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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1373508
審判番号 不服2020-523  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-15 
確定日 2021-05-11 
事件の表示 特願2015-195040「視野誘導方法、視野誘導プログラム、及び視野誘導装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開、特開2017- 68689、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 3月14日付け :拒絶理由通知書
令和 元年 5月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 6月18日付け :拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 元年 8月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月 7日付け :令和元年8月26日の手続補正について
の補正の却下の決定、拒絶査定
(以下、「原査定」という。)
令和 2年 1月15日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年10月7日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
本願請求項1ないし6に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2014/162825号
2.木室俊一他2名,マルチディスプレイ環境における頭部姿勢を用いた適応的誘目法,電子情報通信学会技術研究報告,(社)電子情報通信学会,2007年3月16日,HIP2006-135 Vol.106,No.610,43-48
3.特開2004-220179号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし5に係る発明は、令和2年1月15日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、以下のとおりの発明である(補正箇所に下線を付した)。

「 【請求項1】 予め記憶した空間情報の中からターゲット情報を検出し、 前記空間情報が規定する空間における表示装置の位置とターゲット情報が規定するターゲットの位置を計測し、
計測した前記表示装置の位置と前記ターゲットの位置とに基づいて前記表示装置に表示するアイコンの位置と該アイコンの動きを決定し、
前記表示装置において決定した前記位置で決定した前記動きをする前記アイコンを表示させ、
前記表示装置の位置の変化に応じて、該表示装置に表示する前記アイコンの位置及び動きを変更させ、
視野外のターゲットの検出に応じて前記アイコンを表示する際には、視野の特定位置に対応する位置から該視野の前記特定位置よりも外側の位置に対応する位置へと該アイコンの表示位置を移動させ、該アイコンの動きを、前記表示装置が前記ターゲットに近付くにつれて遅くし、該ターゲットが該視野の該特定位置となったとき、該アイコンを該外側の位置から該特定位置にゆっくりと戻し、消失させる処理をコンピュータが行う誘導支援方法。
【請求項2】 前記コンピュータは、
前記ターゲットが前記表示装置の視野外に位置する場合、前記ターゲットの位置への方向の前記視野の境界側に、前記アイコンを動かす領域を設定する処理を行う請求項1記載の誘導支援方法。
【請求項3】 前記コンピュータは、
前記領域内で前記アイコンの位置を移動させて、該領域の境界との衝突判定を行い、
前記アイコンが衝突した場合には、該アイコンの移動方向を反転させる処理を行う請求項2記載の誘導支援方法。
【請求項4】 予め記憶した空間情報の中からターゲット情報を検出し、
前記空間情報が規定する空間における表示装置の位置とターゲット情報が規定するターゲットの位置を計測し、
計測した前記表示装置の位置と前記ターゲットの位置とに基づいて前記表示装置に表示するアイコンの位置と該アイコンの動きを決定し、
前記表示装置において決定した前記位置で決定した前記動きをする前記アイコンを表示させ、
前記表示装置の位置の変化に応じて、該表示装置に表示する前記アイコンの位置及び動きを変更させ、
視野外のターゲットの検出に応じて前記アイコンを表示する際には、視野の特定位置に対応する位置から該視野の前記特定位置よりも外側の位置に対応する位置へと該アイコンの表示位置を移動させ、該アイコンの動きを、前記表示装置が前記ターゲットに近付くにつれて遅くし、該ターゲットが該視野の該特定位置となったとき、該アイコンを該外側の位置から該特定位置にゆっくりと戻し、消失させる処理をコンピュータに実行させる誘導支援プログラム。
【請求項5】 予め記憶した空間情報の中からターゲット情報を検出し、前記空間情報が規定する空間における表示装置の位置とターゲット情報が規定するターゲットの位置を計測する位置計測部と、
計測した前記表示装置の位置と前記ターゲットの位置とに基づいて前記表示装置に表示するアイコンの位置と該アイコンの動きを決定し、前記表示装置において決定した前記位置で決定した前記動きをする前記アイコンを表示させ、前記表示装置の位置の変化に応じて、該表示装置に表示する前記アイコンの位置及び動きを変更させる更新表示部と、
視野外のターゲットの検出に応じて前記アイコンを表示する際には、視野の特定位置に対応する位置から該視野の前記特定位置よりも外側の位置に対応する位置へと該アイコンの表示位置を移動させ、該アイコンの動きを、前記表示装置が前記ターゲットに近付くにつれて遅くし、該ターゲットが該視野の該特定位置となったとき、該アイコンを該外側の位置から該特定位置にゆっくりと戻し、消失させる移動表示部と、を有する誘導支援装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1?3、引用発明
(1)引用文献3、引用発明について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、特開2004-220179号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付与した。以下同様。)
なお、当審は、引用文献3を主たる引用文献として適切と判断した。

ア 請求項1?9
「【請求項1】
画面に表示させる画像を生成する画像生成装置において、画面に表示される画像に対する観客の注目位置に関する情報をもとに、前記画像中の誘導対象に前記注目位置を誘導するための誘導効果を決定する誘導効果決定手段と、前記誘導効果決定手段によって決定された誘導効果を施した画像を生成する画像処理手段とを具備したことを特徴とする画像生成装置。

・・・(中略)・・・

【請求項3】
前記誘導効果決定手段は、前記観客の注目位置から誘導対象の位置までの距離または方向、あるいは誘導効果を施す時間の少なくとも1つに基づいて誘導効果を決定する手段を含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像生成装置。

・・・(中略)・・・

【請求項5】
前記誘導効果決定手段によって決定される誘導効果には、表示属性を変化させるオブジェクトを移動させる誘導効果を含むことを特徴とする1または請求項2記載の画像生成装置。

・・・(中略)・・・

【請求項9】 前記画像が仮想空間を表すものであって、前記誘導効果決定手段は、前記仮想空間中の画面に表示されないオブジェクトを誘導対象として誘導効果を決定することを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像生成装置。」

イ 段落【0014】?段落【0064】
「【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本実施形態に係わる画像生成装置10の構成を示すブロック図である。画像生成装置10は、例えば半導体メモリ、CD-ROM、DVD、磁気ディスク等の記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、このプログラムによって動作が制御されるコンピュータによって実現される。コンピュータには、画像などが表示される表示装置、キーボードや各種ポインティングデバイスなどを含む入力装置、プログラムやデータなどを記憶するための記憶装置などの装置を含む。画像生成装置10は、画像を見ている観客の注目位置を検出し、この注目位置を画像中の誘導対象に誘導する効果を加えた画像を生成する機能を提供する。
【0015】
図1に示すように、画像生成装置10は、注目位置計算部11、画像生成制御部12、誘導情報記憶部13、素材情報記憶部14の機能を含んで構成されている。また、画像生成制御部12は、誘導効果決定部121及び画像処理部122を含んでいる。
【0016】
注目位置計算部11は、観客の画面に表示される画像に対する注目位置をリアルタイムに求めるもので、例えば後述する図3のアイカメラ31等を用いて構成する。また、注目位置計算部11は、注目位置だけでなく観客の画面上における視界範囲の情報を検出することができるものとしても良い。画像生成装置10がゲームなどの画像を生成する場合には、注目位置計算部11をコントローラなどの入力装置とし、観客がコントローラの操作によって画面中で位置を移動させることができるキャラクタの位置情報を観客の注目位置として利用しても良い。
【0017】
画像生成制御部12は、誘導情報記憶部13に予め記憶された例えばコンテンツ製作者が設定した誘導対象(観客の注目位置の誘導先)の情報をもとに、注目位置計算部11により検出される観客の画像に対する注目位置と誘導対象との位置関係に応じて、素材情報記憶部14に記憶された画像に対して、誘導情報記憶部13に記憶された画像効果を加えて画像を生成する。
【0018】
誘導効果決定部121は、CPU、メモリ等から構成されており、図示しない入力手段(キーボード、ポインティングデバイスなど)、メモリ中に記憶される所与のプログラムに基づき、誘導情報記憶部13に記憶されている誘導対象の位置情報と注目位置計算部11で計算された観客の注目位置との距離及び向き(以降、注目位置誘導ベクトルと称する)を計算して、その距離に応じて注目位置の誘導を行うかどうかを判断する。あるいは、誘導効果決定部121は、誘導効果を施す時間の経過に応じて注目位置の誘導を行うかどうかを判断しても良い。さらに、誘導効果決定部121は、注目位置から誘導対象の位置までの距離、方向、あるいは時間の少なくとも2つの組み合わせにより誘導効果を決定しても良い。そして誘導を行うものについては、注目位置誘導ベクトルに応じて、例えばコンテンツ製作者の設定する誘導情報記憶部13に記憶された誘導効果情報の中から一つまたは複数の誘導効果を決定する。ゲームやリアルタイムCGなどのように、複数の異なる種類の画像データ、例えば複数の2次元ピクチャや3次元オブジェクトを含んでシーンが構成されるものは、それぞれに対して誘導効果を決定する。ここで3次元オブジェクトとは、オブジェクトの形状を表すデータが(X、Y、Z)の3次元の要素で定義されているものであり、例えばポリゴンオブジェクトや自由曲面で形成されたオブジェクト等である。また2次元ピクチャとは、ピクチャの形状を表すデータが(X、Y)の2次元の要素で定義されているものであり、例えばアニメーションのセル画やCGでのスプライト、テレビ映像、動画のフレームデータ等である。
【0019】
画像処理部122は、CPU、メモリ等から構成されており、図示しない所与の入力手段、メモリ中に記憶される所与のプログラムに基づき、観客の注自位置とコンテンツ作成者の設定する誘導対象及び誘導効果決定部121で計算された注目位置誘導ベクトルをパラメータとして、素材情報記憶部14の画像データ、例えば静止画像データあるいは動画データ内の現在のフレームデータに対して、誘導効果決定部121で決定された誘導効果を施す。ゲームやリアルタイムCGなどでは、シーンを構成する2次元ピクチャ及び3次元オブジェクトそれぞれに対して誘導効果決定部121で決定された誘導効果を施す。
【0020】
誘導情報記憶部13は、コンテンツ製作者の設定する誘導対象に関する情報を記憶するものであり、誘導対象が点ならば画面内の位置情報が、誘導対象が領域ならば画面内の領域情報を記憶している。誘導対象は複数であってもかまわない。
【0021】
素材情報記憶部14は、画像を生成するために必要な素材となる画像データ、すなわち3次元オブジェクトや2次元ピクチャなどを含む情報を記憶するものである。テレビジョン画面の映像を生成する場合には、素材情報記憶部14には、動画データ、現在のフレームデータが記憶される。また、リアルタイムCG、ゲーム画像(映像)などを生成する場合には、3次元オブジェクトや2次元ピクチャのデータを含んでいても良い。

・・・(中略)・・・

【0027】
次に、本実施形態において、観客の注目位置を検出することにより、リアルタイム検出するための手法について説明する。
【0028】
図3は、注目位置計算部11としてアイカメラ31を装着した観客32が画面33の映像を見ている様子を示している。アイカメラ31は、例えば角膜反射方式で観客32の注視点を検出するよう構成されている。角膜反射方式とは、眼球に対して光(近赤外光)をあて、眼球の角膜内部に生じる虚像(反射光)を捕らえる方式であり、眼球の回転中心と角膜の曲率中心がずれていることを利用して虚像点の動きから観客の実際に見ている注目位置を算出する。さらに、観客32の視界範囲を検出する。
【0029】
また、特開平11-175246(特許文献3参照)のように、観客の顔画像中から切り出した観客の瞳近傍のパターンとあらかじめ登録しておいた画面上のある箇所(アイコン等の指標)を見ている観客の瞳近傍のパターンから作成した辞書とを比較して、観客の実際に見ている注目位置を算出するという手法を用いることもできる。
【0030】
次に、図4に示すフローチャートを参照しながら、誘導効果決定部121における処理動作について説明する。
【0031】
誘導効果決定部121は、注目位置計算部11から得られる注目位置24(注目位置情報)、誘導対象25の位置、及び誘導情報記憶部13に記憶されている情報から誘導効果のパラメータを計算して求める。
【0032】
最初に、誘導効果決定部121は、注目位置計算部11からの入力(注目位置情報)により観客21による注目位置24の設定を行う。注目位置計算部11からの入力が観客21の視点位置であれば、観客21の画面上の注目位置24を注目位置(x1,y1)に設定する。ゲームなどで観客の操作する2次元ピクチャ及び3次元オブジェクトを注目対象とする場合、その位置を注目位置{(x1,y1)または(x1,y1,z1)}に設定する(ステップA1)。
【0033】
次に、誘導効果決定部121は、以降の処理で用いる注目位置誘導ベクトル26{(x2,y2)または(x2,y2,z2)}を、注目位置24と誘導情報記憶部13に記憶されている誘導対象25の位置{(x3,y3)または(x3,y3,z3)}の差より計算する(ステップA2)。
【0034】
次に、誘導効果決定部121は、注目位置誘導ベクトル206のスカラー量から注目位置24と誘導対象25との距離を計算する(ステップA3)。
【0035】
次に、誘導効果決定部121は、画像を生成するのに必要な2次元ピクチャ、3次元オブジェクト毎に、注目位置24と誘導対象25との距離に応じて誘導効果を施すか否かを決定する(ステップA4,A5)。なお、誘導効果を施すか否かを決定するための閾値は誘導情報記憶部13に予め記憶させておくものとする。
【0036】
以下の表1には、誘導効果決定部121が誘導効果を施すか否かを判別する条件を分類して示している。
【0037】
【表1】


【0038】
すなわち、誘導対象に観客の注目を誘導させたい場合には、注目位置24と誘導対象25との距離が予め設定された閾値以下であれば、観客は既に誘導対象に注目しているものと判別して誘導効果を施さず、距離が閾値を越えていれば、観客は誘導対象に注目していないものと判別して誘導効果を施すものとする。
【0039】
また、誘導対象に観客の注目をそらせたい場合には、注目位置24と誘導対象25との距離が予め設定された閾値以下であれば、観客は既に誘導対象に注目しているものと判別して誘導効果を施し、距離が閾値を越えていれば、観客は誘導対象に注目していないものと判別して誘導効果を施さないものとする。
【0040】
次に、誘導効果決定部121は、画像を生成するのに必要な2次元ピクチャ、3次元オブジェクト毎に、誘導情報記憶部13に記憶されている何れの誘導効果を施すかを決定する。誘導情報記憶部13には、何れの誘導対象に対して何れの誘導効果を施すかを示す誘導情報が記憶されているものとする。また、誘導情報記憶部13には、注目位置誘導ベクトル206の向き、大きさ、また効果を施す2次元ピクチャ及び3次元オブジェクトの種類に応じて選択的に誘導効果の種類や強度を決定するための誘導情報が記憶されていても良い。また、注目位置誘導ベクトル206の向きと大きさだけでなく、誘導効果を発生させる地点と観客の注目位置までの距離あるいは方向、さらには注目位置誘導ベクトル206との組み合わせに応じて誘導効果を決定できるようにしても良い。なお、誘導効果決定部121は、1つの2次元ピクチャ、または3次元オブジェクトに関して複数の誘導効果を決定しても良い(ステップA6)。
【0041】
誘導効果決定部121は、これら一連の誘導効果を施すかどうかの判別と誘導効果の決定を、画像を生成するのに必要な2次元ピクチャ、3次元オブジェクト全てに対して行ったかを判別し(ステップA7)、全てに対して処理が完了していれば処理対象とする全ての2次元ピクチャ、3次元オブジェクトに対して決定された誘導効果の情報を画像処理部122に提供して処理を終了する。
【0042】
次に、画像処理部122の動作の詳細について説明する。画像処理部122は、誘導効果決定部121から提供された誘導効果の情報に応じて、素材情報記憶部14に記憶された誘導効果に用いる素材情報を用いて画像に対して誘導効果を施す。
【0048】
次に、画像処理部122によって施される誘導効果(画像処理)の具体例について、図5?図11を参照しながら説明する。

・・・(中略)・・・

【0052】
図5(b)は、図5(a)とは異なり、誘導効果の中心(焦点63b)を注視位置61bと誘導対象62bとの位置関係に応じて動かすことで注目位置誘導を行う例である。焦点63bを注目位置61bから誘導対象62bの方向に、図6(c)のグラフの関係に示す距離に応じて近づけた位置に設定しながら注目位置誘導を行う。次のステップ(あるいは単位時間後)に注目位置61bが焦点63bに誘導されていれば、焦点63bが誘導対象62bに近づいているので、さらに図6(c)のグラフの距離分近づけた位置に設定する。注目位置61bが誘導対象62bのごく近くになるまで(誘導情報決定部121で距離が閾値以下になり効果を施さないと判断されるまで)、一連の焦点63bの位置の移動を繰り返し、画像効果を施すことで、少しずつかつスムースな注目位置誘導を行う。なお、図6(c)に示すグラフの関係以外にも、観客の視野角、モニターと観客の距離や向きなどの情報を収集し、この情報を利用して焦点63bの移動距離を求めてもよいし、画面の実際の大きさから決めてもよい。なお、効果線の太さは、図5(a)の場合と同じように図6(b)に示す関係に従って決めるものとする。
【0053】
なお、図5に示す誘導効果の例では、焦点に向かう効果線による集中線効果を用いているが、画像処理がある焦点を中心とし、注自位置誘導ベクトルに応じた画像効果、あるいは画像処理であれば、例えば対象の2次元ピクチャあるいは3次元オブジェクトの一部ないし全部を、ある点を中心に光らせて観客を注目させたり、注目位置誘導ベクトルに応じて矢印のようなものを描画してもよい。また、波紋効果のように変形処理を施すものでもかまわない。図7には波紋効果を施した画像の例を示している。注目位置81と誘導対象82を設定して、誘導対象82から注目位置81の方向に波紋効果による変形を行っている。
【0054】
また、3Dゲームなどのように、誘導対象、注目位置、処理の対象となる画像情報の位置が3次元(x、y、z)で定義される場合には、3次元の注目位置誘導ベクトルに応じて誘導効果を施す。この場合、パースをかける等、3次元での処理を行う。なお、誘導対象から観客の注目をそらさせたい効果を施す場合は、誘導対象と反対の方向に効果の中心を設定することで実現する。」

ウ 【図5】




エ 【図6】




図6(c)のグラフは、誘導対象と電話機の距離が近づくにつれて、注視位置と焦点との距離をより短く設定することが記載されていると認められる。

オ 段落【0059】?段落【0064】
「【0059】
次に、他の画像効果の例として、アニメーション、拡大縮小の画像効果を施す場合について説明する。
【0060】
図10には、アニメーションの画像効果を施している画像の例を示している。図10に示す画像では、観客の注目位置112の位置に誘導に用いるオブジェクトとして電話機114を表示することで、観客の注目位置を電話機114に集中させている。そして、図11に示すように、電話機114の表示位置を注目位置誘導ベクトル115の方向、すなわち誘導対象(電話番号)113の方向に時間tの変化に応じて移動(アニメーション)させる。このように、電話機114という2次元ピクチャを使い、注目位置112から誘導対象113へのアニメーションを繰り返すことで観客の注目位置誘導を行う。なお、電話機114に対しては、誘導対象113と電話機114の現在の表示位置との距離に応じた拡大率に従って拡大縮小を施して表示する。図12には、誘導対象113と電話機114の表示位置との距離に応じた拡大率の関係の一例を示している。図12に示す例では、誘導対象113と電話機114の距離が所定以上にある時には、2倍の大きさに拡大して電話機114を表示し、その距離が所定未満となったら距離が短くなるに従って元の大きさ(1倍)となるように順次縮小して表示するように定義されている。なお、誘導対象113と電話機114の距離と拡大率の関係については、図12に示す関係以外にも誘導効果のある関係を任意に設定することができる。

・・・(中略)・・・

【0064】
なお、前述した説明では、説明を簡単にするために、誘導対象をコンテンツ製作者が意図している電話番号とし、その位置が画面中の特定の位置(画面右上)にあるものとしているが、誘導対象をコンテンツ製作者が予め意図できない場合、誘導対象の位置が変動する場合、注目位置の誘導経路が直線的でない場合などにも応用することができる。以下には、これら応用の具体例(1)?(5)について説明する。」

カ 段落【0077】?段落【0088】
「【0077】
(2)次に、電子ゲームや多人数参加型会話ソフトウェアなど、インタラクティブ性が高く、且つリアルタイム性を要するアプリケーションでの誘導効果の具体例について説明する(対話型アプリケーションにおけるインタフェースとしての誘導効果について)。
【0078】
多人数参加型会話ソフトウェアのような、不特定多数の他のユーザが参加していて、且つ複数の他のユーザと会話できるような会話ソフトで、観客の注目位置を会話相手(誘導対象)に的確に誘導する効果について説明する。
【0079】
ここでは、画面内に多くのユーザが表示され、表示されている相手と画面を通じて会話することができるものとする。この場合、観客が他のあるユーザと会話している際に、観客の注目が会話しているユーザに向くように誘導効果を施したり、他のあるユーザから話しかけられた際に、観客の注目が話しかけてきたユーザに向くように誘導効果を施す。画面内に多くのユーザが表示されていると、観客が会話しているユーザを見失ったり、他のユーザから話しかけられても、どのユーザから話しかけられたのかわからないような問題がよく起こる。更に、広範囲、大画面のスクリーンなどに表示する場合は、観客の視界範囲内に画面の全てが見えるわけではないため、視界外のユーザから話しかけられた場合には、余計に対応が難しくなる。
【0080】
このような場合、観客の注目位置と観客が会話しているユーザ、あるいは観客に話しかけてきたユーザとの間が一定距離以上離れている場合に、速やかに注目できるように誘導効果を施す。
【0081】
この具体例の場合、誘導情報記憶部13に記憶される誘導情報は、観客の会話対象となっているユーザの位置情報と、観客に向かって話しかけてきたユーザの画面における位置情報に応じて逐次更新されるものとする。観客の会話対象となっているユーザは、予め決められていても良いし、画面に表示されたユーザを観客が例えばポインティングデバイスを用いて指定することで特定しても良い。また、観客に向かって話しかけてきたユーザは、例えばユーザ毎に発言の内容を解析することで特定するようにしても良い。画像生成装置10は、素材情報記憶部14に記憶される画像データから、前述のように特定された観客の会話対象となっているユーザあるいは観客に向かって話しかけてきたユーザの位置を検出して、誘導情報として誘導情報記憶部13に記憶させる。
【0082】
誘導効果としては、例えば、会話しているユーザのキャラクタ情報を他の会話していないユーザに比べて明るめにしたりくっきり表示させ、そのほかのユーザや背景を暗めにしたりぼやけ処理を施したりする。あるいは、集中線効果やぼかしフィルター、ブラー処理などを用いた誘導効果を施してもよい。さらに、観客の注目位置と誘導対象、すなわち話しかけてきたユーザとの位置関係や距離に応じて、誘導効果の種類や強度などを変化させることで、より効果的な注目位置誘導をすることができる。
【0083】
また、この具体例では、誘導対象が観客の視界内にいない場合と視界内にいる場合で、別の誘導効果を使い分けることもできる。誘導対象が観客の視界内にいない場合は、まず先に誘導対象が視界内に見えるように注目位置を誘導することが好ましく、例えばアニメーションするポインタなどで直接的な誘導を行って、誘導対象が観客に見える位置まで誘導する。そして、誘導対象が見える位置まで誘導できたら、それ以降、他の上記したような誘導対象をくっきりと表示させる方法や、集中線やぼかしフィルターを使って、注目位置を誘導対象に誘導する誘導効果を施す。このように誘導効果を切り替えて施すこともできる。
【0084】
図15(a)(b)は、視界を越える広い画面上での注目位置誘導について説明したものである。
【0085】
図15(a)に示す画面160の時点では、ユーザ162が観客に話しかけた場合、ユーザ162は観客の視界外にいるため観客には認識できない。なお、観客の視界に関する情報は注目位置計算部11から取得されるものとし、誘導効果決定部121は、ユーザ162が視界内にいるかどうかを、ユーザ162の位置情報と観客の注目位置161から求まる注目位置誘導ベクトル163によって判断する。ユーザ162が観客の視界外にあると判断した場合、誘導効果決定部121は、観客の注目位置をユーザ162が見える位置に誘導するための誘導効果を施すものと決定する。
【0086】
この場合は、速やかに観客の視点をユーザ162が見える位置まで誘導する必要があるので、視界内に誘導対象がある場合に用いた前述した各種の誘導効果を用いるほかにも、より直接的な誘導効果を用いるようにしても良い。例えば、図16に示すような矢印のような視界を変更すべき方向を明示するオブジェクトを、注目位置誘導163ベクトルに沿ってアニメーションさせるような誘導効果を用いる。
【0087】
こうした誘導効果を施すことにより、図15(b)に示す画面165のように、ユーザ167が視界内に含まれるまで注目位置166を誘導することができたら、注目位置誘導ベクトル168の距離、向きに応じて、誘導効果を決定する。その際の誘導効果は、誘導対象が視界外あった時の誘導効果よりも、直接的でない種類の誘導効果を用いたり、誘導効果の強度を落としたものを適用するようにしても良い。
【0088】
なお、前述した説明では、会話の相手を例えば話しかけてきたユーザとして特定しているが、話しかけるという行動を検出とするだけでなく、会話を行う場面以外で画像に表示されるオブジェクトの変化を検出して誘導対象とすることもできる。例えば、オブジェクトの動き、大きさの変化などを検出して、誘導対象として特定することも可能である。」

キ 【図15】




ク 【図16】




ケ 引用発明
上記記載からみて、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 画像生成装置10は、記録されたプログラムを読み込み、このプログラムによって動作が制御されるコンピュータによって実現され、
コンピュータには、画像などが表示される表示装置、キーボードや各種ポインティングデバイスなどを含む入力装置、プログラムやデータなどを記憶するための記憶装置などの装置を含み、
画像生成装置10は、注目位置計算部11、画像生成制御部12、誘導情報記憶部13、素材情報記憶部14の機能を含んで構成され、
画像生成制御部12は、誘導効果決定部121及び画像処理部122を含み、
注目位置計算部11は、観客の画面に表示される画像に対する注目位置をリアルタイムに求めるもので、アイカメラ31等を用いて構成し、
画像生成制御部12は、誘導情報記憶部13に予め記憶された誘導対象(観客の注目位置の誘導先)の情報をもとに、注目位置計算部11により検出される観客の画像に対する注目位置と誘導対象との位置関係に応じて、素材情報記憶部14に記憶された画像に対して、誘導情報記憶部13に記憶された画像効果を加えて画像を生成し、
誘導効果決定部121は、CPU、メモリ等から構成されており、誘導情報記憶部13に記憶されている誘導対象の位置情報と注目位置計算部11で計算された観客の注目位置との距離及び向き(以降、注目位置誘導ベクトルと称する)を計算して、その距離に応じて注目位置の誘導を行うかどうかを判断し、
ゲームやリアルタイムCGなどのように、複数の異なる種類の画像データ、例えば複数の2次元ピクチャや3次元オブジェクトを含んでシーンが構成されるものは、それぞれに対して誘導効果を決定し、
3次元オブジェクトとは、オブジェクトの形状を表すデータが(X、Y、Z)の3次元の要素で定義されているものであり、
画像処理部122は、誘導対象及び誘導効果決定部121で計算された注目位置誘導ベクトルをパラメータとして、誘導効果決定部121で決定された誘導効果を施し、
誘導情報記憶部13は、誘導対象に関する情報を記憶するものであり、
素材情報記憶部14は、画像を生成するために必要な素材となる画像データ、すなわち3次元オブジェクトや2次元ピクチャなどを含む情報を記憶し、
注目位置計算部11としてアイカメラ31は、観客32の注視点を検出するよう構成され、
誘導効果決定部121は、注目位置計算部11から得られる注目位置24(注目位置情報)、誘導対象25の位置、及び誘導情報記憶部13に記憶されている情報から誘導効果のパラメータを計算し、
誘導効果決定部121は、注目位置計算部11からの入力(注目位置情報)により観客21による注目位置24の設定を行い、
誘導効果決定部121は、以降の処理で用いる注目位置誘導ベクトル26{(x2,y2)または(x2,y2,z2)}を、注目位置24と誘導情報記憶部13に記憶されている誘導対象25の位置{(x3,y3)または(x3,y3,z3)}の差より計算し、
誘導効果決定部121は、注目位置24と誘導対象25との距離を計算し、
誘導効果決定部121は、画像を生成するのに必要な2次元ピクチャ、3次元オブジェクト毎に、注目位置24と誘導対象25との距離に応じて誘導効果を施すか否かを決定し、
誘導対象に観客の注目を誘導させたい場合には、注目位置24と誘導対象25との距離が予め設定された閾値以下であれば、観客は既に誘導対象に注目しているものと判別して誘導効果を施さず、距離が閾値を越えていれば、観客は誘導対象に注目していないものと判別して誘導効果を施し、
誘導効果決定部121は、誘導効果を発生させる地点と観客の注目位置までの距離あるいは方向、さらには注目位置誘導ベクトル206との組み合わせに応じて誘導効果を決定でき、
誘導効果の中心(焦点63b)を注視位置61bと誘導対象62bとの位置関係に応じて動かす場合に、
焦点63bを注目位置61bから誘導対象62bの方向に、距離に応じて近づけた位置に設定しながら注目位置誘導を行い、
単位時間後に、注目位置61bが焦点63bに誘導されていれば、焦点63bが誘導対象62bに近づいているので、さらに距離分近づけた位置に設定し、
注目位置61bが誘導対象62bのごく近くになるまで(誘導情報決定部121で距離が閾値以下になり効果を施さないと判断されるまで)、一連の焦点63bの位置の移動を繰り返し、画像効果を施すことで、少しずつかつスムースな注目位置誘導を行い、
焦点に向かう効果線による集中線効果を用いているが、画像処理がある焦点を中心とし、注目位置誘導ベクトルに応じて矢印のようなものを描画してもよく、
誘導対象と電話機の距離が近づくにつれて、注視位置と焦点との距離をより短く設定しており、
観客の注目位置112の位置に誘導に用いるオブジェクトとして電話機114を表示し、
電話機114の表示位置を注目位置誘導ベクトル115の方向、すなわち誘導対象(電話番号)113の方向に時間tの変化に応じて移動(アニメーション)させ、
誘導対象をコンテンツ製作者が予め意図できない場合、誘導対象の位置が変動する場合、注目位置の誘導経路が直線的でない場合などにも応用することができ、
電子ゲームや多人数参加型会話ソフトウェアなど、インタラクティブ性が高く、且つリアルタイム性を要するアプリケーションでの誘導効果について、
観客が他のあるユーザと会話している際に、観客の注目が会話しているユーザに向くように誘導効果を施したり、他のあるユーザから話しかけられた際に、観客の注目が話しかけてきたユーザに向くように誘導効果を施し、
誘導情報記憶部13に記憶される誘導情報は、観客の会話対象となっているユーザの位置情報と、観客に向かって話しかけてきたユーザの画面における位置情報に応じて逐次更新され、
観客の会話対象となっているユーザは、予め決められていても良いし、画面に表示されたユーザを観客が例えばポインティングデバイスを用いて指定することで特定しても良く、
観客に向かって話しかけてきたユーザは、例えばユーザ毎に発言の内容を解析することで特定するようにしても良く、
画像生成装置10は、素材情報記憶部14に記憶される画像データから、特定された観客の会話対象となっているユーザあるいは観客に向かって話しかけてきたユーザの位置を検出して、誘導情報として誘導情報記憶部13に記憶させ、
誘導効果としては、会話しているユーザのキャラクタ情報を他の会話していないユーザに比べて明るめにしたりくっきり表示させ、そのほかのユーザや背景を暗めにしたりぼやけ処理を施し、
あるいは、集中線効果やぼかしフィルター、ブラー処理などを用いた誘導効果を施してもよく、
さらに、観客の注目位置と誘導対象との位置関係や距離に応じて、誘導効果の種類や強度などを変化させ、
誘導対象が観客の視界内にいない場合と視界内にいる場合で、別の誘導効果を使い分けることもでき、
誘導対象が観客の視界内にいない場合は、まず先に誘導対象が視界内に見えるように注目位置を誘導することが好ましく、
アニメーションするポインタなどで直接的な誘導を行って、誘導対象が観客に見える位置まで誘導し、
誘導対象が見える位置まで誘導できたら、それ以降、他の上記したような誘導対象をくっきりと表示させる方法や、集中線やぼかしフィルターを使って、注目位置を誘導対象に誘導する誘導効果を施し、
視界を越える広い画面上での注目位置誘導について、
画面160の時点では、ユーザ162が観客に話しかけた場合、ユーザ162は観客の視界外にいるため観客には認識できず、
観客の視界に関する情報は注目位置計算部11から取得され、
誘導効果決定部121は、ユーザ162が視界内にいるかどうかを、ユーザ162の位置情報と観客の注目位置161から求まる注目位置誘導ベクトル163によって判断し、
ユーザ162が観客の視界外にあると判断した場合、誘導効果決定部121は、観客の注目位置をユーザ162が見える位置に誘導するための誘導効果を施すものと決定し、
視界内に誘導対象がある場合に用いた前述した各種の誘導効果を用いるほかにも、より直接的な誘導効果を用いるようにしても良く、
矢印のような視界を変更すべき方向を明示するオブジェクトを、注目位置誘導163ベクトルに沿ってアニメーションさせるような誘導効果を用い、
ユーザ167が視界内に含まれるまで注目位置166を誘導することができたら、注目位置誘導ベクトル168の距離、向きに応じて、誘導効果を決定する、
画像生成装置10。」

(2)引用文献1について
引用文献1には、図面とともに次の記載がある。
ア 段落[0002]?段落[0005]
「 背景技術
[0002]
近年、実世界に付加的な情報を重畳してユーザに提示する拡張現実(AR:Augmented Reality)と呼ばれる技術が注目されている。AR技術においてユーザに提示される情報は、アノテーションとも呼ばれ、テキスト、アイコンまたはアニメーションなど様々な形態の仮想的なオブジェクトを用いて可視化されうる。例えば、特許文献1には、こうしたARの仮想オブジェクトの操作を、AR空間へのユーザの没入感を損なうことなく実現するための技術が記載されている。

・・・(中略)・・・

[0005]
そこで、本開示では、AR技術を利用したユーザ間のインタラクションをより円滑にすることが可能な、新規かつ改良された表示制御装置、表示制御方法およびプログラムを提案する。」

イ 段落[0040]?段落[0048]
「[0040]
(2-2.利用されうる技術)
本実施形態では、上述した実空間画像の共有とインタラクションを実現するにあたって、いくつかの技術が利用される。まず、本実施形態では、送信側の装置において、送信される実空間の画像データに空間情報が付加される。空間情報は、送信側の装置の撮像部(図3Aおよび図3Bの例ではウェアラブル端末200のカメラ260、図4の例ではタブレット端末300aのカメラ)が実空間の中でどのように移動しているかを推定することを可能にする情報である。

・・・(中略)・・・

[0044]
以下、上記の技術に係る送信側の装置、受信側の装置、およびサーバの処理の例について、図5Aのフローチャートを参照しながら、図3Aおよび図3Bに示した例を用いて説明する。なお、上記の技術は、図3Aおよび図3Bの例に関わらず上述したシステム10における任意の装置の組み合わせについて適用可能でありうる。
[0045]
まず、ウェアラブル端末200(送信側の装置)において、撮像部が実空間の画像データを取得するとともに、撮像部またはセンサが取得した情報を必要に応じてプロセッサが処理することによって空間情報が生成される(ステップS101)。画像データと空間情報とは、互いに関連付けられてウェアラブル端末200の通信部からサーバ100に送信される(ステップS103)。サーバ100では、通信部がウェアラブル端末200から画像データおよび空間情報を受信し、画像データをタブレット端末300(受信側の装置)に転送する(ステップS105)。また、サーバ100では、プロセッサが空間情報を用いて受信された画像内の位置とウェアラブル端末200が存在する実空間の位置とを関係づける(ステップS107)。
[0046]
タブレット端末300では、通信部がサーバ100から画像データを受信し、受信された画像データに基づいてプロセッサがディスプレイ330に画像1300を表示させる(ステップS109)。ここで、タッチセンサ340によって画像1300に対するユーザのアノテーション入力が取得された場合(ステップS111)、プロセッサはアノテーション入力を画像1300内の位置(例えばポインタ1310の位置)に関係づけ、通信部からサーバ100に送信する(ステップS113)。
[0047]
サーバ100では、通信部がタブレット端末300から送信されたアノテーション入力および画像内の位置の情報を受信すると、プロセッサが受信された情報に含まれる画像内の位置を実空間の位置に変換する(ステップS115)。変換後の実空間の位置に関連付けられたアノテーション入力は、通信部からウェアラブル端末200に送信される(ステップS117)。
[0048]
ウェアラブル端末200では、通信部がサーバ100からアノテーション入力および実空間の位置の情報を受信し、プロセッサが空間情報を用いてアノテーション情報に関連付けられた実空間の位置を現在ディスプレイ230に表示されている画像1200内の位置に変換し(ステップS119)、その位置にアノテーション(例えばポインタ1210やコメント1220)を表示させる(ステップS121)。」

ウ 図5A




エ 段落[0114]?段落[0125]
「[0114]
(5.視認可能範囲外にあるアノテーションの表示)
続いて、図21?図32を参照して、本開示の一実施形態における視認可能範囲外にあるアノテーションの表示について説明する。本実施形態では、上記のように、送信側の装置において送信される実空間の画像データに空間情報が付加される。この空間情報を利用すれば、受信側の装置では、送信側の装置で表示されている画像の表示範囲に関わらず、実空間の任意の位置に対してアノテーションを入力することが可能である。

・・・(中略)・・・

[0119]
(第1の例)
図21?図23は、本開示の一実施形態における視認可能範囲外にあるアノテーションの表示の第1の例を示す図である。
[0120]
図21は、アノテーションが画像1200(視認可能範囲)の中にある場合の表示例を示す。この場合、アノテーションは、テーブルの上に置かれたカップ(CUP)を対象として表示され、ポインタ1210と、コメント1220とを含む。
[0121]
図22は、アノテーションの対象であるカップ(CUP)が画像1200の外にある場合の表示例を示す。この場合、図21に示したようなアノテーションの代わりに、アノテーションの対象が存在する方向を示す方向表示1230が表示されうる。方向表示1230は、例えば、ウェアラブル端末200が取得している空間情報に基づいて、画像1200の表示範囲とアノテーションの対象との位置関係を特定することによって表示可能になる。また、このとき、アノテーションのうちのコメント1220が、方向表示1230とともに表示されてもよい。コメント1220は、アノテーションの内容または種類などを示す情報であるため、ポインタ1210ではなく方向表示1230とともに表示されても有用である。
[0122]
図23は、ウェアラブル端末200のユーザが方向表示1230に応じてカメラ260の向きを変えたことなどによって画像1200の表示範囲が移動し、アノテーションの対象であるカップ(CUP)の一部が画像1200に含まれるようになった場合の表示例を示す。この場合、対象の全部が画像1200に含まれていなくても、ポインタ1210の一部とコメント1220とがアノテーションとして表示されてもよい。
[0123]
(第2の例)
図24および図25は、本開示の一実施形態における視認可能範囲外にあるアノテーションの表示の第2の例を示す図である。この第2の例では、視認可能範囲外にアノテーションの対象が存在することに加えて、アノテーションの対象までの距離が表示される。
[0124]
図24は、視認可能範囲からアノテーションの対象までの距離が異なる2つの画像に対する表示の例を示す図である。この例では、視認可能範囲外にアノテーションが存在することが、円1240によって表示される。円1240は、図25にも示すように、アノテーションの対象から視認可能範囲までの距離に応じた半径で表示される。図25Aに示されるように、アノテーションの対象から視認可能範囲(画像1200a)までの距離が大きい場合、より大きい半径r1の円1240aが表示される。また、図25Bに示されるように、アノテーションの対象から視認可能範囲(画像1200b)までの距離が小さい場合、より小さい半径r2の円1240bが表示される。円1240の半径rは、アノテーションの対象までの距離に応じて連続的に設定されてもよいし、段階的に設定されてもよい。また、図24に示されるように、円1240とともに、アノテーションのうちのコメント1220が表示されてもよい。
[0125]
このように円1240を表示することによって、例えば、画像1200を見ているユーザが、視認可能範囲外にアノテーションが存在することだけではなく、画像1200の表示範囲をどの方向にどの程度移動させればアノテーションを視認することができるかを直感的に把握することができうる。」

オ 図22





カ 図24




キ したがって、引用文献1には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「AR技術を利用したユーザ間のインタラクションをより円滑にすることが可能な、新規かつ改良された表示制御装置、表示制御方法およびプログラムであって、
ウェアラブル端末200(送信側の装置)において、撮像部が実空間の画像データを取得するとともに、撮像部またはセンサが取得した情報を必要に応じてプロセッサが処理することによって空間情報が生成され、
画像データと空間情報とは、互いに関連付けられてウェアラブル端末200の通信部からサーバ100に送信され、
サーバ100では、通信部がウェアラブル端末200から画像データおよび空間情報を受信し、画像データをタブレット端末300(受信側の装置)に転送し、
サーバ100では、プロセッサが空間情報を用いて受信された画像内の位置とウェアラブル端末200が存在する実空間の位置とを関係づけ、
タブレット端末300では、通信部がサーバ100から画像データを受信し、受信された画像データに基づいてプロセッサがディスプレイ330に画像1300を表示させ、
タッチセンサ340によって画像1300に対するユーザのアノテーション入力が取得された場合に、
プロセッサはアノテーション入力を画像1300内の位置(例えばポインタ1310の位置)に関係づけ、通信部からサーバ100に送信し、
サーバ100では、通信部がタブレット端末300から送信されたアノテーション入力および画像内の位置の情報を受信すると、プロセッサが受信された情報に含まれる画像内の位置を実空間の位置に変換し、
変換後の実空間の位置に関連付けられたアノテーション入力は、通信部からウェアラブル端末200に送信され、
ウェアラブル端末200では、通信部がサーバ100からアノテーション入力および実空間の位置の情報を受信し、プロセッサが空間情報を用いてアノテーション情報に関連付けられた実空間の位置を現在ディスプレイ230に表示されている画像1200内の位置に変換し、
その位置にアノテーション(例えばポインタ1210やコメント1220)を表示させ、
アノテーションの対象が存在する方向を示す方向表示1230が表示されうるものであり、
方向表示1230は、例えば、ウェアラブル端末200が取得している空間情報に基づいて、画像1200の表示範囲とアノテーションの対象との位置関係を特定することによって表示可能になり、
アノテーションのうちのコメント1220が、方向表示1230とともに表示されてもよく、
コメント1220は、アノテーションの内容または種類などを示す情報であるため、ポインタ1210ではなく方向表示1230とともに表示されても有用であり、
視認可能範囲外にアノテーションの対象が存在することに加えて、アノテーションの対象までの距離が表示され、
視認可能範囲外にアノテーションが存在することが、円1240によって表示され、
円1240は、図25にも示すように、アノテーションの対象から視認可能範囲までの距離に応じた半径で表示される、
円1240の半径rは、アノテーションの対象までの距離に応じて連続的に設定されてもよいし、段階的に設定されてもよく、
円1240とともに、アノテーションのうちのコメント1220が表示されてもよい、
表示制御装置、表示制御方法およびプログラム。」

(3) 引用文献2について
引用文献2の「2.関連研究」、「3.誘目のための映像効果の評価」を参照すると、「周辺視野では,形状をはっきりと認識することは出来ないが,時間的に変化する刺激,たとえば明滅する光や運動物体を検出する能力(運動知覚)に優れていること、周辺視野の特性を利用してユーザを誘目する手法を実装し、それについての評価を行うこと、実装した映像効果は、横振動、縦振動、点滅、サイズの拡大縮小、背景色の変化の5種類であること」が記載されている。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
引用文献3を主たる引用文献とする場合について先に対比判断を行い、その後に、引用文献1を主たる引用文献とする場合について、検討を行う。
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「素材情報記憶部14」に記憶された「画像データ」は、「画像を生成するために必要な素材となる画像データ、すなわち3次元オブジェクトや2次元ピクチャなどを含む情報」であるから、空間情報といいるものである。
そして、引用発明の「画像生成装置10」に含まれる「画像生成装置10」が、「素材情報記憶部14に記憶される画像データ」から、「誘導情報として誘導情報記憶部13に記憶させ」るために「特定された観客の会話対象となっているユーザあるいは観客に向かって話しかけてきたユーザの位置を検出」することは、「特定された観客の会話対象となっているユーザあるいは観客に向かって話しかけてきたユーザ」が誘導する対象、すなわち、ターゲットといえるから、本願発明1の「予め記憶した空間情報の中からターゲット情報を検出」することと一致している。

イ (ア) 引用発明の「画像生成装置10」に含まれる「注目位置計算部11」は、「観客の画面に表示される画像に対する注目位置」を「リアルタイムに求めるもので、アイカメラ31等を用いて構成し」、「アイカメラ31は、観客32の注視点を検出するよう構成され」ているから、「画面に表示される画像に対する注目位置」を計測しているといえる。
また、引用発明の「画像データ」は、「3次元オブジェクトを含んでシーンが構成され」、「誘導効果決定部121は」、「注目位置24と誘導情報記憶部13に記憶されている誘導対象25の位置{(x3,y3)または(x3,y3,z3)}の差」を算出していることから、当該「注目位置」は3次元の位置情報、すなわち、空間情報といいうるものであるから、引用発明の「注目位置計算部11」が「観客の画面に表示される画像に対する注目位置」を「アイカメラ31等を用いて」「リアルタイムに求める」ことは、前記空間情報が規定する空間(画面に表示される画像)における注目位置を計測しているといえる。

(イ)上記アより、引用発明の「画像生成装置10」に含まれる「画像生成装置10」が、「素材情報記憶部14に記憶される画像データ」から、「誘導情報として誘導情報記憶部13に記憶させ」るために「特定された観客の会話対象となっているユーザあるいは観客に向かって話しかけてきたユーザの位置を検出」しており、引用発明の「素材情報記憶部14」に記憶された「画像データ」は、空間情報といいうるものであるから、前記空間情報が規定する空間におけるターゲット情報が規定するターゲットの位置を計測しているといえる。

(ウ)(ア)、(イ)より、引用発明の「画像生成装置10」に含まれる「注目位置計算部11」が「観客の画面に表示される画像に対する注目位置」を「アイカメラ31等を用いて」「リアルタイムに求め」、引用発明の「画像生成装置10」が、「素材情報記憶部14に記憶される画像データ」から、「誘導情報として誘導情報記憶部13に記憶させ」るために「特定された観客の会話対象となっているユーザあるいは観客に向かって話しかけてきたユーザの位置を検出」することは、本願発明1の「前記空間情報が規定する空間における表示装置の位置とターゲット情報が規定するターゲットの位置を計測」することと、「前記空間情報が規定する空間における所定の位置とターゲット情報が規定するターゲットの位置を計測し」している点で共通している。

ウ 引用発明の「画像生成装置10」に含まれる「誘導効果決定部121」は「注目位置誘導ベクトル26{(x2,y2)または(x2,y2,z2)}を」、「注目位置24と誘導対象25との距離を計算し」、「誘導効果を発生させる地点と観客の注目位置までの距離あるいは方向、さらには注目位置誘導ベクトル206との組み合わせに応じて誘導効果を決定」し、「画像を生成するのに必要な2次元ピクチャ、3次元オブジェクト毎に、注目位置24と誘導対象25との距離に応じて誘導効果を施すか否かを決定し」ており、引用発明の「コンピュータ」は、「画像などが表示される表示装置」を含んでいるから、引用発明の「誘導効果決定部121」は、「注目位置」の位置と「誘導対象」の位置とに基づいて、「表示装置」に表示する「画像を生成するのに必要な2次元ピクチャ、3次元オブジェクト毎に」「誘導効果」が施していると認められる。
ここで、引用発明の「誘導効果」として、「観客の注目位置112の位置に誘導に用いるオブジェクトとして電話機114を表示し、電話機114の表示位置を注目位置誘導ベクトル115の方向、すなわち誘導対象(電話番号)113の方向に時間tの変化に応じて移動(アニメーション)させ」ており、表示される「電話機114」はアイコンといいうるものであり、注目位置と誘導対象の位置に基づいて算出される注目位置誘導ベクトルの方向に電話機114を誘導対象の方向に移動させているから、注目位置と誘導対象の位置に基づいて、アイコンの位置と動きを決定し、表示しているといえる。
したがって、引用発明の「画像生成装置10」に含まれる「誘導効果決定部121」は、本願発明1の「計測した前記表示装置の位置と前記ターゲットの位置とに基づいて前記表示装置に表示するアイコンの位置と該アイコンの動きを決定」することと、「計測した前記所定の位置と前記ターゲットの位置とに基づいて前記表示装置に表示するアイコンの位置と該アイコンの動きを決定」している点で共通している。

エ 上記ウを参照すると、引用発明の「表示装置」に表示する「画像を生成するのに必要な2次元ピクチャ、3次元オブジェクト毎に」「誘導効果」が施し、引用発明の「誘導効果」として、「観客の注目位置112の位置に誘導に用いるオブジェクトとして電話機114を表示し、電話機114の表示位置を注目位置誘導ベクトル115の方向、すなわち誘導対象(電話番号)113の方向に時間tの変化に応じて移動(アニメーション)させ」ることは、本願発明1の「前記表示装置において決定した前記位置で決定した前記動きをする前記アイコンを表させ」ていることに相当する。

オ 引用発明の「画像生成装置10」に含まれる「注目位置計算部11」は、「観客の画面に表示される画像に対する注目位置をリアルタイムに求め」ており、引用発明の「画像生成装置10」に含まれる「誘導効果決定部121」は、「誘導情報記憶部13に記憶されている誘導対象の位置情報と注目位置計算部11で計算された観客の注目位置との距離及び向き(以降、注目位置誘導ベクトルと称する)を計算して、その距離に応じて注目位置の誘導を行うかどうかを判断し、誘導効果決定部121は、注目位置から誘導対象の位置までの距離、方向、あるいは時間の少なくとも2つの組み合わせにより誘導効果を決定」しており、注目位置の変化に応じて、誘導効果を決定しているといえる。
そして、上記ウを参照すると、引用発明の「誘導効果」は、注目位置と誘導対象の位置に基づいて、アイコンの位置と動きを決定し、表示しているから、注目位置の変化に応じて、アイコンの位置と動きを決定し、表示しているといえる。
したがって、引用発明の「画像生成装置10」は、本願発明1の「前記表示装置の位置の変化に応じて、該表示装置に表示する前記アイコンの位置及び動きを変更させ」ることと、「前記所定の位置の変化に応じて、該表示装置に表示する前記アイコンの位置及び動きを変更させ」る点で共通している。

カ 引用発明の「画像生成装置10」に含まれる「誘導効果決定部121」は、「ユーザ162が観客の視界外にあると判断した場合」、「観客の注目位置をユーザ162が見える位置に誘導するための誘導効果を施すものと決定し、視界内に誘導対象がある場合に用いた前述した各種の誘導効果を用いるほかにも、より直接的な誘導効果を用いるようにしても良く、図16に示すような矢印のような視界を変更すべき方向を明示するオブジェクトを、注目位置誘導163ベクトルに沿ってアニメーションさせるような誘導効果を用い、ユーザ167が視界内に含まれるまで注目位置166を誘導することができたら、注目位置誘導ベクトル168の距離、向きに応じて、誘導効果を決定」している。
ここで、引用発明の「誘導効果決定部121」は、「観客の注目位置をユーザ162が見える位置に誘導するための誘導効果を施すものと決定」することから、引用発明の「誘導」する対象である「ユーザ162」は、「ターゲット」といえる。よって、引用発明の「ユーザ162が観客の視界外にあると判断した場合」、「観客の注目位置をユーザ162が見える位置に誘導するための誘導効果を施すものと決定」することは、視野外のターゲットの検出に応じて、誘導効果を決定する際であるといえる。
また、引用発明の「誘導効果を用い」られる「矢印のような視界を変更すべき方向を明示するオブジェクト」を「注目位置誘導163ベクトルに沿ってアニメーションさせる」ことは、当該「誘導効果」に用いられる「矢印のような視界を変更すべき方向を明示するオブジェクト」は「アイコン」といいうるものであるから、アイコンを注目位置誘導ベクトルに沿ってアニメーション(移動)させているといえる。そして、引用発明の「注目位置誘導ベクトル」は、「注目位置24」と「誘導対象」の位置の差から計算されるものであり、誘導対象である「ユーザ162」は視野外にあることから、引用発明の「矢印のような視界を変更すべき方向を明示するオブジェクト」を「注目位置誘導163ベクトルに沿ってアニメーションさせる」ことは、視野の外側へとアイコンを移動させているといえる。
また、引用発明の「誘導効果決定部121」は、「誘導対象に観客の注目を誘導させたい場合には、注目位置24と誘導対象25との距離が予め設定された閾値以下であれば、観客は既に誘導対象に注目しているものと判別して誘導効果を施さ」ないことから、誘導対象25が注目位置24から閾値以内の距離になった場合に、誘導効果を施さないものであり、誘導対象25が注目位置24から閾値以内の距離になった場合は、該ターゲットが該視野の特定位置となったときといいうるものであり、引用発明のアイコンといえる「矢印のような視界を変更すべき方向を明示するオブジェクト」及び「電話機114」は、いずれも誘導効果であるから、ターゲットが視野の特定の位置になったとき(誘導対象25が注目位置24から閾値以内の距離になった場合)、アイコンを消す(誘導効果を施さない)ものであると認められる。
したがって、引用発明の「画像生成装置10」に含まれる「誘導効果決定部121」が、「ユーザ162が観客の視界外にあると判断した場合」、「観客の注目位置をユーザ162が見える位置に誘導するための誘導効果を施すものと決定し、視界内に誘導対象がある場合に用いた前述した各種の誘導効果を用いるほかにも、より直接的な誘導効果を用いるようにしても良く、図16に示すような矢印のような視界を変更すべき方向を明示するオブジェクトを、注目位置誘導163ベクトルに沿ってアニメーションさせるような誘導効果を用い、ユーザ167が視界内に含まれるまで注目位置166を誘導することができたら、注目位置誘導ベクトル168の距離、向きに応じて、誘導効果を決定」し、「誘導対象に観客の注目を誘導させたい場合には、注目位置24と誘導対象25との距離が予め設定された閾値以下であれば、観客は既に誘導対象に注目しているものと判別して誘導効果を施さ」ないことは、本願発明1の「視野外のターゲットの検出に応じて前記アイコンを表示する際には、視野の特定位置に対応する位置から該視野の前記特定位置よりも外側の位置に対応する位置へと該アイコンの表示位置を移動させ、該アイコンの動きを、前記表示装置が前記ターゲットに近付くにつれて遅くし、該ターゲットが該視野の該特定位置となったとき、該アイコンを該外側の位置から該特定位置にゆっくりと戻し、消失させる」ことと「視野外のターゲットの検出に応じて前記アイコンを表示する際には、視野の外側の位置に対応する位置へと該アイコンの表示位置を移動させ、該アイコンの動きを、該ターゲットが該視野の該特定位置となったとき、該アイコンを消失させる」点で共通している。

キ 引用発明の「画像生成装置10」は、「記録されたプログラムを読み込み、このプログラムによって動作が制御されるコンピュータによって実現され」るものであるから、誘導処理をコンピュータが行っているといえる。
そして、上記ア?カの検討より、引用発明の「画像生成装置10」は、各処理を行っていることから、引用発明の「画像生成装置10」は、「処理をコンピュータが行う誘導支援方法」といえる。

(2)一致点・相違点
以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「予め記憶した空間情報の中からターゲット情報を検出し、
前記空間情報が規定する空間における所定の位置とターゲット情報が規定するターゲットの位置を計測し、
計測した前記所定の位置と前記ターゲットの位置とに基づいて前記表示装置に表示するアイコンの位置と該アイコンの動きを決定し、
前記表示装置において決定した前記位置で決定した前記動きをする前記アイコンを表させ、
前記所定の位置の変化に応じて、該表示装置に表示する前記アイコンの位置及び動きを変更させ、
視野外のターゲットの検出に応じて前記アイコンを表示する際には、視野の外側の位置に対応する位置へと該アイコンの表示位置を移動させ、該アイコンの動きを、該ターゲットが該視野の該特定位置となったとき、該アイコンを消失させる
処理をコンピュータが行う誘導支援方法。」

(相違点1)
本願発明1は、「前記空間情報が規定する空間における表示装置の位置とターゲット情報が規定するターゲットの位置を計測」しているのに対して、引用発明においては、「前記空間情報が規定する空間における注目位置とターゲット情報が規定するターゲットの位置を計測し」している点。

(相違点2)
本願発明1は、「計測した前記表示装置の位置と前記ターゲットの位置とに基づいて前記表示装置に表示するアイコンの位置と該アイコンの動きを決定」しているのに対して、引用発明においては、「計測した前記注目位置とターゲット情報が規定するターゲットの位置とに基づいて前記表示装置に表示するアイコンの位置と該アイコンの動きを決定」している点

(相違点3)
本願発明1は、「前記表示装置の位置の変化に応じて、該表示装置に表示する前記アイコンの位置及び動きを変更させ」ているのに対して、「前記注目位置の変化に応じて、該表示装置に表示する前記アイコンの位置及び動きを変更させ」ている点。

(相違点4)
本願発明1は、「視野外のターゲットの検出に応じて前記アイコンを表示する際には、視野の特定位置に対応する位置から該視野の前記特定位置よりも外側の位置に対応する位置へと該アイコンの表示位置を移動させ、該アイコンの動きを、前記表示装置が前記ターゲットに近付くにつれて遅くし、該ターゲットが該視野の該特定位置となったとき、該アイコンを該外側の位置から該特定位置にゆっくりと戻し、消失させる」のに対して、引用発明は、「視野外のターゲットの検出に応じて前記アイコンを表示する際には、外側の位置に対応する位置へと該アイコンの表示位置を移動させ、該ターゲットが該視野の該特定位置となったとき、消失させる」点。

(3)判断
事案に鑑みて、相違点4から先に検討する。
引用発明の「誘導効果」を「動かす」ことに関して、「焦点63b」を「距離に応じて近づけた位置に設定し」、「単位時間後に、注目位置61bが焦点63bに誘導されていれば、」「さらに距離分近づけた位置に(焦点63b)を設定し」ており、「誘導対象との距離「誘導対象と電話機の距離が近づくにつれて、注視位置と焦点との距離をより短く設定」していることから、引用発明の「誘導効果」は、誘導対象(ターゲット)との距離が近づくにつれて、誘導効果をゆっくりと動かす動きが示唆されていると認められる。
ここで仮に、引用発明の「視野外の誘導対象」に対する「誘導効果」である引用発明の「矢印のような視界を変更すべき方向を明示するオブジェクト」について、上記のとおり示唆される誘導効果の動きを採用した場合、当該「オブジェクト」(アイコン)の動きを、誘導対象(ターゲット)に近づくにつれて遅くし、誘導対象(該ターゲット)が注視位置(視野の特定の位置)になったとき、消失させる構成となるものの、「視野外のターゲットの検出に応じて前記アイコンを表示する際には、視野の特定位置に対応する位置から該視野の前記特定位置よりも外側の位置に対応する位置へと該アイコンの表示位置を移動させ、該アイコンの動きを、前記表示装置が前記ターゲットに近付くにつれて遅くし、該ターゲットが該視野の該特定位置となったとき、該アイコンを該外側の位置から該特定位置にゆっくりと戻し、消失させる」という相違点4に係るアイコンの動きとすることには、至らない。
そして、引用発明の「矢印のような視界を変更すべき方向を明示するオブジェクト」は、その表示の始点及び終点は記載されておらず、引用文献1の図16の記載からみて、所定の位置(視野の特定位置に対応する位置)から表示させる理由はなく、前記「オブジェクト」を「視野の特定位置に対応する位置」から移動させ、「該特定の位置」(視野の特定位置に対応する位置)にゆっくりと戻すという構成を採用する動機付けがない。
さらに、引用文献1?3には、本願発明1の相違点4に係る「視野外のターゲットの検出に応じて前記アイコンを表示する際には、視野の特定位置に対応する位置から該視野の前記特定位置よりも外側の位置に対応する位置へと該アイコンの表示位置を移動させ、該アイコンの動きを、前記表示装置が前記ターゲットに近付くにつれて遅くし、該ターゲットが該視野の該特定位置となったとき、該アイコンを該外側の位置から該特定位置にゆっくりと戻し、消失させる」ことは記載されておらず、本願出願時において周知技術であったともいえない。

したがって、上記相違点1?3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2及び3に記載の技術に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2?5について
本願発明2及び3は、本願発明1を減縮した発明である。
また、本願発明4及び5は、それぞれ、本願発明1に対応するプログラム、装置の発明であり、いずれも相違点4に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるものである。
したがって、本願発明2?5は、いずれも相違点4に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えた本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載の技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。

3 引用文献1を主たる引用文献とした場合
原査定は、引用文献1に記載された発明を主たる引用発明とした拒絶理由を含むが、同文献に、相違点4に係る本願発明1の構成が開示されていないことは既に述べたとおりである。
したがって、少なくとも、引用文献3を主たる引用文献とした場合と同様の理由により、本願発明1?5は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-04-13 
出願番号 特願2015-195040(P2015-195040)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 太田 龍一
林 毅
発明の名称 視野誘導方法、視野誘導プログラム、及び視野誘導装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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