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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H01R |
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管理番号 | 1374293 |
審判番号 | 不服2020-9129 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-30 |
確定日 | 2021-06-09 |
事件の表示 | 特願2015- 87973号「コンセント」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日出願公開、特開2016-207475号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年4月22日の出願であって、平成30年12月13日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年5月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月26日付けで拒絶の理由が通知され、指定した期間内に応答がなかったため令和2年3月26日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年6月30日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年8月6日付けで前置報告がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 理由1.(新規事項)令和元年5月7日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 理由2.(進歩性)この出願の請求項1及び2に係る発明は、以下の引用文献1?4に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献 1.実公昭55-52621号公報 2.特開2009-146880号公報 3.登録実用新案第3179678号公報 4.実願昭56-134188号(実開昭58-41593号)のマイクロフィルム 第3 審判請求時の補正について 令和2年6月30日の審判請求と同時にされた手続補正による補正(以下、「審判請求時の補正」という。)は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正は、 補正前の請求項1の「前記切替手段は、前記ロック機構がロック状態、あるいはロック解除状態へと切り替わることに連動して前記電源プラグへの給電の開始又は給電の停止を切り替える」との記載を、「前記切替手段は、前記ロック機構がロック状態からロック解除状態へと切り替わることに連動して、電源プラグの栓刃が挿入口に挿入された状態で前記電源プラグへの給電を停止する」(下線部は補正箇所を示す。以下同様。)とし、 補正前の請求項4の「前記突起部に向けて突出し、・・・(中略)・・・第2の押圧部」との記載を、「前記操作レバーの表面から突出して、・・・(中略)・・・第2の押圧部」とするものである。 前者の補正は、請求項1に係る発明の「切替手段」について、給電を停止する状態を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。 後者の補正は、原査定の拒絶理由である特許法第17条の2第3項違反を解消するためにした補正であり、明瞭でない記載の釈明を目的としたものといえる。 そして、前者の補正は、明細書の段落【0023】及び【0025】の記載から導き出せる事項であり、後者の補正は、明細書の段落【0026】の記載から導き出せる事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1?5に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願の請求項1?5に係る発明(以下、「本願発明1?5」という。)は、令和2年6月30日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は次のとおりのものである。 〔本願発明1〕 「下向きに開口して各種機器の電源プラグの栓刃が挿入される挿入口を有するコンセントであって、 前記挿入口が形成された筐体と、 前記筐体の内部空間に配備され、前記挿入口に挿入された栓刃に接触導通する受刃端子と、 前記受刃端子を押圧して前記挿入口に挿入された栓刃の脱落を防ぐロック機構と、 前記ロック機構がロック状態に遷移した場合に前記受刃端子を介して前記電源プラグへの給電を開始する切替手段と、を有し、 前記切替手段は、前記ロック機構がロック状態からロック解除状態へと切り替わることに連動して、電源プラグの栓刃が挿入口に挿入された状態で前記電源プラグへの給電を停止することを特徴とする、 コンセント。」 なお、本願発明2?5は、本願発明1を減縮した発明である。 第5 引用文献 1.引用文献1に記載された事項及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。以下同様。 (1) 「本考案は例えばコンセントなどの防水形配線装置に係り、電線接続構造に関する。」(1欄下から3?2行) (2) 「次に考案の一実施例の構造をコンセント装置の図面について説明する。 1は器具本体で、・・・」(2欄12?14行) (3) 「次に8は配線器具としてのコンセントで、このコンセント8は電気絶縁材料にて函状に形成されたコンセントケース9と、受刃10および引締め端子11とにて形成されている。」(2欄27?30行) (4) 「また前記コンセントケース9の前面にはプラグ(図示せず)の一対または複数対の栓刃挿入孔18が形成されている。さらにこのコンセントケース9には前記各栓刃挿入孔18に対向して連通する刃受収納部19が形成されている。この刃受収納部19に収納される刃受10はプラグ(図示せず)の栓刃を弾力的に挟着する接触片部20が略U字状に折曲され、前記栓刃挿入孔18に対向する接触片部20の先端には栓刃(図示せず)の挿通案内部21が拡開形成されている。」(3欄3?12行) (5) 「次に前記引締め端子11には前記刃受10の基部22がリベットなどにて固着されている。」(3欄13?14行) (6) 「また前記コンセントケース11(当審注、「11」は「9」の誤記と認める。)の下面背部側に前記端子11の引締め部23に対向して電線挿通用切欠部25が形成され、また蓋体14の下部側には電線挿通用切欠部25に連通して端子ねじ24の引締め用切欠26が形成されている。」(3欄24?28行) (7) 「コンセント8の端子11に電線30を接続する際には、図示のようにドライバー31を器具本体1の背面斜め上部よりコンセントケース9の蓋体14の切欠26を通して端子ねじ24に係合して回動させ、端子ねじ24を弛める。また埋込みボックスなどより導出されている電線30の芯線部32をコンセントケース9の切欠部25に斜め下方より挿入して端子11の引締め部23と端子ねじ24に介装した座金33との間に挿入し、ドライバー31にて端子ねじ24を締付けて電線30をコンセント8に接続する。」(3欄35行?4欄4行) (8) 図面から、器具本体1から外形を形成される防水形配線装置は、下向きに開口してプラグの栓刃が挿入されるものであることを看取できる。 以上の記載事項から見て、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 〔引用発明〕 「下向きに開口してプラグの栓刃が挿入される栓刃挿入口18を有する防水形配線装置であって、 前記栓刃挿入口18が形成されたコンセントケース9と、 前記コンセントケース9には前記栓刃挿入孔18に対向して連通する刃受収納部19が形成され、この刃受収納部19に収納され、栓刃を弾力的に挟着する接触片部20を有した刃受10と、を有した、 防水形配線装置。」 2.引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 「【0001】 本発明は、コンセントに関し、特にコンセントのケースの中に電源制御ユニット、未導通のクリップ、電源導電片を配置することにより、プラグが差し込まれるとクリップ、電源導電片を導通させ、プラグが差し込まれていない場合に通電せず断電状態を維持し、安全効果を果たすことを可能にするコンセントに関するものである。そのうちの電源制御ユニットは扉部を有する。プラグが差し込まれると扉部を開くことが可能である。プラグが差し込まれていない場合、扉部は上殻部の通電差し込み口を遮断し、塵侵入防止と水浸入防止などの効果を果たすことが可能である。」 (2) 「【0005】 本発明の一実施形態によるコンセントは、図1から図8に示すように、底殻部10、上殻部15および電源制御ユニット20を備から構成される。そのうち底殻部10は、二つのクリップ11、接地線クリップ14および二つのクリップ11に対応する電源固定片13と電源導電片12とを有する。プラグが差し込まれる前、電源導電片12はクリップ11に接触せず、クリップ11は断電状態を呈する。上殻部15は、二つの二つの通電差し込み口16、接地線差し込み口17および貫通孔18を有する。電源制御ユニット20は、制御柱部24と制御部25とを有し、制御柱部24は上殻部15の貫通孔18を貫通して外部に突出する突出部241を有し、制御部25は二つの電源導電片12の間に位置付けられる。プラグが上殻部15の通電差し込み口16に差し込まれると、突出部241、制御柱部24および制御部25は下に押され、制御部25は二つの電源導電片12を二つのクリップ11に接触させるように圧迫するため、電源導電片12の電源をクリップ11に導通させることが可能である。また電源制御ユニット20は、底殻部10に装着される固定座21を有し、固定座21は制御柱部24を貫通させて装着するため穿孔22を有し、制御柱部24はスプリング242を有するため、制御柱部24とその下端に装着される制御部25は固定座21の穿孔22に沿って垂直に昇降することが可能である。また電源制御ユニット20の固定座21は、軸座23を有し、軸座23は二つの扉部26と二つの軸心27とを有する。二つの軸心27の間は復元スプリング28を有し、二つの扉部26は溝部260を有する。制御柱部24は上端に片状のフック部240を有する。プラグが上殻部15の通電差し込み口16に差し込まれていない場合、二つの扉部26は通電差し込み口16を遮蔽し、扉部26の溝部260と制御柱部24の片状のフック部240とは係合される。プラグが上殻部15の通電差し込み口16に差し込まれると、二つの扉部26は開けられる。また上殻部15は両端の係止部19に逸脱制御部190を有し、二つの係止部19の作動によって逸脱制御部190を押すことが可能である。 【0006】 また、電源導電片12、電源固定片13、クリップ11および接地線クリップ14は、銅片によって導電することが可能である。電源制御ユニット20の制御柱部24、扉部26、固定座21および制御部24は絶縁性のプラスチックから構成される。 図3に示すように、外部の電源の電源コードが電線固定片上の電源導電片12に接続され、プラグ30がまだ差し込まれていない時、突出部241、制御柱部24、制御部25は上昇状態を呈し、制御部25はまだ電源導電片12に突き当たっていないため、電源導電片12はまだクリップ11に接触せず、クリップ11は無電状態を呈する。かつ二つの扉部26は復元スプリング28の弾力によって牽引されたため、上殻部15の通電差し込み口16を遮蔽する。 【0007】 図4に示すように、プラグ30のブレードがクリップ11の中に差し込まれると、二つの扉部26は開けられ、突出部241、制御柱部24および制御部25は下に押され、制御部25は二つの電源導電片12を二つのクリップ12に接触させるように圧迫するため、クリップ12によって通電効果を得ることが可能である。プラグ30を引き抜くと、制御柱部24と制御部25とは、図3に示すようにスプリング242の弾力によって上昇し、クリップ12を断電状態に復元させることが可能である。図5に示すように、悪戯で異物(釘、鉄線等)が差し込まれても、クリップ11に接触することはできるが、制御柱部24と制御部とを降下させることはできないため、電源導電片12はまだクリップ11に接続されず、クリップ11はまだ無電状態を呈する。従って、感電危険を引き起こすことがない。 【0008】 プラグ30を差し込むことでなく、手で制御柱部24の突出部241のみを押す場合、二つの扉部26を開くにはプラグ30のブレードを差し込むことが必要であるため、二つの扉部26の溝部260と制御柱部24の片状のフック部240とは係合される。図3に示すように、扉部26は片状のフック部240と制御柱部24とをけん制することが可能である。従って、突出部241を押しても、制御柱部24と制御部25を降下させ、二つの扉部26を開けることはできない。」 3.引用文献3に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 「【0001】 本考案はソケット構造に関し、より詳しくは、プラグ端子の抜け止め可能且つ挿入されるプラグをあらかじめロックするソケットに関する。」 (2) 「【0015】 まず、本考案のプラグ端子の抜け止め可能なソケットの第1実施形態について説明する。なお、本考案の第1実施形態の構成を図1から図10に示す。 (第1実施形態) 図1及び図2によれば、本考案のプラグ端子の抜け止め可能なソケット1は電気を供給する導線2に接続され、少なくとも2つの導電端子31を有するプラグ3(図7或いは図9を参照)を挿入することによって導電性接続がなされる。ソケット構造1は主に下端絶縁ケース体11、一対の電極フィルム構造12、上端絶縁ケース体13及びスライド14によって構成される。 【0016】 下端絶縁ケース体11は2つの挿入孔111を開設する前端面112を有し、プラグ3の両導電端子31をそれぞれ挿入させ、前端面112の後方側面は壁113が延長され、上方が開いている収納空間114が形成され、前記前端面112が形成する後端面115は少なくとも2つの欠切116を有し、それぞれ電極フィルム構造12に嵌め込まれる。 【0017】 それぞれの電極フィルム構造12と挿入されるプラグ3の導電端子31は挟持接触し、それぞれの電極フィルム構造12前段には2つの前方に向かって間隔が徐々に縮まり、さらに広がる弾力部材121があり、後段には前記2つの弾力部材121と接触する結合部122が形成され、末端には前記導線2の芯線21と接続する接線部123が形成される。 【0018】 上端絶縁ケース体13は下端絶縁ケース体11の収納空間114上方を覆い、上端絶縁ケース体13壁の底面は収納空間114内の対応する前記2個の挿入孔111方向に向かう一対の間隔を有する狭持部材131を形成し、図3を参照すると、それぞれの挟持部材131は少なくとも1つの自由端部132を有し、端部132外側には大円弧部133が形成され、内側には小円弧部134が形成され、大円弧部133は電極フィルム構造12の両弾力部材121の間隔が徐々に縮まる位置の傍に位置し、上端絶縁ケース体13は2つの挟持部材131の間に溝部135を開設させる。 【0019】 スライド14はスライド式で溝部135内に設けられ、下に向かって延長し2つの挟持部材131の間に位置する凸部141を有し、その組み合わせは図4から図6を参照されたい。スライド14が平常時のオンの位置に位置するとき、凸部141は両挟持部材131の間を介し、無接触であり、図7及び図7Aに示すように、プラグ3は前端面112の挿入孔111を貫通し、両弾力部材121の間に挿入され、抜き出すことも可能である。 【0020】 図8及び図8Aによれば、スライド14がロック位置に押されるとき、凸部141前端は2つの小円弧部134を押し、前記2つの大円弧部133はそれぞれ前記2つの電極フィルム構造12の内側の弾力部材121を押すようにさせ、前記2つの電極フィルム構造12はそれぞれプラグ3の導電端子31を係止し、プラグ3を抜け出せなくさせる。 【0021】 もしプラグ3を抜き出そうとするのであれば、スライド14をオープンの位置に押し戻し、図7に示すように、凸部141は位置を移動させ、プラグ3の導電端子31のロックを解除し、プラグ3を抜き出す。」 4.引用文献4に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 「一般に、電源プラグとコンセントに代表される着脱自在のコネクタ類は、一方で接続状態を補強する手段が講じられ、例えば電源コンセントについては第1図に示すように電源プラグ1のプラグ刃2,2を強固に保持して接触抵抗を少なくするような接触板3,3を外装絶縁体4に収容して構成されている。即ち、絶縁体4の中央部には電源プラグ1のコード5を接続したプラグ刃2を、上部の弾性力で挟持するよう折り曲げて形成された接触板3,3が収容されるように穴6,6を穿設してある。前記接触板3は、接続板7と連設してビス8にて固定され、外部の接続コードと継ながれるようになつている。 このように構成された電源コンセントにあつては、接触板3,3を弾性力を有するように凸部を互いに対向して折り曲げ、この中央へプラグ刃2,2を挿着させることによつて電源プラグ1の接続或は電圧印加が行なわれている。 ところが、このような電源コンセントは電流容量の許容値を規格内で最大値に画一化しているため、プラグ刃2,2との接触抵抗に重点を置いた仕様にしてある。つまり、接触板3,3の上部凸部とプラグ刃2,2を確実に接触させることにより挿入力及び脱去力が、この弾性カで挟持する分増加されている。したがつて、このプラグ1を手動によつて電源コンセントに着脱時とくに脱去させる際には、かなりの力が必要なため、電源プラグ1の把持部を引つぱると共にコード5も引張してしまい挿脱頻度の高い使用にあつては電源プラグ1とコード5との接合部が劣化し接合が外れたり、コード3内の導線が切断する等の事故が発生する虞れがある。」(明細書2頁1行?3頁13行) 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 後者の「プラグ」は、前者の「各種機器の電源プラグ」に相当し、以下同様に、「栓刃」は「栓刃」に、「栓刃挿入口18」は「挿入口」に、「防水形配線装置」は「コンセント」に、「コンセントケース9」は「筐体」に、それぞれ相当する。 後者の「コンセントケース9に」形成された「栓刃挿入孔18に対向して連通する刃受収納部19」は、前者の「筐体の内部空間」に相当する。 後者の刃受収納部19に「収納」されることは、前者の筐体の内部空間に「配備」されることに相当する。 後者の「栓刃を弾力的に挟着する接触片部20を有した刃受10」は、直前の「この刃受収納部19に収納され」との事項から、刃受収納部19に収納されたものであるので、ここでいう栓刃は栓刃挿入口18に挿入されたものであるといえる。そうすると、後者の「栓刃を弾力的に挟着する接触片部20を有した刃受10」は、前者の「挿入口に挿入された栓刃に接触導通する受刃端子」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 〔一致点〕 「下向きに開口して各種機器の電源プラグの栓刃が挿入される挿入口を有するコンセントであって、 前記挿入口が形成された筐体と、 前記筐体の内部空間に配備され、前記挿入口に挿入された栓刃に接触導通する受刃端子と、を有した、 コンセント。」 〔相違点〕 本願発明1は「受刃端子を押圧して挿入口に挿入された栓刃の脱落を防ぐロック機構」と、「ロック機構がロック状態に遷移した場合に受刃端子を介して電源プラグへの給電を開始する切替手段」とを有し、「切替手段は、ロック機構がロック状態からロック解除状態へと切り替わることに連動して、電源プラグの栓刃が挿入口に挿入された状態で電源プラグへの給電を停止する」との事項を有しているのに対して、引用発明は、ロック機構及び切替手段を備えるものではない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討する。 ア 引用文献2には、段落【0005】(上記第5の2.(2)を参照。)には、「プラグが差し込まれる前、電源導電片12はクリップ11に接触せず、クリップ11は断電状態を呈」し、「プラグが上殻部15の通電差し込み口16に差し込まれると、突出部241、制御柱部24および制御部25は下に押され、制御部25は二つの電源導電片12を二つのクリップ11に接触させるように圧迫するため、電源導電片12の電源をクリップ11に導通させる」ことが記載されている。当該記載によれば、電源導電片12をクリップ11へ圧迫して接触させることは、プラグへの給電を開始するためのものであり、プラグ30のブレードがクリップ11から脱落するのを防ぐためのものとまではいえない。 引用発明に、引用文献2に記載された事項を適用しても、プラグの栓刃へ刃受10を圧迫させて導通させる構造が得られるに留まり、栓刃の脱落を防ぐロック機構までが得られるものではなく、相違点に係る本願発明1の構成に至らない。 イ 引用文献3には、挿入されたプラグ3の導電端子31を挟持接触する電極フィルム構造12において、スライド14がロック位置に押されるとき、スライド14の凸部141前端が挟持部材131の小円弧部134を押すことで、大円弧部133が電極フィルム構造12の内側の弾力部材121を押し、電極フィルム構造12はそれぞれプラグ3の導電端子31を係止し、プラグ3を抜け出せなくさせることが記載されている(上記第5の3.(2)、段落【0017】、【0019】、【0020】を参照。)。 しかしながら、引用文献3には、スライド14をロック位置にしてプラグ3を抜け出せなくしたときに、プラグ3の導電端子31への通電を開始すること、及び、プラグ3を抜け出せるようにしたときに、プラグ3の導電端子31への通電を停止することは、記載も示唆もされていない。 そうすると、引用発明に、引用文献3に記載された事項を適用しても、相違点に係る本願発明1の「切替手段」までが得られるものではなく、相違点に係る本願発明1の構成に至らない。 ウ 引用文献4には、電源コンセントの接触板3,3を弾性力を有するように凸部を互いに対向して折り曲げ、この中央へ電源プラグ1のプラグ刃2,2を挿着させることによって、電源プラグ1の接続を強固にし接触抵抗を少なくして電圧印加が行なわれることが記載されている(上記第5の4.を参照。)。 引用発明に、引用文献4に記載された事項を適用しても、引用発明の「プラグ(図示せず)の栓刃を弾力的に挟着する接触片部20が略U字状に折曲され」(上記第5の1.(4)を参照。)ている受刃10が、より弾性を有するように折り曲げられるに留まり、相違点に係る本願発明1の構成に至らない。 エ 引用文献3及び4から、電源コンセントに挿入されたプラグの栓刃を強固に挟持することが周知の事項であるとしても、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用したものが、前記周知の事項のように構成されているとは認められず、相違点に係る本願発明1の構成に至らない。 オ 他に、相違点に係る本願発明1の構成が当業者にとって容易に想到し得たことを示す証拠もない。 カ 以上のとおりであるから、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.本願発明2?5について 本願発明2?5は、本願発明1の構成を全て含みさらに減縮するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 原査定について 1.理由1(特許法第17条の2第3項)について 原査定は、令和1年5月7日の手続補正による補正後の請求項4の「前記突起部に向けて突出し、前記ロック機構がロック状態である場合に前記切替手段の突起部を押圧し、前記ロック機構がロック解除状態である場合に前記突起部の押圧を解除する第2の押圧部」との記載における「第2の押圧部」が「突起部に向けて突出」するとの事項は、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面に記載されたものではない、というものである。 しかしながら、審判請求時の補正により、請求項4の上記箇所は「前記操作レバーの表面から突出して、前記ロック機構がロック状態である場合に前記切替手段の突起部を押圧し、前記ロック機構がロック解除状態である場合に前記突起部の押圧を解除する第2の押圧部」(下線は補正箇所を示す。)と補正され、原査定の理由1は解消され、維持することはできない。 2.理由2(特許法第29条第2項)について 審判請求時の補正により、本願発明1?5は、「受刃端子を押圧して挿入口に挿入された栓刃の脱落を防ぐロック機構」と、「ロック機構がロック状態に遷移した場合に受刃端子を介して電源プラグへの給電を開始する切替手段」とを有し、「切替手段は、ロック機構がロック状態からロック解除状態へと切り替わることに連動して、電源プラグの栓刃が挿入口に挿入された状態で電源プラグへの給電を停止する」との事項を有するものとなっており、上記「第6 対比・判断」で検討したとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?4に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定の理由2を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-05-12 |
出願番号 | 特願2015-87973(P2015-87973) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01R)
P 1 8・ 55- WY (H01R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 杉山 健一、濱田 莉菜子、前田 仁、高橋 学 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
平田 信勝 尾崎 和寛 |
発明の名称 | コンセント |
代理人 | 押久保 政彦 |