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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A46B
管理番号 1373530
審判番号 不服2020-7528  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-02 
確定日 2021-05-11 
事件の表示 特願2016-81367号「ブラシ、及び、ブラシの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月19日出願公開、特開2017-189465号、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年4月14日の出願であって、令和1年12月19日付けで拒絶理由が通知され、令和2年2月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対して、同年6月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1?8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[刊行物等]
1.特表平1-501366号公報
2.特開2005-342534号公報
3.米国特許第4211217号明細書
原査定では、特開2005-342534号公報を主たる引用文献としているから、特開2005-342534号公報、特表平1-501366号公報、米国特許第4211217号明細書の順に、以下それぞれ「引用文献1」、「引用文献2」、「引用文献3」という。

第3 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、令和2年6月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。
「 【請求項1】
ブラシ毛と、
前記ブラシ毛を挿入する挿入穴が設けられる支持体と、
を備えるブラシであって、
前記ブラシ毛は、前記支持体の第1の面からループ状に突出し、
前記支持体は、前記挿入穴を形成する内壁面から突出する突起部を有し、
前記ブラシ毛は、前記第1の面の裏面である第2の面に固着される固着部を有し、
前記突起部は、前記挿入穴の端部から離れた位置に設けられ、
前記固着部と前記突起部とは離れている、ブラシ。
【請求項2】
前記突起部は、当該突起の先端側に向けて先細り形状である、請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
前記挿入穴は、平面視において非円形である、請求項1又は2に記載のブラシ。
【請求項4】
前記挿入穴は、平面視において回転対称形状である、請求項3に記載のブラシ。
【請求項5】
前記突起部は、弾性変形可能に設けられる、請求項1から4のいずれか1項に記載のブラシ。
【請求項6】
貫通穴と該貫通穴を形成する内壁面から突出する突起部とが設けられる支持体を形成する第1の工程と、
前記貫通穴の一端側から湾曲した状態のブラシ毛を前記貫通穴に針を用いて挿入して、前記貫通穴の他端側からループ毛を突出させる第2の工程と、
前記針を前記貫通穴から引き抜く第3の工程と、
を備え、
前記突起部は、弾性変形可能に設けられ、
前記第2の工程において、前記突起部は、前記針を用いた前記貫通穴内への前記ブラシ毛の挿入に伴い前記針の挿入方向に撓み、
前記第3の工程において、前記針の動きにつられて動こうとする前記ブラシ毛の動きを前記突起部にて抑制する、ブラシの製造方法。
【請求項7】
前記針が前記貫通穴から引き抜かれた後に、前記ブラシ毛を前記支持体に固定する第4の工程を更に備え、
前記貫通穴は非円形である、請求項6に記載のブラシの製造方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付した。以下同様である。)。
(1a)
「【0005】
本発明は、物質を毛、特に睫毛又は眉毛に塗布するアプリケータであって、アプリケータは、支持体と、支持体に固定されていて、物質を塗布する剛毛とを有し、前記支持体は、ねじれておらず、前記支持体は、一群の剛毛を保持した断面が一様ではない少なくとも1つの貫通穴を有していることを特徴とする新規なアプリケータを提供する。
上記の少なくとも1つの貫通穴は、支持体の外面で開口した2つの端部を湯売るのがよい。
少なくとも1つの貫通穴の断面は一様ではないのがよい。
支持体の形状は好ましくは細長い。
本発明は、剛毛を支持体に植え付けるための新しい選択肢を提供する。
・・・
【0017】
図1は、本発明の実施形態としての包装塗布器具1を示している。
器具1は、睫毛又は眉毛に塗布される物質、例えば化粧品又はケア製品P、例えばマスカラを収容した入れ物2を有している。
入れ物2の頂部は、くびれ部3を有し、このくびれ部は、入れ物2の本体にスナップ動作で取り付けられた組立用スカート4に固定されている。
器具1は、軸線Xを定める軸11の端部に設けられたアプリケータ10を有し、この軸11は、入れ物2のクロージャキャップにもなる取っ手部材12に連結されている。
アプリケータ10が入れ物を出るときにアプリケータ10を拭うためのワイパー部材5が、入れ物2の本体内に設けられている。
この場合、ワイパー部材5は、連続気泡フォームのブロックであるが、任意の種類のワイパー、例えば、図31に示すように任意的にフロック加工が施されたエラストマーリップ5′を用いてもよい。
【0018】
この場合、軸は有利には、アプリケータが入れ物内の定位置にあるときに、ワイパー部材を変形させないようにすることができる細い断面部分を有する。
アプリケータ10は、支持体20を有し、この支持体20は、軸線Xに沿って細長く、かつ図2で分かるように軸線Xに垂直な方向で支持体と交差する貫通穴21を有しており、各穴は、一群の剛毛22を受け入れている。
支持体は、これとは別の向きになっていてもよく、例えば、軸線Xに垂直であってもよい。
穴21の軸線は、支持体の長手方向軸線に対して実質的に垂直である。
一群の剛毛22は、図3に示すように差込み工具Tによって対応関係をなす穴21内に差し込まれる。
差込みを容易にするため、かかる一群中の剛毛22をU字形の状態に二つ折りにし、工具TをU字形の底部に当てて剛毛22を穴21に押し込む。
【0019】
次に、工具Tを引き抜くと、剛毛22が穴21内に定位置に位置した状態で残り、剛毛は、これらを差し込んだ端から見て反対側の穴の端にループ23を形成し、これらループを、図5に示すように次に刈り取ることができるが、このようにするかどうかは任意である。
また、剛毛を厳密に二つ折りにしないで、例えば、図4に示すようにこれらの長さの3/4のところで折り曲げてもよい。
剛毛群22を各々、対応関係にある穴21内に固定するようにするため、支持体20をその構成材料の性状に応じて熱成形又は常温成形するのがよい。
支持体20を成形するため、図6に矢印で示すように、各穴21と位置が合った状態で圧力を支持体20の一方の側部又は両方の側部に局所的に及ぼすよう1又は2以上の適当なパンチ(図面を分かりやすくするため図示していない)が用いられる。
穴の軸線に垂直に支持体20に局所的に及ぼされた圧力の結果として、支持体20の一方の側部24の材料が図7に示すように可塑変形し、又は支持体の両方の側部24,25の材料が図8に示すように可塑変形することになる。
支持体20の変形により、各穴21の断面が減少し、したがって剛毛22がクランプされ、この中で動くことがないようになる。各穴21の断面は、支持体20の変形の結果として一様ではなくなる。
一群の剛毛が嵌まり込んでいる穴の形状に応じて、図9及び図10に示すように多少開いた角度iで支持体から延びる剛毛を得ることができる。
・・・
【0025】
図16は、剛毛を支持体20内に配置した後にこれらを切削加工する点において上述のアプリケータ10,70とは異なるアプリケータ80を示しており、アプリケータ80を横から見ると、剛毛の端部は、睫毛に追加のすき分け又は梳り効果を生じさせるようのこ歯状の線81上に位置するようになっている。
剛毛群を支持体内の定位置に配置する方法により生じたループ23を任意的に刈り取ることを説明するために、図16は、ループが刈り取られていないアプリケータを示している。
これらループ23を用いると、物質の溜りを構成することができる。」
(1b)
図8は、以下のとおりである。

(2)引用文献1に記載された発明

摘記(1a)において、「穴」及び「穴21」は、「貫通穴21」を意味し、「支持体」は、「支持体20」を意味することが、明らかである。

上記アから、摘記(1a)の段落【0019】の「各穴21の断面が減少し、」「剛毛22がクランプされ、この中で動くことがないようになる」ことは、「各」貫通「穴21の断面が減少し、」「剛毛22がクランプされ、」各貫通穴21の「中で動くことがないようになる」ことであることが、明らかである。

摘記(1a)の段落【0019】の「工具Tを引き抜くと、剛毛22が穴21内に定位置に位置した状態で残り、剛毛は、これらを差し込んだ端から見て反対側の穴の端にループ23を形成し、」という事項は、貫通穴21の差し込んだ端から見て差し込む側に位置している剛毛に関して構成を特定しているものではないが、当該事項を備える「アプリケータ10」は「物質を毛、特に睫毛又は眉毛に塗布するアプリケータ」(摘記(1a)の段落【0005】)であること、図8、及び、上記アを参照すると、当該事項は、実質的に、「工具Tを引き抜くと、剛毛22が」貫通「穴21内に定位置に位置した状態で残り、剛毛」22「は、これらを差し込んだ端から見て反対側の」貫通「穴」21「の端にループ23を形成し、」差し込んだ側の貫通穴21の端ではループを形成しておらず且つ差し込んだ側が物質を睫毛又は眉毛に塗布する部位となる事項として特定できる。

また、摘記(1a)の段落【0018】の「工具Tを」「押し込む」ことに係る構成、摘記(1a)の段落【0019】の「工具Tを引き抜く」ことに係る構成、及び、摘記(1a)の段落【0019】の「両方の側部24,25の材料が可塑変形する」ことに係る構成は、いずれも、「アプリケータ10」の製造方法における、1つの工程であると認められる。

摘記(1a)及び図8(2a参照)から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明A」、「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明A]
「支持体20を有し、支持体20は、軸線Xに沿って細長く、かつ軸線Xに垂直な方向で支持体と交差する貫通穴21を有しており、各貫通穴21は、一群の剛毛22を受け入れている、物質を睫毛又は眉毛に塗布するアプリケータ10であって、
一群中の剛毛22をU字形の状態に二つ折りにし、工具TをU字形の底部に当てて剛毛22を貫通穴21に押し込み、
工具Tを引き抜くと、剛毛22が貫通穴21内に定位置に位置した状態で残り、剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し、差し込んだ側の貫通穴21の端ではループを形成しておらず且つ差し込んだ側が物質を睫毛又は眉毛に塗布する部位となり、
支持体20の両方の側部に局所的にパンチが用いられ支持体20の両方の側部24,25の材料が可塑変形することになり、各貫通穴21の断面が減少し、剛毛22がクランプされ、各貫通穴21の中で動くことがないようになる、
アプリケータ10。」

[引用発明B]
「支持体20を有し、支持体20は、軸線Xに沿って細長く、かつ軸線Xに垂直な方向で支持体と交差する貫通穴21を有しており、各貫通穴21は、一群の剛毛22を受け入れている、物質を睫毛又は眉毛に塗布するアプリケータ10の製造方法であって、
一群中の剛毛22をU字形の状態に二つ折りにし、工具TをU字形の底部に当てて剛毛22を貫通穴21に押し込む工程と、
工具Tを引き抜くと、剛毛22が貫通穴21内に定位置に位置した状態で残り、剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し、差し込んだ側の貫通穴21の端ではループを形成しておらず且つ差し込んだ側が物質を睫毛又は眉毛に塗布する部位となる工程と、
支持体20の両方の側部に局所的にパンチが用いられ支持体20の両方の側部24,25の材料が可塑変形することになり、各貫通穴21の断面が減少し、剛毛22がクランプされ、各貫通穴21の中で動くことがないようになる工程と、
を備えるアプリケータ10の製造方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)
「第14?18図には、片面のみに剛毛結束部を持つ剛毛製品を製造する方法の種々の変形が示されている。この場合も、剛毛支持体22は、任意の材料で造られる。剛毛支持体は、突起又はアンダーカツト24が設けられた1つ又は複数の貫通孔23を有する。
貫通孔内に剛毛25が孤立的に又は束ねられて差し込まれ、剛毛支持体内にある剛毛端部が溶融される。この溶融された端部26は、突起又はアンダーカツト24に対して剛毛支持体22の後面21から成形される。第14図の実施例の場合、突起24は一種の環状隆起によって構成されており、該環状隆起は、溶融されて冷却後硬化するところの端部26内に食い込む。
・・・
第16図の実施形態は、この場合も適当な成形ポンチ31を使用し、剛毛25の浴融された端部32を適当な位置にもたらすことにより、溶融された端部32が剛毛支持体22の後面27と同一平面になつている点においてのみ第14図のものと相違している。
第17、18図の笑施例の場合、剛毛束25は、剛毛支持体22の後面から貫通孔23内に差し込まれるか、又は前面から貫通孔を通過して後面を越えて突出するまで引き込まれている。突出する端部33において、剛毛は、例えば電気的に加熱された成形ポンチ34を用いて浴融され、その溶融部は貫通孔23の縁部に向けて成形される。この時溶融部は、環状溝36内に圧入されると同時に、貫通孔23の後端部の面取り縁35を充填する。その結果、溶融され冷却後硬化した端部35は、剛毛支持体22の後面27と同一平面になる。」(6ページ左上欄16行?同ページ左下欄7行)
(2b)
第14?18図は、以下のとおりである。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3a)
「To provide the mechanical connection of the loops with the support disc 5, the projecting part of the end legs of the loops to comprise a ball whose section is greater than that of are heated to form, by melting the plastic material from which they are made, balls 8 whose section 1s greater 15 than that of the perforations 7. Balls 8 accordingly pre- vent strands 4 from coming out of their perforations. As can be seen in FIG. 2 of the drawing, each ball 8 is formed by melting together the four end legs of two loops threaded into the same perforation 7.」(3欄11?20行)
「支持ディスク5との機械的接続を提供するために、ループの端部の脚部の突出部は、それらが作製されるプラスチック材料を溶融させることにより、ミシン目7よりも大きくなるようにボール8を形成する。ボール8はストランド4がその孔から抜け出るのを防止する。図面の図2に見られるように、各ボール8は、孔7に螺着された2のループ4の脚部を一緒に溶融することにより形成されている。」
(3b)
FIG.1及びFIG.2は、以下のとおりである。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明Aとを対比する。

引用発明Aにおいて、「剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し、差し込んだ側の貫通穴21の端ではループを形成しておらず且つ差し込んだ側が物質を睫毛又は眉毛に塗布する部位とな」るから、引用発明Aの「剛毛22」及び「一群の剛毛22」は、ブラシとして機能することが明らかであり、本願発明1の「ブラシ毛」に相当する。
引用発明Aの「貫通穴21」は、本願発明1の「挿入穴」に相当する。
これらのことから、引用発明Aの「軸線Xに沿って細長く、かつ軸線Xに垂直な方向で支持体と交差する貫通穴21を有しており、各貫通穴21は、一群の剛毛22を受け入れている」、「支持体20」は、本願発明1の「前記ブラシ毛を挿入する挿入穴が設けられる支持体」に相当する。
したがって、引用発明Aの「支持体20を有し、支持体20は、軸線Xに沿って細長く、かつ軸線Xに垂直な方向で支持体と交差する貫通穴21を有しており、各貫通穴21は、一群の剛毛22を受け入れている、物質を睫毛又は眉毛に塗布するアプリケータ10」は、本願発明1の「ブラシ毛と、前記ブラシ毛を挿入する挿入穴が設けられる支持体と、を備えるブラシ」に相当する。

上記アで述べたとおり、引用発明Aの「軸線Xに沿って細長く、かつ軸線Xに垂直な方向で支持体と交差する貫通穴21を有しており、各貫通穴21は、一群の剛毛22を受け入れている」、「支持体20」は、本願発明1の「前記ブラシ毛を挿入する挿入穴が設けられる支持体」に相当するから、引用発明Aの「一群中の剛毛22をU字形の状態に二つ折りにし、工具TをU字形の底部に当てて剛毛22を貫通穴21に押し込み、工具Tを引き抜くと、剛毛22が貫通穴21内に定位置に位置した状態で残り、剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し、差し込んだ側の貫通穴21の端ではループを形成しておらず且つ差し込んだ側が物質を睫毛又は眉毛に塗布する部位とな」る構成における、「差し込んだ側の貫通穴21の端」は、「支持体20」の一方の面に位置していることが明らかであり、本願発明1の「第1の面」に相当する。
そうすると、引用発明Aの上記の構成と、本願発明1の「前記ブラシ毛は、前記支持体の第1の面からループ状に突出し」ている構成とは、「前記ブラシ毛は、前記支持体の第1の面から突出し」ている構成において共通している。
なお、引用発明Aの「ループ23」(図8も参照)は、段落【0025】に「ループ23を用いると、物質の溜りを構成することができる」と記載れているように、物質を睫毛又は眉毛に塗布する部位として機能するものではなく、ブラシの機能を備えているとはいえないので、「支持体20」の他方の面に位置している「差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端」は、本願発明1の「第1の面」に相当するとはいえない。

引用発明Aの「支持体20の両方の側部に局所的にパンチが用いられ支持体20の両方の側部24,25の材料が可塑変形することになり、各貫通穴21の断面が減少し、剛毛22がクランプされ、各貫通穴21の中で動くことがないようになる」の「各貫通穴21の断面が減少し」ている構成は、「支持体20の両方の側部に局所的にパンチが用いられ支持体20の両方の側部24,25の材料が可塑変形することに」よるものであり、「局所的にパンチ」されることによって、「貫通穴21」の端部から離れた「貫通穴21」の内壁面が内側に突出しているといえる(図8も参照。)。
このことから、引用発明Aの上記の「各貫通穴21の断面が減少し」ている構成は、本願発明1の「前記挿入穴を形成する内壁面から突出する突起部」及び「前記突起部は、前記挿入穴の端部から離れた位置に設けられている」構成に相当する。
したがって、引用発明Aの「支持体20の両方の側部に局所的にパンチが用いられ支持体20の両方の側部24,25の材料が可塑変形することになり、各貫通穴21の断面が減少し、剛毛22がクランプされ、各貫通穴21の中で動くことがないようになる」構成は、本願発明1の「前記支持体は、前記挿入穴を形成する内壁面から突出する突起部を有」する構成、及び、「前記突起部は、前記挿入穴の端部から離れた位置に設けられ」ている構成に相当する。

以上から、本願発明1と引用発明Aとの一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1>
「ブラシ毛と、
前記ブラシ毛を挿入する挿入穴が設けられる支持体と、
を備えるブラシであって、
前記ブラシ毛は、前記支持体の第1の面から突出し、
前記支持体は、前記挿入穴を形成する内壁面から突出する突起部を有し、
前記突起部は、前記挿入穴の端部から離れた位置に設けられている、ブラシ。」
<相違点1-1>
「前記ブラシ毛は、前記支持体の第1の面から突出し」ていることに関して、本願発明1は、前記ブラシ毛は、前記支持体の第1の面から「ループ状に」突出しているのに対して、引用発明Aは、「工具Tを引き抜くと、剛毛22が貫通穴21内に定位置に位置した状態で残り、剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し、差し込んだ側の貫通穴21の端ではループを形成しておらず且つ差し込んだ側が物質を睫毛又は眉毛に塗布する部位とな」る点。
<相違点2-1>
本願発明1は、「前記ブラシ毛は、前記第1の面の裏面である第2の面に固着される固着部を有し」、「前記固着部と前記突起部とは離れている」のに対して、引用発明Aは、そのように特定されていない点。

(2)判断
ア 相違点1-1について
摘記(3a)及び(3b)のFIG.1?2を参照すると、引用文献3には、ブラシ毛であるストランド4が、支持ディスク5の面からループ状に突出している技術事項が記載されているといえる。
しかしながら、引用発明Aに上記の技術事項を適用し、引用発明Aの「剛毛22」の形状を、「差し込んだ側」の「貫通穴21の端」でループ状に突出する形状にすると、「一群中の剛毛22をU字形の状態に二つ折りにし、工具TをU字形の底部に当てて剛毛22を穴21に押し込」むことができなくなるし、ループ状であることで、物質を睫毛又は眉毛に塗布するブラシ毛としての機能にも影響を及ぼすといえるから、引用発明Aの「剛毛22」の形状を、「剛毛22」を「差し込んだ側」の「貫通穴21の端」でループ状に突出する形状にすることには、阻害要因が存在する。
したがって、引用発明Aの「差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し、差し込んだ側の貫通穴21の端ではループを形成しておらず且つ差し込んだ側が物質を睫毛又は眉毛に塗布する部位とな」る「剛毛22」に、引用文献3に記載された技術事項を適用することには阻害要因が存在し、上記相違点1-1に係る本願発明1の構成は、当業者が容易になし得たとはいえない。
なお、引用発明Aにおいて、剛毛22を差し込んだ端側を本願発明1の第2の面とすれば、一応、第1面にループが形成されていることになるが、当該ループはブラシ毛として機能するものでないから(上記(1)イ参照)、本願発明1の「前記ブラシ毛は、前記支持体の第1の面からループ状に突出している」構成にはならず、引用発明Aにおいて、剛毛22を差し込んだ端側を本願発明1の第2の面とすることはできないし、また、仮に、そのようにできたとしても、差し込んだ端側に位置する剛毛22を固着部にする必要が生じ、それによって差し込んだ端側に位置する剛毛22が物質を睫毛又は眉毛に塗布する部位として機能しなくなるから、そのようにすることには阻害要因が存在する。

イ 相違点2-1について
(ア)
摘記(2a)の下線を付した部分及び(2b)の特に第16図、第18図を参照すると、引用文献2には、「貫通孔23の突起24が食い込む、剛毛支持体22の後面27と同一平面になる溶融された端部32、35」が記載されているといえるところ、「剛毛支持体22の後面27と同一平面になる溶融された端部32、35」には、「貫通孔23の突起24が食い込む」から、「剛毛支持体22の後面27と同一平面になる溶融された端部32、35」は、「貫通孔23の突起24」と一体となっている固着部といえる。
(イ)
引用文献2は突起部と一体となっている固着部の技術事項が記載され(上記(ア))、引用文献3には、ブラシ毛であるストランド4を固定するボール10が支持ディスク5の一方の面に設けられている技術が記載されている(摘記(3a)及び(3b)から、明らかである。)が、いずれも、1つのブラシ毛に対する固着部は1カ所であり、1つのブラシ毛に対する固着部を2カ所にすることや、固着部と突起部とが離れていることは、記載も示唆もされていない。
(ウ)
引用発明Aは、「支持体20の両方の側部に局所的にパンチが用いられ支持体の両方の側部24,25の材料が可塑変形することになり、各穴21の断面が減少し、剛毛22がクランプされ、この中で動くことがないようになる」から、「剛毛22」は固着されており、「剛毛22」(ブラシ毛)を固着する固着部をさらに設ける必要はないといえる。
そして、1つのブラシ毛に対する固着部を2カ所にすることは、いずれの文献にも記載も示唆もされていないから、引用発明Aの「剛毛22」(ブラシ毛)に対して、さらに固着部を採用しようとする動機付けはないといえる。
(エ)
したがって、引用発明Aの「剛毛22」(ブラシ毛)に、上記(イ)の引用文献2に記載された技術事項や引用文献3に記載された技術事項を適用することは容易でなく、また、仮に、それらの技術事項を適用できたとしても、固着部と突起部とが離れていることは、いずれの文献にも記載も示唆もされていないから、上記相違点2-1に係る本願発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。

(3)小括
よって、本願発明1は、引用発明A及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明6について
(1)対比
本願発明6と引用発明Bとを対比する。

(ア)
引用発明Bの「貫通穴21」及び「支持体20」は、それぞれ、本願発明6の「貫通穴」及び「支持体」に相当する。
(イ)
引用発明Bの「支持体20の両方の側部24,25の材料が可塑変形することになり、各貫通穴21の断面が減少し、剛毛22がクランプされ」ることは、「貫通穴21の断面が減少」することで、貫通穴21の内壁面から突出する突起部が設けられるといえるから、本願発明6の「貫通穴を形成する内壁面から突出する突起部」「が設けられる」ことに相当する。
(ウ)
上記(ア)、(イ)から、引用発明Bの「支持体20の両方の側部に局所的にパンチが用いられ支持体20の両方の側部24,25の材料が可塑変形することになり、各貫通穴21の断面が減少し、剛毛22がクランプされ、各貫通穴21の中で動くことがないようになる工程」は、本願発明6の「貫通穴と該貫通穴を形成する内壁面から突出する突起部とが設けられる支持体を形成する第1の工程」に相当する。

(ア)
引用発明Bの「一群中の剛毛22をU字形の状態に二つ折りにし、工具TをU字形の底部に当てて剛毛22を貫通穴21に押し込む工程」は、「工具Tを引き抜くと、剛毛22が貫通穴21内に定位置に位置した状態で残り、剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し、差し込んだ側の貫通穴21の端ではループを形成しておらず且つ差し込んだ側が物質を睫毛又は眉毛に塗布する部位となる工程」より前に行われることが明らかであるから、「一群中の剛毛22をU字形の状態に二つ折りにし、工具TをU字形の底部に当てて剛毛22を貫通穴21に押し込む工程」は、「剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し」ている構成を備えるといえる。
(イ)
引用発明Bの「U字形の状態に二つ折りにし」た「一群中の剛毛22」は、本願発明6の「湾曲した状態のブラシ毛」に相当する。
引用発明Bの「工具T」は、本願発明6の「針」に相当する。
引用発明Bの「貫通穴21」の「これらを差し込んだ端」及び「これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端」は、それぞれ、本願発明6の「貫通穴の一端側」及び「貫通穴の他端側」に相当する。
(ウ)
引用発明Bの「剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し」ている構成(上記(ア)参照)は、上記(イ)及び上記ア(ア)を踏まえると、本願発明6の「貫通穴の他端側からループ毛を突出させる」構成に相当する。
また、引用発明Bの「剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し」ている構成を備える「一群中の剛毛22をU字形の状態に二つ折りにし、工具TをU字形の底部に当てて剛毛22を貫通穴21に押し込む工程」における「一群中の剛毛22をU字形の状態に二つ折りにし、工具TをU字形の底部に当てて剛毛22を貫通穴21に押し込む」ことは、「これらを差し込んだ端」から「U字形の状態に二つ折りにし」た「一群中の剛毛22」を「貫通穴21に」「工具TをU字形の底部に当てて」「押し込む」ことが明らかであるから、上記(イ)及び上記ア(ア)を踏まえると、本願発明6の「前記貫通穴の一端側から湾曲した状態のブラシ毛を前記貫通穴に針を用いて挿入」することに相当する。
したがって、引用発明Bの「剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し」ている構成を備える「一群中の剛毛22をU字形の状態に二つ折りにし、工具TをU字形の底部に当てて剛毛22を貫通穴21に押し込む工程」は、本願発明6の「前記貫通穴の一端側から湾曲した状態のブラシ毛を前記貫通穴に針を用いて挿入して、前記貫通穴の他端側からループ毛を突出させる第2の工程」に相当する。

引用発明Bの「工具Tを引き抜くと、剛毛22が貫通穴21内に定位置に位置した状態で残り、剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し、差し込んだ側の貫通穴21の端ではループを形成しておらず且つ差し込んだ側が物質を睫毛又は眉毛に塗布する部位となる工程」は、本願発明6の「前記針を前記貫通穴から引き抜く第3の工程」に相当する。

引用発明Bの「支持体20を有し、支持体20は、軸線Xに沿って細長く、かつ軸線Xに垂直な方向で支持体と交差する貫通穴21を有しており、各貫通穴21は、一群の剛毛22を受け入れている、物質を睫毛又は眉毛に塗布するアプリケータ10の製造方法」及び「アプリケータ10の製造方法」は、いずれも、本願発明6の「ブラシの製造方法」に相当する。

以上から、本願発明6と引用発明Bとの一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点6>
「貫通穴と該貫通穴を形成する内壁面から突出する突起部とが設けられる支持体を形成する第1の工程と、
前記貫通穴の一端側から湾曲した状態のブラシ毛を前記貫通穴に針を用いて挿入して、前記貫通穴の他端側からループ毛を突出させる第2の工程と、
前記針を前記貫通穴から引き抜く第3の工程と、
を備える、ブラシの製造方法。」
<相違点1-6>
本願発明6では、「前記突起部は、弾性変形可能に設けられ」ているのに対して、引用発明Bはそのように特定されていない点。
<相違点2-6>
本願発明6では、「前記第2の工程において、前記突起部は、前記針を用いた前記貫通穴内への前記ブラシ毛の挿入に伴い前記針の挿入方向に撓み、前記第3の工程において、前記針の動きにつられて動こうとする前記ブラシ毛の動きを前記突起部にて抑制する」のに対して、引用発明Bはそのように特定されていない点。

(2)判断

事案に鑑み、最初に相違点2-6について検討する、
(ア)
引用発明Bの「剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し」ている構成を備える「一群中の剛毛22をU字形の状態に二つ折りにし、工具TをU字形の底部に当てて剛毛22を貫通穴21に押し込む工程」(本願発明6の「第2の工程」に相当。)、及び、「工具Tを引き抜くと、剛毛22が貫通穴21内に定位置に位置した状態で残り、剛毛22は、これらを差し込んだ端から見て反対側の貫通穴21の端にループ23を形成し、差し込んだ側の貫通穴21の端ではループを形成しておらず且つ差し込んだ側が物質を睫毛又は眉毛に塗布する部位となる工程」(本願発明6の「第3の工程」に相当。)は、「支持体20の両方の側部に局所的にパンチが用いられ支持体20の両方の側部24,25の材料が可塑変形することになり、各貫通穴21の断面が減少し、剛毛22がクランプされ、各貫通穴21の中で動くことがないようになる工程」(本願発明6の「第1の工程」に相当。)の「各貫通穴21の断面が減少し、剛毛22がクランプされ」るという技術的意義に鑑みると、当該第1の工程より前で行われることが明らかであるから、引用発明Bの第2の工程及び第3の工程では、引用発明Bの第1の工程より得られる「突起部」(上記(1)ア(イ)参照)が存在していない。
(イ)
また、引用発明Bの第2の工程及び第3の工程よりも前に、引用発明Bの第1の工程を行うことを試みると、引用発明Bの第1の工程すなわち「支持体20の両方の側部に局所的にパンチが用いられ支持体20の両方の側部24,25の材料が可塑変形することになり、各貫通穴21の断面が減少し、剛毛22がクランプされ、各貫通穴21の中で動くことがないようになる工程」において、貫通穴21内にブラシ毛22が存在していないことになるから、第1の工程を行うことができない。
(ウ)
したがって、上記(イ)のとおり、引用発明Bの各「工程」の順序を変えることには阻害要因が存在し、上記(ア)のとおり、引用発明Bの第2の工程及び第3の工程では、「突起部」が存在していないから、引用発明Bにおいて、「前記第2の工程において、前記突起部は、前記針を用いた前記貫通穴内への前記ブラシ毛の挿入に伴い前記針の挿入方向に撓み、前記第3の工程において、前記針の動きにつられて動こうとする前記ブラシ毛の動きを前記突起部にて抑制する」構成、すなわち、上記相違点2-6に係る本願発明6の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
そして、この判断は、引用文献2や引用文献3に記載された技術事項(摘記(2a)、(3a)参照)によって左右されるものではない(引用文献2の「突起24」は、「溶融されて冷却後硬化するところの端部26内に食い込む」ものであり、引用文献3は、突起を備えておらず、この判断を左右するものではない。)

(3)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明6は、引用発明B及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明2?5及び7について
本願発明2?5は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、引用発明A及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明7は、本願発明6の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本願発明6と同様に、引用発明B及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
令和2年6月2日付けの手続補正により、本願発明1?7は、上記相違点に係る本願発明の構成を有するものとなっており、上記第5で述べたとおり、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-04-22 
出願番号 特願2016-81367(P2016-81367)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A46B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 島田 信一
出口 昌哉
発明の名称 ブラシ、及び、ブラシの製造方法  
代理人 特許業務法人 佐野特許事務所  
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