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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1373711
審判番号 不服2020-977  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-24 
確定日 2021-05-26 
事件の表示 特願2017-170149「情報提供システムおよび情報提供プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 1日出願公開、特開2018- 32406、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年1月31日に出願した特願2014-17907号の一部を平成29年9月5日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 9月29日 :手続補正書の提出
平成30年 6月29日付け:拒絶理由通知書
平成30年 9月26日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 2月21日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 元年 6月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月24日付け:令和元年6月19日に提出された手続補正書に係る手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定(原査定)
令和 2年 1月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年12月22日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 3年 1月26日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、令和3年1月26日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。(下線は、補正された箇所を示す。)

「【請求項1】
情報部と、撮影部、表示部、記憶部および制御部を備えた携帯型電子機器とを具備した情報提供システムであって、
前記情報部には、コンテンツ画像と、前記情報部を前記撮影部で撮影した場合に、前記情報部中の被撮影位置を識別可能に構成されたコード画像と、が描かれており、
前記記憶部は、少なくとも前記情報部に描かれたコンテンツ画像の部分画像を前記表示部に表示するための部分画像データを記憶し、
前記制御部は、前記撮影部によって撮影したコード画像に基づいて前記情報部中の被撮影位置を識別し、前記被撮影位置に応じた前記情報部中の前記部分画像を前記部分画像データに基づいて前記表示部に表示制御させ、
前記部分画像は、前記部分画像の輪郭が、前記撮影部で撮影される被撮影範囲の画像の輪郭と一致し、
特別画像を表示するための表示条件を満たした場合に、前記表示部に前記特別画像を表示させる情報提供システム。」

なお、本願発明2ないし9の概要は以下のとおりである。

本願発明2ないし5は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明6は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明7ないし9は、本願発明6を減縮した発明である。

第3 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし11に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1 特開2012-178160号公報
2 特開2005-284882号公報
3 特開2011-9916号公報

第4 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

[理由1]サポート要件違反
本願請求項1ないし9に係る発明において、「撮影部」が「情報」(特に「コード情報」)を「認識」することは、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

[理由2]明確性要件違反
本願請求項1ないし9に係る発明は、以下の点において明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1及び6の記載において、「情報部」に「記載」された「情報」と、「情報部」に描かれている「コンテンツ画像」及び「コード画像」との関係が明確ではない。
(2)請求項1の記載において、「前記認識した画像」は、どの「画像」を指すのか不明であるとともに、「被撮影位置」を識別するために「前記認識した画像」と「コード画像」とがどのように用いられるのか明確ではない。
(3)請求項1の記載において、「前記コード画像データ」はこれより先に前記されていない。
(4)請求項6の記載において、「撮影部で認識」される「情報部に記載された情報」と、「前記撮影部で認識したコード画像」との関係が明確ではない。
(5)請求項6の記載において、「部分画像データ」自体を表示することにどのような技術的意義があるのか不明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審が付与した。これ以降も同様。)

「【請求項1】
周囲の環境に応じた最適な表示オブジェクトを撮影画像と重ねて利用者に表示するための可搬性の表示装置であって、
物理的媒体上のイメージパターンを読み取る読取部と、
前記表示装置の周囲の環境をセンシングするための環境センサによって取得された外部環境の状態パラメータを取得する取得部と、
前記読取部が読み取ったイメージパターンに基づいて利用者に提示する表示オブジェクトを、前記取得部が取得した状態パラメータに応じて決定する決定部と、
前記物理的媒体を撮影して撮影画像を生成する撮影部と、
前記決定部が決定した前記表示オブジェクトを前記撮影画像と重ねて表示する表示部と、
を備える表示装置。」

「【請求項5】
前記読取部は、利用者が視覚により認識できない前記イメージパターンを読み取る請求項1に記載の表示装置。」

「【0012】
図1は、表示システム1の全体構成を示す。表示システム1は、コード画像10が付された物理的媒体20と、表示装置30とを備える。
物理的媒体20は、本実施形態においては雑誌であるが、これに代えて、例えば、新聞、電化製品又は壁等のコード画像10を表面に付すことができる物であってよい。コード画像10は、物理的媒体20の表面に印刷等により付され、利用者に出力する情報を示すコードが含まれた画像である。コード画像10は、物理的媒体20に付された状態で利用者が視覚により認識できない画像であってよい。例えば、コード画像10は、通常光の下では光の像を表示せず、かつ、赤外光又は紫外光等の所定の光の下では光の像を表示する特殊インクにより印刷されており、人間の目では見えないが、赤外光又は紫外光等の補助光を照射することにより撮像可能であってよい。このようなコード画像10は、本発明に係るイメージパターンの一例である。
表示装置30は、コード画像10を読み取って、読み取った内容に応じた表示オブジェクトを表示する。」

「【0021】
図5は、表示装置30として機能をする情報処理装置40のブロック構成を示す。情報処理装置40は、カメラ部41と、プロセッサ43と、モニタ44と、キー45と、通信部46と、記憶部47と、環境センサ37と、タイマ部38と、GPS部39とを有する。
カメラ部41は、撮影対象物からの光を受光して撮像画像を生成する。また、カメラ部41は、コード画像10からの光を受光して、当該コード画像10の画像データを生成する。例えば、カメラ部41は、利用者が視覚により認識できないコード画像10に対して紫外光又は赤外光等の補助光を照射し、補助光の照射によりコード画像10が発する光を受光して画像データを生成する。カメラ部41は、撮影対象物及びコード画像10からの光を集光するレンズ52と、コード画像10を撮像する場合において紫外光又は赤外光を透過させるフィルタ54と、フィルタ54を透過した光を電気信号に変換する撮像素子56と、補助光をコード画像10に対して照射する照射部58とを含む。このようなカメラ部41は、表示装置30の撮影部31及び読取部32の機能を実現する。
【0022】
プロセッサ43は、RAM43-1又はROM43-2等に記憶されたプログラムを実行して当該情報処理装置40の各部に対する制御等を行う。プロセッサ43は、各部の制御を行うことにより、当該情報処理装置40を表示装置30として動作させる。モニタ44は、利用者に対して画像を表示する。モニタ44は、表示装置30の表示部36の機能を実現する。キー45は、利用者からの操作入力を受け付ける。通信部46は、ネットワークを介して、当該表示装置30の外部のサーバ又は他の機器と通信を行う。記憶部47は、利用者に対して出力する画像データ等を記憶する。記憶部47は、表示装置30の内部に設けられていてもよいし、ネットワーク上に設けられて通信部46を介して接続されてもよい。」

「【0027】
図6は、広告を表示する前の表示部36の状態を示す。表示装置30の決定部34は、物理的媒体20としての雑誌を撮影した場合、その記事内容を表示部36に表示するとともに、表示画像上における当該コード画像10が付されている位置に広告情報が存在することを示すポインタ60を表示する。これにより、表示装置30は、コード画像10の存在を利用者に対して認識させることができる。また、決定部34は、画角に対するコード画像10の大きさが基準の大きさより小さい場合、広告情報が存在することを示すポインタ60を表示してよい。これにより、コード内容の認識ができない場合等にも、コード画像10の存在を利用者に認識させることができる。さらに、表示装置30の決定部34は、利用者が広告の内容を見たいと希望する場合の操作方法を示した説明文字列61を、ポインタ60とともに表示部36上に表示してもよい。」

「【図6】



(2)引用発明
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 コード画像10が付された物理的媒体20と、表示装置30とを備える表示システム1であって、
表示装置30は、周囲の環境に応じた最適な表示オブジェクトを撮影画像と重ねて利用者に表示するための可搬性の表示装置であって、
物理的媒体上のイメージパターンを読み取る読取部と、
前記表示装置の周囲の環境をセンシングするための環境センサによって取得された外部環境の状態パラメータを取得する取得部と、
前記読取部が読み取ったイメージパターンに基づいて利用者に提示する表示オブジェクトを、前記取得部が取得した状態パラメータに応じて決定する決定部と、
前記物理的媒体を撮影して撮影画像を生成する撮影部と、
前記決定部が決定した前記表示オブジェクトを前記撮影画像と重ねて表示する表示部と、
を備え、
前記読取部は、利用者が視覚により認識できない前記イメージパターンを読み取り、
物理的媒体20は、本実施形態においては雑誌であるが、これに代えて、例えば、新聞、電化製品又は壁等のコード画像10を表面に付すことができる物であってよく、
コード画像10は、物理的媒体20の表面に印刷等により付され、利用者に出力する情報を示すコードが含まれた画像であり、
コード画像10は、イメージパターンの一例であり、
表示装置30として機能をする情報処理装置40は、カメラ部41と、プロセッサ43と、モニタ44と、キー45と、通信部46と、記憶部47と、環境センサ37と、タイマ部38と、GPS部39とを有し、
カメラ部41は、撮影対象物からの光を受光して撮像画像を生成し、コード画像10からの光を受光し、表示装置30の撮影部31及び読取部32の機能を実現し、
プロセッサ43は、プログラムを実行して当該情報処理装置40の各部に対する制御等を行い、
記憶部47は、利用者に対して出力する画像データ等を記憶し、
表示装置30の決定部34は、物理的媒体20としての雑誌を撮影した場合、その記事内容を表示部36に表示するとともに、表示画像上における当該コード画像10が付されている位置に広告情報が存在することを示すポインタ60を表示する、
表示システム1。」

2 引用文献2及び3について
(1)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0059】
本実施の形態においてはコンテンツ表現制御装置の一例として、携帯電話機のハードウェアを用いるものとして説明を行う。
【0060】
図1(a)は携帯電話機の前面、図1(b)は携帯電話機の背面をそれぞれ示している。携帯電話機は、筐体101と、LCD(Liquid Crystal Display)102と、操作ボタン群103と、CCD(Charge-Coupled Devices)カメラ106と、マイクロフォン105と、スピーカ104とを備える。」

「【0066】
次に、図4は、本実施の形態におけるコンテンツ表現制御装置の機能構成を示すブロック図である。図4を参照して、本実施の形態におけるコンテンツ表現制御装置は、表現を制御するための基準物体が撮影されたガイド画像データ311を取得する画像データ取得部301と、基準物体に対するガイド画像の位置や拡大/縮小率などの対応関係情報を取得する対応関係情報取得部302と、取得された対応関係情報に基づいて、コンテンツのビューの左上の座標や拡大率など、表現に関するパラメータを制御するためのデータを生成する表現制御データ生成部303と、表現制御データをもとにして入力コンテンツ312の表現に関するパラメータを制御して出力データ313として出力するパラメータ制御部304とを含んで構成される。画像データ取得部301の機能は、たとえば、図2の画像入力部243により実現され、それ以外の機能は、制御部22が、記憶部23に記憶されるプログラムを読出し、そのプログラムを実行して図2に示されるハードウェア構成の各部を制御することによって発揮される。例えば、記憶部23に記憶されるプログラムによって、制御部22は、特定の操作ボタンが押されている間のみ画像データを取得し表現制御データを生成するように制御してもよい。出力データ313が、たとえば、図2の表示部242に与えられる。」

「【0074】
図7を参照して、始めに、ステップS01でガイド画像データが取得される。ガイド画像データとは、例えば図5を参照して、401のようなガイドシートの部分領域700をCCDカメラ106によって撮影し、撮影した画像の各点の輝度を画像入力部243の機能によりディジタルデータの配列に変換したものである。…(後略)。」

「【0081】
図7において、次のステップS07では、図10を参照してコンテンツ900の一部をLCD102に表示するための表示範囲901が算出される。コンテンツ900(電子地図)上の各座標はガイドシート401上の各座標に対応しているものとする。ここでビュー901の左上の頂点902のコンテンツ上の座標(Xp,Yp)と右下の頂点903のコンテンツ上の座標(Xq,Yq)を求める。図9および図10に付与された変数を用いると、以下のとおりとなる。」

「【0102】
実施の形態1では、図7のフローチャートに示すように繰り返し処理され、ガイドシートとCCDカメラの位置関係が刻々と変化する場合でも、その変化に追随して処理がおこなわれるので、コンテンツのビュー制御、すなわちスクロールやズーム操作をスムーズにおこなうことができる。とりわけ、スクロールとズーム操作を同時あるいは連続的におこなうことが可能となる。また、ガイドシートの特定の位置を撮影することにより、ビューを直感的かつ瞬時に移動することが可能となる。なお、携帯電話装置を動かさずにガイドシートのみを動かすことによってもビューを制御することができ、操作者の視線の移動による疲労を軽減することができる。」

したがって、上記引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「 コンテンツ表現制御装置の一例として、携帯電話機は、筐体101と、LCD102と、操作ボタン群103と、CCDカメラ106と、マイクロフォン105と、スピーカ104とを備え、
コンテンツ表現制御装置は、表現を制御するための基準物体が撮影されたガイド画像データ311を取得する画像データ取得部301と、基準物体に対するガイド画像の位置や拡大/縮小率などの対応関係情報を取得する対応関係情報取得部302と、取得された対応関係情報に基づいて、コンテンツのビューの左上の座標や拡大率など、表現に関するパラメータを制御するためのデータを生成する表現制御データ生成部303と、表現制御データをもとにして入力コンテンツ312の表現に関するパラメータを制御して出力データ313として出力するパラメータ制御部304とを含んで構成され、
ガイド画像データとは、401のようなガイドシートの部分領域700をCCDカメラ106によって撮影し、撮影した画像の各点の輝度を画像入力部243の機能によりディジタルデータの配列に変換したものであり、
コンテンツ900(電子地図)上の各座標はガイドシート401上の各座標に対応しており、
ガイドシートとCCDカメラの位置関係が刻々と変化する場合でも、その変化に追随して処理がおこなわれるので、コンテンツのビュー制御、すなわちスクロールやズーム操作をスムーズにおこなうことができること。」

(2)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0015】
本実施形態としての対象物情報表示装置は、図1(a)、(b)に示すように、使用者が握るための柄部102有し虫眼鏡の形状を備えた電子虫眼鏡100であって、この電子虫眼鏡100は、その表面側(図1(a):表面)に、撮影された映像が出力表示される表示画面101を有し、この表示画面(出力画面)101の中央部裏側(図1(b):裏面)に撮影対象物(対象物)の撮影を行うためのカメラレンズ(カメラ部の一部)103(図1(b))を備えた構成となっている。」

「【0017】
次に、電子虫眼鏡100の内部構成について、図3のブロック図に基づき詳説する。
電子虫眼鏡100は、カメラレンズ103を含み構成され撮影対象物の撮影を行う撮影手段301と、撮影手段301により撮影された映像内におけるテキスト情報や特定の物質などの映像対象物を対象物特徴情報に基づき検知する画像認識手段(映像対象物検知手段)302と、画像認識手段302に接続して設けられ映像対象物を検知(画像認識)するためのリファレンス情報である対象物特徴情報(対象物参照情報)を保持する画像認識データベース307を備えている。
尚、カメラレンズ103は、撮影手段301の一部を構成するものとする。
【0018】
また、電子虫眼鏡100は、画像認識手段302により映像対象物が検知(画像認識)された場合に、検知された映像対象物から関連情報の検索が行われる映像対象物を検索対象として特定する検索情報判定手段303と、検知された映像対象物が表示画面101内の特定のエリアに表示されている時間を測定する表示時間測定手段308と、予め設けられた通信手段309を介して特定された映像対象物にかかる情報としての関連情報の検索を行う関連情報検索手段304を有する。
【0019】
更に、電子虫眼鏡100は、関連情報検索手段304により検索結果として取得された対象物情報(関連情報)を表示手段306に対して送信し関連情報の出力表示を行う関連情報再生手段305と、撮影手段301により撮影された映像情報、および関連情報再生手段305からの対象物情報を表示画面101に対して出力する動作を制御する表示手段306と、表示画面101に順次出力される関連情報を監視し、この関連情報の出力時間間隔を測定する再生時間測定手段310を備えた構成としている。」

したがって、上記引用文献3には、次の技術的事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「 使用者が握るための柄部102を有し虫眼鏡の形状を備えた電子虫眼鏡100であって、
電子虫眼鏡100は、カメラレンズ103を含み構成され撮影対象物の撮影を行う撮影手段301と、
撮影手段301により撮影された映像内におけるテキスト情報や特定の物質などの映像対象物を対象物特徴情報に基づき検知する画像認識手段(映像対象物検知手段)302と、
画像認識手段302に接続して設けられ映像対象物を検知(画像認識)するためのリファレンス情報である対象物特徴情報(対象物参照情報)を保持する画像認識データベース307と、
画像認識手段302により映像対象物が検知(画像認識)された場合に、検知された映像対象物から関連情報の検索が行われる映像対象物を検索対象として特定する検索情報判定手段303と、
検知された映像対象物が表示画面101内の特定のエリアに表示されている時間を測定する表示時間測定手段308と、
予め設けられた通信手段309を介して特定された映像対象物にかかる情報としての関連情報の検索を行う関連情報検索手段304と、
関連情報検索手段304により検索結果として取得された対象物情報(関連情報)を表示手段306に対して送信し関連情報の出力表示を行う関連情報再生手段305と、
撮影手段301により撮影された映像情報、および関連情報再生手段305からの対象物情報を表示画面101に対して出力する動作を制御する表示手段306と、
表示画面101に順次出力される関連情報を監視し、この関連情報の出力時間間隔を測定する再生時間測定手段310を備えた構成としていること。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明において、「物理的媒体上のイメージパターン」は、「情報」といい得るものであるから、そのような「情報」を上に有する「物理的媒体」は、本願発明1の「情報部」に相当する。

イ 引用発明において、「表示装置30として機能をする情報処理装置40」の「カメラ部41」、「モニタ44」、「記憶部47」及び「プログラムを実行して当該情報処理装置40の各部に対する制御等を行う」「プロセッサ43」はそれぞれ、本願発明1の「撮影部」、「表示部」、「記憶部」及び「制御部」に相当する。
また、引用発明において、「表示装置30として機能をする情報処理装置40」は、「可搬性の表示装置」であるから、本願発明1の「携帯型電子機器」に相当する。
よって、引用発明の「表示装置30」は、本願発明1の「撮影部、表示部、記憶部および制御部を備えた携帯型電子機器」に相当する。

ウ 引用発明の「表示システム1」は、「コード画像10が付された物理的媒体20と、表示装置30とを備える」ものであって、その「表示装置30」における表示内容により情報を提供するものといえるから、前記ア及びイを参酌すると、本願発明1の「情報部と、撮影部、表示部、記憶部および制御部を備えた携帯型電子機器とを具備した情報提供システム」に相当する。

エ 引用発明は、「物理的媒体20は、本実施形態においては雑誌であるが、これに代えて、例えば、新聞、電化製品又は壁等のコード画像10を表面に付すことができる物であってよく」との構成を備え、「物理的媒体20」は、掲載記事(コンテンツ画像)が印刷された「雑誌」、「新聞」を含むから、「コンテンツ画像」が印刷(描画)されたものを含む。
よって、引用発明における「物理的媒体20」には、「コンテンツ画像」が描かれたものといえる。

オ 引用発明は、「前記物理的媒体を撮影して撮影画像を生成する撮影部」、「コード画像10は、物理的媒体20の表面に印刷等により付され」及び「表示装置30の決定部34は、物理的媒体20としての雑誌を撮影した場合、その記事内容を表示部36に表示するとともに、表示画像上における当該コード画像10が付されている位置に広告情報が存在することを示すポインタ60を表示する」との構成を備えることから、「物理的媒体20」を「撮影部」で「撮影した場合」に、「表示画像上における当該コード画像10が付されている位置」すなわち「物理的媒体」中の「コード画像10」が付されている「位置」(被撮影位置)を識別した上で、その「位置」を示す「ポインタ60」を表示しているといえる。
よって、引用発明における「物理的媒体20」には、「物理的媒体20」を「撮影部」で撮影した場合に、「物理的媒体」中の被撮影位置を識別可能に構成された「コード画像10」が印刷された(描かれた)ものといえる。

カ 前記ア、エ及びオより、引用発明は、本願発明1の「前記情報部には、コンテンツ画像と、前記情報部を前記撮影部で撮影した場合に、前記情報部中の被撮影位置を識別可能に構成されたコード画像と、が描かれており、」との構成を備える。

キ 引用発明は、「記憶部47は、利用者に対して出力する画像データ等を記憶し」との構成を備える。
よって、引用発明と本願発明1の「前記記憶部は、少なくとも前記情報部に描かれたコンテンツ画像の部分画像を前記表示部に表示するための部分画像データを記憶し、」とは、「前記記憶部は、少なくとも画像データを記憶し、」との構成を備える点において共通する。

ク 引用発明は、「プロセッサ43は、プログラムを実行して当該情報処理装置40の各部に対する制御等を行い」との構成を備えることから、「プロセッサ43」は、「決定部34」及び「表示部36」等の制御を行うものであるから、「制御部」といい得るものである。
また、引用発明は、さらに、「前記物理的媒体を撮影して撮影画像を生成する撮影部」及び「前記決定部が決定した前記表示オブジェクトを前記撮影画像と重ねて表示する表示部」との構成を備えるが、引用文献1の【図6】を参照すると、「撮影部」によって撮影され「表示部36」に表示される「撮影画像」は、「物理的媒体20」の掲載記事(コンテンツ画像)の一部である「コンテンツ画像の部分画像」といい得るものであり、「プロセッサ43」は、当該「部分画像」を「表示部36」に表示制御させているといえる。
よって、前記オを参酌すると、引用発明と本願発明1の「前記制御部は、前記撮影部によって撮影したコード画像に基づいて前記情報部中の被撮影位置を識別し、前記被撮影位置に応じた前記情報部中の前記部分画像を前記部分画像データに基づいて前記表示部に表示制御させ、」とは、「前記制御部は、コンテンツ画像の部分画像を前記表示部に表示制御させ、」との構成を備える点において共通する。

ケ 引用文献1の【図6】を参照すると、引用発明において、撮影した範囲(被撮影範囲)の部分画像を表示部にそのまま表示していると認められる。この場合、表示する部分画像の輪郭と、被撮影範囲の画像の輪郭とは一致することは自明である。
よって、引用発明は、本願発明1の「前記部分画像は、前記部分画像の輪郭が、前記撮影部で撮影される被撮影範囲の画像の輪郭と一致し、」との構成を備える。

コ 引用発明は、「前記読取部が読み取ったイメージパターンに基づいて利用者に提示する表示オブジェクトを、前記取得部が取得した状態パラメータに応じて決定する決定部」及び「前記決定部が決定した前記表示オブジェクトを前記撮影画像と重ねて表示する表示部」との構成を備えることから、引用発明においては、「イメージパターン」が「読取部」により読み取られたという表示条件を満たした場合に、「表示部36」に「表示オブジェクト」を表示するものといえる。ここで、引用発明の「表示オブジェクト」は、通常は表示されない特別な画像であるから、「特別画像」といい得るものである。
よって、引用発明は、本願発明1の「特別画像を表示するための表示条件を満たした場合に、前記表示部に前記特別画像を表示させる」との構成を備える。

(2)一致点、相違点
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「 情報部と、撮影部、表示部、記憶部および制御部を備えた携帯型電子機器とを具備した情報提供システムであって、
前記情報部には、コンテンツ画像と、前記情報部を前記撮影部で撮影した場合に、前記情報部中の被撮影位置を識別可能に構成されたコード画像と、が描かれており、
前記記憶部は、少なくとも画像データを記憶し、
前記制御部は、コンテンツ画像の部分画像を前記表示部に表示制御させ、
前記部分画像は、前記部分画像の輪郭が、前記撮影部で撮影される被撮影範囲の画像の輪郭と一致し、
特別画像を表示するための表示条件を満たした場合に、前記表示部に前記特別画像を表示させる情報提供システム。」

[相違点]
<相違点1>
「記憶部」は、本願発明1は、「少なくとも前記情報部に描かれたコンテンツ画像の部分画像を前記表示部に表示するための部分画像データ」を記憶するものであるのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

<相違点2>
「制御部」は、本願発明1は、「前記撮影部によって撮影したコード画像に基づいて前記情報部中の被撮影位置を識別し、前記被撮影位置に応じた前記情報部中の前記部分画像を前記部分画像データに基づいて前記表示部に表示制御させ」るものであるのに対し、引用発明は、「コンテンツ画像の部分画像」を表示するものの、「前記撮影部によって撮影したコード画像に基づいて前記情報部中の被撮影位置を識別」し、かつ、「識別」した「前記被撮影位置に応じた前記情報部中の前記部分画像」を「記憶部」に記憶された「前記部分画像データ」に基づいて表示するものではない点。

(3)相違点についての判断
上記相違点1と上記相違点2とは技術的に関連しているので、まとめて検討する。
上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成は、「情報部」の「コード画像」に基づいて「情報部」の「被撮影位置」を識別し、識別した「被撮影位置」に応じた「情報部」の「部分画像」を、「記憶部」に記憶された「部分画像データ」に基づいて表示するものである。
また、引用文献2記載事項は、「コンテンツ900(電子地図)上の各座標はガイドシート401上の各座標に対応しており、ガイドシートとCCDカメラの位置関係が刻々と変化する場合でも、その変化に追随して処理がおこなわれるので、コンテンツのビュー制御、すなわちスクロールやズーム操作をスムーズにおこなうことができること」との構成を備えることから、「ガイドシート」と「コンテンツ」とは互いに座標が対応付けられており、この対応関係に基づいて、カメラによる「ガイドシート」の撮影範囲に追随して、表示される「コンテンツ」の範囲が変更されるものと理解することができる。よって、引用文献2記載事項は、「基準物体」である「ガイドシート」(情報部)の「ガイド画像データ」(コード画像)から生成される「表現制御データ」に基づいて、「ガイドシート」(情報部)の「位置」(被撮影位置)を識別し、識別した「位置」(被撮影位置)に基づいて「コンテンツ」(コンテンツ画像)の表現に関するパラメータを制御して「出力データ」(部分画像)を出力するものといえる。
ここで、仮に、引用文献2記載事項において、「コンテンツ」が記憶部に記憶されたものであると仮定しても、当該「コンテンツ」は、「ガイドシート」に描かれたものではないから、引用文献2記載事項は、上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成を備えるものではない。
よって、仮に、引用発明に引用文献2記載事項に係る技術的事項を適用したとしても、本願発明1には至らない。
また、引用発明は、「物理的媒体」を撮影することによって生成した「撮影画像」(部分画像)を表示するように構成されているが、このような構成に替えて引用文献2記載事項の構成を採用し、表示する「部分画像」を、「撮影画像」ではなく、「記憶部」内のデータに基づいて表示するよう変更すべき動機付けも存在しない。
また、引用文献3記載事項も上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成を備えない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし9について
本願発明2ないし5は、本願発明1を減縮した発明であり、上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

本願発明6は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であり、本願発明7ないし9は、本願発明6を減縮した発明であるから、本願発明6ないし9は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
本件補正により補正された請求項1ないし9は、それぞれ上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし9は、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1 理由1(サポート要件違反)について
本件補正により、請求項1ないし9に係る発明において、「撮影部」が「情報」(特に「コード情報」)を「認識」する旨の記載は削除された結果、この拒絶の理由は解消した。

2 理由2(明確性要件違反)について
本件補正により、
(1)請求項1及び6の記載において、「コンテンツ画像」及び「コード画像」との関係は明確となり、
(2)請求項1の記載において、「被撮影位置」を識別するために「前記認識した画像」と「コード画像」とがどのように用いられるのかが明確となり、
(3)請求項1の記載において、「前記コード画像データ」が「前記部分画像データ」に補正され、
(4)請求項6の記載において、「撮影部で認識」される「情報部に記載された情報」と、「前記撮影部で認識したコード画像」との関係が明確となり、
(5)請求項6の記載において、表示されるものが「部分画像データ」から「部分画像」に補正された、
ことから、この拒絶の理由は解消した。

以上から、当審拒絶理由はいずれも解消した。

第9 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし9は、当業者が引用文献1ないし3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-05-11 
出願番号 特願2017-170149(P2017-170149)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原 秀人  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 北川 純次
林 毅
発明の名称 情報提供システムおよび情報提供プログラム  

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