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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01J 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01J 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01J 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01J 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01J |
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管理番号 | 1374134 |
審判番号 | 不服2019-9862 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-07-25 |
確定日 | 2021-05-14 |
事件の表示 | 特願2017-189151「排ガス浄化触媒」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月25日出願公開、特開2019- 63702〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年 9月28日の出願であって、平成31年 1月 8日付けで拒絶の理由が通知され、同年 3月 5日に意見書及び手続補正書が提出され、令和 1年 5月14日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年 7月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対し、当審において、令和 2年 7月14日付けで拒絶理由が通知され、同年 8月24日に意見書及び手続補正書が提出され(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)、これに対し、当審において、同年11月10日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年12月24日に意見書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(当審注:下線は当審が付した。) 「 【請求項1】 排ガス浄化触媒であって、 Al_(2)O_(3)からなる担体と、 前記担体の表面に担持された、酸素吸蔵能を有する金属酸化物からなる助触媒体と、 前記助触媒体の表面に選択的に担持された、Pt、Pd、又はRhの少なくともいずれか一種からなる貴金属粒子と、を有し、 前記助触媒体は、前記金属酸化物の一次粒子が集合して形成された、粒形状を呈し、 前記排ガス浄化触媒に含まれる前記貴金属粒子のうちの、STEM像のピクセル数の比による担持割合が95質量%以上の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されていることを特徴とする排ガス浄化触媒。 【請求項2】 前記金属酸化物は、CeO_(2)、CeO_(2)-ZrO_(2)、CeO_(2)-La_(2)O_(3)、又はCeO_(2)-ZrO_(2)-La_(2)O_(3)から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化触媒。 【請求項3】 前記貴金属粒子は、粒径が0.1?5nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。」 なお、便宜上、当拒絶理由通知において、本願の請求項1?3に係る発明のうちいずれか一つまたは複数の発明を、単に「本願発明」ということがある。 なお、本件補正により補正される前の本願の請求項1?3に係る発明は、令和 1年7月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものであった。 「【請求項1】 排ガス浄化触媒であって、 Al_(2)O_(3)からなる担体と、 前記担体の表面に担持された、酸素吸蔵能を有する金属酸化物からなる助触媒体と、 前記助触媒体の表面に選択的に担持された、Pt、Pd、又はRhの少なくともいずれか一種からなる貴金属粒子と、を有し、 前記助触媒体は、前記金属酸化物の一次粒子が集合して形成された、粒形状を呈し、 前記排ガス浄化触媒に含まれる前記貴金属粒子のうちの、95質量%以上の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されていることを特徴とする排ガス浄化触媒。 【請求項2】 前記金属酸化物は、CeO_(2)、CeO_(2)-ZrO_(2)、CeO_(2)-La_(2)O_(3)、又はCeO_(2)-ZrO_(2)-La_(2)O_(3)から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化触媒。 【請求項3】 前記貴金属粒子は、粒径が0.1?5nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。」 第3 当審が通知した拒絶理由の概要 1 令和 2年11月10日付けで当審が通知した最後の拒絶理由は、概略、次の理由を含むものである。 理由1(新規事項)下記のとおり、令和 2年 8月24日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 令和 2年 8月24日付け手続補正書でした補正は、補正前の請求項1における「前記排ガス浄化触媒に含まれる前記貴金属粒子のうちの、95質量%以上の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されている」との発明特定事項(以下、発明特定事項Aという。)を、「前記排ガス浄化触媒に含まれる前記貴金属粒子のうちの、STEM像のピクセル数の比による担持割合が95質量%以上の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されている」との発明特定事項(以下、発明特定事項A’という。)に変更するものである(当審注:下線は当審が付した。)。しかしながら、発明特定事項Aを発明特定事項A’に変更する補正は、本願当初明細書等に記載した事項との関係で、新たな技術的事項を導入するものであるといえる。したがって、令和 2年 8月24日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない。 理由2(サポート要件)下記のとおり、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 上記発明特定事項A’は、発明の詳細な説明に直接的に記載されていないし、発明特定事項A’は、技術常識を考慮しても、発明の詳細な説明に記載されていると同然ともいえない。よって、請求項1に係る発明及びこれを引用する請求項2?3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 理由3(明確性)下記のとおり、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 上記発明特定事項A’によって特定される請求項1に係る発明を、当業者が明確に把握することができない。してみれば、請求項1に係る発明及びこれを引用する請求項2?3に係る発明は、明確でない。 2 令和 2年 7月14日付けで当審が通知し令和 2年11月10日付け拒絶理由通知で留保した拒絶理由は、概略、次の理由を含むものである。 理由1(サポート要件)下記のとおり、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明及び技術常識に基づいて、「貴金属の担持量を増加させることなく、高温域及び低温域の双方における、三元触媒の触媒活性の低下の抑制を可能にした、排ガス浄化触媒及びその製造方法を提供する」(発明の詳細な説明の【0014】)という課題を解決できると当業者が認識する範囲のものとはいえない。請求項1を引用する請求項2-3についても同様である。 理由2(実施可能要件)下記のとおり、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 請求項1に係る発明は、「助触媒体は、…粒形状を呈し、前記排ガス浄化触媒に含まれる前記貴金属粒子のうちの、95質量%以上の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されている」(…は当審による省略を表す。)ことが特定されたものであるところ、発明の詳細な説明に記載の製造方法は、担体及び/又は担体の原料を、助触媒体及び/又は助触媒体の原料並びに貴金属粒子の原料と、同時に水熱反応に供する工程を含んでいることから、技術常識から、貴金属粒子が担体に担持される可能性を有するものである。この点、発明の詳細な説明には、排ガス浄化触媒に含まれる貴金属粒子のうち、助触媒体の表面に担持されているものの質量割合を測定し、その測定結果を示すことによって、上記製造方法によって95質量%以上の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されることを実証する試験結果は示されていない。そうすると、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができるように記載されたものでない。請求項1を引用する請求項2-3についても同様である。 理由4(新規性)この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由5(進歩性)この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2008-119629号公報 2.特開2015-112548号公報 第4 当審の判断 1 新規事項追加(令和 2年11月10日付けで当審が通知した拒絶理由の理由1)について (1)新規事項追加の理由について ア 令和 2年 8月24日付け手続補正書でした補正は、補正前の請求項1における「前記排ガス浄化触媒に含まれる前記貴金属粒子のうちの、95質量%以上の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されている」との発明特定事項(「発明特定事項A」)を、「前記排ガス浄化触媒に含まれる前記貴金属粒子のうちの、STEM像のピクセル数の比による担持割合が95質量%以上の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されている」との発明特定事項(「発明特定事項A’」)に変更するものである(当審注:下線は当審が付した。)。 イ ここで、本願の願書に最初に添付された明細書(以下、「本願当初明細書」という。)、特許請求の範囲又は図面(以下、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面を一括して「本願当初明細書等」という。)の記載を検討するに、本願当初明細書の段落【0017】には、「具体的には、前記排ガス浄化触媒に含まれる前記貴金属粒子(Z)のうちの、95質量%以上の前記貴金属粒子(Z)が前記助触媒体(Y)の表面に担持されているものとすることができる。」と記載されているものの、当該「95質量%以上」という担持割合が、「STEM像のピクセル数の比」により得られたものであることは記載されていない。その他、本願当初明細書等のいずれの箇所にも、発明特定事項A’は直接記載されていない。 ウ そこで、本願当初明細書等の記載及び技術常識に照らして、「95質量%以上」という担持割合が「STEM像のピクセル数の比」により得られたものであることが、本願当初明細書等に記載した事項との関係で、新たな技術的事項を導入するものであるかどうか、以下検討する。 エ まず、一般的に、STEM像のピクセル数の比により、質量%で表される元素の比を得ることができ、このことが通常行われる手法であるとの技術常識は見あたらない。 オ その上で、本願当初明細書等の記載をSTEMについての技術常識に照らして検討するに、本願当初明細書の段落【0020】及び【0084】には、実施例1で得られた排ガス浄化触媒について、Al、Ce、Pt、Rhの元素分布を確認するため、STEM-EDX分析を行い、この各元素の観察像を図5Aに示したことが記載され、当該図5Aには、下記の画像が示されている。 「【図5A】 」 カ 上記オ及び技術常識から、STEM-EDX分析によるSTEM像は、電子線を照射する方向から見た際の、画像を構成する最小単位であるピクセルを集めて形成した画像であって、当該ピクセルは、測定対象の物質中で当該ピクセルに対応する箇所に電子線を透過させた際の、所定の元素の検出結果を表すものであり、当該STEM像は、ピクセルごとにどの元素が存在しているかを表すものであるといえる。この際、技術常識から、STEMにおける電子線は広がりを有している以上、一つのピクセルは、物質中で電子線が透過した有限の体積を有する領域の検出結果を表すものであり、当該領域には、検出対象の元素が単一の原子としてではなく様々な量で存在し、様々な強度の信号として検出されうるといえる。そうすると、STEM像において、所定の元素が検出されたピクセルの数と、当該STEM像の撮像領域に含まれる物質中の当該元素の存在量は、必ずしも比例関係にあるとはいえないのであり、当該ピクセル数が、当該元素の存在量を表すものであるとはいえない。そうすると、本願当初明細書の段落【0020】及び【0084】並びに図5Aから、「重量%」で表される貴金属粒子の「担持割合」を「STEM像のピクセル数の比」によって表すことができるとはいえないし、まして、本願発明における「重量%」で表される貴金属粒子の「担持割合」が「STEM像のピクセル数の比」によって表されるものであることが示唆されているとはいえない。 キ また、本願当初明細書の段落【0039】には、「ここで、貴金属粒子(Z)による助触媒体(Y)の被覆率(面積%)とは、SEM又はTEMの電子顕微鏡によって排ガス浄化触媒を観察した場合に測定される、助触媒体(Y)が観察される領域の大きさ(ピクセル数)をP3とし、助触媒体(Y)上の貴金属粒子(Z)が観察される領域の大きさ(ピクセル数)をP4としたときの、[P4/(P3+P4)]×100の値に対応する。」と記載されている。このことは、STEM像により、貴金属粒子による助触媒体の被覆率(面積%)を算出することができることを示している。そうすると、当該段落【0039】には、「STEM像のピクセル数の比」によって、観察方向から見て貴金属粒子が助触媒体上に存在する領域の、貴金属粒子が存在する領域全体に対する、面積%で表される比、すなわち「面積%」で表される貴金属粒子の担持割合を表すことができることが示されているということができる。しかしながら、触媒において担持された貴金属粒子には様々な形状や粒子径のものが混在していることが技術常識であるから、「面積%」で表される貴金属粒子の担持割合と、「質量%」で表される貴金属粒子の担持割合は、異なる技術的意義を有するものである。そうすると、本願当初明細書に「面積%」で表される貴金属粒子の担持割合を「STEM像のピクセル数の比」によって表すことができることが記載されていることに基づいて、「重量%」で表される貴金属粒子の「担持割合」を「STEM像のピクセル数の比」によって表すことができ、さらに、本願発明における「重量%」で表される貴金属粒子の「担持割合」が「STEM像のピクセル数の比」によって表されるものであることが示唆されているとまではいえない。 ク その他、本願当初明細書等のいずれの記載を技術常識とともに検討しても、本願当初明細書等に記載の発明における「重量%」で表される貴金属粒子の「担持割合」が「STEM像のピクセル数の比」によって表されるものであることが示唆されているとはいえない。 ケ 以上から、発明特定事項Aを発明特定事項A’に変更する補正は、本願当初明細書等に記載した事項との関係で、新たな技術的事項を導入するものであるといえる。 コ したがって、令和 2年 8月24日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない。 (2)審判請求人の主張について ア 審判請求人は、令和 2年 8月24日付け意見書及び令和 2年12月24日付け意見書において、概略下記のように主張する(「…」は当審による省略を表す。)。 イ 令和 2年 8月24日付け意見書における主張 審判請求人は、概略下記のように主張する。 「(2) 本願明細書の段落[0084]?[0087]に記載しているように、実施例1?2で得られた排ガス浄化触媒の粒子が助触媒体の表面に選択的に担持されていることは、STEM像分析によって確認される。そして、STEM像が得られている場合において、担持割合をこのSTEM像のピクセル数によって算定できることは当業者であれば理解できるものである。 このことは、例えば本願明細書の段落[0039]において、助触媒体の表面を貴金属粒子が被覆する割合(被覆率)の算定の際に、電子顕微鏡像のピクセル数の割合を用いることが記載されていることにも現れている。 (3) 以上により、今般の補正は、当初明細書等の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、補正された事項が当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項であると認められるところ(特許実用新案審査基準第IV部第2章2「新規事項の判断に係る基本的な考え方」参照)、出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであるから、特許法(以下、単に「法」という。)第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 また、今般の補正は、補正の前後で特別な技術的特徴を変更するものでないことは明白であるため、法第17条の2第4項に規定する要件を満たす。」(第1頁第30?46行)(以下、「主張A」という。) ウ 令和 2年12月24日付け意見書における主張 審判請求人は、概略下記のように主張する。 「本願発明1は、以下の構成要件F1?F6に分説される。… F6: 前記排ガス浄化触媒に含まれる前記貴金属粒子のうちの、STEM像のピクセル数の比による担持割合が95質量%以上の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されている。 (2) 上記構成要件F6の内容は、排ガス浄化触媒に含まれる貴金属粒子が担持されている箇所の候補として担体(F2)と助触媒体(F3)とが存在するが、貴金属粒子の95質量%以上が助触媒体(F3)に担持されている、ということを意味するものである。言い換えれば、担体(F2)に担持されている貴金属粒子の割合は5質量%以下に留まることを意味するものである。 (3)ア このことは、本願当初明細書の段落[0076]において、『得られた排ガス浄化触媒Cは、RhもPtも担持していないγ-Al_(2)O_(3)と、Rh及びPtを担持した粒形状を呈するCeO_(2)の混相・・・であった。』との記載にも現れている。前記の記載は、担体(F2)としてのγ-Al_(2)O_(3)には、貴金属粒子(F4)としてのRhもPtも担持されていない一方で、助触媒体(F3)としてのCeO_(2)には、貴金属粒子(F4)としてのRhとPtが担持されていることを意味している。言い換えれば、貴金属粒子(F4)が全て助触媒体(F3)に担持されており、担体(F2)には担持されていないことを意味している。 なお、段落[0074]、[0075]にも同様の記載がされているが、上記と同じ主旨である。 そして、上記の点は、段落[0086]に記載されているように、図4A、図4B、及び図5AのSTEM像からも読み取ることができるものである。特に、図5Aによれば、RhやPtの像で検出された領域が、Alの像で検出された領域には全く重なりを有さない一方で、Ceの像で検出された領域に対して大きく重なっており、貴金属粒子が担体ではなく助触媒体に選択的に担持されていることが確認できる。」(第1頁第27行?第2頁第21行)(以下、「主張B」という。) 「(4)ア STEM像に基づいて画像のピクセル毎にどの元素が存在しているかを検出できることは、当業者において技術常識であり、審判官殿も理解されているところである。 そして、同一元素であれば、元素の個数比は質量比に一致することも、技術常識である。 イ 排ガス浄化触媒のSTEM像を分析することで、Al像から担体が露出している範囲(範囲A)を特定し、Ce像から助触媒体が露出している範囲(範囲B)を特定することが可能である。そして、範囲A内及び範囲B内における貴金属粒子の存在位置をRhやPtの信号に基づいて特定することが可能である。 つまり、範囲A内のRhの信号を示すピクセル数(na)と、範囲B内のRhの信号を示すピクセル数(nb)を検知することが可能である。PtやPdなどの他の貴金属粒子の候補についても同様である。 ウ そして、(3)イで上述したように、本発明に係る排ガス浄化触媒においては、貴金属粒子は担体や助触媒体に「内包」されることがなく、そのほとんどが助触媒体の「表面」に担持されているのであるから、STEM像のピクセル数に関する情報によって、貴金属粒子の相対的な量を検知することが可能となる。 つまり、Rhを例に挙げれば、範囲A内のRhの信号を示すピクセル数(na)と、範囲B内のRhの信号を示すピクセル数(nb)の比率は、そのまま、担体に担持されている貴金属粒子としてのRhと、助触媒体に担持されている貴金属粒子としてのRhの質量比に対応する。PtやPd等の他の貴金属粒子の構成元素についても、同様の演算により、担体に担持されている貴金属粒子の質量と、助触媒体に担持されている貴金属粒子の質量の比率を導出することが可能である。」(第3頁第7?17行)(以下、「主張C」という。) エ 審判請求人の主張についての判断 主張Aについては、本願当初明細書の段落【0084】?【0087】に実施例1?2で得られた排ガス浄化触媒の粒子が助触媒体の表面に選択的に担持されていることは、「重量%」で表される貴金属粒子の「担持割合」が「STEM像のピクセル数の比」によって表されるものであることは無関係であり、このことを根拠づけていない。また、審判請求人は「担持割合をこのSTEM像のピクセル数によって算定できることは当業者であれば理解できる」ことの根拠を示しておらず、上記(1)カに示したとおり、ピクセル数が元素の存在量を表すものであるとはいえない以上、「STEM像が得られている場合において、担持割合をこのSTEM像のピクセル数によって算定できることは当業者であれば理解できる」とはいえない。 主張Bについては、仮に、実施例3における排ガス浄化触媒が「RhもPtも担持していないγ-Al_(2)O_(3)と、Rh及びPtを担持した粒形状を呈するCeO_(2)の混相」であると記載されていることや、図5Aから実施例1において貴金属粒子が担体ではなく助触媒体に選択的に担持されていることが確認できたとしても、これらの実施例に関する事項と、「重量%」で表される貴金属粒子の「担持割合」が「STEM像のピクセル数の比」によって表されるものであることとは何ら関係がなく、このことを導き出すことができるものではない。 主張Cについては、上記(1)カに示したとおり、STEM像のピクセル数の比から「元素の個数比」を求めることはできない以上、ピクセル数から「元素の個数比」を求めることができることを前提とする主張Cは採用できない。また、審判請求人は「担体に担持されている貴金属粒子の質量と、助触媒体に担持されている貴金属粒子の質量の比率を導出することが可能である」(当審注:下線は当審による。以下同様。)と主張する一方、本願当初明細書等に記載された発明における「重量%」で表される貴金属粒子の「担持割合」が、明記がなくとも「STEM像のピクセル数の比」により求められるものであることが示唆されているということが、技術常識に照らして導かれることの根拠は示していない。そうすると、主張Cは、「重量%」で表される貴金属粒子の「担持割合」が「STEM像のピクセル数の比」によって表されるものであることを肯定するための主張として採用できない。 その他、「重量%」で表される貴金属粒子の「担持割合」が「STEM像のピクセル数の比」によって表されるものであることを根拠づける技術常識の存在は、令和 2年 8月24日付け意見書又は令和 2年12月24日付け意見書をみても推認できるものではないし、それを裏付ける証拠も見あたらない。 以上のとおりであるから、令和 2年 8月24日付け意見書及び令和 2年12月24日付け意見書における審判請求人の主張は採用できない。 (3)小括 以上のとおりであるから、令和 2年 8月24日の手続補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 2 実施可能要件違反(令和 2年 7月14日付けで当審が通知した拒絶理由の理由2)及びサポート要件違反(令和 2年11月10日付けで当審が通知した拒絶理由の理由2、令和 2年 7月14日付けで当審が通知した拒絶理由の理由1)について (1)実施可能要件違反である理由について 発明の詳細な説明には、請求項1に係る触媒の製造方法として、「本発明の排ガス浄化触媒は、前記助触媒体(Y)の原料と、前記貴金属粒子(Z)の原料を含む材料、又は、前記助触媒体(Y)と、前記貴金属粒子(Z)の原料を含む材料とを、100℃以上の水熱反応に付す工程を含んで製造される。かかる水熱反応(水熱合成)を利用することで、貴金属粒子(Z)を、助触媒体(Y)に対して選択的に担持させることができる。…なお、担体(X)については、担体(X)及び/又は担体(X)の原料を、上記の、助触媒体(Y)及び/又は助触媒体(Y)の原料、並びに貴金属粒子(Z)の原料と、同時に水熱反応に供すればよい。」(【0044】?【0045】)と記載されており、さらに、具体的な製造方法の例として、「RhもPtも担持していないγ-Al_(2)O_(3)と、Rh及びPtを担持した粒形状を呈するCeO_(2)の混相」からなる排ガス浄化触媒Cが実施例3に記載されている。 しかしながら、上記製造方法は、担体及び/又は担体の原料を、助触媒体及び/又は助触媒体の原料並びに貴金属粒子の原料と、同時に水熱反応に供する工程を含んでいることから、技術常識から、貴金属粒子が担体に担持される可能性を有するものである。この点、発明の詳細な説明には、排ガス浄化触媒に含まれる貴金属粒子のうち、助触媒体の表面に担持されているものの質量割合を「STEM像のピクセル数の比」により測定し、その測定結果を示すことによって、上記製造方法によって「STEM像のピクセル数の比による担持割合が95質量%以上」の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されることを実証する試験結果は示されていない。 そうすると、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。請求項1を引用する請求項2-3についても同様である。 (2)上記(1)の実施可能要件違反に関連するサポート要件違反について(令和 2年 7月14日付けで当審が通知) 上記(1)のとおり本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない以上、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明及び技術常識に基づいて、「貴金属の担持量を増加させることなく、高温域及び低温域の双方における、三元触媒の触媒活性の低下の抑制を可能にした、排ガス浄化触媒及びその製造方法を提供する」(発明の詳細な説明の【0014】)という課題を解決できると当業者が認識する範囲のものとはいえない。請求項1を引用する請求項2-3についても同様である。そうすると、請求項1?3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 (3)上記(1)及び(2)についての審判請求人の主張について 審判請求人は、令和 2年 8月24日付け意見書において、下記のように主張する。 「 (3) 本願明細書の段落[0067]?[0076]を参照すると、…実施例3の排ガス浄化触媒によれば、貴金属粒子としてのRhやPtは、助触媒体としてのCeO_(2)に対して選択的に担持され、担体としてのγ-Al_(2)O_(3)には担持されていないことが分かる。このことは、明らかに、95質量%以上の貴金属粒子が助触媒体に選択的に担持されていることを意味する。」(第2頁第第26?35行)(以下、「主張D」という。) 「 (5) 本願明細書の段落[0086]?[0087]には、図5A及び図5BのSTEM像を参照しながら、実施例1の排ガス浄化触媒では、助触媒体の表面に貴金属粒子が選択的に担持されている一方、比較例2の排ガス浄化触媒では、助触媒体の表面のみならず担体の表面にも貴金属粒子が担持されていることが説明されている。」(第3頁第8?11行)(以下、「主張E」という。) 「なお、下記図A1には、念の為に検証実験の結果を示す。 … 図A1は、比較例2に対応するPt-Rh/CA-IMと、実施例1に対応するPt-Rh/CA-HTのラマンプロファイルである。… 図A1によれば、比較例2に対応するPt-Rh/CA-IMは、実施例1に対応するPt-Rh/CA-HTと比べて、明らかに550?700cm^(-1)の範囲内に存在するラマンピークの強度が高く、前記比率(I_(CeO2) /I_(M-O-Ce))が高いことが分かる。つまり、比較例2は、実施例1と比べて、助触媒体に担持されていない、言い換えれば担体に担持された貴金属粒子の数が多いことが分かる。つまり、実施例1は、貴金属粒子が助触媒体に選択的に担持されていることが分かる。 ウ そして(4)で上述したように、これらの相違は、助触媒体と担体の原料と貴金属粒子の原料との混合物を水熱反応させているか、貴金属粒子を含浸法によって担持させているかで生じたものである。つまり、図A1の結果は、実施例3においても同様に貴金属粒子が助触媒体に選択的に担持されることを示すものである。」(第3頁第16行?第4頁第8行)(以下、「主張F」という。) 「(7) また、貴金属粒子が助触媒体に選択的に担持された実施例1?3の排ガス浄化触媒によれば、助触媒体のみならず担体にも貴金属粒子が担持された比較例1?2の排ガス浄化触媒と比べて、低温での触媒活性が高く、且つ高温域における触媒活性の低下が抑制されている点は、本願明細書の段落[0091]?[0093]、表1を参照すれば理解される。 そして、本願発明1に対応する実施例3の排ガス浄化触媒は、上述したように実施例1の製造方法とほぼ同様であって、本願明細書の段落[0067]?[0076]に記載されている。」(第4頁第9?16行)(以下、「主張G」という。) 上記主張Dについては、発明の詳細な説明の【0067】?【0076】に、「RhもPtも担持していないγ-Al_(2)O_(3)と、Rh及びPtを担持した粒形状を呈するCeO_(2)の混相(Al:Ce:Rh:Pt(モル比)=1:0.03:0.001:0.002)であった。」(段落【0076】)といった記載はあるものの、当該記載が「STEM像のピクセル数の比」による貴金属粒子の担持割合を求めた上でなされたものであることは記載されておらず、そうであるとも理解できない。そうすると、当該箇所の記載をもって、実施例3において本願発明に係る排ガス浄化触媒を製造できたことが実証されたとはいえないし、本願発明が、課題を解決できると当業者が認識できるものとして発明の詳細な説明に記載されたものであることが裏付けられたとはいえない。 上記主張Eについては、図5Aに示される実施例1のSTEM像からピクセル数を数え上げることは画像の解像度からみて困難であるし、そのうえ、上記1(1)カに示したとおり、そもそも「重量%」で表される貴金属粒子の「担持割合」を「STEM像のピクセル数の比」によって表すことができるとはいえない以上、図5Aの記載や、図5Aと図5B(比較例2)の対比から、本願発明に係る排ガス浄化触媒を製造できたことが実証されたとはいえないし、本願発明が、課題を解決できると当業者が認識できるものとして発明の詳細な説明に記載されたものであることが裏付けられたとはいえない。 上記主張Fについては、審判請求人が提示するラマンプロファイルは、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、当審からの令和 2年 7月14日付け拒絶理由通知後に提示された検証実験の結果にすぎないものであり、技術常識を示すものではない。また、当該ラマンプロファイルから、STEM像のピクセル数の比による貴金属粒子の重量%で表される担持割合を求めることができるとはいえない。そうすると、審判請求人が提示するラマンプロファイルにより、本願発明に係る排ガス浄化触媒を製造できたことが実証されたとはいえないし、本願発明が、課題を解決できると当業者が認識できるものとして発明の詳細な説明に記載されたものであることが裏付けられたとはいえない。 上記主張Gについては、実施例1?3の排ガス浄化触媒が、比較例1?2の排ガス浄化触媒と比べて、低温での触媒活性が高く、且つ高温域における触媒活性の低下が抑制されているという事項は、実施例1?3の排ガス浄化触媒が示す作用ないし効果にすぎず、当該事項から、STEM像のピクセル数の比による貴金属粒子の重量%で表される担持割合を求めることができるとはいえないのであるから、主張Gで指摘される事項により本願発明に係る排ガス浄化触媒を製造できたことが実証されたとはいえないし、本願発明が、課題を解決できると当業者が認識できるものとして発明の詳細な説明に記載されたものであることが裏付けられたとはいえない。 その他、審判請求人は、発明の詳細な説明の記載に基づき本願発明に係る排ガス浄化触媒を製造できたことを説明したり、本願発明が、課題を解決できると当業者が認識できるものとして発明の詳細な説明に記載されたものであることを裏付ける説明をしたりしておらず、それを裏付ける技術常識等の根拠も見当たらない。 そうすると、審判請求人の主張は採用できない。 (4)発明特定事項A’に起因するサポート要件違反について(令和 2年11月10日付けで当審が通知) 発明特定事項A’は、発明の詳細な説明に直接的に記載されていない。 また、上記1(1)に示したのと同様の検討により、発明特定事項A’は、技術常識を考慮しても、発明の詳細な説明に記載されていると同然ともいえない。 よって、請求項1に係る発明及びこれを引用する請求項2?3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 (5)小括 以上のとおりであるから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1?3に係る発明を実施することができるように記載したものでない。また、請求項1?3に係る発明は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものでない。 3 明確性違反(令和 2年11月10日付けで当審が通知した拒絶理由の理由3)について 発明特定事項A’について、上記1(1)カに示したとおり、「重量%」で表される貴金属粒子の「担持割合」を「STEM像のピクセル数の比」によって表すことができるとはいえない以上、発明特定事項A’によって特定される請求項1に係る発明を、当業者が明確に把握することができない。 してみれば、請求項1に係る発明及びこれを引用する請求項2?3に係る発明は、明確でない。 4 新規性欠如(令和 2年 7月14日付けで当審が通知した拒絶理由の理由4)について 上記3に示したとおり、本件補正により補正された請求項1に係る発明は、当業者が明確に把握することができないものである以上、引用文献1に記載された発明と、請求項1に係る発明とを正確に対比することは困難である。そこで、請求項1に係る発明の発明特定事項A’すなわち「前記排ガス浄化触媒に含まれる前記貴金属粒子のうちの、STEM像のピクセル数の比による担持割合が95質量%以上の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されている」が、「前記排ガス浄化触媒に含まれる前記貴金属粒子のうちの、任意の測定方法によって測定して95質量%以上の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されている」というものであるとみなした上での判断を示すこととする。(当審注:下線は当審による。) (1)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2008-119629号公報(以下、「引用文献1」という)には、次の記載がある。 a 「【0001】 本発明は、排気ガス浄化触媒及びその製造方法に関する。」 b 「【0008】 前記目的を達成するために、本発明に係る排気ガス浄化触媒は、貴金属粒子と該貴金属粒子を担持した担体とを有し、前記貴金属粒子の少なくとも一部が、前記担体における最外表面、又は最外表面から内方に向けて担体の径の10%以内の部位に配置されたこと特徴とする。」 c 「【0014】 [貴金属粒子] 貴金属粒子7は、特に限定されないが、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、及びRh(ロジウム)のうち少なくともいずれか一種が好ましい。また、後述するように、特にPtが好ましい。」 d 「【0015】 [担体] 担体3,5は、Ce(セリウム)を含む酸化物であることが好ましい。例えば、CeO_(2)、又はCeとZrとの複合酸化物が好ましい。このCeとZrとの複合酸化物としては、例えばCeZrO_(x)が好ましい。担体としてCeを含む酸化物を用いる理由は、Ce化合物は、酸素貯蔵能力(OSC機能)を有すると共に、貴金属粒子7、特にPt粒子と結合しやすいからである。 【0016】 また、担体は、一次粒子3又は二次粒子5のいずれの形態でも適用することができる。」 e 「【0025】 [金属酸化物] 次いで、貴金属粒子を担持した担体が金属酸化物中に配置されている状態について、図4を用いて説明する。 【0026】 この金属酸化物15は、少なくともAl(アルミニウム)を含む酸化物であり、例えばAl_(2)O_(3)が好ましい。図4では、金属酸化物15として複数のAl_(2)O_(3)粒子を示している。また、貴金属粒子7はPtであり、CeO_(2)の一次粒子3及び二次粒子5を担体とした場合を示している。 【0027】 金属酸化物15であるAl_(2)O_(3)粒子は、複数集合することによって細孔17を形成している。ここで、前記貴金属粒子7と該貴金属粒子7が担持された担体5とをユニット19とすると、個々のユニット19が金属酸化物15の細孔17中に配置されている。このように、複数のユニット19同士が金属酸化物15によって隔てて配置されており、矢印で示す排気ガスGが金属酸化物15の細孔17中に流入すると、前記ユニット19に接触する。ユニット19では、担体の外周側に貴金属粒子7が担持されているため、排気ガスGが、貴金属粒子7に効率的に接触することによって高い浄化作用を有する。このように、ユニット19を金属酸化物15の細孔17中に配置することにより、貴金属粒子7のシンタリングを抑制するだけでなく、担体同士の凝集も抑制することができる。」 f 「【0042】 [実施例1] (1)Pt/CeO_(2)ユニットの調製 まず、一次粒子の粒子径が26nmのCeO_(2)ゾルにジニトロジアミン白金を投入し、一昼夜撹拌した。これにより、Ptからなる貴金属粒子を、CeO_(2)からなる担体に担持したPt/CeO_(2)ユニットを調製した。 【0043】 (2)無機Al塩による包接 次に、ブロックベーマイトを水溶媒に溶かし、1時間撹拌した。このベーマイト溶液に、(1)で調製したPt/CeO_(2)溶液を投入し、さらに1時間撹拌した。この溶液をエバポレーターにて減圧乾燥した後、乾燥機中で150℃の温度で1時間乾燥した。この乾燥によって得られた粉末を空気中にて、550℃の温度で3時間の間、炉内で焼成し、Pt/CeO_(2)/Al_(2)O_(3)触媒粉末を得た。このPt/CeO_(2)/Al_(2)O_(3)触媒粉末は、Ptからなる貴金属粒子と、CeO_(2)からなる担体と、Al_(2)O_(3)からなる金属酸化物とから構成されている。 【0044】 (3)ハニカム担体への塗布 (2)にて得られた触媒粉末を180g、ベーマイトを20g、水を290g、及び、10gの10wt%硝酸をアルミナ製磁性ポットに投入し、アルミナボールとともに、混合粉砕し、触媒スラリーを得た。この触媒スラリーを、コージェライト製ハニカム担体に塗布した。このコージェライト製ハニカム担体は、400セル、6ミル、容量が0.119Lであった。次いで、余剰スラリーを空気流にて除去し、120℃で乾燥し、400℃の空気気流中にて焼成することにより、ハニカム担体1L当たりで、200gの触媒粉末が塗布された触媒ハニカム体を得た。 【0045】 以下、下記表1の内容に基づいて、実施例2?比較例5を実施した。 【表1】 【0046】 [実施例2] 実施例2においては、実施例1のCeO_(2)ゾルに代えて、二次粒子のCeO_(2)を含むCeO_(2)ゾルを用いた。このCeO_(2)ゾル中のCeO_(2)粒子は、一次粒子の粒子径が2nmであり、二次粒子の粒子径は26nmであった。これ以外の条件については、実施例1と同様にして、触媒ハニカム体を得た。」 g 「 」(図4) (イ)上記(ア)から、引用文献1には、実施例2に基づく発明として、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「排気ガス浄化触媒であって、Al_(2)O_(3)粒子である金属酸化物15と、前記金属酸化物15の細孔17中に配置された、CeO_(2)からなり酸素貯蔵能力(OSC機能)を有する担体5と、前記担体5に担持されたPtからなる貴金属粒子7と、を有し、前記担体5は、粒子径が26nmの二次粒子である、排気ガス浄化触媒。」 イ 引用文献2 (ア)本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2015-112548号公報(以下、「引用文献2」という)には、次の記載がある。 a 「【0001】 本発明は、酸素吸蔵放出能(OSC)を有する材料(以下、「OSC材料」という)、特に、酸素放出速度定数が大きいOSC材料に関する。」 b 「【0066】 [実施例9] (1)イオン交換水(1300ml)に硝酸セリウム溶液(350g:CeO_(2)として20重量%)、オキシ硝酸ジルコニウム溶液(200g:ZrO_(2)として10重量%)、硝酸ランタン溶液(20g:La_(2)O_(3)として10重量%)、硝酸ネオジム溶液(30g:Nd_(2)O_(3)として10重量%)、硝酸プラセオジウム溶液(50g:Pr_(6)O_(11)として10重量%)、及びPVP K-30(0.1g)を添加し、攪拌して混合溶液を調製した。混合溶液を90?95℃に加熱した後、尿素をpHが11となるまで添加し、共沈物を得た。これに、ヒドラジン(35g)及びL-グルタミン酸水素ナトリウム-水和物(12g)を添加し、90?95℃で24時間攪拌した。得られた共沈物をろ過し、純水で洗浄し、110℃で乾燥した。その後、大気中800℃で5時間焼成し、Ce-Zr-La-Nd-Pr複合酸化物(以下、「OSC材料k」という)(100g)を得た。 OSC材料kの400℃での酸素放出速度定数は2.201sec^(-1)であった。 【0067】 (2)OSC材料k(49.55g)をイオン交換水(400ml)に分散させ、これにジニトロジアミン白金硝酸溶液(9g:Ptとして5重量%)を投入し、OSC材料kに吸着担持させた。次に、吸引ろ過で水溶液を除去し、ろ液をICP発光分光法で分析したところ、Ptの担持効率は100%であった。…」 (イ)上記(ア)から、引用文献2には、下記の技術的事項が記載されている。 「Ce-Zr-La-Nd-Pr複合酸化物からなるOSC材料をイオン交換水に分散させ、これにジニトロジアミン白金硝酸溶液を投入し、OSC材料に吸着担持させたところ、ICP発光分光法による分析では、Ptの担持効率は100%であった。」 (2)対比・判断 (2-1)請求項1に係る発明及び引用発明1について ア 引用発明1の「排気ガス浄化触媒」、「CeO_(2)からなり酸素貯蔵能力(OSC機能)を有する担体5」、「前記担体5に担持されたPtからなる貴金属粒子7」は、それぞれ、請求項1に係る発明の「排ガス浄化触媒」、「酸素吸蔵能を有する金属酸化物からなる助触媒体」、「前記助触媒体の表面に」「担持された、Pt、Pd、又はRhの少なくともいずれか一種からなる貴金属粒子」に相当する。また、引用発明1の「Al_(2)O_(3)粒子である金属酸化物15」の細孔17中に担体5が配置されていることから、引用発明1の「Al_(2)O_(3)粒子である金属酸化物15」は、請求項1に係る発明の「Al_(2)O_(3)からなる担体」に相当し、引用発明1の「CeO_(2)からなり酸素貯蔵能力(OSC機能)を有する担体5」は、請求項1に係る発明の、「前記担体の表面に担持された」助触媒体に相当する。また、技術常識から二次粒子は一次粒子が集合して形成されているものであるから、引用発明1において「前記担体5は、粒子径が26nmの二次粒子である」ことは、請求項1に係る発明において「前記助触媒体は、前記金属酸化物の一次粒子が集合して形成された、粒形状を呈し」ていることに相当する。 イ そうすると、請求項1に係る発明と引用文献1に係る発明との一致点及び相違点は、下記の通りである。 <一致点> 排ガス浄化触媒であって、 Al_(2)O_(3)からなる担体と、 前記担体の表面に担持された、酸素吸蔵能を有する金属酸化物からなる助触媒体と、 前記助触媒体の表面に担持された、Pt、Pd、又はRhの少なくともいずれか一種からなる貴金属粒子と、を有し、 前記助触媒体は、前記金属酸化物の一次粒子が集合して形成された、粒形状を呈している、排ガス浄化触媒。 <相違点1> 請求項1に係る発明は、貴金属粒子が、助触媒体の表面に選択的に担持され、排ガス浄化触媒に含まれる前記貴金属粒子のうちの、いずれかの測定方法によって測定して95質量%以上の前記貴金属粒子が前記助触媒体の表面に担持されているのに対し、引用発明1はこの点が不明である点。 ウ 上記<相違点1>に係る判断 上記(1)ア(ア)fから、引用発明1において、Ptからなる貴金属粒子は、CeO_(2)ゾルにジニトロジアミン白金を投入し、一昼夜攪拌することでCeO_(2)からなる担体に担持されたものであり、引用発明1に係る排気ガス浄化触媒は、このようにして調整した調製したPt/CeO_(2)溶液をブロックベーマイト水溶液に投入して攪拌し、乾燥、焼成することで製造されたものである。ここで、引用文献2に記載された(1)イ(イ)の技術的事項から、ジニトロジアミン白金を用いて酸化セリウム系のOSC材料にPtを吸着担持させると、ICP発光分光法による分析では、Ptの担持効率は100%となると認められ、これは溶液からCeO_(2)へのPtの担持効率が極めて高いことを示すものである。そうすると、引用発明1においても、CeO_(2)からなり酸素貯蔵能力(OSC機能)を有する担体5に対するPtの担持効率は100%程度となり、それにより、当該担体5の表面にPtからなる貴金属粒子7が選択的に担持され、いずれかの測定方法によって測定して95質量%以上のPtからなる貴金属粒子7が前記担体5の表面に担持されている蓋然性が極めて高い。 してみれば、上記<相違点1>は、実質的な相違点ではない。 エ 小括 以上のことから、請求項1に係る発明と引用発明1とを対比した際に相違点がなく、請求項1に係る発明は引用発明1である。 (2-2)請求項2に係る発明及び引用発明1について 引用発明1において「金属酸化物15」が「CeO_(2)からな」ることは、「前記金属酸化物は、CeO_(2)、CeO_(2)-ZrO_(2)、CeO_(2)-La_(2)O_(3)、又はCeO_(2)-ZrO_(2)-La_(2)O_(3)から選ばれる一種又は二種以上である」ことに相当する。 そうすると、請求項2に係る発明と引用発明1とを対比した際に新たな相違点がなく、請求項2に係る発明は引用発明1である。 (2-3)請求項3に係る発明と引用発明1について 引用発明1における貴金属粒子7は、上記(1)ア(ア)fの表1の記載から、耐久後の粒径が3.9nmであるから、請求項3に記載の発明と同じく「粒径が0.1?5nmである」と解される。 そうすると、請求項3に係る発明と引用発明1とを対比した際に新たな相違点がなく、請求項3に係る発明は引用発明1である。 (3)審判請求人の主張について 審判請求人は、令和 2年 8月24日付け意見書において、令和 2年 7月14日付け拒絶理由通知書において通知した拒絶理由の理由4(新規性)について下記のとおり主張している。 ア 「これに対し、引用発明1は、(2)アで審判長殿が認定されたように、CeO_(2)ゾルにジニトロジアミン白金を投入し、一昼夜攪拌することで、CeO_(2)からなる担体にPtを担持させた状態のPt/CeO_(2)溶液を得た後、このPt/CeO_(2)溶液をブロックベーマイト水溶液に投入して攪拌し、乾燥、焼成して得られたものである。つまり、引用発明1の方法では、Pt/CeO_(2)溶液をそのままベーマイト水溶液に投入して攪拌し、乾燥、焼成しているのであるから、Pt/CeO_(2)溶液内においてCeO_(2)からなる担体に担持されたPtの一部が、ベーマイト側、言い換えれば焼成後のAl_(2)O_(3)側に担持される可能性は否定できない。」(第5頁第26?33行)(以下、「主張H」という。) イ 「イ 更に、アで言及した引用文献2の段落[0066]?[0067]によれば、『ジニトロジアミン白金硝酸溶液を投入し、OSC材料kに吸着担持させる』工程については、どのような方法でどの程度の時間にわたって処理を行ったかについては特定されていない。つまり、引用文献2の前記箇所では、そもそも『Ptの担持効率が100%』となる程度にまで『OSC材料kにジニトロジアミン白金硝酸溶液を吸着担持させる』処理を意図的に実行した可能性があり得る。 これに対し、引用発明1の方法では、(2)アにおいて言及しているように、単に『CeO_(2)ゾルにジニトロジアミン白金を投入して、一昼夜撹拌した』とあるだけである。よって、引用文献2に『Ptの担持効率が100%』という記載があることをもって、引用発明1の方法でも、同様に100%のPtがCeO_(2)に担持されたとまで認めることはできない。つまり、引用発明1において、ベーマイト水溶液に投入されるPt/CeO_(2)溶液内には、CeO_(2)に担持されずに液中に残留していたPtが存在している可能性が否定できない。このような状態でPt/CeO_(2)溶液をベーマイト水溶液に投入して攪拌し、乾燥、焼成すると、ベーマイト由来のAl_(2)O_(3)側にPtが担持される蓋然性は高い。」(第5頁第34?47行)(以下、「主張I」という。) ウ 上記主張Hについて、審判請求人は、引用発明1の方法では、「Pt/CeO_(2)溶液内においてCeO_(2)からなる担体に担持されたPtの一部が、ベーマイト側、言い換えれば焼成後のAl_(2)O_(3)側に担持される可能性」が否定できないと主張している。しかしながら、審判請求人は、具体的にいかなる機構により、一旦CeO_(2)からなる担体に担持されたPtが、当該担体から離れて、Al_(2)O_(3)粒子に担持される可能性があるのかを説明しておらず、そのような可能性が想定される根拠は不明である。ここで、引用文献1には、「担体としてCeを含む酸化物を用いる理由は、Ce化合物は、酸素貯蔵能力(OSC機能)を有すると共に、貴金属粒子7、特にPt粒子と結合しやすいからである。」(段落【0015】)と記載され、一旦CeO_(2)からなる担体に担持されたPtは、結合力により担体から離れにくいことが示唆されている。そうすると、当該記載に反して、一旦CeO_(2)からなる担体に担持されたPtが、当該担体から離れて、Al_(2)O_(3)粒子に担持される可能性を具体的に想定することができない。 さらに、量的な点として、発明特定事項A’は、貴金属粒子の100%が助触媒体の表面に担持されていることを特定するものではなく、貴金属粒子の一定量はAl_(2)O_(3)粒子の表面に担持されていてもよいことを特定しているのであるから、一旦CeO_(2)からなる担体に担持されたPtが、当該担体から離れて、Al_(2)O_(3)粒子に担持されることに起因して、引用発明1が上記の発明特定事項A’を満たさないとすれば、一端CeO_(2)からなる担体に担持された、結合力により担体から離れにくいとされるPtの相当量が、当該担体から離れて、Al_(2)O_(3)粒子に担持されることが必要である。そして、一旦CeO_(2)からなる担体に担持されたPtが、当該担体から離れて、Al_(2)O_(3)粒子に担持される可能性を具体的に想定することができない以上、そのような相当量が担体から離れてAl_(2)O_(3)粒子に担持されるとはいえないし、そのようなことが起こるか否か真偽不明であるともいえない。 してみれば、上記主張Hを検討しても、上記(2)に示した判断を覆す根拠は見いだせない。 エ 上記主張Iについて、上記(2)(2-1)ウに記載したとおり、引用文献2には、実施例として、触媒を製造する方法の一例を説明する中で、「Ptの担持効率は100%であった」と記載されており、これは溶液からCeO_(2)へのPtの担持効率が極めて高いことを示すものである。一方、仮に、引用発明1において、ベーマイト水溶液に投入されるPt/CeO_(2)溶液内に、CeO_(2)に担持されずに液中に残留していたPtが一部存在する可能性が実際にあったとしても、発明特定事項A’は、貴金属粒子の100%が助触媒体の表面に担持されていることを特定するものではなく、貴金属粒子の一部はAl_(2)O_(3)粒子に担持されていてもよいのであるから、引用発明1が発明特定事項A’を満たさないためには、Ptの相当量がCeO_(2)に担持されずに液中に残留し、その後、当該Ptの相当量がCeO_(2)からなる担体ではなくAl_(2)O_(3)粒子に担持されることが必要である。そして、このことが、溶液からCeO_(2)へのPtの担持効率が極めて高いにもかかかわらず実際に起こる可能性について、審判請求人は説明していないし、当審においてもその根拠を見いだせず、そのような可能性を具体的に想定することができない。そうすると、そのような相当量が液中に残留したのちAl_(2)O_(3)粒子に担持されるとはいえないし、そのようなことが起こるか否か真偽不明であるともいえない。 してみれば、上記主張Iを検討しても、上記(2)に示した判断を覆す根拠は見いだせない。 オ 以上のとおりであるから、令和 2年 7月14日付け拒絶理由通知書において通知した理由4(新規性)についての審判請求人の主張は採用できない。 (4)小括 以上のとおりであるから、請求項1乃至3に係る発明は、引用文献1に記載された発明である。 5 進歩性欠如(令和 2年 7月14日付けで当審が通知した拒絶理由の理由5)について (1)請求項1に係る発明及び引用発明1について 請求項1に係る発明に包含される発明のうち、「Pt、Pd、又はRhの少なくともいずれか一種からなる貴金属粒子」として「Pd又はRhの少なくともいずれか一種からなる貴金属粒子」を有している発明(請求項1’発明)は、Pd又はRhの少なくともいずれか一種からなる貴金属粒子を有するのに対し、引用発明1はPd及びRhのいずれの貴金属粒子も有さない点(相違点2)において、両者は相違する。 相違点2について、上記4(1)ア(ア)cの記載から、引用発明1において、Ptに替えて、その一部又は全部としてPd又はRhを用いることは、当業者が容易に想到し得たことであり、そのようにして得られる発明は請求項1’発明であり、請求項1に係る発明である。 してみれば、請求項1に係る発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)請求項2に係る発明及び引用発明1について 請求項2に係る発明に包含される発明のうち、「CeO_(2)、CeO_(2)-ZrO_(2)、CeO_(2)-La_(2)O_(3)、又はCeO_(2)-ZrO_(2)-La_(2)O_(3)から選ばれる一種又は二種以上である」金属酸化物として「CeO_(2)-ZrO_(2)、CeO_(2)-La_(2)O_(3)、又はCeO_(2)-ZrO_(2)-La_(2)O_(3)から選ばれる一種又は二種以上」を有している発明(請求項2’発明)は、CeO_(2)-ZrO_(2)、CeO_(2)-La_(2)O_(3)、又はCeO_(2)-ZrO_(2)-La_(2)O_(3)から選ばれる一種又は二種以上からなる金属酸化物を有するのに対し、引用発明1はCeO_(2)-ZrO_(2)、CeO_(2)-La_(2)O_(3)、又はCeO_(2)-ZrO_(2)-La_(2)O_(3)から選ばれる一種又は二種以上からなる金属酸化物を有さない点(相違点3)において、両者は相違する。 相違点3について、上記4(1)ア(ア)dの記載から、引用発明1において、CeO_(2)に替えてCeZrO_(x)(CeO_(2)-ZrO_(2)に相当)を用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。また、酸素貯蔵能力(OSC機能)を有する「Ce(セリウム)を含む酸化物」として、CeO_(2)-La_(2)O_(3)やCeO_(2)-ZrO_(2)-La_(2)O_(3)も周知であるから、CeO_(2)に替えてこれらのいずれかを用いることも、当業者が容易に想到し得たことである。そして、このようにして得られる発明は、請求項2’発明であり、請求項2に係る発明である。 してみれば、請求項2に係る発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)請求項3に係る発明及び引用発明1について 請求項3に係る発明は、貴金属粒子の粒径が「0.1?5nm」であるところ、引用発明1は、貴金属粒子の粒径が不明である点(相違点4)で、両者は相違する。 相違点4について、排気ガス浄化触媒の技術分野において触媒としての貴金属粒子の粒径を調節することは慣用技術であるから、引用発明1において貴金属粒子の粒径を調節して0.1?5nmのいずれかの値とすることは、設計事項として当業者が容易になし得たことである。 してみれば、請求項3に係る発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)小括 以上のとおりであるから、請求項1乃至3に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび したがって、本願は、新規事項の追加(特許法第17条の2第3項)、実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)、サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)、明確性違反(特許法第36条第6項第2号)、新規性欠如(特許法第29条第1項第3号)及び進歩性欠如(特許法第29条第2項)により拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-03-09 |
結審通知日 | 2021-03-10 |
審決日 | 2021-03-30 |
出願番号 | 特願2017-189151(P2017-189151) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(B01J)
P 1 8・ 536- WZ (B01J) P 1 8・ 121- WZ (B01J) P 1 8・ 113- WZ (B01J) P 1 8・ 55- WZ (B01J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 壷内 信吾 |
特許庁審判長 |
菊地 則義 |
特許庁審判官 |
岡田 隆介 後藤 政博 |
発明の名称 | 排ガス浄化触媒 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |