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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1373446
審判番号 不服2020-3674  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-17 
確定日 2021-05-11 
事件の表示 特願2018-215906「情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日出願公開、特開2020- 86602、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成30年11月16日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 元年10月 8日付け:拒絶理由通知書
令和 元年11月29日 :意見書,手続補正書の提出
令和 元年12月17日付け:拒絶査定
令和 2年 3月17日 :審判請求書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年12月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1?7に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の引用文献1?4に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2006-318125号公報
2.特開2016-99698号公報
3.特開2010-165198号公報
4.特開2002-117313号公報

第3 本願発明について
本願請求項1?7に係る発明(以下,「本願発明1」?「本願発明7」という。)は,令和2年3月17日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定された発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
キャンペーンを設定し,利用者が所定の店舗で使用可能なクーポンを発行する第1情報処理装置と,
前記クーポンを取得し,前記クーポンの情報を含むQRコード(登録商標)を表示する利用者端末と,
前記キャンペーンに直接エントリーし,前記QRコード(登録商標)を読み取る第2情報処理装置と,
前記クーポンの特典内容に基づいて,前記利用者端末にポイントを付与し,前記第2情報処理装置から取得した報告書の内容に基づいて,リアルタイムで,前記第2情報処理装置への報酬を決定するサーバ装置と,
を備える情報処理システム。」

また,本願発明2?7の概要は以下のとおりである。
本願発明2?5は,本願発明1を減縮した発明である。
本願発明6は,本願発明1に対応する「情報処理方法」の発明である。
本願発明7は,本願発明1?5のいずれかに対応する「プログラム」の発明である。

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。なお,下線は当審において付加したものである。

「【0048】
以下,本発明に係る電子クーポン提供システムの実施形態を図面に基づいて説明する。図1は,本発明に係る電子クーポン提供システムの一例を示す構成図である。電子クーポン提供システムは,複数のメーカにそれぞれ配設されたメーカ端末装置1と,複数の店舗にそれぞれ配設された店舗端末装置2と,店舗端末装置2とLAN等のネットワークを介して通信可能に接続されたPOS端末3と,メーカ端末装置1及び店舗端末装置2とインターネット等のネットワークを介して通信可能に接続されたサーバ装置4(電子クーポン用サーバ装置に相当する)と,電子クーポンのユーザによって携帯される携帯電話機5とを備えている。」

「【0060】
図3は,サーバ装置4の主要部の一例を示す機能構成図である。サーバ装置4のCPU411は,メーカ端末装置1から電子クーポンの設定条件を受け付ける設定条件受付部411a(設定条件受付手段に相当する)と,店舗端末装置2から電子クーポンを使用可能とする旨の指示情報を受け付ける使用店舗受付部411b(使用店舗受付手段に相当する)と,店舗端末装置2に対して使用可能な電子クーポンを抽出して,その設定条件情報を送信するクーポン抽出部411c(クーポン抽出手段に相当する)と,店舗端末装置2から電子クーポンの要求設定条件を受け付ける要求条件受付部411d(要求条件受付手段に相当する)と,メーカ端末装置1に対して電子クーポンの要求設定条件を送信する要求条件送信部411e(要求条件送信手段に相当する)とを備えている。
(中略)
【0064】
設定条件受付部411aは,メーカ端末装置1から,電子クーポンの設定条件情報として,対象とする商品の識別情報である商品識別情報,当該商品の値引き内容を表す値引き内容情報,当該電子クーポンの使用可能な期間の情報である有効期間情報,及び,当該電子クーポンを使用可能な地域の地域識別情報とを受け付けて,設定条件記憶部44aに格納するものである。
(中略)
【0067】
更に,使用店舗受付部411bは,使用確定クーポンに対応する商品のメーカに配設されているメーカ端末装置1に対して,使用確定クーポンの店舗識別情報を送信するものである。すなわち,使用確定クーポンに対応する商品の商品識別情報に基づいて,その商品のメーカのメーカ識別情報をメーカ記憶部44dを参照して選定し,設定されたメーカ識別情報に対応するメーカ端末装置1に対して使用確定クーポンの店舗識別情報を送信するものである。
(中略)
【0081】
また,使用実績取得部411iは,電子クーポン毎に,各店舗で使用された年月日,使用されたユーザから提示された使用許可情報を,店舗の識別情報である店舗識別情報(店舗ID)と対応付けて,電子クーポンの発行元であるメーカのメーカ端末装置1に送信するものである。」

「【0097】
図6は,メーカ端末装置1の主要部の一例を示す機能構成図である。メーカ端末装置1のCPU111は,設定条件を生成する設定条件生成部111aと,サーバ装置4から電子クーポンを使用可能とする旨の指示情報を受信する使用店舗受付部111bと,サーバ装置4から要求設定条件情報を受信する要求条件受付部111cと,要求設定条件に対する応答情報を生成する応答情報生成部111dとを備えている。メーカ端末装置1のHDD14は,設定条件情報を格納する設定条件記憶部14aと,要求設定条件情報を格納する要求条件記憶部14bとを備えている。
(中略)
【0099】
設定条件生成部111aは,操作部12を介してオペレータ等による操作入力を受け付けて,電子クーポンの設定条件を生成すると共に,生成された設定条件をサーバ装置4(設定条件受付部411a)に送信するものである。また,設定条件生成部111aは,生成された設定条件を設定条件記憶部14aに格納するものである。
【0100】
具体的には,設定条件生成部111aは,モニタ13に図18に示す設定条件個別登録画面700(または,図19に示す設定条件一括登録画面710)を表示して,操作部12を介してオペレータ等による操作入力を受け付けて,電子クーポンの設定条件を生成するものである。
【0101】
使用店舗受付部111bは,サーバ装置4から設定条件生成部111aによって生成された電子クーポンを使用可能とする旨の指示情報を受信するものである。より具体的には,設定条件生成部111aによって生成された電子クーポンの内,サーバ装置4の使用店舗受付部411bから送信される使用確定クーポンの店舗識別情報を受信して,設定条件記憶部14aに格納するものである。」

「【0111】
図8は,店舗端末装置2の主要部の一例を示す機能構成図である。店舗端末装置2のCPU211は,電子クーポンを使用可能とする旨の指示情報を受け付ける使用クーポン設定部211aと,電子クーポンの検索条件を受け付ける抽出条件設定部211bと,抽出された電子クーポンの設定条件情報を受け付ける抽出結果受付部211cと,発行を所望する電子クーポンの設定条件を受け付ける要求条件設定部211dと,応答情報を受信する応答情報受付部211eと,携帯電話機5から使用許可情報を受け付けてクーポンの使用可否を判定するクーポン情報判定部211fとを備えている。店舗端末装置2のHDD24は,設定条件情報を格納する設定条件記憶部24aと,要求設定条件情報を格納する要求条件記憶部24bとを備えている。
(中略)
【0113】
使用クーポン設定部211aは,操作部22を介してオペレータ等による操作入力に基づいて,サーバ装置4の設定条件記憶部44aに格納されている設定条件情報を取得して設定条件記憶部24aに格納すると共に,格納されている電子クーポンの中から,少なくとも1の電子クーポンを使用可能とする旨の指示情報を受け付けて,サーバ装置4の使用店舗受付部411bに対して指示情報を送信するものである。
(中略)
【0120】
すなわち,クーポン情報判定部211fは,POS端末3を介して携帯電話機5から受け付けた使用許可情報が,設定条件記憶部24aに格納されている場合には,使用可能であると判定し,設定条件記憶部24aに格納されていない場合には,使用可能ではないと判定するものである。」

「【0123】
POS端末3は,クーポンリーダ37を介して携帯電話機5から使用許可情報を取得し,通信制御部38を介して店舗端末装置2(クーポン情報判定部211f)に使用許可情報を送信すると共に,店舗端末装置2(クーポン情報判定部211f)から使用可否の判定結果を受信して,モニタ33に表示するものである。」

「【0129】
図10は,携帯電話機5の主要部の一例を示す機能構成図である。携帯電話機5は,情報処理部(CPU)51と,処理途中の情報等を一時的に格納するRAM52とを備える。CPU51は,電子クーポンの使用許可情報を取得する使用許可取得部51aと,使用許可情報を出力する使用許可出力部51bとを備え,RAM52は,使用許可情報を格納する使用許可記憶部52aを備えている。また,携帯電話機5は,通信信号として赤外線を出力する赤外線出力部(図示省略)を備えている。
(中略)
【0132】
また,使用許可取得部51aは,入力部(図示省略)を介してユーザからの操作入力に基づいて,サーバ装置4の使用許可部411hに対して,電子クーポンを使用の許可を求める旨の要求情報を送信して,電子クーポンの使用許可情報を取得し,取得した使用許可情報を使用許可記憶部52aに格納するものである。
【0133】
使用許可出力部51bは,入力部(図示省略)を介してユーザからの操作入力に基づいて,使用許可記憶部52aから使用許可情報を読み出して,読み出した使用許可情報を赤外線出力部を介して赤外線信号としてPOS端末3(クーポンリーダ37)に対して出力するものである。また,使用許可出力部51bは,POS端末3に対して出力が正常に終了した使用許可情報を使用許可記憶部52aから消去するものである。」

したがって,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「複数のメーカにそれぞれ配設されたメーカ端末装置1と,複数の店舗にそれぞれ配設された店舗端末装置2と,店舗端末装置2とLAN等のネットワークを介して通信可能に接続されたPOS端末3と,メーカ端末装置1及び店舗端末装置2とインターネット等のネットワークを介して通信可能に接続されたサーバ装置4と,電子クーポンのユーザによって携帯される携帯電話機5とを備える,電子クーポン提供システムであって(【0048】),
前記メーカ端末装置1は,電子クーポンの発行元であるメーカのメーカ端末装置1であり(【0081】),電子クーポンの設定条件を生成すると共に,生成された設定条件をサーバ装置4に送信する設定条件生成部111a(【0099】)と,サーバ装置4から設定条件生成部111aによって生成された電子クーポンを使用可能とする旨の指示情報を受信するものであり,より具体的には,設定条件生成部111aによって生成された電子クーポンの内,サーバ装置4の使用店舗受付部411bから送信される使用確定クーポンの店舗識別情報を受信して,設定条件記憶部14aに格納する使用店舗受付部111bと,を備え(【0101】),
前記携帯電話機5は,電子クーポンの使用許可情報を取得し,取得した使用許可情報を使用許可記憶部52aに格納する使用許可取得部51aと(【0132】),使用許可記憶部52aから使用許可情報を読み出して,読み出した使用許可情報を赤外線出力部を介して赤外線信号としてPOS端末3に対して出力する使用許可出力部51bと,を備え(【0133】),
前記店舗端末装置2は,少なくとも1の電子クーポンを使用可能とする旨の指示情報を受け付けて,サーバ装置4の使用店舗受付部411bに対して指示情報を送信する使用クーポン設定部211aと(【0113】),POS端末3を介して携帯電話機5から使用許可情報を受け付けてクーポンの使用可否を判定するクーポン情報判定部211fと,を備え(【0111】【0120】),
前記POS端末3は,携帯電話機5から使用許可情報を取得し,通信制御部38を介して店舗端末装置2に使用許可情報を送信し(【0123】),
前記サーバ装置4は,メーカ端末装置1から,電子クーポンの設定条件情報として,対象とする商品の識別情報である商品識別情報,当該商品の値引き内容を表す値引き内容情報,当該電子クーポンの使用可能な期間の情報である有効期間情報,及び,当該電子クーポンを使用可能な地域の地域識別情報とを受け付けて,設定条件記憶部44aに格納する設定条件受付部411aと(【0064】),店舗端末装置2から電子クーポンを使用可能とする旨の指示情報を受け付け,更に,メーカ端末装置1に対して,使用確定クーポンの店舗識別情報を送信する使用店舗受付部411bと,を備える(【0060】【0067】),
電子クーポン提供システム。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0018】
まず,実施例に係るイベント管理の概念について説明する。図1は,実施例に係るイベント管理の概念を説明する説明図である。図1では,商品の割引販売を行なうイベントである割引イベントを店舗Tにおいて実施する場合を示している。
【0019】
図1に示すオーナー端末30は,店舗Tにおいて割引イベントを実施する権限を有するオーナーが使用する端末である。このオーナー端末30は,店舗Tの内部に設けてもよいし,店舗Tの外部に設けてもよい。管理装置20は,店舗Tにおける割引イベントを管理する管理装置であり,例えば店舗Tの外部に設けられる。
【0020】
オーナーはオーナー端末30を操作して割引イベントの設定を行なう。この割引イベントの設定により,割引条件及び割引原資が管理装置20に送信される。割引条件は,割引販売の適用条件を示す。具体的には,割引販売を行なう時間帯,割引対象となる商品,割引の内容などが適用条件に含まれる。割引原資は,割引イベントにおける割引分の総額を示す。すなわち,割引イベントでは,この割引原資の範囲内で割引が行なわれることになる。
【0021】
図1では,14時から15時の間に商品Aを購入すると割引が行なわれることを示している。そして,割引の内容としては,14時から15時の間に商品Aを購入した利用者に対して割引原資を分配することにより,最大で50%の割引が受けられることを示している。この割引の内容では,割引の適用を受ける利用者が少ない程,割引率が高くなる。
【0022】
管理装置20は,割引イベントの設定が行なわれると,割引条件及び割引原資を記憶部に格納し,利用者にイベント通知を行なう。このイベント通知は,割引条件などの情報を含むメッセージを予め登録された利用者端末に対して送信することで行なわれる。
【0023】
イベント通知を受けた利用者は,まず,店舗Tで商品Aを購入する。このとき,利用者は,商品Aの代金を定価で支払う。その後,利用者は,商品Aの購入を管理装置20に通知する。この購入の通知には,イベント通知を受けた利用者端末を識別する識別情報,購入した商品の識別情報及びイベントの識別情報を含む。また,購入の通知は,利用者端末から行ってもよいし,店舗Tに設けた店舗端末から行なってもよい。
【0024】
例えば,利用者端末に送信されたイベント通知を利用者端末のディスプレイに表示し,ディスプレイに表示したイベント通知と商品Aの購入を示すレシートとを店舗端末に読み取らせ,店舗端末から管理装置20に購入通知を送信すればよい。
【0025】
購入通知を受信した管理装置20は,購入通知に示された商品や購入時刻が割引条件を満たすか否かを判定する。そして,割引条件を満たすと判定したならば,割引分の金額を算定し,当該金額に対応する価値を利用者に付与する。この割引分の価値の付与は,利用者の口座に振り込むことで行ってもよいし,所定のポイントに加算することで行ってもよい。」

「【0052】
次に,イベント通知の具体例について説明する。図5は,イベント通知の具体例についての説明図である。図5では,利用者端末10のディスプレイにイベント通知を表示した状態を示している。このイベント通知は,例えばメールにて送信されたものである。
【0053】
図5に示した例では,「14時から15時までの時間帯を条件としたタイムサービスであること」,「割引の対象となるのが商品Aであること」,「割引率は固定ではなく,商品Aの定価の50%を上限とした割引分の価値が付与されること」がテキストとして表示されている。さらに,詳細な情報を表示するための操作ボタンと,二次元コードが表示されている。」

「図5



したがって,上記引用文献2には,「利用者端末に送信されたイベント通知を利用者端末のディスプレイに表示し,イベント通知は二次元コードを有しており,ディスプレイに表示したイベント通知を店舗端末に読み取らせる」という技術的事項,及び,「割引分の価値を,所定のポイントを加算することによって利用者に付与する」という技術的事項が記載されている。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0026】
クーポン情報サーバ600は,小売業者サーバ500と,複数のメーカーサーバ700とに接続されたコンピュータ装置である。クーポン情報サーバ600は,クーポン情報送信部610と,クーポン情報記憶部620と,クーポン提供パターン記憶部630と,カテゴリ定義情報記憶部640と,カテゴリ集計部650とを備えている。クーポン情報送信部610は,クーポン情報記憶部620に記憶されたクーポン情報を小売業者サーバ500に送信する。クーポン情報記憶部620には,ユーザに提供するクーポン情報が記憶される。
【0027】
クーポン提供パターン記憶部630には,クーポン提供パターン入力部720に入力され,送信されたクーポン提供パターンが記憶される。図6は,クーポン提供パターンのデータ例を示す図である。クーポン提供パターンは,クーポンの提供対象のユーザの属性を示すクーポン提供条件と,提供するクーポンの識別情報とが対応付けられた情報である。クーポンの提供条件は,例えば,性別,年代,購買履歴などの情報によって示されるクーポン提供対象のターゲットを示す情報である。図6の例では,性別が「女」であり,年代が「20代」であるユーザに対しては,クーポン識別情報が「1」であるクーポンを提供することが示される。また,性別が「女」であり,年代が「30代」であるユーザに対しては,クーポン識別情報が「2」であるクーポンを提供することが示される。また,性別が「女」であり,年代が「20代」であり,カテゴリが「化粧水」かつメーカーが「A社」である商品を購入したユーザに対しては,クーポン識別情報が「3」であるクーポンを提供することが示される。このように,クーポン提供パターンには,「20代女性」,「30代女性」のように,ユーザの属性に基づいて提供されるクーポンと,購買履歴のカテゴリ,会社などに基づいて提供されるクーポンとが含まれるようにして良い。このように,購買履歴に対応付けて提供するクーポンを対応付けるようにすれば,メーカーは自社の製品を購買したユーザに対して特に割引率の高い優待クーポンを提供するなどのサービスを提供することが可能となる。ここでは,例えば購買回数に応じてクーポンの割引率を上げるような設定を行うこともできる。」

したがって,上記引用文献3には,「性別,年代,購買履歴などの情報によって示されるクーポン提供対象のターゲットを示す情報であるクーポン提供条件と,提供するクーポンの識別情報とが対応付けられた情報であるクーポン提供パターンに基づいてクーポンを提供する」という技術的事項が記載されている。

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0030】さらに,上で述べた受信手段により受信されたバーコード情報から抽出された電子クーポン対象商品又はサービスの識別情報に基づき値引き金額を取得し,少なくとも値引き額に相当する金額を当該電子クーポン対象商品又はサービスの提供者に対して請求するための処理を実施する手段(例えば実施の形態における決済処理部15)をさらに有するような構成であってもよい。このような構成により,電子クーポン対象商品又はサービスの提供者に対して,値引き額+手数料などを請求することができるようになる。値引き額(店舗からも手数料を得る場合には手数料を引いた額)は店舗に戻され,手数料は本サービスの提供者(以下クーポン・サービス提供者と呼ぶ)の収入となる。」

したがって,上記引用文献4には,「クーポンサービス提供者は,電子クーポン対象商品又はサービスの提供者に対して,値引き額+手数料を請求し,前記値引き額又は店舗からも手数料を得る場合には前記値引き額から手数料を引いた額を店舗に戻す」という技術的事項が記載されている。

第5 対比,判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア 「第1情報処理装置」について
引用発明において「メーカ端末装置1」が,「対象とする商品の識別情報である商品識別情報,当該商品の値引き内容を表す値引き内容情報,当該電子クーポンの使用可能な期間の情報である有効期間情報,及び,当該電子クーポンを使用可能な地域の地域識別情報」が含まれる「電子クーポンの設定条件を生成」することは,電子クーポンを用いた販売促進活動(キャンペーン)の内容を設定しているといえるから,本願発明1において「キャンペーンを設定」することに相当する。
引用発明の「サーバ装置4」が「店舗端末装置2から電子クーポンを使用可能とする旨の指示情報を受け付け」ることにより,当該「電子クーポン」は当該「店舗端末装置2」が配設された「店舗」で「ユーザ」によって「使用可能」になるものであるから,当該「電子クーポン」は,本願発明1の「利用者が所定の店舗で使用可能なクーポン」に相当する。
以上から,引用発明の「電子クーポンの設定条件を生成」し,「電子クーポンの発行元であるメーカのメーカ端末装置1」は,本願発明1の「キャンペーンを設定し,利用者が所定の店舗で使用可能なクーポンを発行する第1情報処理装置」に相当する。

イ 「利用者端末」について
引用発明の「電子クーポンの使用許可情報」は,「クーポンの情報」に相当する。
引用発明の「電子クーポンの使用許可情報を取得」し,「使用許可情報を赤外線出力部を介して赤外線信号としてPOS端末3に対して出力」する「携帯電話機5」は,取得する情報が「クーポンの情報」であって「クーポン」そのものではない点,及び,クーポンの情報を「赤外線信号として」「出力」するものであって「QRコードを表示」するものではない点で相違するものの,「クーポンの情報」を出力する「利用者端末」である点で,本願発明1と共通する。

ウ 「第2情報処理装置」について
引用発明において「店舗端末装置2」が「少なくとも1の電子クーポンを使用可能とする旨の指示情報を受け付けて,サーバ装置4の使用店舗受付部411bに対して指示情報を送信する」ことは,「電子クーポン」を使用可能な店舗として「第1情報処理装置」によって設定されたキャンペーンに参加することであるといえるから,サーバ装置4を介したキャンペーンへのエントリーであって第1情報処理装置へ「直接」エントリーするものではない点で相違するものの,「前記キャンペーンにエントリー」する点で本願発明1と共通する。
引用発明の「店舗端末装置2」は,「POS端末3を介して携帯電話機5から使用許可情報を受け付け」るものであって,「QRコード(登録商標)を読み取る」ものでない点で相違するものの,「第2情報処理装置」である点で本願発明1と共通する。
以上から,引用発明の「店舗端末装置2」は,上記した点で相違するものの,「前記キャンペーンにエントリーする第2情報処理装置」である点で,本願発明1と共通する。

エ 「サーバ装置」について
引用発明において,「電子クーポンの設定条件情報」として「商品の値引き内容を表す値引き内容情報」を格納する「サーバ装置4」は,クーポンによって付与される特典の内容が「値引き」であって「ポイント」ではない点,及び,「前記第2情報処理装置から取得した報告書の内容に基づいて,リアルタイムで,前記第2情報処理装置への報酬を決定する」ものではない点で相違するものの,「前記クーポンの特典内容に基づいて,前記利用者端末に特典を付与するサーバ装置」である点で,本願発明1と共通する。

オ 「情報処理システム」について
引用発明の「電子クーポン提供システム」は,上記イ?エに記載した相違点を有するものの,「情報処理システム」である点で本願発明1と共通する。

上記ア?オから,本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

<一致点>
「 キャンペーンを設定し,利用者が所定の店舗で使用可能なクーポンを発行する第1情報処理装置と,
クーポンの情報を出力する利用者端末と,
前記キャンペーンにエントリーする第2情報処理装置と,
前記クーポンの特典内容に基づいて,前記利用者端末に特典を付与するサーバ装置と,
を備える情報処理システム。」

<相違点>
<相違点1>
本願発明1は利用者端末が取得する情報が「クーポン」そのものであるのに対し,引用発明は「クーポンの情報」である点。

<相違点2>
本願発明1は利用者端末がクーポンの情報を「QRコードを表示」するものであるのに対し,引用発明は「赤外線信号として」「出力」するものである点。

<相違点3>
本願発明1は第2情報処理装置がキャンペーンに「直接」エントリーするものであるのに対し,引用発明はサーバ装置4を介してエントリーする点。

<相違点4>
本願発明1は第2情報処理装置が「QRコード(登録商標)を読み取る」ものであるのに対し,引用発明は,「POS端末3を介して携帯電話機5から使用許可情報を受け付け」るものである点。

<相違点5>
付与される「特典」の内容が,本願発明1は「ポイント」であるのに対し,引用発明は「値引き」である点。

<相違点6>
本願発明1はサーバ装置が「前記第2情報処理装置から取得した報告書の内容に基づいて,リアルタイムで,前記第2情報処理装置への報酬を決定する」のに対し,引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点の判断
事案に鑑み,相違点6について,以下,検討する。
引用文献2には,「利用者端末に送信されたイベント通知を利用者端末のディスプレイに表示し,イベント通知は二次元コードを有しており,ディスプレイに表示したイベント通知を店舗端末に読み取らせる」という技術的事項が記載されているものの,「前記第2情報処理装置から取得した報告書の内容に基づいて,リアルタイムで,前記第2情報処理装置への報酬を決定する」という相違点6に係る構成は記載も示唆もされていない。
引用文献3には,「性別,年代,購買履歴などの情報によって示されるクーポン提供対象のターゲットを示す情報であるクーポン提供条件と,提供するクーポンの識別情報とが対応付けられた情報であるクーポン提供パターンに基づいてクーポンを提供する」という技術的事項が記載されているものの,「前記第2情報処理装置から取得した報告書の内容に基づいて,リアルタイムで,前記第2情報処理装置への報酬を決定する」という相違点6に係る構成は記載も示唆もされていない。
引用文献4には,「クーポンサービス提供者は,電子クーポン対象商品又はサービスの提供者に対して,値引き額+手数料を請求し,前記値引き額又は店舗からも手数料を得る場合には前記値引き額から手数料を引いた額を店舗に戻す」という技術的事項が記載されているものの,「前記第2情報処理装置から取得した報告書の内容に基づいて,リアルタイムで,前記第2情報処理装置への報酬を決定する」という相違点6に係る構成は記載も示唆もされていない。
よって,当業者といえども,引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項から,相違点6に係る「前記第2情報処理装置から取得した報告書の内容に基づいて,リアルタイムで,前記第2情報処理装置への報酬を決定する」という構成を採用することは容易に想到することができない。

(3)小括
上記(2)のとおり,本願発明1は,他の相違点について判断するまでもなく,相違点6において,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
よって,本願発明1は,当業者が引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。

2 本願発明2?5について
本願発明2?5は本願発明1を減縮した発明であり,上記相違点6に係る構成を備えるものであるから,本願発明1と同様に,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明6について
本願発明6は,本願発明1に対応する「情報処理方法」の発明であり,上記相違点6に係る構成と同様の構成を備えるものであるから,本願発明1と同様に,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明7について
本願発明7は,本願発明1?5のいずれかに対応する「プログラム」の発明であり,上記相違点6に係る構成を備えるものであるから,本願発明1?5と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明1?7は,当業者が引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-04-14 
出願番号 特願2018-215906(P2018-215906)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田付 徳雄  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 中野 浩昌
速水 雄太
発明の名称 情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 杉村 憲司  
代理人 吉澤 雄郎  

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