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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1374234
審判番号 不服2020-695  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-17 
確定日 2021-05-12 
事件の表示 特願2018- 6582「4級アンモニウムムスカリン受容体アンタゴニストの噴霧可能組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月 7日出願公開、特開2018- 87203〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2007年5月25日(パリ条約による優先権主張 2006年5月26日 (US)米国)を国際出願日とする特願2009-513398号の一部を平成26年8月7日に新たな出願(特願2014-161093号)とし、さらにその一部を平成30年1月18日に新たな出願としたものであって、出願後の主な経緯は、以下のとおりである。

平成30年 2月16日 :手続補正書の提出
平成30年10月17日付け:拒絶理由通知
平成31年 4月23日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 1年 9月 6日付け:拒絶査定
令和 2年 1月17日 :審判請求書の提出
令和 2年 3月 4日 :審判請求の理由についての手続補正書(方式)(以下、「審判請求の理由補充書」という。)の提出

第2 本願発明

本願の請求項1?4に係る発明は、平成31年4月23日提出の手続補正書によって補正された請求項1?4に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
気管支収縮に関連する障害の処置または1種以上の症状の改善用キットであって:
(i) ネブライザー;
(ii) 気管支収縮に関連する障害の処置または1種以上の症状の改善用噴霧可能組成物であって:
(a) i) 4級アンモニウムムスカリン受容体アンタゴニストおよびii) フォルモテロールまたはその薬学的に許容される塩からなる活性成分であって、ここで、4級アンモニウムムスカリン受容体アンタゴニストがイプラトロピウムまたはチオトロピウム化合物であり、アンモニウムに基づいて0.0005重量%?5重量%の濃度であり、そしてフォルモテロールまたはその薬学的に許容される塩が、5μg/mL?2mg/mLの濃度である、活性成分;
(b) 薬理学的に許容される流体;および
(c) 薬理学的に許容される防腐剤を含み、
ここで、該組成物のpHが酸で2.0?4.5に調節されており、そして該4級アンモニウムムスカリン受容体アンタゴニストが該流体に溶解しており、そして該組成物が所望により薬理学的に許容される錯化剤、安定化剤、薬理学的に許容される共溶媒、または他の薬理学的に許容されるアジュバントおよび添加剤を含む、組成物;および
(iii) 気管支収縮に関連する障害の処置または1種以上の症状の改善を必要とする患者に対する該噴霧可能組成物の投与の指示書を含む包装材を含み;
ここで、該ネブライザーが、患者による吸入により噴霧組成物を放出し、吸入を停止したときに噴霧組成物の放出を停止するものであり、該噴霧可能組成物の該ネブライザーによる投与が、患者の体表面への噴霧組成物の最少暴露をもたらし、患者の口腔および肺に送達される4級アンモニウムムスカリン受容体アンタゴニストの量と比べて該アンタゴニストの周囲の雰囲気への損失が0.001%w/w未満である、キット。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?4に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものであり、その対象とされた請求項1に係る発明は、前記第2で認定した本願発明である。

<引用文献等一覧>
1.特表2004-501722号公報
2.特表2002-544239号公報
4.特表2000-504603号公報
5.特表2003-534882号公報
6.特表2001-514054号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

引用文献2には、以下の事項が記載されている。下線は、当審合議体によるものである。

(摘記2a)
「【請求項1】 持続性抗コリン作用剤及び持続性β-擬似剤を含有することを特徴とする医薬組成物。」

(摘記2b)
「【請求項10】 持続性抗コリン作用剤がチオトロピウムブロミドであり、持続性β-擬似剤がフォルモテロールフマレートであることを特徴とする請求項1?8のいずれか1項記載の医薬組成物。」

(摘記2c)
「【請求項12】 吸入により適用可能な医薬組成物であることを特徴とする請求項1?11のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項13】 それ自体公知の方法により、任意に他のアジュバント及び/又は担体物質と共に、持続性抗コリン作用剤及び持続性β-擬似剤を混合して製造することを特徴とする請求項1?12のいずれか1項記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項14】 呼吸性の病気を治療するための医薬を製造するための請求項1?13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項15】 喘息又はCOPDを治療するための医薬を製造するための請求項14記載の使用。」

(摘記2d)
「【0033】

本発明の活性物質組成物は、投薬エアゾールの形態で投与されるのが好ましい。しかしながら、他のあらゆる形態又は非経口又は経口投与が可能である。ここで、投薬エアゾールの適用態様は、特に閉塞性肺疾患の治療又は喘息の治療において好ましい投与形態である。
【0034】
噴射剤ガスを介して操作するエアゾール形態での適用に加えて、本発明の活性物質の組み合わせはまた、高圧下で薬理的に活性な物質の溶液を噴霧でき、その結果吸入可能な粒子のミストを得る、いわゆるアトマイザーにより投与することもできる。これらのアトマイザーの利点は、噴射剤ガスを使用することにより完全に分配できることである。
吸入用医薬は、通常水性又はエタノール性溶液中に溶解される。活性物質の溶液特性によるが、エタノール又は水の溶媒混合物もまた適当である。
【0035】
そのようなアトマイザーは、例えば、PCT特許出願第WO91/14468及び国際特許出願PCT/EP96/04351に記載されている。これらの文献の内容は本明細書に含まれる。Respimat(登録商標)の名称でも知られている本明細書に記載したアトマイザーにより、小さな噴出口を介し、高圧において、活性物質を含有する所定量の溶液を噴霧し、1?10μm、好ましくは2?5μmの好ましい粒径を有する吸入可能なエアゾールを得る。
特に、例えば、溶媒としてエタノールを含有する混合物が医薬製剤用の溶媒として使用するのに適当である。
【0036】
水とは別に、溶媒の他の成分は他の補助溶媒であってよく、該医薬製剤はまた香味料及び他の薬理学的アジュバントを含有することができる。補助溶媒の例としては、ヒドロキシル基又はアルコール、特にイソプロピルアルコール、グリコール、特にプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール及びポリオキシエチレン脂肪酸のエステル等の他の極性基を含有するものがあげられる。補助溶媒は、アジュバントの溶解度を向上させるのに適当であるが、活性物質の溶解度を適当に向上させてもよい。
【0037】
防腐剤、特にベンザルコニウムクロリド等の他の薬理学的アジュバントを添加することができる。防腐剤、特にベンザルコニウムクロリドの好ましい量は、8?12 mg/100 ml溶液である。

【0038】
最終的な医薬製剤中に溶解させた活性物質組成物の割合は、0.001?5%、好ましくは0.005?3%、特に0.01?2%である。医薬の最大濃度は、溶媒中での溶解度及び所望の治療効果を達成するのに必要な投与量に依存する。
以下の製剤形は、処方例として記載したものである。
【0039】
【表1】



上記摘記2a?2dの記載に照らせば、引用文献2には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「喘息又はCOPD等の呼吸性の病気を治療するための医薬組成物であって、333.3mg/100mLのフォルモテロールフマレート、333.3mg/100mLのチオトロピウムブロミド、10.0mg/100mlのベンザルコニウムクロリド、50.0mg/100mlのEDTAを含み、pHをHClで3.4に調整した、吸入により適用可能な医薬組成物。」

第5 対比

本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「喘息又はCOPD等の呼吸性の病気」、「フォルモテロールフマレート」、「チオトロピウムブロミド」、「ベンザルコニウムクロリド」、「EDTA」及び「HCl」はそれぞれ、本願発明における「気管支収縮に関連する障害」、「フォルモテロールまたはその薬学的に許容される塩」、「イプラトロピウムまたはチオトロピウム化合物」である「4級アンモニウムムスカリン受容体アンタゴニスト」、「薬理学的に許容される防腐剤」、「薬理学的に許容される錯化剤」及び「酸」に相当する。
引用発明の「333.3mg/100mL」というチオトロピウムブロミドの濃度は、本願発明における「アンモニウムに基づいて0.0005%?5重量%の濃度」に包含されるものである。
引用発明の「3.4」という「pH」の値は、本願発明の「2.0?4.5」という数値範囲に包含されるものである。
引用発明の「医薬組成物」は全量が100mLであることと、引用文献2の【0034】(上記摘記2d)の「吸入用医薬は、通常水性又はエタノール溶液中に溶解される」との記載からみて、引用発明の「医薬組成物」は「流体」を含み、当該「流体」に「チオトロピウムブロミド」は「溶解」しているといえる。
引用発明の「医薬組成物」は「安定化剤」、「薬理学的に許容される共溶媒」、「他の薬理学的に許容されるアジュバント」、「添加剤」を含むものではないが、本願発明において「安定化剤」、「薬理学的に許容される共溶媒」、「他の薬理学的に許容されるアジュバント」、「添加剤」は「所望により」噴霧可能組成物に含有され得る任意の付加的成分であることから、引用発明の「医薬組成物」が「安定化剤」等を含まない点をもって、本願発明との相違点とすることはできない。
本願発明における「噴霧可能組成物」と引用発明における「医薬組成物」とは、患者の吸入により適用される医薬組成物である点で、共通する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点において、一致及び相違するといえる。

<一致点>
「気管支収縮に関連する障害の処置用の医薬組成物であって、
(a)i)4級アンモニウムムスカリン受容体アンタゴニストおよびii)フォルモテロールまたはその薬学的に許容される塩からなる活性成分であって、ここで、4級アンモニウムムスカリン受容体アンタゴニストがイプラトロピウムまたはチオトロピウム化合物であり、アンモニウムに基づいて0.0005重量%?5重量%の濃度である活性成分;
(b) 薬理学的に許容される流体;および
(c) 薬理学的に許容される防腐剤を含み、
ここで、該組成物のpHが酸で2.0?4.5に調節されており、そして該4級アンモニウムムスカリン受容体アンタゴニストが該流体に溶解しており、そして該組成物が所望により薬理学的に許容される錯化剤、薬理学的に許容される共溶媒、または他の薬理学的に許容されるアジュバントおよび添加剤を含む、組成物であり、吸入により投与される、医薬組成物。」

<相違点1>
本願発明では、「フォルモテロールまたはその薬学的に許容される塩」の濃度が「5μg/mL?2mg/mLの濃度」であるのに対し、引用発明は同濃度が「333.3mg/100mL」、すなわち、3.333mg/mLである点。

<相違点2>
本願発明は、噴霧可能組成物に加え、「患者による吸入により噴霧組成物を放出し、吸入を停止したときに噴霧組成物の放出を停止する」「ネブライザー」、「気管支収縮に関連する障害の処置または1種以上の症状の改善を必要とする患者に対する該噴霧可能組成物の投与の指示書を含む包装材を含」む「キット」であると特定されているのに対し、引用発明にはそのような特定がない点。

<相違点3>
本願発明では、「該噴霧可能組成物の該ネブライザーによる投与が、患者の体表面への噴霧組成物の最少暴露をもたらし、患者の口腔および肺に送達される4級アンモニウムムスカリン受容体アンタゴニストの量と比べて該アンタゴニストの周囲の雰囲気への損失が0.001%w/w未満である」と特定されているのに対し、引用発明にはそのような特定がない点。

第6 判断

1 相違点1について

引用文献2の【0038】(摘記2d)には、活性成分の割合を0.001?5%、すなわち10μg/mL?50mg/mlの範囲とできることが記載されている。当該記載を参照し、引用発明の「フォルモテロールフマレート」の配合量を「10μg/mL?2mg/mL」以下としてみることに当業者が格別の技術的創意を要したとはいえない。

2 相違点2について

吸入による投与において活性成分の送達効率を高めることは自明の課題である。そして、活性成分の送達効率を高める手段として「患者による吸入により噴霧組成物を放出し、吸入を停止したときに噴霧組成物の放出を停止する」「ネブライザー」、すなわち、呼吸作動ネブライザーがあることは、例えば引用文献1、4?6に見て取れるように、当業者によく知られているから(引用文献1の特許請求の範囲、【0003】?【0004】、【0040】、図7、引用文献4の特許請求の範囲、第12頁第4行?第14頁第7行、第22頁第10行?第24頁第13行、第27頁第10?12行、図1、引用文献5の特許請求の範囲、【0003】?【0005】、【0037】?【0039】、図1、引用文献6の特許請求の範囲、【0004】?【0005】、【0021】?【0026】、図2、図9、図10)、引用発明において、患者の吸入により適用する手段として呼吸作動ネブライザーを採用してみることは当業者が適宜なし得たことである。
そして、医薬品製剤を提供するにあたり、患者に対する投与の指示書を添付することは技術常識であり、指示書を医薬品製剤とともに包装材に含め、キットとして提供することも常套手段であるところ、引用発明において、吸入可能な医薬組成物を、呼吸作動ネブライザー及び患者に対する投与の指示書とともに包装材に含め、キットとして提供してみることは、当業者が容易になし得たことである。

3 相違点3について

引用文献1、4?6に記載される呼吸作動ネブライザーは、患者が息を吸い込んだ時に選択的に噴霧動作を行うものであり、引用文献4の第27頁第10?12行には、同文献に開示されるネブライザーが、より少量のエアゾールしか周囲環境に逃散させないことが記載されている。呼吸作動ネブライザーの作動態様と、引用文献4の上記記載を勘案すれば、引用文献1、4?6に記載される呼吸作動ネブライザーが「患者の体表面への噴霧組成物の最少暴露」をもたらすものであることは、当業者が通常に理解できるといえる。
そして、本願発明の「患者の口腔および肺に送達される4級アンモニウムムスカリン受容体アンタゴニストの量と比べて該アンタゴニストの周囲の雰囲気への損失が0.001%w/w未満である」との特定は、呼吸作動ネブライザーがもたらす「患者の体表面への噴霧組成物の最少暴露」の程度を具体的に説明したものにすぎない。
そうすると、引用発明において、引用文献1、4?6に記載の呼吸作動ネブライザーを採用することが、上記2で説示したとおり、当業者が適宜なし得たことである以上、最小曝露をもたらす呼吸作動ネブライザーの機能として、雰囲気への損失の程度を一定の値以下に特定し、相違点3に係る本願発明の構成に想到することもまた、当業者が適宜なし得た事項といえる。

4 本願発明の効果について

本願明細書の【0095】?【0096】には、臭化チオトロピウムを5μg-5mg、防腐剤を5-15mg、緩衝液を0-30mg、水を適量100ml含み、pHを2.5-4.0に調整してなる噴霧可能組成物を調製したこと(実施例1)、当該組成物を滅菌し、単位用量バイアルに入れ、次いで呼吸作動ネブライザーに入れ得ること(実施例2)、呼吸作動ネブライザーで投与したときに臭化チオトロピウムの0.001%w/w未満の損失が起こることが予測されること(実施例2)が、記載されている。
しかし、呼吸作動ネブライザーが周囲環境へのエアゾールの逃散を少なくするに適したものであることは、引用文献4の第27頁第10?12行に見て取れるように、当業者に通常に認識されているところであるから、呼吸作動ネブライザーによる噴霧可能組成物の投与によって、活性成分の損失の量を低くしたという、本願明細書の実施例に記載される作用効果も、当業者が予測し得た事項にすぎないものといえる。
さらに言えば、「患者の口腔および肺」に送達されるべき活性成分の「周囲の雰囲気」への「損失」の量に影響を与える主な要因は、ネブライザーの性能であることが技術常識であるうえ、本願明細書【0096】の記載は、低い損失の量を実現する要因は呼吸作動ネブライザーの使用であることを窺わせるものである。そして、本願明細書【0076】、【0077】において、使用可能なネブライザーを開示する文献として例示される「米国特許5,823,179および6,044,841」はそれぞれ、引用文献4、6のファミリー文献であることも勘案すれば、本願発明の「0.001%w/w未満」という「周囲の雰囲気への損失」の量は、引用文献1、4?6に記載される呼吸作動ネブライザーを採用することで必然的にもたらされる結果と捉えられる。
してみれば、本願発明が格別顕著な作用効果を奏するものであるとはいえない。

5 請求人の主張について

審判請求人は、審判請求の理由補充書の請求の理由3.において、次の趣旨の主張している。

(1)引用文献2に引用文献1および4?6を組み合わせて参照したとしても、患者の体表面への噴霧可能組成物の最小暴露をもたらしつつ、気管支収縮に関連する障害または症状の処置において優れた治療効果が発揮されるという効果は、当業者といえども容易に想到し得ない。

(2)引用文献2に記載された発明は、持続性抗コリン作用剤と持続性β-擬似剤とを組み合わせることにより、不安、興奮、不眠等の中枢神経系の影響および頻脈、動悸等の心臓への影響などの望ましくない副作用を低減することができ、かつ向上した気管支痙攣効果が得られることを見出して完成されたものであり、患者の体表面への噴霧組成物の最小暴露をもたらし、顔面および/または眼等への刺激を減らすという本願発明とは、解決しようとする技術的課題において本質的に異なるものである。

しかし、引用文献1、4?6に記載される呼吸作動ネブライザーが「患者の体表面への噴霧組成物の最少暴露」をもたらすことを当業者が通常に理解できる点は、上記3で説示したとおりであるから、上記(1)の主張により、本願発明が進歩性を有するということはできない。
また、吸入による適用が予定されている引用発明において活性成分の送達効率を高めることは、上記2で説示したとおり、自明の課題であり、引用文献2に明示的に記載される技術的課題が望ましくない副作用の低減であるとしても、この点をもって、引用発明において引用文献1、4?6に記載の呼吸作動ネブライザーを採用することに当業者の創作能力を超える創意が要されたと結論づけることはできず、上記(2)の主張も採用することはできない。

6 小括

以上によれば、本願発明は、引用発明及び引用文献1、2、4?6の記載事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-11-17 
結審通知日 2020-11-24 
審決日 2020-12-15 
出願番号 特願2018-6582(P2018-6582)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (A61K)
P 1 8・ 537- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 清子  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 松本 直子
石井 裕美子
発明の名称 4級アンモニウムムスカリン受容体アンタゴニストの噴霧可能組成物  
代理人 松谷 道子  
代理人 山田 卓二  

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