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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1374285
審判番号 不服2020-12884  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-15 
確定日 2021-06-08 
事件の表示 特願2018-244925「医用画像表示端末および医用画像表示プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月27日出願公開、特開2019-103818、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月26日に出願された特願2014-266230号の一部を、平成30年12月27日に新たに出願したものであって、令和元年11月26日付けで拒絶理由が通知され、令和2年3月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年5月29日付けで同年3月30日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされたところ、同年9月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において令和3年3月30日付けで拒絶理由が通知され、同年4月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1 (新規性)本願出願時の請求項9に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。

2 (進歩性)本願出願時の請求項1及び2に係る発明は、以下の引用文献Aに、請求項3-5に係る発明は、以下の引用文献A及びBに、請求項6-8に係る発明は、以下の引用文献A及びCに、請求項10及び11に係る発明は、以下の引用文献A及びDに、それぞれ基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 (明確性)本願は、出願時の請求項5、12及び13の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

引用文献等一覧
A.特開2014-054358号公報
B.特開2012-048602号公報
C.国際公開第2008/050823号
D.国際公開第2014/034294号

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願の補正前の請求項1、8、11及び14に係る発明は、以下の引用文献1及び5に、本願の補正前の請求項2に係る発明は、以下の引用文献1、2及び5に、本願の補正前の請求項5-7に係る発明は、以下の引用文献1-3及び5に、本願の補正前の請求項9及び10に係る発明は、以下の引用文献1-5に、それぞれ基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2014-054358号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2012-048602号公報(拒絶査定時の引用文献B)
3.国際公開第2008/050823号(拒絶査定時の引用文献C)
4.国際公開第2014/034294号(拒絶査定時の引用文献D)
5.特開2014-160461号公報(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1?10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明10」という。)は、令和3年4月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。(下線は、補正箇所を示す。)

「 【請求項1】
ディスプレイと、タッチパネル式の操作入力装置と、制御部と、を備える医用画像表示端末であって、
前記制御部は、
前記ディスプレイに少なくとも1つの解剖学的構造物を含む医用画像を表示させることと、
操作者により、前記操作入力装置を介し同時に2箇所を一定時間以上継続して指定することで入力された第1の点および第2の点を特定することと、
前記第1および第2の点を結ぶ直線を切断基準線として、前記解剖学的構造物を複数に分割することと、
を行うように構成されており、さらに、
デフォルトの透過度である第1の透過度と、それとは異なる第2?第nの透過度(nは整数)が、前記医用画像表示端末に設定されており、
前記制御部は、
前記解剖学的構造物がタッチされたことを受け付け、
前記解剖学的構造物がタッチされた場合に、タッチされたその部位の画像の透過度を、前記第1?第nの透過度による表示を順次切り替えていくように構成されている、医用画像表示端末。
【請求項2】
前記第1?第nの透過度が少なくとも半透明状態であって、完全透過の状態を含まない、請求項1に記載の医用画像表示端末。
【請求項3】
前記制御部は、
解剖学的構造物を、画面上の所定位置に移動させる操作することを受け、
それに対応して、当該解剖学的構造物を非表示とするように構成されている、請求項1または2に記載に医用画像表示端末。
【請求項4】
前記移動させる操作が、フリック操作、ドラッグ操作、またはスワイプ操作のいずれかである、請求項3に記載の医用画像表示端末。
【請求項5】
前記制御部は、
一旦非表示とされた前記解剖学的構造物を、(i)画面上に直接サムネイル画像で表示させる、または、(ii)所定の操作があったときに画面上にサムネイル画像を出現させるように構成されている、請求項3または4に記載に医用画像表示端末。
【請求項6】
ディスプレイと、タッチパネル式の操作入力装置と、制御部とを備える医用画像表示端末であって、
前記制御部は、
前記ディスプレイに少なくとも1つの解剖学的構造物を含む医用画像を表示させることと、
操作者が前記操作入力装置で同時に2箇所を一定時間以上継続して指定することで入力された第1の点および第2の点のぞれぞれの座標情報を特定することと、
を行うように構成されており、さらに、
デフォルトの透過度である第1の透過度と、それとは異なる第2?第nの透過度(nは整数)が、前記医用画像表示端末に設定されており、
前記制御部は、
前記解剖学的構造物がタッチされたことを受け付け、
前記解剖学的構造物がタッチされた場合に、タッチされたその部位の画像の透過度を、前記第1?第nの透過度による表示を順次切り替えていくように構成されている、医用画像表示端末。
【請求項7】
前記制御部は、さらに、
前記第1および第2の点の少なくとも一方に、タッチ操作可能なグラフィカル画像を表示させ、
前記グラフィカル画像を移動させることでそれらの点の位置を微調整するように構成されている、請求項6に記載の医用画像表示端末。
【請求項8】
前記制御部は、さらに、
前記第1の点および第2の点を特定した後、操作者が、その2点のうち一方を、他方の点を中心として回転移動させる操作を受け付けて入力を受け付けて移動後の第2の点を特定し、
特定した前記3つの点によって規定される三角形または扇形の範囲を領域指定するように構成されている、請求項6に記載の医用画像表示端末。
【請求項9】
コンピュータに、
ディスプレイに少なくとも1つの解剖学的構造物を含む医用画像を表示させる処理と、
操作者により、タッチパネル式の操作入力装置を介し同時に2箇所を一定時間以上継続して指定することで入力された第1の点および第2の点を特定する処理と、
前記第1および第2の点を結ぶ直線を切断基準線として、前記解剖学的構造物を複数に分割する処理と、
を行わせ、
さらに、
デフォルトの透過度である第1の透過度と、それとは異なる第2?第nの透過度(nは整数)を前記コンピュータに設定し、
前記解剖学的構造物がタッチされたことを受け付ける処理と、
前記解剖学的構造物がタッチされた場合に、タッチされたその部位の画像の透過度を、前記第1?第nの透過度による表示を順次切り替えていく処理と、
を行わせる、医用画像表示プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
ディスプレイに少なくとも1つの解剖学的構造物を含む医用画像を表示させるステップと、
操作者により、タッチパネル式の操作入力装置を介し同時に2箇所を一定時間以上継続して指定することで入力された第1の点および第2の点を特定するステップと、
前記第1および第2の点を結ぶ直線を切断基準線として、前記解剖学的構造物を複数に分割するステップと、
を行わせ、
さらに、
デフォルトの透過度である第1の透過度と、それとは異なる第2?第nの透過度(nは整数)を前記コンピュータに設定し、
前記解剖学的構造物がタッチされたことを受け付けるステップと、
前記解剖学的構造物がタッチされた場合に、タッチされたその部位の画像の透過度を、前記第1?第nの透過度による表示を順次切り替えていくステップと、
を行わせる、医用画像表示方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
令和3年3月30日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引1a)「【0029】
本実施形態のタブレット端末1は、図1に示すように、入力された被検体の3次元医用画像を表示する表示画面10を備えている。表示画面10は、タッチパネルを構成する液晶画面であり、この表示画面10にユーザが触れることによって所定の操作入力が行われる。表示画面10上へのユーザの接触は、後述する操作検知部13によって検知され、この検知によってユーザによる操作入力が受け付けられる。なお、上記表示画面10と操作検知部13によって請求項における表示操作受付部が構成される。
【0030】
また、本実施形態のタブレット端末1は、本発明の医用画像表示プログラムの一実施形態がインストールされたものである。医用画像表示プログラムは、DVD,CD-ROM等の記録媒体や、ネットワークに接続された外部からアクセス可能なサーバコンピュータのなどに記憶されるものであり、医師などからの要求に応じて、上記記録媒体やサーバコンピュータから読み出されてタブレット端末1にダウンロードされてインストールされる。
【0031】
本実施形態のタブレット端末1は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリや、上述した医用画像表示プログラムがインストールされたハードディスクなどのストレージデバイスを備えている。そして、これらのハードウェアによって、図2に示すような画像取得部11、画像抽出部12、操作検知部13、処理設定部14、画像処理部15および表示制御部16が構成されている。そして、ハードディスクにインストールされた医用画像表示プログラムが中央処理装置によって実行されることによって上記各部がそれぞれ機能する。
【0032】
画像取得部11は、予め撮影された被検体の3次元医用画像を取得するものである。具体的には、CT検査やMRI検査において被検体を撮影した3次元医用画像を取得するものである。このような3次元医用画像は、たとえばデータサーバなどに予め保存されており、このデータサーバとタブレット端末1とを無線または有線を介して接続することによって3次元医用画像が取得される。
【0033】
画像抽出部12は、画像取得部11によって取得された3次元医用画像から解剖学的組織の3次元医用画像を抽出するものである。本実施形態においては、肝臓の3次元医用画像を抽出するものとするが、その他、頭、肺、大腸または血管などを抽出するようにしてもよい。なお、これらの解剖学的組織の抽出処理については、既に公知な技術であるので詳細な説明は省略する。」

(引1b)「【0045】
そして、まず、肝臓の3次元医用画像が表示された表示画面10上において、ユーザによって肝臓上の所望の点がタッチされた後、ドラッグ操作が行われ、これが第1操作入力として操作検知部13によって受け付けられる(S18)。
【0046】
操作検知部13によって第1操作入力が受け付けられると、画像処理部15が、処理設定部14に設定された処理テーブルを参照し、第1操作入力に対応する非剛体変形処理を肝臓の3次元医用画像に施す(S20)。」

(引1c)「【0054】
なお、上記実施形態の説明においては、第1操作入力としてユーザの一本の指でのドラッグ操作を受け付けるようにしたが、一本の指に限らず、図6に示すように、2本の指でのドラッグ操作を受け付け、その2本の指のドラッグ操作に応じた非剛体変形処理を肝臓の3次元医用画像に施すようにしてもよい。
【0055】
なお、このように2本の指のドラッグ操作を受け付ける場合、一方の指(たとえば人差し指)のドラッグ操作と、他方の指(たとえば親指)のドラッグ操作とが全く同じタイミングで行われた場合には、画像処理部15は、この2本の指のドラッグ操作を第1操作入力として認識することができるが、たとえば一方の指のタッチのタイミングと他方の指のタッチのタイミングとがずれるような場合には、画像処理部15は、最初のタッチによるドラッグ操作を第1操作入力として認識し、次のタッチによるドラッグ操作を第2操作入力として認識してしまうことになり、3次元医用画像に対する処理が指によって異なることになってしまう。
【0056】
そこで、このような問題が生じないように、画像処理部15は、予め設定された時間内に操作検知部13によって複数の操作入力が受け付けられた場合には、その複数の操作入力を同一順番の操作入力とみなしてその順番に対応した処理を3次元医用画像に施すようにする。すなわち、上述した2本の指での操作入力の場合、最初の指の操作入力と次の指の操作入力とが予め設定された時間内で行われた場合には、画像処理部15は、その2本の指の操作入力をともに第1操作入力として認識し、2本の指のドラッグ操作に対応する処理として非剛体変形処理を施すようにする。」

(2)引用文献1に記載された発明
上記(引1a)?(引1c)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「入力された被検体の3次元医用画像を表示する表示画面10を備え、
表示画面10は、タッチパネルを構成する液晶画面であり、
表示画面10にユーザが触れることによって所定の操作入力が行われ、
表示画面10上へのユーザの接触は、後述する操作検知部13によって検知され、この検知によってユーザによる操作入力が受け付けられ、
中央処理装置(CPU)および半導体メモリや、上述した医用画像表示プログラムがインストールされたハードディスクなどのストレージデバイスを備え、
これらのハードウェアによって、画像取得部11、画像抽出部12、操作検知部13、処理設定部14、画像処理部15および表示制御部16が構成され、
画像取得部11は、撮影された被検体の3次元医用画像を取得し、
画像抽出部12は、画像取得部11によって取得された3次元医用画像から解剖学的組織の3次元医用画像を抽出し、
第1操作入力として、2本の指でのドラッグ操作を受け付け、その2本の指のドラッグ操作に応じた非剛体変形処理を肝臓の3次元医用画像に施し、
画像処理部15は、予め設定された時間内に操作検知部13によって複数の操作入力が受け付けられた場合には、その複数の操作入力を同一順番の操作入力とみなしてその順番に対応した処理を3次元医用画像に施す
タブレット端末1。」

2 引用文献2について
引用文献2には、以下の事項が記載されている。

(引2A)「【0084】
図12Aに例示した頭部に対するハンマージェスチャの場合、取得条件特定部35がジェスチャ種別情報とジェスチャ部位情報のすべての組合せを用いて取得条件テーブル46を参照した結果、ジェスチャ種別「ハンマー」とジェスチャ部位「頭部」と関連づけられた情報種別条件である「頭骨・脳実質・脳血管VR合成」が得られる。検査部位条件としては、取得条件テーブル46の上記エントリを取得するのに用いられたジェスチャ部位情報である「頭部」が得られる。そして、医療情報管理サーバ2の医療情報検索部52では、検査部位条件を「頭部」、情報種別条件を「頭骨・脳実質・脳血管VR合成」とする検索条件に合致する情報No.16の頭骨・脳実質・脳血管VR合成画像データが抽出され、医療情報表示装置1の医療情報取得部36に送信される。医療情報表示制御部37は、図17に例示されたような頭骨・脳実質・脳血管VR合成画像を表示させる。なお、図17に示した頭骨・脳実質・脳血管VR合成画像は、頭部非造影CTおよび頭部造影CTのボリュームデータを用いてボリュームレンダリング処理を行い、得られた画像を合成することによって得られる。具体的には、頭部非造影CTのボリュームデータに対して、骨のCT値を有色不透明にするためのカラーテンプレートとオパシティカーブに基づいてボリュームレンダリング処理を行うことにより、頭骨全体のVR画像が得られる。同様に、頭部非造影CTのボリュームデータに対して、脳実質のCT値を有色不透明にするためのカラーテンプレートとオパシティカーブに基づいてボリュームレンダリング処理を行うことにより、脳実質全体のVR画像が得られる。さらに、頭部の左半分および右半分を表す非造影CTのボリュームデータに対しても同様のボリュームレンダリング処理を行うことにより、頭骨、脳実質の左半分、右半分を表すVR画像が得られる。一方、頭部造影CTのボリュームデータに対して、造影剤のCT値を有色不透明にするためのカラーテンプレートとオパシティカーブに基づいてボリュームレンダリング処理を行うことにより、脳血管全体のVR画像が得られる。最後に、これらのVR画像を図17に示したようなレイアウトになるように合成することによって、頭骨・脳実質・脳血管VR合成画像が得られる。なお、頭骨全体のVR画像(図17上段)、左右の頭骨のVR画像および脳実質のVR画像(図17中段)、左右の頭骨と脳実質のVR画像および脳血管全体のVR画像(図17下段)の順に各画像を切り替えて表示することによって、頭部を、外側の頭骨、その内側の脳実質の順に砕き割っていく様子を動画的に表現してもよい。」

3 引用文献3について
引用文献3には以下の事項が記載されている。

(引3a)「【0117】
なお、同様の手順により、合成画像を再度分解処理することもできる。図19において、領域.Dに表示されている合成画像に含まれる骨オブジェクトを選択し、骨オブジェクトを領域.Dから領域.Bに移動することにより、領域.Dの合成画像が分解され、領域.Dには血管オブジェクトが表示され、領域.Bには骨オブジェクトが表示される。」

4 引用文献4について
引用文献4には、以下の事項が記載されている。

(引4a)「【0049】
上記実施形態では、線分状の範囲カーソルを例に挙げて説明したが、計測範囲が角度や面積の場合には、計測角度を示す複数の線分や、計測範囲を示す面状の範囲カーソルを用いても良い。この場合にも、範囲カーソルを入力したときの終点に結果ラベルを付けて表示し、上記と同様の処理が行える。例えば、図9の(a)に示すように、被検体の脊椎131を撮像した医用画像130において、脊椎131の角度を計測する範囲カーソル81α及び範囲カーソル81βを設定し、範囲カーソル81α及び範囲カーソル81βの開き角を計測範囲として、その開き角の角度を計測し、その計測結果を結果ラベル82αに含んで表示してもよい。図9の(a)は、結果ラベル82αが範囲カーソル81βの終点から切り離され、範囲カーソル81α及び81βの端点に識別ラベル83α、83βが表示された状態を示す。角度計測のように、範囲カーソル81α、範囲カーソル81βの一方の端点同士を重ねて頂点を形成する場合には、識別ラベル及び結果ラベルを終点ではなく、線分状の範囲カーソルにおける開放端に連結するように構成してもよい。またこの例では、角度計測の場合に端点を重ねると記述したが、2つ以上の範囲カーソルの交点からも角度計測が行えることは言うまでも無い。」

(引4b)「【0060】
次に、図11乃至図13を用いて端点カーソルを用いて、範囲カーソルを設定し、また、設定後の範囲カーソルの端点の位置を微調整する処理について、説明する。図11は、端点カーソルを用いた範囲カーソルの入力及び編集処理の流れを示すフローチャートである。図12は、端点カーソルを用いた範囲カーソルの入力及び編集処理の流れに沿った画面遷移例を示す説明図であって、(a)は、ステップS201の画面表示例を示し、(b)は、ステップS203の画面表示例を示し、(c)は、ステップS204の画面表示例を示し、(d)は、ステップS205の画面表示例を示し、(e)は、ステップS207の画面表示例を示し、(f)は、ステップS208の画面表示例を示す。図13は、端点カーソルを用いて範囲カーソルの端点の位置を変更する処理を示す説明図であって、(a)は、変更前の状態を示し、(b)は、変更後の状態を示す。以下の説明では、端点カーソル85を連結して範囲カーソル81を表示する態様を「編集モード」といい、結果ラベル82又は識別ラベル83を連結して範囲カーソルを表示する態様を「確定モード」という。以下、図11のステップ順に沿って説明する。」

5 引用文献5について
引用文献5には以下の事項が記載されている。

(引5a)「【0075】
なお、前述した選択モードへの移行操作は、1本指による長押し操作に限らず、2本指のピンチ操作による長押し操作であっても良い。例えば、2点のマルチタッチ状態が所定時間(例えば0.6秒)以上継続したことによって、選択モードに移行するようにしても良い。この場合には、モード移行に係るピンチ操作より指定された2点の座標を結ぶ直線を対角線とする矩形に属するサムネイル全てを、選択モードに移行したときに選択態様で表示するようにすると良い。これによれば、選択モード移行後に改めて処理対象とするサムネイルを選択する操作を省略できる。」

第6 対比・判断
1 本願発明6について
事案に鑑み、本願発明6について検討する。
(1)対比
本願発明6と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「被検体の3次元医用画像」は、本願発明6の「医用画像」に相当する。そして、引用発明の「タブレット端末1」は、「入力された被検体の3次元医用画像を表示する」ものであるから、引用発明の「入力された被検体の3次元医用画像を表示する」「タブレット端末1」は、本願発明6の「医用画像表示端末」に相当する。

イ 引用発明の「表示画面10」は、「タッチパネルを構成する液晶画面であ」るから、「表示画面10」は、ディスプレイと、タッチパネル式の操作入力装置を有しているといえる。また、引用発明の「タブレット端末1は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリや、上述した医用画像表示プログラムがインストールされたハードディスクなどのストレージデバイスを備え、これらのハードウェアによって、画像取得部11、画像抽出部12、操作検知部13、処理設定部14、画像処理部15および表示制御部16が構成され」ているから、「画像取得部11、画像抽出部12、操作検知部13、処理設定部14、画像処理部15および表示制御部16」を「構成」する「これらのハードウェア」は、本願発明6の「制御部」に相当する。
そうすると、「タッチパネルを構成する液晶画面であ」る「表示画面10」と「画像取得部11、画像抽出部12、操作検知部13、処理設定部14、画像処理部15および表示制御部16」を「構成」する「これらのハードウェア」を備える「タブレット端末1」は、本願発明6の「ディスプレイと、タッチパネル式の操作入力装置と、制御部と、を備える医用画像表示端末」に相当する。

ウ 引用発明の「解剖学的組織」は、本願発明6の「解剖学的構造物」に相当する。そして、引用発明の「表示画面10」に「表示」される「入力された被検体の3次元医用画像」は、「解剖学的組織の3次元医用画像」を含んでいるから、引用発明の「表示画面10」に「解剖学的組織の3次元医用画像」を含む「3次元医用画像」を表示させることは、本願発明6の「前記ディスプレイに少なくとも1つの解剖学的構造物を含む医用画像を表示させること」に相当する。

エ 引用発明は、「3次元医用画像が表示された表示画面10上において、ユーザによって肝臓上の所望の点がタッチされた後、ドラッグ操作が行われ、これが第1操作入力として操作検知部13によって受け付けられ、操作検知部13によって第1操作入力が受け付けられると、画像処理部15が、処理設定部14に設定された処理テーブルを参照し、第1操作入力に対応する非剛体変形処理を肝臓の3次元医用画像に施し」、「第1操作入力として、2本の指でのドラッグ操作を受け付け、その2本の指のドラッグ操作に応じた非剛体変形処理を肝臓の3次元医用画像に施し、画像処理部15は、予め設定された時間内に操作検知部13によって複数の操作入力が受け付けられた場合には、その複数の操作入力を同一順番の操作入力とみなしてその順番に対応した処理を3次元医用画像に施す」ものであって、「第1操作入力として、2本の指でのドラッグ操作を受け付け」「画像処理部15は、予め設定された時間内に操作検知部13によって複数の操作入力が受け付けられた場合には、その複数の操作入力を同一順番の操作入力とみなし」「その2本の指のドラッグ操作に応じた非剛体変形処理を肝臓の3次元医用画像に施し」ている。そして、「その2本の指のドラッグ操作に応じた剛体変形処理を肝臓の3次元医用画像に施」すためには、「その2本の指のドラッグ操作」の位置のぞれぞれの座標情報を特定しなければならないから、引用発明の「第1操作入力として、2本の指でのドラッグ操作を受け付け」「画像処理部15は、予め設定された時間内に操作検知部13によって複数の操作入力が受け付けられた場合には、その複数の操作入力を同一順番の操作入力とみなし」「その2本の指のドラッグ操作に応じた非剛体変形処理を肝臓の3次元医用画像に施」すために、「その2本の指のドラッグ操作」の位置のぞれぞれの座標情報を特定することは、本願発明6の「操作者が前記操作入力装置で同時に2箇所を一定時間以上継続して指定することで入力された第1の点および第2の点のぞれぞれの座標情報を特定すること」に相当する。

オ 以上ア?エより、本願発明6と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)「ディスプレイと、タッチパネル式の操作入力装置と、制御部とを備える医用画像表示端末であって、
前記制御部は、
前記ディスプレイに少なくとも1つの解剖学的構造物を含む医用画像を表示させることと、
操作者が前記操作入力装置で同時に2箇所を一定時間以上継続して指定することで入力された第1の点および第2の点のぞれぞれの座標情報を特定することと、
を行うように構成された、医用画像表示端末。」

(相違点)制御部が、本願発明6は、「さらに、デフォルトの透過度である第1の透過度と、それとは異なる第2?第nの透過度(nは整数)が、前記医用画像表示端末に設定されており」、「前記解剖学的構造物がタッチされたことを受け付け、前記解剖学的構造物がタッチされた場合に、タッチされたその部位の画像の透過度を、前記第1?第nの透過度による表示を順次切り替えていくように構成されている」のに対し、引用発明には、そのような特定がない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
引用文献2には、「頭部非造影CTのボリュームデータに対して、骨のCT値を有色不透明にするためのカラーテンプレートとオパシティカーブに基づいてボリュームレンダリング処理を行うことにより、頭骨全体のVR画像が得られる。同様に、頭部非造影CTのボリュームデータに対して、脳実質のCT値を有色不透明にするためのカラーテンプレートとオパシティカーブに基づいてボリュームレンダリング処理を行うことにより、脳実質全体のVR画像が得られる」と「頭部非造影CTのボリュームデータ」に対して、「オパシティカーブに基づいてボリュームレンダリング処理を行うことにより」、「骨のCT値を有色不透明にする」等の処理を行うと、画像の透明度をオパシティカーブに基づいて設定する構成が記載されているが、タッチ等の入力により設定するものではない。
また、「デフォルトの透過度である第1の透過度と、それとは異なる第2?第nの透過度(nは整数)が、前記医用画像表示端末に設定されており、前記解剖学的構造物がタッチされたことを受け付け、前記解剖学的構造物がタッチされた場合に、タッチされたその部位の画像の透過度を、前記第1?第nの透過度による表示を順次切り替えていくよう」な構成は、引用文献3?5に記載されていないし、本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明1?5及び7?10について
本願発明1、9及び10も、本願発明6の「デフォルトの透過度である第1の透過度と、それとは異なる第2?第nの透過度(nは整数)が、前記医用画像表示端末に設定されており、前記解剖学的構造物がタッチされたことを受け付け、前記解剖学的構造物がタッチされた場合に、タッチされたその部位の画像の透過度を、前記第1?第nの透過度による表示を順次切り替えていくよう」な構成と技術的に同等な構成を備えるものであるから、本願発明6と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
そして、本願発明1を引用する本願発明2?5及び本願発明6を引用する本願発明7及び8も、本願発明6と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和3年4月20日付けの補正により、補正後の請求項1?10は、技術的に「デフォルトの透過度である第1の透過度と、それとは異なる第2?第nの透過度(nは整数)が、前記医用画像表示端末に設定されており、前記解剖学的構造物がタッチされたことを受け付け、前記解剖学的構造物がタッチされた場合に、タッチされたその部位の画像の透過度を、前記第1?第nの透過度による表示を順次切り替えていくよう」な構成を有するものとなった。当該「デフォルトの透過度である第1の透過度と、それとは異なる第2?第nの透過度(nは整数)が、前記医用画像表示端末に設定されており、前記解剖学的構造物がタッチされたことを受け付け、前記解剖学的構造物がタッチされた場合に、タッチされたその部位の画像の透過度を、前記第1?第nの透過度による表示を順次切り替えていくよう」な構成は、原査定における引用文献A-D(当審拒絶理由における引用文献1?4)には記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1-10は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Dに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-05-24 
出願番号 特願2018-244925(P2018-244925)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 113- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 亀澤 智博  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
福島 浩司
発明の名称 医用画像表示端末および医用画像表示プログラム  
代理人 伊藤 克博  

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