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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する F16K
管理番号 1374121
審判番号 訂正2020-390115  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2020-12-23 
確定日 2021-04-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6759510号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6759510号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6759510号は、平成28年4月21日を出願日とする特願2016-85469号として特許出願され、令和2年9月7日に特許権の設定登録がされたものであって、令和2年12月23日に本件訂正審判が請求されたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6759510号の明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を認める、との審決を求めるものである。
第3 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、令和2年12月23日に提出された審判請求書の記載によると、次のとおりである(なお、下線は訂正箇所を示すため請求人が付したものである。)。
1 訂正事項1
本件特許明細書の段落0003に「また、弁体と弁座とを無摺動にした弁として」とあるのを「また、弁体と弁座とを無摺動(登録商標、以下同様。)にした弁として」と訂正した。
第4 当審の判断
以下、訂正事項1について検討する。
1 訂正の目的
「無摺動」は、大阪機器製造株式会社が指定商品「バルブ」等に対して保有する登録商標(商標登録第1892638号「無摺動」)である。したがって、本件特許明細書の段落0003及びそれ以降に記載された「無摺動」について、正しくは、「無摺動(登録商標)」と記載すべきところ、「無摺動」と誤記していたものを、正しい記載に訂正するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
2 本件訂正が願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項1は、本件特許明細書の段落0003において、本件訂正前の「また、弁体と弁座とを無摺動にした弁として」を、本件訂正後に「また、弁体と弁座とを無摺動(登録商標、以下同様。)にした弁として」と訂正するものであり、「無摺動」が登録商標であることを付記するだけのものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
3 本件訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1は、本件特許明細書の段落0003において、本件訂正前の「また、弁体と弁座とを無摺動にした弁として」を、本件訂正後に「また、弁体と弁座とを無摺動(登録商標、以下同様。)にした弁として」と訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
4 独立特許要件について
訂正事項1は、本件特許明細書の段落0003において、本件訂正前の「また、弁体と弁座とを無摺動にした弁として」を、本件訂正後に「また、弁体と弁座とを無摺動(登録商標、以下同様。)にした弁として」と訂正するものであるから、この訂正によって、新たな無効理由が発生することはない。
したがって、訂正事項1による訂正後における請求項1及び2に係る発明は、独立特許要件を満たすものであり、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものに該当し、また、同条第5ないし7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
無摺動弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、無摺動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
補修弁としては、水道管に取り付けられる補修弁があり、特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1には、水道管と空気弁付き消火栓との間にボール弁式補修弁を設けた技術が記載されている。
【0003】
また、弁体と弁座とを無摺動(登録商標、以下同様。)にした弁として、特許文献2に記載のものが挙げられる。特許文献2には、弁体に対して第一軸(一方の弁棒)を回転伝達可能に連結する一方、第二軸(他方の弁棒)を回転伝達不能に連結し、第二軸に押圧部を設け、弁体には前記押圧部に押圧される被押圧部を設けたボール弁が記載されている。このボール弁によれば、第一軸の回転操作により弁体の開閉動作を行い、弁体を全閉にするときのみ第二軸を回転操作して押圧部を被押圧部に押し付け、弁体をシート部材(弁座)に密着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-253707号公報
【特許文献2】特開2008-95811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
補修弁は、通常は全開状態で使用され、下流側に接続される空気弁付き消火栓等の対象装置の補修やメンテナンスを行うときのみ閉じて水道管からの流水を一時的に遮断する用途に用いられる。つまり、従来の補修弁は、弁体を全開または全閉のどちらかの状態で使用することを前提としているので、弁体を中間開度で固定する構造を備えていない。しかしながら、近年では、排水(ドレン)作業や災害時の緊急給水用でも使用されることが多くなってきており、その際、弁が全開状態であると水量が過多になる場合がある。
【0006】
また、特許文献2の技術によれば、弁体に対して一方の弁棒を回転伝達可能に連結し、他方の弁棒を回転伝達不能に連結するため、弁体と弁棒との連結構造が複雑になるという問題がある。また、2つの弁棒の回転操作を要するため、レバー等の回転操作機構も2つ要することとなり、弁が大型化し、開閉操作手順も煩雑になる。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、弁体の開度を調整可能であり、さらに弁体と弁棒の連結構造が簡素化され、弁棒の簡単な回転操作で弁体を無摺動で開閉可能な無摺動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、弁座が設けられた弁箱と、前記弁箱内の流路を開閉する弁体と、前記弁体を回転させる弁棒と、前記弁棒に一体回転するように取り付けられる操作用のレバーと、を備えた無摺動弁であって、前記弁体は、ボール弁と、前記ボール弁と一体回転するように前記ボール弁および前記弁棒に組み付けられる一対の弁体受け部材と、を備え、前記弁箱と前記レバーとの間に介設されるばね部材と、前記弁棒に対する前記レバーの弁棒軸心方向の取付位置を変位させて前記ばね部材の弾性復元力を調整するばね調整部と、を有し、前記ボール弁を中間開度状態で保持可能な中間開度保持機構を備え、前記弁棒に対して前記ボール弁を連れ回り可能かつ弁棒軸心との直交方向に直線移動可能に連結する連結機構と、前記ボール弁を前記直交方向における中立位置に付勢する付勢部材と、前記弁箱と前記ボール弁との間で設けられ、前記ボール弁が閉じるとき前記付勢部材の付勢力に抗して前記ボール弁を前記弁座に押し付ける押し付け機構と、を備え、前記連結機構は、前記弁体受け部材に前記直交方向に沿って形成される連結溝と、前記弁棒に形成され、連れ回り可能な断面形状を有して前記連結溝に遊嵌される連結ピンと、を備え、前記付勢部材は、前記連結ピンのばね収容穴に収容されて一端が当該ばね収容穴の穴底部に当接し他端が前記連結溝の溝端面に当接するばね部材であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ばね部材の弾性復元力を利用した簡単な構造で、弁体を中間開度状態で保持できる。また、ばね調整部を備えることにより、レバーの操作力を容易に調整できる。また、弁体と弁棒の連結機構として、弁棒に対して弁体を連れ回り可能かつ弁棒軸心との直交方向に直線移動可能に連結する構成としたうえで、弁体を弁座に押し付ける押し付け機構に関しては、特許文献2のように弁体と弁棒との間ではなく、弁箱と弁体との間に設けた。これにより、弁体と弁棒の連結機構は簡単な構造で済み、特許文献2のように、弁体に対して一方の弁棒を回転伝達可能に連結し、他方の弁棒を回転伝達不能に連結する必要がない。また、2つの弁棒の回転操作を別々に要することもないので、弁も小型にでき、開閉操作手順も簡略になる。
【0010】
また、本発明は、前記弁箱と前記レバーとの間に介設される前記ばね部材は、前記弁棒に外嵌するサラばねであり、前記ばね調整部は、前記弁棒の端面に螺合する締め付けボルトを備えて構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ばね調整部を簡単な構造にできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ばね部材を利用した簡単な構造で弁体を中間開度で保持できる。また、弁体と弁棒の連結構造が簡素化され、弁棒の簡単な回転操作で弁体を無摺動で開閉できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る補修弁の全開状態を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る補修弁の全閉状態を示す側断面図である。
【図3】本発明に係る補修弁の分解斜視図である。
【図4】弁棒軸心方向から見た押し付け機構および圧縮コイルばねの説明図であり、(a)は補修弁が全開状態、(b)は補修弁が全閉状態の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1ないし図4を参照して、補修弁(以降、無摺動弁という)1は、弁箱2と、弁箱2内の流路6を開閉する弁体3と、弁体3を回転させる弁棒4,5と、を備えている。無摺動弁1は、図示しない水道管と図示しない空気弁等との間に介設される。
【0017】
「弁箱2」
弁箱2は、第1弁箱7と第2弁箱8とに分割構成されている。第1弁箱7は、弁体3を収容する基体部9と、流路6の他方側に流路軸心O1を中心として形成され相手側の配管フランジに接続されるフランジ部10と、流路軸心O1との直交方向である弁棒軸心O2を中心として延設し一方の弁棒4を支承する筒状の弁棒支持部11と、弁棒軸心O2を中心として延設し他方の弁棒5を支承する筒状の弁棒支持部12と、を備えている。弁棒支持部11の先端には、後述するスラスト受け部材48を取り付けるためのフランジ部13が形成され、弁棒支持部12の先端には、蓋部材42を取り付けるためのフランジ部14が形成されている。また、第1弁箱7には、流路6の一方側に流路軸心O1を中心として形成されたボール弁挿入開口部15と、流路6の他方側に流路軸心O1を中心として形成された雌ねじ部16と、が形成されている。ボール弁挿入開口部15の径L2は、後述する一対の弁体受け部材32,33の外端同士の距離L3よりも小さくボール弁31の直径L1よりも大きい。
【0018】
雌ねじ部16よりも弁箱2内側寄りの基体部9の内壁には、流路軸心O1を中心とする環状の弁座嵌合溝部17が形成されている。弁座18は、芯金入りのテフロン(登録商標)樹脂材等からなる弾性変形可能な環状の部材であり、変形状態で雌ねじ部16を通され弾性復元することで弁座嵌合溝部17に嵌合する。雌ねじ部16には弁座押え部材19が螺合される。弁座押え部材19は、他方の流路端開口部20が形成された環状の部材であって、雌ねじ部16に螺合する雄ねじ部が形成され一端が弁座18に当接する胴部21と、胴部21の他端から径外方向に延設し第1弁箱7の外面にあてがわれる鍔部22と、を備えた形状からなる。第1弁箱7と鍔部22との間にはシール部材23が介設される。弁座押え部材19は、胴部21の一端が弁座18に当接することで弁座18を支持するとともに弁座18の第1弁箱7からの抜けを阻止する。鍔部22の外周には凹部24が円周方向に複数形成されており、第1弁箱7に螺合した回り止めボルト25のボルト頭を凹部24のいずれか1つに引っ掛けることで弁座押え部材19の緩みが阻止される。
【0019】
第2弁箱8は、流路6の一方側に流路軸心O1を中心として形成され相手側の配管フランジに接続されるフランジ部26と、ボール弁挿入開口部15の内周壁に内嵌する嵌合部27と、を備えている。第2弁箱8には一方の流路端開口部28が形成されている。第2弁箱8は、嵌合部27がボール弁挿入開口部15の内周壁に内嵌した状態で図示しないボルトにより第1弁箱7に組み付けられる。ボール弁挿入開口部15の内周壁と嵌合部27との間にはシール部材29が介設される。
【0020】
「弁体3」
弁体3は、中心を貫く貫通孔30が形成された球状のボール弁31と、ボール弁31と一体回転するようにボール弁31および弁棒4,5に組み付けられる一対の弁体受け部材32,33とを備えて構成されている。なお、弁体受け部材32,33はボール弁31を挟んで互いに対称形である。弁体受け部材32は、弁棒軸心O2を中心とした短円柱状を呈しており、弁棒4の連結ピン60を挿通させるべく弁棒軸心O2方向に貫通した連結溝59が形成されている。弁体受け部材32の一端面における連結溝59の両脇には、弁棒軸心O2方向視して、弁棒軸心O2を中心に弧を描く略半月状の嵌合凸部34,34が突設されている。一方、ボール弁31の外周面には、弁棒軸心O2を中心とした円形を呈し、弁体受け部材32の一端面と当接する平面部35が形成されている。平面部35には、前記嵌合凸部34,34と嵌合する同心円状の嵌合凹部36が形成されている。嵌合凹部36の内径は嵌合凸部34,34の弧の径よりも若干大きい寸法である。
【0021】
平面部35および嵌合凹部36には、貫通孔30の貫通方向と直交する方向に沿う円弧状のガイド溝37が形成されている。ガイド溝37は、平面部35の中心で最もボール弁31の中心に近づく円弧状として形成されている。このガイド溝37には、弁棒4の連結ピン60の先端が遊嵌する。また、弁体受け部材32,33の各他端面と第1弁箱7の基体部9の内壁との間には隙間U(図1)が形成されている。
【0022】
「弁棒4,5」
弁棒4は、弁棒支持部11の内周面に軸受38を介して回転可能に支承される。軸受38と弁棒4との間にはシール部材39が介設されている。弁棒4は、一端に連結ピン60が形成され、他端にレバー取付軸部40が形成されている。弁棒5も弁棒支持部12の内周面に軸受38を介して回転可能に支承され、軸受38と弁棒5との間にシール部材39が介設されている。弁棒5の一端も弁棒4と同様に連結ピン60が形成されている。弁棒5の他端側は、フランジ部14にボルト41で締結される蓋部材42により塞がれる。
【0023】
「中間開度保持機構43」
通常、ボール弁は全開状態或いは全閉状態で使用されるため、弁体が中間開度で保持される構造とはなっていない。これに対し、本実施形態の無摺動弁1は、弁体3を中間開度状態で保持可能な中間開度保持機構43を備えている。中間開度保持機構43は、第1弁箱7と操作用のレバー44との間に介設されるばね部材としてのサラばね45と、弁棒4に対するレバー44の弁棒軸心O2方向の取付位置を変位させてサラばね45の弾性復元力を調整するばね調整部46と、を有して構成されている。
【0024】
レバー取付軸部40は、弁棒軸心O2方向視して、軸受38で支持される部位の弁棒4の径よりも小径の円柱部を、四隅に周面が残るように4面を正方形状にカットした断面形状からなる。第1弁箱7のフランジ部13には、ボルト47によりスラスト受け部材48が締結されており、レバー取付軸部40はスラスト受け部材48の貫通孔を通って外部に突出している。サラばね45は、レバー取付軸部40に外嵌するように取り付けられる。レバー44は、一端側に、レバー取付軸部40を弁棒軸心O2方向に移動可能かつ弁棒軸心O2回りに一体回転可能に遊嵌させる通し孔が形成され、他端側が開口形成された筒胴部49と、筒胴部49の外周面から径外方向に延設される操作アーム部50とを備えた形状からなる。レバー44は、前記通し孔にレバー取付軸部40が通された状態で、レバー取付軸部40の端面と隙間Sを開けるように筒胴部49内に配置したボルト受け板51を介し、調整ボルト52でレバー取付軸部40の端面に螺合される。ボルト受け板51および調整ボルト52が前記ばね調整部46を構成する。
【0025】
以上により、スラスト受け部材48(第1弁箱7)と筒胴部49(レバー44)との間に配置されたサラばね45が圧縮変形し、その弾性復元力がサラばね45とレバー44との間に作用する摩擦力となり(また、弁棒4のレバー取付軸部40周りの環状の段差面とスラスト受け部材48との間に作用する摩擦力にもなり)、弁棒4に静止トルクが発生する。これにより、弁体3が水流の影響を受けても、弁体3を任意の中間開度状態に保持できる。また、調整ボルト52の締め込み量により、サラばね45の弾性復元力(レバー44の回転操作力)を容易に調整できる。ばね部材は例えばコイルばねでもよいが、弾性復元力の微調整に優れた小型のばね部材としては本実施形態のようにサラばねを用いることが好ましい。
【0026】
なお、図3に示すように、フランジ部13の一部は径外方向に突設され、当該突設部位にボルト53およびナット54でストッパ55が取り付けられている。操作アーム部50の根元部がストッパ55に当接したときに弁体3は全開状態となる。
【0027】
無摺動弁1は、弁棒4,5に対して弁体3を連れ回り可能かつ弁棒軸心O2との直交方向に直線移動可能に連結する連結機構56と、弁体3を弁棒軸心O2との直交方向における中立位置P1に付勢する付勢部材57と、弁箱2と弁体3との間で設けられ、弁体3が閉じるとき付勢部材57の付勢力に抗して弁体3を弁座18に押し付ける押し付け機構58と、を備えている。
【0028】
「連結機構56」
連結機構56は、弁体受け部材32,33にそれぞれ弁棒軸心O2との直交方向に沿って形成される連結溝59と、弁棒4,5にそれぞれ形成され、連れ回り可能な断面形状を有して連結溝59に遊嵌される連結ピン60と、を備えている。連結ピン60は、弁棒4,5の各一端側において互いに平行な一対の平面部を有した断面形状からなる。連結ピン60は、弁体受け部材32,33にそれぞれ形成された連結溝59に、連結ピン60の平面部が連結溝59の溝側面を押圧することで弁体3を連れ回り可能、かつ連結溝59に沿って移動可能に遊嵌されている。連結ピン60の先端は連結溝59を貫通して、前記したようにボール弁31のガイド溝37に連れ回り可能かつ弁棒軸心O2との直交方向に直線移動可能に遊嵌される。これにより、弁棒4,5と弁体受け部材32,33とボール弁31とが一体回転可能に、かつ、弁棒4,5に対して弁体受け部材32,33およびボール弁31が弁棒軸心O2との直交方向に移動可能に構成される。
【0029】
「付勢部材57」
付勢部材57は、連結溝59の内部に配置されたばね部材からなる。本実施形態では、ばね部材を圧縮コイルばね61としている。連結ピン60の一対の周面部にはそれぞれ有底のばね収容穴62が形成されている。一対の圧縮コイルばね61A,61Bは、一端がばね収容穴62の穴底部に当接し他端が連結溝59の溝端面に当接するように、各ばね収容穴62に圧縮状態で収容される。圧縮コイルばね61Aの付勢力と圧縮コイルばね61Bの付勢力とのバランスにより、弁体3は常に中立位置P1に位置するように付勢される。中立位置P1は弁棒軸心O2上の位置である。弁体3が中立位置P1にあるとき、弁体3と弁座18との間には図1に示すように隙間Tが形成される。
【0030】
「押し付け機構58」
押し付け機構58は、位置調整可能に弁箱2に螺合された位置調整ボルト63と、弁体受け部材32,33にそれぞれ突設され位置調整ボルト63の先端に当接するボス部64と、を備えて構成されている。ボス部64は、弁体受け部材32,33の各外周面に緩曲面状に突設されている。弁箱2(第1弁箱7および第2弁箱8)には、この一対のボス部64に対応するように一対の位置調整ボルト63が螺合されている。第2弁箱8の外部に臨む位置調整ボルト63のボルト頭端面には、工具(マイナスドライバ等)を差し込むための溝が形成されている。工具により位置調整ボルト63の螺合位置を調整することで、位置調整ボルト63の先端がボス部64を押し付ける力、すなわち弁体3を弁座18に押し付ける力が調整される。位置調整ボルト63と弁箱2との間にはシール部材65が介設される。
【0031】
「作用」
図1および図4(a)に示すように、無摺動弁1が開状態のとき、弁体3は圧縮コイルばね61Aの付勢力と圧縮コイルばね61Bの付勢力とのバランスにより中立位置P1に位置している。この状態では、位置調整ボルト63の先端とボス部64とは接触しておらず、弁体3と弁座18との間に隙間Tが形成されている。この隙間Tは、無摺動弁1がほぼ全閉状態となって位置調整ボルト63の先端がボス部64を押し付けるまで形成され続ける。これにより、無摺動弁1の開閉動作に伴って弁体3が弁座18に摺動することが無くなるので、弁座18の摩耗を低減でき、弁座18のメンテナンス頻度や交換頻度を少なくできる。
【0032】
図2および図4(b)において、レバー44を操作して弁体3を全開状態から90°回転させると、その間際でボス部64が位置調整ボルト63の先端に当接して下方に押し付けられることで、圧縮コイルばね61Aの付勢力に抗して弁体3が中立位置P1から下方に移動する。そして、距離Vだけ下方に移動すると、弁体3が弁座18に押し付けられ、無摺動弁1が全閉状態となる。
【0033】
また、無摺動弁1の全開状態、全閉状態、任意の中間開度状態のいずれにおいても、サラばね45の弾性復元力が弁箱2と弁体3との間に作用しているので、水流の影響に拘らず弁体3の開度状態を確実に保持できる。
【0034】
「組み付け方法」
弁箱2に対する弁体3および弁棒4,5の組み付け方法は以下の工程を伴う。
(1)弁棒4と弁体受け部材32と圧縮コイルばね61A,61Bとを組み付けて弁棒アセンブリを作成する。同様に弁棒5と弁体受け部材33と圧縮コイルばね61A,61Bとを組み付けて弁棒アセンブリを作成する。なお、軸受38は第1弁箱7に嵌合させておく。
(2)前記一対の弁棒アセンブリをボール弁挿入開口部15から第1弁箱7の内部に入れて弁棒4,5をそれぞれ弁棒支持部11,12に支持させる。
【0035】
(3)ボール弁31をボール弁挿入開口部15から第1弁箱7の内部に入れて前記一対の弁棒アセンブリと組み付ける。具体的には、先ず、各弁棒アセンブリを、図1に示す隙間Uが小さくなるように弁棒軸心O2方向外方に一旦押し込んでおく。そして、弁棒4,5と弁体受け部材32,33との相対移動方向が図2、図3に示すように流路軸心O1方向となるように、各弁棒アセンブリの弁棒軸心O2回りの位相を合わせておく。これにより、ボール弁31を第1弁箱7の内部に入れると、ガイド溝37に連結ピン60の先端がスムーズに遊嵌する。そして、そのまま遊嵌合させていき、ボール弁31の嵌合凹部36と弁体受け部材32,33の各嵌合凸部34,34とを凹凸嵌合させる。
(4)第2弁箱8を第1弁箱7に組み付け、位置調整ボルト63を取り付ける。
【0036】
以上のように、弁棒4,5に対して弁体3を連れ回り可能かつ弁棒軸心O2との直交方向に直線移動可能に連結する連結機構56と、弁体3を弁棒軸心O2との直交方向における中立位置P1に付勢する付勢部材57と、弁箱2と弁体3との間で設けられ、弁体3が閉じるとき付勢部材57の付勢力に抗して弁体3を弁座18に押し付ける押し付け機構58と、を備える無摺動弁1によれば、次のような効果が奏される。
【0037】
弁体3と弁棒4,5の連結機構56として、弁棒4,5に対して弁体3を連れ回り可能かつ弁棒軸心O2との直交方向に直線移動可能に連結し、弁体3を弁座18に押し付ける押し付け機構58に関しては、弁箱2と弁体3との間に設けた。これにより、弁体3と弁棒4,5の連結機構56は簡単な構造で済み、従来のように、弁体に対して一方の弁棒を回転伝達可能に連結し、他方の弁棒を回転伝達不能に連結する必要がない。また、2つの弁棒の回転操作を別々に要することもないので、弁も小型にでき、開閉操作手順も簡略になる。
【0038】
そして、弁体3は、ボール弁31と、ボール弁31と一体回転するようにボール弁31および弁棒4,5に組み付けられる一対の弁体受け部材32,33と、を備え、弁箱2は、ボール弁挿入開口部15を有した第1弁箱7と、一方の流路端開口部28が形成され、ボール弁挿入開口部15の内周壁に内嵌する第2弁箱8と、を備える構成とすれば、ボール弁31と弁体受け部材32,33とをそれぞれ別々にボール弁挿入開口部15から第1弁箱7に入れ、第1弁箱7の内部で組み付けることができる。したがって、ボール弁挿入開口部15の径をボール弁31の直径よりも僅かに大きい程度に抑えることができ、第1弁箱7と第2弁箱8の構造設計の自由度が広がる。
【0039】
また、連結機構56として、弁体受け部材32,33に弁棒軸心O2との直交方向に沿って形成される連結溝59と、弁棒4,5に形成され、連れ回り可能な断面形状を有して連結溝59に遊嵌される連結ピン60と、を備えるものとし、付勢部材57を、連結ピン60のばね収容穴62に収容されて一端がばね収容穴62の穴底部に当接し他端が連結溝59の溝端面に当接するばね部材(圧縮コイルばね61)とすれば、ばね部材の組み付け構造が簡単となる。
【0040】
また、押し付け機構58として、位置調整可能に弁箱2に螺合された位置調整ボルト63と、弁体受け部材32,33に突設され位置調整ボルト63の先端に当接するボス部64と、を備える構成とすれば、弁座18への弁体3の押し付け力を簡単に調整できる。
【0041】
さらに、他方の流路端開口部20が形成され、第1弁箱7に取り付けられて弁座18の抜けを阻止する弁座押え部材19を備えたことにより、弁座18を簡単な組み付け作業で弁箱2に組み付けることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 無摺動弁(補修弁)
2 弁箱
3 弁体
4,5 弁棒
6 流路
7 第1弁箱
8 第2弁箱
11,12弁棒支持部
15 ボール弁挿入開口部
18 弁座
19 弁座押え部材
31 ボール弁
32,33弁体受け部材
34 嵌合凸部
35 平面部
36 嵌合凹部
37 ガイド溝
43 中間開度保持機構
45 サラばね
46 ばね調整部
48 スラスト受け部材
56 連結機構
57 付勢部材
58 押し付け機構
59 連結溝
60 連結ピン
61 圧縮コイルばね
62 ばね収容穴
63 位置調整ボルト
64 ボス部
O1 流路軸心
O2 弁棒軸心
P1 中立位置
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-02-24 
結審通知日 2021-03-03 
審決日 2021-03-31 
出願番号 特願2016-85469(P2016-85469)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (F16K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小岩 智明  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 長馬 望
関口 哲生
登録日 2020-09-07 
登録番号 特許第6759510号(P6759510)
発明の名称 無摺動弁  
代理人 町田 能章  
代理人 藤浪 一郎  
代理人 町田 能章  
代理人 藤浪 一郎  

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