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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1374456
審判番号 不服2019-12967  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-30 
確定日 2021-05-27 
事件の表示 特願2017-207856「ゲーム装置、及び、ゲーム装置のプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月23日出願公開,特開2019- 76651〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,平成29年10月27日の出願であって,平成31年3月14日付けで拒絶理由が通知され,令和1年5月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年6月28日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされた。
本件拒絶査定不服審判は,原査定を取り消す,本件出願の発明は特許をすべきものであるとの審決を求めて,同年9月30日に請求されたものであって,本件の請求と同時に手続補正書が提出された。

第2 補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
令和1年9月30日に提出された手続補正書による手続補正を却下する。

〔理由〕
1 令和1年9月30日日提出の手続補正書による手続補正の内容
(1)補正前後の記載
令和1年9月30日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は,同年5月24日に提出された手続補正書による補正後(以下「本件補正前」という。)の特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ,本件補前後の特許請求の範囲のうち請求項1の記載は次のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)

ア 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
プロセッサを具備するゲーム装置のプログラムであって,
前記プロセッサを,
ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象である第1ゲーム要素と,前記ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象ではない第2ゲーム要素とが対戦するゲームにおいて,
前記ユーザの操作により選択された特定ゲーム要素に基づいて,
前記第1ゲーム要素の有する複数種類のパラメータの中から,
前記対戦に利用される第1対戦パラメータを決定し,
前記特定ゲーム要素に基づいて,
前記第2ゲーム要素の有する複数種類のパラメータの中から,
前記対戦に利用される第2対戦パラメータを決定する決定部,
として機能させる,
ことを特徴とする,ゲーム装置のプログラム。」

イ 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
プロセッサを具備するゲーム装置のプログラムであって,
前記プロセッサを,
ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象である第1ゲーム要素と,前記ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象ではない第2ゲーム要素とが対戦するゲームにおいて,
前記ユーザの操作により選択された特定ゲーム要素のみに基づいて,
前記第1ゲーム要素の有する複数種類のパラメータの中から,
前記対戦に利用される第1対戦パラメータを決定し,
前記特定ゲーム要素のみに基づいて,
前記第2ゲーム要素の有する複数種類のパラメータの中から,
前記対戦に利用される第2対戦パラメータを決定する決定部,
として機能させる,
ことを特徴とする,ゲーム装置のプログラム。」

(2)本件補正のうち請求項1に係る補正の内容
本件補正のうち請求項1に係る補正は,請求項1に記載された「前記ユーザの操作により選択された特定ゲーム要素に基づいて,」及び「前記特定ゲーム要素に基づいて,」という記載を,それぞれ「前記ユーザの操作により選択された特定ゲーム要素のみに基づいて,」及び「前記特定ゲーム要素のみに基づいて,」という記載に補正するものである。

2 新規事項の追加の有無及び補正の目的について
本件補正のうち請求項1に係る補正は,本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「決定部」による第1対戦パラメータの決定及び第2対戦パラメータの決定について,補正前には,特定ゲーム要素のみに基づき行われるものばかりでなく,特定ゲーム要素と他の条件とに基づき行われるものをも包含していたものを,特定ゲーム要素のみに基づき行われるものに限定する補正であって,補正の前後で当該請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
前記2で述べたとおり,本件補正のうち請求項1に係る補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから,本件補正後の請求項1に係る発明が,同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するのか否か(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否か)について判断する。
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)は,前記1(1)イに示した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。

(2)引用例
ア 特開2000-157744号公報
(ア)特開2000-157744号公報の記載
原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された特開2000-157744号公報(以下,原査定と同様に「引用文献1」という。)は,本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物であるところ,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)

a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,コンピュータ上で,カードゲームを行うために用いられるプログラムを組み込んだ記憶媒体,記憶装置,及び,プログラムにしたがってカードゲームを行うゲーム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に,2人或いはそれ以上のプレイヤー間において,相互にカードを出し合うことによって,競技するカードゲームが米国特許第5662332号特許明細書(以下,引用例と呼ぶ)において提案されている。この引用例には,互いに異なる属性並びに能力を備えた複数枚のカードを各プレイヤーで用意しておき,これらカードを出し合って,相手のライフポイント(LP)を"0"にするようなゲームが開示され,当該カードゲーム自体は,Magic the Gatheringの名前で市販されている。
・・・(中略)・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記したカードゲームは,属性,能力等の異なるカードを多数使用すると共に,ルールも一般の人,或いは,子供には,複雑であるため,簡単には楽しめず,特定の熟練したゲームマニア間において愛好されるに止まっている。このため,上記カードゲームをそのままゲーム装置用のプログラムで実現したのでは,カードゲームの需要者の拡大は望めない。換言すれば,カードゲームをプログラムによって実現する場合,カードゲーム本来の興趣を保ったまま,ルール等を如何に簡略化するかが,大きな問題となる。
【0006】他方,ゲーム装置の愛好者の要求は,ゲームをより面白く,且つ,簡単で,高度な機能,及び,高度な遊戯方法を志向する傾向にあることは,否定できない。このような愛好者の要求に応えるために,カードゲーム自体のルールを複雑にすることも考えられるが,ゲームのルールを複雑化したのでは,前述したように,一部のゲームマニアだけが楽しむことができることになってしまい,初心者,子供等にとっては難しすぎて取り付きにくく,結果的には,カードゲームの一般化,及び,普及を妨げる結果となってしまう。
【0007】したがって,この種のゲーム装置用カードゲームは,初心者,或いは,子供にも馴染み易く,且つ,ゲームマニアの要望にも応え得るものでなければならない。
【0008】本発明の目的は,カードゲームのルールを,徒に,複雑化することなく,カードゲームをより多くの人が楽しめるように構成されたプログラムを格納したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体を提供することである。
・・・(中略)・・・
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の一実施の態様によれば,プレイヤー間で,それぞれ定められた能力を備えたカードを出し合って競技するカードゲームに使用するプログラムを格納し,コンピュータにより読み取り可能な記録媒体において,互いに異なる複数の競技環境を設定すると共に,前記各カードに対して,前記各競技環境に応じて変化する能力をあらわす能力指数を環境能力指数データとして格納しておき,前記プログラムは,前記環境能力指数データを参照して,前記競技環境のうち,選ばれた競技環境の下で,前記カードゲームを前記コンピュータ上で実行する記録媒体が得られる。
・・・(中略)・・・
【0015】このように,本発明では,競技環境に応じて,カードの能力指数を変化させることにより,カードゲームで使用される場のバリエーションを豊かにすることができ,プレイヤーのカードゲームに対する興味を掻き立てることができる。」

b 「【0020】
【発明の実施の形態】図1(A)及び(B)を参照すると,市販されている携帯用ゲーム装置11を使用して本発明に係るゲームを楽しむ形態が示されている。・・・(中略)・・・
【0024】次に,図3を参照して,図1に示されたカセット12を装着してゲームを行う携帯用ゲーム機11の構成を説明する。図示された携帯用ゲーム機11は,例えば,特開平2-210562号公報に開示されているように,表示画面を形成する液晶パネル21,操作ボタン及び選択設定ボタン等を配列した操作パネル22,及び,CPU本体23とを備えている。CPU本体23には,コネクタ24を介して,図2に示された記録媒体15を内蔵したカセット12が装着される。」

c 「【0030】まず,本発明のカードゲームでは,350種類のカードを各種類毎に99枚,合計34650枚のカードが用意されている。
【0031】これらのカードに関するデータは,図2に示した記録媒体15のデータ格納領域152に格納されており,カードゲームを行う際,少なくともその一部がCPU本体23のRAM28上に転送,格納されている。
【0032】ここで,本発明に係るカードゲームを概略に説明しておくと,当該カードゲームでは,各プレイヤーが,各カードを携帯用ゲーム機の液晶パネル21の所定場所(即ち,画面上の場)に,交互に出し合い,カードの優劣によって,相手のライフポイント(LP)を減少させることによって,ゲームが進行していく。この場合,本発明に係るカードゲームの特徴の一つは,各プレイヤーが,画面上の場に出されているカード毎に,攻撃,防御を指定でき,且つ,画面上の場に出されているカードに対して,一枚対複数枚のカードに対して攻撃,防御を指定でき,この結果,一枚対複数枚の対戦等,多種多様な対戦を可能にしていることである。
【0033】本発明に係るカードゲームのもう一つの特徴は,上記した350種類のカードの内,ゲーム中に設定された戦闘遊戯フィールド,即ち,競技環境をあらわすフィールドカードを6種類,用意していることである。より具体的に言えば,本発明の一実施形態の場合,フィールドカードとして,森をあらわすカード,荒野をあらわすカード,山をあらわすカード,草原をあらわすカード,海をあらわすカード,及び,闇をあらわす6種類のカードが用意されており,カードゲーム中,通常のフィールド(ノーマルフィールド)とあわせて7種類のフィールドを設定できる。したがって,プレイヤーは,自己の所持するカードの各フィールドにおける攻撃及び防御能力指数を考慮して,カードゲームを楽しむことができる。
【0034】更に,本発明において,フィールドカード以外の残りのカードは,それぞれ能力,属性を備えた300種類のクリーチャーカードと,特定の状況において予め定められた機能を発揮する44種類の後方支援カードとに区分されている。
【0035】図4を参照すると,クリーチャーカードリストの一部が示されており,これらのカードに対して,実際には,カードに描かれたクリーチャーの属性等を考慮した名称がそれぞれ与えられているが,ここでは,簡略化のために,各カードの名称がA00-J09で示されている。尚,実際には,図示されたクリーチャーカードをも含めて,300種類のクリーチャーカードが用意されていることは,前述した通りである。
【0036】図4に示すように,各カードには,そのカードの能力(強さ)を示すポイント,即ち,能力指数が割当てられている。また,これらの能力指数は,クリーチャーの属性を考慮してフィールド(即ち,競技環境)毎に,異なっている。言い換えれば,能力指数は,競技環境に依存して変化するから,競技環境能力指数と呼ばれても良い。更に,図4に例示したカードの大部分は,攻撃に使用される場合と,防御に使用される場合とで,異なる能力指数を有している。」

d 「【0058】対戦するプレイヤーが,それぞれ40枚の手持ちカードからなるデッキを構成すると,対戦状態に入る。対戦状態に入ると,コンピュータが各対戦者のデッキからランダムに5枚のカードを選択し,裏返した状態で,表示画面上の特定ゾーンに並べる。この場合,各対戦者のカードが5枚ずつ,裏返しの状態で液晶パネルの特定ゾーンに並べられる。例えば,当該プレイヤーの5枚のカードを並べる特定ゾーンは,画面の下部分に設けられ,他方,対戦相手の特定ゾーンは,画面の上部分に設けられる。上記した画面上の特定ゾーンに並べられた5枚のカードを手札と呼ぶ。
・・・(中略)・・・
【0061】図14を参照すると,図の下側プレイヤーが,カーソルを移動させて5枚の手札の中から右端に位置するカードを戦闘用カードとして一枚選択し,特定ゾーンより上側の領域に出した状態が示されている。ここで,当該プレイヤー及び対戦相手が5枚の手札を並べた特定ゾーンより,画面の内側に位置する領域を画面上の場と呼ぶものとする。
・・・(中略)・・・
【0063】プレイヤーは,選択したカードを場に出し,この状態で,プレイヤー及び対戦相手の一方が,「攻撃」又は「防御」のいずれかを選択する。「攻撃」であれば,カーソルで囲まれたカードは図15に示すように,縦長に表示され,他方,「防御」であれば,図16に示すように,カードは横長に表示される。尚,場に,カードが1枚も残されていない状態,或いは,場に1枚のカードが残されている状態だけではなく,複数枚のカードが残されている状態もありうる。例えば,双方のプレイヤーが共に防御のみを選択しつづければ場に残されているクリーチャーカードの数は,ターン毎に増えていくし,更に,一方のプレイヤーが勝ちつづければ,このプレイヤーの前の場に残されるカードは増加していく。このように,複数枚のカードが,画面上の場に残されている場合,各カードについて,攻撃,防御を指定する。
【0064】図15又は図16の状態で,対戦相手もカードを画面上の場に出し,当該プレイヤー及び対戦相手のいずれかが,攻撃を選択した場合に,図17に示す状態で,当該プレイヤー及び対戦相手との間で,戦闘が開始される。この戦闘は,後述するアルゴリズムにしたがって行われる。また,カードが画面上の場に出されると,プレイヤーの特定ゾーンには,一枚のカードが補充される。
・・・(中略)・・・
【0066】戦闘が終了すると,図15と同様な状態になる。しかし,戦闘の結果,勝った側のカードは表向きになり,場に残り,負けた側のカードは画面から消えてしまう。尚,攻撃を選択した場合において,対戦相手が複数のカードを前(審決注:「場」の誤記と解される。)に出していた場合,いずれのカードに攻撃するかは,攻撃側が選択できる。
【0067】一回の戦闘が終了すると,デッキからカードが,プレイヤー及び対戦相手の特定ゾーンに1枚補充される。この戦闘を繰り返すことにより,プレイヤー,或いは,対戦相手のライフポイントが0になると,ゲームが終了し,ゲームに負けた側のデッキからカードが1枚選択されて,勝った側に移動してしまう。
・・・(中略)・・・
【0069】次に,図18乃至20を参照して,本発明に係るカードゲームの手順をより具体的に説明する。
【0070】図18に示すように,ステップS1では,40枚のカードの手持ちカードのデッキを作り,続いて,40枚の手持ちカードからなるデッキをシャッフルした後,その内の5枚を取り出して,図13のように,特定ゾーンに5枚のカードからなる手札が配列される。言い換えれば,デッキを構成する40枚のカードの中から,手札を5枚ランダムに選択し,特定ゾーンに配列する。この状態では,フィールド,即ち,競技環境が,プログラムによってランダムに決定される。このようにして,カードゲームのための準備が終了する。
【0071】次に,ステップS2に示すように,先攻及び後攻が決定され,先攻側から手札が,特定ゾーンから一枚場に出される。この時,出されたカードに対して,図15又は図16に示すように,攻撃か,防御かの選択が行われた後,デッキの中からカードが一枚取られ,特定ゾーンに補充される。
【0072】次に,後攻側では,ステップS3に示すように,先攻側と同様に,手札の中から,カードを一枚選択して,場に出し,これによって,図17に例示したように,先攻側と後攻側との間で戦闘が行われる。戦闘は,図19に示すようなフローチャートにしたがって行われ,戦闘が終了すると,後攻側のデッキからカードが,補充され,特定ゾーンに手札として配列される。
【0073】戦闘終了後,ステップS4に示すように,先攻側と後攻側におけるライフポイント(LP)が比較され,いずれか一方のLPが,0になるまで,ステップS3が繰り返される。
【0074】図19に示されているように,ステップS3に示された戦闘は,場に出されている全てのカードに対して,「攻撃」或いは「防御」の選択が行われたかどうかが,ステップSa1において,チェックされる。
【0075】場に出ている全てのカードについて,「攻撃」或いは「防御」の選択が行われていれば,戦闘を終了させ,図18のステップS3に戻り,以後,先攻側,後攻側から交互にカードが場に出される。しかし,場に出ている全てのカードについて,「攻撃」又は「防御」の選択が行われていないカードが存在する状態では,ステップSa1に続いて,ステップSa2が実行される。ステップSa2では,先攻側或いは後攻側のいずれかで,「攻撃」が選択されているか否かが判定され,「攻撃」が選択されていると,図20に示す勝ち負け処理が実行される。攻撃側及び防御側のいずれにおいても,攻撃が選択されていない場合,図19のステップSa1に戻り,場に出ているカードの全てについて,攻撃或いは防御の選択が行われている場合には,戦闘を終了する。
【0076】図20に示された勝ち負け処理では,ステップSb1において攻撃対攻撃かどうかが判定される。判定の結果,攻撃対攻撃であれば,ステップSb1は,ステップSb2に移り,ステップSb2では,先攻側及び後攻側におけるカードの攻撃能力指数が比較され,攻撃能力指数の高い方のカードを勝ちとし,低い方のカードを負けとする。更に,ステップSb2では,負けたカードを「墓場」に捨て,即ち,画面上から消去し,負けたカード側のライフポイント(LP)を戦闘に使用されたカードの攻撃能力指数の差だけ引き,続いて,図19のステップSa1に移行する。尚,「墓場に捨てる」とは,そのカードが当該ゲームの終了まで使用不能になると言うことであり,「かばん」内には,「墓場」に捨てられたカードは残っている。したがって,次のゲームでは,前回のゲームで「墓場」に捨てられたカードは使用可能となる。一方,ゲーム終了時に相手方に移動したカードは,「かばん」内から消される。
【0077】一方,ステップSb1において,先攻側及び攻撃側で,攻撃対攻撃が選択されていない場合,ステップSb3が実行される。ステップSb3では,先攻側及び後攻側において攻撃対防御が選択されていないかどうか,及び,攻撃対防御が選択されている場合には,攻撃能力指数が,防御能力指数より大きいか否かが判定される。判定の結果,攻撃能力指数が防御能力指数を上回っている場合,攻撃側を勝ちと判定して,ステップSb4の処理を行う。
【0078】ステップSb4では,負けたカード,即ち,防御側のカードを「墓場」に捨てる。このように,防御を選択したプレイヤーが負けた場合,負けた防御側のライフポイント(LP)は,引かれず,そのまま維持されるが,当該ゲーム中における当該防御側のプレイヤーのカード数は,減少することになる。
【0079】一方,ステップSb3において,攻撃対防御が選択され,且つ,攻撃側が勝っていない場合,処理は,ステップSb5に移行する。ステップSb5において,防御側が勝っていることが検出されると,ステップSb6が実行される。ステップSb6では,防御能力指数と攻撃能力指数との差に応じたポイントを負けた側のライフポイント(LP)から差し引く。
【0080】ステップSb5において,攻撃対防御が選択されていないことが判定されると,ステップSb5の後に,ステップSb7が実行される。ステップSb7では,先攻側及び後攻側のいずれか一方は,攻撃を指定しているにも拘わらず,他方は,クリーチャーカードを場に出していないことを判定する。この場合,クリーチャーカードを出していない側のライフポイント(LP)を攻撃側の攻撃能力指数分だけ差し引く。
【0081】以後,図19のステップSa1に戻り,場の全てのカードについて,「攻撃」,「防御」の選択が行われたかどうかが検出され,全てのカードについて,上記選択が行われた場合,戦闘を終了して,図18のステップS4に移行し,ライフポイント(LP)が0かどうかの判定が行われる。一方のプレイヤーのライフポイント(LP)が0になると,負けた方のプレイヤーから勝った方のプレイヤーへ,無作為に一枚カードを移す等の処理が行われる。このように,カードを移す場合,図18のステップS1において,負けた場合に,相手側に提供するカードを賭けの対象として,相手側に見せるようにしても良い。
【0082】以上述べたように,ゲーム上の戦闘は,先攻側及び後攻側のいずれか一方において攻撃が選択された場合にのみ行われ,先攻側及び後攻側の双方が防御を選択した場合には,戦闘は行われない。
【0083】以下,本発明に係るカードゲームにおける特殊動作並びにルールについて説明しておく。
・・・(中略)・・・
【0085】次に,フィールドカードを場に出すときの処理を説明する。図18に示されたステップS3において,クリーチャーカードの代わりに,フィールドカードが場に出された場合,該フィールドカードによってあらわされる環境に場が変更され,図19の勝ち負け処理において参照される各カードの攻撃・防御のパラメータが該当する環境における数値に変更される。この変更は他の環境を示すフィールドカードが場に出されるまで継続する。このことを図4と関連して説明すると,フィールドカードが出されると,当該フィールドカードであらわされる図4のフィールドにおける攻撃,防御能力指数が読み出され,当該攻撃,防御能力指数によってゲームが行われることを意味している。
・・・(中略)・・・
【0087】これらフィールドカード及び後方支援カードをステップS3において場に出した後,自分の場にクリーチャーカードが存在すれば続いて図19の戦闘フローチャートに移る。以後は双方のプレイヤーが共にクリーチャーカードを場に出したときの処理と同様である。
【0088】前述した実施の形態では,プレイヤーの各ターン毎に,クリーチャーカード,後方支援カード,及び,フィールドカードのいずれかを一枚,場に出す場合を前提にして説明したが,プレイヤーは,各ターン毎に,複数枚のカードを場に出せるようにしても良い。このように,一回のターンにつき,複数枚のカードを場に出せるようにすることにより,ゲームをより高度化することができる。」

e 「【0109】
【発明の効果】以上述べたように,本発明では,複雑なルールのカードゲームを単純化することにより,普遍性を持たせ,この種カードゲームの普及を容易にするカードゲーム用プログラムを格納した記録媒体及びゲーム機が得られる。」

f 「【図面の簡単な説明】
・・・(中略)・・・
【図4】本発明に係るカードゲームで使用されるクリーチャーカード,及び,各クリーチャーカードの各フィールド毎の能力指数を示すリストである。
・・・(中略)・・・
【図15】図14の段階において,攻撃が指定された場合を説明するための図である。
【図16】図14の段階において,防御が指定された場合を説明するための図である。
・・・(中略)・・・
【図18】本発明の係るカードゲームの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【図19】図18に示された戦闘状態における動作手順を説明するためのフローチャートである。
【図20】図18に示された勝ち負け処理における処理手順を説明するためのフローチャートである。
・・・(中略)・・・
【図4】

・・・(中略)・・・
【図15】

【時16】

・・・(中略)・・・
【図18】

【図19】

【図20】



(イ)引用文献1に記載された発明
a 前記(ア)aないしfで摘記した引用文献1の記載から,プレイヤーと対戦相手との間で,各ターン毎に,それぞれ定められた能力を備えた複数枚のカードを出し合い,カードの優劣によって,相手のライフポイント(LP)を減少させることによって,進行していくカードゲームを,プレイヤーが有する携帯用ゲーム機11に実行させるカードゲーム用プログラムについての発明を把握することができるところ,引用文献1の【0072】及び【0074】(前記(ア)dを参照。)に記載された「手札の中から,カードを一枚選択して,場に出」す,及び「カードに対して,「攻撃」或いは「防御」の選択が行われた」とは,プレイヤーによる選択操作を携帯用ゲーム機11が受け付けたことに基づいて行われることが明らかであるから,前記カードゲーム用プログラムについての発明の構成は,次のとおりのものと認められる。(なお,引用文献1では,プレイヤーと当該プレイヤーの対戦相手を区別せずに,どちらもプレイヤーと表現している記載が散見されるが,下記引用発明では,両者を区別して認定した。)

「プレイヤーと対戦相手との間で,各ターン毎に,それぞれ定められた能力を備えた複数枚のカードを出し合い,カードの優劣によって,相手のライフポイント(LP)を減少させることによって,進行していくカードゲームを,プレイヤーが有する携帯用ゲーム機11に実行させるカードゲーム用プログラムであって,
前記カードゲームでは,350種類のカードを各種類毎に99枚,合計34650枚のカードが用意され,前記350種類のカードの内,ゲーム中に設定された競技環境をあらわすフィールドカードが6種類,用意され,前記フィールドカード以外の残りのカードは,それぞれ能力,属性を備えた300種類のクリーチャーカードと,特定の状況において予め定められた機能を発揮する44種類の後方支援カードとに区分され,前記各クリーチャーカードには,そのカードの能力(強さ)を示す能力指数が割当てられており,これらの能力指数は,クリーチャーの属性を考慮して競技環境毎に,異なっているとともに,攻撃に使用される場合と,防御に使用される場合とで,異なる能力指数を有しており,
前記携帯用ゲーム機11が備えるCPU本体23に,
デッキを構成する40枚のカードの中から,手札を5枚ランダムに選択し,画面上の特定ゾーンに配列するステップS1と,
プレイヤーのターンにおいて,プレイヤーが,手札の中から,カードを複数枚選択して,画面上の場に出す操作と,場に出されている全てのカードに対して,攻撃か,防御かの選択をする操作を受け付け,攻撃が選択されたカードについて,戦闘を行って,勝ち負け処理を実行し,戦闘が終了すると,デッキからカードを補充し,特定ゾーンに手札として配列するステップS3と,
を実行させ,
前記ステップS3において,場に出されているカードに対して攻撃を選択するときに,対戦相手が複数のカードを場に出していた場合,いずれのカードに攻撃するかは,攻撃側であるプレイヤーが選択できるよう構成されており,
前記勝ち負け処理は,
攻撃対攻撃であれば,カードの攻撃能力指数を比較し,攻撃能力指数の高い方のカードを勝ちとし,低い方のカードを負けとして,負けたカードを「墓場」に捨て,即ち,画面上から消去し,負けたカード側のライフポイント(LP)を戦闘に使用されたカードの攻撃能力指数の差だけ引き,
攻撃対防御であれば,攻撃能力指数が,防御能力指数より大きいか否かを判定し,攻撃能力指数が防御能力指数を上回っている場合には,攻撃側を勝ちと判定して,負けたカード,即ち,防御側のカードを「墓場」に捨て,負けた防御側のライフポイント(LP)を引かず,攻撃側が勝っていない場合には,防御能力指数と攻撃能力指数との差に応じたポイントを負けた側のライフポイント(LP)から差し引き,
攻撃を指定しているにも拘わらず,対戦相手は,クリーチャーカードを場に出していない場合,クリーチャーカードを出していない側のライフポイント(LP)を攻撃側の攻撃能力指数分だけ差し引く,
という処理であり,
クリーチャーカードの代わりに,フィールドカードが場に出された場合,該フィールドカードによってあらわされる競技環境に場が変更され,前記勝ち負け処理において参照される各カードの攻撃能力指数・防御能力指数が,該当する競技環境における数値に変更され,この変更は他の競技環境を示すフィールドカードが場に出されるまで継続する,
カードゲーム用プログラム。」(以下,「引用発明」という。)

b なお,請求人は,審判請求書において,
「引用発明1において,第2ゲーム要素(対戦相手のクリーチャーカード)を選択するのは,「前記ユーザ」ではありません。第2ゲーム要素(対戦相手のクリーチャーカード)を選択するのは対戦相手です。この点は,以下のとおり,引用文献1段落0032,0061,0063,0064に,ユーザと対戦相手がそれぞれカードを選択し,ユーザと対戦相手がそれぞれパラメータを決定することが明確に記載されていることからも明らかです。」
などと主張する。
しかしながら,引用文献1の【0032】,【0074】,【0075】,【0088】(前記(2)ア(ア)c及びdを参照。)に記載されているように,引用発明のカードゲームは,プレイヤーと対戦相手との間で,各ターン毎に,それぞれ定められた能力を備えたカードを出し合うゲームであり,プレイヤーのターンにおいては,プレイヤーが,手札の中から,カードを複数枚選択して,画面上の場に出し,場に出されている全てのカードに対して,攻撃か,防御かの選択を行い,攻撃が選択されたカードについて,戦闘するのであって,プレイヤーと対戦相手が同時にカードを出し合って,当該カード同士で戦闘が行われるようなゲームではない。
そして,引用文献1の【0066】(前記(2)ア(ア)dを参照。)には,攻撃を選択した場合において,対戦相手が複数のカードを場に出していた場合,いずれのカードに攻撃するかは,攻撃側が選択できると記載されているから,引用発明のカードゲームでは,プレイヤーのターンにおいて,プレイヤーが,場に出されているカードに対して,攻撃を選択して,戦闘を行うときに,対戦相手が複数のカードを場に出していた場合,いずれのカードを攻撃するのかを選択するのが,プレイヤーとされていることは明らかである。
請求人が指摘する引用文献1の【0032】,【0061】,【0063】,【0064】には,プレイヤーと対戦相手が,各カードを交互に出し合うこと,場に出されているカードに対して,攻撃,防御を指定できること,ゲーム開始後の最初のターンでは,プレイヤーと対戦相手のうちの一方が,カードを場に出し,攻撃又は防御の選択を行うだけで,戦闘は行われないこと,2回目のターンでは,プレイヤーと対戦相手のうちの他方が,カードを場に出し,攻撃又は防御の選択を行い,攻撃を選択されたカードについて,戦闘が行われることが説明されているだけであり,これらの記載から,プレイヤー又は対戦相手のうちの一方が,場に出されているカードに対して,攻撃を選択し,戦闘を行う場合に,プレイヤー又は対戦相手のうちの他方が,その戦闘で攻撃されるカードを選択することを読み取ることはできない。
したがって,請求人の前記主張は採用できない。

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 技術的にみて,引用発明の「CPU本体23」,「携帯用ゲーム機11」,「カードゲーム用プログラム」,「プレイヤー」及び「カードゲーム」は,それぞれ,本件補正発明の「プロセッサ」,「ゲーム装置」,「プログラム」,「ユーザ」及び「ゲーム」に対応する。

イ 引用発明の「携帯用ゲーム装置11」(本件補正発明の「ゲーム装置」に対応する。以下,「(3)対比」欄において,引用発明の構成を囲む「」に続く()中の文言は,当該引用発明の構成に対応する本件補正発明の発明特定事項を表す。)は,「CPU本体23」(プロセッサ)を有しており,引用発明の「カードゲーム用プログラム」(プログラム)は,「携帯用ゲーム装置11」(ゲーム装置)で実行されるのであるから,引用発明の「カードゲーム用プログラム」は,本件補正発明の「プロセッサを具備するゲーム装置のプログラムであ」るとの発明特定事項に相当する構成を具備している。

ウ 引用発明の「カードゲーム」(ゲーム)では,「プレイヤー」(ユーザ)のターンにおいて,「プレイヤー」(ユーザ)が,手札の中から,カードを複数枚選択して,画面上の場に出し,画面上の場に出されている全てのカードに対して,攻撃か,防御かの選択をし,攻撃が選択されたカードについて,戦闘を行うものであり,かつ,画面上の場に出されているカードに対して攻撃を選択するときに,対戦相手が複数のカードを画面上の場に出していた場合,いずれのカードに攻撃するかは,攻撃側であるプレイヤーが選択できるのであるから,「プレイヤー」(ユーザ)の操作対象である「画面上の場に出されているカード」のうち「プレイヤー」(ユーザ)により攻撃が選択されたカード(以下,便宜上「攻撃カード」という。)と,対戦相手の操作対象である「画面上の場に出されているカード」のうち「プレイヤー」(ユーザ)により攻撃対象として選択されたカード(以下,便宜上「被攻撃カード」という。)とが対戦しているといえる。
したがって,引用発明の「プレイヤーの操作対象である画面上の場に出されているカードのうちプレイヤーにより攻撃が選択された攻撃カード」及び「対戦相手の操作対象である画面上の場に出されているカードのうちプレイヤーにより攻撃対象として選択された被攻撃カード」は,それぞれ,本件補正発明の「ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象である第1ゲーム要素」及び「前記ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象ではない第2ゲーム要素」に相当し,引用発明の「カードゲーム」は,本件補正発明の「ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象である第1ゲーム要素と,前記ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象ではない第2ゲーム要素とが対戦するゲーム」に相当する。

エ 引用発明では,「プレイヤー」(ユーザ)のターンにおいて,「プレイヤー」(ユーザ)が,手札の中から,まず最初にフィールドカードを場に出し,次にクリーチャーカードを場に出して,当該クリーチャーカードに対して攻撃を選択し,場に出されている対戦相手の複数のカードの中から攻撃対象となるクリーチャーカードを選択して戦闘を行う場合,最初に場に出されたフィールドカードによってあらわされる環境に場が変更され,勝ち負け処理において参照される各クリーチャーカード,すなわち「攻撃カード」及び「被攻撃カード」の攻撃能力指数・防御能力指数が該当する環境における数値に変更されるのであり,このときの勝ち負け処理において参照される「攻撃カード」(第1ゲーム要素)及び「被攻撃カード」(第2ゲーム要素)の能力指数は,各カードに対して攻撃が選択されている場合は,最初に場に出されたフィールドカードに対応する「攻撃能力指数」であり,防御が選択されている場合は,最初に場に出されたフィールドカードに対応する「防御能力指数」である。
そうすると,引用発明の「カードゲーム用プログラム」(プログラム)は,「CPU本体23」(プロセッサ)を,「カードゲーム」(ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象である第1ゲーム要素と,前記ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象ではない第2ゲーム要素とが対戦するゲーム)において,最初に場に出された「フィールドカード」に基づいて,「攻撃カード」(第1ゲーム要素)の有する複数種類の「能力指数」の中から,対戦に利用される「第1対戦能力指数」を決定し,最初に出された「フィールドカード」と「被攻撃カード」(第2ゲーム要素)に対して選択されている攻撃・防御の別とに基づいて,前記「被攻撃カード」(第2ゲーム要素)の有する複数種類の「能力指数」の中から,前記対戦に利用される「第2対戦能力指数」を決定する決定部として機能させているといえる。
そして,本件明細書の【0023】には,「本実施形態では,一例として,ゲーム装置10-qが,手札配置領域ArTqに対して,最大で3枚の手札を配置することが可能である場合を想定する。ユーザUqは,手札配置領域ArTqに配置されている手札の中から選択したカードを,フィールド領域ArFに配置することができる。本実施形態では,一例として,ユーザUqが,キャラクタカード配置領域ArCqに対して,最大で3枚のキャラクタカードCcqを配置することが可能であり,支援カード配置領域ArSqに対して,最大で3枚の支援カードCsqを配置することが可能であり,フィールドカード配置領域ArCFに対して,1枚のフィールドカードCfを配置することが可能である場合を想定する。」と記載されており,手札が最大で3枚である以上,手札中にフィールドカードが存在せず,フィールドカード配置領域に対して,フィールドカードを配置することができず,自分ではなく対戦相手が配置したフィールドカードに基づいて対戦を行わざるを得ないことが当然想定されることから,本件補正発明の「決定部」における「ユーザの操作により選択された特定ゲーム要素のみに基づいて,前記第1ゲーム要素の有する複数種類のパラメータの中から,前記対戦に利用される第1対戦パラメータを決定し,前記特定ゲーム要素のみに基づいて,前記第2ゲーム要素の有する複数種類のパラメータの中から,前記対戦に利用される第2対戦パラメータを決定する」とは,対戦において,必ず,ユーザの操作により選択されたフィールドカードのみに基づいて,対戦に利用される第1対戦パラメータ及び第2対戦パラメータを決定することを意味するのではなく,ユーザがフィールドカードを選択した場合には,当該フィールドカードのみに基づいて,その後にユーザが相手を選択して行う対戦に利用される第1対戦パラメータ及び第2対戦パラメータを決定することを意味することは明らかである。
したがって,引用発明の「最初に場に出されたフィールドカード」及び「能力指数」は,それぞれ,本件補正発明の「特定ゲーム要素」及び「パラメータ」に相当し,引用発明と本件補正発明は,「プロセッサを,ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象である第1ゲーム要素と,前記ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象ではない第2ゲーム要素とが対戦するゲームにおいて,前記ユーザの操作により選択された特定ゲーム要素に基づいて,前記第1ゲーム要素の有する複数種類のパラメータの中から,前記対戦に利用される第1対戦パラメータを決定し,前記特定ゲーム要素に基づいて,前記第2ゲーム要素の有する複数種類のパラメータの中から,前記対戦に利用される第2対戦パラメータを決定する決定部,として機能させる」点で共通する。

オ 前記アないしエに照らせば,本件補正発明と引用発明とは,
「プロセッサを具備するゲーム装置のプログラムであって,
前記プロセッサを,
ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象である第1ゲーム要素と,前記ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象ではない第2ゲーム要素とが対戦するゲームにおいて,
前記ユーザの操作により選択された特定ゲーム要素に基づいて,
前記第1ゲーム要素の有する複数種類のパラメータの中から,
前記対戦に利用される第1対戦パラメータを決定し,
前記特定ゲーム要素に基づいて,
前記第2ゲーム要素の有する複数種類のパラメータの中から,
前記対戦に利用される第2対戦パラメータを決定する決定部,
として機能させる,
ことを特徴とする,ゲーム装置のプログラム。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本件補正発明では,「第1対戦パラメータ」及び「第2対戦パラメータ」は,ユーザの操作により選択された「特定ゲーム要素」のみに基づいて,決定されるのに対して,
引用発明では,「勝ち負け処理において参照される各カードの攻撃能力指数・防御能力指数が,該当する環境における数値に変更され」るものであって,各カードにおいて参照される「第1対戦能力指数」及び「第2対戦能力指数」としては,「防御」が選択されている場合には最初に出された「フィールドカード」に対応する「防御能力指数」が,「攻撃」が選択されている場合には最初に出された「フィールドカード」に対応する「攻撃能力指数」が選択される点。

(4)相違点の容易想到性について
パラメータが設定されたカードを用いて戦闘を行うゲームにおいて,戦闘における勝敗を決定するためにその大小を比較するパラメータとして,攻撃・防御の別にかかわらず,同じパラメータを用いる技術は,例えば,特開2015-112363号公報(【0017】,【0018】,【0021】,【0036】ないし【0040】等を参照。),特開2014-233388号公報(【0024】,【0029】,【0040】,【0041】等を参照。)等にみられるように,本件出願の出願前に,周知のものであったと認められる。
ここで,引用発明では,カードに攻撃能力指数と防御能力指数とが設定されており,攻撃が選択されたカードについては攻撃能力指数が用いられ,防御が選択されたカードについては防御能力指数が用いられて,その大小により,戦闘における勝ち負けが決定されているが,戦闘における勝ち負けを,どのようなパラメータを用いて決定するのかは,当業者が適宜決定できる事項というべきである。
そうすると,引用発明において,クリーチャーカードに,そのカードの能力(強さ)を示す能力指数として,フィールド毎に,異なっているとともに,攻撃に使用される場合と,防御に使用される場合とで,異なる能力指数を割り当てる代わりに,フィールド毎に,異なっているとともに,前述した周知技術のように,攻撃に使用される場合と,防御に使用される場合とで,「同じ能力指数」を割り当てるよう構成し,勝ち負け処理においては,攻撃対攻撃であれば,カードの「同じ能力指数」を比較し,「同じ能力指数」の高い方のカードを勝ちとし,低い方のカードを負けとして,負けたカードを「墓場」に捨て,即ち,画面上から消去し,負けたカード側のライフポイント(LP)を戦闘に使用されたカードの「同じ能力指数」の差だけ引き,攻撃対防御であれば,攻撃側の「同じ能力指数」が,防御側の「同じ能力指数」より大きいか否かを判定し,攻撃側の「同じ能力指数」が防御側の「同じ能力指数」を上回っている場合には,攻撃側を勝ちと判定して,負けたカード,即ち,防御側のカードを「墓場」に捨て,負けた防御側のライフポイント(LP)を引かず,攻撃側が勝っていない場合には,防御側の「同じ能力指数」と攻撃側の「同じ能力指数」との差に応じたポイントを負けた側のライフポイント(LP)から差し引くような構成に変更することは,当業者が適宜なし得たことというほかない。
そして,当該構成の変更を行った引用発明では,「プレイヤー」の操作によって場に出された「フィールドカード」のみに基づいて,「攻撃カード」の「第1対潜能力指数」及び「被攻撃カード」の「第2対戦能力指数」が決定されるのであるから,「第1対戦パラメータ及び第2対戦パラメータは,ユーザの操作により選択された特定ゲーム要素のみに基づいて,決定される」という相違点に係る本件補正発明の発明特定事項に相当する構成を具備することとなる。
以上のとおりであるから,引用発明において,相違点に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは,周知技術に基づいて,当業者が適宜なし得たことである。

(5)効果について
本件補正発明が有する効果は,当業者が予測できた程度のものである。

(6)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願の請求項1に係る発明について
1 請求項1に係る発明
本件補正は前記のとおり却下されたので,本件出願の請求項1に係る発明(以下,「本件発明」という。)は,前記第2〔理由〕1(1)アに示した請求項1に記載された事項により特定されるものと認められる。

2 原査定の概要
本件発明に係る原査定の拒絶の理由は,概略,
本件発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない,また,本件発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,同条2項の規定により特許を受けることができない,
というものである。
原査定の拒絶の理由で引用された引用例は,前記第2〔理由〕3(2)アで示した引用文献1である。

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載及び引用発明については,前記第2〔理由〕3(2)ア(ア)及び(イ)に記載したとおりである。

4 対比・判断
前記第2〔理由〕3(3)オに示した相違点に係る本件補正発明の発明特定事項は,本件補正により,本件発明に付加されることとなった限定事項であって,本件発明と引用発明を対比すると,両者は,
「プロセッサを具備するゲーム装置のプログラムであって,
前記プロセッサを,
ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象である第1ゲーム要素と,前記ユーザにより選択された,前記ユーザの操作対象ではない第2ゲーム要素とが対戦するゲームにおいて,
前記ユーザの操作により選択された特定ゲーム要素に基づいて,
前記第1ゲーム要素の有する複数種類のパラメータの中から,
前記対戦に利用される第1対戦パラメータを決定し,
前記特定ゲーム要素に基づいて,
前記第2ゲーム要素の有する複数種類のパラメータの中から,
前記対戦に利用される第2対戦パラメータを決定する決定部,
として機能させる,
ことを特徴とする,ゲーム装置のプログラム。」
である点で一致し,相違するところはない。
したがって,本件発明は,その出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明である。

第4 むすび
前記第3のとおり,本件発明は,その出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明であり,特許法29条1項3号に該当するから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-03-16 
結審通知日 2021-03-23 
審決日 2021-04-06 
出願番号 特願2017-207856(P2017-207856)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 崇田辺 正樹  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 清水 康司
藤本 義仁
発明の名称 ゲーム装置、及び、ゲーム装置のプログラム  
代理人 大林 章  

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