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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1373404
審判番号 不服2020-5744  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-28 
確定日 2021-04-22 
事件の表示 特願2017-141835号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年2月7日出願公開、特開2019-17928号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯の概要
本願は、平成29年7月21日の出願であって、平成31年4月18日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年6月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月25日付けで最後の拒絶の理由が通知され、令和2年1月6日に意見書が提出されたところ、同年1月30日付け(送達日:同年2月4日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和2年4月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年4月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1?2のうち、請求項1について、令和1年6月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
各種処理を実行し、処理の実行に際して内部記憶手段に情報を一時的に記憶させる制御手段を備え、
当該制御手段は、
前記各種処理のうち第1特定処理を実行する第1特定処理実行手段と、
前記各種処理のうち第2特定処理を実行する第2特定処理実行手段と、
前記第2特定処理を実行している状況から前記第1特定処理を実行する状況となる場合又は前記第1特定処理を実行する状況となった場合に、前記内部記憶手段に記憶された少なくとも一部の情報である所定情報を所定記憶手段に退避させる退避実行手段と、
前記第1特定処理を終了する場合又は前記第1特定処理を終了した後に、前記所定記憶手段に退避された前記所定情報を前記内部記憶手段に復帰させる復帰実行手段と、
割込み条件が成立したことに基づいて割込み処理を開始させる手段と、
前記退避実行手段により前記所定記憶手段への前記所定情報の退避が行われる前に前記割込み処理の開始を禁止し、前記復帰実行手段により前記内部記憶手段に前記所定情報が復帰された後に前記割込み処理の開始を許可する手段と、
を備え、
前記第1特定処理を実行している状況から前記第2特定処理を実行する状況となる場合、前記内部記憶手段に設けられたスタックポインタの情報は固定の情報となる構成であることを特徴とする遊技機。」を、
審判請求時に提出された手続補正書(令和2年4月28日付け)の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
各種処理を実行し、処理の実行に際して内部記憶手段に情報を一時的に記憶させる制御手段を備え、
当該制御手段は、
前記各種処理のうち第1特定処理を実行する第1特定処理実行手段と、
前記各種処理のうち第2特定処理を実行する第2特定処理実行手段と、
前記第2特定処理を実行している状況から前記第1特定処理を実行する状況となる場合又は前記第1特定処理を実行する状況となった場合に、前記内部記憶手段に記憶された少なくとも一部の情報である所定情報を所定記憶手段に退避させる退避実行手段と、
前記第1特定処理を終了する場合又は前記第1特定処理を終了した後に、前記所定記憶手段に退避された前記所定情報を前記内部記憶手段に復帰させる復帰実行手段と、
割込み条件が成立したことに基づいて割込み処理を開始させる手段と、
前記退避実行手段により前記所定記憶手段への前記所定情報の退避が行われる前に前記割込み処理の開始を禁止し、前記復帰実行手段により前記内部記憶手段に前記所定情報が復帰された後に前記割込み処理の開始を許可する手段と、
を備え、
前記第1特定処理を実行している状況から前記第2特定処理を実行する状況となる場合、前記内部記憶手段に設けられたスタックポインタの情報は固定の情報となる構成であり、
前記第2特定処理には遊技を進行させるための処理が含まれており、
前記第1特定処理には遊技履歴を管理するための処理が含まれており、
前記第2特定処理を実行している状況から前記第1特定処理を実行する状況への移行が前記割込み処理による割込みによって発生する構成ではないことを特徴とする遊技機。」と補正するものである(下線は、補正箇所を明示するために当審判合議体にて付した。)。

2 補正の適否
2-1 補正の目的及び新規事項について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1特定処理、第2特定処理」に関して、「前記第2特定処理には遊技を進行させるための処理が含まれて」いること、「前記第1特定処理には遊技履歴を管理するための処理が含まれて」いること、「前記第2特定処理を実行している状況から前記第1特定処理を実行する状況への移行が前記割込み処理による割込みによって発生する構成ではない」ことを限定することを含むものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正の補正事項は、願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の【0710】、【0723】?【0742】の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

2-2 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Fは、分説するため当審判合議体にて付した。)。
「A 各種処理を実行し、処理の実行に際して内部記憶手段に情報を一時的に記憶させる制御手段を備え、
B 当該制御手段は、
B1 前記各種処理のうち第1特定処理を実行する第1特定処理実行手段と、
B2 前記各種処理のうち第2特定処理を実行する第2特定処理実行手段と、
B3 前記第2特定処理を実行している状況から前記第1特定処理を実行する状況となる場合又は前記第1特定処理を実行する状況となった場合に、前記内部記憶手段に記憶された少なくとも一部の情報である所定情報を所定記憶手段に退避させる退避実行手段と、
B4 前記第1特定処理を終了する場合又は前記第1特定処理を終了した後に、前記所定記憶手段に退避された前記所定情報を前記内部記憶手段に復帰させる復帰実行手段と、
B5 割込み条件が成立したことに基づいて割込み処理を開始させる手段と、
B6 前記退避実行手段により前記所定記憶手段への前記所定情報の退避が行われる前に前記割込み処理の開始を禁止し、前記復帰実行手段により前記内部記憶手段に前記所定情報が復帰された後に前記割込み処理の開始を許可する手段と、
を備え、
B7 前記第1特定処理を実行している状況から前記第2特定処理を実行する状況となる場合、前記内部記憶手段に設けられたスタックポインタの情報は固定の情報となる構成であり、
C 前記第2特定処理には遊技を進行させるための処理が含まれており、
D 前記第1特定処理には遊技履歴を管理するための処理が含まれており、
E 前記第2特定処理を実行している状況から前記第1特定処理を実行する状況への移行が前記割込み処理による割込みによって発生する構成ではない
F ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献1、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017-47081号公報(平成29年3月19日公開)(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審判合議体にて付した。以下同じ。)。

ア 記載事項
(ア)「【0009】
ところで、CPUがプログラムを実行することにより実施される処理には複数の機能が含まれているが、複数の機能のうちのいずれかに不具合が生じたり、機能を追加したりする場合に、容易にプログラムを更新できるように、各機能を含む処理ごとにプログラムを独立して構成しておき、CPUがこれらの複数のプログラムを組み合わせて実行することにより遊技機を制御できるようにすることが要望されている。このようにすることで、不具合が生じた機能に対応するプログラムのみを更新の対象とすることができ、追加する機能を具現化する処理を実施するためのプログラムのみを独立して構成して追加したりすることができる。また、このようにすることで、各処理を具現化するための複数のプログラムを、それぞれ独立に並行して開発することもできる。
【0010】
このとき、一のプログラムによる処理の実施中に、一旦、当該一のプログラムによる処理を中断し、他のプログラムによる処理を実施した後に、再び、一のプログラムの続きから処理を再開する場合には、他のプログラムによる処理において、最初に、一のプログラムによる処理を実施中にスタックポインタに格納されていたスタック領域参照用アドレスおよび各レジスタの値をロード命令やプッシュ命令等の転送命令によりRAMに記憶させることによって退避する必要がある。そして、他のプログラムによる処理において、最後に、スタックポインタに格納されるスタック領域参照用アドレスおよび各レジスタの値を、退避しておいた中断前の一のプログラムによる処理におけるスタック領域参照用アドレスおよび各レジスタの値に復帰させなければならない。
【0011】
ところが、特許文献1に記載の遊技機において、このように各プログラムを独立して構成した場合に、フラグレジスタの第2のゼロフラグの状態がロード命令等の特定命令で変化することがあるように構成されているため、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、スタックポインタに格納されているスタック領域参照用アドレスおよび各レジスタの値を退避するときに実行するロード命令等の転送命令により第2のゼロフラグの状態が変化してしまうと、中断前の一のプログラムによる処理におけるフラグレジスタ(第2のゼロフラグ)の値と異なる値がRAMに記憶される。したがって、一のプログラムによる処理に復帰する際に、中断前のフラグレジスタの値とは異なる値にフラグレジスタの値が設定されてしまい、当該一のプログラムによる処理に悪影響を及ぼすおそれがあるため、複数のプログラムを独立して構成するのが困難であった。」

(イ)「【0022】
本発明の遊技機である回胴式遊技機(以下、スロットマシンという)に適用した一実施形態について、図1ないし図19を参照して詳細に説明する。」

(ウ)「【0043】
さらに、メイン制御手段80のメインCPU61は、タイマ割込などの割込機能を有し、レジスタセット64を利用してROM67に記憶されたプログラムを実行することにより、遊技の進行を制御する遊技制御処理(図12のステップS1、ステップS4)や不正を検出する不正判定処理を実施する(図12のステップS103)。そして、メイン制御手段80は、後述する役抽選手段103(図9参照)による役抽選処理における役抽選結果に関するデータ、遊技者により操作される各ストップスイッチ21L,21M,21R、スタートスイッチ19等の操作器具の操作に関するデータ、各リール13L,13M,13Rが停止したときに表示窓11に表示される図柄についての後述する図柄判定手段108(図9参照)による図柄判定処理の結果に関するデータなどの種々のデータをコマンド形式でサブ制御基板73のサブCPU71に送信する。」

(エ)「【0048】
メインCPU61(CPU)は、図3および図8に示すようにROM67に構成されたプログラム記憶手段67aに格納された第1プログラム200および第2プログラム300を含む複数種類のプログラムを組み合わせて実行することにより各種の処理を実施する。なお、各プログラムは、演算命令、転送命令、ローテイト命令、シフト命令、ジャンプ命令、コール命令、リターン命令など、予め予約されている複数の命令(例えば特許文献1参照)が組み合わされて構成されており、メインCPU61は、プログラムに定義されている順番で複数の命令を順次実行する。
【0049】
図4(a)に示すように、レジスタセット64は、Aレジスタ(アキュムレータレジスタ)、Fレジスタ(フラグレジスタ)、汎用レジスタ(Bレジスタ、Cレジスタ、Dレジスタ、Eレジスタ、Hレジスタ、Lレジスタ)、Qレジスタ、スタックポインタ(SP)を含んでいる。なお、Aレジスタ、汎用レジスタ、Qレジスタは1バイト(8ビット)のサイズに形成され、SPは2バイト(16ビット)のサイズに形成されている。」

(オ)「【0065】
第1プログラム200は、遊技プログラム201(第1機能プログラム)、記憶プログラム202、変更プログラム203を含んでいる。そして、メインCPU61は、遊技プログラム201を実行することにより遊技の進行を制御する遊技制御処理(第1処理)を実施し(図12のステップS1、ステップS4)、記憶プログラム202を実行することにより記憶処理を実施し(図12のステップS2)、変更プログラム203を実行することにより変更処理を実施する(図12のステップS3)。
【0066】
第2プログラム300は、不正判定プログラム301(第2機能プログラム)、退避プログラム302、復帰プログラム303を含んでいる。そして、メインCPU61は、不正判定プログラム201を実行することにより不正を検出する不正判定処理(第2処理)を実施し(図12のステップS103)、退避プログラム302を実行することにより退避処理を実施し(図12のステップS100、ステップS101、ステップS102)、復帰プログラム303を実行することにより復帰処理を実施する(図12のステップS104、ステップS105)。」

(カ)「【0148】
図12に示すタイマ割込処理は、メイン制御手段80のメインCPU61における割込み処理の毎に実行される処理である。なお、図12では、説明を容易なものとするため、タイマ割込処理において実行される処理のうち、メダル投入口25に投入されたメダルを検出するための処理のみが図示されており、その他の処理は図示省略されている。
【0149】
なお、図12の紙面の左側に記載された各処理は、遊技プログラム制御領域67a1に格納された第1プログラム200がメインCPU61により実行されることにより実施される処理であり、同図の紙面の右側に記載された各処理は、不正判定用プログラム制御領域67a2に格納された第2プログラム300がメインCPU61により実行されることにより実施される処理である。また、同図に示すように、メインCPU61による第2プログラム300の実行の開始は、メインCPU61が遊技プログラム201を実行することによる遊技制御処理の実施を中断して行われる。
・・・
【0152】
次に、不正判定プログラム301による不正判定処理(ステップS103)が実施される前に、メインCPU61が退避プログラム302を実行することで退避処理を実施する。退避処理において、まず、図13(b)に示すように、ロード命令(LD(W2),SP)により、SPに格納されている第1スタック領域参照用アドレスSP1を、第2データ記憶領域65b2のアドレスW2で指定される領域に記憶する(ステップS100:退避処理1)。このとき、同図に示すように、ロード命令(特定命令)によりFレジスタのTZフラグ(図4(b)、図5(b)参照)の状態が変化することで、Fフラグの値がロ→ロ’に変化することがある。
【0153】
次に、図14(a)に示すように、ロード命令(LDSP,SP2)により、SPに第2スタック領域参照用アドレスSP2を格納する(ステップS101:退避処理2)。なお、このときSPに格納される第2スタック領域参照用アドレスSP2は、例えばROM67の不正判定用プログラムデータ領域67b2に予め格納しておいた固定値である。そして、図14(b)に示すように、プッシュ命令(PUSH)により、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタそれぞれの値(イ、ロ’、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ)をSPに格納されている第2スタック領域参照用アドレスSP2によりアクセス可能な第2スタック領域65a2に記憶する(ステップS102:退避処理3)。このとき、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタを転送対象として指定する特別コードALLを利用した1回のプッシュ命令(PUSHALL)により、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタそれぞれの値を第2スタック領域65a2に記憶する。なお、特別コードALLにより、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタと一緒にQレジスタも転送対象として指定されるようにしてもよい。
・・・
【0155】
次に、不正判定プログラム301による不正判定処理(ステップS103)が実施された後に、メインCPU61が復帰プログラム303を実行することで復帰処理を実施する。復帰処理において、まず、図15(b)に示すように、ポップ命令(POP)により、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタそれぞれの値(イ’’、ロ’’、ハ’’、ニ’’、ホ’’、ヘ’’、ト''、チ’’)を、(ステップS102)第2スタック領域65a2に記憶した中断前の遊技制御処理における値(イ、ロ’、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ)に設定する(ステップS104:復帰処理1)。このとき、特別コードALLを利用した1回のポップ命令(POPALL)により、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタそれぞれの値を退避処理3(ステップS102)により第2スタック領域65a2に記憶した値に設定する。このとき、退避処理1(ステップS100:図13(b)参照)においてFレジスタの値が変化している場合には(ロ→ロ’)、図15(b)に示すように、遊技制御処理を中断する前と異なる値(ロ’)がFレジスタに格納される。
【0156】
そして、図16(a)に示すように、ロード命令(LDSP,(W2))により、退避処理1(ステップS100)により第2データ記憶領域65b2のアドレスW2で指定される領域に記憶した第1スタック領域参照用アドレスSP1をSPに格納し(ステップS105:復帰処理2)、メインCPU61は第2プログラム300の実行を終了する。」

(キ)「【0171】
また、上記した実施形態では、第1プログラム200による処理(遊技制御処理)を中断した後、コール命令等により第2にプログラム300による処理(不正判定処理)に移行するように構成されているが、第1プログラム200による処理を割込処理等により強制的に中断し、第2プログラム300による処理を実行するようにしてもよい。また、上記した実施形態では、遊技の進行を制御する遊技制御処理として、投入センサ53のセンサ出力が入力される入力ポートの入力処理(図12のステップS1)および入力したセンサ出力を判定するセレクタ判定処理(図12のステップS4)を組み合わせたメダル投入判定処理を例に挙げて説明したが、電断を判定する処理や、モータの位相を出力する処理、コマンドを送信する処理、クレジット表示器45や報知用表示器60等のランプ類の点灯状態を変更する処理などをさらに組み合わせて、遊技制御処理を構成してもよい。」

イ 引用発明
上記アの記載事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「a、b5 タイマ割込などの割込機能を有し、Aレジスタ(アキュムレータレジスタ)、Fレジスタ(フラグレジスタ)、汎用レジスタ(Bレジスタ、Cレジスタ、Dレジスタ、Eレジスタ、Hレジスタ、Lレジスタ)、Qレジスタ、スタックポインタ(SP)を含んでいるレジスタセット64を利用して第1プログラム200および第2プログラム300を含む複数種類のプログラムを組み合わせて実行することにより、遊技の進行を制御する遊技制御処理や不正を検出する不正判定処理等の各種の処理をタイマ割込処理により実施するメイン制御手段80のメインCPU61(【0043】、【0048】?【0049】、【0065】?【0066】、【0148】?【0149】)を備え、
b メインCPU61は、
b1 遊技プログラム201、記憶プログラム202、変更プログラム203を含む第1プログラム200による処理を実施し(【0048】、【0065】)、
b2 不正判定プログラム301、退避プログラム302、復帰プログラム303を含む第2プログラム300による処理を実施し(【0048】、【0066】)、
b3 不正判定プログラム301による不正判定処理が実施される前に、退避プログラム302を実行することで実施する退避処理において、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタそれぞれの値を第2スタック領域65a2に記憶し(【0066】、【0152】?【0153】)、
b4、b7 次に、不正判定プログラム301による不正判定処理が実施された後に、復帰プログラム303を実行することで実施する復帰処理において、ポップ命令(POP)により、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタそれぞれの値を、固定値である第2スタック領域参照用アドレスSP2により指定される、第2スタック領域65a2に記憶した中断前の遊技制御処理における値に設定し(【0066】、【0153】、【0155】)、
c 遊技プログラム201が、メインCPU61により実行されることにより実施される遊技の進行を制御する遊技制御処理(【0065】)と、
d 不正判定プログラム301が、メインCPU61により実行されることにより実施される不正を検出する不正判定処理(【0066】)があり、
e 第1プログラム200による処理(遊技制御処理)を中断した後、コール命令により第2プログラム300による処理(不正判定処理)に移行するように構成されている(【0171】)
f 回胴式遊技機(【0022】)。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する。
(a)
引用発明の「各種の処理を実施する」ことは、本件補正発明の「各種処理を実行」することに相当する。
そして、引用発明における「レジスタセット64」が、CPUがプログラムに基づいて処理を実行する際に、必要なデータを一時的に記憶するために利用されるものであることは、当業者における技術常識であるから、引用発明の「Aレジスタ(アキュムレータレジスタ)、Fレジスタ(フラグレジスタ)、汎用レジスタ(Bレジスタ、Cレジスタ、Dレジスタ、Eレジスタ、Hレジスタ、Lレジスタ)、Qレジスタ、スタックポインタ(SP)を含んでいるレジスタセット64」は、本件補正発明の「情報を一時的に記憶」する「内部記憶手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成a、b5の「Aレジスタ(アキュムレータレジスタ)、Fレジスタ(フラグレジスタ)、汎用レジスタ(Bレジスタ、Cレジスタ、Dレジスタ、Eレジスタ、Hレジスタ、Lレジスタ)、Qレジスタ、スタックポインタ(SP)を含んでいるレジスタセット64を利用して」「複数種類のプログラムを組み合わせて実行することにより、」「各種の処理をタイマ割込処理により実施するメイン制御手段80のメインCPU61」は、本件補正発明の構成Aの「各種処理を実行し、処理の実行に際して内部記憶手段に情報を一時的に記憶させる制御手段」としての機能を有する。

(b、b1)
引用発明の「第1プログラム200による処理」は、構成aによると、「各種の処理」のうちの1つの処理であるから、本件補正発明の「各種処理のうち第1特定処理」に相当する。
したがって、引用発明の構成b、b1の「第1プログラム200による処理を実施」する「メインCPU61」は、本件補正発明の構成B、B1の「各種処理のうち第1特定処理を実行する第1特定処理実行手段」を備える「制御手段」としての機能を有する。

(b、b2)
引用発明の「不正判定プログラム301による処理」は、構成aによると、「各種の処理」のうちの1つの処理であるから、本件補正発明の「各種処理のうち第2特定処理」に相当する。
したがって、引用発明の構成b、b2の「第2プログラム300による処理を実施」する「メインCPU61」は、本件補正発明の構成B、B2の「各種処理のうち第2特定処理を実行する第2特定処理実行手段」を備える「制御手段」としての機能を有する。

(b、b3)
引用発明の「不正判定プログラム301による不正判定処理が実施される前に」は、「不正判定処理」を実行可能となる前の状態のことであるから、本件補正発明の「第2特定処理を実行する状況となる場合」に相当する。
そして、引用発明において、構成aより、「Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタ」は、「レジスタセット64」に含まれるものである。ここで、上記(a)より、引用発明の「レジスタセット64」は、本件補正発明の「内部記憶手段」に相当する。そうすると、引用発明の「Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタそれぞれの値」は、「内部記憶手段に記憶された少なくとも一部の情報である所定情報」に相当する。
また、引用発明における「第2スタック領域65a2」は、本件補正発明における「所定記憶手段」に相当する。
したがって、引用発明の「不正判定プログラム301による不正判定処理が実施される前に、退避プログラム302を実行することで実施する退避処理において、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタそれぞれの値を第2スタック領域65a2に記憶」することは、本件補正発明の「第1特定処理を実行する状況となった場合に、内部記憶手段に記憶された少なくとも一部の情報である所定情報を所定記憶手段に退避させる」ことに相当する。

ゆえに、引用発明の構成b、b3の「不正判定プログラム301による不正判定処理が実施される前に、退避プログラム302を実行することで実施する退避処理において、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタそれぞれの値を第2スタック領域65a2に記憶」する「メインCPU61」は、本件補正発明の構成B、B3の「第2特定処理を実行している状況から第1特定処理を実行する状況となる場合」「に、内部記憶手段に記憶された少なくとも一部の情報である所定情報を所定記憶手段に退避させる退避実行手段」を備える「制御手段」としての機能を有する。

(b、b4)
引用発明の「不正判定プログラム301による不正判定処理」は、上記(b、b2)より、本件補正発明の「第2特定処理」に相当する。そうすると、引用発明の「不正判定プログラム301による不正判定処理が実施された後」は、本件補正発明の「第1特定処理を終了した後」に相当する。
そして、引用発明の「ポップ命令(POP)により、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタそれぞれの値を、」「第2スタック領域65a2に記憶した中断前の遊技制御処理における値に設定」することは、本件補正発明の「所定記憶手段に退避された所定情報を内部記憶手段に復帰させる」ことに相当する。
したがって、引用発明の「不正判定プログラム301による不正判定処理が実施された後に、復帰プログラム303を実行することで実施する復帰処理において、ポップ命令(POP)により、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタそれぞれの値を、第2スタック領域65a2に記憶した中断前の遊技制御処理における値に設定」することは、本件補正発明の「第1特定処理を終了した後」に「所定記憶手段に退避された所定情報を内部記憶手段に復帰させる」ことに相当する。
ゆえに、引用発明の構成b、b4、b7の「次に、不正判定プログラム301による不正判定処理が実施された後に、復帰プログラム303を実行することで実施する復帰処理において、ポップ命令(POP)により、Aレジスタ、Fレジスタおよび汎用レジスタそれぞれの値を、」「」第2スタック領域65a2に記憶した中断前の遊技制御処理における値に設定」する「メインCPU61」は、本件補正発明の構成B、B4の「第1特定処理を終了した後に、所定記憶手段に退避された所定情報を内部記憶手段に復帰させる復帰実行手段」を備える「制御手段」としての機能を有する。

(b、b5)
引用発明の構成a、b5の「タイマ割込などの割込機能を有」する「メインCPU61」は、本件補正発明の「割込み条件が成立したことに基づいて割込み処理を開始させる手段」を備える「制御手段」としての機能を有する。

(b7)
引用発明は、「不正判定プログラム301による不正判定処理が実施された後に、」「復帰処理」を「実施する」ことで「遊技制御処理」に復帰するものであるが、これは、本件補正発明の「第1特定処理を実行している状況から第2特定処理を実行する状況となる場合」に相当する。
そして、引用発明の「固定値である第2スタック領域参照用アドレスSP2」は、本件補正発明の「内部記憶手段に設けられたスタックポインタの情報は固定の情報となる」ことに相当する。

(c)
引用発明の「遊技の進行を制御する遊技制御処理」は、構成b1より、「遊技プログラム201」を含む「第1プログラム200による処理」に含まれる処理である。
そして、上記(b、b1)より、引用発明の「遊技プログラム201」「による処理」は、本件補正発明の「第2特定処理」に相当する。
そうすると、引用発明の構成cの「遊技プログラム201が、メインCPU61により実行されることにより実施される遊技の進行を制御する遊技制御処理」は、本件補正発明の構成Cの「第2特定処理」に「含まれて」いる「遊技を進行させるための処理」に相当する。

(d)
引用発明の「不正を検出する不正判定処理」は、構成b2より、「不正判定プログラム301」を含む「第2プログラム300による処理」である。
そうすると、引用発明の構成dの「不正判定プログラム301が、メインCPU61により実行されることにより実施される不正を検出する不正判定処理」と、本件補正発明の構成Dの「第1特定処理」に「含まれて」いる「遊技履歴を管理するための処理」とは、「第1特定処理に含まれている所定の処理」である点で共通する。

(e)
引用発明の「コール命令により」「移行する」ことは、本件補正発明の「移行が割込み処理による割込みによって発生する構成ではない」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成eの「第1プログラム200による処理(遊技制御処理)を中断した後、コール命令により第2プログラム300による処理(不正判定処理)に移行するように構成されている」ことは、本件補正発明における構成Eの「第2特定処理を実行している状況から第1特定処理を実行する状況への移行が割込み処理による割込みによって発生する構成ではない」ことに相当する。

(f)
引用発明の構成fの「回胴式遊技機」は、本件補正発明の構成Fの「遊技機」に相当する。

上記(a)?(f)によれば、本件補正発明と引用発明は、
「A 各種処理を実行し、処理の実行に際して内部記憶手段に情報を一時的に記憶させる制御手段を備え、
B 当該制御手段は、
B1 前記各種処理のうち第1特定処理を実行する第1特定処理実行手段と、
B2 前記各種処理のうち第2特定処理を実行する第2特定処理実行手段と、
B3 前記第2特定処理を実行している状況から前記第1特定処理を実行する状況となる場合に、前記内部記憶手段に記憶された少なくとも一部の情報である所定情報を所定記憶手段に退避させる退避実行手段と、
B4 前記第1特定処理を終了した後に、前記所定記憶手段に退避された前記所定情報を前記内部記憶手段に復帰させる復帰実行手段と、
B5 割込み条件が成立したことに基づいて割込み処理を開始させる手段と、
を備え、
B7 前記第1特定処理を実行している状況から前記第2特定処理を実行する状況となる場合、前記内部記憶手段に設けられたスタックポインタの情報は固定の情報となる構成であり、
C 前記第2特定処理には遊技を進行させるための処理が含まれており、
D′前記第1特定処理には所定の処理が含まれており、
E 前記第2特定処理を実行している状況から前記第1特定処理を実行する状況への移行が前記割込み処理による割込みによって発生する構成ではない
F 遊技機。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1](構成B、B6)
「退避実行手段」に関して、本件補正発明は、「退避実行手段により所定記憶手段への所定情報の退避が行われる前に割込み処理の開始を禁止し、復帰実行手段により内部記憶手段に所定情報が復帰された後に割込み処理の開始を許可する手段」を備えるのに対して、引用発明は、退避処理および復帰処理を実施するが、退避処理が実施される前に割込み処理の開始を禁止し、復帰処理が実施された後に許可する手段を有しない点。

[相違点2](構成D)
第1特定処理に含まれる所定の処理に関して、本件補正発明は、遊技履歴を管理するための処理であるのに対して、引用発明は、不正を検出する不正判定処理であって、遊技履歴を管理するための処理でない点。

(4)当審判合議体の判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明における「不正判定プログラム301」「による処理」は、上記(3)(e)によると、コール命令により移行される処理(以下「非割込み処理」という。)によるものである。
また、引用発明は、技術常識からみて非割込み処理への移行前の処理に確実かつ速やかに復帰するという自明の課題を内在するものである。

ところで、遊技機を含む情報処理装置の技術分野において、メインループ等の処理から移行後の非割込み処理において、当該非割込み処理への移行前の処理に確実かつ速やかに復帰するために、当該非割込み処理が実行される前に割込み処理の開始を禁止し、当該処理が実行された後に割込み処理の開始を許可することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特許第6135792号公報の【0104】、【0107】、【図18】、【図19】には、第1ROM・RWM領域における処理及び第2ROM・RWM領域における処理を実行するCPUを備え、第2ROM・RWM領域における処理にRWM初期化処理3を含み、第1ROM・RWM領域における処理によるメインループ処理において、RWM初期化処理3を含む第2ROM・RWM領域における処理を呼び出す場合、第2ROM・RWM領域における処理の実行中に、第1ROM・RWM領域における処理による割込みが発生しないように、第2ROM・RWM領域の処理を呼び出す際には割込みを禁止した後に呼び出すよう構成され、また、【0155】?【0158】、【図37】には、非割込み処理である投入・払出センサ異常クリア処理(S5150)を、割込みを禁止し(S1914)、次にAFレジスタを退避した(S1916)後に投入・払出センサ異常クリア処理を実行し、その実行後にAFレジスタを復帰し(S1920)、次に割込みを許可(S1922)することが記載され、

特開2001-212353号公報の【0086】、【0091】、【図9】、【図11】には、各種割込処理などの割込みを禁止した後に、非割込み処理であるコマンド送信処理および遊技履歴編集処理を行い、その後、割込みを許可することが記載されている。以下「周知の技術事項1」という。)。

ここで、引用発明の「不正判定プログラム301」「による処理」と、上記周知の技術事項1の「非割込み処理」とは、メインループ等の処理から移行後の非割込み処理である点で共通するとともに、該非割込み処理に確実かつ速やかに復帰するという共通の課題を有するものである。

これらのことからみて、引用発明における「不正判定プログラム301」「による処理」に上記周知の技術事項1を適用して、第1、2スタック領域65a1、2へのレジスタの値の退避が行われる前に「不正判定プログラム301」「による処理」への割込み処理の開始を禁止し、レジスタに退避前の値が復帰された後に割込み処理の開始を許可して、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点2について
遊技機の技術分野において、遊技を進行させるための処理の実行中に、遊技履歴を管理するための処理を非割込み処理として実行することは、本願の出願前に周知の技術事項である(例えば、上記特開2001-212353号公報の【0086】、【0091】には、遊技制御処理における通常処理(ステップS19)中に、割込みを禁止した後、遊技履歴編集処理を非割込み処理として実行することが記載され、
特開2016-120032号公報の【0032】、【0105】?【0107】、【0123】?【0125】、【図15】、【図20】には、遊技の基本動作を制御する主制御基板100を備え、主制御基板のタイマ割込み処理において、入球データ記憶領域に入賞球の種別、特別遊技中であるか否かを記憶するとともに、対応する賞球カウンタに賞球数のカウントを行う入球管理処理を非割込み処理として実行することが記載され、
特開2012-200426号公報の【0156】、【0160】、【図13】?【図14】には、遊技制御装置によって実行される遊技制御のうちのタイマ割込み処理において、大当り回数累積値の加算、確変回数累積値の加算を行う遊技機情報出力設定処理を非割込み処理として実行することが記載されている。以下「周知の技術事項2」という。)。

そして、引用発明の「不正判定プログラム301」「による処理」と、上記周知の技術事項2の「遊技履歴を管理するための処理」とは、遊技を進行させるための処理の実行中に実行される非割込み処理である点で共通する。
したがって、引用発明に上記周知の技術事項2を適用して、引用発明のメインループ等の処理から移行後の非割込み処理として、「不正判定プログラム301」「による処理」に加え、さらに遊技履歴を管理するための処理をも付加し、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が適宜なし得たものである。

ウ 請求人の主張について
請求人は、令和2年4月28日付け審判請求書において、次の主張をしている。
「但し、上記のように第2特定処理を実行している状況から第1特定処理を実行する状況への移行が割込み処理による割込みによって発生する構成ではない場合、第1特定処理の実行に際して既に情報の退避が行われた後に割込み処理が割り込んで起動されてしまうと、更なる情報の退避を行う必要が生じてしまう。そうすると、情報の復帰が完了していないにも関わらず情報の退避が累積して発生してしまう。情報の退避が累積して発生すると、それだけ情報を退避するための記憶容量を大きく確保する必要が生じるとともに、第1特定処理の実行に関して予期せぬ異常が発生してしまう可能性が高くなる。
本件発明者はこのような更なる課題に着目し創意工夫を行うことで、遊技を進行させるための処理である第2特定処理を実行している状況から遊技履歴を管理するための処理である第1特定処理を実行する状況への移行が割込み処理による割込みによって発生する構成ではないにも関わらず、「前記退避実行手段により前記所定記憶手段への前記所定情報の退避が行われる前に前記割込み処理の開始を禁止し、前記復帰実行手段により前記内部記憶手段に前記所定情報が復帰された後に前記割込み処理の開始を許可する手段」という上記相違点に係る構成を敢えて採用するに至った。
そして、本願発明1及び2は上記相違点に係る構成を備えていることにより、
「第2特定処理を実行している状況から第1特定処理を実行する状況となる場合には所定情報が所定記憶手段に退避される前に割込み処理の開始が禁止され、第1特定処理を終了して第2特定処理に復帰する場合には内部記憶手段に所定情報が復帰された後に割込み処理の開始が許可される。これにより、第2特定処理を実行している状況から第1特定処理を実行する状況への移行が割込み処理による割込みによって発生する構成ではない場合において、情報の退避が累積して発生してしまわないようにすることが可能となる。」という優れた効果を奏することが可能である。
これに対して、引用文献1には上記相違点に係る構成は記載も示唆もされておらず、上記更なる課題も記載も示唆もされていない。また、周知技術を例示するための文献として提示されている引用文献2乃至5にも、『遊技を進行させるための処理である第2特定処理を実行している状況から遊技履歴を管理するための処理である第1特定処理を実行する状況への移行が割込み処理による割込みによって発生する構成ではないにも関わらず、「前記退避実行手段により前記所定記憶手段への前記所定情報の退避が行われる前に前記割込み処理の開始を禁止し、前記復帰実行手段により前記内部記憶手段に前記所定情報が復帰された後に前記割込み処理の開始を許可する手段」という構成を敢えて採用する』という上記相違点に係る構成は記載も示唆もされておらず、上記更なる課題も記載も示唆もされていない。そうすると、引用文献1に接した当業者が何等かの動機付けによって引用文献1に記載された発明に対して引用文献2乃至5にて例示されるような周知技術を適用したとしても上記相違点に係る構成を導出することは不可能である。」((3)拒絶査定に対する意見)

そこで、請求人の上記主張について検討する。
上記アにおいて、検討したように、遊技機を含む情報処理装置の技術分野において、非割込み処理において、当該非割込み処理前の割込み処理に確実かつ速やかに復帰するために、記憶手段への所定情報の退避が行われる前に割込み処理の開始を禁止し、内部記憶手段に所定情報が復帰された後に割込み処理の開始を許可することは、本願出願前に周知の技術事項である。
そして、引用発明の「不正判定プログラム301」「による処理」と、上記周知の技術事項2の「遊技履歴を管理するための処理」とは、遊技を進行させるための処理の実行中に実行される非割込み処理である点で共通する。
したがって、本件補正発明の構成B、B6は、引用発明に上記周知の技術事項1を適用することにより当業者が容易になし得たものであるから、上記請求人の主張を採用することはできない。

エ 小括
本件補正発明により奏される効果は、当業者が、引用発明、および、上記周知の技術事項1、2から予測し得た効果の範囲内のものであって、格別なものではない。
よって、本件補正発明は、引用発明、および、上記周知の技術事項1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
上記(1)?(4)より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和1年6月24日付け手続補正書の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。
「A 各種処理を実行し、処理の実行に際して内部記憶手段に情報を一時的に記憶させる制御手段を備え、
B 当該制御手段は、
B1 前記各種処理のうち第1特定処理を実行する第1特定処理実行手段と、
B2 前記各種処理のうち第2特定処理を実行する第2特定処理実行手段と、
B3 前記第2特定処理を実行している状況から前記第1特定処理を実行する状況となる場合又は前記第1特定処理を実行する状況となった場合に、前記内部記憶手段に記憶された少なくとも一部の情報である所定情報を所定記憶手段に退避させる退避実行手段と、
B4 前記第1特定処理を終了する場合又は前記第1特定処理を終了した後に、前記所定記憶手段に退避された前記所定情報を前記内部記憶手段に復帰させる復帰実行手段と、
B5 割込み条件が成立したことに基づいて割込み処理を開始させる手段と、
B6 前記退避実行手段により前記所定記憶手段への前記所定情報の退避が行われる前に前記割込み処理の開始を禁止し、前記復帰実行手段により前記内部記憶手段に前記所定情報が復帰された後に前記割込み処理の開始を許可する手段と、
を備え、
B7 前記第1特定処理を実行している状況から前記第2特定処理を実行する状況となる場合、前記内部記憶手段に設けられたスタックポインタの情報は固定の情報となる構成である
F ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由
(進歩性)この出願の請求項1?2に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2017-47081号公報
2.特許第6160731号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2017-113485号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2002-297556号公報(周知技術を示す文献、原査定時に新たに引用された文献)
5.特開平4-169937号公報(周知技術を示す文献、原査定時に新たに引用された文献)

3 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用文献として引用された引用文献1の記載事項、および、引用発明の認定については、前記「第2[理由] 2 2-2(2)引用文献1、引用発明」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、実質的に、前記「第2[理由] 2 2-2(1)」で検討した本件補正発明から、構成C、D、Eの限定事項を省くものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、前記「第2[理由] 2 2-2(3)対比」における検討内容からみて、前記相違点1で相違し、その余の点において一致する。
そして、相違点1についての判断は、前記「第2[理由] 2 2-2(4)当審判合議体の判断」において検討したように、引用発明に前記周知の技術事項1を適用することにより、当業者が容易になし得たものである。

5 むすび
上記1?4より、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-02-09 
結審通知日 2021-02-16 
審決日 2021-03-02 
出願番号 特願2017-141835(P2017-141835)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲荷 宗良柴田 和雄  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 長崎 洋一
太田 恒明
発明の名称 遊技機  
代理人 安藤 悟  
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