が検出した場合、指示取得部206は当該アイコンと対応するアプリケーションを実行」するものであるから、本願発明1の「ユーザインターフェースコントロール」に相当する。
加えて、引用発明は、「使用者1の操作用の手の位置に対応する画面上の位置が表示装置300の表示画面内のアイコンの位置と重なった状態」を取得していることから、「アイコン」は「表示装置300」の表示画面に表示されていると認められる。
また、引用発明は、「アイコン」が「表示装置300」の表示画面に表示されていることから、この表示画面と、本願発明1の「2以上のユーザインターフェースコントロールを」表示する「電子デバイスの光学的反射面」とは、電子デバイスの画面である点で共通する。
そうすると、引用発明の「情報表示システム10」の「表示装置300」の表示画面に「アイコン」を表示することと、本願発明1の「2以上のユーザインターフェースコントロールを電子デバイスの光学的反射面に表示するステップ」とは、ユーザインターフェースコントロールを電子デバイスの画面に表示するステップである点で共通する。

イ 引用発明は、「画像入力部202」が、「入力した使用者1の画像を左右反転させた後に、当該左右反転させた画像を」「表示制御部210に供給し」、「表示制御部210」が、「画像入力部202から取得した使用者1の画像を表示装置300の表示画面に表示」するから、表示装置300の表示画面に表示された、使用者1の画像は、左右が反転された画像となる。そして、この使用者1の左右が反転された画像と、本願発明1の「光学的に映し出された光学的反射像」は、左右が反転した像である点で共通する。
そして、引用発明は「使用者1の操作用の手の位置に対応する画面上の位置が表示装置300の表示画面内のアイコンの位置と重なった状態」を検出しているから、この検出と、本願発明1の「前記電子デバイスの前記光学的反射面において光学的に映し出された光学的反射像と、前記2以上のユーザインターフェースコントロールのうちの1つのユーザインターフェースコントロールが表示される前記光学的反射面における物理的位置との間の位置合わせを検出するステップ」とは、前記電子デバイスの前記画面において左右が反転した像と、1つのユーザインターフェースコントロールが表示される前記画面における物理的位置との間の位置合わせを検出するステップである点で共通する。

ウ 引用発明の「使用者1の操作用の手の位置に対応する画面上の位置が表示装置300の表示画面内のアイコンの位置と重なった状態で、操作用の手がボタンを押す動作をしたことを指示取得部206が検出」することの、前記検出は、前記重なった状態にある間に押す動作を検出していることであると認められる。
また、この重なった状態は、表示画面内の物理的位置に置いて、アイコンと操作用の手が重なった状態であると認められる。
加えて、引用発明の「操作用の手がボタンを押す動作」は、本願発明1の「選択アクション」に相当する。
そうすると、引用発明の前記検出をすることは、本願発明1の「前記位置合わせが、前記1つのユーザインターフェースコントロールが表示される前記物理的位置において維持されている間に、選択アクションを検出するステップ」に相当する。

エ 引用発明の「指示取得部206は、使用者1の操作用の手の位置に対応する画面上の位置が表示装置300の表示画面内のアイコンの位置と重なった状態で、操作用の手がボタンを押す動作をしたことを指示取得部206が検出した場合、指示取得部206は当該アイコンと対応するアプリケーションを実行」することは、本願発明1の「検出された前記位置合わせ及び検出された前記選択アクションに応答して前記1つのユーザインターフェースコントロールをアクティブにするステップ」に相当する。

オ 引用発明の「CPU2000」は、本願発明1の「プロセッサ」に相当する。
また、引用発明は「プログラム」が「CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、画像入力部202と、特定部204と、指示取得部206と、表示制御部210として機能させ」ているのであるから、「画像入力部202」、「特定部204」、「指示取得部206」、「表示制御部210」の各動作は、「CPU2000」が実行していると認められる。
そうすると、引用発明の「情報表示システム10の表示制御方法」は、本願発明1の「プロセッサが実施する方法」に対応する。

カ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「プロセッサが実施する方法であって、
ユーザインターフェースコントロールを電子デバイスの画面に表示するステップと、
前記電子デバイスの前記画面において左右が反転した像と、1つのユーザインターフェースコントロールが表示される前記画面における物理的位置との間の位置合わせを検出するステップ
前記位置合わせが、前記1つのユーザインターフェースコントロールが表示される前記物理的位置において維持されている間に、選択アクションを検出するステップと、
検出された前記位置合わせ及び検出された前記選択アクションに応答して前記1つのユーザインターフェースコントロールをアクティブにするステップと
を含む方法。」

[相違点1]
本願発明1は「ユーザインターフェースコントロール」が2つ以上であるのに対して、引用発明の「アイコン」の数は特定されていない点。

[相違点2]
ユーザインターフェースコントロールを電子デバイスの画面に表示することについて、本願発明1は「ユーザインターフェースコントロールを電子デバイスの光学的反射面に表示する」のに対して、引用発明の「表示装置300」のアイコンが表示される表示画面は、光学的反射面であることは特定されていない点。

[相違点3]
前記電子デバイスの前記画面において左右が反転した像について、本願発明1は「前記光学的反射面において光学的に映し出された光学的反射像」であるのに対して、「表示装置300」の表示画面が、光学的反射面ではないために、光学的に映し出された光学的反射像でない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2及び3について先に検討する。
引用文献2及び3には、ユーザインターフェースコントロールを電子デバイスの光学的反射面に表示すること、及び、この光学的反射面に光学的反射像を光学的に映し出すことは記載されておらず、優先権主張日前に周知の技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、相違点1について検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明ということはできない。また、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし8について
本願発明2ないし8も、本願発明1の「ユーザインターフェースコントロールを電子デバイスの光学的反射面に表示する」こと、及び「前記光学的反射面において」「光学的反射像」を光学的に映し出すという技術的事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明ということはできない。また、本願発明2ないし8は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明9ないし16について
本願発明9ないし16は、本願発明1ないし8の「方法」の発明に対応する「電子システム」の発明であり、本願発明1の「ユーザインターフェースコントロールを電子デバイスの光学的反射面に表示する」こと、及び「前記光学的反射面において」「光学的反射像」を光学的に映し出すという技術的事項に対応する技術的事項を備えるものであるから、本願発明1ないし16と同様の理由により、引用文献1に記載された発明ということはできない。また、本願発明9ないし16は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明17について
本願発明17は、本願発明1の「方法」の発明に対応する「コンピュータプログラム」の発明であり、本願発明1の「ユーザインターフェースコントロールを電子デバイスの光学的反射面に表示する」こと、及び「前記光学的反射面において」「光学的反射像」を光学的に映し出すという技術的事項に対応する技術的事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1に記載された発明ということはできない。また、本願発明17は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

5 本願発明18について
本願発明18は、本願発明17と同様に、本願発明1の「ユーザインターフェースコントロールを電子デバイスの光学的反射面に表示する」こと、及び「前記光学的反射面において」「光学的反射像」を光学的に映し出すという技術的事項に対応する技術的事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1に記載された発明ということはできない。また、本願発明18は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

6 本願発明19について
本願発明19は、本願発明17及び18の「プログラム」の発明を記憶した「1以上のコンピュータ可読記憶媒体」の発明であり、本願発明1の「ユーザインターフェースコントロールを電子デバイスの光学的反射面に表示する」こと、及び「前記光学的反射面において」「光学的反射像」を光学的に映し出すという技術的事項に対応する技術的事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1に記載された発明ということはできない。また、本願発明19は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし19は、引用文献1に記載された発明ということはできない。
また、本願発明1ないし19は、引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-04-27 
出願番号 特願2017-526045(P2017-526045)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 小田 浩
野崎 大進
発明の名称 反射に基づくコントロールのアクティブ化  
代理人 山本 修  
代理人 宮前 徹  
代理人 上田 忠  
代理人 中西 基晴  

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