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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A61C |
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管理番号 | 1374119 |
審判番号 | 訂正2020-390116 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2020-12-23 |
確定日 | 2021-04-08 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5551283号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第5551283号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件訂正審判の請求に係る特許第5551283号(以下「本件特許」という。)は、平成19年8月23日に出願した特願2007-216552号の一部を平成25年1月22日に新たな特許出願としたものであって、平成26年5月30日にその特許権の設定登録がなされ、その後、令和2年12月23日に本件訂正審判が請求されたものである。 2 請求の趣旨及び訂正の内容 本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものであって、その請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「根管内に挿入され根尖位置検出信号を印加するための測定電極と、」と記載されているのを、 「根管内に挿入される歯科用工具に電気的に接続され、根尖位置検出信号を印加するための測定電極と、」 に訂正する(請求項1の記載を直接または他の請求項を介して引用する請求項2、3、4および5も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 明細書の段落【0010】に 「根管内に挿入され根尖位置検出信号を印加するための測定電極と、」と記載されているのを、 「根管内に挿入される歯科用工具に電気的に接続され、根尖位置検出信号を印加するための測定電極と、」 に訂正する。 3 当審の判断 (1)訂正事項1 ア 一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5は請求項1を引用するものであって、訂正事項1に係る訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし5は、特許法第126条第4項に規定する一群の請求項である。 イ 訂正の目的について まず、訂正前の請求項1における「測定電極」について検討すると、「根管内に挿入され根尖位置検出信号を印加するための測定電極と、根尖位置を検出される被検体に接触し根尖位置検出信号を印加するための」と特定していることから、当該測定電極は、文言上直接的に根管内に挿入され、直接根尖位置検出信号を印加する態様を含むものと解することができる。 他方、本件特許に係る根尖位置検出装置について明細書の段落【0021】に「・・・測定電極102は、測定電極用信号線102aの先端に設けられた測定電極用接続部102aaに接続されることで、装置本体101と接続される。・・・測定電極102は、歯の根管内に挿入される歯科用工具104に、被検体接触電極103は、例えば患者の口唇に、それぞれ電気的に接続される。以上の構成により、歯の根管内電気特性(例えば根管内インピーダンス値)を測定するための電気回路が構成される。」(下線は当審で付した。以下同様である。)と記載されるとともに、図1及び図2には、測定電極は、歯の根管内に挿入された歯科用工具と接続されることが図示されており、測定電極を直接的に根管内に挿入する態様は見当たらないことから、本件特許に係る根尖位置検出装置の測定電極は、直接的に根管内に挿入されて根尖位置検出信号を印加するものではなく、根管内に挿入された工具を介して根尖位置検出信号を印加することのみが、本件特許の明細書及び図面には実質的に記載されているといえる。 そして、特開平6-181938号公報、特開平10-155818号公報、特開2001-327519号公報及び特表2006-509592号公報に記載されているとおり、根尖位置測定装置の測定電極は、根管内に挿入された歯科用工具を介して根尖位置検出信号を印加することは技術常識であるといえるといえる(以下「技術常識」という。)。 そうすると、訂正前の請求項1の記載では、測定電極が根尖位置検出信号を印加するための具体的態様について、文言どおり測定電極が根管内に挿入され根尖位置検出信号を印加する(以下「解釈1」という。)のか、根管内に挿入されるものは歯科用工具であって、該歯科用工具に接続された測定電極が該歯科用工具を介して根尖位置検出信号を印加する(以下「解釈2」という。)のか、不明瞭であったといえるところ、上記のように本件特許明細書及び図面の記載並びに技術常識を参酌すると、上記解釈2と解することが相当であるといえる。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、「根管内に挿入される歯科用工具に電気的に接続され、根尖位置検出信号を印加するための測定電極と、」であるから、本件特許の請求項1において、測定電極が根尖位置検出信号を印加するための具体的態様が解釈1のように測定電極を根管内に挿入するのではなく、解釈2のように、根管内に挿入されるものは歯科用工具であって、該歯科用工具に接続された測定電極は該歯科用工具を介して根尖位置検出信号を印加することを明瞭にしようとするものである。 してみると、訂正事項1に係る訂正は、本件特許において、「根管内に挿入され」るものが「歯科用工具」であり、測定電極が歯科用工具を介して根尖位置検出信号を印加すること、すなわち解釈2であることを明瞭にしたものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更する訂正ではないことについて 上記イに示したとおり、「根管内に挿入され根尖位置検出信号を印加するための測定電極と、」との記載は、解釈1および解釈2の二通りの解釈ができるものであるが、本件特許明細書及び図面の記載並びに上記技術常識を参酌すると、根管内に挿入されるものは「歯科用工具」であり、測定電極が歯科用工具を介して根尖位置検出信号を印加すること、すなわち解釈2と解することが相当である。 そうすると、訂正事項1に係る訂正は、文言的には、一見、解釈1から解釈2に変更されたともみることができるが、当業者が本件特許明細書及び図面の記載並びに上記技術常識を踏まえれば、解釈1のように理解せず、解釈2のように理解したはずであるから、実質上特許請求の範囲の変更には当たらない。 そうすると、訂正事項1に係る訂正は、請求項1ないし6に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 エ 新規事項の追加について (ア)本件特許明細書には、以下の記載がある。 「【0021】 以下、図を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。(実施の形態)まず、図7を基に、従来の根尖位置検出装置の構成を確認する。従来の根尖位置検出装置110は、装置本体101と、測定電極102と、被検体接触電極103とを備える。測定電極102は、測定電極用信号線102aの先端に設けられた測定電極用接続部102aaに接続されることで、装置本体101と接続される。また、被検体接触電極103は、被検体接触電極用信号線103aの先端に設けられた被検体接触電極用接続部103aaに接続されることで、装置本体101と接続される。測定電極102は、歯の根管内に挿入される歯科用工具104に、被検体接触電極103は、例えば患者の口唇に、それぞれ電気的に接続される。以上の構成により、歯の根管内電気特性(例えば根管内インピーダンス値)を測定するための電気回路が構成される。」 「【0024】 ・・・そして、測定電極2は、歯の根管内に挿入されるリーマやファイルなどの歯科用工具4に、被検体接触電極3は、例えば患者の口唇に、それぞれ電気的に接続される。以上の構成により、歯の根管内電気特性(例えば根管内インピーダンス値)を測定するための電気回路が構成される。・・・」 (イ)上記(ア)の記載からみて、本件特許明細書には、「根管内に挿入される歯科用工具に電気的に接続され、根尖位置検出信号を印加するための測定電極」が記載されていたといえるから、訂正事項1に係る訂正は、新たな技術的事項を導入したものではない。 よって、当該訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 オ 独立特許要件について 上記イで検討したとおり、訂正事項1に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 (2)訂正事項2 ア 一群の請求項について 訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1ないし5についてするものであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第4項に規定する一群の請求項全てに対して行うものである。 イ 訂正の目的について 訂正事項2に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正によって訂正される特許請求の範囲と、明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更する訂正ではないこと、および、新規事項の追加について 訂正事項2に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正と同様のものであるから、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更する訂正ではないこと、および、新規事項の追加がないことは、上記(1)ウおよびエと同様である。 エ 独立特許要件について 上記イで検討したとおり、訂正事項2に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 4 むすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1-5]について訂正を認める。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 根尖位置検出装置 【技術分野】 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、歯科用診断器、特に根尖位置検出装置に関する。 【背景技術】 【0002】 歯科の根管診療においては、(1)診療の対象となる根管において、根尖位置を検出することで根管長(作業長)を決定し、(2)決定した根管長(作業長)に従って根管を切削拡大し、(3)根管内を洗浄し、(4)根管内に充填物を充填して封止する、という一連の施術が行われるのが一般的である。ここで、(1)の根尖位置検出を誤ると、その後の作業が誤った作業長に基づいて行われてしまうため、例えば根尖を突き抜けて切削拡大してしまったり、逆に根尖よりはるか手前で根管拡大を止めてしまい根管洗浄が不十分になってしまったりし、結果として、予後不良や再治療といった問題が発生する。 【0003】 根尖位置を検出する方式としては、術者の手指感覚による方法、X線画像の読影による方法等があるが、一般的に行われているのは、電気信号による電気的根管長測定方法である。この電気的根管長測定方法においては、歯の根管に挿入されるリーマやファイルと呼ばれる歯科用工具に接続される測定電極と、患者に直接接触させる(例えば患者の口唇に吊下げる)電極(以下、本明細書において、測定電極と区別するため「被検体接触電極」と記す)とを用い、これらの電極間に電気信号を印加することで、根尖位置を検出する。この電気的根管長測定方法においても、様々な測定原理が発見され、また実用化されている。例えば、単一周波数の電気信号によって根尖位置に対応するインピーダンス値の変化を検出したり、異なる2種類以上の周波数の電気信号によって検出される根管インピーダンスの比較によって根尖位置を検出したりする。これら根管インピーダンス値を測定する方式が主流であるが、もちろん、電気的根管長測定方法はそれに限定されるものでない。以下、本明細書において根尖位置検出と称する場合は、特に記載が無い限り、電気的根管長測定方法のいずれかによる根尖位置検出を意味する。 【0004】 根尖位置検出の方法以外に、根尖位置検出装置をより使い勝手のよいものとするために、様々な工夫が為されてきた。従来の根尖位置検出装置の例として、例えば、特許文献1では、根尖位置検出システムにおいて、根尖位置検出装置本体をごく小型のものとし、その装置本体を患者の胸部にクリップで装着する、あるいは口腔の非治療部を覆うための環状網の縁に装着することが提案されている。 【0005】 また例えば、特許文献2では、根尖位置測定器の本体内に送信器を設け、物理的に根尖位置測定器とは接続されない表示ユニットへ、無線周波信号を用いてインピーダンスアナライザ回路からのデータを送信することが提案されている。この測定器は、根尖位置測定の結果を装置と接続されない表示ユニットに表示することで、表示ユニットに係る構成を根尖位置測定器本体から排除したものである。また例えば、特許文献3では、根尖位置検出装置を手首に装着し、測定電極用リード線を術者の指(例えば中指)に沿わせて使用することが提案されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】国際特許公開公報WO03/005930A1 【特許文献2】特表2007-517606 【特許文献3】特開平10-155817 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上記特許文献1乃至3を含めた従来の根尖位置検出装置においては、装置本体の小型化や便宜的な装着が配慮されている。しかしながら、例えば特許文献1の根尖位置検出システムは、それまでの根尖位置検出装置を小型化し患者の口腔近傍に装着することを可能にしたものに過ぎない。また、特許文献2の根尖位置測定器は、表示ユニットに係る構成のみを根尖位置測定器本体から排除したものに過ぎない。また、特許文献3の根尖位置検出装置は、装置本体を小型化し術者の手首に装着することを可能にしたものに過ぎない。 【0008】 以上のとおりであるから、上記特許文献はいずれも、根尖位置検出装置の構成を抜本的に変更することを開示するものではなかった。すなわち、従来の根尖位置検出装置はいずれも、電気的根管長測定のための電気信号を印加するため、電極へつなぐ信号線、いわゆる電線コードを、常に最低2本使用するものであった。 【0009】 本発明は、上記の実情に鑑み、根尖位置検出のための信号線のうち1本を省略することで、根尖位置検出装置の使い勝手を大幅に向上させることを図るものである。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明は、上記課題の解決手段として、根尖位置検出部を備えた装置本体と、根管内に挿入される歯科用工具に電気的に接続され、根尖位置検出信号を印加するための測定電極と、根尖位置を検出される被検体に接触し根尖位置検出信号を印加するための被検体接触電極とを備え、該被検体接触電極が該装置本体に対し信号線を介さず直接接続され、該測定電極が該装置本体に対し屈曲可能な信号線を介して接続されることを特徴とする、根尖位置検出装置を提供するものである。この根尖位置検出装置によれば、従来の根尖位置検出装置が備えていた、被検体接触電極と装置本体との間の信号線が省略される。 【0011】 上記解決手段においては、さらに、前記装置本体に、前記根尖位置検出部が検出した根尖位置検出結果を表示するための表示手段をさらに備えることができる。また、上記解決手段においては、前記装置本体に、前記根尖位置検出部が検出した根尖位置検出結果を外部表示装置へ送信するための送信手段をさらに備えることで、外部表示装置によって根尖位置検出結果を表示することもできる。なお、前記装置本体に表示手段を備える構成と、前記装置本体に送信手段を備える構成とは、一つの根尖位置検出装置に同時に備えさせることもできる。 【0012】 さらに、上記解決手段においては、前記装置本体と直接接続された前記被検体接触電極を、前記装置本体に対して着脱可能に接続することができる。 【0013】 さらに、前記装置本体を、湾曲した剛体よりなる構成あるいは屈曲可能な構成とすることができる。 【発明の効果】 【0014】 本発明の請求項1に係る根尖位置検出装置によれば、根尖位置検出部を備えた装置本体と、被検体接触電極とを、直接接続し、一体化することができ、根尖位置検出のために電極に電気信号を導通する信号線のうち1本を省略することができる。根尖位置検出のための信号線が1本省略されることで、2本の信号線が絡むことがなくなり、施術のし易さ、装置の持ち運びのし易さが格段に向上する。また、術者にとっては信号線が1本になることで、根尖位置検出を始めるための準備が手軽になり、より使い勝手のよい根尖位置検出装置となる。 【0015】 本発明の請求項2に係る根尖位置検出装置によれば、患者のごく近傍に表示部が設けられるため、根尖位置検出結果を術者が容易に確認することができる。通常の電気的根尖位置検出装置においては、被検体接触電極とは、患者の口唇に掛ける口腔電極である場合が一般的である。この場合、本発明によれば、施術部である患者の口腔近傍に表示部が設けられるため、施術部からほとんど視線を動かさずに、場合によっては施術部と同視野内で、術者が根尖位置検出結果を視認することができる。また、被検体接触電極は、例えば患者の手に握らせるバトンのような構成とすることもできる。この場合、術者は患者に当該バトン型電極を握った手を患者胸部に置いてもらう等の指示を与えることで、術者にとって視認性のよい位置に表示部を備えた根尖位置検出装置を配置することができる。なお、本発明において表示部が行う表示とは、視覚的表示に限らず、音響や音声による聴覚的表示も含む。具体的な表示の方法については、実施の形態の項で詳述する。 【0016】 本発明の請求項3に係る根尖位置検出装置によれば、根尖位置検出装置から外部表示装置へ根尖位置検出結果を送信し、表示させることができる。この場合、外部表示装置における表示部の大きさは根尖位置検出装置の大きさに制限されることがないため、根尖位置検出結果が視認性よく表示される。なお、本発明の請求項2及び3に係る構成の双方を一つの根尖位置検出装置が備える場合、すなわち、根尖位置検出装置の装置本体が表示部と送信手段の双方を備える場合、請求項2及び3に係る発明の効果が同時に奏される。また逆に、請求項3に係る根尖位置検出装置自身が表示部を備えない構成とする場合、根尖位置検出装置の装置本体を一層小型化し軽量化することができる。 【0017】 本発明の請求項4に係る根尖位置検出装置によれば、被検体接触電極が根尖位置検出装置の装置本体に対して着脱自在となるため、電極の交換、滅菌、保管が非常に容易になり、衛生上も取扱上も好ましい根尖位置検出装置となる。 【0018】 なお、上述した本発明に係る根尖位置検出装置によれば、被検体接触電極が装置本体に対し直接接続されるため、電極を患者に装着することで必然的に装置本体も患者に装着することになり、患者にとっては、その装着の時点から測定が始まることが認識し易い。また術者にとっても、患者に装置本体を装着することで測定を始めることができ、分かり易くかつ便利な根尖位置検出装置となる。 【0019】 本発明の請求項5に係る根尖位置検出装置によれば、被検体接触電極が装置本体に対し直接接続され、尚且つ装置本体を湾曲させることができる。これにより、被検体接触電極が口腔電極である場合、患者の顔面輪郭に沿って装置本体を装着することができるため、術中に誤って術者が装置に触れることが少なく、また患者にとっても装着感の良い根尖位置検出装置となる。また、被検体接触電極が患者に握らせるバトン型である場合、湾曲した装置本体を電極と共に握りこむことができ、患者にとって装着感の良い根尖位置検出装置となる。 【図面の簡単な説明】 【0020】 【図1】本発明に係る根尖位置検出装置の一例を示す図である。 【図2】本発明に係る根尖位置検出装置の一例のブロック図である。 【図3】本発明に係る根尖位置検出装置の一例の変形例を示す図である。 【図4】本発明に係る根尖位置検出装置の一例の変形例のブロック図である。 【図5】本発明に係る根尖位置検出装置の応用例1を示す図である。 【図6】本発明に係る根尖位置検出装置の応用例2を示す図である。 【図7】従来技術における根尖位置検出装置を示す図である。 【発明を実施するための形態】 【0021】 以下、図を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。 (実施の形態) まず、図7を基に、従来の根尖位置検出装置の構成を確認する。従来の根尖位置検出装置110は、装置本体101と、測定電極102と、被検体接触電極103とを備える。測定電極102は、測定電極用信号線102aの先端に設けられた測定電極用接続部102aaに接続されることで、装置本体101と接続される。また、被検体接触電極103は、被検体接触電極用信号線103aの先端に設けられた被検体接触電極用接続部103aaに接続されることで、装置本体101と接続される。測定電極102は、歯の根管内に挿入される歯科用工具104に、被検体接触電極103は、例えば患者の口唇に、それぞれ電気的に接続される。以上の構成により、歯の根管内電気特性(例えば根管内インピーダンス値)を測定するための電気回路が構成される。 【0022】 装置本体101には、押しボタン型の操作部106が設けられており、術者は操作部106を操作することで、装置本体101に内蔵された不図示の電源部を動作させ、装置本体101の作動を開始させる。装置本体101の作動開始により、測定電極102と被検体接触電極103とに根尖位置検出のための電気信号が印加される。そして、装置本体101には、不図示の根尖位置検出部が内蔵されており、測定電極102と被検体接触電極103とに印加され根管内を通過した電気信号を基に、歯の根管内電気特性を検出することで、根尖位置を検出する。検出された根尖位置は、装置本体101の正面に設けられた液晶メータ式の表示部105によって表示される。術者は、根尖位置検出部の出力が変化し表示部105の表示が変化することを確認しながら、歯科用工具107を患者の歯の根管内に挿入していく。歯科用工具107の先端が根尖位置に到達したことを根尖位置検出部が検出した時、表示部105のメータはAPEX(根尖)を示し、術者は歯科用工具107の先端が根尖位置に到達したことを知ることができる。 【0023】 以上が従来の根尖位置検出装置の構成である。次いで、本発明に係る根尖位置検出装置の実施の形態を、図1乃至8を基に説明する。 【0024】 図1は、本発明に係る根尖位置検出装置の一例を示す図であり、図2は、当該一例のブロック図である。この根尖位置検出装置10は、装置本体1と、測定電極2と、被検体接触電極3とを備える。測定電極2は、測定電極用信号線2aの先端に設けられた測定電極用接続部2aaに接続されることで、装置本体1と接続される。また、被検体接触電極3は、装置本体1に設けられた被検体接触電極用接続部3aaに直接接続される。ここで、測定電極2を測定電極用接続部2aaに対して着脱可能とし、測定電極用信号線2aを装置本体1に対して着脱可能とし、さらに、被検体接触電極3を被検体接触電極用接続部3aaに対して着脱可能とすることで、各電極を装置本体から容易に取り外し、交換や滅菌を行うことができる。着脱可能とする構成としては、ピンジャック方式など、信号線や電極の接続方法として通常使用しうる方式を採用できる。(この着脱構成については、特に図示しない。)そして、測定電極2は、歯の根管内に挿入されるリーマやファイルなどの歯科用工具4に、被検体接触電極3は、例えば患者の口唇に、それぞれ電気的に接続される。以上の構成により、歯の根管内電気特性(例えば根管内インピーダンス値)を測定するための電気回路が構成される。上記及び以下の実施例においては、被検体接触電極3が口腔電極であるものとして説明するが、例えば被検体接触電極3を患者が握ることができるバトン型の電極としてもよい。 【0025】 装置本体1には、押しボタン型の操作部6が設けられており、術者は操作部6を操作することで、装置本体1に内蔵された電源部13を動作させ、装置本体1の作動を開始させる。装置本体1の作動開始により、電源部13より電力の供給を受けた信号発振部11から根尖位置検出のための電気信号が発振され、測定電極2と被検体接触電極3とに印加される。そして、装置本体1には、根尖位置検出部12が内蔵されており、測定電極2と被検体接触電極3とに印加され根管内を通過した電気信号を基に、歯の根管内電気特性を検出することで、根尖位置を検出する。検出された根尖位置は、装置本体1の表面に設けられた表示部5によって表示される。 【0026】 表示部5としては、液晶メータ、数値表示式液晶、複数の色の異なるLEDの配列によるメータ、色が変化する単一LED、等の視覚的表示を行う構成からいずれかを選択して、あるいは複数を併用して採用できる。単一LEDを表示部5として採用する場合は、LEDの色彩の変化、明度の変化、あるいは点滅頻度の変化によって、根尖位置検出結果を表示することができる。また、表示部5としては、間隔の変化する音響、音量の変化する音声、等の聴覚的表示を行う構成を選択して採用することもできる。術者は、根尖位置検出部の出力が変化し表示部5の表示が変化することを確認しながら、歯科用工具7を患者の歯の根管内に挿入していく。歯科用工具7の先端が根尖位置に到達したことを根尖位置検出部12が検出した時、表示部5は根尖位置に到達したことを示し、術者は歯科用工具7の先端が根尖位置に到達したことを知ることができる。 【0027】 この根尖位置検出装置10は、被検体接触電極(口腔電極)3を患者の口唇に掛けることで、必然的に装置本体1を患者に装着することとなり、同時に根尖位置検出のための準備が整うこととなる。以上、装置本体1に根尖位置検出部12をはじめとする各構成要素が内蔵されている構成を説明したが、各構成要素は装置本体1に完全に内蔵されている必要はなく、一部が装置本体1から露出した構成であってもよく、また、装置本体1に外付けしバンドや接着剤などで固定された構成であってもよい。本実施例においては、被検体接触電極3と装置本体1とを直接接続し一体化する点に主眼があり、この構成を採ることで本発明の効果は奏される。本明細書における「装置本体1に内蔵される」という表現は、以下も同様に、「装置本体1に一部露出した状態で内蔵される」及び「装置本体1に外付けし固定される」という意味も包含する。 【0028】 次いで、本実施例における根尖位置検出装置の変形例を説明する。図3は本変形例を示す図であり、図4は当該変形例のブロック図である。図3に示す根尖位置検出装置10は、装置本体に表示部を設けず、代わりに別体表示装置5aを用いる。図4に示す根尖位置検出装置10の本体1の内部には、送信手段14が設けられ、この送信手段14と別体表示装置5aとが、無線あるいは有線で電気的に接続されている。図3及び図4における送信手段14と別体表示装置5aとの間の点線は、この無線あるいは有線による電気的接続を示す。これら以外の、前記実施例と同一符号を付した構成については、前記実施例と同一であるため、説明は割愛する。 【0029】 上記変形例の構成により、装置本体1内部の根尖位置検出部12が検出した根尖位置検出結果を、送信手段14が別体表示装置5aへ送信し、別体表示装置5aは当該根尖位置検出結果を表示する。別体表示装置5aの大きさや機能は、装置本体1の大きさに制限されることがなく、術者は別体表示装置5aに表示された視認性のよい根尖位置検出結果を確認しながら施術することができる。 【0030】 前記実施例と本変形例とを同時に実施する、すなわち、一つの根尖位置検出装置10の装置本体1に、表示部5と送信手段14とを設け、さらに送信手段14から根尖位置検出結果を受信して表示する別体表示装置5aを設けることもできる。逆に、装置本体1に表示部を設けず、装置本体1を極めて小型かつ軽量なものとすることもできる。被検体接触電極3を患者の口唇に掛けることで装置本体1を患者に装着する構成の場合、装置本体1が小型かつ軽量であることは、患者の不快感や負担を軽減することにつながり、好都合である。 【0031】 次いで、本発明に係る根尖位置検出装置の応用例1及び2を説明する。 【0032】 図5は、本発明に係る根尖位置検出装置の応用例1を示す図である。本応用例1では、口腔電極を被検体接触電極3とし、装置本体1に設けた被検体接触電極用接続部3aaに直接接続されている。また、本応用例1では、装置本体1は表示部5を備えており、表示部5は各表示部51乃至56より構成されている。各表示部51乃至56は、各々が環状ランプまたは環状LEDであり、それぞれ発光色が異なるものが配列されている。これら以外の構成については、冒頭に記載した本発明の実施例と同一である。本応用例1では、例えば装置本体1の末端に配置された各表示部56の底部に、不図示の操作部6が設けられ、この操作部6によって電源部13を作動させ、根尖位置検出装置10の作動を開始するよう構成することができる。 【0033】 本応用例1の装置本体1を備えた根尖位置検出装置10を用いて術者が患者の根尖位置検出を行うと、測定電極2に接続された歯科用工具7の先端が歯の根尖に近づくにつれて、その動きを根尖位置検出部12が検出し、根尖位置検出結果が表示部5へ送信される。表示部5は、根尖位置検出結果に応じて、各表示部51乃至56を、例えば51から順に点灯させる。以上より、歯科用工具7の先端が根尖から離れた位置にあるときは、各表示部51のみが点灯し、歯科用工具7の先端が根尖付近にあるときは、各表示部51乃至54が点灯し、歯科用工具7の先端が根尖位置に到達したときは、各表示部51乃至56の全てが点灯する、といった表示を行うことができる。以上の構成により、術者は施術部である患者の口腔近傍で根尖位置検出結果の表示を視認することができるため、施術部からほとんど視線を動かさずに、場合によっては施術部と同視野内で、根尖位置検出結果を確認しながら施術を行うことができる。 【0034】 また、本応用例1においては、各表示部51乃至56の中心軸が同一でなく、各表示部51乃至56は互いに所定の角度を持って連接するように配置されている。このため、装置本体は全体として弓状の湾曲した外観を呈しており、患者の顔面輪郭に沿って配置されるのに有利な構造となっている。この各表示部51乃至56の互いの角度は、固定されていてもよいし、各表示部51乃至56間の各接合部に軟性樹脂のような伸縮部材を設けることで、術者が任意に調節できる構成であってもよい。 【0035】 図6は、本発明に係る根尖位置検出装置の応用例2を示す図である。本応用例2では、口腔電極を被検体接触電極3とし、装置本体1に設けた被検体接触電極用接続部3aaに直接接続されている。本応用例2では、被検体接触電極用接続部3aaが半円筒形のヒンジで構成されており、被検体接触電極用接続部3aaを構成する3つの半円筒形部材のうち、中央の部材が、装置本体1の長手軸に略直交する軸を中心にして、その両側の2部材に対して回転可能となっている。したがって、被検体接触電極用接続部3aaに接続される被検体接触電極3は、装置本体1の長手軸に略直交する軸を中心にして、図8において両矢印で示す方向に、装置本体1に対して180度の角度範囲で回転可能となっている。これら以外の構成については、冒頭に記載した本発明の実施例と同一である。 【0036】 本応用例2では、例えば被検体接触電極用接続部3aaを構成する3つの半円筒形部材の部材間に適度な摩擦をもたせることで、装置本体と被検体接触電極3と間の角度を調節保持することできる。この構成により、術者は患者の口唇に被検体接触電極3を掛け装置本体1を装着させたのちに、表示部5を見易い角度に装置本体1と被検体接触電極3との間の角度を調節することができ、便利である。 【0037】 以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明を、マイクロモータやスケーラといった根管治療装置に適用し、根尖位置検出機能を備えた根管治療装置とすることも可能である。この根管治療装置においても、根尖位置検出部12を備えた装置本体を、測定電極2及び被検体接触電極3のうちいずれか一方と直接接続することで、信号線を1本省略し、持ち運び易く操作性の良い根管治療装置とすることができる。 【符号の説明】 【0038】 1,101 装置本体、2,102 測定電極、3,103 被検体接触電極、2a,102a 測定電極用信号線、103a 被検体接触電極用信号線、2aa,102aa 測定電極接続部、3aa,103aa 被検体接触電極用接続部、5,5a,105 表示部、6,106 操作部、7,107 歯科用工具、10,110 根尖位置検出装置、11 信号発振部、12 根尖位置検出部、13 電源部、14 送信手段、51,52,53,54,55,56 各表示部 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 根尖位置検出部を備えた装置本体と、 根管内に挿入される歯科用工具に電気的に接続され、根尖位置検出信号を印加するための測定電極と、 根尖位置を検出される被検体に接触し根尖位置検出信号を印加するための被検体接触電極とを備え、 該被検体接触電極が該装置本体に対し信号線を介さず直接接続され、 該測定電極が該装置本体に対し屈曲可能な信号線を介して接続されることを特徴とする、根尖位置検出装置。 【請求項2】 請求項1に記載の根尖位置検出装置において、 前記装置本体が、前記根尖位置検出部が検出した根尖位置検出結果を表示するための表示手段をさらに備えることを特徴とする、根尖位置検出装置。 【請求項3】 請求項1に記載の根尖位置検出装置において、 前記装置本体が、前記根尖位置検出部が検出した根尖位置検出結果を外部表示装置へ送信するための送信手段をさらに備えることを特徴とする、根尖位置検出装置。 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載の根尖位置検出装置において、 前記装置本体と直接接続された前記被検体接触電極が、前記装置本体に対して着脱可能に接続されていることを特徴とする、根尖位置検出装置。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載の根尖位置検出装置において、 前記装置本体が、湾曲した剛体よりなる構成あるいは屈曲可能な構成であることを特徴とする、根尖位置検出装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2021-03-08 |
結審通知日 | 2021-03-10 |
審決日 | 2021-03-29 |
出願番号 | 特願2013-9569(P2013-9569) |
審決分類 |
P
1
41・
853-
Y
(A61C)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 胡谷 佳津志 |
特許庁審判長 |
内藤 真徳 |
特許庁審判官 |
関谷 一夫 莊司 英史 |
登録日 | 2014-05-30 |
登録番号 | 特許第5551283号(P5551283) |
発明の名称 | 根尖位置検出装置 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |