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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1373580
審判番号 不服2020-5085  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-14 
確定日 2021-05-18 
事件の表示 特願2018-233974「管理方法、制御装置及び通信処理デバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月 9日出願公開、特開2019- 71638、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)9月27日(優先権主張 平成24年9月27日)を国際出願日とする出願である特願2014-538624号の一部を平成28年6月9日に新たな出願とした特願2016-115007号の一部を平成30年12月14日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年 7月22日付け:拒絶理由通知書
令和元年 9月30日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 1月16日付け:拒絶査定(原査定)
令和2年 4月14日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和2年 6月 5日 :前置報告書

第2 原査定の概要
原査定(令和2年1月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし7に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1 特開2008-172462号公報
2 ECHONENT CONSORTIUM,ECHONET Lite Specification Version 1.01,ECHONET Lite 通信ミドルウェア仕様,米国,ECHONENT CONSORTIUM,2012年 3月 5日,Version 1.01,第2部,pp4-7,URL:https://echonet.jp/wp/wp-ontent/uploads/pdf/General/Standard
/Echonet_lite_old/Ver_1_01/ECHONET-Lite_Ver.1.01_02.pdf

なお、前置報告書では、上記引用文献1及び2に加え、周知技術を示す文献として以下の引用文献3ないし5が引用されている。

[引用文献等一覧]
3 特開2001-16264号公報
4 特開平10-173653号公報
5 特開2006-203344号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
動的アドレスが動的に割り当てられる機器と、前記機器に割り当てられた動的アドレスを用いて、所定ネットワークを介して前記機器と通信を行う制御装置とを有する管理システムで用いる管理方法であって、
前記機器から、前記機器の種別を含むインスタンスリストをブロードキャスト又はマルチキャストにて少なくとも所定期間に亘って繰り返し送信するステップAと、
前記インスタンスリストを前記制御装置が受信しているか否かにかかわらず、前記制御装置から情報要求メッセージをブロードキャスト又はマルチキャストにて送信するステップBと、
前記情報要求メッセージの送信元アドレスによって特定される前記制御装置の動的アドレスに基づいて、情報通知メッセージを前記機器から前記制御装置に対して送信するステップCとを備える、管理方法。
【請求項2】
前記制御装置において、前記情報通知メッセージの送信元アドレスによって特定される前記機器の動的アドレスと、前記所定ネットワークにおいて一意に定められる前記機器を識別する識別情報に基づいて、前記機器を管理するステップDとを備える、請求項1に記載の管理方法。
【請求項3】
前記ステップDにおいて前記識別情報は、製造段階で一意に定められる情報である、請求項2に記載の管理方法。
【請求項4】
前記ステップAは、前記機器の電源が投入されたとき、又は、前記機器に割当てられた前記動的アドレスが変更されたときに、前記インスタンスリストをブロードキャスト又はマルチキャストにて少なくとも前記所定期間に亘って繰り返し送信するステップである、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の管理方法。
【請求項5】
前記ステップCは、前記機器から前記制御装置に対して、前記情報通知メッセージをユニキャストで送信するステップである、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の管理方法。
【請求項6】
機器に動的に割り当てられた動的アドレスを用いて、所定ネットワークを介して前記機器と通信を行う制御装置であって、
前記機器から、前記機器の種別を含み、ブロードキャスト又はマルチキャストにて少なくとも所定期間に亘って繰り返し送信されるインスタンスリストを受信する受信部と、
前記インスタンスリストを前記受信部が受信しているか否かにかかわらず、情報要求メッセージをブロードキャスト又はマルチキャストにて送信する送信部とを備え、
前記受信部は、前記情報要求メッセージの送信元アドレスによって特定される前記制御装置の動的アドレスに基づいて前記機器から送信される情報通知メッセージを受信する、
制御装置。
【請求項7】
動的アドレスが動的に割り当てられる複数の機器の間で、前記動的アドレスを用いて所定ネットワークを介して通信を行うための通信処理デバイスであって、
前記通信処理デバイスは、前記複数の機器のいずれかの搭載機器に搭載されており、
前記通信処理デバイスは、前記搭載機器において、
他の機器から、前記他の機器の種別を含み、ブロードキャスト又はマルチキャストにて少なくとも所定期間に亘って繰り返し送信されるインスタンスリストを受信する処理と、
前記インスタンスリストを受信しているか否かにかかわらず、情報要求メッセージをブロードキャスト又はマルチキャストにて送信する送信処理と、
前記情報要求メッセージの送信元アドレスによって特定される前記搭載機器の動的アドレスに基づいて前記他の機器から送信される情報通知メッセージを受信する受信処理とを実行する、通信処理デバイス。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため当審が付与した。(以降においても同様。)

「【0006】
また、特許文献1に開示される技術的思想では、ホームゲートウェイが検出した家電機器の情報を元に機器を操作するインタフェースを端末装置へWeb画面の形で提供するためのもととなるファイル(CGI)をダウンロードするが、そのCGIにおいて、実際に機器を操作するための詳細な手順についての考慮がない。例えば、前記ECHONET規格においてはECHONETプロトコルにおいては操作のためにECHONETアドレスを用いて制御対象の機器を特定するが、ECHONETアドレスは機器の起動毎等で変化する可能性がある。そのため、CGIが家電機器を制御するためには、機器毎に不変の情報とECHONETアドレスとの整合を取るための手順が必要となる。しかし、従来技術にはそのための詳細な手順が考慮されていないため、第3の事業者がCGIを作成し、従来技術に示されるシステムに乗り入れることについての考慮がない。」

「【0015】
(1)概要
本実施例における機器制御装置の動作の概要を説明する。本実施例ではECHONET規格に対応し、ソフトウェアコンポーネント化技術としてOSGiサービス基盤を用いた機器制御装置について述べる。ECHONET規格では、ECHONET電文をJava(登録商標)から扱うためのECHONET Java(登録商標)APIを規定している。このECHONET Java(登録商標)APIはECHONETミドルともいう。ECHONETミドルを用いて機器の検出、切断監視、イベント管理を行う部分をECHONETドライバともいう。ECHONETミドルとECHONETドライバとを含む部分をECHONETバンドルともいう。また、OSGiサービス基盤において様々なソフトウェア部品(バンドル)のダウンロード、インストール、実行といったライフサイクルの管理や他のバンドルとのインタフェース(サービス)の管理機能を実装する部分をOSGiフレームワーク(OSGi FW)ともいう。また、ECHONET規格に対応する機器をECHONET機器ともいう。」

「【0019】
(2)詳細
図を用いて本実施例における機器制御装置の動作の詳細を説明する。
図1は本実施例におけるネットワーク構造の一例を示す図である。この図において、101は宅内機器管理装置、102は宅内ネットワーク、103、104、105はECHONET機器である。宅内機器管理装置101は、宅内ネットワーク102を介してECHONET機器と接続し、情報のやり取りを行うことができる。宅内機器管理装置はホームゲートウェイともいう。」

「【0022】
図2は宅内機器管理装置101のハードウェア構成図の一例である。
宅内機器管理装置101は、CPU(Central Processing Unit)201、メインメモリ202、EPROM(Erasable Programmable Read Only Member)203、不揮発性記憶装置204、LANI/F(Local Area Network InterFace)205とで構成される。各構成要素はバス206によって接続され、必要な情報が伝送可能なように構成する。
【0023】
CPU201は、EPROM203や不揮発性記憶装置204にあらかじめ格納されているプログラムによって所定の動作を行う。CPUは中央処理装置ともいい、各装置の制御やデータの計算・加工を行う装置である。
メインメモリ202は、ワークメモリとして機能する。メインメモリは主記憶装置ともいい、データやプログラムを記憶する装置である。動作が高速で、CPUから直接読み書きすることができる。」

「【0029】
次に、宅内機器管理装置101上で動作するプログラムについて述べる。
宅内機器管理装置101にはOSGiコンソーシアムで規定するOSGiサービス基盤が搭載されている。OSGiサービス基盤は、Java(登録商標)ベースのソフトウェアコンポーネント化技術であり、OSGiフレームワークとOSGiフレームワーク上で動作するソフトウェアからなる。このソフトウェアをバンドルともいう。OSGiフレームワーク上で動作するバンドルにはHTTPサーバ(World Wide Webによる情報送信機能を持ったコンピュータ。Webサーバともいう。)やUPnP(Universal Plug and Playの略。家庭内のパソコンや周辺機器、AV機器、電話、家電製品などの機器をネットワークを通じて接続し、相互に機能を提供しあうための技術仕様。)に対応した機器の管理・制御といった、OSGiサービス基盤に含まれる標準バンドルと、OSGiサービス基盤の手法にのっとって実装されたユーザバンドルとがある。」

「【0031】
本実施例において、宅内機器管理装置101上で動作するOSGiフレームワーク上ではECHONET機器の検出、検出した機器へ制御を行うためのOSGiフレームワークへのサービス登録、ECHONET機器からの通知イベントの管理を行うECHONET機器管理バンドルが動作しているものとする。このECHONET機器管理バンドルをECHONETバンドルともいう。」

「【0034】
次に、本実施例におけるテーブル情報について説明する。
図4は、ECHONETバンドルが保持する個体識別情報管理テーブル400である。列401は個体識別情報、列402はECHONETアドレス、列403は再検索待機数である。
個体識別情報管理テーブルとは、ECHONET機器の個体識別情報を管理するテーブルであり、個体識別情報と個体識別情報に対応するECHONETアドレスとが格納される。また、個体識別情報と個体識別情報に対応する再検索待機数とが格納される。個体識別情報管理テーブル400は、ECHONETバンドルの動作中に宅内機器管理装置101のメインメモリ202上に記憶されるか、ECHONETバンドルの起動時に不揮発性記憶装置204からメインメモリ202上に読み出され、テーブル更新時やECHONETバンドルの終了時といった所定のタイミングで再び不揮発性記憶装置204に記憶される。
【0035】
個体識別情報を格納する列401はECHONET機器が保持する個体識別情報を格納する。個体識別情報とはECHONET規格で定める機器固有の識別情報であり、ECHONETプロトコル(ECHONET規格にて定められる、ECHONET機器間でネットワークを介して情報をやり取りするための通信規約)によってECHONET機器から読み出すことができる。ECHONETバンドルはECHONET機器の検出時にECHONET機器から個体識別情報を読み出し、個体識別情報管理テーブル400に記憶する。
【0036】
ECHONETアドレスを格納する列402は、ECHONET機器が保持するECHONETプロトコル上のアドレス情報であるECHONETアドレスを格納する。ECHONETアドレスはECHONETプロトコルによってやり取りされる情報(ECHONET電文)に付加される情報で、ECHONET電文には必ず情報の発信元のECHONETアドレスと情報の発信先のECHONETアドレスが記載されている。ECHONETバンドルは、ECHONET機器の検出時にECHONET機器から個体識別情報を読み出し、個体識別情報管理テーブル400に記憶する際に、個体識別情報読み出し時のECHONET電文に含まれるECHONETアドレスを記憶する。
【0037】
再検索待機数を格納する列403は、ECHONETバンドルがECHONET機器を検出する際、一度検出した機器を再検索する際の指標となる数である再検索待機数を格納する。ECHONETバンドルが最初に個体識別情報を個体識別情報管理テーブル400に記憶する際、再検索待機数は0として記憶する。ECHONETバンドルは後述の機器検出フローにより定期的に宅内のECHONET機器の個体識別情報を検索するが、個体識別情報を個体識別情報管理テーブル400に記載した後に受信した際には当該個体識別情報に対応する再検索待機数を1ずつインクリメント(整数型の変数の値を1増やす処理)していく。再検索待機数がシステムで決定するある値X(例えば3)以上であれば、該当個体識別情報に対応するECHONET機器のインスタンスを再検索する。」

「【0039】
図5は、宅内ネットワークに接続するECHONET機器を検出し、OSGiフレームワークにECHONETデバイスサービスとして登録するまでの手順を示すシーケンス図である。
ECHONET規格では、ECHONET電文をJava(登録商標)から扱うためのECHONET Java(登録商標)APIを規定している。このECHONET Java(登録商標)APIをECHONETミドルともいう。ECHONETバンドルは、ECHONETミドルと、ECHONETミドルを用いて機器の検出、切断監視、イベント管理(イベント登録、イベント通知取得を含むイベントを管理することをいう。)を行うECHONETドライバと、ECHONET機器の制御やイベント取得を行うECHONETサービスAPIとからなる。」

「【0044】
図5のシーケンス図について説明する。S501、S502では、ECHONETドライバはECHONETミドルを介して、ECHONET規格で定めるマルチキャストアドレス(IPv4アドレス、224.0.23.0)に対し、ECHONET機器のノードプロファイル(通信モジュールのプロファイル)に対して個体識別情報のプロパティを取得する要求(以下、「個体識別情報取得要求」という。)を送信する。S501、S502の処理を実現する手段は個体識別情報登録調査手段ともいう。
S503では、ECHONET機器はマルチキャストアドレスに到達する情報を監視しており、個体識別情報取得要求を受信したECHONET機器は送信元ECHONETアドレスに対し、個体識別情報取得要求に対する応答(以下、「個体識別情報取得応答」という。)を送信する。S504、S505では、ECHONETミドルは個体識別情報取得応答を受信し、受信した個体識別情報取得応答をECHONETドライバに対して送信する。
【0045】
S506では、ECHONETミドルから個体識別情報取得応答を受信したECHONETドライバは受信した個体識別情報が図4に示す個体識別情報管理テーブル400に登録済みか否かを調査する。ここで、ECHONETドライバは、受信した個体識別情報が個体識別情報管理テーブル400に未登録であれば、S507で受信した個体識別情報と個体識別情報の送信元のECHONETアドレスを個体識別情報管理テーブル400に登録し、再検索待機数を0に設定する。
【0046】
S508からS515では、ECHONETドライバは、受信した個体識別情報のECHONET機器が保持する機器オブジェクトの一覧を取得する。ECHONETの通信はECHONET通信機能間で行われるが、1つのECHONET通信機能に対して複数の機器オブジェクトが対応している場合がある(例えば、1つのECHONET機器の通信モジュールに対して人感センサと温度センサが結び付けられている場合)。ECHONET機器の制御は機器オブジェクトに対して行うため、ECHONETバンドルは機器オブジェクトの一覧を取得し、機器オブジェクト単位でOSGiフレームワークにECHONETデバイスサービスとして登録を行う。ここで、機器オブジェクトのことをインスタンスともいい、ECHONET通信機能のことをECHONETノードともいう。
【0047】
S508、S509では、ECHONETドライバはECHONETミドルを介して、ECHONET機器に対しECHONET機器が保持する機器オブジェクトの数である自ノードインスタンス数プロパティを取得する要求(以下、「自ノードインスタンス数取得要求」という。)を送信する。S510、S511では、ECHONET機器はECHONETミドルを介してECHONETドライバに自ノードインスタンス数プロパティ取得要求に対する応答(以下、「自ノードインスタンス数取得応答」という)を送信する。S508、S509の処理を実現する手段をインスタンス数取得手段ともいう。
【0048】
S512、S513では、ECHONETドライバはECHONETミドルを介して、ECHONET機器に対し、受信した自ノードインスタンス数プロパティに応じてノードに付随する機器オブジェクトのリストである自ノードインスタンスリストを取得する要求(以下、「自ノードインスタンスリスト取得要求」という。)を送信する。S512、S513の処理を実現する手段をインスタンスリスト取得手段ともいう。S514、S515では、ECHONET機器はECHONETミドルを介してECHONETドライバに自ノードインスタンスリスト取得要求に対する応答(以下、「自ノードインスタンスリスト取得応答」という)を送信する。」

「【0060】
図10から図15では、図5で述べたECHONET機器の検出からOSGiフレームワークへのECHONETデバイスサービスの登録までの手順をフローチャートを用いてに説明する。 図10は、ECHONETバンドルが機器検出を開始する手順(図5のS501、S502)を示すフローチャートである。ECHONETバンドルは起動中、繰り返し機器検出を行っている。
【0061】
まず、S1001ではECHONETバンドルが動作中であり、終了処理を開始していない(動作が継続している)ことを確認する。動作が継続していなければ(S1001でNOの場合)処理を終了する。動作が継続していれば(S1001でYESの場合)S1002に移り、ECHONET規格で定めるマルチキャストアドレス(IPv4、224.0.23.0)宛にノードプロファイルの個体識別情報プロパティ取得要求を送信し、S1003へ移る。S1003では一定時間停止し、再びS1001に戻る。」

(2)引用発明
前記(1)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 ECHONET規格においてはECHONETプロトコルにおいては操作のためにECHONETアドレスを用いて制御対象の機器を特定するが、ECHONETアドレスは機器の起動毎等で変化する可能性があり、
ECHONET規格では、ECHONET電文をJavaから扱うためのECHONET JavaAPIを規定し、このECHONET JavaAPIはECHONETミドルともいい、ECHONETミドルを用いて機器の検出、切断監視、イベント管理を行う部分をECHONETドライバともいい、ECHONETミドルとECHONETドライバとを含む部分をECHONETバンドルともいい、また、OSGiサービス基盤において様々なソフトウェア部品(バンドル)のダウンロード、インストール、実行といったライフサイクルの管理や他のバンドルとのインタフェース(サービス)の管理機能を実装する部分をOSGiフレームワークともいい、また、ECHONET規格に対応する機器をECHONET機器ともいい、
宅内機器管理装置101は、宅内ネットワーク102を介してECHONET機器と接続し、情報のやり取りを行うことができ、
宅内機器管理装置101は、CPU201、メインメモリ202、EPROM203、不揮発性記憶装置204、LANI/F205とで構成され、
CPU201は、EPROM203や不揮発性記憶装置204にあらかじめ格納されているプログラムによって所定の動作を行い、
宅内機器管理装置101にはOSGiコンソーシアムで規定するOSGiサービス基盤が搭載され、OSGiサービス基盤は、Javaベースのソフトウェアコンポーネント化技術であり、OSGiフレームワークとOSGiフレームワーク上で動作するソフトウェアからなり、
宅内機器管理装置101上で動作するOSGiフレームワーク上ではECHONET機器の検出、検出した機器へ制御を行うためのOSGiフレームワークへのサービス登録、ECHONET機器からの通知イベントの管理を行うECHONETバンドルが動作し、
個体識別情報管理テーブルとは、ECHONET機器の個体識別情報を管理するテーブルであり、個体識別情報と個体識別情報に対応するECHONETアドレスとが格納され、また、個体識別情報に対応する再検索待機数とが格納され、ECHONETバンドルの動作中に宅内機器管理装置101のメインメモリ202上に記憶され、
ECHONETアドレスはECHONETプロトコルによってやり取りされる情報(ECHONET電文)に付加される情報で、ECHONET電文には必ず情報の発信元のECHONETアドレスと情報の発信先のECHONETアドレスが記載され、
ECHONETバンドルは後述の機器検出フローにより定期的に宅内のECHONET機器の個体識別情報を検索し、
再検索待機数がシステムで決定するある値X(例えば3)以上であれば、該当個体識別情報に対応するECHONET機器のインスタンスを再検索し、
宅内ネットワークに接続するECHONET機器を検出し、OSGiフレームワークにECHONETデバイスサービスとして登録するまでの手順において、
S501、S502では、ECHONETドライバはECHONETミドルを介して、ECHONET規格で定めるマルチキャストアドレス(IPv4アドレス、224.0.23.0)に対し、ECHONET機器のノードプロファイル(通信モジュールのプロファイル)に対して個体識別情報のプロパティを取得する要求(以下、「個体識別情報取得要求」という。)を送信し、
S503では、ECHONET機器はマルチキャストアドレスに到達する情報を監視しており、個体識別情報取得要求を受信したECHONET機器は送信元ECHONETアドレスに対し、個体識別情報取得要求に対する応答(以下、「個体識別情報取得応答」という。)を送信し、
S504、S505では、ECHONETミドルは個体識別情報取得応答を受信し、受信した個体識別情報取得応答をECHONETドライバに対して送信し、
S506では、ECHONETミドルから個体識別情報取得応答を受信したECHONETドライバは受信した個体識別情報が個体識別情報管理テーブル400に登録済みか否かを調査し、ここで、ECHONETドライバは、受信した個体識別情報が個体識別情報管理テーブル400に未登録であれば、S507で受信した個体識別情報と個体識別情報の送信元のECHONETアドレスを個体識別情報管理テーブル400に登録し、再検索待機数を0に設定し、
1つのECHONET通信機能に対して複数の機器オブジェクトが対応している場合があり(例えば、1つのECHONET機器の通信モジュールに対して人感センサと温度センサが結び付けられている場合)、ここで、機器オブジェクトのことをインスタンスともいい、
S508、S509では、ECHONETドライバはECHONETミドルを介して、ECHONET機器に対しECHONET機器が保持する機器オブジェクトの数である自ノードインスタンス数プロパティを取得する要求(以下、「自ノードインスタンス数取得要求」という。)を送信し、
S510、S511では、ECHONET機器はECHONETミドルを介してECHONETドライバに自ノードインスタンス数プロパティ取得要求に対する応答(以下、「自ノードインスタンス数取得応答」という)を送信し、
S512、S513では、ECHONETドライバはECHONETミドルを介して、ECHONET機器に対し、受信した自ノードインスタンス数プロパティに応じてノードに付随する機器オブジェクトのリストである自ノードインスタンスリストを取得する要求(以下、「自ノードインスタンスリスト取得要求」という。)を送信し、
S514、S515では、ECHONET機器はECHONETミドルを介してECHONETドライバに自ノードインスタンスリスト取得要求に対する応答(以下、「自ノードインスタンスリスト取得応答」という)を送信し、
ECHONETバンドルが機器検出を開始する手順(S501、S502)において、ECHONETバンドルは起動中、繰り返し機器検出を行っており、ECHONETバンドルが動作中であり、終了処理を開始していない(動作が継続している)ことを確認し、動作が継続していればECHONET規格で定めるマルチキャストアドレス(IPv4、224.0.23.0)宛にノードプロファイルの個体識別情報プロパティ取得要求を送信し、一定時間停止する、
宅内機器管理装置101及び手順。」

2 引用文献2について
引用文献2は、そのタイトルからして、「Echonet Lite」の仕様に関するものであって、以下の事項が記載されている。

「(第[4-7]ページ



上記図4-6から、ECHONET Liteノードスタート時の基本シーケンスにおいて、「内部イニシャル処理/通信アドレス設定完了」に次いで「一斉同報」により「インスタンスリスト通知」を行うことが見て取れる。

以上より、引用文献2には、次の技術事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「 Echonet Liteの仕様において、
ECHONET Liteノード立ち上げ時の基本シーケンスにおいて、まず自己を認識・規定するための通信アドレスの取得を行い、
次いで、一斉同報により、インスタンスリスト通知を行うこと。」

3 引用文献3ないし5について
(1)引用文献3について
前置報告書において引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】複数の通信端末機で形成された通信ネットワークにおいて、各端末機を経由して同一のデータを目標とする端末機に1度に送信することを同報送信または同報通信と呼ぶ。このような同報送信に関する発明としては、従来、特開平10-173653号の公報に開示されているものが知られている。
【0003】この公報に開示されている通信方式では、同報通信に参加する各端末機が、自身の周囲に存在する他の端末機の存在を検知して、これを端末情報として記憶しておき、その端末情報に基づいて同報通信することを特徴としている。
【0004】すなわち、まず、自身の存在を他の端末機に知らせるために、各端末機は存在通知パケットを定期的(例えば2秒間隔)に送信する。存在通知パケットには、これを送信する端末機のアドレスと、その端末機が存在を検知し記憶している他の全ての端末機のアドレスが記される。このような存在通知パケットをネットワーク内の全端末機が繰り返し送信することにより、各端末機は相互に自身と直接通信可能な他の端末機や、直接通信ができない端末機との通信を中継しうる端末機を知ることができる。この存在通知パケットによって得られる端末情報を各端末機が記憶しておくことで、その端末情報に基づいて同報データを予め指定された順番に従って送っていく。」

(2)引用文献4について
前置報告書において引用された引用文献4は、引用文献3において従来技術を示す文献として引用されており、引用文献3と同等の事項が記載されていると認められるため、摘記等は省略する。

(3)引用文献5について
前置報告書において引用された引用文献5には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0029】
機器102は、UPnPにおけるデバイス機能を有するコンピュータシステム、組み込みシステム等のような装置である。具体的には、新たにネットワークに参加すると、自身がサポートしているデバイス及びサービスに係る情報(以下、デバイス情報、サービス情報と夫々を呼称する。)を通知するために、参加通知メッセージ(図3(a)参照。)を送信する。そして、デバイス情報及びサービス情報が変更されずに有効であり続ける限り、参加通知メッセージに設定した有効時間を超えない間隔で、繰り返し送信する。このとき、参加通知メッセージは、マルチキャストアドレスを送信先とするUDPパケットで送信される。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と引用発明とを対比する。

ア 引用発明は、「ECHONET規格においてはECHONETプロトコルにおいては操作のためにECHONETアドレスを用いて制御対象の機器を特定するが、ECHONETアドレスは機器の起動毎等で変化する可能性があり」との構成を備えることから、「機器」を特定するために用いられる「ECHONETアドレス」は、動的に変化し得る「動的アドレス」といい得るものであって、また、「ECHONET規格」に対応する「機器」(ECHONET機器)に動的に割り当てられるものといえる。
よって、引用発明の「ECHONET規格」に対応する「機器」(ECHONET機器)は、本願発明1の「動的アドレスが動的に割り当てられる機器」に相当する。

イ 引用発明は
「宅内機器管理装置101は、宅内ネットワーク102を介してECHONET機器と接続し、情報のやり取りを行うことができ」、
「ECHONETアドレスはECHONETプロトコルによってやり取りされる情報(ECHONET電文)に付加される情報で、ECHONET電文には必ず情報の発信元のECHONETアドレスと情報の発信先のECHONETアドレスが記載され」及び
「宅内ネットワークに接続するECHONET機器を検出し、OSGiフレームワークにECHONETデバイスサービスとして登録するまでの手順」
との構成を備えることから、引用発明は、「ECHONET機器」と、「ECHONETアドレス」を用いて、「宅内ネットワーク102」を介して「ECHONET機器」と「情報のやり取り」を行う「宅内機器管理装置101」とを有するシステムで用いる「登録するまでの手順」を実施するものである。
ここで、引用発明の「宅内ネットワーク102」、「情報のやり取り」、「宅内機器管理装置101」、「ECHONET機器を検出し」「登録するまでの手順」はそれぞれ、本願発明1の「所定ネットワーク」、「通信」、「制御装置」、「管理方法」に相当し、また、引用発明において、「ECHONET機器」と「宅内機器管理装置101」とからなるシステムは、本願発明1の「管理システム」に相当する。
よって、前記アを参酌すると、引用発明の「ECHONET機器を検出し」「登録するまでの手順」は、後述する相違点を除くと、本願発明1の「動的アドレスが動的に割り当てられる機器と、前記機器に割り当てられた動的アドレスを用いて、所定ネットワークを介して前記機器と通信を行う制御装置とを有する管理システムで用いる管理方法」に相当する。

ウ 引用発明は、
「ECHONETバンドルは後述の機器検出フローにより定期的に宅内のECHONET機器の個体識別情報を検索し」及び
「ECHONETバンドルが機器検出を開始する手順(S501、S502)において、ECHONETバンドルは起動中、繰り返し機器検出を行っており、ECHONETバンドルが動作中であり、終了処理を開始していない(動作が継続している)ことを確認し、動作が継続していればECHONET規格で定めるマルチキャストアドレス(IPv4、224.0.23.0)宛にノードプロファイルの個体識別情報プロパティ取得要求を送信し、一定時間停止する」
との構成を備えることから、引用発明の「ECHONET機器を検出し」「登録するまでの手順」は、一定時間毎、定期的に繰り返し実行される処理であり、当該処理は少なくとも、S501ないしS515を含む。
そして、引用発明は、「ECHONET機器を検出し」「登録するまでの手順」の一部として、
「S501、S502では、ECHONETドライバはECHONETミドルを介して、ECHONET規格で定めるマルチキャストアドレス(IPv4アドレス、224.0.23.0)に対し、ECHONET機器のノードプロファイル(通信モジュールのプロファイル)に対して個体識別情報のプロパティを取得する要求(以下、「個体識別情報取得要求」という。)を送信し」及び
「S514、S515では、ECHONET機器はECHONETミドルを介してECHONETドライバに自ノードインスタンスリスト取得要求に対する応答(以下、「自ノードインスタンスリスト取得応答」という)を送信し」
との構成を含むため、引用発明は、「S514,S515」の後に「S501、S502」が実行される場合を含み、以下では、このような場合を想定して対比を進める。

エ 引用発明は、「1つのECHONET通信機能に対して複数の機器オブジェクトが対応している場合があり(例えば、1つのECHONET機器の通信モジュールに対して人感センサと温度センサが結び付けられている場合)、ここで、機器オブジェクトのことをインスタンスともいい」との構成を備えることから、「インスタンス」は、「人感センサ」、「温度センサ」といった機器が備えるモジュールを示す「機器オブジェクト」である。
よって、引用発明の「S514,S515」において、「自ノードインスタンスリスト」は、「インスタンス」のリストであるから、一の「ECHONET機器」が備える複数の「機器オブジェクト」を示すものであるから、当該「ECHONET機器」の「種別」を含むものといい得る。
また、「S514,S515」による処理を「ステップA」と称することは任意である。
よって、引用発明の「S514,S515」において、「ECHONET機器」が「ECHONETミドルを介してECHONETドライバに自ノードインスタンスリスト取得要求に対する応答(以下、「自ノードインスタンスリスト取得応答」という)を送信」する処理と、本願発明1の「前記機器から、前記機器の種別を含むインスタンスリストをブロードキャスト又はマルチキャストにて少なくとも所定期間に亘って繰り返し送信するステップA」とは、「前記機器から、前記機器の種別を含むインスタンスリストを送信するステップA」との点において共通する。

オ 引用発明は、
「ECHONETミドルとECHONETドライバとを含む部分をECHONETバンドルともいい」及び
「宅内機器管理装置101上で動作するOSGiフレームワーク上ではECHONET機器の検出、検出した機器へ制御を行うためのOSGiフレームワークへのサービス登録、ECHONET機器からの通知イベントの管理を行うECHONETバンドルが動作し」
との構成を備えることから、「ECHONETミドル」及び「ECHONETドライバ」並びにこれらからなる「ECHONETバンドル」による処理は、「宅内機器管理装置101」による処理と同一視できる。
また、引用発明の「個体識別情報取得要求」は、本願発明1の「情報要求メッセージ」に相当する。
また、引用発明の「S501、S502」による処理を、「ステップB」と称することは任意である。
さらに、引用発明において、「マルチキャストアドレス」に対して「送信」することは、本願発明1の「ブロードキャスト又はマルチキャストにて送信」することに含まれる。
よって、引用発明の「S501、S502」において、「ECHONETドライバはECHONETミドルを介して、ECHONET規格で定めるマルチキャストアドレス(IPv4アドレス、224.0.23.0)に対し、ECHONET機器のノードプロファイル(通信モジュールのプロファイル)に対して個体識別情報のプロパティを取得する要求(以下、「個体識別情報取得要求」という。)を送信」することと、本願発明1の「前記インスタンスリストを前記制御装置が受信しているか否かにかかわらず、前記制御装置から情報要求メッセージをブロードキャスト又はマルチキャストにて送信するステップB」とは、「前記制御装置から情報要求メッセージをブロードキャスト又はマルチキャストにて送信するステップB」との点において共通する。

カ 引用発明は、「S503では、ECHONET機器はマルチキャストアドレスに到達する情報を監視しており、個体識別情報取得要求を受信したECHONET機器は送信元ECHONETアドレスに対し、個体識別情報取得要求に対する応答(以下、「個体識別情報取得応答」という。)を送信し」との構成を備えることから、「ECHONET機器」は、「個体識別情報取得要求」に含まれる「送信元ECHONETアドレス」により、「個体識別情報取得要求」を送信した「宅内機器管理装置101」の「ECHONETアドレス」を特定し、特定した「ECHONETアドレス」に基づいて、「個体識別情報取得応答」を「宅内機器管理装置101」に対して送信する処理を実行するものといえ、当該処理を「ステップC」と称することは任意である。
よって、引用発明は、本願発明1の「前記情報要求メッセージの送信元アドレスによって特定される前記制御装置の動的アドレスに基づいて、情報通知メッセージを前記機器から前記制御装置に対して送信するステップC」を備える。

(2)一致点・相違点
以上から、本願発明1と引用発明とは、以下の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 動的アドレスが動的に割り当てられる機器と、前記機器に割り当てられた動的アドレスを用いて、所定ネットワークを介して前記機器と通信を行う制御装置とを有する管理システムで用いる管理方法であって、
前記機器から、前記機器の種別を含むインスタンスリストを送信するステップAと、
前記制御装置から情報要求メッセージをブロードキャスト又はマルチキャストにて送信するステップBと、
前記情報要求メッセージの送信元アドレスによって特定される前記制御装置の動的アドレスに基づいて、情報通知メッセージを前記機器から前記制御装置に対して送信するステップCとを備える、管理方法。」

[相違点]
<相違点1>
「ステップA」における「インスタンスリスト」の送信が、本願発明1においては、「ブロードキャスト又はマルチキャストにて少なくとも所定期間に亘って繰り返し」なされるのに対し、引用発明は、「自ノードインスタンスリスト取得応答」の送信は、「宅内機器管理装置101」(ECHONETドライバ)が送信した「個体識別情報取得要求」(S501、S502)に対して、「ECHONET機器」が「個体識別情報取得応答」を応答する(S503)ことにより、「宅内機器管理装置101」(ECHONETドライバ)が、受信した「個体識別情報」と「送信元のECHONETアドレス」を「個体識別情報管理テーブル400」に登録(S504?S506)した後に、「宅内機器管理装置101」(ECHONETドライバ)が、「ECHONET機器」に「自ノードインスタンスリスト取得要求」を送信すること(S512、S513)に対する応答としてなされるため、「ブロードキャスト又はマルチキャストにて少なくとも所定期間に亘って繰り返し」なされるものではない点。

<相違点2>
「ステップB」における「情報要求メッセージ」の送信が、本願発明1においては、「前記インスタンスリストを前記制御装置が受信しているか否かにかかわらず」になされるのに対し、引用発明は、「自ノードインスタンスリスト取得要求」に対して「自ノードインスタンスリスト取得応答」がされていることから、「インスタンスリスト」の送信(応答)に対してこれを受信していない場合を想定していないため、「前記インスタンスリストを前記制御装置が受信しているか否かにかかわらず」になされているとはいえない点。

(3)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
引用発明においては、「宅内機器管理装置101」(ECHONETドライバ)が、「個体識別情報取得要求」及び「個体識別情報取得応答」により検出し、登録することができた特定の「ECHONET機器」に対して明示的に「インスタンスリスト」を要求するよう構成しており、「個体識別情報」及び「インスタンスリスト」といった情報の取得を「宅内機器管理装置101」(ECHONETドライバ)の要求に基づいて、すなわち制御装置の主導で行うことを技術思想としている。
また、引用文献2記載事項にあるように「ECHONET Liteノードスタート時の基本シーケンスにおいて、一斉同報により、インスタンスリスト通知を行うこと」すなわち「ECHONET Liteノード」(機器)の主導により、かつ「一斉同報」(ブロードキャスト)により「インスタンスリスト」を送信することは、本願優先日前の周知技術である。
しかしながら、制御装置主導で情報を送信させることを技術思想としている引用発明の、「宅内機器管理装置101」が特定の「ECHONET機器」を指定した要求に対する応答として当該「ECHONET機器」が「インスタントリスト」を送信する手順(ステップ)に替えて、又は、これに加えて、機器の主導により「インスタントリスト」を送信する周知技術を適用する起因、動機付けは見い出し難い。
なお、引用文献2は、「Echonet Lite」の「仕様」(規格)に関するものである。よって、仮に、「ECHONET規格」に基づく引用発明に、その名称から「ECHONET」に関連する規格と推察可能な「Echonet Lite」の規格に関する引用文献2記載事項の手順を付加することには特段の動機付けを要さず、引用発明に引用文献2記載事項の手順を付加し得るとした場合についても念のため検討する。
引用文献3ないし5に記載されているように、ネットワークに参加する機器が、ブロードキャスト又はマルチキャストにて自機に関する情報を他の機器に通知することは本願優先日前の周知技術といえる。
しかしながら、引用発明に引用文献2記載事項の手順を付加した態様(以下、「適用態様」という。)においては、機器主導でインスタンスリストを送信する手順と、制御装置主導でインスタンスリストを送信する手順とが共存することになるが、一方、引用文献3ないし5に係る周知技術は、機器主導の送信についてのみ特定するものであり、かつ、「ECHONET」に関するものでもないから、適用態様とは前提が異なるため、適用態様に適用することには技術的な阻害要因があるといえ、また、適用態様においては、インスタンスリストを送信する機会が二重に設定されているため、これにさらに周知技術を適用して、「繰り返し」送信することにより送信機会を増加させるようにする動機付けも存在しない。(制御装置主導でインスタンスリストを送信する引用発明に、機器主導でインスタンスリストを送信する引用文献2記載事項を適用することにより、制御装置主導と機器主導の両方でインスタンスリストを送信する適用態様とした上に、さらに、ECHONET規格に係るインスタンスリストを送信することとは異なる送信を機器主導で行う周知技術を適用することは、いわゆる「容易の容易」となる。)
よって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、さらに、引用文献3ないし5に係る周知技術を参酌したとしても、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5も、上記相違点1に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、さらに、引用文献3ないし5に係る周知技術を参酌したとしても、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明6及び7について
本願発明6及び7は、本願発明1を「制御装置」又は「制御装置」に搭載される「通信デバイス」として特定した発明であり、上記相違点1に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、さらに、引用文献3ないし5に係る周知技術を参酌したとしても、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

以上のとおり、本件発明1ないし7に係る発明は、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、さらに、引用文献3ないし5に係る周知技術を参酌したとしても、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
前記「第5」で述べたとおり、本願発明1ないし7は上記相違点1に係る本願発明1の構成又はこれに対応する構成を備えるから、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び2に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-04-27 
出願番号 特願2018-233974(P2018-233974)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大石 博見  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 野崎 大進
林 毅
発明の名称 管理方法、制御装置及び通信処理デバイス  
代理人 キュリーズ特許業務法人  

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