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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1374180
審判番号 不服2020-6347  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-11 
確定日 2021-05-13 
事件の表示 特願2019- 31374号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月16日出願公開、特開2019- 72627号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月25日の出願であって、令和1年10月8日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたところ、令和2年2月7日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年5月11日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和2年5月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年5月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正は、明細書及び特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前の令和1年12月13日付けの手続補正書において、

「【請求項1】
遊技者に有利な特別遊技状態にするかの判定を行う判定手段と、
前記判定手段による判定の結果に基づいて前記特別遊技状態に制御する特別遊技状態制御手段と、
所定の演出手段を用いて演出を実行可能な演出実行手段と、を備え、
前記演出実行手段は、前記判定手段による判定の結果に基づいて、演出の実行タイミングを示唆する時間演出を行うことが可能であり、
前記時間演出は、前記特別遊技状態になることを期待させる演出である遊技機であって、
前記演出実行手段は、前記時間演出が実行されることを事前に示唆する示唆画像の表示を含む前兆演出を実行可能であり、
前記前兆演出が実行されてから前記時間演出が実行される場合と、前記前兆演出が実行されることなく前記時間演出が実行される場合とで、前記特別遊技状態になる期待度が異なり、
前記演出実行手段は、
前記前兆演出とは異なる種類の演出であって、前記時間演出が実行されることを示唆する他の前兆演出を実行することが可能であり、
前記示唆画像を表示することなく前記他の前兆演出を実行可能であることを特徴とする遊技機。」

とあったものを、

「【請求項1】
A 遊技者に有利な特別遊技状態にするかの判定を行う判定手段と、
B 前記判定手段による判定の結果に基づいて前記特別遊技状態に制御する特別遊技状態制御手段と、
C 所定の演出手段を用いて演出を実行可能な演出実行手段と、を備え、
D 前記演出実行手段は、前記判定手段による判定の結果に基づいて、演出の実行タイミングを示唆する時間演出を行うことが可能であり、
E 前記時間演出は、前記特別遊技状態になることを期待させる演出である遊技機であって、
F 前記演出実行手段は、前記時間演出が実行されることを事前に示唆する示唆画像の表示を含む前兆演出を実行可能であり、
G 前記前兆演出が実行されてから前記時間演出が実行される場合と、前記前兆演出が実行されることなく前記時間演出が実行される場合とで、前記特別遊技状態になる期待度が異なり、
H 前記演出実行手段は、
前記前兆演出の表示態様違いの演出ではなく前記前兆演出とは異なる種類の演出であって、前記時間演出が実行されることを示唆する他の前兆演出を実行することが可能であり、
I 前記前兆演出を何れの表示態様でも行うことなく前記他の前兆演出を実行可能であることを特徴とする遊技機。」

と補正することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。記号A?Iは、分説するため当審で付した。)。

(2)請求項1に係る前記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記前兆演出とは異なる種類の演出であって、前記時間演出が実行されることを示唆する他の前兆演出」に関して、「前記前兆演出の表示態様違いの演出ではなく」との記載を付加する補正(以下、「補正事項1」という。)と、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記他の前兆演出」の「実行」に関して、「前記示唆画像を表示することなく」との記載を「前記前兆演出を何れの表示態様でも行うことなく」との記載とする補正(以下、「補正事項2」という。)。

2 補正の適否について
2-1 新規事項の追加
(1)補正事項1、補正事項2の根拠について
前記補正事項2については、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0289】、【0312】?【0314】等に基づいたものであると認められる。
一方、補正事項1における「前記前兆演出の表示態様違いの演出ではなく」との記載の「表示態様違い」について、本件補正後の請求項1には具体的な記載がない。
そして、「前兆演出」の「表示態様」という文言のみからでは、「表示態様」には、表示される色、形状、大きさ、文字などが含まれると解するのが相当であるから、本件補正後の「表示態様違いの演出」には、表示される色、形状、大きさ、文字などが「違」う「演出」が含まれると認められる。
そこで、当初明細書等をみると、補正事項1と関連する記載として以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。

「【0276】
次に、前兆演出の抽選について図33に基づいて説明する。前兆演出には、「用意! 」の文字画像G99(図44参照)を青色で表示する青色前兆演出(第1の前兆演出) と、「用意! 」の文字画像G99を赤色で表示する赤色前兆演出(第2の前兆演出)とがある。」

「【0308】
なお、前兆演出において表示される「用意! 」の文字画像G99は、青色で表示される場合と赤色で表示される場合とがある。上述したように、「用意! 」の文字画像が赤色で表示される赤色前兆演出の方が、青色で表示される青色前兆演出よりも、その後に大当たり期待度が高い演出パターンの時間演出が実行され易い(図33参照)。」

(2)当審の判断
当初明細書等の【0276】、【0308】の記載を勘案すると、当初明細書等には、請求項1の「表示態様違いの演出」に関連して、文字画像の「色」が「違」う「演出」は記載されているものの、表示される形状、大きさや文字が「違」う「演出」などについて記載されているということはできない。
なお、審判請求人も、審判請求書の「2.補正の説明」において、本件補正後の請求項1の「表示態様違い」について、「ここで、青色前兆演出と赤色前兆演出のように、どちらも「「用意!」の文字画像G99を表示する前兆演出」であるものの、互いに文字画像の表示色が異なっているようなものを「表示態様違いの演出」と言い、」と主張している。
したがって、補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

2-2 補正の目的について
前記2-1で検討したとおり、仮に、前記補正事項1における「表示態様違いの演出」が文字画像の「色」が「違」う「演出」のみを意味するものであると認定して、以下検討する。
補正事項1は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記前兆演出とは異なる種類の演出であって、前記時間演出が実行されることを示唆する他の前兆演出」に関して、「前記前兆演出の表示態様違いの演出ではなく」との限定を付加するものである。
また、補正事項2は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記他の前兆演出」の「実行」に関して、「前記示唆画像を表示することなく」との記載を、「前記前兆演出を何れの表示態様でも行うことなく」との記載とし、「示唆画像」を含む「前兆演出を何れの表示態様でも行うこと」がないことを特定することにより、「前記他の前兆演出」の「実行」態様を限定するものである。
そして、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

2-3 独立特許要件について
前記2-2で検討したとおりであるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)についてさらに検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記「1 補正の内容」において示した次のとおりのものである(A?Iは、当審で分説して付与した。)。

(本願補正発明)
「【請求項1】
A 遊技者に有利な特別遊技状態にするかの判定を行う判定手段と、
B 前記判定手段による判定の結果に基づいて前記特別遊技状態に制御する特別遊技状態制御手段と、
C 所定の演出手段を用いて演出を実行可能な演出実行手段と、を備え、
D 前記演出実行手段は、前記判定手段による判定の結果に基づいて、演出の実行タイミングを示唆する時間演出を行うことが可能であり、
E 前記時間演出は、前記特別遊技状態になることを期待させる演出である遊技機であって、
F 前記演出実行手段は、前記時間演出が実行されることを事前に示唆する示唆画像の表示を含む前兆演出を実行可能であり、
G 前記前兆演出が実行されてから前記時間演出が実行される場合と、前記前兆演出が実行されることなく前記時間演出が実行される場合とで、前記特別遊技状態になる期待度が異なり、
H 前記演出実行手段は、
前記前兆演出の表示態様違いの演出ではなく前記前兆演出とは異なる種類の演出であって、前記時間演出が実行されることを示唆する他の前兆演出を実行することが可能であり、
I 前記前兆演出を何れの表示態様でも行うことなく前記他の前兆演出を実行可能であることを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献1に記載された発明について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2015-211762号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「遊技機」の発明に関し、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同じ。)。

ア 「【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。」

イ 「【0060】
図2は、主基板(遊技制御基板)31における回路構成の一例を示すブロック図である。なお、図2は、払出制御基板37および演出制御基板80等も示されている。主基板31には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する遊技制御用マイクロコンピュータ(遊技制御手段に相当)560が搭載されている。遊技制御用マイクロコンピュータ560は、ゲーム制御(遊技進行制御)用のプログラム等を記憶するROM54、ワークメモリとして使用される記憶手段としてのRAM55、プログラムに従って制御動作を行うCPU56およびI/Oポート部57を含む。この実施の形態では、ROM54およびRAM55は遊技制御用マイクロコンピュータ560に内蔵されている。
・・・・・
【0069】
この実施の形態では、演出制御基板80に搭載されている演出制御手段(演出制御用マイクロコンピュータで構成される。)が、中継基板77を介して遊技制御用マイクロコンピュータ560から演出内容を指示する演出制御コマンドを受信し、演出図柄を可変表示する演出表示装置9の表示制御を行う。
・・・・・
【0072】
演出制御基板80は、演出制御用CPU101、および演出図柄プロセスフラグ等の演出に関する情報を記憶するRAMを含む演出制御用マイクロコンピュータ100を搭載している。なお、RAMは外付けであってもよい。この実施の形態では、演出制御用マイクロコンピュータ100におけるRAMは電源バックアップされていない。演出制御基板80において、演出制御用CPU101は、内蔵または外付けのROM(図示せず)に格納されたプログラムに従って動作し、中継基板77を介して入力される主基板31からの取込信号(演出制御INT信号)に応じて、入力ドライバ102および入力ポート103を介して演出制御コマンドを受信する。また、演出制御用CPU101は、演出制御コマンドにもとづいて、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に演出表示装置9の表示制御を行わせる。
・・・・・
【0109】
次いで、CPU56は、特別図柄の変動に同期する演出図柄に関する演出制御コマンドを演出制御用マイクロコンピュータ100に対して送信する処理を行う(演出図柄コマンド制御処理:ステップS30)。なお、演出図柄の変動が特別図柄の変動に同期するとは、変動時間(可変表示期間)が同じであることを意味する。」

ウ 「【0165】
図13および図14は、遊技制御用マイクロコンピュータ560が送信する演出制御コマンドの内容の一例を示す説明図である。図13および図14に示す例において、コマンド80XX(H)は、特別図柄の可変表示に対応して演出表示装置9において可変表示される演出図柄の変動パターンを指定する演出制御コマンド(変動パターンコマンド)である(それぞれ変動パターンXXに対応)。つまり、使用されうる変動パターンのそれぞれに対して一意な番号を付した場合に、その番号で特定される変動パターンのそれぞれに対応する変動パターンコマンドがある。なお、「(H)」は16進数であることを示す。また、変動パターンを指定する演出制御コマンドは、変動開始を指定するためのコマンドでもある。従って、演出制御用マイクロコンピュータ100は、コマンド80XX(H)を受信すると、演出表示装置9において演出図柄の可変表示を開始するように制御する。
・・・・・
【0171】
コマンドA001,A002(H)は、ファンファーレ画面を表示すること、すなわち大当り遊技の開始を指定する演出制御コマンド(大当り開始指定コマンド:ファンファーレ指定コマンド)である。この実施の形態では、大当りの種類に応じて、大当り開始指定コマンドまたは小当り/突然確変大当り開始指定コマンドが用いられる。具体的には、「通常大当り」や「確変大当り」である場合には大当り開始指定コマンド(A001(H))が用いられ、「突然確変大当り」や「小当り」である場合には小当り/突然確変大当り開始指定コマンド(A002(H))が用いられる。なお、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、突然大当りである場合に突然確変大当り開始指定用のファンファーレ指定コマンドを送信するものの、小当りである場合にはファンファーレ指定コマンドを送信しないように構成してもよい。」

エ 「【0195】
図18および図19は、主基板31に搭載される遊技制御用マイクロコンピュータ560(具体的には、CPU56)が実行する特別図柄プロセス処理(ステップS26)のプログラムの一例を示すフローチャートである。上述したように、特別図柄プロセス処理では第1特別図柄表示器8aまたは第2特別図柄表示器8bおよび大入賞口を制御するための処理が実行される。特別図柄プロセス処理において、CPU56は、第1始動入賞口13に遊技球が入賞したことを検出するための第1始動口スイッチ13aがオンしていたら、すなわち、第1始動入賞口13への始動入賞が発生していたら、第1始動口スイッチ通過処理を実行する(ステップS311,S312)。また、CPU56は、第2始動入賞口14に遊技球が入賞したことを検出するための第2始動口スイッチ14aがオンしていたら、すなわち第2始動入賞口14への始動入賞が発生していたら、第2始動口スイッチ通過処理を実行する(ステップS313,S314)。そして、ステップS300?S310のうちのいずれかの処理を行う。第1始動入賞口スイッチ13aまたは第2始動口スイッチ14aがオンしていなければ、内部状態に応じて、ステップS300?S310のうちのいずれかの処理を行う。
【0196】
ステップS300?S310の処理は、以下のような処理である。
【0197】
特別図柄通常処理(ステップS300):特別図柄プロセスフラグの値が0であるときに実行される。遊技制御用マイクロコンピュータ560は、特別図柄の可変表示が開始できる状態になると、保留記憶バッファに記憶される数値データの記憶数(合算保留記憶数)を確認する。保留記憶バッファに記憶される数値データの記憶数は合算保留記憶数カウンタのカウント値により確認できる。また、合算保留記憶数カウンタのカウント値が0でなければ、第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定する。大当りとする場合には大当りフラグをセットする。そして、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS301に応じた値(この例では1)に更新する。なお、大当りフラグは、大当り遊技が終了するときにリセットされる。
【0198】
変動パターン設定処理(ステップS301):特別図柄プロセスフラグの値が1であるときに実行される。また、変動パターンを決定し、その変動パターンにおける変動時間(可変表示時間:可変表示を開始してから表示結果を導出表示(停止表示)するまでの時間)を特別図柄の可変表示の変動時間とすることに決定する。また、決定した変動パターンに応じた変動パターンコマンドを演出制御用マイクロコンピュータ100に送信する制御を行い、特別図柄の変動時間を計測する変動時間タイマをスタートさせる。そして、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS302に対応した値(この例では2)に更新する。」

オ 「【0226】
図22は、ステップS1216A,S1217Bの入賞時演出処理を示すフローチャートである。入賞時演出処理では、CPU56は、まず、ステップS1215A,S1214Bで抽出した大当り判定用乱数(ランダムR)と図8(A)の左欄に示す通常時の大当り判定値とを比較し、それらが一致するか否かを確認する(ステップS220)。この実施の形態では、特別図柄および演出図柄の変動を開始するタイミングで、後述する特別図柄通常処理において大当りや小当りとするか否か、大当り種別を決定したり、変動パターン設定処理において変動パターンを決定したりするのであるが、それとは別に、遊技球が第1始動入賞口13や第2始動入賞口14に始動入賞したタイミングで、その始動入賞にもとづく変動表示が開始される前に、入賞時演出処理を実行することによって、あらかじめ大当りや小当りとなるか否かや、大当りの種別、変動パターン種別判定用乱数の値がいずれの判定値の範囲にとなるかを確認する。そのようにすることによって、演出図柄の変動表示が実行されるより前にあらかじめ変動表示結果や変動パターン種別を予測し、後述するように、入賞時の判定結果にもとづいて、演出制御用マイクロコンピュータ100によって待機中表示の後、その判定対象となった変動表示において示唆演出を実行して大当りやスーパーリーチとなることを予告する特定演出を実行する。」

カ 「【0259】
特別図柄通常処理では、最初に、第1始動入賞口13を対象として処理を実行することを示す「第1」を示すデータすなわち第1特別図柄を対象として処理を実行することを示す「第1」を示すデータ、または第2始動入賞口14を対象として処理を実行することを示す「第2」を示すデータすなわち第2特別図柄を対象として処理を実行することを示す「第2」を示すデータが、特別図柄ポインタに設定される。そして、特別図柄プロセス処理における以降の処理では、特別図柄ポインタに設定されているデータに応じた処理が実行される。よって、ステップS300?S310の処理を、第1特別図柄を対象とする場合と第2特別図柄を対象とする場合とで共通化することができる。
【0260】
次いで、CPU56は、乱数バッファ領域からランダムR(大当り判定用乱数)を読み出し、大当り判定モジュールを実行する。なお、この場合、CPU56は、始動口スイッチ通過処理のステップS215,S221で抽出し第1保留記憶バッファや第2保留記憶バッファにあらかじめ格納した大当り判定用乱数を読み出し、大当り判定を行う。大当り判定モジュールは、あらかじめ決められている大当り判定値や小当り判定値(図8参照)と大当り判定用乱数とを比較し、それらが一致したら大当りや小当りとすることに決定する処理を実行するプログラムである。すなわち、大当り判定や小当り判定の処理を実行するプログラムである。
【0261】
大当り判定の処理では、遊技状態が確変状態(高確率状態)の場合は、遊技状態が非確変状態(通常遊技状態および時短状態)の場合よりも、大当りとなる確率が高くなるように構成されている。具体的には、あらかじめ大当り判定値の数が多く設定されている確変時大当り判定テーブル(ROM54における図8(A)の右側の数値が設定されているテーブル)と、大当り判定値の数が確変大当り判定テーブルよりも少なく設定されている通常時大当り判定テーブル(ROM54における図8(A)の左側の数値が設定されているテーブル)とが設けられている。そして、CPU56は、遊技状態が確変状態であるか否かを確認し、遊技状態が確変状態であるときは、確変時大当り判定テーブルを使用して大当りの判定の処理を行い、遊技状態が通常遊技状態や時短状態であるときは、通常時大当り判定テーブルを使用して大当りの判定の処理を行う。すなわち、CPU56は、大当り判定用乱数(ランダムR)の値が図8(A)に示すいずれかの大当り判定値に一致すると、特別図柄に関して大当りとすることに決定する。大当りとすることに決定した場合には(ステップS61)、ステップS71に移行する。なお、大当りとするか否か決定するということは、大当り遊技状態に移行させるか否か決定するということであるが、特別図柄表示器における停止図柄を大当り図柄とするか否か決定するということでもある。」

キ 「【0265】
ステップS71では、CPU56は、大当りであることを示す大当りフラグをセットする。そして、大当り種別を複数種類のうちのいずれかに決定するために使用するテーブルとして、特別図柄ポインタが示す方の大当り種別判定テーブルを選択する(ステップS72)。具体的には、CPU56は、特別図柄ポインタが「第1」を示している場合には、図8(D)に示す第1特別図柄用の大当り種別判定用テーブル131aを選択する。また、CPU56は、特別図柄ポインタが「第2」を示している場合には、図8(E)に示す第2特別図柄用の大当り種別判定用テーブル131bを選択する。
・・・・・
【0271】
図25は、特別図柄プロセス処理における変動パターン設定処理(ステップS301)を示すフローチャートである。変動パターン設定処理において、CPU56は、大当りフラグがセットされているか否か確認する(ステップS91)。大当りフラグがセットされている場合には、CPU56は、変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定するために使用するテーブルとして、大当り用変動パターン種別判定テーブル132A?132C(図9(A)?(C)参照)のいずれかを選択する(ステップS92)。そして、ステップS100に移行する。」

ク 「【0311】
特定演出は、大当りの発生に対する信頼度を示す演出である。本実施の形態における特定演出には、一発告知演出(以下、一発告知ともいう)と、役物演出と、ウィンドウ演出とがある。一発告知は、大当りが発生する旨を遊技者に告知する演出であり、本実施の形態では、演出表示装置9に「勝ったな・・・」といった文字情報を表示するものとするが、いずれの演出部材を用いるものであってもよい。例えば、打球操作ハンドル5内に設けられたLEDを点灯させたり、スピーカ27から特殊な音声を出力したり、演出用役物127に特定の動作をさせたり、いずれの演出であってもよい。役物演出は、演出用役物127を動作させる演出であり、具体的には、可動部材用モータ128を駆動することにより演出用役物127を動作させる演出である。ウィンドウ演出は、演出表示装置9にウィンドウを表示する演出であり、大きなウィンドウを表示するウィンドウ(大)と、小さなウィンドウを表示するウィンドウ(小)とがあり、表示されるウィンドウが大きいほど大当りの発生に対する信頼度が高いものである。なお、ウィンドウの色や、ウィンドウの枠の色や、ウィンドウ内に表示されるキャラクタやセリフなどによって大当りの発生に対する信頼度が異なるものとしてもよい。また、1回の変動中には、これらの特定演出を3回まで実行可能であり、且つ、複数の特定演出を同時に実行しないようになっている。すなわち、1回の変動中には、上述した4つの特定演出(一発告知、役物演出、ウィンドウ(大)、ウィンドウ(小))のうち3つを上限とした特定演出を実行可能である。
【0312】
また、示唆演出は、特定演出の発生タイミングを該特定演出の発生タイミングよりも所定時間前から示唆する演出であり、本実施の形態では、特定演出が発生するタイミングまでの残り時間を、特定演出の発生タイミングよりも5秒前から演出表示装置9に表示する演出(以下、カウントダウン演出ともいう)である。このカウントダウン演出を行ったときには、残り時間を示すカウンタがゼロになった時点で、いずれかの特定演出が発生する。なお、カウントダウン演出の開始タイミングは特定演出の発生タイミングの5秒前に限らず、5秒前よりも前であっても後であってもよい。また、複数種類の開始タイミングから一の開始タイミングを選択して実行するものとしてもよい。例えば、特定演出の発生タイミングの3秒前、5秒前、7秒前からいずれかの開始タイミングを抽選によって選択し、実行するものとしてもよい。なお、本実施の形態では、演出表示装置9に表示するカウンタの大きさが異なる示唆演出の態様として、カウンタを大きく表示する「大表示」と、「大表示」よりもカウンタを小さく表示する「小表示」とが設けられている。なお、詳細は後述するが、本実施の形態では、大当りであるか否かに基づいて特定演出の実行の有無および実行する場合には特定演出の種類を決定するとともに、実行する特定演出の種類に基づいて示唆演出の態様を決定し、決定した示唆演出と特定演出とを所定のタイミングで実行する構成としてある。以下、特定演出と示唆演出とを「予告演出」と総称することがある。なお、ステップS8003では、更に、示唆演出や特定演出とは異なる他の演出(例えば、ステップアップ演出)の実行の有無や態様を設定する処理を行うこととしてもよい。
・・・・・
【0353】
図37は、図31に示された演出制御プロセス処理における演出図柄変動開始処理(ステップS801)を示すフローチャートである。演出図柄変動開始処理において、演出制御用CPU101は、まず、変動パターンコマンド格納領域から変動パターンコマンドを読み出す(ステップS8001)。次いで、演出制御用CPU101は、ステップS8001で読み出した変動パターンコマンド、および表示結果指定コマンド格納領域に格納されているデータ(すなわち、受信した表示結果指定コマンド)に応じて演出図柄の表示結果(停止図柄)を決定する(ステップS8002)。すなわち、演出制御用CPU101によってステップS8002の処理が実行されることによって、可変表示パターン決定手段が決定した可変表示パターン(変動パターン)に応じて、識別情報の可変表示の表示結果(演出図柄の停止図柄)を決定する表示結果決定手段が実現される。このとき、変動パターンコマンドで大当りが指定されている場合には、左図柄、中図柄、右図柄として同一の図柄を決定する。その際、例えば、通常大当りであれば偶数の図柄を決定する一方、確変大当りであれば奇数の図柄を決定するようにしてもよい。また、変動パターンコマンドでリーチはずれが指定されている場合には、左図柄および右図柄に同一の図柄を決定するとともに、中図柄には該同一の図柄とは異なる図柄を決定する。また、変動パターンコマンドでリーチ無しはずれが指定されている場合には、全図柄とも一致しないような図柄を決定する。なお、変動パターンコマンドで擬似連が指定されている場合には、演出制御用CPU101は、擬似連中の仮停止図柄としてチャンス目図柄(例えば、「223」や「445」のように、リーチとならないものの大当り図柄と1つ図柄がずれている図柄の組み合わせ)も決定する。なお、演出制御用CPU101は、決定した演出図柄の停止図柄を示すデータを演出図柄表示結果格納領域に格納する。
・・・・・
【0380】
次いで、入賞時判定の判定対象となった変動表示の開始タイミングとなると、変動パターンコマンドで指定される変動パターンにもとづいて変動時間を特定し、特定演出の実行タイミングおよび示唆演出の開始タイミングが設定される(ステップS8007参照)。そして、設定した示唆演出の開始タイミングとなると、図41(A3)に示すように、特定演出の発生までの残り時間が5秒であることを示唆する小表示の示唆演出が表示される(ステップS8111参照)。この場合、例えば、図41(A3)に示すように、タイマを模した画像中の「待機中」の表示を消去し、タイマによるカウントダウンが開始されるような態様の演出を開始する。このとき、大当りに対する信頼度の高くない特定演出が発生することに対する不安感を遊技者に与え、興趣の向上を図ることができる。
・・・・・
【0390】
以上に説明したように、この実施の形態によれば、計数値を提示する計数演出(本例では、示唆演出(カウントダウン演出))を実行し、計数演出によって提示される計数値が特定値(本例では、「00:00」)となったときに特定演出(本例では、一発告知、役物演出、ウィンドウ(大)、ウィンドウ(小)の特定演出)を実行する。また、入賞時判定の判定結果にもとづいて、その判定対象となった識別情報の可変表示の開始条件が成立する以前に、計数演出が実行されることを示す計数演出画像(本例では、待機中表示)を表示する。そして、計数演出画像が表示された後、入賞時判定の判定対象となった識別情報の可変表示において計数演出を開始する。そのため、計数演出を実行するための処理負担の増加を抑えつつ、計数演出の実行をあらかじめ報知することにより事前に期待感を高めて遊技に対する興趣を向上させることができる。
・・・・・
【0394】
また、この実施の形態によれば、計数演出の待機中である旨を示す態様で計数演出画像を表示する。具体的には、図41(A2),(B2)に示すように、タイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する。そのため、遊技者に対して後の識別情報の可変表示において計数演出が実行されることを明確に報知することができる。
・・・・・
【0400】
また、この実施の形態によれば、複数種類の態様で計数演出画像を表示可能であり(本例では、図41(A2)に示すように、小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する場合と、図41(B2)に示すように、大きいタイマを模した画像が表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する場合とがある、特定遊技状態(本例では、大当り)となるか否かに応じて異なる選択割合で複数種類の態様のうちのいずれかの態様で計数演出画像を表示する。具体的には、図35に示すように、大当り確定となる一発告知の特定演出に対しては示唆演出の演出態様として必ず大表示が選択されることから、示唆演出の演出態様として大表示が選択された場合には小表示が選択された場合と比較して大当りに対する期待度(信頼度)が高く、その結果、大表示の待機中表示が表示された場合には小表示の待機中表示が表示された場合と比較して大当りに対する期待度(信頼度)が高くなる。そのため、計数演出画像の態様に対して遊技者に注目させることができ、遊技に対する興趣を向上させることができる。」

ケ 「図25


図41



そして、前記記載事項ア?ケを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?iは、本願補正発明のA?Iに対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号は、引用文献における引用箇所を示す。)。

(引用発明)
「a、b 特別図柄プロセス処理の特別図柄通常処理において、あらかじめ決められている大当り判定値と大当り判定用乱数とを比較し、一致したら大当りとする大当り判定の処理を実行して、大当りとするか否か決定し(【0195】、【0197】、【0226】、【0260】、【0261】)、大当りとすることに決定した場合には、大当りであることを示す大当りフラグをセットし、大当り種別を複数種類のうちのいずれかに決定し、大当り遊技状態に移行させ(【0261】、【0265】)、
特別図柄プロセス処理の変動パターン設定処理において、大当りフラグがセットされているか否か確認して、変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定し(【0195】、【0198】、【0271】)、
大当りの種類に応じて、大当り遊技の開始を指定する演出制御コマンドである大当り開始指定コマンドを演出制御用マイクロコンピュータ100に対して送信するCPU56を含む遊技制御用マイクロコンピュータ560と(【0060】、【0109】、【0171】)、
c 遊技制御用マイクロコンピュータ560から受信する演出内容を指示する演出制御コマンドにもとづいて、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に演出表示装置9の表示制御を行わせる演出制御用CPU101を含む演出制御用マイクロコンピュータ100と、を備え(【0069】、【0072】)、
d 遊技制御用マイクロコンピュータ560のCPU56は、特別図柄および演出図柄の変動を開始するタイミングで、特別図柄通常処理において大当りや小当りとするか否か、大当り種別を決定したり、変動パターン設定処理において変動パターンを決定し(【0060】、【0226】)、
演出制御用マイクロコンピュータ100の演出制御用CPU101は、変動表示の開始タイミングとなると、変動パターンコマンドで指定される変動パターンにもとづいて変動時間を特定し、特定演出の実行タイミングおよび示唆演出の開始タイミングが設定され、設定した示唆演出の開始タイミングとなると、特定演出の発生までの残り時間が5秒であることを示唆する小表示の示唆演出が表示され(【0072】、【0353】、【0380】)、
e 示唆演出は、特定演出の発生タイミングを該特定演出の発生タイミングよりも所定時間前から示唆する演出であり、特定演出が発生するタイミングまでの残り時間を、特定演出の発生タイミングよりも5秒前から演出表示装置9に表示する演出(以下、カウントダウン演出ともいう)であり、カウントダウン演出を行ったときには、残り時間を示すカウンタがゼロになった時点で、いずれかの特定演出が発生するものであり、特定演出は、大当りの発生に対する信頼度を示す演出であるパチンコ遊技機1であって(【0017】、【0311】、【0312】)、
f、g 演出制御用マイクロコンピュータ100の演出制御用CPU101は、「待機中」と表示する待機中表示を表示するため、遊技者に対して後の識別情報の可変表示において計数演出である示唆演出が実行されることを明確に報知することができるものであり(【0072】、【0353】、【0394】)、計数演出である示唆演出(カウントダウン演出)が実行されることを示す計数演出画像である待機中表示の後、その判定対象となった変動表示において示唆演出を実行して大当りやスーパーリーチとなることを予告する特定演出を実行し(【0226】、【0390】)、
h、i 複数種類の態様で計数演出画像を表示可能であり、小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する場合と、大きいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する場合とがあり、複数種類の態様のうちのいずれかの態様で計数演出画像を表示するパチンコ遊技機1(【0017】、【0400】)」

(3)引用文献2に記載された技術事項ついて
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2018-130393号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0011】
[パチンコ遊技機1の概略構成]
以下、図1?図3を参照して、本発明の一実施形態に係るパチンコ遊技機1の概略構成について説明する。なお、図1は、本発明の一実施形態に係る遊技機1の一例を示す概略正面図である。図2は、遊技機1に設けられた表示器4の一例を示す拡大図である。図3は、遊技機1の部分平面図である。」

イ 「【0166】
[本実施形態における報知演出設定処理]
次に、図18を参照して、演出制御部400による報知演出設定処理について説明する。ここで、本実施形態の概略を説明すると、本実施形態に係る遊技機1は報知演出において、大当りを期待させる期待演出が実行されることおよび実行タイミングを示唆するタイマ予告演出を実行可能である。また、タイマ予告演出において、期待演出が実行されるタイミングまでのタイマ時間をカウントアップするカウントアップ演出を実行した後、カウントアップ演出においてカウントアップされたタイマ時間をカウントダウンするカウントダウン演出を実行し、カウントダウン演出においてタイマ時間が「0:00」までカウントダウンされてこれから期待演出が実行されるタイミングが到来したことを示唆するカウントダウン終了示唆演出を実行可能である。また、タイマ予告演出において、カウントアップ演出としてタイマ画像に繋がれるように鎖が表示され、タイマ画像に鎖が繋がっている間、タイマ時間がカウントアップ表示される第1カウントアップ演出を実行する場合と、演出ボタン37を押下することにより敵(本実施形態では3体)を倒して敵が持っている玉を獲得し獲得した玉がタイマ時間に変化してタイマ画像に表示されるタイマ時間がカウントアップされる第2カウントアップ演出を実行する場合とがある。また、報知演出において、タイマ予告演出が実行されることを示唆するタイマ予告示唆演出を実行可能である。
・・・・・
【0191】
説明は図18に戻り、ステップS709において、CPU401は、ステップS708で設定したタイマ予告演出の開始タイミングがT1であるか否かを判定する。ステップS709での判定がYESの場合、処理はステップS711に移り、この判定がNOの場合、処理はステップS710に移る。【0192】
ステップS710において、CPU401は、タイマ予告示唆演出を実行するか否かを抽選等により決定する。この場合、特別図柄抽選の結果が大当りの場合、特別図柄抽選の結果がハズレの場合に比べて、高い確率でタイマ予告示唆演出を実行することを決定するように割合が設定されている参照テーブルを用いてもよい。このようにすることにより、タイマ予告示唆演出が実行された場合の大当りの信頼度が、実行されない場合の大当り信頼度よりも高くすることができる。また、タイマ予告示唆演出を実行すると決定した場合には、タイマ予告演出が開始されるより先に実行されるようにタイマ予告示唆演出の実行開始タイミングを決定する。ここで、本実施形態におけるタイマ予告示唆演出とは、タイマ予告演出においてカウントダウン演出が実行されているときにタイマ画像が表示される位置と同じ位置に、「スタンバイ」と描かれた文字画像を含むタイマ画像をタイマ予告演出が開始されるまで表示することにより、タイマ予告演出が実行されることを示唆する演出である。その後、処理は、ステップS711に移る。」

ウ 「【0233】
図27は、タイマ予告演出、タイマ予告示唆演出が実行される報知演出の複数の典型例についてのタイムチャートである。図27の(1)は、第1タイミングT1から開始され2回目の擬似連演出の実行および実行タイミングを予告するタイマ予告演出(第5タイマ予告演出、図21参照)が実行される報知演出のタイムチャートである。図27の(2)は、第2タイミングT2から開始され2回目の擬似連演出の実行および実行タイミングを予告するタイマ予告演出(第8タイマ予告演出、図21参照)が実行される報知演出のタイムチャートである。図27の(3)は、タイマ予告示唆演出が実行された後、第2タイミングT2から開始されSPSP発展演出の実行および実行タイミングを予告するタイマ予告演出(第8タイマ予告演出、図21参照)が実行される報知演出のタイムチャートである。図27の(4)は、タイマ予告示唆演出が実行された後、第3タイミングT3から開始されカットイン予告演出の実行および実行タイミングを示唆するタイマ予告演出(第4タイマ予告演出、図21参照)が実行される報知演出のタイムチャートである。
・・・・・
【0253】
図30は、図27の(3)に示す報知演出について具体的に説明するための図である。以下に図30および図27の(3)を用いて、タイマ予告示唆演出が実行された後、第2タイミングT2から開始されSPSP発展演出の実行および実行タイミングを予告するタイマ予告演出が実行される報知演出について説明する。
【0254】
まず、図30の(1)および図27の(3)に示すように、報知演出が開始されると、停止表示されていた左装飾図柄DI1、中装飾図柄DI3および右装飾図柄DI3が上から下に向かって変動表示される。
【0255】
次に、図30の(2)および図27の(3)に示すように、報知演出の開始から所定時間(例えば、2秒)経過時に「スタンバイ」と描かれた文字画像を含むタイマ画像50が画像表示部6に表示され、タイマ予告演出がこれから実行されることを示唆するタイマ予告示唆演出が実行される。
【0256】
次に、図30の(3)および図27の(3)に示すように、左装飾図柄DI1が仮停止してから右装飾図柄DI2が仮停止した後に、中装飾図柄DI3が「継続」と描かれた図柄で仮停止されて1回目の擬似連演出が実行される。また、図30の(3)の例では、「スタンバイ」と描かれた文字画像を含むタイマ画像50が継続表示されており、まだタイマ予告演出が実行されておらず、これから実行されることを示唆している。
【0257】
次に、図30の(4)および図27の(3)に示すように、1回目の擬似連演出が実行された直後のタイミング(第2タイミングT2)において、「スタンバイ」と描かれた文字画像が消去され、タイマ時間として「0:00」と描かれた文字画像がタイマ画像50に含まれるように画像表示部60に表示されタイマ予告演出が開始されるとともに、タイマ画像50に繋がれた鎖画像が表示され、タイマ画像50に表示されるタイマ時間を時間の経過と共にカウントアップ表示させる第1カウントアップ演出が実行される。
【0258】
次に、図30の(5)および図27の(3)に示すように、左装飾図柄DI1が仮停止してから右装飾図柄DI2が仮停止した後に、中装飾図柄DI3が「継続」と描かれた図柄で仮停止されて2回目の擬似連演出が実行される。また、図30の(5)の例では、第1カウントアップ演出も実行中であり、タイマ時間が「6:00」までカウントアップ表示されている。
【0259】
次に、図30の(6)および図27の(3)に示すように、タイマ時間が「8:00」までカウントアップ表示されると、タイマ画像50から外れる鎖画像が画像表示部6に表示され、タイマ画像50に表示されたタイマ時間をカウントダウン表示させるカウントダウン演出が実行される。
【0260】
次に、図30の(7)および図27の(3)に示すように、リーチ状態となり、タイマ時間が「0:00」までカウントダウン表示されたときに、「行くぞ!」と描かれた文字画像が表示され、タイマ予告演出の予告対象となる期待演出が実行されることを示唆するカウントダウン終了示唆演出が実行され、タイマ予告演出が終了される。
【0261】
次に、図30の(8)および図27の(3)に示すように、3つの装飾図柄が画面右下に縮小表示されて、可動役物7を動作させるSPSP発展演出(タイマ予告演出の予告対象である期待演出)が実行される。
【0262】
次に、図30の(9)および図27の(3)に示すように、3つの装飾図柄が画面右下に縮小表示されて、カットイン予告画像を画像表示部6に表示させるカットイン予告演出が実行された後、図30の(10)および図27の(3)に示すように、左装飾図柄DI1、中装飾図柄DI3および右装飾図柄DI2が完全に停止表示されることで、大当り抽選の結果が演出的に報知される。」

エ 「図27


図28


図30



オ 前記記載事項ウによれば、引用文献2の【0233】には、「・・・図27の(1)は、第1タイミングT1から開始され2回目の擬似連演出の実行および実行タイミングを予告するタイマ予告演出(第5タイマ予告演出、図21参照)が実行される報知演出のタイムチャートである。・・・図27の(3)は、タイマ予告示唆演出が実行された後、第2タイミングT2から開始されSPSP発展演出の実行および実行タイミングを予告するタイマ予告演出(第8タイマ予告演出、図21参照)が実行される報知演出のタイムチャートである。・・・」と記載されている。
そして、図27の(3)には、タイマ予告演出の開始前にタイマ予告示唆演出が実行される報知演出のタイムチャートが記載され、図30には、タイマ予告示唆演出が実行された後、タイマ予告演出が実行される報知演出が記載されている。さらに、図27の(1)には、タイマ予告演出の開始前にタイマ予告示唆演出が実行されない報知演出のタイムチャートが記載され、図28には、タイマ予告示唆演出が実行されずにタイマ予告演出が実行される報知演出が記載されている。
してみると、引用文献2には、「タイマ予告示唆演出が実行された後、タイマ予告演出が実行される報知演出とタイマ予告示唆演出が実行されずにタイマ予告演出が実行される報知演出があること」(認定事項オ)が記載されていると認められる。

カ 以上ア?エの記載事項及び認定事項オから、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2に記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる(なお、記号e2ないしg2は、本願補正発明の構成EないしGに対応させて合議体が付した。)。

(引用文献2に記載の技術事項)
「e2 報知演出において、大当りを期待させる期待演出が実行されることおよび実行タイミングを示唆するタイマ予告演出を実行可能であるパチンコ遊技機1であって(【0011】、【0166】)、
演出制御部400は、タイマ予告演出において、期待演出が実行されるタイミングまでのタイマ時間をカウントアップするカウントアップ演出を実行した後、カウントアップ演出においてカウントアップされたタイマ時間をカウントダウンするカウントダウン演出を実行し、カウントダウン演出においてタイマ時間が「0:00」までカウントダウンされてこれから期待演出が実行されるタイミングが到来したことを示唆するカウントダウン終了示唆演出を実行可能であり(【0166】)、
f2 タイマ予告演出においてカウントダウン演出が実行されているときにタイマ画像が表示される位置と同じ位置に、「スタンバイ」と描かれた文字画像を含むタイマ画像をタイマ予告演出が開始されるまで表示することにより、タイマ予告演出が実行されることを示唆する演出であるタイマ予告示唆演出を実行するものであり(【0192】)、
g2 タイマ予告示唆演出が実行された後、タイマ予告演出が実行される報知演出とタイマ予告示唆演出が実行されずにタイマ予告演出が実行される報知演出があり(認定事項オ)、特別図柄抽選の結果が大当りの場合、特別図柄抽選の結果がハズレの場合に比べて、高い確率でタイマ予告示唆演出を実行するパチンコ遊技機1(【0011】、【0192】)。」

(4)対比
本願補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する。

ア 引用発明の構成a、bの「大当り遊技状態」は、本願補正発明の構成Aの「遊技者に有利な特別遊技状態」に相当する。
また、引用発明の構成a、bより、「大当りとすることに決定した場合には、」「大当り遊技状態に移行させ」るのであるから、「大当りとするか否か決定」することは、「大当り遊技状態に移行させ」るか否か決定することであるといえる。そうすると、引用発明における構成a、bの「大当りとするか否か決定」する「大当り判定の処理を実行」することは、本願補正発明における構成Aの「遊技者に有利な特別遊技状態にするかの判定を行う」ことに相当する。
よって、引用発明における構成a、bの「大当りとするか否か決定」する「大当り判定の処理を実行」する「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本願補正発明における構成Aの「遊技者に有利な特別遊技状態にするかの判定を行う判定手段」に相当する。
さらに、引用発明の構成a、bにおいて、「大当りとするか否か決定」することは、「大当り判定の処理を実行」することによりなされることは明らかであるから、引用発明の構成a、bの「大当りとするか否か」は、本願補正発明の構成Bの「前記判定手段による判定の結果」に相当する。
してみると、引用発明の構成a、bの「大当りとするか否か決定し、大当りとすることに決定した場合には、」「大当り遊技状態に移行させ」る「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本願補正発明の構成Bの「前記判定手段による判定の結果に基づいて前記特別遊技状態に制御する特別遊技状態制御手段」に相当する。

イ 引用発明の構成cの「演出表示装置9」は、本願補正発明の構成Cの「所定の演出手段」に相当する。
また、「演出制御用CPU101」は、「演出内容を指示する演出制御コマンドにもとづいて、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に演出表示装置9の表示制御を行わせる」ものであるから、「演出表示装置9の表示」は、「演出」であることは明らかである。
よって、引用発明の構成cの「演出内容を指示する演出制御コマンドにもとづいて、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に演出表示装置9の表示制御を行わせる」「演出制御用CPU101を含む演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本願補正発明の構成Cの「所定の演出手段を用いて演出を実行可能な演出実行手段」に相当する。

ウ 引用発明の構成dの「特定演出の発生までの残り時間」「を示唆する」「示唆演出」は、本願補正発明の構成Dの「演出の実行タイミングを示唆する時間演出」に相当する。
また、引用発明の構成dにおいて、「演出制御用マイクロコンピュータ100の演出制御用CPU101は、変動表示の開始タイミングとなると、変動パターンコマンドで指定される変動パターンにもとづいて変動時間を特定し、特定演出の実行タイミングおよび示唆演出の開始タイミングが設定され、設定した示唆演出の開始タイミングとなると、特定演出の発生までの残り時間が5秒であることを示唆する小表示の示唆演出が表示され」るものであるから、「示唆演出」が「変動パターンにもとづ」くことは明らかである。
さらに、引用発明の構成a、bにより、「変動パターン種別」は「遊技制御用マイクロコンピュータ560」の「特別図柄プロセス処理の変動パターン設定処理において、大当りフラグがセットされているか否か確認して、」「複数種類のうちのいずれかに決定」されることが特定されており、また、「大当りフラグがセットされているか否か」は、「大当り判定の処理」によるものであることは明らかであるから、引用発明の構成dの「変動パターン」は、「遊技制御用マイクロコンピュータ560」の「大当りの判定の処理」によるものであるといえる。
よって、引用発明の構成dにおいて、「演出制御用マイクロコンピュータ100は、変動表示の開始タイミングとなると、」「遊技制御用マイクロコンピュータ560」の「大当りの判定の処理」による「変動パターン」「にもとづいて」「特定演出の発生までの残り時間」「を示唆する」「示唆演出」を「表示」することは、本願補正発明の構成Dの「前記演出実行手段は、前記判定手段による判定の結果に基づいて、演出の実行タイミングを示唆する時間演出を行うことが可能であ」ることに相当する。

エ 前記ウより「示唆演出」は、「特定演出の発生までの残り時間」「を示唆する」ものであるから、「示唆演出」は、「特定演出の発生」「を示唆する」ものであり、「特定演出は、大当りの発生に対する信頼度を示す演出である」から、遊技者は「示唆演出」が発生すると、「大当りの発生に対する信頼度を示す演出である」「特定演出の発生」を期待することになる。
そして、遊技者は、「示唆演出」が「発生」「を示唆する」「特定演出」が「示す」「信頼度」によって、「大当り遊技状態」になることを期待することは明らかであるから、結果的に、「示唆演出」は、「大当り遊技状態」になることを期待させるものであるといえる。
よって、引用発明の構成eの「示唆演出は、」「大当り遊技状態」になることを期待させるものである「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の構成Eの「前記時間演出は、前記特別遊技状態になることを期待させる演出である遊技機」に相当する。

オ 引用発明の構成f、g及び構成h、iにおいて、「計数演出画像である待機中表示の後、その判定対象となった変動表示において示唆演出を実行して大当りやスーパーリーチとなることを予告する特定演出を実行」するのであるから、「計数演出画像である待機中表示」は、「示唆演出を実行」することを事前に示唆するものであるといえる。
そうすると、引用発明の構成f、g及び構成h、iの「計数演出画像」としての「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示」は、本願補正発明の構成Fの「前記時間演出が実行されることを事前に示唆する示唆画像」に相当し、「計数演出画像」として「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出は、本願補正発明の構成Fの「前記時間演出が実行されることを事前に示唆する示唆画像の表示を含む前兆演出」に相当する。
したがって、引用発明の構成f、g及び構成h、iの「演出制御用マイクロコンピュータ100は、」「計数演出画像」として「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出を行うことは、本願補正発明の構成Fの「前記演出実行手段は、前記時間演出が実行されることを事前に示唆する示唆画像の表示を含む前兆演出を実行可能であ」ることに相当する。

カ 引用発明の構成f、g及び構成h、iは、「計数演出画像」として「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する場合」があり、「計数演出画像である待機中表示の後」、「示唆演出を実行」するものであるから、「計数演出画像」として「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示」した後、「示唆演出を実行」する場合があるものといえる。そして、そのような場合は、本願補正発明の構成Gと「前記前兆演出が実行されてから前記時間演出が実行される場合」である点で共通する。

キ 引用発明の構成f、g及び構成h、iにおいて、「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する場合と、大きいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する場合とがあ」ることが特定されている。
そして、前記2-2で説示したとおり、本願補正発明の「表示態様違いの演出」が文字画像の「色」が「違」う「演出」のみを意味するものであると認定すると、「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する場合」と「大きいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する場合」とでは、「待機中」の表示や「タイマを模した画像」の大きさが違うのであるから、両者は、本願補正発明の構成Hの「表示態様違いの演出ではなく」との構成を備えるものである。
そうすると、引用発明の構成f、g及び構成h、iの、「計数演出画像」として「大きいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出は、本願補正発明の構成Hの「前記前兆演出の表示態様違いの演出ではなく前記前兆演出とは異なる種類の演出であって、前記時間演出が実行されることを示唆する他の前兆演出」に相当する。
よって、引用発明の構成f、g及び構成h、iの「演出制御用マイクロコンピュータ100は、」「計数演出画像」として「大きいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出を行うことは、本願補正発明の構成Hの「前記演出実行手段は、前記前兆演出の表示態様違いの演出ではなく前記前兆演出とは異なる種類の演出であって、前記時間演出が実行されることを示唆する他の前兆演出を実行することが可能であ」ることに相当する。

ク 引用発明の構成f、g及び構成h、iにおいて、「複数種類の態様のうちのいずれかの態様で計数演出画像を表示」することが特定されており、「演出制御用マイクロコンピュータ100は、」「計数演出画像」として「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出を行うことなく「計数演出画像」として「大きいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出を行うものである。
よって、引用発明の構成f、g及び構成h、iの、「演出制御用マイクロコンピュータ100は、」「計数演出画像」として「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出を行うことなく「計数演出画像」として「大きいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出を行う「パチンコ機1」は、本願補正発明の構成Iの「前記前兆演出を何れの表示態様でも行うことなく前記他の前兆演出を実行可能である」「遊技機」に相当する。

そうすると、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
A 遊技者に有利な特別遊技状態にするかの判定を行う判定手段と、
B 前記判定手段による判定の結果に基づいて前記特別遊技状態に制御する特別遊技状態制御手段と、
C 所定の演出手段を用いて演出を実行可能な演出実行手段と、を備え、
D 前記演出実行手段は、前記判定手段による判定の結果に基づいて、演出の実行タイミングを示唆する時間演出を行うことが可能であり、
E 前記時間演出は、前記特別遊技状態になることを期待させる演出である遊技機であって、
F 前記演出実行手段は、前記時間演出が実行されることを事前に示唆する示唆画像の表示を含む前兆演出を実行可能であり、
G’前記前兆演出が実行されてから前記時間演出が実行される場合があり、
H 前記演出実行手段は、
前記前兆演出の表示態様違いの演出ではなく前記前兆演出とは異なる種類の演出であって、前記時間演出が実行されることを示唆する他の前兆演出を実行することが可能であり、
I 前記前兆演出を何れの表示態様でも行うことなく前記他の前兆演出を実行可能である遊技機。」

(相違点)(構成G)
本願補正発明は、「前記前兆演出が実行されてから前記時間演出が実行される場合と、前記前兆演出が実行されることなく前記時間演出が実行される場合とで、前記特別遊技状態になる期待度が異なり、」との構成を備えるのに対し、引用発明は、「計数演出画像」として「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示」した後、「示唆演出を実行」する場合(本願補正発明の「前記前兆演出が実行されてから前記時間演出が実行される場合」に相当)があるものの、「前記前兆演出が実行されることなく前記時間演出が実行される場合」はなく、「前記前兆演出が実行されてから前記時間演出が実行される場合と、前記前兆演出が実行されることなく前記時間演出が実行される場合とで、前記特別遊技状態になる期待度が異な」る構成を備えない点。

(5)相違点についての当審の判断

ア 前記(3)で示した引用文献2に記載の技術事項のe2の「タイマ予告演出」は、「大当りを期待させる期待演出が実行されること」「を示唆する」ものである。そして、遊技者は「タイマ予告演出」が「実行」されると、「大当りを期待させる期待演出が実行されること」を期待することになるから、結果として、「タイマ予告演出」は、「大当りを期待させる」「演出」であるといえる。
よって、引用文献2に記載の技術事項のe2の「大当りを期待させる」「演出」である「タイマ予告演出を実行可能であるパチンコ遊技機1」は、本願補正発明の構成Eの「前記時間演出は、前記特別遊技状態になることを期待させる演出である遊技機」に相当する。

イ 引用文献2に記載の技術事項のf2の「タイマ予告演出」は、本願補正発明の構成Fの「前記時間演出」に相当する。
また、引用文献2に記載の技術事項fにおいて、「「スタンバイ」と描かれた文字画像を含むタイマ画像をタイマ予告演出が開始されるまで表示することにより、タイマ予告演出が実行されることを示唆する」のであるから、引用文献2に記載の技術事項f2の「「スタンバイ」と描かれた文字画像を含むタイマ画像」は、本願補正発明の構成Fの「前記時間演出が実行されることを事前に示唆する示唆画像」に相当する。
さらに、引用文献2に記載の技術事項f2において、「「スタンバイ」と描かれた文字画像を含むタイマ画像をタイマ予告演出が開始されるまで表示することにより、タイマ予告演出が実行されることを示唆する演出であるタイマ予告示唆演出」は、本願補正発明の構成Fの「前記時間演出が実行されることを事前に示唆する示唆画像の表示を含む前兆演出」に相当する。
よって、引用文献2に記載の技術事項f2の「演出制御部400は、」「「スタンバイ」と描かれた文字画像を含むタイマ画像をタイマ予告演出が開始されるまで表示することにより、タイマ予告演出が実行されることを示唆する演出であるタイマ予告示唆演出」「を実行する」ことは、本願補正発明の構成Fの「前記演出実行手段は、前記時間演出が実行されることを事前に示唆する示唆画像の表示を含む前兆演出を実行可能であ」ることに相当する。

ウ 引用文献2に記載の技術事項のg2の「タイマ予告示唆演出が実行された後、タイマ予告演出が実行される報知演出」、「タイマ予告示唆演出が実行されずにタイマ予告演出が実行される報知演出」は、それぞれ本願補正発明の構成Gの「前記前兆演出が実行されてから前記時間演出が実行される場合」、「前記前兆演出が実行されることなく前記時間演出が実行される場合」に相当する。
そして、引用文献2に記載の技術事項のg2は「特別図柄抽選の結果が大当りの場合、特別図柄抽選の結果がハズレの場合に比べて、高い確率でタイマ予告示唆演出を実行する」ことを特定していることから、「特別図柄抽選の結果が大当りの場合、特別図柄抽選の結果がハズレの場合に比べて、」「タイマ予告示唆演出が実行された後、タイマ予告演出が実行される報知演出」の方が、「タイマ予告示唆演出が実行されずにタイマ予告演出が実行される報知演出」よりも「高い確率で」「実行」されることになる。
その結果、「タイマ予告示唆演出が実行された後、タイマ予告演出が実行される報知演出」の方が、「タイマ予告示唆演出が実行されずにタイマ予告演出が実行される報知演出」よりも「特別図柄抽選の結果が大当り」となる「確率」が「高」いといえる。
よって、引用文献2に記載の技術事項のg2の「タイマ予告示唆演出が実行された後、タイマ予告演出が実行される報知演出」の方が、「タイマ予告示唆演出が実行されずにタイマ予告演出が実行される報知演出」よりも「特別図柄抽選の結果が大当り」となる「確率」が「高」いことは、本願補正発明の構成Gの「前記前兆演出が実行されてから前記時間演出が実行される場合と、前記前兆演出が実行されることなく前記時間演出が実行される場合とで、前記特別遊技状態になる期待度が異な」ることに相当する。

エ したがって、引用文献2に記載の技術事項は、前記相違点に係る本願補正発明の構成Gに相当する構成を含むといえる。

オ 引用発明と引用文献2に記載の技術事項とは、ともにカウントダウンを開始し、特定演出の発生までの残り時間を示唆する示唆演出と、示唆演出を実行することを事前に示唆する演出を実行する遊技機である点で共通する。
そして、遊技機の分野において、演出のバリエーションを増やすことにより、遊技者の興趣の向上を図ることは、当業者が当然認識すべき課題であることに鑑みれば、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用し、「計数演出画像」として「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出を行うことなく「示唆演出を実行」する場合を増やして、「計数演出画像」として「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示」した後、「示唆演出を実行」する場合の方が、「計数演出画像」として「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出を行うことなく「示唆演出を実行」する場合よりも「大当りに対する期待度(信頼度)が高く」なるように構成することは、当業者が容易になし得たものである。

(6)効果について
本願補正発明により奏される効果は、引用発明および引用文献2に記載の技術事項から、当業者が予測可能な範囲内のものである。

(7)請求人の主張について
請求人は、令和2年5月11日付けの審判請求書の「4.進歩性の説明」において、
「しかしながら、本願発明については今回の補正により、前兆演出と他の前兆演出とが種類の異なる演出であるという構成に、同種の演出の表示態様違いが含まれないことが明確になったものと思料します。
また、今回の補正により、前兆演出がその表示態様違いも含めて一切行われることなく、他の前兆演出が実行され得ることが明確になったものと思料します。
従って、本願発明と引用文献1に係る発明とは、前兆演出を何れの表示態様でも行うことなく、前兆演出の表示態様違いではなく前兆演出とは種類の異なる演出である他の前兆演出を実行可能である、という点において明らかに異なっています。
・・・・・
そして本願発明によれば次のような効果を奏します。すなわち、前兆演出の実行の有無で特別遊技状態になる期待度が変わるため、遊技者は時間演出が実行されるにしても前兆演出を伴うのか伴わないのかに関心を持ちながら遊技しており、このような中で前兆演出が一切実行されなくても、別種の演出である他の前兆演出が実行されるという演出パターンもあるため、遊技興趣が向上されます(段落0318等参照)。
このような効果は、「待機中」と表示する演出パターンしか有さない引用文献1の発明では奏し得ない効果です。
従いまして本願発明は、進歩性を有していると思料します。」と主張する。
そこで、請求人の主張について検討する。
本願補正発明の構成Hの「表示態様違いの演出ではなく」との構成は、前記「2-3(4)キ」において検討したように、引用発明に記載されている構成であるから、審判請求人の前記主張は採用することができない。

(8)小括
よって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されることとなったので、令和1年12月13日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の「1 補正の内容」に示した令和1年12月13日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1のとおりのものであると認める。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、次のとおりのものである。

(進歩性)この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



1.特開2015-211762号公報
2.特開2018-130393号公報

3 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(前記第2の「2-3(2)」における「引用文献1」に対応する。)の記載事項及び引用発明の認定については、前記第2の「2-3(2)」に記載したとおりであり、同じく、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(前記第2の「2-3(3)における「引用文献2」に対応する。)の記載事項及び引用発明2の認定については、前記第2の「2-3(3)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、それぞれ、前記第2の「2-2」で検討した本願補正発明の「前記前兆演出とは異なる種類の演出」に関して、構成Hの「前記前兆演出の表示態様違いの演出ではなく」との限定事項を削除するとともに、「前記他の前兆演出」の「実行」に関して、構成Hの「前記前兆演出を何れの表示態様でも行うことなく」との構成を「前記示唆画像を表示することなく」とするものである。
そして、前記「2-3(4)ク」で説示したとおり、引用発明の構成f、g及び構成h、iの、「演出制御用マイクロコンピュータ100は、」「計数演出画像」として「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出を行うことなく「計数演出画像」として「大きいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出を行うものである。
そして、「計数演出画像」として「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出を行うことなく「計数演出画像」として「大きいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示を表示する」演出を行えば、「計数演出画像」としての「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示」(本願発明の「示唆画像」に相当)は表示されないことは明らかである。
そうすると、引用発明の構成f、g及び構成h、iの「計数演出画像」としての「小さいタイマを模した画像を表示して「待機中」と表示する待機中表示」(本願発明の「示唆画像」に相当)は表示されないことは、本願発明の「前記示唆画像を表示することなく」に相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、本願補正発明と同様に、前記[相違点](構成G)において相違し、その余の点において一致する。
そして、当該相違点については、前記第2の「2-3(5)」において検討したとおりであるから、本願発明は、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用することにより当業者が容易になし得たものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-02-24 
結審通知日 2021-03-02 
審決日 2021-03-24 
出願番号 特願2019-31374(P2019-31374)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 知晋  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 小島 寛史
▲高▼木 尚哉
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人コスモス国際特許商標事務所  

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